説明

溶接方法

【課題】 溶接方法を提供する。
【解決手段】 第1ルートパスにGTAW設備(20)および水素含有シールドガスを使用して非ステンレス鋼ワークピース(12)のための溶接方法が、275未満、好ましくは100未満の湿分浸透率を有するエラストマー材料で製造されたホースまたは導管(30)を備えているシールドガス供給装置を使用し、且つ少なくとも、タングステンおよび酸化ランタン、好ましくは、タングステン、酸化ランタン、酸化イットリウムおよび酸化ジルコニウムを備えているタングステン電極(23)組成物を使用することにより改良される。水素含有シールドガスを供給するエラストマーホース(30)を通る湿分浸透を防ぐことにより、ルートパス溶接部上の第2のパス溶加材溶接中の溶融された溶接金属の中とりを無くす。電極の寿命は、タングステン化合物を使用して高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法に関し、詳細には、シールドガスタングステンアーク溶接(GTAW)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1のパスすなわちルートパス中に溶加材ワイヤおよび水素-アルゴン(または他の不活性ガス)シールドガスを使用し、次いで次の溶加材パス中に無水素不活性ガスを使用するGTAW設備を使用して開先調製継手に沿って鋼ワークピースを突合せ溶接するための改良溶接方法が、1997年11月11日に発行された米国特許第5,686,002号(この特許はここに記載され請求される本発明と共通に所有されている)に開示されている。
【0003】
米国特許第5,686,002号に記載の方法によれば、厚いシートまたは管状の鋼金属ワークピースに対する媒体は、小さい隙間を置いて互いに突合わされるように接合されるべき縁部を面取りすることにより調製される。次いで、従来の自動(半自動を含む)または非自動化GTAW設備と、溶加材ワイヤと、好ましくは95/5アルゴン−水素混合物で構成されるシールドガスとを使用して行なわれる。
【0004】
このようなワークピース、特に、炭素鋼製のワークピースの好首尾な溶接は、水素汚染が起こると、このような金属について使用される従来の溶接手順において脆化および多孔度の問題が出会うため、炭素鋼溶接物への水素の侵入に対する抑制に因り、本来、疑わしい。
【0005】
他方、ルートパス中の水素の存在が、シールドガス混合物中の水素で得られる高められた加熱効果のために、開放ルートを有する面取りされた縁部を使用して調製された直径の大きいチューブおよび管のような炭素鋼ワークピースを接合する溶接機が直面する溶け込み、溶接プールの安定性、清浄性および他の問題を解決することが理論化された。
【0006】
米国特許第5,686,002号に記載のような解決法は、ルートパスのためののみにアルゴン/水素混合物を使用し、次いで、次のパスのために無水素不活性ガス混合物を使用することであり、それによりいずれの遊離水素を溶接物から追い出し、そして水素脆化を受けない健全な非多孔性溶接部を生じる。実際、炭素鋼ならびにクロム-モリブデン鋼のような高強度の鋼を伴う試験の結果、この新規な手順を使用してシールドガス中の水素の悪影響の無いこのような溶接部が得ることができることを示した。米国特許第5,686,002号(そこに記載の溶接方法のより詳細な説明について参照によりここに全体的に組み入れられる)を参照すればよい。
【0007】
米国特許第5,686,002号に記載の方法を使用して生じられた溶接部は健全であって、良質なものであるが、説明を初めに無視した炭素鋼を溶接するためにこの方法を実施すると、予期されない現象が認められた。
【0008】
詳細には、ルートパス上に第2の溶接パスを行なうと、GTAWトーチ設備の電極およびガスレンズを汚染することにより、溶接プール領域における溶融金属の突然の事実上爆発的な噴火が、溶接方法を中断するように十分な頻度および強さで生じた。噴火は、溶接が継続することができる前に、修理または取替えを必要とする程度まで、電極およびガスレンズに溶接金属を実際に付着させるものと観察された。この現象は、第2のパス「ドライウォッシュ」(溶加材無しの溶融溶接)が行なわれている間にも観察された。
【0009】
溶接中の溶接部におけるいずれかの種類の汚染、特に、湿分および酸素汚染の回避を含めて、あらゆる許容可能なGTAW基準および規格に応じて、ルートパス溶接および被覆または溶加材溶接が厳密に行なわれる場合には、説明が容易ではなかった。GTAW装置の設備すべてが、シールドガス源と同様に検討された。電極は、初めは、疑わしき物であるが、因果関係要因として無効であるとわかった。ルートパスの固化溶接金属における潜在的に爆発的な物質またはガスが存在することになる溶接中に生じられる要素の可能な汚染と同様に、可能な爆発的化学汚染がすばやく除外された。溶加材溶接シールドガスの混合物の変化は、供給されたときのシールドガスが問題の源であることを示さなかった。また、ワークピースの予熱を伴う実験により、溶接部における湿分が除外された。
