説明

溶融成形装置

【課題】成形品の生産性を向上させることができる溶融成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、廃棄プラスチック等の熱可塑性部材を加熱溶融させて成形品を成形する溶融成形装置14であって、熱可塑性部材を加熱することで溶融させ、成形品として成形する管部材25と、管部材25に熱可塑性部材を押し込む押込部材23を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック等の熱可塑性部材を加熱溶融させて成形品を成形する溶融成形装置に関するものであり、特に廃棄プラスチック等を加熱溶融させて固形燃料を成形する溶融成形装置に用いられて好適である。及び、その他プラスチック成形における前段として用いることもできる。
【背景技術】
【0002】
従来から廃棄プラスチック等を加熱溶融させて、新たなプラスチック製品を成形することができる成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の成形装置は、第1押出機と、第2押出機と、第1押出機及び第2押出機を連通させる連通路と、を含んで構成されている。第1押出機及び第2押出機には、それぞれ円柱状のシリンダが設けられている。これらシリンダ内には、2本のスクリュー軸が近接して平行に支持されている。また、第1押出機のシリンダの外周には、シリンダ内を加熱するためのバンドヒータが設けられている。また、第2押出機の下流には冷却フィンを備えた冷却器が設けられ、その先にはダイスが設けられている。
【0003】
上述した成形装置でプラスチック製品を成形するには、まずペレット状の廃棄プラスチックを第1押出機のシリンダ内に投入する。第1押出機では、2本のスクリュー軸を互いに反対方向に回転させると共に、バンドヒータによってシリンダ内を加熱することで、シリンダ内に投入されたペレット状の廃棄プラスチックは、揉み砕かれると共に溶融状態に変化する。そして、第1押出機を通過した溶融状態の廃棄プラスチックは、連通路を通り第2押出機に押送される。第2押出機では、押送された溶融状態の廃棄プラスチックを2本のスクリュー軸によってさらに混練する。そして、溶融状態の廃棄プラスチックを冷却器の冷却フィンに接触させて冷却すると共に、ダイスから押し出す。ダイスから押し出された廃棄プラスチックは、所定の形状のプラスチック製品として成形される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−21899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の成形装置では、第1押出機及び第2押出機により廃棄プラスチックを溶融させた後に、ダイスにより成形品を成形しなければならないために、成形品を生産する効率が悪いという問題がある。
また、第1押出機及び第2押出機では、スクリュー軸を回転させて、廃棄プラスチックとスクリュー軸との間の摩擦熱も利用して廃棄プラスチックを溶融させていることから、スクリュー軸に磨耗が生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、成形品の生産性を向上させることができる溶融成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶融成形装置は、熱可塑性部材を加熱溶融させて成形品を成形する溶融成形装置であって、前記熱可塑性部材を加熱することで溶融させ、成形品として成形する管部材と、前記管部材に前記熱可塑性部材を押し込む押込部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溶融成形装置によれば、廃棄プラスチック等の熱可塑性部材を加熱することで溶融させ、成形品として成形する管部材を設けたので、成形品の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る溶融成形システム100の構成について説明する。
図1は、溶融成形システム100の全体の構成を示す図である。図1に示すように、溶融成形システム100は、貯蔵室11、ダクト12、空送用エアーコンプレッサ13、溶融成形装置14、を含んで構成されている。貯蔵室11は、溶融成形装置14で成形される成形品の原料となる熱可塑性部材が収容されている。本実施形態では、熱可塑性部材として廃棄プラスチックを使用する場合について説明する。貯蔵室11に収容される廃棄プラスチックは、事前に都合の良い大きさに破砕・切断又は選別されたものである。
