説明

溶射用マスキング治具

【課題】溶射用マスキング治具の開口内面へ付着した溶射皮膜が、溶射中に脱落することを防止し、付着した溶射皮膜が、容易に除去できる溶射用マスキング治具を提供する。
【解決手段】シリンダブロック2のシリンダボア3の壁面10に溶射ガン7により溶射皮膜4を形成する際に、シリンダブロック2の端部表面9に設けられ、シリンダボア3と同軸の円筒状の開口6を有し、シリンダブロック2の端部表面9への溶射皮膜の付着をマスキングする溶射用マスキング治具1において、溶射ガン7により溶射皮膜5が付着する円筒状の開口内面8は、凹凸面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射用マスキング治具に係り、特に、シリンダブロックのシリンダボアの壁面に溶射ガンにより溶射皮膜を形成する際に、シリンダブロックの端部表面への溶射皮膜の付着をマスキングする溶射用マスキング治具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン等のシリンダブロックのシリンダボアの壁面は、耐摩耗性等が要求されるため、表面に皮膜を形成することにより保護される。一般には、シリンダボアの壁面には、金属溶射法により溶射皮膜を形成する。この金属溶射法は、金属や金属酸化物の溶射材料を加熱して溶融状態とし、その微粉末等を溶射ガンにより壁面に吹きつけ、溶射皮膜を形成する方法である。その溶射の熱源としては、一般に、プラズマ溶射やアーク溶射が採用される。
【0003】
図4に、従来のシリンダブロックのシリンダボアの壁面への金属溶射による溶射皮膜の形成方法を断面図により示す。シリンダブロック2のシリンダボア3の壁面10には、溶射ガン7により連続的に溶射皮膜4が形成される。溶射ガン7は、シリンダボア3に挿入され、図4において、上下に移動しながら連続的に溶射フレーム11をシリンダボア3の壁面10に吹き付ける。
【0004】
シリンダボア3の端部表面9は、一般に機械加工が施される。そこで、溶射の際に、この端部表面9への溶射皮膜の付着を防ぐため、溶射用マスキング治具1をシリンダブロック2の端部表面9に密着させて設置する。この溶射用マスキング治具1は、シリンダボア3と同軸であり、シリンダボア3の内径より小さい内径の円筒状の開口6を有している。また、溶射用マスキング治具1は一定の板厚を有することから、その開口内面8がシリンダボア3の壁面10と同様に、溶射ガン7に対して露出する。溶射の際には、この溶射用マスキング治具1の開口内面8にも溶射ガン7により溶射皮膜5が付着する。
【0005】
溶射用マスキング治具1には、通常、機械構造用炭素鋼が用いられ、その開口内面8は、図4に示すように機械加工された平滑面となる。溶射用マスキング治具1の開口内面8には、その平滑面に沿って溶射皮膜5が付着し堆積する。この堆積した溶射皮膜5は、ある程度の厚みになると、溶融状態の皮膜が冷却し凝縮することで、一体となった環状の皮膜として剥離することが望ましい。しかし、平滑面に溶射した場合には、一体として剥離し難い。従って、通常、この平滑面に付着した溶射皮膜5は、旋盤等の機械加工により除去するか、或いは、溶射用マスキング治具1自体とともに破棄されている。
【0006】
一方、溶射用マスキング治具1の材料として、溶射皮膜5が付着しにくいカーボン等の特殊な素材が用いられる場合もある。しかし、溶射皮膜5の壁面10への密着力が十分でないため、溶射中に、溶射粒子が治具の開口内面8から部分的に脱落し、シリンダボア3の壁面10に付着し、スパッタによる欠陥が発生する場合がある。
【0007】
特許文献1には、シリンダボアを熱コーティングする間、エンジンブロックに取り付ける保護マスク装置が開示されている。ここでは、保護マスク装置は、環状のアウター部及び中空円筒形状の挿入部材に分割され、挿入部材は、使用回数が制限された部品として作られ、通常1〜10回の使用後に廃棄される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−339053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の、素材として機械構造用炭素鋼を用いた、開口内面が平滑面である溶射用マスキング治具の場合、溶射皮膜の素材に対する密着性が高いため、溶射皮膜を容易に除去することができず、使用後に機械加工により除去するか、マスキング治具自体を破棄している。このため、溶射用マスキング治具は、その製作や機械加工に手間や費用がかかっている。