【0010】
結局、ルートパスの固化溶接金属における小さいポケットまたはセルにおそらく捕獲される或る種類の過熱ガスから、すなわち、プールの前縁部がポケットまたはセルに接近してポケットまたはセルを取り囲む金属領域を加熱すると、周囲の金属の溶融が起こるときに、溶融溶接金属の強い中ちりにおいて過熱且つ加圧されたガスが激しく膨張するまで、強く加圧される過熱ガスから、第1の溶加材または被覆パス中の溶融溶接金属を含む爆発事態が生じてしまうことが理論化された。ルートパス中の水素の使用の結果、初めにある程度の多孔性が生じ、この多孔性が、次の被覆または溶加材溶接パス中に除去されることが理論化された。更に、主としてアルゴンおよび少量の遊離酸素の小さいポケットの存在は、ルート溶接物上の第1の溶加材パス中に観察される噴火の激しい性質の原因となり難い。
【0011】
この不可思議は、更なる研究が、どういうわけか捕獲された湿分がルートパス溶接部のセルまたはポケットに収容される可能性に向けられるまで、未解決のままであった。シールドガスおよび溶接部における湿分汚染を回避するためにあらゆる事前対策が取られた場合の始めの研究で、さまよう湿分がセルまたはポケットに如何に留まるかは、想像されることができなかった。他方、捕獲された湿分がセルに収容された場合、少なくとも、これは、第2のパス中に水蒸気へ過熱されるセルにおける捕獲蒸気が如何に観察された噴火を引起こすかの原因となる。
【0012】
しかし、湿分が如何に溶接領域に達したかは、解決すべき問題を残した。
【0013】
溶接金属の中ちり問題に関する研究中に発明者により検討された米国特許第2,905,805号は、35%水素を含有するアルゴン-水素シールドガス混合物を使用したステンレス鋼のGTAW溶接中に生じられる湿分ポケットについて出会う難点を示した。この特許によれば、溶接中の水素および酸素の化学的化合は、溶接物の孔に固定される湿分を生じるものと思われ、この特許で提案された解決法は、溶接部のところでシールドガス中に存在する水素の量を制限し、且つ溶接具の前進速度を調整することであった。
【0014】
この理論は、GTAW設備および95/5アルゴン−水素シールドガス混合物により炭素、クロム-モリブデンおよび他の非ステンレス鋼の溶接に関してもっともらしいと思われなかった。第1に、溶接部を常に無酸素に維持するシールドガス系のまさにその性質により、溶接部における酸素汚染が存在しないものと思われた。他の原因のよる溶接金属におけるセルまたはポケットの可能な発生にもかかわらず、溶接金属に湿分を生じるように溶接中に消費されなかったシールドガス中のわずかな湿分と化合するのに不十分な酸素があるだけであった。炭素鋼溶接部は、ステンレス鋼溶接部よりかなり大きい程度まで多孔性を受けることが知られているが、米国特許第5,686,002号の方法により行なわれた炭素鋼溶接部の孔のセルに湿分が如何に存在するかは、容易には説明できない。
【0015】
そこで、湿分と、多分、酸素との可能な源としてのシールドガス供給系に注意が集中された。恐らく、溶接部を湿分および酸素汚染の無い状態に維持するように意図された物質、つまり、シールドガスが、それ自身、あらゆる事前対策にもかかわらず、有害な汚染を運ぶことが理論化された。
【0016】
シールド賀詞貯蔵タンク、継手、供給ホース、およびシールド賀詞混合物の供給および送出しに使用される溶接ヘッドは、すべて、汚染性の湿分および酸素を可能な源について詳細に検査された。それでも、このような要素の源は、発見を逃れた。
【0017】
そこで、米国特許第5,686,002号より実施されるGTAW溶接手順中、溶接部を汚染する水素および酸素の可能な源として、エラストマーシールドガス供給ホースが検査された。ホースは、使用中、GTAW溶接のためのすべての規格を満たしたが、溶接ガス供給用途に利用可能な種々のプラスチック、ゴムおよび他のエラストマーホース材料が、ホースを構成するのに使用される材料および他の要因に応じて、ホースの壁部を通る種々の程度のガス浸透または拡散を受けることが取得された。そこで、実験の結果、前述のように反応する溶接部のセルまたはポケットにおける湿分の見込みのある源が、ルートパス溶接部のセルまたはポケットに捕獲されるのに十分な程度まで大気からの湿分蒸気がホース壁部を通って浸透するか或いは拡散するのを許容するエラストマーシールドガス供給ホースであることが発見された。次の溶接パス中の加熱で、湿分は、過熱し、観察された激しい影響を生じる。溶接金属の中ちり事態に対する解決法が、かかる中ちりから生じる不都合を回避するのに必要とされていた。
【0018】
