説明

溶液の塗布装置及び塗布方法

【課題】この発明は基板に厚さが均一な機能性薄膜を形成できるように溶液を塗布することができるようにした塗布装置を提供することにある。
【解決手段】凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、ノズルを有し、ノズルから溶液を基板に滴下塗布する塗布ヘッド22と、基板と塗布ヘッドとを相対的に移動させる載置テーブル13と、載置テーブルによって基板と塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を基板に形成された凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすよう制御する制御装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発明は基板に溶液をインクジェット方式で吐出して塗布する溶液の塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、液晶表示装置の製造工程においては、ガラス製の基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスがある。この成膜プロセスでは、基板の板面にたとえば配向膜やレジストなどの機能性薄膜が形成される。
【0003】
基板に機能性薄膜を形成する場合、この機能性薄膜を形成する溶液をノズルから吐出して基板の板面に塗付するインクジェット方式の塗布装置が用いられることがある。
【0004】
この塗付装置は、基板を搬送する載置テーブルを有しており、この載置テーブルの上方には、上記ノズルが穿設された複数の塗布ヘッドが基板の搬送方向に対してほぼ直交する方向に沿って設けられている。
【0005】
それによって、搬送される基板の上面には複数のノズルから吐出された溶液が搬送方向と交差する方向に所定間隔で塗布されるようになっている。基板に溶液をインクジェット方式で塗布する先行技術は、たとえば特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−105937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶表示装置がアクティブマトリックス方式の場合、上記溶液が塗布される上記基板の板面には、透明導電膜によって電極が光学的に格子状に形成されている。それによって、基板の板面には上記電極が設けられた部分が凸部となり、設けられていない部分が凹部となる凹凸パターンが形成されている。つまり、基板の板面には上記電極によって規則的な凹凸部からなる凹凸パターンが形成されている。
【0008】
一方、上記塗布ヘッドの複数のノズルからは、所定方向に搬送される基板に対して液滴が一定のタイミングで吐出される。それによって、上記基板には液滴が規則的に塗布される。基板に塗布された液滴は流動して一体化し、所定の厚さの機能性薄膜を形成することになる。
【0009】
基板に形成される機能性薄膜は厚さが均一であることが要求される。しかしながら、規則的な凹凸部が形成された基板の板面に、塗布ヘッドに設けられた複数のノズルから液滴を一定のタイミングで吐出させて塗布すると、そのタイミングによって各ノズルから基板に塗布された液滴が基板に規則的に形成された凹凸部の凹部に集中して滴下されるということがある。
【0010】
凹部に滴下された液滴は凸部を形成する電極に邪魔されて周囲に流動し難い。その結果、凹部に滴下された液滴は電極上に十分に広がることができず、電極上でその膜厚が薄くなるので、基板に塗布された液滴によって形成される機能性薄膜は、凸部に対応する部分の膜厚が他の部分の膜厚よりも薄くなり、基板に形成された凹凸部に対応して縞状の筋やまだら模様などのムラが生じ、機能性薄膜の品質が低下するということがあった。
【0011】
この発明は、基板上に塗布された溶液によって形成される薄膜にムラが発生することを防止することができるようにした溶液の塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、基板上に塗布された溶液によって形成される薄膜にムラが発生することを防止することができるようにした溶液の塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【0013】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
この駆動手段によって上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすよう制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0014】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
