説明

溶着部材の溶着方法及び溶着部材

【課題】高い接着強度で溶着部材を成形体に溶着することができる方法を提供する。
【解決手段】溶着面3がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの一方の樹脂である第1の樹脂から形成されている成形体1に、少なくとも溶着面14がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの他方の樹脂である第2の樹脂から形成されている溶着部材10を溶着によって取り付ける溶着部材の溶着方法であって、第1の樹脂と同系統である樹脂からなる第1の接着樹脂層21を成形体1側に配置し、第2の樹脂と同系統である樹脂からなる第2の接着樹脂層22を溶着部材10側に配置し、成形体1の溶着面3と溶着部材10の溶着面14とを溶着させる方法であり、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22樹脂のうちの一方の樹脂が無水マレイン酸変性された樹脂であり、他方の樹脂がエポキシ基を有する樹脂であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転成形法などで成形した成形体に、溶着部材を溶着によって取り付ける溶着部材の溶着方法及び該方法に用いる溶着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の水または液体等を収容するため、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなるタンクが工場等において用いられている。このようなタンクは、例えば、回転成形法により製造されている。このようなタンクには、タンク内の液体を取り出すため、壁部に配管等を取り付けることが必要となる。
【0003】
この配管を取り付ける方法として、熱可塑性樹脂からなる継手をタンクに溶着して取り付ける方法が用いられている(特許文献1など)。
【0004】
このような継手などの溶着部材は、剛性、耐温水性、ガスバリア性などを考慮して、ポリプロピレン系樹脂などから形成される場合がある。
【0005】
しかしながら、タンクなどの樹脂成形体の表面が、ポリエチレン系樹脂から形成されている場合、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の接着性が良好でないため、高い接着強度で、タンクなどの樹脂成形体などの表面に、継手などの溶着部材を溶着によって取り付けることができないという問題を生じる。
【特許文献1】特開平7−243562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い接着強度で溶着部材を成形体に溶着することができる溶着方法及び該方法に用いられる溶着部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶着方法は、少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの一方の樹脂である第1の樹脂から形成されている成形体に、少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの他方の樹脂である第2の樹脂から形成されている溶着部材を溶着によって取り付ける溶着部材の溶着方法であって、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうち第1の樹脂と同系統である樹脂からなる第1の接着樹脂層を成形体側に配置し、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうち第2の樹脂と同系統である樹脂からなる第2の接着樹脂層を溶着部材側に配置し、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を介在させて、成形体の溶着面と溶着部材の溶着面とを溶着させる方法であり、第1の接着樹脂層を形成する樹脂及び第2の接着樹脂層を形成する樹脂のうちの一方の樹脂が無水マレイン酸変性された樹脂であり、他方の樹脂がエポキシ基を有する樹脂であることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を介在させて、成形体の溶着面と溶着部材の溶着面とを溶着させており、第1の接着樹脂層を形成する樹脂及び第2の接着樹脂層を形成する樹脂のうちの一方の樹脂が無水マレイン酸変性された樹脂であり、他方の樹脂がエポキシ基を有する樹脂である。従って、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層の間で、無水マレイン酸基とエポキシ基が反応し、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層の間に化学結合が形成されて、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を強固に接着させることができる。
【0009】
また、第1の接着樹脂層は、成形体の溶着面を形成する第1の樹脂と同系統の樹脂から形成されており、第2の接着樹脂層は、溶着部材の溶着面を形成する第2の樹脂と同系統の樹脂から形成されている。従って、成形体の溶着面と第1の接着樹脂層との間、及び溶着部材の溶着面と第2の接着樹脂層との間も強固に接着することができる。
【0010】
従って、本発明によれば、成形体の溶着面と溶着部材の溶着面との間を高い接着強度で溶着させることができる。
【0011】
