説明

濾過乾燥機

【課題】濾過時間及び乾燥時間を短縮することができるとともに、多用途に使用することができる濾過乾燥機を提供すること。
【解決手段】被処理物Wを処理する気体を選択的に供給する気体供給源5と、気体供給源5から気体を槽本体2内に導入するために攪拌翼3の背面及び槽本体2の上部にそれぞれ形成された供給口2A、3Aと、槽本体2内及び濾物の排出口20Aから気体を強制的に排出する強制排気手段6、7とを備え、気体供給源5から目詰まり防止用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して濾過手段4の濾過面に向けて噴射しながら気体供給源5から加圧用気体を槽本体2の上部に形成された供給口2Aから供給することにより被処理物Wを濾過した後、強制排気手段6、7によって槽本体2内の気体を排出しながら気体供給源5から乾燥用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して濾物に向けて噴射することにより濾物を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過乾燥機に関し、特に、濾過されて濾物となった被処理物を乾燥させるとともに、乾燥した被処理物を槽本体内から排出する濾過乾燥機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体粒子を含む液状の流動体からなる被処理物(例えば、スラリー等、以下同じ)を濾過し、濾過された濾物を乾燥させた状態で排出する濾過乾燥機が提案されている。
この濾過乾燥機は、密閉可能な槽本体と、槽本体内に配備された駆動手段により回転及び昇降する攪拌翼と、槽本体の底部に配備された槽本体に供給された被処理物を濾過する濾過手段と、濾液及び濾過手段によって濾過された濾物を乾燥させた状態で排出する槽本体の下部に配備された排出口とを備えるようにしている。
【0003】
ところで、この種の濾過乾燥機では、濾過された濾物の乾燥に際して、槽本体内を真空状態にして、槽本体を加温しながら槽本体内に配備された攪拌翼を回転させて攪拌乾燥を行うようにしている。
【0004】
このため、この濾過乾燥機では、濾過されて濾物となった被処理物を乾燥させる時間が長時間かかるという問題があった。
また、微小結晶や燐片結晶等を含む被処理物を濾過する場合には、濾布や濾板から構成される濾過手段の濾過面での目詰まりが発生しやすく、被処理物を濾過するための時間が長時間になるという問題もあった。
さらに、液体と液体又は液体と気体を接触させて固形物を生成させる(晶析反応)必要がある被処理物を処理する場合には、一般的には、反応槽や晶析槽が用いられるため、濾過乾燥機以外の設備が必要となる問題があった。
また、高機能樹脂、セラミック、電池・電子材料、医薬品等の製造に使用する場合、濾過後の濾物には不純物が付着していることが多く、不純物を除去する目的で洗浄工程が必要となり、一般的には、槽本体内に洗浄液を所定量投入し、攪拌翼を回転させて濾物の分散を図り所定時間洗浄する方法(リスラリー洗浄)や濾過した後の濾物の表面に洗浄液を投入し、加圧して濾物内に洗浄液を通して洗浄する方法(置換洗浄)が採られているが、いずれの方法においても所定の効果が得られるまで長時間の洗浄が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3599703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の濾過乾燥機の有する問題点に鑑み、濾過時間及び乾燥時間を短縮することができるとともに、反応による固形物の生成を槽本体内で行い、また、濾過後の濾物及び濾過手段の濾過面の洗浄を効果的に行うことができる濾過乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の濾過乾燥機は、密閉可能な槽本体と、該槽本体内に配備された駆動手段により回転及び昇降する攪拌翼と、槽本体の底部に配備された槽本体に供給された固体粒子を含む液状の流動体からなる被処理物を濾過する濾過手段と、濾液及び濾過手段によって濾過された濾物を乾燥させた状態で排出する槽本体の下部に配備された排出口とを備えた濾過乾燥機において、被処理物を処理する気体を選択的に供給する気体供給源と、該気体供給源から気体を槽本体内に導入するために攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口と、