この駆動手段によって上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすよう制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0015】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
この駆動手段によって上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすよう制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0016】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御して上記基板に液滴の塗布パターンを形成する制御装置とを有し、
上記制御装置は、上記塗布パターンにおける液滴の配列方向を上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすように上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御することを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0017】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
列状に配置された複数のノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御して上記基板に液滴の塗布パターンを形成する制御装置とを具備し、
上記塗布ヘッドは、上記ノズルの配置方向が上記基板に形成された上記凹凸パターンの配置方向に対して所定角度ずらして配置されていることを特徴とする溶液の塗布装置にある。
【0018】
この発明は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に、塗布ヘッドのノズルから吐出させた溶液を塗布する溶液の塗布方法であって、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる工程と、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらす工程と、
上記基板と上記塗布ヘッドとの相対的移動方向を上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらして移動させながら、上記基板に上記塗布ヘッドから溶液を吐出塗布する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布方法にある。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基板上に塗布された溶液によって形成される薄膜にムラが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態の塗布装置の概略的構成を示す正面図。
【図2】図1に示す塗布装置の側面図。
【図3】塗布ヘッドの縦断面図。
【図4】塗布ヘッドのノズルが形成された下面を示す図。
【図5】制御系統を示すブロック図。
【図6】基板に透明導電膜によって形成された凹凸パターンを示す説明図。
【図7】角度θで回転させてX方向に駆動される基板と塗布ヘッドとを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1と図2に示すこの発明の塗布装置はほぼ直方体状のベース1を有する。このベース1の下面の所定位置にはそれぞれ脚2が設けられており、上記ベース1を水平に支持している。
【0023】
図2に示すように、上記ベース1の上面の幅方向両端部には、長手方向に沿ってそれぞれ取付け板3が設けられている。これら取付け板3の上面の幅方向一端部には長手方向に沿ってそれぞれガイド部材4が設けられている。これらガイド部材4の上面には、矩形板状のXテーブル5が、その下面の幅方向両側に平行に設けられた断面ほぼ逆U字状の一対の受け部材6をスライド可能に係合させて支持されている。つまり、Xテーブル5は上記ガイド部材4に沿うX方向に移動可能となっている。
【0024】
上記ベース1の長手方向一端にはX駆動源7が設けられている。このX駆動源7はねじ軸8を回転駆動する。このねじ軸8は上記ベース1の長手方向に沿って回転可能に支持されて設けられ、上記Xテーブル5の下面に設けられたナット体9に螺合している。したがって、上記X駆動源7によってねじ軸8が回転駆動されれば、上記Xテーブル5が図1に矢印で示すように上記ガイド部材4に沿うX方向に駆動されるようになっている。
【0025】
上記Xテーブル5の上面にはθテーブル11が水平面と直交する軸線を中心にして回転可能に設けられている。このθテーブル11は上記Xテーブル5に設けられたθ駆動源12によって回転方向に駆動されるようになっている。
【0026】