本発明において、無水マレイン酸変性された樹脂としては、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂が挙げられる。また、エポキシ基を有する樹脂としては、グリシジル基含有モノマーを共重合させたポリエチレン系樹脂が挙げられる。
【0012】
無水マレイン酸変性された樹脂は、ポリエチレン系樹脂であってもよい。従って、無水マレイン酸変性されたポリエチレン系樹脂であってもよい。また、エポキシ基を有する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であってもよい。従って、グリシジル基含有モノマーを共重合させたポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0013】
本発明において用いるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、及びプロピレンを主成分のモノマーとするプロピレン共重合体が挙げられる。プロピレン共重合体としてはプロピレンと、エチレン及び/または炭素原子数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンとして具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素原子数4〜10のα−オレフィンが好ましく、特には、エチレン、1−ブテンが好ましい。
【0014】
プロピレンと他の炭素原子数4〜20のα−オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、ポリプロピレン系樹脂の耐衝撃性を改良する目的で、50%以下の添加量で他のポリマーをブレンドして使用することもできる。ブレンドに用いる樹脂としては、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの3元共重合体などが例示される。
【0015】
本発明において用いるポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、及びエチレンを主成分のモノマーとするエチレン共重合体が挙げられる。
【0016】
本発明において、第1の接着樹脂層及び第2の接着樹脂層は、それぞれ板状部材から形成されていてもよい。板状部材から形成する場合、例えば、厚み0.1mm〜30mmの板状部材として形成することができる。
【0017】
また、本発明においては、第1の接着樹脂層及び第2の接着樹脂層が予め溶着されて一体的に形成されていてもよい。例えば、第1の接着樹脂層の板状部材と、第2の接着樹脂層の板状部材とを重ね合わせ、この状態で加熱することにより接着樹脂層同士を溶着させたものであってもよい。
【0018】
本発明において、第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層は、成形体及び溶着部材の少なくとも一方の溶着面の上に予め取り付けられていてもよい。例えば、成形体の溶着面の上に、第1の接着樹脂層が溶着などによって予め取り付けられていてもよい。また、溶着部材の溶着面の上に、第2の接着樹脂層が予め溶着などによって取り付けられてもよい。
【0019】
また、上述のように、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を予め溶着して一体的に形成したものを、成形体の溶着面の上あるいは溶着部材の溶着面の上に溶着などによって予め取り付けられていてもよい。
【0020】
本発明の溶着部材は、上記本発明の方法に用いることができる溶着部材であり、第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層が予め溶着面の上に取り付けられていることを特徴としている。
【0021】
この場合、溶着面の上に第2の接着樹脂層のみを取り付けていてもよいし、第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を予め溶着して一体的に形成したものを溶着面の上に取り付けていてもよい。第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を予め溶着して一体的に形成したものを取り付ける場合、第2の接着樹脂層が、溶着部材の溶着面側に位置するように取り付けられる。
【0022】
本発明の溶着部材は、溶着部材を金型を用いて成形する際に、第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層を金型内に配置しておくことにより、第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層が予め溶着面に取り付けられているものであってもよい。すなわち、溶着部材を射出成形やプレス成形などにより成形する際、金型内に第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層を配置しておくことにより、第1の接着樹脂層及び/または第2の接着樹脂層が予め溶着面に取り付けられた溶着部材を製造することができる。
【0023】
本発明において、溶着温度は、使用する樹脂に応じて適宜設定されるものである。
【0024】
また、本発明において成形体は、少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの一方の樹脂から形成されたものであれば特に限定されるものではない。また、成形体の成形方法も特に限定されるものではないが、例えば、回転成形法などで成形された成形体を挙げることができる。このような成形体においては、上述のように、継手などを溶着によって取り付ける必要があるため、本発明をより有効に用いることができる。
【0025】