槽本体内の圧力が設定圧力以上になった場合に槽本体内の気体を排出するリリーフバルブと、槽本体内及び濾物の排出口から気体を強制的に排出する強制排気手段とを備え、前記気体供給源から目詰まり防止用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段の濾過面に向けて噴射しながら前記気体供給源から加圧用気体を槽本体の上部に形成された供給口から供給することにより被処理物を濾過した後、強制排気手段によって槽本体内の気体を排出しながら前記気体供給源から乾燥用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段によって濾過された濾物に向けて噴射することにより該濾物を乾燥させ、その後、強制排気手段によって濾物の排出口から気体を排出しながら前記気体供給源から濾物排出用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾物に向けて噴射することにより、その圧力で攪拌翼と濾過手段の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体内の濾物を濾物の排出口に集めて排出するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記気体供給源から供給される目詰まり防止用気体の圧力を、加圧用気体の圧力より高い圧力に設定することができる。
【0009】
また、前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、前記被処理物に反応を起こさせる反応物質を供給する反応物質供給源を備えることができる。
【0010】
また、前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、濾過手段によって濾過された濾物及び濾過手段の濾過面を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給源を備えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の濾過乾燥機によれば、被処理物を処理する気体を選択的に供給する気体供給源と、該気体供給源から気体を槽本体内に導入するために攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口と、槽本体内の圧力が設定圧力以上になった場合に槽本体内の気体を排出するリリーフバルブと、槽本体内及び濾物の排出口から気体を強制的に排出する強制排気手段とを備え、前記気体供給源から目詰まり防止用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段の濾過面に向けて噴射しながら前記気体供給源から加圧用気体を槽本体の上部に形成された供給口から供給することにより被処理物を濾過した後、強制排気手段によって槽本体内の気体を排出しながら前記気体供給源から乾燥用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段によって濾過された濾物に向けて噴射することにより該濾物を乾燥させ、その後、強制排気手段によって濾物の排出口から気体を排出しながら前記気体供給源から濾物排出用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾物に向けて噴射することにより、その圧力で攪拌翼と濾過手段の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体内の濾物を濾物の排出口に集めて排出するようにすることにより、攪拌翼の背面に形成した供給口から濾過工程のときには濾過面の目詰まりを防止する目詰まり防止用気体、乾燥工程のときには乾燥用気体を気体供給源から選択的に供給して、濾過時間及び乾燥時間を短縮化することができる。
また、強制排気手段によって、乾燥した被処理物を濾物の排出口から外部へ排出する際に、槽本体内の気体の流れを排出口に向かうようにして、乾燥した被処理物を槽本体内に残留させることなく排出することができる。
【0012】
また、前記気体供給源から供給される目詰まり防止用気体の圧力を、加圧用気体の圧力より高い圧力に設定することにより、目詰まり防止用気体が、効果的に濾過手段の濾過面に作用し、濾過面の目詰まりを防止することができる。
【0013】