上記θテーブル11の上面には載置テーブル13が設けられている。この載置テーブル13にはアクティブマトリックス方式の液晶表示装置に用いられるガラス製の基板Wが供給される。この基板Wは、上記載置テーブル13に下面が真空吸着や静電吸着などの手段によって吸着されて保持される。したがって、載置テーブル13に保持された基板Wは上記Xテーブル5とθテーブル11とによってX方向とθ方向とに駆動されるようになっている。
【0027】
図6に示すように上記基板Wの上面には、帯状の透明導電膜14が格子状に設けられている。それによって、基板Wの上面には透明導電膜14によって囲まれた部分が凹部15aとなり、透明導電膜14が設けられた部分が凸部15bとなる凹凸パターン15が形成されている。つまり、基板Wには凹部15aと凸部15bとが基板Wの長手方向及び幅方向に対して規則的に形成されている。
【0028】
上記ベース1の長手方向中途部には上記一対のガイド部材4を跨ぐように門型の支持体17が立設されている。この支持体17の両側上部には角柱からなる取付け部材18が水平に架設されている。
【0029】
上記取付け部材18にはヘッドテーブル19が上記Xテーブル5の駆動方向であるX方向と直交するY方向(図2に矢印で示す)に沿って移動可能に設けられている。上記支持体17の幅方向一側にはY駆動源21が設けられている。このY駆動源21は上記ヘッドテーブル19をY方向に沿って駆動するようになっている。
【0030】
上記ヘッドテーブル19の一側面にはインクジェット方式によって機能性薄膜である、たとえば配向膜を形成する溶液をドット状に吐出する複数の塗布ヘッド22がY方向に沿って配置されている。この実施の形態では、たとえば7つ塗布ヘッド22が千鳥状に二列で配置されている。
【0031】
図3と図4に示すように、上記各塗布ヘッド22はヘッド本体28を備えている。ヘッド本体28は筒状に形成され、その下面開口は可撓板29によって閉塞されている。この可撓板29はノズルプレート31によって覆われており、このノズルプレート31と上記可撓板29との間には複数の液室32が形成されている。
【0032】
各液室32は、ノズルプレート31内に形成された主管31Aに図示しない枝管を介してそれぞれ連通していて、上記主管31Aから上記枝管を介して溶液が各液室32に供給される。主管31Aは、一端が後述する給液孔33に接続され、他端が後述する回収孔37に接続される。
【0033】
上記ヘッド本体8の長手方向一端部には上記液室32に連通する上記給液孔33が形成されている。この給液孔33から上記液室32には機能性薄膜を形成する上記溶液が供給される。それによって、上記液室32内は溶液で満たされるようになっている。
【0034】
図4に示すように、上記ノズルプレート31には、基板Wの搬送方向に直交する方向である、Y方向に沿って複数のノズル34が千鳥状に穿設されている。上記可撓板29の上面には、図3に示すように上記各ノズル34にそれぞれ対向して複数の圧電素子35が設けられている。
【0035】
各圧電素子35は上記ヘッド本体28内に設けられた駆動部36によって駆動電圧が供給される。それによって、圧電素子35は伸縮し、可撓板29を部分的に変形させるから、その圧電素子35に対向位置するノズル34から溶液がドット状に吐出され、搬送される基板Wの上面に塗付される。したがって、基板Wの上面には、ドット状の溶液が行列状に配列されてなる塗布パターンが形成される。そして、この塗布パターンは、ドット状の各溶液が流動して濡れ広がることにより、付着し合って1つの膜となる。
【0036】
なお、圧電素子35に印加する電圧の強さを変えて圧電素子35の作動量を制御すれば、各圧電素子35が対向するノズル34からの溶液の吐出量、つまり液滴の大きさを変えることができる。
【0037】
上記ヘッド本体28の長手方向他端部には上記液室32に連通する上記回収孔37が形成されている。上記給液孔33から液室32に供給された溶液は、上記回収孔37から回収することができるようになっている。すなわち、各ヘッド22は上記液室32に供給された溶液をノズル34から吐出させるだけでなく、上記液室32を通じて上記回収孔37から回収することが可能となっている。
【0038】
図5に示すように、各塗布ヘッド22に設けられた駆動部36は制御装置41によって駆動が制御される。すなわち、上記制御装置41には、複数の塗布ヘッド22に形成された各ノズル34のX、Y座標が記憶されている。各ノズル34のX、Y座標は、たとえば各塗布ヘッド22をヘッドテーブル19に取付けた後、その塗布ヘッド22の取付け位置に基いて設定される。それによって、基板Wに対する溶液の上記Y方向に沿う吐出位置を制御することができる。
【0039】
上記制御装置41は上記駆動部36だけでなく、Xテーブル5をX方向に駆動するX駆動源7、θテーブル11をθ方向に駆動するθ駆動源11及び塗布ヘッド22が設けられたヘッドテーブル19をY方向に駆動するY駆動源21の駆動も制御するようになっている。
【0040】
つぎに、上記構成の塗布装置によって基板Wに溶液を塗布する場合について説明する。まず、基板Wを透明導電膜14が設けられた面を上にして載置テーブル13上に吸着保持する。ついで、θ駆動源12を作動させ、載置テーブル13とともに基板WをX方向に対して所定角度で回転させる。θテーブル11の回転角度θは5〜45度の範囲が好ましい。図7は基板Wを回転角度θで回転させた状態を示している。
