説明

炉開閉装置

【課題】 密封性の高い炉開閉装置を提供する。
【解決手段】 仕切り扉31が加熱炉2の開口2aを開閉する炉開閉装置21において、仕切り扉31を開口2aに沿って移動する駆動機構71と、閉位置にある仕切り扉31が収まる開閉ケーシング50と、この開閉ケーシング50から仕切り扉31に沿って突出する複数のガイドレール62と、仕切り扉31から突出して各ガイドレール62に係合する複数のシールレール32とを備え、各ガイドレール62と各シールレール32の係合部によって加熱炉2を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の開口を仕切り扉が開閉する炉開閉装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、廃棄物を加熱によって熱分解する加熱炉を備え、この加熱炉にコンテナを介して廃材を搬送する炭素製造装置が開示されている。
【0003】
この種の炭素製造装置は、加熱炉に不活性ガス等を注入して無酸素状態または低酸素濃度状態とした後、ヒータを作動させて加熱炉の温度を所定値まで上昇させる。これにより、コンテナの廃材を熱分解して炭化させ、熱分解により生ずる加熱炉から分解ガスを取り出すようになっている。
【0004】
炭素製造装置は、加熱炉の開口を開閉する炉開閉装置を備え、仕切り扉を開作動させて加熱炉に廃材を積んだコンテナを搬入し、仕切り扉を加熱炉の開口縁部に押し付けて加熱炉を封止するようになっている。
【特許文献1】特開平9−14624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の炉開閉装置にあっては、加熱炉の温度が数百度を超えて上昇するのに伴って、加熱炉の開口縁部に押し付けられる仕切り扉が熱変形をするため、その密封性を確保することが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、密封性の高い炉開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加熱炉の開口を開閉する仕切り扉を備える炉開閉装置において、仕切り扉を加熱炉の開口に沿って移動する駆動機構と、閉位置にて仕切り扉が収まる開閉ケーシングと、この開閉ケーシングから仕切り扉に沿って突出する複数のガイドレールと、仕切り扉から突出して各ガイドレールに係合する複数のシールレールとを備え、各ガイドレールと各シールレールの間に画成されるラビリンス状のシール間隙によって加熱炉を封止することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、仕切り扉が扉室に収まる閉位置にて、仕切り扉の各シールレールと開閉ケーシングの各ガイドレールは互いに係合し、両者の間にラビリンス状のシール間隙が画成され、加熱炉を封止する。
【0009】
加熱炉の温度が数百度を超えて上昇するのに伴って仕切り扉が熱変形しようとする場合、各シールレールと各ガイドレール間のシール間隙が狭まり、炉開閉装置の密封性が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、図1に本発明が適用可能な炭素製造装置の一例を示す。
【0012】
この炭素製造装置1は、略直方体の空間として画成される加熱炉2と、この加熱炉2を断熱材9を介して仕切る炉ケーシング3と、加熱炉2を加熱するヒータ8と、加熱炉2にてコンテナ(搬送物)4を搬送するコンベア10と、コンテナ4の位置を検出するコンテナ位置検出機構20とを備える。
【0013】
コンテナ4には複数のパレット7が多段に収められ、各パレット7に例えば廃材を破砕したチップ等が敷き詰められる。
【0014】
コンベア10は加熱炉2の下方に配置され、炉ケーシング3内にてコンテナ4を搬送する。コンベア10は、左右に配置される前後スプロケット11,12と、この前後スプロケット11,12に渡って掛け回される左右のチェーン13とを備える。前のスプロケット12に炉ケーシング3の外側に設けられるモータ(図示せず)の駆動力が伝達され、左右のチェーン13が循環する。コンテナ4は左右のチェーン13上に載せられ、図1に白抜き矢印で示す進行方向に搬送される。
