説明

潤滑油組成物

【課題】高い防錆能力を有するとともに、潤滑性、酸化安定性に優れた鉄系軸受用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】鉱油系または合成油系の潤滑基油に、塩基価が1〜100mgKOH/gの合成カルシウムスルフォネートおよび合成亜鉛スルフォネートを、組成物全量基準で前記スルホン酸塩の合計量として3〜30質量%、かつカルシウムと亜鉛の元素比を2:8〜8:2で配合したことからなる潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑基油に合成カルシウムスルフォネートと合成亜鉛スルフォネートを併用して防錆能力を高めつつ、軸受油としての基本性能(潤滑性、酸化安定性)を有する潤滑油組成物に関し、特には、鉄を主成分とする軸受の潤滑油として用いられる鉄系軸受用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な潤滑システムの高度化、高性能化、多機能化が進められるとともに、低コスト化、高信頼性が求められている。軸受は、回転運動を円滑に精度良く制御する基本的な機械要素として多くの機械システムに用いられている。軸受の種類は多種多様で、転がり軸受、すべり軸受、焼結金属含油軸受などに大別される。特に焼結金属含油軸受は、微細な金属粉末を成型、焼結、サイジングなどの工程を経て製造され、転がり軸受などに比べ安価な軸受として幅広い用途に適用されている。燒結金属含油軸受自体が多孔質体であるため、通常、潤滑油を真空含浸して軸受内に体積にして20%ほど含ませて使用されている。含浸する潤滑油は、適正な粘度を有し、潤滑性、防錆性、酸化安定性などの軸受油としての基本的な性能を有していることが求められる。古くはタービン油、作動油、エンジン油などの汎用潤滑油が含浸されて用いられてきたが、最近では、用途や潤滑条件にあわせて含油軸受専用油が使用されている。特に冷蔵庫などの低温での運転条件、自動車の電装部品のように幅広い温度で安定した作動特性が求められる用途、または高速化のため低粘度化が求められる用途では、合成油を基油とした高性能含油軸受専用油が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
現在、燒結金属含油軸受の材質は、銅系、鉄系に大別される。具体的には、純鉄系、鉄−銅系、鉄−炭素系、鉄−炭素−銅系、青銅系および鉛青銅系が規格化されている。これらの使い分けは、用途、使用条件・環境に依存し、高荷重低速度条件には鉄系、低荷重高速度条件には銅系が用いられている(非特許文献1参照)。
【0004】
鉄は金属材料の中でも比較的安価であり、資源としても豊富にあり、機械的強度も高い反面、耐食性に劣るなどの課題がある。特に日本は湿度が高い環境にあり、鉄系軸受に用いる潤滑油には、高い防錆能力が求められている。従来の潤滑油には、防錆性を付与する目的でカルボン酸系、金属スルフォン酸塩系などの防錆剤が配合されている。しかし、従来の潤滑油では、非常に高い湿度、水に浸る様な過酷な環境下では、短期間で錆が発生する問題があった。そのため、有機スルフォン酸亜鉛塩を防錆剤として配合した潤滑油組成物も提案されている(特許文献2参照)。しかし、非常に厳しい使用環境を想定した過酷な防錆試験では、十分な防錆効果は得られなかった。
【特許文献1】特開2003−261892号公報
【非特許文献1】トライボロジーハンドブック(養賢堂発行)、P438
【特許文献2】特許第4008992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い防錆能力を有するとともに、潤滑性、酸化安定性に優れた鉄系軸受用潤滑油組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、潤滑基油に、特定のCaスルフォネートと亜鉛スルフォネートの両方を、特定量配合することで、非常に高い防錆能力を有する潤滑油組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、次のとおりである。
(1)鉱油系または合成油系の潤滑基油に、塩基価が1〜100mgKOH/gの合成カルシウムスルフォネートおよび合成亜鉛スルフォネートを、組成物全量基準で前記スルフォネートの合計量として3〜30質量%、かつカルシウムと亜鉛の元素比を2:8〜8:2で配合したことからなる潤滑油組成物。