また、前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、前記被処理物に反応を起こさせる反応物質を供給する反応物質供給源を備えることにより、被処理物と反応する反応物質によって、特に、攪拌翼の背面に形成された供給口から供給される反応物質を、攪拌翼を被処理物内に埋没させた状態で供給することで効果的に反応を生じさせ、結晶を生成することができるとともに、別の容器を用意して、被処理物を移すことなく1つの槽本体のみで結晶の生成から濾過・乾燥を行うことができる。
【0014】
また、前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、濾過手段によって濾過された濾物及び濾過手段の濾過面を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給源を備えることにより、特に、攪拌翼の背面に形成された供給口から、攪拌翼を被処理物に埋没させ、回転と昇降を繰り返した状態で、洗浄液を攪拌翼から噴射させながら洗浄を行うことで、洗浄されるべき被処理物に含まれる固体粒子(結晶)に直接洗浄液が接触する機会が増えるとともに、回転する攪拌翼から供給される洗浄液によって、液体状の被処理物内で乱流が形成され洗浄力が向上し、濾物及び濾過手段の濾過面の洗浄時間並びに洗浄後の濾過時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の濾過乾燥機の一実施例を示す正面図である。
【図2】同乾燥機の攪拌翼を示し、(a)は平面図、(b)一部切り欠き断面の正面図、(c)は(b)のX−X断面図である。
【図3】同濾過乾燥機の運転手順を説明する概略図で、(a)は槽本体内に被処理物を投入している状態を、(b)は攪拌翼の背面に形成した供給口から目詰まり防止用気体を噴出させながら攪拌翼を下端位置又は下端よりも若干上の位置で回転させている状態を示す。
【図4】図3に続く運転手順を説明する概略図で、(a)は加圧濾過工程の開始状態を、(b)は濾過工程が終了し、攪拌翼を上端位置まで移動させた状態を示す。
【図5】図4に続く運転手順を説明する概略図で、(a)は乾燥工程の開始状態を、(b)は攪拌翼を、低速で回転させながら下降させて濾物の掘り起こしを行いつつ、攪拌翼の背面に形成した供給口から乾燥用気体を噴射している状態を示す。
【図6】図5に続く運転手順を説明する概略図で、(a)は攪拌翼の背面に形成した供給口からの乾燥用気体の噴射量を減少させ乾燥工程の最終段階の状態を、(b)は攪拌翼の背面に形成した供給口から乾燥用気体を噴出させながら乾燥した被処理物を排出している状態を示す。
【図7】同濾過乾燥機で被処理物に反応を起こさせる反応物質を供給して行う運転手順を説明する概略図で、(a)は槽本体内に被処理物を投入している状態を、(b)は被処理物に対して反応物質供給源から所定量の反応物質を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して供給している状態を示す。
【図8】同濾過乾燥機で濾過された被処理物を洗浄する洗浄工程の運転手順を説明する概略図で、(a)は濾過され濾物となった被処理物が濾過手段に堆積されている状態の槽本体内に洗浄液供給源から洗浄液を供給している状態を、(b)は攪拌翼を、回転させながら低速で下降させ、攪拌翼の背面に形成した供給口から洗浄液を噴射させている状態を示す。
【図9】図8に続く洗浄工程を説明する概略図で、(a)は攪拌翼を停止しつつ、攪拌翼の背面に形成した供給口から洗浄液を噴射させながら下端位置まで下降させている状態を、(b)は攪拌翼の背面に形成した供給口から洗浄液を噴射させながら、正転・逆転及び昇降を繰り返し洗浄している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の濾過乾燥機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図9に、本発明の濾過乾燥機の一実施例を示す。