【0015】
ヒータ8はコンテナ4を取り囲むように上下左右に配置される。加熱炉2に図示しない不活性ガス注入管及び排出ガス管5,6が配設され、加熱炉2の温度、加熱時間、圧力、酸素濃度等が図示しない制御装置によって制御される。炭素製造装置1は、加熱炉2に不活性ガスを注入して無酸素状態または低酸素濃度状態とした後、ヒータ8を作動させて加熱炉2の温度を所定値まで上昇させる。これにより、コンテナ4の廃材を熱分解し、熱分解により生ずる分解ガスを取り出すように構成されている。
【0016】
炭素製造装置1は、仕切り扉を介して加熱炉2の前後開口を開閉する炉開閉装置を備え、各仕切り扉を開作動させて加熱炉2に廃材を積んだコンテナ4を搬入、搬出するようになっている。
【0017】
以下、その具体的な例につき図2〜3に示した炉開閉装置21の実施形態を説明する。
【0018】
炉開閉装置21は、加熱炉2の開口2aを開閉する仕切り扉31と、仕切り扉31を収装する開閉ケーシング50と、仕切り扉31を開口2aに沿って移動する駆動機構71と、仕切り扉31を挿通させる差込口55と、閉位置にて仕切り扉31が収まる扉室51と、この扉室51を画成する各扉室壁部52〜54と、各扉室壁部52〜54から仕切り扉31に沿って突出する複数のガイドレール62と、仕切り扉31から突出して各ガイドレール62に係合する複数のシールレール32とを備え、各ガイドレール62と各シールレール32の係合部によって加熱炉2を封止する。
【0019】
扉室51を画成する開閉ケーシング50は炉ケーシング3に連結される。扉室51は加熱炉2の開口2aに連続し、ローラコンベア14,15を介して搬送されるコンテナ4が通過する。
【0020】
開閉ケーシング50は中空構造とし、その内部に断熱材49が介装される。
【0021】
開閉ケーシング50は扉室51を画成する各扉室壁部52〜54を有する。左右の扉室壁部52,53は垂直方向に延び、下方の扉室壁部54は各扉室壁部52,53の下端を結んで水平方向に延びる。
【0022】
ガイドレール62は各扉室壁部52〜54に渡ってコの字形に延びる。開閉ケーシング50には4本のガイドレール62が所定の間隔で並んで固設される。各ガイドレール62は断面四角形の中空部材を用いる。
【0023】
仕切り扉31は中空構造のドア本体33を有し、その内部に断熱材34〜36が介装される。ドア本体33は扉室51に収まる直方体の外形を持つ。
【0024】
シールレール32はドア本体33の左右側端面と下端面に渡ってコの字形に延びる。ドア本体33には4本のシールレール32が所定の間隔で並んで固設される。各シールレール32は断面L字形の部材を用いる。断面L字形の各シールレール32は断面四角形のガイドレール62の角部に沿うように固設される。
【0025】
各シールレール32と各ガイドレール62は互いに所定の間隙(冷間時において例えば1mm)を持って対峙する。これにより各シールレール32と各ガイドレール62の間にはラビリンス状のシール間隙が画成される。
【0026】
ドア本体33はその上部に中空構造の延長ボックス部37を有し、この延長ボックス部37が閉位置にて開閉ケーシング50の差込口55に収まる。
【0027】
ドア本体33はその上端板38を延長ボックス部37の側壁部から突出させたフランジ38を有し、このフランジ38が閉位置にて開閉ケーシング50に形成される差込口55の開口縁部に着座し、差込口55を閉塞する。
【0028】
炉開閉装置21は、開位置にて仕切り扉31が収まる格納室66と、この格納室66を断熱する断熱材67とを備える
開閉ケーシング50の上部には格納ケーシング65が固設される。この格納ケーシング65内に格納室66が画成され、格納ケーシング65の内壁面に断熱材67が設けられる。
【0029】