二次要因として、GTAW設備に従来使用されていたタングステン電極が、95/5アルゴン−水素混合物を使用している米国特許第5,686,002号による溶接方法に使用中に厳しく悪化することが観察された。電極の寿命が高シールド環境を含む正常な或いは「清浄室」環境溶接部である場合の95/5アルゴン-水素シールドガスを使用するステンレス鋼溶接手順と異なって、前記特許による方法は、必ずしも「清浄な」または無菌の溶接部を生じるように意図されていない環境における溶接を含んでいた。これは、代表的には、ステンレス鋼「清浄室」溶接が行なわれる場合、ほとんど重要ではない。何故なら、かかる溶接が比較的低いアンペア数および熱入力を使用しており、溶接が、例えば、炭素鋼板および重壁管またはクロム−モリブデンのような他の鋼を含む代表的な溶接手順より短い持続時間のものであるからである。「清浄室」方法では、使用されるタングステン電極におけるドーピング剤は、完全に蒸発しなくてもよく、それにより使用中、電極への酸化物の酸化および凝縮をできるだけ減少させる。他方、米国特許第5,686,002号による溶接方法中に、炭素、クロム−モリブデンおよび他の非ステンレス鋼とともに使用されるタングステン電極は、多分、長い溶接時間、シールドガス中の水素による高い熱入力、電極上の酸化物の凝縮、電極の位置における溶接部の汚染および未確認の原因により、短い寿命を示したか、或いは短い寿命を示し、且つ頻繁な間隔での交換を必要とすることが期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
明らかに、一般に部分水素シールドガスを使用している、特に炭素鋼、しかし任意の非ステンレス鋼を含む溶接方法におけるタングステン電極の短い寿命に対する解決法が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、米国特許第5,686,002号によるGTAW溶接装置および技術を使用して、開先継手予備部を有する非ステンレス鋼金属ワークピースを突合せ溶接する方法であって、溶接装置の全体としてシールドガス供給ホースまたは供給装置への湿分および好ましくは酸素の浸透を防ぐシールドガスエラストマーホース供給装置を使用して、ルートパスの溶接が行なわれる突合せ溶接方法である。
【0021】
好ましくは、0ないし275、好ましくは100未満の(下記の説明において定義されるような)湿分拡散または浸透率を有するエラストマーシールドガス供給ホースが選択される。エラストマー供給ホースの酸素浸透率は、より寛容であってよいが、好ましくは、好適な湿分浸透率と同じ範囲にある。
【0022】
好ましくは、本発明は、重量比で
タングステン 98.5%
La 1.3+/-0.1%
0.1%
ZrO 0.1%
よりなる電極をGTAW方法のための溶接電極として使用することを含む。
【0023】
任意に、タングステン98.5%および酸化ランタン1.5%よりなる電極が使用されてもよい。
【0024】
前述の電極組成は、米国特許第5,686,002号による基本的な溶接方法を行なうときに、高められた電極寿命のために前述のシールドガス供給ホース材料を使用することなしに使用されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
米国特許第5,686,002号に記載のような従来の方法によれば、図面を参照して説明すると、突合せ溶接されるべき非ステンレス鋼(例えば、炭素鋼)金属ワークピース10、12は、溶接されるべきワークピースの端部が全開先ベベル角度Bを与えるように面取りされており、ワークピース10、12の各端部分は、B/2の角度で面取りされていた。図示のようなワークピース10、12は、管状の金属部分であるが、本発明の基礎をなす原理は、プレートワークピースに対しても同様に利用されることができ、この場合、ワークピース10、12の突合せ部分は、ワークピース間に適切な全ベベル角度Bを有するように調製される。
【0026】
更に、米国特許第5,686,002号の方法によれば、ワークピース10、12の端部分は、溶接手順に関連された溶接形状およびワークピース金属のためにGTAW溶接機からの適切な熱入力(アンペア数)を使用してワークピース間の良質の溶接溶け込みを確保するためにワークピースのルート端部間に一様な隙間Gを与えるように寸法決めされた好ましくは最小厚さのランド厚さL(図2)を残すように面取りされていた。代表的には、溶接操作中、母材合金に対する有害な熱作用を最小にするために、GTAW設備のための最小の必要なアンペア数設定を使用して継手のルート領域においてワークピース間で第1またはルートパスが行なわれることができるために、最小のランド厚さが望ましかった。
【0027】