この濾過乾燥機1は、密閉可能な槽本体2と、槽本体2内に配備された駆動手段Mのうちモータ等の回転駆動手段M1により回転、シリンダ等の上下動駆動手段M2により昇降する攪拌翼3と、槽本体2の底部に配備された槽本体2に供給された固体粒子を含む液状の流動体からなる被処理物Wを濾過する濾過手段4と、濾液及び濾過手段4によって濾過された濾物を乾燥させた状態で排出する槽本体2の下部に配備された排出口20とを備え、被処理物Wを処理する気体を選択的に供給する気体供給源5と、気体供給源5から気体を槽本体2内に導入するために攪拌翼3の背面及び槽本体2の上部にそれぞれ形成された供給口2A、3Aと、槽本体2内の圧力が設定圧力以上になった場合に槽本体2内の気体を排出するリリーフバルブVと、槽本体2内及び濾物の排出口20Aから気体を強制的に排出する強制排気手段6、7とを備え、気体供給源5から目詰まり防止用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して濾過手段4の濾過面に向けて噴射しながら気体供給源5から加圧用気体を槽本体2の上部に形成された供給口2Aから供給することにより被処理物Wを濾過した後、強制排気手段7によって槽本体2内の気体を排出しながら気体供給源5から乾燥用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して濾過手段4によって濾過された濾物に向けて噴射することにより濾物となった被処理物Wを乾燥させ、その後、強制排気手段6によって濾物の排出口20Aから気体を排出しながら気体供給源5から濾物排出用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して濾物に向けて噴射することにより、その圧力で攪拌翼3と濾過手段4の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体2内の濾物を濾物の排出口20Aに集めて排出するようにしている。
【0018】
槽本体2は、ベル型ハウジング形状の缶体からなり、その周囲には加温用のジャケット(図示省略)が設けられ、濾物を乾燥させる乾燥工程の際にはジャケットに加温用の熱媒を供給し、槽本体2内を加温し、濾過され濾物となった被処理物Wの乾燥を促進させる。
槽本体2に形成される排出口20は、濾過手段4によって濾過され濾物となった被処理物Wを乾燥させた状態で排出する排出口20Aと、濾液を排出するための排出口20Bとが備えられ、排出口20Aは、開閉用の弁体によって、被処理物Wの濾過工程及び乾燥工程の作業中は閉鎖されている。また、排出口20Bにも開閉弁を配設し、濾過手段4により被処理物の濾過工程の作業中以外は閉鎖するようにしている。
また、槽本体2の上部には被処理物Wを投入する投入口21と、必要に応じて槽本体2内部を洗浄するための槽内洗浄用手段導入口(図示省略)が形成されている。
【0019】
攪拌翼3は、図2に示すように、回転駆動手段M1によって回転駆動する攪拌軸30の先端に配設される2〜3枚の円弧状に湾曲した翼部からなり、この翼部(攪拌翼3)の背面に被処理物Wを処理する気体を槽本体2内に供給する供給口3Aを形成する。
供給口3Aは、攪拌翼3の翼部の全長に亘って複数形成するようにしている。これによって、目詰まり防止用気体を噴射する際に、槽本体2の下部に配備された濾過手段4の濾過面全体に目詰まり防止用気体が行き渡る。
また、攪拌翼3の側端部にも供給口3A’を形成することで、槽本体2の側面に付着する被処理物Wを吹き払うことができる。
そして、攪拌翼3は、槽本体2の上部に固定される上下動駆動手段M2によって、回転駆動手段M1と共に昇降される。
【0020】
濾過手段4は、濾布や濾板の濾過面を有する部材によって構成され、槽本体2の底部全体に配設し、濾過面を通過した濾液は排出口20Bから外部に排出され、濾過された濾物は濾過面上に堆積する。
【0021】
気体供給源5は、被処理物Wの処理段階に合わせて、被処理物を処理するための気体を選択的に供給口2A、3Aから槽本体2内に供給するもので、被処理物Wを濾過する濾過工程のときには、槽本体2の上部に形成した供給口2Aから供給する加圧用気体及び攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから噴射する目詰まり防止用気体を供給する。
この目詰まり防止用気体の圧力は、槽本体2の上部に形成した供給口2Aから供給する加圧用気体の圧力よりも高い圧力に設定する。
これは、加圧用気体によって、槽本体2の内圧を上昇させ、槽本体2に供給される被処理物Wを濾過手段4で濾過する際、目詰まり防止用気体によって濾過手段4の濾過面に付着する濾物を濾過面から剥離させる必要があるためで、目詰まり防止用気体の圧力が加圧用気体の圧力以下の場合には濾過面に付着した濾物の剥離を行うことができないからである。
また、槽本体2内の圧力が設定圧力以上になった場合に、槽本体2内の気体を排出するリリーフバルブVの設定圧力は、槽本体2の上部に形成した供給口2Aから加圧用気体を供給する際に、槽本体2内の内圧が上昇することを防止するための圧力、つまり、加圧用気体の設定圧力とすることが好ましい。
