説明

溶融した顆粒を用いてシリコンから成る単結晶を製造する方法

【課題】転移が突然形成されたり、溶融シリコンはその時点まで成長した単結晶の側部において流出することがなく、歩留まりの高いシリコン単結晶の形成方法を提供する。
【解決手段】第1の誘導加熱コイル2によって、成長する単結晶と、シリコンから成る円錐状の管部分1の下端部との間に、溶融したシリコンの第1の体積9を形成し、プレート3の上方に配置された第2の誘導加熱コイル7によって、溶融したシリコンの第2の体積10を形成し、溶融したシリコンの第2の体積10のための通過開口が形成される程度まで管部分1の下端部を溶融させ、通過開口が、溶融したシリコンの第2の体積10がまだ存在しないか又は溶融したシリコンの第1の体積9の2倍よりも少ない時点で形成され、第1及び第2の体積9,10から溶融したシリコンを消費することによって、成長する単結晶にモノクリスタルシリコンを結晶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融した顆粒を用いてシリコンから成る単結晶を製造する方法に関する。この方法は、第1の誘導加熱コイルによって、成長する単結晶と、シリコンから成る円錐状の管部分の下端部との間に溶融したシリコンの第1の体積を形成し、前記管部分は、下端部において閉鎖されており、かつシリコンから成る回転するプレートの中央開口を包囲しており、プレートの下方に管部分が延びており、前記第1の誘導加熱コイルが、プレートの下方に配置されており、プレートの上方に配置された第2の誘導加熱コイルによって、溶融したシリコンの第2の体積を形成し、
溶融したシリコンの第2の体積のための通過開口が形成されるような程度に、管部分の下端部を溶融させ、
第1及び第2の体積からの溶融したシリコンの消費により、成長する単結晶にモノクリスタルシリコンを結晶させることを含む。
【背景技術】
【0002】
まず、細いネック、次に単結晶の円錐形に延びた区分、最後に単結晶の円筒状の区分が結晶させられる。方法の最初に、結晶させるために必要な溶融したシリコンは、種結晶と、このために溶融される円錐状の管部分の下端部とから、生ぜしめられる。方法のその後の過程においては、結晶させるために必要な溶融したシリコンは、第2の誘導加熱コイルによって、プレートの上側と、管部分の内壁とを溶融させることによっても得られる。単結晶を結晶させるために必要なシリコンの主要な部分は、プレート上に搬送された顆粒によって得られ、これらの顆粒は、第2の誘導加熱コイルによって溶融され、液体フィルムとして管を通り、成長する単結晶へ案内される。
【0003】
この方法は、単結晶を成長させるために必要な溶融したシリコンの主要な部分を提供するために多結晶ブロックの代わりに顆粒が溶融させられるという点において、及び顆粒を溶融させるために及び単結晶の結晶化を制御するためにそれぞれ専用の誘導加熱コイル("インダクタコイル")が使用されるということによって、フローティングゾーン法(FZ法)とは本質的に異なっている。
【0004】
方法の最初に、この時点では下端部において閉鎖されている円錐状の管部分は、プレートの下方に配置された第2の誘導加熱コイルによってまず溶融させられる。溶融したシリコンの滴下部が、円錐状の管部分の下端部に生ずる。種結晶が前記滴下部に取り付けられる。その後、種結晶は第1の誘導加熱コイルによって再結晶させられて細いネック部を形成し、生じた細いネック部における溶融したシリコンの体積は、管部分の下端部からさらにシリコンが徐々に溶融させられることによって、溶融したシリコンの第1の体積にまで増大させられる。FZ法と同様に、細いネック部には、単結晶の無転移の円錐状に延びた部分と、最終的に単結晶の円筒状の部分とが、結晶させられる。単結晶の円錐状に延びた部分の結晶化の間又はその前にも、円錐状の管部分の下端部は、溶融したシリコンのための通過開口が管部分の下端部に形成される程度にまで溶融させられる。この時点から、溶融したシリコンの第2の体積が、管部分の内壁に沿って、通過開口を通り、溶融したシリコンの第1の体積にまで流れることができる。溶融したシリコンの第2の体積は、第2の誘導加熱コイルによって形成される。
【0005】
このことを行うのに適した方法及び装置は、例えば独国特許出願公開第10204178号明細書に記載されている。
【0006】
独国特許出願公開第102008013326号明細書には、方法の第2の誘導加熱コイルとして使用することができる誘導加熱コイルが記載されている。この誘導加熱コイルは、下側の中央に突出した部分を有しており、この部分によって、円錐状の管部分を流過する溶融したシリコンのフィルムを加熱して液体に保つことができる。
【0007】