ワークピース継手が調製された後、ワークピース10、12は、これらの間の少なくともルートパス溶接の完了時に固化された溶接金属の望ましくない熱圧縮応力を防ぐように極めて近接されていた。また、溶接中、溶加材が開放隙間を通るのを防ぐために、溶加材ワイヤの直径より大きい隙間Gが回避されるべきであった。隙間Gの寸法は、母材金属および溶加材ワイヤの冶金と、ワークピースの肉厚と、ワークピースの端部間の収縮可能性との考慮事項に依存していた。
【0028】
米国特許第5,686,002号による溶接手順は、溶加材ワイヤおよびシールドガスが供給された従来のガスタングステンアーク溶接装置すなわち「GTAW」溶接機を使用するものと記載されている。他方、その時、従来の手順によれば、開放ルート面取り継手を溶接するために、かかるGTAW溶接機の使用が推薦されていなく、代わりに、推薦されている手順は、GTAW溶接設備が使用されるべきであるときに図3に示されるような「J」型端部溶け込みを使用することであった。ワークピースのこのような「J」状の予備端部分のルート領域においてワークピース間の第1の溶接すなわち「ルート」パスを行なうとき、一様な良好の溶接溶け込みおよび補強を確保するために隣接したワークピース間の図3に示されるような規定されたランド厚さL’の閉鎖ルートまたは「ジャムアップ継手」を使用して、GTAW溶接設備によるルート溶接パスが行なわれるべきであると思われていた。
【0029】
他方、図1および図2に示されるような開先継手が開放ルートを除去するように閉鎖されるなら、面取りされたワークピースの端部間の溶接金属の収縮により誘発される応力が、特に炭素鋼ワークピース間のルート領域に不良質の溶接部を引起こす。前述のように、これらの問題は、両者間に開先角度aの傾斜面を有するワークピース16、18間の閉鎖ルート継手14と、溶接継手領域におけるいずれの変化にも敏感である自動化溶接機の要件を満たす正確なルート端部のランド厚さおよび形状とを与える図3に示されるような溶接継手領域のための「J-予備部」を使用することにより解消されることができた。
【0030】
しかしながら、金属導管および継手産業の或る分野において、37.5度で切込まれた開先を備えて溶接用にすでに調製された予備面取り端部分を導管および継手に備えることが従来法であった。導管および継手の端部分16、18に図3に示されるようなJ-予備部14を設けることは従来法ではなかった。このようなJ-予備部は、通常、溶接に先立って現場で用意されており、手順は、厄介で、高価であったし、今でもそうである。実際、多量生産状況において自動化溶接機が使用されることができるために、まっすぐな面取り端部分をJ-予備部に再調製することは普通ではなない。
【0031】
米国特許第5,686,002号に記載のように、下記の手順が利用されるなら、溶加材ワイヤおよびシールドガスが供給されるGTAW溶接機を使用して開放ルート開先継手を首尾よく溶接することができることが発見された。ワークピースは、図1に示されるように、ワークピースの端部間に全開先角度Bを与えるように図2に示されるようにB/2の角度で切込まれたまっすぐな開先端部継手を備えて調製された。開先は、図2に示されて以上で説明したように所望の所定端部ランドLを有するように調製された。目的は、自動化溶接機を適切にプログラミングして、溶接部における母材の溶加材金属に対する有害な冶金的影響なしに母材の良好な溶け込みを確保する程度に熱入力(溶接機のアンペア数設定)を維持することができながら、継手のルート領域においてワークピース間のルートパス溶接を行なうことができるように、できるだけ一様で小さい端部ランドを形成することである。
【0032】
次いで、ワークピースは、それらの隣接したルート端部間に開放隙間Gを設けるように合わせられた。Gの値は、Gの最小の値を定める溶接金属の熱収縮に因るワークピース端部間の応力または歪を防ぐように、且つ隙間Gの最大の値を定める自動化溶接中のワークピース間の隙間を溶加材金属ワイヤが通るのを回避するように、選択された。
【0033】
図2に示されるように継手領域の調製した後、図4に示されるようなGTAW溶接設備を使用して溶接が行なわれた。図4には、軌道GTAW溶接機20が、ワークピース10、12(ワークピース12は図4で見えるだけである)間の面取りされた端部継手領域において手順を行なうものとして概略的に示されている。GTAW溶接機20は、従来のものであって、ワークピース10、12と電極との間に溶接アークを設定し且つ維持するために電源24から電線路23を経て電力が供給された非消費性タングステン電極22を有していた。電源は、従来のGTAW用途により特定のワークピース間の各溶接パスのためのコンピュータプログラムにより作動される種々の制御装置を備えていた。
【0034】