【0010】
ダクト12は、廃棄プラスチックを移送する中空状の導管である。ダクト12は、貯蔵室11から斜め上方に延設され、溶融成形装置14の上側に接続されている。貯蔵室11に収容された廃棄プラスチックは、後述する空送用エアーコンプレッサ13の作用により、ダクト12を通って溶融成形装置14に移送される。なお、ダクト12は溶融成形装置14の大きさに応じて複数本使用してもよい。
【0011】
空送用エアーコンプレッサ13は、圧縮された空気を吹き出す吹き出しパイプ15を有している。この吹き出しパイプ15は、ダクト12の略中間に挿入されている。また、吹き出しパイプ15の吹き出し口は、溶融成形装置14側に向けられているので、吹き出し口から吹き出された空気は溶融成形装置14に向かう。従って、ダクト12内には貯蔵室11から溶融成形装置14に向かう空気の流れが発生し、貯蔵室11に収容された廃棄プラスチックはダクト12に吸込まれ、溶融成形装置14に移送される。なお、廃棄プラスチックの溶融成形装置14への移送は、空送用エアーコンプレッサ13に限られるものではなく、例えば送風機を用いてもよい。
【0012】
溶融成形装置14は、熱可塑性部材を加熱溶融させて成形品を成形する。本実施形態では、成形品としてRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)という廃棄プラスチック等を原料とした高カロリーの固形燃料(以下、固形燃料)を成形する場合について説明する。
溶融成形装置14は、筐体20、収容部21、扉機構22、押込部材23、昇降装置24、管部材25、切断部26、冷却部27、循環装置28、を含んで構成されている。
筐体20は、溶融成形装置14の基本骨格構造を形成する天板20a、側板20b、地板20c、が組み合わされて構成されている。筐体20の内部は、略上下に区分けされている。区分けされた筐体20内部の上側には、収容部21、扉機構22、押込部材23、昇降装置24、が配置されている。また、区分けされた筐体20内部の下側には、管部材25、切断部26、冷却部27、が配置されている。また、筐体20のうち天板20aの中央にはダクト12が挿通する貫通孔31が形成されている。
【0013】
収容部21は、貯蔵室11から移送された廃棄プラスチックを一時的に収容するものである。収容部21は、空気を通すことができるが廃棄プラスチックを通すことができない部材、例えば複数の隙間を有する、風を通す材料で構成されている。より具体的に説明すると、収容部21は、側面及び天板にメッシュ状の網(例えば、金網)29を用いた略直方体形状に構成されている。収容部21の地板(底部)に相当する部分には後述する扉機構22が設けられているため、廃棄プラスチックは収容部21から落下することなく、一時的に収容することができる。なお、収容部21の天板の中央にはダクトが挿通する孔が形成されている。
このように、収容部21を構成する部材に、空気を通し廃棄プラスチックを通さない部材を用いることで、貯蔵室11から圧縮された空気によって勢いよく移送された廃棄プラスチックは収容部21の外側には排出されず、収容部21内で拡散され均一に収容される。一方、廃棄プラスチックと共に収容部21に入り込んだ空気は収容部21の側面や天板等を通過して排気されるので、廃棄プラスチックの必要以上の拡散を防止することができる。
【0014】
扉機構22は、扉体34を開閉することで、収容部21に収容された廃棄プラスチックのうち、次の工程に移送させる廃棄プラスチックの量を制御するものである。扉機構22について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、扉機構22の一部を示す斜視図である。図3は、扉機構22を上面から見た図である。図2に示すように扉機構22は、枠体32、扉体34、支軸36、を含んで構成される。枠体32は、その外周枠が収容部21を構成する側面の網29に取り付けられている。また、枠体32の内側には、収容部21に収容された廃棄プラスチックが通過できる程度の大きさの通過孔33が枠体32の全体に亘って複数、形成されている。
【0015】
