説明

灰溶融装置

【課題】スラブタップからの溶融スラグを略垂直下向きに滴下させるとともに、排ガス中の塩化物などの低沸点物質を水に溶かして除去すること。
【解決手段】灰分を燃焼溶融する溶融炉1と、溶融炉で生成された溶融スラグを排出するスラグタップ2と、スラグタップに連結されたスラグ排出シュート3と、スラグ排出シュートの下方部に設けられた水槽4と、を備えた灰溶融装置であって、スラグ排出シュートの一部下端と水槽の水面に隙間18を設け、スラグタップとスラグ排出シュートを通じて溶融炉の燃焼排ガスを抜き出す燃焼排ガス抜き出し管8を水槽4に接続し、隙間18と燃焼排ガス抜き出し管8の間を通る燃焼排ガスに対して散水すること。散水は水槽の水を循環する循環水20を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物ガス化溶融システムにおける灰溶融装置に係り、溶融スラグを容易に排出するとともに、廃棄物ガス化溶融システムの信頼性向上、メインテナンスコストの低減に好適な灰溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は従来技術に関する灰溶融装置における燃焼排ガス抜き出しシステムを示す図である。溶融炉の前流側に設けられたガス化炉にて生成された熱分解ガスとチャーは旋回溶融炉1に投入され、燃焼空気と反応することで高温燃焼し、溶融スラグと燃焼排ガスが生成される。燃焼排ガスは2次燃焼室7へ流入する。
【0003】
一方、生成された溶融スラグはスラグタップ2からスラグ排出シュート3を通り、水砕水槽4で急冷され、スラグコンベヤ5にて系外へ排出される。
【0004】
ガス化溶融システムでは旋回溶融炉1が最も高温の部位である。すなわち、旋回溶融炉1から排出された後のスラグは徐々に冷却されることとなる。そのため、溶融し難いスラグの場合には、旋回溶融炉1内では溶融して流動状態であるが、旋回溶融炉1を出たスラグはスラグタップ2付近で固化閉塞するといったトラブルが往々にして発生する。
【0005】
上述した固化閉塞を防止するために、旋回溶融炉1からの高温燃焼ガスの一部をスラグタップ2を経由して抜き出すことにより、スラグタップ2付近を加熱しスラグ固化トラブルを防止する方法が従来技術として提案されている。
【0006】
図2に示す従来技術によると、駆動空気用ファン9の空気を作動流体とするエジェクタ12を用いて、燃焼排ガス抜き出し管8を経由してスラグ排出シュート3から排ガスを吸引し、スラグタップ2に旋回溶融炉1からの高温燃焼ガスを通す方法である。エジェクタ12により吸引された燃焼排ガスは駆動空気用ファン9からの空気と混合し、2次燃焼用空気として混合ガス供給管13を通り、2次燃焼室入口絞り部6へ送られる。図2に示す従来技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−161411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、燃焼排ガス抜き出し管8を通じて吸引したガス流により、スラグ滴が振られて(スラグ滴がスラグタップ2からまっすぐ垂直方向に水槽4に向けて落下するのではなくて、ガス流に引きずられて偏流して)、スラグ排出シュート3内壁に衝突し付着固化したり、あるいはスラグ滴がガス流に乗って燃焼排ガス抜き出し管8内に吸い込まれる虞があり、また、吸引した燃焼ガスが燃焼排ガス抜き出し管8内で冷却されるに伴い、旋回溶融炉1で気化していたNaCl,CaClなどの塩化物、鉛、スズなどの低沸点物質が凝縮固化し、配管内に付着成長し配管を閉塞させる虞もあった。
【0008】
本発明の目的は、スラブタップからの溶融スラグを略垂直下向きに滴下させるとともに、排ガス中の塩化物などの低沸点物質を水に溶かして除去することで、ごみガス化溶融システムの信頼性向上、メインテナンスコストの低減を図る灰溶融装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