【0010】
一方、溶射用マスキング治具にカーボン等の溶射皮膜が剥離し易い素材を用いた場合、溶射の際に、溶射粒子がマスキング治具の開口内面から部分的に脱落し、シリンダボアの壁面に付着し、スパッタによる欠陥が発生するという問題が発生する虞がある。
【0011】
すなわち、溶射用マスキング治具の素材により、溶射用マスキング治具の開口内面への付着強度を調節し、溶射皮膜の開口内面への密着性と皮膜除去性とを両立させることは難しい。
【0012】
本願の目的は、かかる課題を解決し、溶射用マスキング治具の開口内面へ付着した溶射皮膜が溶射中に脱落することを防止し、付着した溶射皮膜を容易に除去できる溶射用マスキング治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る溶射用マスキング治具は、シリンダブロックのシリンダボアの壁面に溶射ガンにより溶射皮膜を形成する際に、シリンダブロックの端部表面に設けられ、シリンダボアと同軸の円筒状の開口を有し、シリンダブロックの端部表面への溶射皮膜の付着をマスキングする溶射用マスキング治具において、溶射ガンにより溶射皮膜が付着する円筒状の開口の内面は、凹凸面であることを特徴とする。
【0014】
また、溶射用マスキング治具は、開口の内面の面粗度(Rz)が、略20μmから略70μmの範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、溶射用マスキング治具は、開口の内面の断面が、凹部と凸部とが交互に連続する略山形の溝から成ることが好ましい。また、溶射用マスキング治具は、開口の内面の断面が、凹部と凸部とが交互に連続する略台形の溝から成ることが好ましい。
【0016】
また、溶射用マスキング治具は、その溝が、開口の内面に沿った複数の環状の溝であることが好ましい。また、溶射用マスキング治具は、その溝が、開口の内面に沿った螺旋状の溝であることが好ましい。
【0017】
さらに、溶射用マスキング治具は、開口の内面には、ネジ山の形状の溝が螺旋状に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成により、溶射用マスキング治具は、溶射皮膜が付着する円筒状の開口内面が、凹凸面となる。後述するように、溶射ガンの溶射フレームに対して略垂直な面に溶射する場合と比較し、溶射フレームに対して角度を持った面に溶射すると密着力が低下する傾向がある。つまり、表面が凹凸面である開口内面に溶射した場合には、各面は溶射フレームに対して角度を持った面であるため、その密着力が低下する。従って、表面が凹凸状に堆積された皮膜は冷却により凝縮するが、平滑面の場合と比較して開口内面に対する密着力が低いため、より容易に剥離させることが可能となる。
【0019】
また、この凹凸面に溶射皮膜が吹き付けられると、溶射皮膜自体もこの凹凸面の形状に沿って形成される。つまり、表面が凹凸状となった皮膜が形成される。表面が凹凸の溶射皮膜には、後述する立体効果が生じ、皮膜自体の面外の剛性が高くなる。従って、平滑面の場合と比較して溶射中に溶射皮膜が部分的に脱落することを防止することが可能となる。
【0020】
また、上述した立体効果は、溶融状態から内部温度の低下により凝縮し固体状態となった溶射皮膜においても発揮される。つまり、この表面が凹凸状に堆積された皮膜は、立体効果により一体性が増し、塊として容易に剥離することが可能となる。
【0021】
以上のように、本発明に係る溶射用マスキング治具によれば、溶射用マスキング治具の開口内面へ付着した溶射皮膜につき、溶射の際にその脱落を防止することが可能となり、付着した溶射皮膜を容易に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。
【0023】
(溶射用マスキング治具の概略構成)
図1に、溶射用マスキング治具の概略の構成を断面図で示す。図1に、シリンダブロック2のシリンダボア3、溶射用マスキング治具1、及び溶射ガン7を示す。なお、従来技術を示す図4と同様な構成については、同じ符号で示す。
