説明

漏液センサ

【課題】漏液の油と水分を分離して検出する漏液センサを提供する。
【解決手段】発光器、プリズム及び受光器で成り、前記受光器の受光量で漏液を検出する光学式漏液センサ部と、1対の電極を発振要素として発振し、発振周波数の変化量で前記漏液を検出する導電式漏液センサ部とを具備し、2種類の液体の漏液を検出することを特徴とする漏液センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漏液センサに関し、特に油と水を分離して検出することができる漏液センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来工場等の設備では、配管により液体を供給したり、タンクに液体を貯留したりしている。しかし、配管には多くの個所に接続用の継手が設けられ、また、タンクには液体の入出口が設けられているため、継手や入出口から液体が漏液する場合が多い。また、外部から雨水等が流れ込むこともあり、半導体製造ラインや食品の加工ライン等では水の漏液発生は致命傷である。そこで、液体の漏液の監視を常時行なわなければならず、従来の漏液監視手段としては光学式や導電式が知られている。
【0003】
特許第3220440号公報(特許文献1)には、水、酸性溶液、アルカリ溶液等の電気的導通を有する液体や、アルコール、シンナー、ベンジン等の有機性で絶縁性を有する液体の漏液を検知する光学式の漏液センサが開示されている。図1(A)、(B)は光学式漏液センサ100の原理構成図を示しており、発光器101から光102を照射し、プリズム104で光102を反射させて受光器105に入射させる。漏液がない図1(A)の場合には、プリズム104からの光102Aが正しい光軸で受光器105に入力する。しかし、図1(B)に示すように漏液110があると、漏液110によってプリズム104の光反射角(屈折角)若しくは透過光量(透過率)が変化し、受光器105への入射光量が変化する。このように光学式漏液センサ100は、発光器101の発光量を一定にし、受光器105の入射光量を検出することによって漏液110の有無を検出する。
【0004】
また、特開2005−156541号公報(特許文献2)は、漏液が浸透し得る気体層又は漏液浸透層を介して、漏液と接触し得る少なくとも1つの漏液検知部を具え、漏液検知部が、少なくとも1つの光学式反射境界面を含む光学式漏液検知部、導電性/絶縁性液体の存在によって電極間インピーダンスが変化する電極対を含む導電式漏液検知部で成る漏液センサを開示している。図2(A)、(B)は特許文献2に開示されている導電式漏液センサの検知原理を示しており、直流電源としてバッテリ201に抵抗202を介して、直列に電極210A、211A、…と電極210B、211B、…とが対向して接続されている。そして、抵抗202を流れる電流を電圧計203で計測する。図2(A)の状態では電流が流れないが、図2(B)に示すように漏液220があると、電極211Aと電極211Bとが電気的に導通することにより電流が流れ、電圧計203で電流に対応した電圧Vが計測されることにより、漏液220の検出を行う。
【特許文献1】特許第3220440号公報
【特許文献2】特開2005−156541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている漏液センサ100は、筐体の樹脂及び対象となる液体や空気の屈折率の違いによる検出のため、水のみ或いは油のみは検出できても、油と水が入り混じった状態の液体では油分の方が水より比重が軽いため、油が水の上層に来てしまうので光が透過してしまい、水の漏液と油の漏液を正確に分離して検出することが出来ない。また、漏液センサを逆向きにすれば、理論上水が下層、油が上層に来るので、油と水が入り混じった状態での検出は可能になるが、空気の分を考慮すると測定が困難である。
【0006】
また、特許文献2に開示されている漏液センサ200は対象物の導電性に依存しているため、導電性のある水には反応するが、水よりもより絶縁体に近い油には反応しにくく電流が流れないので、油の漏液を検出することができない。また、入力電源を交流にして導通及び静電容量を測定すれば検出可能と考えられるが、空気と油の差異が微小であり、複雑かつ高価な測定回路が必要となるのでコスト面でも問題がある。
【0007】
近年ガソリンスタンドではガソリン漏れの他に、水の漏液を検知して水がガソリンタンク等に入らないようにすることが強く望まれていると共に、食品加工ライン等では油の漏液による混入は致命傷となり、水と油を区別して検出する必要性が強まっている。にも拘らず、従来の漏液センサでは水と油を区別して検出することができなかった。