GTAW溶接機20は、この例では、電源ユニット24の制御下でシールドガス供給または送出し管路30を経て入口導管28を通してシールドガスを受入れるハウジング26を有していた。このシールドガスは、代表的には、不活性であって、図4にAで示された適切な容器または「ボトル」に貯留されたアルゴンであった。公知の原理による溶接手順では、他のシールドガスが利用されることができ、他のガスの供給は、図4に示されるように電源24を介して直接に制御されるか、或いは電源装置の外側の装置により独立的に制御された。
【0035】
特許第5,686,002号に記載の方法によれば、アルゴンおよび水素シールドガスの市販の混合物が、咬合物供給容器Mから電源24を経てGTAW溶接機20に供給され、また電源は、供給源Aからのアルゴンシールドガス単独の供給を制御した。
【0036】
溶接プログラムの要件に応じて供給リール34を駆動するモータの作動を調整する電源24の制御下で、溶加材ワイヤ32が、供給リール34から溶接部に自動的に供給された。
【0037】
かくして説明した例におけるGTAW溶接機20は、リング40を溶接機20のガイドトラックとして使用して、電源24の制御下で適切な回転駆動機構38によって溶接されるべき継手領域のまわりに軌道的に駆動された。
【0038】
方法の不可欠の要素は、開放隙間ルートパス溶接を行なうときにシールドガスの成分として水素を使用することであった。溶接中、GTAW溶接機20には、ワークピース10、12間の開放隙間ルートパスのための電源24の制御下で水素含有シールドガスが供給され、その一方、溶接部には、溶加材ワイヤ32が供給された。溶加材ワイヤ32の組成は、ワークピースの組成と冶金学的に対応していた。また、GTAW溶接のための公知の原理および基準によれば、入口28を通して供給され、シールド26により溶接部に搬送されたシールドガスは、空気中の酸素または湿分を含めて周囲の雰囲気に含有された他の不純物または汚染物と反応することから溶融溶接金属を保護するために溶接部における保護雰囲気をもたらすべきであった。
【0039】
好ましくは、37.5度の開先端部の溶け込みと、0.000ないし0.254mm(0.000ないし0.010インチ)のランド厚さと、ルート領域における管端部間の0.889mm(0.035インチ)の隙間とを有する直径10.16cm(4インチ)の中間肉厚の炭素鋼管に軌道GTAW溶接機を使用して、アルゴン95%-水素5%(「95/5」)の混合物が、効果的に作用するものとわかった。95/5混合物が好適であるが、ほぼ水素99%/アルゴン1%ないし水素90%/アルゴン10%(「99/1ないし90/10」)の混合物範囲が効果的に使用されることができるが、おそらく、減少させると、混合物の範囲が好適な95/5混合物から逸脱するので、溶接溶け込み/補強の品質の点が生じる。同様な溶接手順が、同様に、直径が0.5mm(2インチ)以上の中間ないし厚いステンレス鋼管に良好な品質のルートパス溶接部を生じるものと思われた。ルートパスは、95/5ガス混合物についての適切な電流/電圧の調整を伴って電極の揺動なしで行なわれた。
【0040】
アーク領域における水素の存在が、水素含有シールドガス無しの同様なGTAW溶接手順と比較して、溶接プールを安定化し、且つ溶接プールを開放隙間内に心出しして溶接部のルート領域における良好な溶け込みおよび充填をもたらす傾向があると言うことが認められた。
【0041】
ルートパス溶接が完了された後、GTAW溶接機は、モータ38により始動位置に戻され、好ましくはルートパス溶接部がまだ高温であるうちに、公知の軌道GTAW溶接手順によりアルゴン単独のような水素無しのシールドガスを使用して、少なくとも1つの次の「溶加材」溶接パスが素早く行なわれた。
【0042】
公知の溶接基準によれば、炭素鋼溶接手順の場合の水素含有シールドガスの使用は、少なくとも米国では、「水素脆化」と呼ばれる現象に因り溶接部における弱化を引起こす溶接継手における可能な水素閉じ込めを回避するために、従来の溶接実施において通常避けられていたし、今でもそうである。しかしながら、先に述べたように、水素含有シールドガス、好ましくは、アルゴン95%と水素5%との混合物の使用は、溶接部における水素の有利な効果により開放隙間開先が調製されたワークピースに良質のルートパス溶接部を生じるものとわかった。水素閉じ込め問題に対する解決法は、米国特許第5,686,002号に記載のように、溶接部に残留したかも知れないいずれの残留水素を除去するのに十分にルートパス溶接部を加熱するためにアルゴンを単独で使用してルートパスの上方に次の溶接パスを行なうことであった。
【0043】
上層のパスすなわち溶加材パスのためにはアルゴンが好適であるが、溶加材シールドガスが無水素であることが単に肝要であった。
【0044】