【0024】
車両のエンジン等のシリンダブロック2は、主としてアルミ合金から成り、シリンダボア3を有する。このシリンダボア3の壁面10には、耐摩耗性の高い鉄系材料を溶射する金属溶射が施される。ここで、溶射とは、燃焼又は電気エネルギを用いて溶射材料を加熱して溶融若しくは軟化させ(「溶」)、微粒子状にして加速し素地に衝突させて(「射」)、扁平に潰れた粒子を凝固し堆積させることにより皮膜を形成することをいう。溶射の熱源としては、電気式溶射であるプラズマ溶射及びアーク溶射が用いられ、数10ミクロン程度の溶射皮膜4が形成される。この溶射皮膜4は、素地に対して機械的噛み合いによる物理的な付着機構で接合する。また、溶射皮膜4は、膜内部に気孔を有するスポンジのような構造で、付着膜応力の緩和に効果があり、膜の割れや剥がれを防止するのに効果がある。
【0025】
シリンダブロック2のシリンダボア3の壁面10には、図1に示すように、溶射ガン7から溶射フレーム11が発射されて溶射皮膜4が形成される。溶射フレーム11は、壁面10に対してやや下向きに放射される。
【0026】
シリンダボア3の端部表面9は、一般に機械加工が施されている。そこで、溶射の際に、この端部表面9への溶射皮膜の付着を防ぐため、溶射用マスキング治具1をシリンダブロック2の端部表面9に密着させて設置する。この溶射用マスキング治具1は、シリンダボア3と同軸であり、シリンダボア3の内径より小さい内径の開口6を有している。溶射用マスキング治具1の開口内面8は、溶射用マスキング治具1の剛性上の必要性から通常約10mm程度の幅が必要となる。このように、溶射用マスキング治具1は、一定の板厚を有することから、その開口内面8がシリンダボア3の壁面10と同様に溶射ガン7に対して露出する。そして、溶射の際には、この溶射用マスキング治具1の開口内面8にも溶射ガン7により溶射皮膜5が付着する。この溶射用マスキング治具1には、一般に機械構造炭素鋼(S45C)が用いられる。
【0027】
本実施の形態では、図1に示すように、この溶射用マスキング治具1の開口内面8には、開口内面8に沿って溝12が形成される。この溝12は、切削により形成された旋盤面であり、この旋盤面により開口内面8は凹凸面となる。この開口内面8の面粗度(表面粗さ)は、十点平均高さ(Rz)で略20μmから略70μmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
図2(a)及び(b)に、溶射用マスキング治具1の開口内面8の溝12の他の実施形態を部分断面図で示す。図2(a)は、溝12が螺旋状である場合を示し、図2(b)は、溝12が複数の環状溝17である場合を示す。図2(a)の溝12は、機械構造用炭素鋼(S45C)である溶射用マスキング治具1の開口内面8に転造により形成される。本実施の形態では、この溝12は、通常の旋盤面であるが、一般的なネジ山の形状であっても良い。この場合には、ネジ山の頂点と底点を結ぶ2つの側辺がなす内角は略60度の角度であり、ネジ山は略正三角形の形状となる。また、図2(b)の複数の環状溝17は、溶射用マスキング治具1を鋳造等により製作する場合に、型によりその環状溝17の形状を自在に決定することができる。
【0029】
この溝12の断面形状は、例えば、凹部と凸部とが交互に連続する略山形の溝12、或いは凹部と凸部とが交互に連続する略台形の溝12であっても良い。さらには、溶射用マスキング治具1の開口内面8に設けられる凹凸面は、円筒形である開口内面8の全体に、凹凸面が形成されればその形状は問わない。例えば、ゴルフボールの表面のような連続したディンプル面であっても良く、三角錐状の突起が連続した面であっても良い。
【0030】
(凹凸面とした効果)
以下、溶射用マスキング治具1の開口内面8を凹凸面とした場合の3つの特徴を、従来技術である平滑面との差異に基づき説明する。
【0031】