【0008】
本発明は上述のような事情からなされたものであり、本発明の目的は、油と水の特性が相違していることに着目し、光学式漏液センサと導電式漏液センサの長所を組み合わせ、コストアップとなることなく簡便に漏水、油の液漏れを区別して検出できる漏液センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は漏液センサに関し、本発明の上記目的は、発光器、プリズム及び受光器で成り、前記受光器の受光量で漏液を検出する光学式漏液センサ部と、1対の電極を発振要素として発振し、発振周波数の変化量で前記漏液を検出する導電式漏液センサ部とを設け、2種類の液体の漏液を分離検出が達成される。
【0010】
また、前記光学式漏液センサ部から出力された信号を液有無信号として、前記導電式漏液センサ部から出力された信号を水と油を区別する区別信号として処理する検出回路を設け、ランプ等で報知することで達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の漏液センサによれば、光学式漏液センサと導通(導電)式漏液センサの特長を組み合わせているので、漏液の有無と、漏液がある場合には水と油を区別しての検出が可能である。そのため、ガソリンスタンドや半導体製造ライン、食品加工ライン等での漏液検出に特に有用である。
【0012】
また、本発明の漏液センサによれば、水、酸性溶液、アルカリ溶液等の電気的導通を有する液体や、超純水、アルコール、シンナー、ベンジン等の有機性溶液等の絶縁性を有する液体の漏液を、小量の漏液量でも確実に検知可能であると共に、20℃において、6×10−2N/m以下である低表面張力を有する液体、特に3×10−2N/m以下である低表面張力を有する薄層状液体の漏液でも、高速に検知することが可能である。ガソリン、灯油、機械油、シリコンオイル、食用油等の検出も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は光学式漏液センサ部で漏液の有無を検出し、導電式漏液センサ部で電気的導通性のある液体(例えば水)と、電気的導通性の無い油や有機性溶液とを区別して検出する。しかも構造的に簡易であり、コストアップとならない特徴がある。
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図3(A)は、本発明の漏液センサ10の構成例を示しており、漏液センサ10は漏液を検出するための床1上に設置され、光学式漏液センサ部を構成する発光器11、プリズム12及び受光器13が設けられ、プリズム12の底面が床1に設置されている。また、発光器11及び受光器13は検出回路20に接続されており、導電式漏液センサ部を構成する1対の電極板14及び15が、漏液センサ10の筐体底部に設けられており、電極板14及び15は検出回路20に接続されると共に、電極板14及び15の下部が筐体外部に突出した構造となっている。
【0016】
検出回路20の構成は図4に示すようになっており、受光器13からの検出信号DTは増幅器21で増幅されてコンパレータ22に入力される。コンパレータ22は増幅器21からの検出信号DTaを基準値Vr2と比較し、基準値Vr2に対する大小に応じて2値の液有無信号LSを出力する。また、1対の電極板14及び15は、本発明では静電容量として作用させ、発振器23からの1要素として使用する。発振器23の出力(周波数信号)FはF−V変換器24に入力され、周波数fに対応した電圧Vに変換され、電圧Vはコンパレータ25に入力される。コンパレータ25は電圧Vを基準値Vr1と比較し、基準値Vr1に対する大小に応じて2値の油と水の区別信号DSを出力する。なお、F−V変換器24の特性は、例えば図5に示すように周波数fが高くなるに従って電圧Vが大きくなる。
【0017】
コンパレータ25から出力される区別信号DSはAND回路26Aに入力されると共に、NOT回路26Bを経てAND回路26Cに入力され、コンパレータ22から出力される液有無信号LSはAND回路26Aに入力されると共に、NOT回路26Bに入力される。そして、AND回路26Aの出力が“H”となったときにランプ20Aが点灯し、NOT回路26Bの出力が“H”となったときにランプ20Bが点灯し、AND回路26Cの出力が“H”となったときにランプ20Cが点灯する。