【0041】
載置テーブル13を回転角度θで回転させたならば、X駆動源7を作動させて載置テーブル13をX方向に駆動する。つまり、基板Wを回転角度θで回転させた状態で図7に矢印で示すX方向に駆動する。
【0042】
基板WがX方向に駆動されてその基板Wの溶液が塗布される塗布領域R(図7に示す)が塗布ヘッド22の下方に到達したならば、その塗布領域Rに対応位置する複数の塗布ヘッド22の複数のノズル34から溶液を基板Wに向けて吐出させる。それによって、基板Wにはたとえば図7に示す4つの塗布領域Rに溶液が塗布されることになる。
【0043】
上記基板Wの溶液の塗布領域Rには図6に示すように透明導電膜14が格子状に設けられ、この透明導電膜14によって基板Wの板面には凹部15aと凸部15bからなる凹凸パターン15が基板Wの各辺に沿って規則的に形成されている。一方、溶液は各塗布ヘッド22のノズル34から一定のタイミングで基板Wに向けてドット状に吐出される。
【0044】
基板Wを回転させていない状態(回転角度θが0度)でX方向に駆動すると、基板Wに形成された凹部15aと凸部15bとの配置方向が基板Wの搬送方向であるX方向と同方向になる。そのため、ノズル34から一定のタイミングで吐出される液滴の吐出位置が上記凹部15aに一致してしまうことがある。
【0045】
その場合、基板Wに吐出された液滴は凸部15bに邪魔されて流動し難くなるから、液滴が流動することで塗布領域Rに形成される機能性薄膜の厚さが凹部15aに対応する部分と凸部15bに対応してムラが生じる。
【0046】
しかしながら、この実施の形態では、基板Wに溶液を塗布する際、基板Wを5〜45度の範囲で回転させてX方向に搬送するようにしている。つまり、基板Wは、基板Wの搬送方向であるX方向に対し、この基板Wの各辺に沿って規則的に形成された凹部15aと凸部15bとの配置方向を所定の角度θで傾斜させて搬送される。
【0047】
ここで、角度θは、基板WのX方向への搬送中に1つのノズル34から吐出されて基板W上に塗布されるドット状の溶液の列が、隣接して配置される2つ以上の凸部15bに跨る角度θに設定することが望ましい。この角度θは、基板Wの設計データから得られる透明電極などの凸部15bの配置間隔dと塗布領域RのX方向の寸法Rxとから、たとえば、{tanθ>(d/Rx)}の関係から求めることが可能である。
【0048】
そのため、上記X方向と交差するY方向に沿って配置された複数の塗布ヘッド22のノズル34から基板Wに向けて吐出される液滴は、その配列方向が基板Wに規則的に形成された凹凸パターン15における凹部15aや凸部15bの配置方向に対して傾いた塗布パターンで塗布される。
【0049】
それによって、液滴は、規則的に形成された凹凸パターン15のうちの凹部15aに偏ることなく、凹部15aと凸部15bとの両方の部分に塗布されることになるから、塗布された液滴の流動が凸部15bによって邪魔されることが防止される。そのため、塗布後には溶液が塗布領域Rの全体にわたって流動し、ムラの発生が防止された品質の良い機能性薄膜を形成することが可能となる。
【0050】
基板Wを上述したように塗布ヘッド22の下方に一度通過させるだけで溶液を塗布してもよいが、往復動させて溶液を塗布するようにしてもよい。基板Wを往復させて溶液を塗布する場合、往動時と復動時において、基板Wの回転角度、つまり載置テーブル13の回転角度θを変えるようにしても良い。
【0051】
往動時と復動時に、載置テーブル13の回転角度θを変えれば、往動時と復動時の塗布領域Rに対する液滴の塗布パターンを変化させることができる。つまり、往動時に液滴が塗布されない凹部15aや凸部15bにも、復動時には液滴を塗布することができる。
【0052】
そのため、基板Wを単に往復動させて溶液を塗布するだけの場合に比べ、基板Wの塗布領域Rに対して液滴を凹部15aに片寄ることなく塗布することが可能となるから、結果的に基板Wに形成される機能性薄膜のムラを防止し、品質を向上させることができる。
【0053】
基板Wの回転角度θが大きい場合、基板WのX方向と直交するY方向の最大幅寸法がノズル34のY方向に沿う配置寸法よりも大きくなることがある。そのような場合、塗布領域RをY方向に並ぶ複数の領域に分割し、分割した領域毎に溶液を塗布するようにすれば良い。たとえば、図7に示す基板Wの場合であって、ノズルの配置寸法が基板WのY方向の最大寸法よりも小さいが、前記最大寸法の1/2より大きい場合、4つの塗布領域を、基板Wの中央を通りX方向に沿う直線を境とした2つの塗布領域に分割し、2つの塗布領域のうち一方の塗布領域に溶液を塗布した後、他方の塗布領域に溶液を塗布するようにすれば良い。
【0054】
一方、基板Wの回転角度θを0度にしてX方向に駆動しながら溶液を塗布するようにしてもよい。その場合、基板WをX方向に駆動しながら、塗布ヘッド22が設けられたヘッドテーブル19をY方向に駆動する。
【0055】