第1の特徴は、開口内面8を凹凸面とすることで、平滑面である場合と比べて、溶射皮膜5の素地に対する密着力が低下する。これは、溶射ガン7の溶射フレーム11に対して、素地面が垂直の場合最も密着力が高くなり、角度がつくほど密着力が低下するという現象に基づく。つまり、従来の平滑面の場合には、溶射フレーム11に対してほぼ鉛直に近い角度で溶射されるのに対し、凹凸面の場合には、全体としては溶射フレーム11に対してほぼ鉛直に近い角度で溶射されるが、個々の凹凸面の部分は、溶射フレーム11に対して、それぞれ角度を持って溶射される。従って、凹凸面全体として、平滑面の場合と比較して密着力が低下することになる。この現象は、上述したように、溶射による素地との結合が、「素地に対して機械的噛み合いによる物理的な付着機構」であり、「溶射材料を微粒子状にして加速し素地に衝突させ、扁平に潰れた粒子を凝固し堆積させる」ことから説明される。つまり、素地に対してほぼ鉛直に溶射すると、微粒子状となった溶射材料が、機械的噛み合いに十分な程度に扁平に潰れる。一方、角度をつけて溶射をすると、角度が大きいほど、微粒子が扁平に潰れにくくなり、機械的噛み合いの程度が弱くなる。従って、溶射用マスキング治具1の開口内面8を凹凸面とすることで、素地に対する密着力は、平滑面の場合に比べて低下し、その低下の程度は、一般的に、凹凸面の各面の傾きの度合いが大きいほど大きくなる。
【0032】
第2の特徴は、開口内面8を凹凸面とすることで、平滑面である場合と比べて、溶射皮膜5自体の面外の剛性が増加して局部的に脱落しにくくなる。これは、素地に溶射された溶射皮膜5自体が開口内面8の凹凸面の形状に沿って凹凸状の板となり、相互にもたれ合うことによる。図3に、形成された溶射皮膜5を平面図として示す。図3は、本実施の形態である溝12による凹凸面の場合である。図3(a)は、溝12の平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。但し、素地に溶射された開口内面8に溶射された溶射皮膜5は、全体として円筒形状となるが、ここでは簡略化し、部分的に平面状に展開した図で説明する。この溶射された溶射皮膜5は、素地上にいわゆる「折板」を形成する。折板とは、例えば、屏風のように、平板を折り曲げて立体的な形状としたものをいう。このように平板を立体的にすることで、図3に示すように、例えば、複数の傾斜面13,14,15が連続して構成される。この折板により、例えば、傾斜面14の溶射皮膜5の一部に剥離部16が生じた場合、図中に示すY方向には、連続した波形(A−A断面に示す)の板により剥離部16が保持され、図中に示すX方向には、隣接する傾斜面13及び15がもたれあって剥離部16の傾斜面14を保持する。つまり、この折板により、溶射皮膜5自体の面外の剛性が増加して局部的に脱落しにくくなるという効果が生じる。
【0033】
開口内面8が平滑面の場合、開口内面8に溶射された溶射皮膜5は、上述したように「溶射皮膜5は、膜内部に気孔を有するスポンジのような構造」であるため溶射中に脱落する場合がある。しかし、開口内面8を折板としたことで、複数の傾斜面(例えば、13,14,15)が構成され、上述した折板による効果で溶射皮膜5の脱落が防止できる。この立体的な効果は、この折板の場合だけではなく、アーチ状の板を構成することによるアーチ効果、球面状の板を構成することによるシェル効果等においても同様な効果が生じる。そこで、これらの効果を「立体的効果」と総称する。つまり、開口内面8に凹凸面を形成することで、この「立体的効果」が発生し、溶射された溶射皮膜5は、それ自体で一体的な強度や面外の剛性が増加する。この効果により、溶射皮膜5の脱落が防止できる。従って、開口内面8に凹凸面は、面内に連続する凹凸であれば、この「立体的効果」が発生する。
【0034】
第3の特徴は、開口内面8を凹凸面とすることで、平滑面である場合と比べて、堆積した溶射皮膜5が容易に除去できる。つまり、溶射皮膜5が、開口内面8に堆積した場合、溶射皮膜5は、冷却による収縮により素地との密着力が低下するが、第2の特徴から、溶射皮膜5全体が、一体となった塊として素地から剥離しやすくなる。また、第1の特徴から、元々素地への密着力が平滑面の場合に比べて低いことが、この一体としての剥離を促進することになる。
【0035】
(実施例)
シリンダブロック2のシリンダボア3に内径79mm、厚み10mmの溶射用マスキング治具1を取り付けて、プラズマ溶射及びアーク溶射を行い、溶射中の皮膜の剥離によるスパッタの発生の有無、及び溶射後の皮膜剥離の容易性について確認した。下記の表1にその結果をまとめた。表中の「実施例」は、本実施の形態である、開口内面8に螺旋状に溝12を設けた場合であり、「比較例」は、従来技術である、開口内面8を平滑面とした場合である。