【0022】
また、気体供給源5は、濾過工程によって濾物となった被処理物Wを乾燥させるための乾燥用気体を、攪拌翼3の背面に形成した供給口3A及び槽本体2の上部に形成した供給口2Aから選択的に供給することができるように構成されている。
【0023】
さらに、気体供給源5は、乾燥した濾物を、濾物の排出口20Aに集めて排出するための濾物排出用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して槽本体2内の濾物に向けて噴射するように供給するようにしている。これによって、濾物排出用気体の圧力で攪拌翼3と濾過手段4の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体2内の濾物となった乾燥した被処理物Wを集めて排出口20Aに向けてスムーズに送出することができる。
【0024】
強制排気手段6は、濾物の排出口20Aから槽本体2内の気体を強制的に排出するためのもので、排出口20Aにフィルタを配設した排気口6Aを形成し、吸引用のブロア(図示省略)等と開閉弁を介して接続するようにしている。
これによって、乾燥して濾物となった被処理物Wを、濾物の排出口20Aから外部へ排出する際に、槽本体2内の気体の流れを排出口20Aに向かうようにして、乾燥した被処理物Wの排出を促進するようにしている。
また、強制排気手段6を設置せずに、後述の第2の強制排気手段7又は自然排気手段を使用して、気体供給源5から濾物排出用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して槽本体2内の濾物に向けて噴射するように供給するようにすることもでき、上記と同様の作用を奏することができる。
【0025】
また、攪拌翼3の背面及び槽本体2の上部にそれぞれ形成された供給口3A、2Aに、被処理物Wに反応を起こさせる反応物質を供給する反応物質供給源51を備えることができる。これにより、被処理物Wと反応する反応物質によって、特に、攪拌翼3の背面に形成された供給口3Aから供給される反応物質を、攪拌翼3を被処理物内に埋没させた状態で供給することで効果的に反応を生じさせ、結晶を生成することができるとともに、別の容器を用意して、被処理部を移すことなく1つの槽本体2のみで結晶の生成から濾過・乾燥を行うことができる。
【0026】
また、攪拌翼3の背面及び槽本体2の上部にそれぞれ形成された供給口3A、2Aに、濾過手段4によって濾過された濾物及び濾過手段4の濾過面を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給源52を備えることができる。これにより、特に、攪拌翼3の背面に形成された供給口3Aから、攪拌翼3を被処理物に埋没させ、回転と昇降を繰り返した状態で洗浄液を噴射させながら洗浄を行うことで、洗浄されるべき被処理物Wに含まれる固体粒子(結晶)に直接洗浄液が接触する機会が増えるとともに、回転する攪拌翼3から供給される洗浄液によって、供給された洗浄液で液体状となった被処理物W内で乱流が形成され洗浄力が向上し、濾物及び濾過手段4の濾過面の洗浄時間並びに洗浄後の濾過時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
また、この濾過乾燥機1には、乾燥して槽本体2内に浮遊する粉体状の被処理物Wを吸引することにより排出する第2の強制排気手段7を設けるようにしている。
【0028】
この第2の強制排気手段7は、槽本体2内の気体を吸引するブロア71と、吸引する気体内の粉体(被処理物W)を捕集するバグフィルタ等からなる捕集手段70とからなる。このブロア71による吸引により、乾燥工程の際、槽本体2内を真空状態に近づけるようにしている。
捕集手段70と槽本体2との間には、比較的粒子径が大きい粉体を捕集するサイクロン(図示省略)を配設することもできる。
また、捕集手段70には、吸引した粉体が水分を含むときに、乾燥させるための加温用のジャケットを配備することが好ましい。
【0029】
また、この第2の強制排気手段7のブロア71と強制排気手段6の排気口6Aとを接続することができる。
この際、強制排気手段6の排気口6Aは、捕集手段70又はサイクロンの導入口と接続するようにするほか、ブロア71とを直接接続するようにしても構わない。
この第2の強制排気手段7又は自然排気手段を使用することにより、上記強制排気手段6を省略することができる。