それによって、基板Wが駆動されるX方向に対する、上記塗布ヘッド22の相対的移動方向が上記ヘッドテーブル19の移動速度に応じた角度で斜め方向にずれることになる。つまり、基板Wに形成された凹部15aと凸部15bとの配置方向に対し、塗布ヘッド22の移動方向が相対的に所定角度ずれることになる。
【0056】
したがって、塗布ヘッド22のノズル34から吐出される液滴が基板Wの凹部15aに集中して塗布されるのを防止することができる。この場合、基板Wを往復動させ、往動時と復動時にそれぞれ溶液を塗布するようにしてもよい。
【0057】
なお、塗布ヘッド22が設けられたヘッドテーブル19をY方向に移動させる代わりに、塗布ヘッド22に形成された複数のノズル34のうち、溶液を吐出させるノズル34を順次切り換えるようにしても良い。
【0058】
たとえば、塗布ヘッド22には20個のノズル34がY方向に沿って等ピッチ間隔で形成されているとする。これらのノズル34を配列方向に4つずつの5グループに分ける。そして、基板WをX方向に駆動させながら、各グループの右側に位置するノズル34から順に設定した、設定時間間隔で溶液を吐出させる。このとき、グループ内の左端に位置するノズル34が溶液を吐出させたら、右端に位置するノズル34に戻って溶液の吐出を繰り返す。
【0059】
このようにすることで、基板Wに対する溶液の塗布方向は、基板WのX方向への移動速度と設定時間間隔とで定まる角度の斜め方向となる。したがって、塗布パターンにおける液滴の配列方向を、基板Wに規則的に形成された凹凸パターン15における凹部15aや凸部15bの配置方向に対して傾けることができるので、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、上述した複数のノズル34のうち、溶液を吐出させるノズル34を順次切り換える代わりに、塗布ヘッド22が設けられた支持体17をY方向に対して所定の角度傾けて配置し、塗布ヘッド22の複数のノズル34の配列方向をY方向に対して所定の角度の斜め方向としてもよい。つまり、複数のノズル34の配置方向を、上記基板Wに形成された上記凹凸パターン15の配置方向に対して所定角度ずらして配置してもよい。
【0061】
なお、支持体17をY方向に対して所定の角度傾けて配置する代わりに、支持体17の取り付ける塗布ヘッド22の取付け角度をY方向に対して所定の角度傾けて取付けるようにしてもよい。
【0062】
この場合、基板WをX方向に駆動させながら、各ノズル34の下を基板Wが通過する際に、基板W上の塗布領域Rに対向して位置するノズル34からタイミングを合わせて溶液を吐出させる。このようにすることで、基板Wに塗布された溶液は、ノズル34の配列方向で定まる角度の斜め方向にノズル34の配置間隔で配列されることになる。
【0063】
したがって、この場合にも、液滴の配列方向を、基板Wに規則的に形成された凹凸パターン15における凹部15aや凸部15bの配置方向に対して傾けることができるので、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、図7で説明した例において、載置テーブル13を回転角度θで回転させる代わりに、基板Wを予め回転角度θだけ回転させた状態で載置テーブル13上に載置するようにしてもよい。この場合、制御手段としての搬送ロボット等の搬送装置を用いて基板Wを載置テーブル13に供給するときに、この搬送ロボットの保持アームを所定の回転角度θだけ回転させる等して、基板Wを載置テーブル13上に供給するとよい。
【0065】
このようにした場合でも、液滴の配列方向を、基板Wに規則的に形成された凹凸パターン15における凹部14aや凸部15bの配列方向に対して傾けることができるので、図7に示した例と同様の効果を得ることができる。
【0066】
上記一実施の形態では基板を保持した載置テーブルをX方向に駆動したが、塗布ヘッドが設けられた支持体をX方向に駆動するようにしてもよく、要は基板と塗布ヘッドとを相対的にX、Y方向に駆動できる構成であればよい。
【0067】
また、この発明を、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置に用いられるガラス製の基板Wに適用した例で説明したが、これに限られるものではなく、たとえば単純マトリックス方式の液晶表示装置に用いられるガラス製の基板にも適用可能であり、要は、凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板Wであれば適用可能である。
【0068】
また、凹凸パターン15の凹部15aと凸部15bとが基板Wの長手方向と幅方向に対して規則的に形成された例で説明したが、これに限らず、基板Wの長手方向及び幅方向と傾斜した方向に対して形成されていても良いし、基板Wの長手方向或いは幅方向のいずれかに沿って形成されていれば良い。
【0069】
また、この発明は、凹凸パターン15の凹部15aと凸部15bとが全て規則的に形成されたものに限らず、凹部15aと凸部15bの一部が不規則であっても、全体として規則的に形成されたものであれば適用可能である。