扉体34は、各通過孔33の孔方向に沿った略中央に配置されている。扉体34は、4つの羽根板35a〜35dをそれぞれ直角に交差させて、水車の羽根車のように十字形状に構成されている。支軸36は、扉体34の4つの羽根板35a〜35dが交差する中心部に固定され、扉体34を通過孔33の側方で軸支している。支軸36を回転させることで、支軸36と共に扉体34が図2に示す矢印A方向及び矢印B方向に回転するように構成されている。また、羽根板35a〜35dの大きさは、羽根板35a〜35dのうち2つが水平状態にあるときに、廃棄プラスチックが通過孔33から落下しないように隙間が生じない大きさとされている。ここで、扉体34を矢印A方向又は矢印B方向に回転させることで通過孔33が開口されるので、収容部21に収容された廃棄プラスチック、即ち通過孔33にある廃棄プラスチックは落下して、次の工程に移送される。
【0016】
次に、1つの支軸36は、図3に示すように軸方向に隣接する通過孔33を通って枠体32の外周枠まで延設されている。すなわち、1つの支軸36は軸方向に隣接する複数の扉体34に固定されている。従って1つの支軸36を回転させることで、軸方向に隣接する複数の扉体34を同期して回転させることができる。さらに、外周枠まで延設された各支軸36には、それぞれ歯車37が一体的に取り付けられている。各歯車37の間には、歯車38が枠体32の外周枠に回転自在に取り付けられている。従って、例えばいずれか1つの歯車37をモータ等の駆動装置を用いて回転させることで、その歯車37に取り付けた支軸36が回転すると共に、歯車37と噛み合う隣接する歯車38が回転する。歯車38が回転することで、さらに隣接する歯車37が回転し、その歯車37に一体的に取り付けられた支軸36が回転する。このように、駆動装置によって歯車37及び歯車38等の連動機構を介して全ての支軸36を回転させることができる。そして、全ての支軸36が回転することで、全ての扉体34を回転させることができる。なお、連動機構は歯車37及び歯車38に限られず、プーリやベルトを用いる連動機構であってもよい。
【0017】
押込部材23は、通過孔33を通過し、管部材25の導入部48に移送された廃棄プラスチックを管部材25内に押し込むものである。図2に示すように、押込部材23は、断面略八角形状とする棒状に形成されている。また、押込部材23は、相互に離間した状態で、枠体32の下面から垂直に複数、併設されている。より具体的に説明すると、押込部材23は、図3の隠線で示されるように、枠体32の下面であり枠体32に形成された通過孔33と重ならない位置に設けられている。従って、通過孔33から落下した廃棄プラスチックを押込部材23によって妨げられることなく管部材25の導入部48に移送させることができる。また、通過孔33から落下した廃棄プラスチックは、押込部材23がガイドとなり、各通過孔33の真下に落下させることができる。本実施形態の溶融成形装置14では、幅方向に21本、奥行き方向に21本の合計441本の押込部材23が配置されている。なお、配置される設置場所や状況に応じて溶融成形装置14の大きさや固形燃料の吐出量が変動する。従って、配置される押込部材23の本数は、溶融成形装置14の大きさや固形燃料の吐出量に合わせて適宜、変更する。
【0018】
昇降装置24は、押込部材23を垂直方向に下降及び上昇させるものである。図1に示すように、昇降装置24は複数のシリンダ41と、複数のピストンロッド42とを含んで構成されている。複数のシリンダ41は、筐体20の天板20aに固定されている。また、複数のピストンロッド42は対応する各シリンダ41から下降及び上昇できるように構成されている。これら複数のピストンロッド42には、取付部材43を介して、扉機構22が取り付けられている。上述したように扉機構22には、収容部21と押込部材23とが取り付けられているので、ピストンロッド42の昇降に伴って、収容部21と、扉機構22と、押込部材23とが共に昇降する。一定間隔で昇降装置24により押込部材23を下降させることで、押込部材23は、管部材25の導入部48に移送された廃棄プラスチックを管部材25内に押し込む。なお、ピストンロッド42に扉機構22を取り付ける場合について説明したが、少なくともピストンロッド42と押込部材23とが一体的に取り付けられていればよい。また、ピストンロッド42は下部から押込部材23を押し上げるように構成されていてもよい。
【0019】