本発明の論述の前述の背景で述べたように、ルートパス上の第2のパスの溶接中の溶融溶接金属の激しい中ちりは、米国特許第5,686,002号による方法に対して障害であることが後でわかった。溶接部における汚染を回避するためにあらゆる事前対策をとったにもかかわらず、観察された中ちりの事態は、ルートパス中に溶接物に形成されたセルまたはポケットにおける湿分の可能な存在によって説明されることできるだけである。
【0045】
前記の溶接方法を行なう際、パーカーハニフィン社により製造されているデイコ7121ウエルディングのような標準アルゴンエラストマー供給ホースが使用された。研究および実験の結果、かかるホースが大気湿分および酸素の拡散を受け、その結果、大気圧に対してホースの内側の高い全圧にもかかわらず、かかるガスがホースに侵入したことを示した。更なる実験の結果、前述の中ちりの実質的な改良および事実上の除去が、0ないし275、好ましくは100未満の浸透率を有するエラストマーシールドガス供給ホースを使用することによって達成されることができたことを明らかにした。材料の浸透率は、ガスに対する材料の浸透性を示す数値であり、その偏差は周知である。Pが浸透率である場合、Pは、1つの源では、下記のように定められる。
【0046】
P=(浸透量)(フィルム厚/表面積)(時間)(フィルム間の圧力降下)
浸透率のより十分な説明については、AWSウエルディングジャーナル1999年7月号の37頁および38頁を参照すればよい。
【0047】
従来技術は、浸透性材料で製造された供給導管の内側の全圧が溶接ガスを含めて大気より高いときでも、ガスの浸透がこの供給導管を通るガスを汚染してしまうことを認めているが、米国特許第5,686,002号による溶接方法中に第2のパス溶接を行なうときに観察された溶接金属の中ちりの事態が、金属ワークピース間の開放ルート溶接継手のルートパスにおいてセルまたはポケットに捕獲される水素含有シールドガスにおける実際の湿分の浸透の原因であることは認められていなかった。従来技術のデータによれば、汚染浸透または拡散は、注入可能な医療材料およびマイクロプロセッサ製造用途などに使用される溶接飲食物提供設備および高純度の導管のような「清浄室環境」の溶接要件の状況で関連しているだけであった。水素含有シールドガスを使用した炭素鋼のような鋼に対する開放ルート調製ルートパス溶接中の湿分汚染は、一般に湿分汚染が公知の事柄である水柱溶接用途でも、第2のパス被覆または充填溶接中の公知の事柄ではなかった。
【0048】
かくして、本発明は、米国特許第5,686,002号によるGTAW溶接装置および技術を使用して開先継手予備部を有する非ステンレス鋼金属ワークピースを突合せ溶接する方法であって、溶接装置のシールドガスエラストマー供給ホース装置への湿分および好ましくは酸素の侵入を防ぐシールドガス供給装置を使用してルートパスの溶接が行なわれる方法である。
【0049】
好ましくは、0ないし276、好ましくは、100未満の湿分浸透率を有するエラストマーシールドガス供給ホースが選択される。エラストマー供給ホースの酸素浸透率は、より寛容であってもよいが、好適な湿分浸透率と同じ範囲にある。
【0050】
湿分に基づいた溶接金属中ちり問題を解消するものとわかったシールドガス供給ホースの材料の例は、種々の製造業者および販売業者から入手可能な高い極限純度のテフロン(登録商標)PFA450(パーフルオロアルコキシ)、および同様に種々の製造業者および販売業者から入手可能なThvフルオロポリマー(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンビニリデン)である。
【0051】
また、種々の製造業者および販売業者から入手可能なナイロン編組-補強PVCホース材料が、第2パス溶接工程中に観察される溶接金属中ちり事態をかなり減少させるものとわかった。
【0052】
一般に、前記の好適な浸透率を表すハロゲン化モノマーよりなるコポリマーエラストマー製のシールドガスホースまたは管が、湿分、およびおそらく、より高い浸透率を有するシールドガス供給ホースに浸透する湿分との組合せの酸素から生じる溶接金属中ちり事態を除去するか或いは実質的に除去するものと思われる。代表的には、湿分が、酸素よりも大きい程度までエラストマー材料に浸透する。
【0053】
100未満の浸透率を有することが知られている模範的なプラスチック材料としては、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)FEP(ポリテトラフルオロエチレン-co)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(密度0.907gm/cmのポリプロピレン)、サラン(塩化ポリビニリデン)およびKei-F81(ポリトリフルオロクロロエチレン)がある。
【0054】
前記模範的な材料すべたが、現在、溶接ガス供給ホース用途に利用可能であるわけではない。
【0055】