(2)前記カルシウムスルフォネートおよび亜鉛スルフォネートの塩基価が2〜50mgKOH/gである上記(1)に記載の潤滑油組成物。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載の潤滑油組成物を鉄を主成分とする軸受の潤滑油として用いることからなる鉄系軸受用潤滑油組成物。
(4)前記鉄を主成分とする軸受が、焼結金属含油軸受、転がり軸受、またはすべり軸受である上記(3)に記載の鉄系軸受用潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、高い防錆能力を有するとともに、潤滑性、酸化安定性に優れ、したがって、鉄を主成分とする軸受に用いることにより、例え、多湿な環境、水と接するような厳しい腐食環境においても軸受の発錆を防止し、軸受およびその装着装置に対して、長期に亘り安定性と信頼性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[潤滑基油]
本発明に用いる潤滑基油は、通常の潤滑基油として用いられている鉱油系の潤滑基油でも、合成油系の潤滑基油のいずれをも用いることができる。また、鉱油系の潤滑基油と合成油系の潤滑基油とを混合して用いることもできる。
【0011】
前記鉱油系の潤滑基油は、一般に、原油を常圧蒸留し、あるいはさらに減圧蒸留して得られる留出物を各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分を基油とし、これをそのまま、或いはこれに各種添加剤などを調合して調整される。前記精製プロセスとは、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ロウ、水素化脱ロウ、硫酸洗浄、白土処理などである。これらのプロセスを適宜の順序で組み合わせて処理して、本発明に好適な鉱油系の潤滑基油を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を、異なるプロセスの組み合わせ、順序により得られた、性状の異なる複数の精製油の混合油も好適な基油として用いることができる。
【0012】
合成油系の潤滑基油としては、加水分解安定性に優れる基材を用いることが好ましく、例えばポリ‐α‐オレフィン、ポリブテンや2種以上の各種オレフィンの共重合体などのポリオレフィン、さらにはポリエステル、ポリアルキレングリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどが挙げられる。なかでも、ポリ−α−オレフィンやポリエステルが、入手性、コスト面、粘度特性、酸化安定性、システム部材との適合性の面で好ましい。これらの合成油系の潤滑基油は、単独でも、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
これらの潤滑基油の物性は、用途に応じて適宜選定されるが、一般的には、40℃における動粘度が5〜600mm2/s、特には10〜580mm2/s、粘度指数が80〜150、流動点が−10℃以下のものが好適である。
【0014】
鉱油系、合成油系の潤滑基油を含めて、複数の潤滑基油の混合物を使用する場合、該基油混合物が上記物性を満足するものであれば、混合前の個々の基油がかかる物性の範囲を外れていても使用することができる。したがって、個々の鉱油系、合成油系の潤滑基油は、上記物性を必ずしも満足する必要はないが、上記物性の範囲内であることが好ましい。
【0015】
[スルフォネート]
本発明の潤滑油組成物では、合成カルシウムスルフォネートと合成亜鉛スルフォネートとは、併用する必要があり、これらは任意の割合で混合可能であるが、高い防錆効果を得るためには、この割合は、カルシウムと亜鉛の元素比で、2:8〜8:2の範囲とする必要がある。
【0016】
また、この合成カルシウムスルフォネートおよび合成亜鉛スルフォネートは、潤滑油に防錆剤として添加されるもののうち、塩基価が1〜100mgKOH/gと、低塩基価のものを用いなければ、高い防錆効果を得ることができない。好ましくは、2〜50mgKOH/gのものである。なお、このスルフォネートは、スルホン酸としてジノニルナフタレンスルホン酸、重質アルキルベンゼンスルホン酸のような合成スルホン酸を用いた合成スルフォネートを用いる必要がある。潤滑油留分中の芳香族炭化水素成分をスルホン化した石油スルホン酸を用いて得られた石油スルフォネートは防錆効果が悪く、使用できない。また,炭酸カルシウムなどをコロイド状に分散した塩基価200〜300mgKOH/gの高塩基性スルフォネートは,水の共存下で炭酸カルシウムコロイドが粗粒化し,スラッジとして析出するので好ましくはない.