管部材25は、押込部材23によって押し込まれた廃棄プラスチックを溶融成形するものである。管部材25は、廃棄プラスチックが導入されて通過する中空部45が垂直方向に形成されている。また、管部材25は、押込部材23に対応するように相互に離間した状態で複数、併設されている。管部材25について、図4及び図5を参照してより具体的に説明する。図4は、複数設けられた管部材25の一部を斜め上方から見た図である。管部材25の中空部45の断面形状は、押込部材23と同様に略八角形状に形成されている。従って、管部材25の下側開口から吐出される固形燃料は断面略八角形状に成形される。なお、中空部45の断面寸法は押込部材23の断面寸法より若干大きくされており、押込部材23が管部材25の内面に摺動するのではなく、隙間をもってスムーズに動けるようになっている。また、管部材25の上部には導入部48が形成されている。導入部48は、中空部45が上方に向かうに従い拡開するようにテーパ状に形成されており、その開口縁は略矩形状に形成されている。なお、中空部45の断面形状を円や多角形にした場合、開口縁の形状やテーパ部分の形状を適宜、変更する。例えば、中空部45の断面形状を六角形状に変更した場合、開口縁をハニカム形状に変更する。
【0020】
図5は、複数設けられた管部材25の一部の断面を示す図である。図5に示すように、管部材25は、内側管部材46と、外側管部材47とによって構成されている。外側管部材47は、隣接する外側管部材47同士を接合することによって複数の外側管部材47を一体的に構成する。外側管部材47同士を接合するときは、例えば外側管部材47の開口縁同士を下側から溶接する。このように複数の外側管部材47を一体的に構成することで、外側管部材47間には密閉された空間49を形成することができる。この空間49に後述する熱媒体流体を充填させることで、外側管部材47を加熱することができる。密閉された空間49は、図5に示すように外側管部材47の開口縁にまで至っているので、熱媒体流体を開口縁にまで充填させることができる。なお、これら内側管部材46及び外側管部材47には熱伝導性等を考慮して適宜な一般鋼材を用いればよく、両者が同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、内側管部材46及び外側管部材47には熱処理を施してもよい。さらに、内側管部材46の内周面には、成形をよりスムーズにするためにコーティングを施すようにしてもよい。
【0021】
内側管部材46は、実際に廃棄プラスチックを溶融させ固形燃料が成形される中空部45を構成する部材である。内側管部材46は外側管部材47の内側に密着するような大きさに形成されている。このように内側管部材46は、外側管部材47と密着されるように形成されているので、効率よく外側管部材47の熱を内側管部材46に伝達することができる。なお、内側管部材46と外側管部材47との間は、後述する着脱性を考慮して熱伝達の妨げにならない程度の若干の隙間を有していてもよい。
【0022】
内側管部材46は、外側管部材47と異なり、1つ1つが個別に外側管部材47に着脱可能に挿設されている。従って、内側管部材46は必要に応じて交換することができる。これは、上述したように、内側管部材46において、実際に廃棄プラスチックが溶融されるので、溶融処理を長時間行うことで、廃棄プラスチックを溶融するときに発生するガスにより内側管部材46が腐食してしまう。このような場合であっても、交換したい内側管部材46のみを外側管部材47から取り外し、新たな内側管部材46を外側管部材47に挿設することで、簡単に溶融成形装置14のメンテナンスを行うことができる。管部材25によって溶融成形された固形燃料は、管部材25の下側開口から吐出される。なお、本実施形態の溶融成形装置14では、幅方向に21本、奥行き方向に21本の合計441本の管部材25が配置されている。なお、内側管部材46と外側管部材47とによる二重管構造は、メンテナンスを考慮したものであり、単管構造であっても固形燃料を成形する妨げになるものではない。
【0023】
切断部26は、管部材25によって溶融成形され、管部材25の下側開口から吐出された固形燃料を一定の寸法に切断する。切断部26には、材質に合った切断機を用い、例えばウォータージェットカッターを用いる。このとき、管部材25の下側開口に隣接させてウォータージェットカッターのノズルを配置し、ノズルから一定間隔で噴射される高圧の水により固形燃料を一定の寸法に切断する。なお、切断機はワイヤーカッターやレーザーカッター等であってもよい。