【0070】
また、凹凸パターン15の凹部15aと凸部15bとが基板Wの長手方向と幅方向に対して規則手液に形成された例において、1つのノズル34から吐出されて基板W上に塗布されるドット状の溶液の列の方向と、凸部15bとの間の角度θを45度までの範囲に設定する例を説明したが、角度θは45度までの範囲に限定されず、それ以上であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
7…X駆動源、12…θ駆動源、13…載置テーブル、14…透明導電膜、15…凹凸パターン、21…Y駆動源、22…塗布ヘッド、34…ノズル、41…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
この駆動手段によって上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすよう制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布装置。
【請求項2】
上記駆動手段は、上記基板を保持するとともに、この基板を水平方向及びこの水平方向に対して直交する軸線を中心とする回転方向に駆動可能な載置テーブルを有し、
上記制御手段は、上記載置テーブルを上記軸線を中心にして水平方向に所定の角度で回転させて駆動することを特徴とする請求項1記載の溶液の塗布装置。
【請求項3】
上記駆動手段による上記基板と上記塗布ヘッドとの相対的移動を複数回行なうとともに、それぞれの相対的移動の際に、上記制御手段によって上記相対的移動方向と上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向との角度のずれを変えることを特徴とする請求項1記載の溶液の塗布装置。
【請求項4】
凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
ノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御して上記基板に液滴の塗布パターンを形成する制御装置とを有し、
上記制御装置は、上記塗布パターンにおける液滴の配列方向を上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすように上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御することを特徴とする溶液の塗布装置。
【請求項5】
凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に溶液を塗布する溶液の塗布装置であって、
列状に配置された複数のノズルを有し、このノズルから上記溶液を上記基板に滴下塗布する塗布ヘッドと、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段と、
上記塗布ヘッドと上記駆動手段とを制御して上記基板に液滴の塗布パターンを形成する制御装置とを具備し、
上記塗布ヘッドは、上記ノズルの配置方向が上記基板に形成された上記凹凸パターンの配置方向に対して所定角度ずらして配置されていることを特徴とする溶液の塗布装置。
【請求項6】
凹凸部が規則的に形成された凹凸パターンを有する基板に、塗布ヘッドのノズルから吐出させた溶液を塗布する溶液の塗布方法であって、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させる工程と、
上記基板と上記塗布ヘッドとを相対的に移動させるときにこれらの相対的移動方向を上記基板に形成された上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらす工程と、
上記基板と上記塗布ヘッドとの相対的移動方向を上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらして移動させながら、上記基板に上記塗布ヘッドから溶液を吐出塗布する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の塗布方法。
【請求項7】
上記基板を直線方向に移動させるとともに、上記塗布ヘッドを基板の移動方向と交差する方向に移動させることで、上記基板と上記塗布ヘッドとの相対的移動方向を上記凹凸パターンの凹凸部の配置方向に対して所定角度ずらすことを特徴とする請求項6記載の溶液の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−5619(P2010−5619A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230615(P2009−230615)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2006−536963(P2006−536963)の分割
【原出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】