米国特許第5,686,002号による溶接方法の他の向上によれば、代表的なGTAW用途についてのすべての許容可能な基準を満たす2%トリウム化タングステン電極を使用してこの特許に記載の従来方法中に観察された比較的短いタングステン電極の寿命は、(重量で)下記の組成よりなるタングステン電極を使用することにより解消された。
【0056】
タングステン 98.5%
La 1.3+/-0.1%
0.1%
ZrO 0.1%
このような電極は、「トリ-ミックス(Tri-Mix)」として従来知られており、ドイツ、トランスタインのボルフラム工業社および溶接生成物の種々の販売業者から入手可能である。米国特許第5,686,002号による溶接方法における改良寿命を有する他のタングステン電極は、ステンレススタッフ(カリフォルニア、ウィロース)から「1.5%ランタン化タングステン」の一般名称で市販されているタングステン98.5%およびランタン1.5%の組成で製造されている。
【0057】
本発明の要旨を構成する方法の模範的な実施の形態をここに説明したが、実施の形態が単に模範例であり、添付の請求項で定められる保護範囲から逸脱することなしに前記実施の形態と同等であるか、或いはそれらとほとんど異ならない別の工程および材料を含めて、熟練した化学者または溶接者にとって公知なルーティン変形例を使用して当業者により変更されてもよいことは、理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来技術による溶接手順を行なうために用意された面取り端部継手予備部および開放ルート隙間を有する突合せ溶接されるべき1対の非ステンレス鋼管状ワークピースを示す図である。
【図2】図1に示される管状ワークピース間の面取り継手領域の拡大図である。
【図3】GTAW設備による突合せ溶接に従来使用されていた「J型」継手予備部を示す図である。
【図4】溶加材ワイヤと、アルゴン−水素シールドガスおよびアルゴンガス単独の両方とが供給される軌道GTAW設備を使用して行なわれる従来技術による溶接手順を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材ワイヤを使用するGTAW溶接機を使用して開先継手予備部を有する非ステンレス鋼金属ワークピース相互を突合せ溶接する方法であって、
ルート端部に最小のランド厚を有する開先継手領域を備えた面取りされたワークピースをそれぞれ調製することと、
隣接したルート端部間に開放ルート領域を規定し、溶接収縮に因るワークピース間の有害な圧縮応力を回避する最小の寸法と、隙間の溶加材ワイヤの溶け込みを回避する最大の寸法とを有する隙間で、調製されたワークピース継手部分を設置することと、
溶加材ワイヤと、水素1ないし10%および不活性ガスの残部を含むシールドガスとが供給されるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接で隣接したワークピースの開放ルート領域を融接することと、
溶加材および無水素シールドガスが供給されるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接部の上に少なくとも1つの追加の溶加材溶接パスを重ねることと、
を具備する方法において、
前記開放ルートパスは、シールドガス中への湿分の浸透を防ぐシールドガス供給エラストマーホース装置を使用して溶接される領域に湿分が実質的に不在である状態で行なわれる、突合せ溶接方法。
【請求項2】
0ないし275の湿分浸透率を有する供給エラストマーホースをシールドガス供給装置の一部として使用することを含む、請求項1に記載の突合せ溶接方法。
【請求項3】
100未満の湿分浸透率を有するエラストマー供給ホースを使用することと含む請求項2に記載の突合せ溶接方法。
【請求項4】
ハロゲン化モノマー製のコポリマーエラストマーで製造されたホースを供給ホースとして選択することを含む請求項3に記載の突合せ溶接方法。
【請求項5】
重量比で
タングステン 98.5%
La 1.3+/-0.1%
0.1%
ZrO 0.1%
よりなる組成物を溶接電極として使用することを含む請求項1に記載の突合せ溶接方法。
【請求項6】
タングステン98.5%および酸化ランタン1.5%よりなる組成物を溶接電極として使用することを含む請求項1に記載の突合せ溶接方法。
【請求項7】
溶加材ワイヤを使用したGTAW溶接機を使用して開先継手予備部を有する非ステンレス鋼金属ワークピースを突合せ溶接する方法であって、
ルート端部に最小のランド厚を有する開先継手領域を備えて面取りされたワークピースを調製することと、
隣接したルート端部間の開放隙間であって、溶接収縮に因るワークピース間の有害な圧縮応力を回避する最小の寸法と、隙間の溶加材ワイヤの溶け込みを回避する最大の寸法とを有する隙間とともに調製されたワークピース継手部分を設置することと、