冷却部27は、切断部26によって切断された固形燃料を冷却させる。冷却部27としては、例えば、容器に満たされた冷却水を用いる。管部材25から吐出され、切断部26によって切断された固形燃料が冷却部27によって冷却されることで固形燃料は完全に硬化する。
【0024】
循環装置28は、上述した管部材25の間に充填された熱媒体流体の温度を制御すると共に、熱媒体流体を循環させるものである。本実施形態では熱媒体流体として熱媒体油を用いている。熱媒体流体に熱媒体油を用いるのは、熱媒体油を加熱することですぐに所望する温度に達することができると共に、その温度から低下しにくいという特性があるためである。なお、熱媒体油には劣化しにくく熱安定性に優れたシリコンフルードを用いている。
【0025】
また、循環装置28はボイラー室51、循環路52、を含んで構成される。ボイラー室51は、筐体20外に設けられていて、室内には熱媒体油が充填されている。ボイラー室51では、熱媒体油を加熱して、熱媒体油の温度を所定の温度になるように制御している。循環路52は、ボイラー室51と管部材25の間の空間49とを繋げるように、筐体20の側板20bを貫通する態様で2つ設けられている。そして、ボイラー室51は、所定の温度に加熱された熱媒体油を循環路52を介して管部材25の間の空間49に送り出すと共に、管部材25間の空間49にある熱媒体油を循環路52を介して受け入れるように循環させている。このように、所定の温度の熱媒体油を循環させることで、管部材25の間の空間49に充填させた熱媒体油を常に、所定の温度に保つことができる。従って、管部材25の間の空間49に充填された熱媒体油の熱が管部材25に伝達され、管部材25を所定の温度に保つことできる。なお、図1に示すように管部材25の間の空間49に充填された熱媒体油の温度が低下しないように筐体20内は断熱部材53によって囲まれている。また、本実施形態では熱媒体油の温度を120℃〜300℃程度になるように制御している。
【0026】
次に、溶融成形システム100によって廃棄プラスチックを溶融成形して固形燃料を成形する動作について図1、図2及び図6を参照して説明する。
まず、切断又は選別したフィルム状の廃棄プラスチックを貯蔵室11に収容しておく。次に、空送用エアーコンプレッサ13を作動させ、圧縮された空気を溶融成形装置14側に向かって吹き出させる。これにより、貯蔵室11に収容された廃棄プラスチックがダクト12に吸込まれ、溶融成形装置14に移送される。
【0027】
次に、ダクト12に吸い込まれた廃棄プラスチックは、ダクト12の排出口12aから排出され、溶融成形装置14の収容部21に収容される。このとき、圧縮された空気によって勢いよく移送された廃棄プラスチックは、図6に示すように収容部21内で拡散され均一状態で収容されている。なお、収容部21の底部に位置する廃棄プラスチックは、扉機構22の一部を構成する枠体32の各通過孔33内に入り込んでいる。
【0028】
次に、昇降装置24によって押込部材23が上昇している状態で、扉機構22の扉体34を図2に示す矢印A方向に例えば360度回転させる。なお、図3に示す1つの支軸36を矢印A方向に回転させることで、歯車37及び歯車38を介して全ての扉体34を矢印A方向に回転させることができる。扉体34を矢印A方向に回転させることで、図2に示す各通過孔33の左側のみから廃棄プラスチックを落下させることができる。続けて扉体34を矢印B方向に例えば360度回転させる。なお、図3に示す1つの支軸36を矢印B方向に回転させることで、歯車37及び歯車38を介して全ての扉体34を矢印B方向に回転させることができる。扉体34を矢印B方向に回転させることで、図2に示す各通過孔33の右側のみから廃棄プラスチックを落下させることができる。このように、扉体34を左右方向に均等に回転させることにより、各管部材25の導入部48に均一に廃棄プラスチックを移送させることができる。なお、各管部材25の開口縁は熱媒体油によって加熱されていることから、廃棄プラスチックが隣接する管部材25の間に跨って落下したとしても、開口縁に接触した時点から溶融が開始され、導入部48のテーパによって廃棄プラスチックはいずれかの管部材25の中空部45に流れる。
【0029】