【0030】
これによって、乾燥工程中に浮遊することのある被処理物Wの粉体を槽本体2内から吸引して回収することができるとともに、強制排気手段6によって排出される気体に含まれる粉体状の被処理物Wを回収することができる。
【0031】
攪拌翼3の背面及び側端部に形成した供給口3A、3A’は、濾過工程、乾燥工程及び排出工程や反応工程及び洗浄工程において、各工程の目的と機能に支障がない限り、攪拌翼の任意の位置に形成することができる。
【0032】
次に、この濾過乾燥機1による被処理物Wを濾過・乾燥・排出の手順を説明する。
【0033】
まず、被処理物Wを投入口21から槽本体2内に所定量投入する(図3(a)参照)。
次いで、攪拌翼3を下端位置又は下端よりも若干上の位置で回転させる(図3(b)参照)。このとき、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから加圧気体を投入しながら攪拌することで、被処理物Wが槽本体2内で効果的に攪拌される。
【0034】
次に、濾過工程である加圧濾過を開始する。このとき、攪拌翼3は、濾過手段4の濾過面の目詰まりを防止する目詰まり防止用気体を噴射するため、下端位置まで移動させた状態で回転させる。
また、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから噴射する目詰まり防止用気体の圧力は、槽本体2の上部に形成した供給口2Aから供給する加圧用気体の圧力よりも高い圧力に設定するとともに、リリーフバルブVの設定圧力を加圧用気体の設定圧力とする。
このとき、濾過手段4の下方に形成する濾液の排出口20Bを開放し、濾過された濾液を外部に排出するようにしている。
この状態で、攪拌翼3の回転数及び供給口3Aから噴射する目詰まり防止用気体の噴射量を調整しながら加圧濾過を継続する(図4(a)参照)。
【0035】
そして、槽本体2内の被処理物Wの粘性が上昇してきたとき、濾液の排出口20Bを閉鎖し、攪拌翼3を上端位置まで移動させ濾過工程を終了する(図4(b)参照)。
【0036】
次に、槽本体2の周囲に設けられている加温用のジャケットに蒸気や温水等の熱媒を供給し、槽本体2内を加温するとともに、第2の強制排気手段7によって槽本体2内の真空状態に近づけ、濾過され濾物となった被処理物Wを乾燥させる乾燥工程に入る(図5(a)参照)。
【0037】
濾過工程の最後に上端位置に移動させた攪拌翼3を、低速で回転させながら下降させて濾物の掘り起こしを行いつつ、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから乾燥用気体を噴射する(図5(b)参照)。
【0038】
攪拌翼3が下端位置に到達した後、攪拌翼3の回転数を徐々に上げることにより、被処理物Wの乾燥効率が向上する。これは水分を含んでいる濾物の乾燥が進んで粘性が低下し、攪拌翼3が回転する際の抵抗が低下するため回転数の上昇が可能となり、回転数を上昇させることにより乾燥用気体が濾物全体に行き渡るため乾燥効率が向上するものである。
また、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから噴射する乾燥用気体の噴射量は、徐々に少なくするようにする。これによって、乾燥し、粉体化した被処理物Wが、槽本体2内での舞い上がることを防止する(図6(a)参照)。
所定時間、槽本体2内の加温及び供給口3Aからの乾燥用気体の噴射を行うことによって、濾過され濾物となった被処理物Wの乾燥工程が終了する。
【0039】
そして、気体供給源5から濾物排出用気体を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して乾燥した被処理物Wに向けて噴射することにより、その圧力で攪拌翼3と濾過手段4の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体2内の濾物となった乾燥した被処理物Wを集めて排出口20Aに向けて排出するようにしている。
このとき、強制排気手段6によって濾物の排出口20Aから気体を排出しながら乾燥した被処理物Wの排出を行うことで、乾燥した被処理物Wを濾物の排出口20Aから外部へ排出する際に、槽本体2内の気体の流れを濾物の排出口20Aに向かうようにして、乾燥した被処理物Wの排出を促進するようにしている(図6(b)参照)。
【0040】