溶加材ワイヤと、水素1ないし10%および不活性ガスの残部を含むシールドガスとが供給さてるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接で隣接したワークピースの開放ルート領域を融接することと、
溶加材ワイヤおよび無水素シールドガスが供給されるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接部の上に少なくとも1つの追加の溶加材溶接パスを行うことと、
を含む方法において、
重量比で
タングステン 98.5%
La 1.3+/-0.1%
0.1%
ZrO 0.1%
よりなる組成物を溶接電極として使用することを具備している方法。
【請求項8】
溶加材ワイヤを使用したGTAW溶接機を使用して開先継手予備部を有する非ステンレス鋼金属ワークピースを突合せ溶接する方法であって、
ルート端部に最小のランド厚を有する開先継手領域を備えて面取りされたワークピースを調製することと、
隣接したルート端部間の開放隙間であって、溶接収縮に因るワークピース間の有害な圧縮応力を回避する最小の寸法と、隙間の溶加材ワイヤの溶け込みを回避する最大の寸法とを有する隙間とともに調製されたワークピース継手部分を設置することと、
溶加材ワイヤと、水素1ないし10%および不活性ガスの残部を含むシールドガスとが供給されるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接で隣接したワークピースの開放ルート領域を融接することと、
溶加材ワイヤおよび無水素シールドガスが供給されるGTAW溶接機を使用してルートパス溶接部の上に少なくとも1つの追加の溶加材溶接パスを行うことと、
を具備する方法において、
タングステン98.5%および酸化ランタン1.5%よりなる組成物を溶接電極として使用することを具備している、方法。
【請求項9】
金属ワークピースは、炭素鋼よりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
各ワークピースの開先継手領域は、37.5度で面取りされており、継手の端部の端ランド厚は、ほぼ0.000ないし0.254mm(0.000ないし0.010インチ)の範囲であり、隙間の寸法は、約0.889mm(0.035インチ)であり、ワークピースは、厚い肉厚の管に対する媒体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前期不活性ガスは、アルゴンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前期シールドガスは、アルゴン95%および水素5%である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ワークピースは、管状であり、ルートパスおよび上層側の溶接は、前記溶加材ワイヤおよびシールドガスが供給される軌道GTAW溶接機を使用して行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ルートパスの後の第2のパス溶接は、アルゴンシールドガスを使用して行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前期金属ワークピースは、管状導管およびかかる導管用の継手である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
溶接パスのために軌道GTAW溶接機を使用することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
シールドガスへの酸素の侵入を実質的に防ぐエラストマーシールドガス供給ホースを使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
重量比で
タングステン 98.5%
La 1.3+/-0.1%
0.1%
ZrO 0.1%
よりなる組成物を溶接電極として使用することを含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−517664(P2007−517664A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541189(P2006−541189)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/035525
【国際公開番号】WO2005/051583
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(399020784)ティーアールアイ・トゥール・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】