【0017】
これら低塩基性の合成カルシウムスルフォネートと合成亜鉛スルフォネートの併用効果についてのメカニズムは明らかではないが、金属表面への吸着活性、形成される防錆被膜の強度が最適化されたものと考えられる。これらの最適化処方によると、非常に厳しい環境においても十分な防錆効果が得られる。
【0018】
その配合量は、組成物全量基準で、前記カルシウムスルフォネートと亜鉛スルフォネートの合計量で3〜30質量%配合する必要があり、3質量%以下では十分な防錆効果が見られず、30質量%以上ではコストに応じた防錆効果が期待できない。
【0019】
[その他添加剤]
なお、本発明の潤滑油組成物には、通常の潤滑油としての性能を付与するために、フェノール系やアミン系の酸化防止剤、リン酸エステル、有機硫黄化合物などの摩耗防止剤、リン系及びいおう系化合物の極圧剤、アルコール、高級脂肪酸類などの油性剤、シリコーンオイルなどの消泡剤、ベンゾトリアゾール誘導体などの金属不活性化剤などを適宜配合することができる。 これらの添加剤は、潤滑基油100質量部に対して、0.1〜10質量部、特には0.2〜5質量部、添加することが好ましい。
【0020】
[軸受]
本発明の潤滑油組成物は、油圧作動油、圧縮機油、工作機械油、金属加工油、軸受油、ギヤー油、冷凍機油及びタービン油等の工業用潤滑油、並びに自動車用潤滑油及び船舶用潤滑油等、各種の用途に用いることができるが、鉄を主成分とする軸受、特には焼結金属含油軸受、転がり軸受、すべり軸受に適用することが、本発明の効果を最も発揮できる。
【0021】
焼結含油軸受は、銅、青銅、黄銅、鉄、亜鉛などの金属粉末を混合、成形、焼結、サイジング工程により製造される多孔質の焼結含油軸受で、一般的には5〜30%の空隙がある。本発明では、これら材質のうち、特に防錆効果を必要とする鉄系焼結含油軸受に適用することが好ましい。
【0022】
また転がり軸受は、2個の軌道輪(内輪及び外輪)、転動体(玉又はころ)及び保持器により構成され、内輪と外輪との間にある転動体は互いに接触しないように保持器によって一定の間隔に保たれ、転がり運動をする構造であり、ラジアル軸受とスラスト軸受に大別される。これら転がり軸受も鉄、セラミックスなどの材質で構成されたものがあるが、本発明では、特に防錆効果が求められる鉄を主成分とした転がり軸受に適用することが好ましい。
【0023】
さらにすべり軸受は、荷重のかかる方向や時間変動で呼び方が異なるが、ジャーナル軸受、スラスト軸受、静圧軸受、動圧軸受などに大別され、具体的には真円軸受、部分円弧軸受、ティルティングパッド軸受などが挙げられる。これら軸受を構成する材質としては、各種プラスチック、青銅、アルミ合金、鋳鉄などが挙げられる。このうち、本発明では、防錆性が必要な鉄系すべり軸受に適用することが好適である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
[潤滑基油]
潤滑基油としては、以下に記載する4種類を用いた。
(1)鉱油(VG32):パラフィン系鉱油、動粘度(40℃)32mm2/s、粘度指数100、流動点−12.5℃
(2)PAO(VG32):ポリ‐α‐オレフィン重合体、動粘度(40℃)32mm2/s、粘度指数130、流動点−60℃
(3)PAO(VG100):ポリ‐α‐オレフィン重合体、動粘度(40℃)100mm2/s、粘度指数130、流動点−60℃
(4)エステル(VG32):ペンタエリスリトール系脂肪酸ポリオールエステル、動粘度(40℃)32mm2/s、粘度指数140、流動点−30℃
【0026】
[添加剤]
添加剤として、次のものを用いた。
A.防錆剤
合成Caスルフォネート[25]:重質アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム、塩基価25mgKOH/g
合成Znスルフォネート[28]:ジノニルナフタレンスルホン酸亜鉛、塩基価28mgKOH/g