次に、イオンを持つ液体等、反応物質によって反応し、結晶を晶析する被処理物W1を処理する際の濾過乾燥機1の運転手順について説明する。
【0041】
この反応工程は、上述の濾過乾燥機1による被処理物Wを濾過・乾燥・排出する工程のうち、濾過工程の前に行われる工程であり、濾過工程、乾燥工程及び排出工程と洗浄工程については、上述の説明と同様であり、説明を省略する。
【0042】
まず、攪拌翼3を上端位置に移動させた状態で、イオンを持つ液体等、反応物質によって反応し、結晶を晶析する被処理物W1を投入口21から槽本体2内に所定量投入する(図7(a)参照)。
【0043】
次いで、攪拌翼3を回転させながら下降させ、被処理物W1内に埋没させる。
そして、反応物質供給源51から攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aを介して被処理物W1内に、所定量の反応物質(反応気体又は反応液体)を供給するようにする(図7(b)参照)。
このとき、反応物質を槽本体2の上部に形成した供給口2Aからも供給することもできる。
【0044】
所定量の反応物質の供給後、攪拌翼3を正転・反転させるとともに、昇降を繰り返すことで、被処理物W1の反応物質による反応を満遍なく行うことができる。
このとき、槽本体2の内周面で、攪拌翼3の昇降に干渉しない位置にバッフル板Bを配設することで反応速度を向上させることができる。
このように、攪拌翼3の背面に形成された供給口3Aから供給される反応物質を、攪拌翼3を被処理物W1内に埋没させた状態で供給することで、効果的に反応を生じさせ、結晶を生成することができるとともに、別の容器を用意して、被処理物W1を移すことなく1つの槽本体2のみで結晶の生成から濾過・乾燥を行うことができる。
【0045】
次に、高機能樹脂、セラミック、電池・電子材料、医薬品等の製造に使用する被処理物Wの場合等、濾過手段4によって濾過された被処理物Wに不純物が付着しており、濾物となった被処理物W及び濾過手段4の濾過面の洗浄が必要な場合の洗浄工程の手順について説明する。
この洗浄工程は、上述した濾過乾燥機1による被処理物Wを濾過・乾燥・排出の手順のうち、濾過工程と乾燥工程の間で行われる工程であり、洗浄工程前後の濾過工程、乾燥工程及び排出工程については、上述した説明と同様であり、説明を省略する。
【0046】
まず、濾過工程によって、濾過され濾物となった被処理物Wが濾過手段4に堆積されている状態の槽本体2内に、洗浄液供給源52から洗浄液を供給する(図8(a)参照)。
洗浄液の供給は、本実施例においては、槽本体2の上部に形成した供給口2Aから所定量の20〜30%を、残りの洗浄液を攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから供給するようにしているが、これに限られるものではなく、洗浄液の全量を供給口3Aから供給するようにしても構わない。
【0047】
次に、濾過工程の最後に上端に移動した攪拌翼3を、回転させながら低速で下降させる。このとき、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから洗浄液を噴射させる(図8(b)参照)。
【0048】
最初に供給した洗浄液内に攪拌翼3が埋没した状態で、攪拌翼3の回転を継続して攪拌翼3の下降を所定時間(本実施例においては2〜3分間)停止させる。
その後、所定距離(本実施例においては30〜40mm)の下降と停止を繰り返し、攪拌翼3を下端位置まで下降させる(図9(a)参照)。
【0049】
その後、攪拌翼3の背面に形成した供給口3Aから洗浄液の噴射を継続した状態で、攪拌翼3を正転・反転させるとともに、昇降を繰り返す。
そして、洗浄液を所定量供給した後においても、所定時間の間、攪拌翼3の正転・反転と昇降とを継続して洗浄工程を終了する(図9(b)参照)。
このように洗浄することによって、洗浄されるべき被処理物Wに含まれる固体粒子(結晶)及び濾過手段4の濾過面に直接洗浄液が接触する機会が増えるとともに、回転する攪拌翼3から供給される洗浄液によって、供給された洗浄液で液体状となった被処理物W内で乱流が形成され洗浄力が向上し、濾物及び濾過手段4の濾過面の洗浄時間並びに洗浄後の濾過時間の短縮化を図ることができる。
【0050】