次に、扉体34の回転を停止させた状態で、図6に示すように、昇降装置24を作動させて押込部材23を下降させる。押込部材23を下降させることで、各管部材25の導入部48に移送された廃棄プラスチックが中空部45内に押し込まれる。押し込まれた廃棄プラスチックは熱媒体油によって加熱された管部材25によって溶融されると共に中空部45の断面形状に成形されていく。ここで、管部材25は垂直に設けられているので、中空部45に導入された廃棄プラスチックは、自重によって下方向に移動できやすくなっている。なお、溶融成形装置14を動作させた始めの段階では、管部材25の中空部45には廃棄プラスチックが充填されていないので、扉機構22による廃棄プラスチックの落下及び押込部材23による押し込みを繰り返して、各管部材25の下側開口まで廃棄プラスチックを充填させるようにする。
【0030】
次に、全ての中空部45内の下側開口まで廃棄プラスチックが充填された状態(なお、廃棄プラスチックは溶融され、成形されている段階の状態である)から、押込部材23によって廃棄プラスチックを押し込むことで、管部材25の下側開口から成形品としての固形燃料が吐出、即ち成形される。
次に、ウォータージェットカッターを用いて、管部材25の下側開口から吐出された固形燃料を一定の寸法に切断する。切断する間隔は、押込部材23が下降するタイミングで切断するようにする。ただし、このタイミングに限られるものではなく、所望される固形燃料のサイズに応じて切断するタイミングを変更する。
次に、切断された固形燃料を冷却部27により冷却して、完全に硬化させる。
【0031】
このように、本実施形態に係る溶融成形装置によれば、加熱された管部材25によって廃棄プラスチックを溶融すると共に、同工程において固形燃料を成形する処理も行うので、固形燃料を生産する生産性を向上させることができる。
【0032】
上述したように管部材25は筐体20に対して垂直に設けられている。従って、管部材25の中空部45に導入された廃棄プラスチックは、自重で下方向に移動しようとする。また、管部材25は、冷めにくい熱媒体油によって加熱されているので、溶融成形装置14の動作を終了させた場合において中空部45に廃棄プラスチックが残留していたとしても、管部材25はしばらくの間、加熱されており、さらに中空部45は垂直方向に沿って形成されているため残留している廃棄プラスチックは溶融されると共に自重で管部材25の下側開口から吐出される。従って、中空部45に廃棄プラスチックが詰まってしまう現象を防止することができるので、溶融成形装置の維持管理が容易である。
【0033】
なお、上述した説明では、押込部材23及び管部材25を筐体20に対して垂直に設ける場合について説明したが、この場合に限られるものではない。例えば、押込部材23及び管部材25を筐体20に対して水平状態又は斜めの状態にして、設けてもよい。
【0034】
なお、上述した説明では扉体34を水車の羽根車のように十字状に構成する場合について説明したが、この場合に限られるものではない。例えば、扉体34を一端が軸支された1枚からなる扉体でもよく、中央が開放するように両側が軸支された2枚からなる扉体でもよく、スライドすることにより通過孔33を開口させる扉体であってもよい。
【0035】
なお、上述した説明では、押込部材23の上方に廃棄プラスチックを収容する収容部21を設ける場合について説明したが、この場合に限られるものではない。例えば、収容部21と扉機構22とを取り除くと共に、枠体32の外周枠と筐体20の側板20bとの間に空間を設け、その空間にダクト12の排出口12aを配置させるように構成してもよい。この場合、ダクト12の排出口12aから排出された廃棄プラスチックは、枠体32の外周枠と筐体20の側板20bとの間を通って、管部材25の導入部48に移送される。また、枠体32の外周枠と筐体20の側板20bとの空間に、プロペラ式の送風機を設けておけば、廃棄プラスチックは、送風機によって巻き上げられる空気によって管部材25の導入部48に均一に移送される。
【0036】