合成Baスルフォネート[25]:ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム、塩基価25mgKOH/g
合成Caスルフォネート[200]:ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム、塩基価200mgKOH/g
石油Caスルフォネート[20]:石油スルホン酸カルシウム、塩基価20mgKOH/g
コハク酸部分エステル:酸価160mgKOH/g
【0027】
B.その他添加剤
アミン系酸化防止剤:アルキル化フェニル‐α‐ナフチルアミン
リン系摩耗防止剤:トリクレジルフォスフェート
【0028】
[試験方法]
上記の基油及び添加剤を、表1、2の上部に示す割合で配合して、実施例、比較例の潤滑油組成物を調製した。これら潤滑油組成物を以下の実用性能を評価する試験に供した。
【0029】
(外観)
各潤滑油組成物をガラス製110mlスクリュー瓶に入れ、外観を目視観察した。濁りが認められる場合は、配合した添加剤やそれらの反応物が均一に溶解していないことを示すので、潤滑油組成物としては好ましくはない。一方、透明であれば、潤滑油組成物として問題なく使用することができる。
【0030】
(動粘度、粘度指数)
JIS K2283に規定された方法に従い、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて、40℃および100℃における動粘度を測定した。また、粘度指数は、JIS K2283:6.4 B法に規定された方法により算出した。
【0031】
(酸価)
JIS K2501に規定された方法に従い、電位差滴定法による各潤滑油組成物の酸価(mgKOH/g)を測定した。
【0032】
(防錆試験)
防錆性のスクリーニングとして次の方法で評価した。
各潤滑油組成物に洗浄、脱脂処理した鉄系焼結軸受部品を浸し、真空引きの状態にて25分間含浸させ、前記軸受部品を紙ウェス等の上に取り出し、15分間静置して表面の余分な油を自然吸収させることにより除く。次いで、ペトリ皿に上記軸受部品を置き、軸受が半分浸る量の水で満たし、上部は密閉せず空気に触れさせた形で室内・室温の環境に静置する。この際、蒸発した分の水は適時補充する。都度状態を観察し、試験開始から軸受部品に発錆が認められるまでの日数をカウントし、これを発錆日数とした。
【0033】
この発錆日数が各潤滑油組成物の「防錆能力」となり、 また、長ければ長いほどその性能が優れていると言える。本試験は、油を含浸した鉄系軸受が水と空気(酸素)の双方に曝されるため、極めて錆が発生しやすい環境をシミュレートしている。一般的なタービン油や作動油では、1日経過で発錆が認められる。また一般的な防錆油では、40日程度で発錆が生じる。本発明では、一般的な防錆油の防錆効果に対し2倍の寿命を有する場合を「極めて高い防錆能力」とした。
【0034】
(酸化劣化試験)
酸化安定性を以下の方法で評価した。
ガラス製の100mlスクリュー瓶に各潤滑油組成物を80g量り入れ、洗浄、脱脂処理をした金属触媒(銅および鉄、棒状)を浸漬して、スクリュー瓶をアルミホイルで蓋をし、140℃に設定した空気浴槽中に静置して、240hr加熱し、各潤滑油組成物を強制劣化させた。各強制劣化後油に含まれるスラッジ発生量を、JIS B9931に規定された方法に従い、測定して、各潤滑油組成物の酸化安定性を評価した。値が小さいほど酸化安定性に優れており、実質的には5mg/100ml以下であれば問題なく潤滑油として使用可能である。
【0035】
(シェル4球摩耗試験)
ASTM D4172−94に規定された方法に従い、ROXANA MACHINE WORKS社製 シェル4球摩耗試験機を用いて行った。なお、試験にはJIS B1501玉軸受用鋼球(20等級、1/2インチ)を使用し、条件は以下の通りとした。
回転数:1200rpm
荷重:30kgf/cm2
温度:室温開始、以降なりゆき
時間:30分