以上、本発明の濾過乾燥機について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の濾過乾燥機は、濾過時間及び乾燥時間を短縮化することができるとともに、反応による固形物の生成を槽本体内で行い、また、濾物及び濾過手段の濾過面の洗浄を効果的に行うことができるという特性を有していることから、濾過乾燥効率の向上による製造工程の省エネルギ・省資源対策に寄与することができ、これにより、薬品、電子部品、化学、食品等の原料や中間体の濾過、乾燥、濾過後に不純物が混在しやすい被処理物の処理及びイオンを持つ液体等、反応物質によって反応し、結晶を晶析する被処理物を処理するための用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 濾過乾燥機
2 槽本体
2A 供給口
20 排出口
3 攪拌翼
3A 供給口
4 濾過手段
5 気体供給源
51 反応物質供給源
52 洗浄液供給源
6 強制排気手段
7 第2の強制排気手段
M 駆動手段
V リリーフバルブ
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な槽本体と、該槽本体内に配備された駆動手段により回転及び昇降する攪拌翼と、槽本体の底部に配備された槽本体に供給された固体粒子を含む液状の流動体からなる被処理物を濾過する濾過手段と、濾液及び濾過手段によって濾過された濾物を乾燥させた状態で排出する槽本体の下部に配備された排出口とを備えた濾過乾燥機において、被処理物を処理する気体を選択的に供給する気体供給源と、該気体供給源から気体を槽本体内に導入するために攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口と、槽本体内の圧力が設定圧力以上になった場合に槽本体内の気体を排出するリリーフバルブと、槽本体内及び濾物の排出口から気体を強制的に排出する強制排気手段とを備え、前記気体供給源から目詰まり防止用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段の濾過面に向けて噴射しながら前記気体供給源から加圧用気体を槽本体の上部に形成された供給口から供給することにより被処理物を濾過した後、強制排気手段によって槽本体内の気体を排出しながら前記気体供給源から乾燥用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾過手段によって濾過された濾物に向けて噴射することにより該濾物を乾燥させ、その後、強制排気手段によって濾物の排出口から気体を排出しながら前記気体供給源から濾物排出用気体を攪拌翼の背面に形成した供給口を介して濾物に向けて噴射することにより、その圧力で攪拌翼と濾過手段の濾過面の間に残留する濾物を含む槽本体内の濾物を濾物の排出口に集めて排出するようにしたことを特徴とする濾過乾燥機。
【請求項2】
前記気体供給源から供給される目詰まり防止用気体の圧力を、加圧用気体の圧力より高い圧力に設定してなることを特徴とする請求項1記載の濾過乾燥機。
【請求項3】
前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、前記被処理物に反応を起こさせる反応物質を供給する反応物質供給源を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の濾過乾燥機。
【請求項4】
前記攪拌翼の背面及び槽本体の上部にそれぞれ形成された供給口に、濾過手段によって濾過された濾物及び濾過手段の濾過面を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給源を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の濾過乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−104611(P2013−104611A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248590(P2011−248590)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(390031598)タナベウィルテック株式会社 (6)
【出願人】(513000861)デ ディートリッヒ プロセス システムズ アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】De Dietrich Process Systems AG
【住所又は居所原語表記】Switzerland 4410 Liestal Gestadeckplatz 6
【Fターム(参考)】