また、本発明における溶着部材は、少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの他方の樹脂から形成されているものであれば特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高い接着強度で溶着部材を成形体に溶着することができる。従って、例えば、回転成形法により成形されたポリタンクなどの成形体に、継手などの溶着部材を高い接着強度で溶着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明に従う一実施形態の溶着方法を示す断面図である。
【0029】
図1において、成形体1は、孔2が形成されている部分の近傍を図示している。成形体1は、例えば、回転成形法などにより形成されるタンクなどの容器である。このような容器には、内部の液体を取り出すための孔2が形成されている。成形体1は、例えばポリエチレン系樹脂などにより回転成形法で成形することができる。また、内部をポリプロピレン系樹脂から形成し、外部をポリエチレン系樹脂から形成した多層成形体であってもよい。
【0030】
図1において、溶着部材10は、成形体1の孔2の周辺部である溶着面3に取り付けるための部材である。本実施例において、溶着部材10は、継手として形成されている。
【0031】
溶着部材10は、第1のフランジ部11と第2のフランジ部12を有している。第1のフランジ部11は、成形体1の溶着面3と溶着される溶着面14を有している。また、成形体1の孔2に挿入される筒状部13を有している。
【0032】
第2のフランジ部12は、継手である溶着部材10に配管を取り付けるための部分であり、配管を連結して取り付けるためのボルト等を通す孔16が、第2のフランジ部12に形成されている。
【0033】
また、溶着部材10の第2のフランジ部12には、補強のためのリブ15が形成されている。
【0034】
溶着部材10は、成形体1の孔2に、筒状部13を挿入し、孔2の周囲の溶着面3に、溶着面14を溶着することにより、成形体1に溶着によって取り付けることができるものである。
【0035】
本実施例において、溶着部材10は、ポリプロピレン系樹脂から射出成形等によって形成されている。従って、溶着部材10の溶着面14は、ポリプロピレン系樹脂から形成されている。
【0036】
成形体1の溶着面3はポリエチレン系樹脂から形成されており、溶着部材10の溶着面14はポリプロピレン系樹脂から形成されている。従って、成形体1の溶着面3に溶着部材10の溶着面14を直接溶着により取り付ける場合には、ポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を溶着させることになる。ポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を直接溶着させると、高い接着強度が得られない。本実施形態においては、本発明に従い、第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22を介在させて、成形体1の溶着面3を溶着部材10の溶着面14を溶着させている。以下、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22について説明する。
【0037】
第1の接着樹脂層21は、溶着面3と同系統の樹脂であるポリエチレン系樹脂から形成されている。第2の接着樹脂層22は、溶着面14と同系統の樹脂であるポリプロピレン系樹脂から形成されている。
【0038】
本発明においては、第1の接着樹脂層21を形成する樹脂及び第2の接着樹脂層22を形成する樹脂のうちの一方の樹脂が無水マレイン酸変性された樹脂であり、他方の樹脂がエポキシ基を有する樹脂である。本実施形態では、第1の接着樹脂層を形成する樹脂は、エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂であり、第2の接着樹脂層22を形成する樹脂は、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂である。エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂として、本実施形態では、グリシジル基含有モノマーを共重合させたポリエチレン系樹脂を用いている。
【0039】
本実施形態において、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22は、それぞれ板状部材として形成されている。第1の接着樹脂層21はリング状の板状部材であり、中心部に孔21aが形成されており、この孔21aに溶着部材10の筒状部13が通される。第2の接着樹脂層22もリング状の板状部材であり、中心部には孔22aが形成されており、この孔22aに溶着部材10の筒状部13が通される。
【0040】
本実施形態においては、上記のような第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22を、成形体1の溶着面3と溶着部材10の溶着面14の間に介在させて、成形体1に溶着部材10を溶着させる。
【0041】
第1の接着樹脂層21は、成形体1の溶着面3と同系統の樹脂であるポリエチレン系樹脂から形成されているので、成形体1の溶着面3に高い接着強度で第1の接着樹脂層21を溶着させることができる。
【0042】
また、第2の接着樹脂層22は、溶着部材10の溶着面14と同系統の樹脂であるポリプロピレン系樹脂から形成されているので、第2の接着樹脂層22は、高い接着強度で溶着部材10の溶着面14に溶着させることができる。
【0043】