灰分を燃焼溶融する溶融炉と、前記溶融炉で生成された溶融スラグを排出するスラグタップと、前記スラグタップに連結されたスラグ排出シュートと、前記スラグ排出シュートの下方部に設けられた水槽と、を備えた灰溶融装置であって、
前記スラグ排出シュートの一部下端と前記水槽の水面に隙間を設け、
前記スラグタップと前記スラグ排出シュートを通じて前記溶融炉の燃焼排ガスを抜き出す燃焼排ガス抜き出し管を前記水槽に接続し、
前記隙間と前記燃焼排ガス抜き出し管の間を通る前記燃焼排ガスに対して散水する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、スラグタップから滴下するスラグが水平方向の振れが少なくなるので、スラグ滴がスラグ排出シュートの内壁に衝突し付着することがなくなる。
【0011】
また、高温の燃焼排ガスを水槽に設けた散水路を通過させることにより急速に冷却させることで、燃焼排ガス中に含まれる塩化物などの低沸点物質を水に溶かし込むことにより除去することができる。
【0012】
また、水槽の散水路で燃焼排ガスを冷却するので、後流の燃焼排ガス抜き出し管に残存低沸点物質を付着させることが無くなる。
【0013】
さらに、上述した効果達成によって、廃棄物のガス化溶融システムにおけるプラントのメインテナンスコストを低減し、プラント運用面での信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る灰溶融装置について、図1を参照しながら以下説明する。図1は本発明の実施形態に係る灰溶融装置における燃焼排ガス抜き出しシステムを示す図である。図1において、1は旋回溶融炉、2はスラグタップ、3はスラグ排出シュート、4は水砕水槽、5はスラグコンベア、8は燃焼排ガス抜き出し管、18は隙間、19は散水部、20は水砕水槽水循環系、21はポンプ、をそれぞれ表す。なお、図1は、燃焼排ガス抜き出し管6以降の構造については省略しているが、図2に示す構造と共通している。
【0015】
図1では本実施形態に関するスラグ排出シュート3と水砕水槽4の側断面を示している。図1によると、本実施形態の特徴は、スラグ排出シュート3の下端と水砕水槽4の水面との間に隙間18を設け、燃焼排ガス抜き出し管8を水砕水槽4に接続し、さらに、隙間18と燃焼排ガス抜き出し管8の間に散水部19を設ける構造にある。ここで、散水部19は、水砕水槽4の水面と水槽水の循環出口(ポンプ21の後流側)との間に設置され、スラグ排出シュート3の外壁と燃焼排ガス抜き出し管8に接続されている。
【0016】
水槽4の水循環系はポンプ21によって水槽水を循環入口で吸い上げて循環出口から散水部19に注水するようになっている。散水部19には全面に亘り複数の孔が設けられていてこの孔を通して水槽水面に向かって散水される。散水部19から水槽水面の間の散水路に隙間18を通った燃焼排ガスが通過することで、燃焼排ガスが散水によって冷却されることとなる。
【0017】
ここで、水砕水槽水循環系20は図1では省略化しているが従来技術においても水槽の水を循環する循環系統自体は存在し、本発明の実施形態ではこの循環系を利用して燃焼排ガスへの散水に利用しているものである。また、水槽水循環系20で入口側(ポンプ21の前流)にストレーナを設置すると、水槽中のスラグなどがポンプ21に混入する虞はなくなる。
【0018】
本実施形態において、燃焼排ガス抜き出し管8を通じて、図2に示すような、駆動空気用ファン9やエジェクタ12(図1には不図示)などを用いて燃焼排ガスを吸引すると、スラグ排出シュート3の下端に設けた隙間18から燃焼排ガスが吸引され、スラグタップ2の燃焼排ガスはほぼ垂直に下向きに流れる。
【0019】
その結果、スラグ滴をスラグ排出シュート3の水平方向に振らせる速度成分を小さくすることができる。すなわち、図2に示すようにスラグタップ2からのスラグ滴がガス流に振られてスラグ排出シュート3内壁に衝突付着することを防止できる。
【0020】
スラグタップ2から吸引した高温の燃焼排ガスは、スラグ排出シュート3下端に設けた隙間18を経由し、散水部19を通過して燃焼排ガス抜き出し管8によりエジェクタ12(図2参照)へ吸引される。
【0021】