【0018】
このような構成において、図3(A)のように床1上に水や油の漏液が無い場合、コンパレータ22は液無しを示す“L”の液有無信号LSが出力される。従って、コンパレータ25からの区別信号DSに関係なく、NOT回路26Bの出力は“H”となってランプ20Bが点灯する。これにより、現在は液無し、つまり漏液が無いことを知ることができる。
【0019】
次に、図3(B)のように床1上に液体2が漏れた場合、前述したようにプリズム12の屈折率若しくは透過率が変化することによって、コンパレータ22の出力である液有無信号LSが“L”から“H”に変わるので、NOT回路26Bの出力が“L”となってランプ20Bが消灯し、液漏れがあることを知ることができる。そして、漏液2の存在によって電極板14及び15で構成する静電容量が変化し、発振器23の発振周波数fが変化し、これがF−V変換器24で電圧Vに変換される。水と油では誘電率が異なるため静電容量も異なり、その結果発振器23の発信周波数も異なり、電圧Vは水と油で相違する。そのため、基準値Vr1に対して、コンパレータ25からの区別信号DSを水に対して“L”とし、油及び空気に対して“H”とすることができる。区別信号DSが“H”、つまり油と空気の場合にはAND回路26Aの出力が“H”となってランプ20Aが点灯する。これにより、油の漏液であることが分かる。また、区別信号DSが“L”、つまり水の場合にはAND回路26Cの出力が“H”となってランプ20Cが点灯する。これにより、水の漏液であることが分かる。
【0020】
なお、上述では検出回路20を漏液センサ10内に設けているが配線や無線で外部に設けても良い。また、ランプ20A〜20Cに代えて、或いはランプに加えて音等で報知することも可能である。
【0021】
また、A/D変換器付きのマイクロコンピュータ(若しくはCPU等の電子処理手段)を使用することにより、コンパレータ22、F−V変換器24、コンパレータ25を不要とすることができる。更にマイクロコンピュータを使用すれば、AND回路26A及び26C、NOT回路26Bを設けることなく論理演算することも可能であり、シンプルなものとなる。
【0022】
図6は本発明に適用できる発振回路の一例を示しており、電極板14及び15で容量Cを形成し、電極板15に増幅器231を接続し、更にバンドパスフィルタ(位相調整)233及び増幅器234を接続し、増幅器234の出力Faが電極板14に(フィードバックとして)接続されている。増幅器231にはゲイン調整部232が設けられており、ゲイン調整部232で増幅器231のゲインを可変する。
【0023】
このような構成において、液体(水、油等)が電極板14及び15に接触すれば、電極板14及び15間の容量Cが変化する。よって、容量Cが小さいときは発振せず、容量Cが適正な値(漏液時)になると発振するようにすることにより、液体の有無を検出することができる。
【0024】
図7は本発明の漏液センサ30の構造例を示しており、円盤状の筐体31内に基板32が配設されており、基板32に発光器33及び受光器34が設けられている。発光器33及び受光器34に対向するようにその下方にプリズム35が設けられ、更に1対の電極36A及び36Bが設けられている。基板32上に検出回路が取り付けられていてもよく、筐体31が上下に分割可能に着脱可能に形成された合成樹脂部材で構成されていても良い。かかる構造の合成樹脂部材としては、ポリエチレンテレフタレート、アモルファス性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等が使用でき、また、一体成形用の熱可塑性エラストマーとしてはポリブタジエン樹脂が使用可能である。
【0025】
更に図8に別の実施形態の漏液センサ40を示して説明する。円盤状本体は筐体本体41とキャップ部42とで分割可能に形成され、筐体本体41の底部中央にプリズム43が配設され、本例では4対の電極44a、44b〜47a、47bが筐体本体41の底部に設けられている。また、筐体には電源や信号線等を配線する配線チューブ48が連結されている。電極44a、44b〜47a、47bは直列に接続されても、並列に接続されても良い。
【0026】
このように複数対の電極44a、44b〜47a、47bを設けることにより、広範囲での漏液を検出することができる。なお、本例では4対の電極を設けているが、電極の対数は任意である。
【0027】