方法を行う場合、単結晶の歩留まりを減じる妨害が生じる可能性があり、この単結晶からはモノクリスタル半導体ウェハを製造することができる。つまり、転移が突然形成される恐れがあるか又は溶融シリコンはその時点まで成長した単結晶の側部において流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10204178号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008013326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者は、このような妨害の原因を調査し、その過程で本発明が生じた。本発明の目的は、前記妨害の発生を減じることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、溶融した顆粒を用いてシリコンから成る単結晶を製造する方法によって達成され、この方法は、第1の誘導加熱コイルによって、成長する単結晶と、シリコンから成る円錐状の管部分の下端部との間に溶融したシリコンの第1の体積を形成し、前記管部分は、下端部において閉鎖されており、かつシリコンから成る回転するプレートの中央開口を包囲しており、前記プレートの下方に管部分は延びており、前記第1の誘導加熱コイルはプレートの下方に配置されており;プレートの上方に配置された第2の誘導加熱コイルによって、溶融したシリコンの第2の体積を形成し;溶融したシリコンの第2の体積のための通過開口が形成される程度まで管部分の下端部を溶融させ、通過開口は、溶融したシリコンの第2の体積がまだ存在しないか又は溶融したシリコンの第1の体積の2倍よりも少ない時点で形成され;第1及び第2の体積からの溶融したシリコンの消費によって、成長する単結晶にモノクリスタルシリコンを結晶させることを含む。
【0011】
円錐状の管部分に通過開口を形成することによる成長する単結晶の過剰に高い負荷は、妨害の原因として認識されている。通過開口の形成により、溶融したシリコンの第2の体積が溶融したシリコンの第1の体積に実質的に瞬間的に流入すると、成長する単結晶が負荷を受ける。本発明によれば、溶融したシリコンの第2の体積がまだ存在していないか又は溶融したシリコンの第1の体積の2倍よりも少ない時点で通過開口が形成されることにより、この負荷が限定される。方法がこの手段で行われると、前記妨害は著しくまれになる。
【0012】
以下で図1を参照しながら発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通過開口が円錐状の管部分に形成される直前の段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
方法の最初に、円錐状の管部分1の下端部はまず第1の誘導加熱コイル2によって溶融され、溶融したシリコンの滴下部が生じる。この段階において、第1の誘導加熱コイルと円錐状の管部分とは、好適には、互いに対して、第1の誘導加熱コイルにおける内孔の縁部と溶融したシリコンの滴下部との間の距離ができるだけ小さくなるように配置されている。この距離は、好適には第1の誘導加熱コイルを同軸配置から側方へ移動させることによって短くなる。これによって、滴下部及び管の下端部に誘導によって伝達されるエネルギ密度は、円錐状の管部分と第1の誘導加熱コイルとの同軸配置の場合よりも高くなる。後の時点、特に単結晶の円筒状部分が結晶させられる時には、同軸配置が好ましい。円錐状の管部分1は、シリコンから成る回転するプレート3に設けられた中央開口を包囲しており、プレートの下方へ延びている。プレート3の下側が溶融されないために、プレートの下側は、プレートと第1の誘導加熱コイル2との間に配置された冷却装置4によって冷却される。冷却装置4は、第1の誘導加熱コイル2の上側層として形成されていることもできる。
【0015】
モノクリスタル種結晶は、管部分の下端部の初期溶融の結果として生ぜしめられた溶融したシリコンの滴下部に下方から浸漬される。これにより、種結晶は第1の誘導加熱コイル2によって再結晶させられ、細いネック部5を形成し、種結晶が滴下部と接触させられる時に形成される転移が、結晶格子から方向づけられる。方法の別の過程において、細いネック部5と円錐状の管部分1の端部との間の鉛直方向距離は次第に増大され、最初に、単結晶の円錐状に延びた部分(図示せず)が細いネック部において結晶させられ、次いで、単結晶の円筒状部分(同様に図示せず)が、円錐状に延びた部分において結晶させられる。
【0016】
単結晶は、好適には、例えばドーピングガスの形式で溶融したシリコンに添加されるか又は溶融前にシリコンに含有されている少なくとも1つのドーパントを含む。
【0017】
結晶させるために必要とされる溶融したシリコンは、最初は種結晶と円錐状の管部分の下端部から提供され、後に、溶融したシリコンは、プレートの上側と、管の内壁とから形成され、特に単結晶の円筒状部分が結晶する間は、プレート3へ搬送される顆粒6から提供され、前記顆粒は、プレート3の上方に配置された第2の誘導加熱コイル7によって溶融され、液体フィルム8として管部分を通って、成長する単結晶へ案内される。溶融した顆粒を、単結晶の円錐状に延びた部分を結晶させるために既に使用することもできる。
【0018】