なお、上述した説明では熱可塑性部材として廃棄プラスチックを用い、成形品として固形燃料を成形する場合について説明した。一般に、廃棄プラスチックのリサイクルとして製造される固形燃料は、例えばボイラー等で燃焼される燃料として用いられるものであり、寸法精度が要求されるものではない。従って、精密な精度が要求される成形装置のように熱可塑性部材を溶融する工程と成形品を成形する工程とを区分けせず、溶融する工程と、成形品を成形する工程とを同時進行させたとしても、成形品の精度を保つことができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る溶融成形装置では、熱可塑性部材として廃棄プラスチックを用い、成形品として固形燃料を成形する場合について説明したが、この場合に限られるものではない。例えば、精度が要求される製品を成形する前段階として、本実施形態に係る溶融成形装置を用いてもよい。即ち、熱可塑性部材に例えばプラスチック原料を用いて、管部材25において、プラスチック原料を溶融して、成形品を成形するようにしてもよい。この場合、管部材25の下側開口から吐出された成形品は冷却部27で冷却せず、精密な成形を行うことができる成形装置の原料として使用する。このようにすることで、電熱又は摩擦熱等で溶融するよりも速く成形することができ、ある程度、形が整えられた成形品を用いて成形することにより、成形装置での成形の効率を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る溶融成形装置では、廃棄プラスチック等の熱可塑性部材のみを固形燃料の原料とする場合について説明したが、この場合に限られるものではない。固形燃料の原料としては、少なくとも熱可塑性部材が含まれていればよく、熱可塑性部材以外に古紙や木屑等が含まれていてもよい。
【0039】
なお、管部材25の断面を略八角形状にして固形燃料を略八角形状に成形することで、その後の搬送等において固形燃料の転がりを防止できる等の成形品の搬送性を向上させることができる。ただし、八角形状に限られるものではなく、他の多角形状(例えば六角形状)であってもよいし、円形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】溶融成形システムの全体の構成を示す図である。
【図2】扉機構の一部を示す斜視図である。
【図3】扉機構の一部を示す上面図である。
【図4】複数設けられた管部材の一部を斜め上方から見た図である。
【図5】複数設けられた管部材の一部の断面を示す図である。
【図6】溶融成形装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100 溶融成形システム
14 溶融成形装置
20 筐体
21 収容部
22 扉機構
23 押込部材
24 昇降装置
25 管部材
26 切断部
27 冷却部
28 循環装置
29 網
32 枠体
33 通過孔
34 扉体
36 支軸
45 中空部
46 内側管部材
47 外側管部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性部材を加熱溶融させて成形品を成形する溶融成形装置であって、
前記熱可塑性部材を加熱することで溶融させ、成形品として成形する管部材と、
前記管部材に前記熱可塑性部材を押し込む押込部材を設けることを特徴とする溶融成形装置。
【請求項2】
前記管部材は複数併設され、
前記複数の管部材間の空間に充填された熱媒体流体によって前記管部材を加熱することを特徴とする請求項1に記載の溶融成形装置。
【請求項3】
前記管部材は内側管部材と外側管部材とからなり、
前記内側管部材は前記外側管部材に着脱可能に挿設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融成形装置。
【請求項4】
前記管部材は相互に離間した状態で垂直に複数、併設され、
前記押込部材は前記複数の管部材に対応して相互に離間した状態で複数、併設され、
前記熱可塑性部材は、前記複数の押込部材の間を通って前記押込部材によって押し込まれる位置に移送されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の溶融成形装置。
【請求項5】
前記押込部材の上方に前記熱可塑性部材を収容する収容部を設け、
前記熱可塑性部材は、前記収容部の底部に設けられた扉体を開くことで前記押込部材によって押し込まれる位置に落下することを特徴とする請求項4に記載の溶融成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−66992(P2009−66992A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239972(P2007−239972)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(507309699)
【Fターム(参考)】