このように、燃焼排ガスを水砕水槽4に設けた散水部19を通過させることにより、高温の燃焼排ガスを急速に冷却させるとともに、ガス中に含まれる塩化物などの低沸点物質を水に溶かし込むことにより除去することができ、配管閉塞の原因となる低沸点物質を後流(燃焼排ガス抜き出し管8)に流さないようにすることができる。
【0022】
燃焼排ガス抜き出し管8を通じて抜き出したガスは、図2に示した従来技術と同様にエジェクタ12などを用いて2次燃焼室入口絞り部6へ送り、未燃ガスなどを完全燃焼させる。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態の特徴は、次のような構成と、機能ないし作用を奏するものである。すなわち、スラグ排出シュート下端と水砕水槽の水面に隙間を設け、スラグ排出シュートを通じて溶融炉の高温燃焼排ガスを抜き出すための燃焼排ガス抜き出し管を水砕水槽の一部に接続し、隙間を有したスラグ排出シュート下端と水砕水槽に接続した燃焼排ガス抜き出し管の間に設けた散水部で燃焼排ガスに散水できるように構成する。
【0024】
このような構成を採用することによって、スラグ排出シュート下端に設けたガス抜き出し通路がスラグタップから離れれば離れる程、幾何学的に見てガス流れの鉛直方向のガス速度成分が増し、水平方向のガス速度成分が小さくなるため、スラグ滴の水平方向の振れが少なくなる。したがって、スラグタップから滴下するスラグがスラグ排出シュートの内壁に付着することが殆どなくなる。
【0025】
また、スラグ排出シュートの一部における下端と水砕水槽の水面との隙間から吸引した燃焼排ガスを、水砕水槽に設けた散水路を通過させることにより、高温の燃焼排ガスを急速に冷却するとともに、ガス中に含まれる低沸点物質を水に溶かし込むことにより除去することができ、燃焼排ガス抜き出しの配管閉塞の原因となる低沸点物質を後流に流さないようにできる。また、低沸点物質が完全には除去されず、燃焼排ガス中に残ったとしても燃焼排ガスが冷却されているために配管内に付着せずに空気搬送により2次燃焼室へ送り込まれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る灰溶融装置における燃焼排ガス抜き出しシステムを示す図である。
【図2】従来技術による灰溶融装置のガス抜き出しシステムの概略構造図である。
【符号の説明】
【0027】
1 旋回溶融炉
2 スラグタップ
3 スラグ排出シュート
4 水砕水槽
5 スラグコンベア
6 絞り部
7 2次燃焼室
8 燃焼排ガス抜き出し管
9 駆動空気用ファン
10 ダンパ
11 駆動空気用配管
12 エジェクタ
13 混合ガス供給管
14 2次燃焼用空気ヘッダ
15 2次燃焼用空気配管
16 2次燃焼空気ダンパ
17 温度測定箇所
18 隙間
19 散水部
20 水砕水槽水循環系
21 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灰分を燃焼溶融する溶融炉と、前記溶融炉で生成された溶融スラグを排出するスラグタップと、前記スラグタップに連結されたスラグ排出シュートと、前記スラグ排出シュートの下方部に設けられた水槽と、を備えた灰溶融装置であって、
前記スラグ排出シュートの一部下端と前記水槽の水面に隙間を設け、
前記スラグタップと前記スラグ排出シュートを通じて前記溶融炉の燃焼排ガスを抜き出す燃焼排ガス抜き出し管を前記水槽に接続し、
前記隙間と前記燃焼排ガス抜き出し管の間を通る前記燃焼排ガスに対して散水する
ことを特徴とする灰溶融装置。
【請求項2】
請求項1に記載の灰溶融装置において、
前記散水は、前記水槽の水を循環する循環水を用いることを特徴とする灰溶融装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−84065(P2006−84065A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267226(P2004−267226)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】