第2の誘導加熱コイルは、好適には、円錐状の管部分1に入り込んだ部分12を有する、独国特許出願公開第102008013326号明細書に記載された誘導加熱コイルのように具体化されている。
【0019】
図1は、単結晶の細いネック部5が既に結晶させられた状態を示している。溶融したシリコンの第1の体積9は、閉鎖された円錐状の管部分1の下端部と、細いネック5との間に配置されている。
【0020】
方法の第1の実施形態によれば、溶融したシリコンの第2の体積10は、回転するプレート3の上側によって、閉鎖された円錐状の管部分1において形成され、円錐状の管部分1の内壁は第2の誘導加熱コイル7によって溶融される。溶融したシリコンの第2の体積10は円錐状の管部分の下端部に蓄積する。この時点で既に、第2の体積は、1つ又は2つ以上の漏斗11と第2の誘導加熱コイル7における対応する数の開口とによって、回転するプレート3へ搬送された後、第2の誘導加熱コイル7によって溶融された、顆粒6から生じた溶融シリコンを含んでいてもよい。
【0021】
下端部において円錐状の管部分1を閉鎖する円錐状の管部分の下端部の部分が完全に溶融されるまで、円錐状の管部分1の下端部は第1の誘導加熱コイル2によってさらに溶融させられる。その結果、通過開口が円錐状の管部分1に形成され、この通過開口を通って、管部分に蓄積した溶融シリコンの第2の体積10が、溶融シしたリコンの第1の体積9へ実質的に瞬間的に流れ込む。通過開口が形成されるまで、第2の誘導加熱コイル7の、管に入り込んだ部分12を、一時的に管部分の内壁により短い距離まで下降させることによって、通過開口の形成を補助することが好ましい。
【0022】
方法の第1の実施形態によれば、通過開口は、溶融したシリコンの第2の体積10が溶融したシリコンの第1の体積9の2倍よりも少ない時点で形成される。この場合、成長する単結晶によって構成される敏感なシステムは僅かにしか妨害されず、これにより、転移が形成される可能性が低くなるか、又は組み合わされた溶融した体積の溶融シリコンが境界面の縁部を超えて、成長する単結晶まで進行する可能性が低くなる。
【0023】
方法の第2の実施形態によれば、通過開口は、溶融したシリコンの第2の体積10が円錐状の管部分にまだ存在しない時点で円錐状の管部分1に形成される。この場合、第2の誘導加熱コイル7によってシリコンを溶融させるプロセスは、通過開口が円錐状の管部分に形成された後に初めて開始される。この手順の場合にも、成長する単結晶の関連する妨害は、僅かな程度にとどまる。
【符号の説明】
【0024】
1 円錐状の管部分、 2 第1の誘導加熱コイル、 3 回転するプレート、 4 冷却装置、 5 ネック部、 6 顆粒、 7 第2の誘導加熱コイル、 8 液体フィルム、 9 第1の体積、 10 第2の体積、 11 漏斗、 12 入り込んだ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した顆粒を用いてシリコンから成る単結晶を形成する方法において、
第1の誘導加熱コイルによって、成長する単結晶と、シリコンから成る円錐状の管部分の下端部との間に、溶融したシリコンの第1の体積を形成し、前記管部分が、下端部において閉鎖されており、かつシリコンから成る回転するプレートの中央開口を包囲しており、前記プレートの下方に前記管部分が延びており、前記第1の誘導加熱コイルが前記プレートの下方に配置されており、
プレートの上方に配置された第2の誘導加熱コイルによって、溶融したシリコンの第2の体積を形成し、
溶融したシリコンの第2の体積のための通過開口が形成される程度まで前記管部分の下端部を溶融させ、前記通過開口が、溶融したシリコンの第2の体積がまだ存在しないか又は溶融したシリコンの第1の体積の2倍よりも少ない時点で形成され、
第1及び第2の体積から溶融したシリコンを消費することによって、成長する単結晶にモノクリスタルシリコンを結晶させることを特徴とする、溶融した顆粒を用いてシリコンから成る単結晶を形成する方法。
【請求項2】
前記管部分に入り込んだ第2の誘導加熱コイルの部分を下降させることによって、通過開口の形成を補助する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プレートの上側と、前記管部分の内壁とからシリコンを溶融させることによって、溶融したシリコンの第2の体積の一部を形成する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
単結晶の円錐形に延びた部分を結晶させる間又はその後に、プレートへ搬送された顆粒の溶融を開始する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−157267(P2011−157267A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−21066(P2011−21066)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】