本発明の漏液センサによれば、水、酸性溶液、アルカリ溶液等の電気的導通を有する液体や、超純水、アルコール、シンナー、ベンジン等の有機性溶液等の絶縁性を有する液体の漏液を、小量の漏液量でも確実に検知可能であると共に、20℃において、6×10−2N/m以下である低表面張力を有する液体、特に3×10−2N/m以下である低表面張力を有する薄層状液体の漏液でも、高速に検知することが可能である。ガソリン、灯油、機械油、シリコンオイル、食用油等の検出に最適な効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の光学式漏液センサの検知原理を示す図である。
【図2】従来の導電(導通)式漏液センサの検知原理を示す図である。
【図3】本発明の漏液センサの構成例を示す構成図である。
【図4】本発明の漏液センサの検出回路の一例を示すブロック図である。
【図5】F−V変換器の特性例を示す図である。
【図6】発振回路の他の例を示す回路図である。
【図7】本発明の漏液センサの他の構成例を示す構造図である。
【図8】本発明の漏液センサの更に他の構成例を示す底面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 床
10、30、40 漏液センサ
11、33、101 発光器
12、35、43、104 プリズム
13、34、105 受光器
14、15 電極板
20 検出回路
20A〜20C ランプ
21、231、234 増幅器
22、25 コンパレータ
23 発振器
24 F−V変換器
26A、26C AND回路
26B NOT回路
31 筐体
32 基板
41 筐体本体
42 キャップ部
48 配線チューブ
100 光学式漏液センサ
102 光
103 検出器底面
110、220 漏液
200 導電式漏液センサ
201 バッテリ
202 抵抗
203 電圧計
232 ゲイン調整部
233 バンドパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光器、プリズム及び受光器で成り、前記受光器の受光量で漏液を検出する光学式漏液センサ部と、1対の電極を発振要素として発振し、発振周波数の変化量で前記漏液を検出する導電式漏液センサ部とを具備し、2種類の液体の漏液を検出することを特徴とする漏液センサ。
【請求項2】
前記光学式漏液センサ部及び前記導電式漏液センサ部の各出力に基づいて、漏液の有無、漏液の種類を判定して出力する検出回路を具備した請求項1に記載の漏液センサ。
【請求項3】
前記検出回路は、前記光学式漏液センサ部から出力された検出信号を増幅器とコンパレータによって処理することにより液有無信号を出力するようになっている請求項2に記載の漏液センサ。
【請求項4】
前記検出回路は、前記導電式漏液センサ部の電極板に接続され、前記電極板を静電容量として作用させ、発振器の1要素として使用し、F−V変換器とコンパレータによって処理することにより、水と油を区別する区別信号を出力するようになっている請求項2に記載の漏液センサ。
【請求項5】
前記1対の電極に接続されたゲイン調整部を有する第1増幅器と、前記第1増幅器の出力に接続されたバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタの出力を入力接続され、出力を前記1対の電極の一方にフィードバックする第2増幅器とを具備して発振回路を形成している請求項2に記載の漏液センサ。
【請求項6】
前記検出回路は、前記液有無信号又は前記区別信号が出力されたとき、それらの出力を報知するランプで成っている請求項2乃至5のいずれかに記載の漏液センサ。
【請求項7】
前記検出回路は、前記導電式漏液センサ部の電極板に接続され、前記電極板を静電容量として作用させ、発振器の1要素として使用し、前記発振器の発振周波数を直接測定して処理するマイクロコンピュータ若しくは電子処理手段を具備している請求項2に記載の漏液センサ。
【請求項8】
前記マイクロコンピュータ若しくは電子処理手段の処理結果を表示する表示手段を更に具備している請求項7に記載の漏液センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−209363(P2008−209363A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48865(P2007−48865)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000133582)株式会社ツーデン (12)
【Fターム(参考)】