また、第1の接着樹脂層21は、エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂が形成されており、第2の接着樹脂層22は、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂から形成されている。従って、第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22を溶着させると、第1の接着樹脂層21の樹脂中のエポキシ基と、第2の接着樹脂層22の樹脂中の無水マレイン酸基とが反応し、化学結合が形成される。このため、第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22とを高い接着強度で溶着させることができる。
【0044】
従って、本実施形態においては、ポリエチレン系樹脂からなる溶着面3と、ポリプロピレン系樹脂からなる溶着面14との間に、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22を介在させることにより、高い接着強度で成形体1と溶着部材10とを溶着させることができる。
【0045】
図2は、本発明に従う他の実施形態を説明するための断面図である。
【0046】
図2に示す実施形態においては、第2の接着樹脂層22が、予め溶着部材10の溶着面14に取り付けられている。このような溶着部材10は、溶着部材10を金型で成形して作製する際に、金型内の所定の位置に第2の接着樹脂層22を配置しておき、この状態で金型内にポリプロピレン系樹脂を注入し成形することにより、第2の接着樹脂層22と溶着部材10とを一体的に形成することができる。
【0047】
このような溶着部材10においては、第2の接着樹脂層22と溶着部材10の溶着面14は既に溶着された状態であるので、成形体1の溶着面3との間に、第1の接着樹脂層21を介在させることにより、成形体1と溶着部材10とを溶着させることができる。
【0048】
図3は、本発明に従うさらに他の実施形態の溶着方法を示す断面図である。
【0049】
図3に示す実施形態においては、第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22が、溶着部材10の溶着面14に予め一体的に取り付けられている。
【0050】
本実施形態の溶着部材10は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0051】
第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22を、予め溶着し、第1の接着樹脂層21と第2の接着樹脂層22が一体的に形成された板状部材23を形成する。このような板状部材23を、溶着部材10を成形するための金型内の所定の位置に配置し、この状態で金型内にポリプロピレン系樹脂を注入して、溶着部材10を成形する。これにより、溶着部材10の溶着面14に、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22が一体的に取り付けられた溶着部材10を作製することができる。
【0052】
このような溶着部材10を用いれば、成形体1の孔2に、溶着部材10の筒状部13を挿入し溶着することにより、第1の接着樹脂層21及び第2の接着樹脂層22を介在させて成形体1と溶着部材10とを溶着させることができる。
【0053】
本実施形態によれば、取り扱う部品点数を少なくすることができるので、より容易に本発明の溶着方法を実施することができる。
【0054】
従って、本発明に従う溶着部材を用いることにより、より容易に本発明の溶着方法を実施することができる。
【0055】
<接着強度の評価>
本発明の溶着方法により、高い接着強度が得られることを明らかにするため、以下のようにして接着強度を評価した。
【0056】
(樹脂の種類)
ポリプロピレン系樹脂としては、無水マレイン酸変性したポリプロピレン(以下MAPP、三井化学社製、商品名「アドマーQF500」)を用いた。
【0057】
また、ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレンホモポリマー(以下PE、株式会社プライムポリマー社製、商品名「UZ3550R」、グリシジルメタクリレート(GMA)を6重量%含むポリエチレンコポリマー(以下PE−6wt%GMA、住友化学社製、商品名「ボンドファースト2C」)、及びグリシジルメタクリレート(GMA)を12重量%を含むポリエチレンコポリマー(以下PE−12wt%GMA、住友化学社製、商品名「ボンドファーストE」)を用いた。
【0058】
(試験片の作製)
上記各ポリマーをプレス成形し、それぞれの単層板を作製した。各単層板を、以下の(1)〜(3)の組み合わせで重ね合わせ、プレス成形により接着した。プレス成形条件は、温度:200℃、圧力:4MPa、時間:30分とした。重ね合わせた単層板の一部の領域において二枚のアルミニウム箔を挿入しておき、この部分については互いに溶着しないようにした。この部分は剥離強度を測定する際のチャックの掴み部分として用いた。
【0059】
(1)MAPPとPE
(2)MAPPとPE−6wt%GMA
(3)MAPPとPE−12wt%GMA
上記のようにプレス成形したものを打ち抜き、剥離強度のテスト部分が幅15mm、長さ110mmの短冊状となるようにした。
【0060】
(剥離強度の測定)
上述のように、打ち抜いた試験片を用い、T型剥離法によって引張試験機(INTESCO model 210B)を用いて剥離強度を測定した。引張速度は10mm/分とした。
【0061】