各潤滑油組成物の耐摩耗性は試験後の摩耗痕径の大小により評価し、その値は小さいほど好ましく、0.4mm以下であれば、潤滑性は良好と言える。
【0036】
以上の結果を表1および表2に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1の実施例1〜8の潤滑油組成物は、作油後の外観がいずれも透明であり、添加剤配合による問題は生じていない。粘度特性、酸価は、配合した防錆剤の種類、配合量に依存して改善されている。
防錆試験については、実施例1〜8は、いずれも発錆日数が80日を超え、最長で95日目での発錆を示し、実使用上、極めて高い防錆能力を有していることが分かる。
酸化劣化試験では、実施例1〜8は、いずれもスラッジ発生量が5mg/100ml以下であり、耐スラッジ性に優れている。
耐摩耗試験では、いずれの実施例においても、摩耗痕は0.3mm台であり、潤滑性も良好である。
【0040】
これに対して、表2の比較例1〜8の潤滑油組成物うち、比較例7、8は、作油後に濁りが認められ、防錆剤の反応や溶解性に問題があった。粘度特性、酸価は、実施例と同様に、配合した添加剤組成に依存した値であった。
防錆性は、比較例1〜6で、発錆日数15〜45日を示し、一般的な防錆油の防錆レベルにとどまった。比較例7、8は、5日以内で発錆した。
酸化劣化試験では、スラッジ量5mg/100ml以下を示したのは比較例1、2のみであり、比較例3〜8は実用に用いることができないレベルであった。
潤滑性については、比較例7、8の摩耗痕が大きい他は、いずれも問題ないレベルであった。
【0041】
以上の実施例、比較例の評価より、低塩基性の合成カルシウムスルフォネートと合成亜鉛スルフォネートを併用することにより、極めて高い防錆能力、酸化安定性、潤滑性のいずれの性能をも満足することが分かった。
一方、比較例では、組成によっては酸化安定性や潤滑性に優れるものの、本試験条件での防錆性が一般的な防錆油のレベルと不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の潤滑油組成物は、高い防錆能力を有するとともに、潤滑性、酸化安定性に優れているので、油圧作動油、圧縮機油、工作機械油、金属加工油、軸受油、ギヤー油、冷凍機油及びタービン油等の工業用潤滑油、並びに自動車用潤滑油及び船舶用潤滑油等、各種の用途に利用することができ、鉄を主成分とする軸受、特には焼結金属含油軸受、転がり軸受、すべり軸受の潤滑油として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油系または合成油系の潤滑基油に、塩基価が1〜100mgKOH/gの合成カルシウムスルフォネートおよび合成亜鉛スルフォネートを、組成物全量基準で前記スルフォネートの合計量として3〜30質量%、かつカルシウムと亜鉛の元素比を2:8〜8:2で配合したことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記カルシウムスルフォネートおよび亜鉛スルフォネートの塩基価が2〜50mgKOH/gである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の潤滑油組成物を鉄を主成分とする軸受の潤滑油として用いることを特徴とする鉄系軸受用潤滑油組成物。
【請求項4】
前記鉄を主成分とする軸受が、焼結金属含油軸受、転がり軸受、またはすべり軸受である請求項3に記載の鉄系軸受用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2010−65142(P2010−65142A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232934(P2008−232934)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】