【0036】
【表1】

【0037】
本実施の形態である実施例1,3,4では、溶射用マスキング治具1として機械構造用炭素鋼(S45C)を用い、溶射用マスキング治具1の内径の面粗度(Rz)を変えた。一般に、面粗度を上げると密着力が増加し、面粗度を下げると密着力が減少する傾向がある。結果としては、面粗度にかかわらず、溶射用マスキング治具1からの皮膜剥離によるスパッタは発生せず、また、溶射後の溶射用マスキング治具1からの剥離容易性についても容易であるとの結果となった。
【0038】
一方、従来技術である比較例の場合、溶射用マスキング治具1の材料として、アルミニウム(A7075)を用いた場合(比較例2)や、カーボンを用いた場合(比較例6)では、溶射用マスキング治具1からの皮膜剥離によるスパッタが発生した。また、比較例7のように溶射用マスキング治具1の内径の面粗度(Rz)を上げすぎると、溶射後の溶射用マスキング治具1からの剥離が困難となった。さらには、比較例5の場合には、溶射後の溶射用マスキング治具1からの剥離容易性について、一部除去困難という結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る溶射用マスキング治具の1つの実施形態の概略の構成を示す断面図である。
【図2】溶射用マスキング治具の開口内面の実施形態を示す部分断面図である。
【図3】溝により凹凸面を形成した場合の溶射皮膜の形状を示す平面図及び断面図である。
【図4】従来の溶射用マスキング治具の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 溶射用マスキング治具、2 シリンダブロック、3 シリンダボア、4,5 溶射皮膜、6 開口、7 溶射ガン、8 開口内面、9 端部表面、10 壁面、11 溶射フレーム、12 溝、13,14,15 傾斜面、16 剥離部、17 環状溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックのシリンダボアの壁面に溶射ガンにより溶射皮膜を形成する際に、シリンダブロックの端部表面に設けられ、シリンダボアと同軸の円筒状の開口を有し、シリンダブロックの端部表面への溶射皮膜の付着をマスキングする溶射用マスキング治具において、
溶射ガンにより溶射皮膜が付着する円筒状の開口の内面は、凹凸面であることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項2】
請求項1に記載の溶射用マスキング治具であって、開口の内面の面粗度(Rz)は、略20μmから略70μmの範囲内であることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶射用マスキング治具であって、開口の内面の断面は、凹部と凸部とが交互に連続する略山形の溝から成ることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の溶射用マスキング治具であって、開口の内面の断面は、凹部と凸部とが交互に連続する略台形の溝から成ることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の溶射用マスキング治具であって、その溝は、開口の内面に沿った複数の環状の溝であることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の溶射用マスキング治具であって、その溝は、開口の内面に沿った螺旋状の溝であることを特徴とする溶射用マスキング治具。
【請求項7】
請求項6に記載の溶射用マスキング治具であって、開口の内面には、ネジ山の形状の溝が螺旋状に設けられていることを特徴とする溶射用マスキング治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−314824(P2007−314824A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143915(P2006−143915)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】