図4は、各試験片についての、クロスヘッドストロークと剥離強度との関係とを示す図である。図4に示すように、本発明に従い、マレイン酸変性したポリプロピレン系樹脂と、グリシジルメタクリレートを含有するポリエチレン系樹脂とを溶着させた「MAPP/PE−6wt%GMA」及び「MAPP/PE−12wt%GMA」は、比較の「MAPP/PE」に比べ、高い剥離強度が得られている。
【0062】
「MAPP/PE」における剥離強度の平均値は0.05N/mmであり、「MAPP/PE−6wt%GMA」の剥離強度の平均値は0.66N/mmであった。また、「MAPP/PE−12wt%GMA」の剥離強度の平均値は、5.0N/mmであった。従って、GMAを含まない場合の約100倍の剥離強度が得られてた。
【0063】
従って、本発明に従い、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂と、グリシジル基含有モノマーを共重合させたポリエチレン系樹脂を用いて接着することにより、高い接着強度を得られることがわかる。特に、グリシジル基含有モノマーを9重量%以上共重合させることにより、より高い接着強度が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に従う一実施形態の溶着方法を説明するための断面図。
【図2】本発明に従う他の実施形態の溶着方法を説明するための断面図。
【図3】本発明に従うさらに他の実施形態の溶着方法を説明するための断面図。
【図4】本発明に従う第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層の剥離強度を示す図。
【符号の説明】
【0065】
1…成形体
2…成形体の孔
3…成形体の溶着面
10…溶着部材
11…溶着部材の第1のフランジ部
12…溶着部材の第2のフランジ部
13…溶着部材の筒状部
14…溶着部材の溶着面
15…溶着部材のリブ
21…第1の接着樹脂層
21a…第1の接着樹脂層の孔
22…第2の接着樹脂層
22a…第2の接着樹脂層の孔
23…第1の接着樹脂層と第2の接着樹脂層を一体化した板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの一方の樹脂である第1の樹脂から形成されている成形体に、少なくとも溶着面がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうちの他方の樹脂である第2の樹脂から形成されている溶着部材を溶着によって取り付ける溶着部材の溶着方法であって、
ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうち前記第1の樹脂と同系統である樹脂からなる第1の接着樹脂層を前記成形体側に配置し、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のうち前記第2の樹脂と同系統である樹脂からなる第2の接着樹脂層を前記溶着部材側に配置し、前記第1の接着樹脂層と前記第2の接着樹脂層を介在させて、前記成形体の前記溶着面と前記溶着部材の前記溶着面とを溶着させる方法であり、前記第1の接着樹脂層を形成する樹脂及び前記第2の接着樹脂層を形成する樹脂のうちの一方の樹脂が無水マレイン酸変性された樹脂であり、他方の樹脂がエポキシ基を有する樹脂であることを特徴とする溶着部材の溶着方法。
【請求項2】
無水マレイン酸変性された樹脂が、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂であり、エポキシ基を有する樹脂が、グリシジル基含有モノマーを共重合したポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の溶着部材の溶着方法。
【請求項3】
前記第1の接着樹脂層及び前記第2の接着樹脂層が、それぞれ板状部材から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶着部材の溶着方法。
【請求項4】
前記第1の接着樹脂層及び前記第2の接着樹脂層が予め溶着されて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶着部材の溶着方法。
【請求項5】
前記第1の接着樹脂層及び/または前記第2の接着樹脂層が、前記成形体及び前記溶着部材の少なくとも一方の前記溶着面の上に予め取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶着部材の溶着方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法に用いることができる溶着部材であって、
前記第1の接着樹脂層及び/または前記第2の接着樹脂層が予め前記溶着面に取り付けられていることを特徴とする溶着部材。
【請求項7】
前記溶着部材を金型を用いて成形する際に、前記第1の接着樹脂層及び/または前記第2の接着樹脂層を前記金型内に配置しておくことにより、前記第1の接着樹脂層及び/または前記第2の接着樹脂層が予め前記溶着面に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の溶着部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−297910(P2009−297910A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151414(P2008−151414)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(506117840)スイコー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】