駆動機構71は格納ケーシング65内を貫通するシャフト72と、このシャフト72を回転駆動するモータ73と、シャフト72に連結される対のスプロケット74と、各スプロケット74に掛け回される対のチェーン75とを備え、各チェーン75によって仕切り扉31を昇降させることにより、仕切り扉31が開口2aに沿って移動する。こうしてモータ73は格納ケーシング65の外側に設けられており、耐熱性が確保される。
【0030】
駆動機構71は格納ケーシング65内に立設される対のガイド柱77と、各ガイド柱77を介して昇降可能に支持されるビーム状のウェイト78とを備え、各チェーン75の一端をウェイト78に連結し、各チェーン75の他端を仕切り扉31の上端部に連結する。ウェイト78が各チェーン75に張力を与えることにより、各チェーン75が各スプロケット74に掛け回された状態を維持し、各チェーン75を介して仕切り扉31を昇降させられる。
【0031】
シャフト72は格納ケーシング65に対の軸受ハウジング80を介して回転可能に支持される。軸受ハウジング80は中空構造とし、その内部に断熱材79が介装される。
【0032】
シャフト72の一端部にはスプロケット81が連結され、モータ73の出力軸にはスプロケット82が連結され、各スプロケット81,82の間にチェーン83が掛け回される。これらによってモータ73の回転がシャフト72に伝達される。
【0033】
炉開閉装置21は、仕切り扉31の位置を検出する扉位置検出機構90を備える。この扉位置検出機構90は、シャフト72の他端部に連結されるスプロケット91と、格納ケーシング65に回転可能に支持されるスプロケット92と、各スプロケット91,92の間に掛け回されるチェーン93と、チェーン93に連結されたロブに当接して作動する対のリミットスイッチ94,95とを備える。仕切り扉31が閉位置に来ると一方のリミットスイッチ95がONとなり、仕切り扉31が開位置に来ると他方のリミットスイッチ94がONとなる。こうして各リミットスイッチ94,95は格納ケーシング65の外側に設けられており、耐熱性が確保される。
【0034】
制御装置はコンテナ4の位置を検出するコンテナ位置検出機構20と扉位置検出機構90とからそれぞれ送られる検出信号を入力し、加熱炉2にコンテナ4を自動的に搬入、搬出するとともに、これにあわせて炉開閉装置21を作動させて加熱炉2を自動的に開閉するシーケンス制御を行う。
【0035】
炉開閉装置21は以上のように構成されて、次に作用及び効果について説明する。
【0036】
仕切り扉31が図2、図3に2点鎖線で示すように開位置にあるとき、仕切り扉31は格納室66に収まり、扉室51が開かれる。
【0037】
仕切り扉31が図2、図3に実線で示すように閉位置にあるとき、仕切り扉31は扉室51に収まり、扉室51を閉塞する。
【0038】
図4に示すように、この閉位置にて仕切り扉31の各シールレール32と開閉ケーシング50の各ガイドレール62は互いに係合し、両者の間にラビリンス状のシール間隙が画成され、加熱炉2を封止する。
【0039】
加熱炉2の温度が数百度を超えて上昇するのに伴って仕切り扉31が熱変形しようとする場合、各シールレール32と各ガイドレール62間のシール間隙が狭まり、密封性が維持される。
【0040】
断面四角形の中空部材によって形成された各ガイドレール62が仕切り扉31に対して大きく熱膨張することにより、各シールレール32と各ガイドレール62間のシール間隙が冷間時の寸法(例えば1mm)に対して1/5程度に縮小し、炉開閉装置21の密封性を十分に確保することができる。なお、各シールレール32を各断面四角形の中空部材に形成し、各ガイドレール62をプレート状に形成しても良い。
【0041】
炉開閉装置21は、仕切り扉31が挿通する差込口55と、仕切り扉31から突出するフランジ38とを備え、閉位置にてこのフランジ38が差込口55の開口縁部に着座することによって差込口55を閉塞する。これにより、加熱炉2のガスが仕切り扉31と差込口55の間を通って抜けることを十分に抑えられる。
【0042】
炉開閉装置21は、開位置にて仕切り扉31が収まる格納ケーシング65を備え、駆動機構71は仕切り扉31をこの格納ケーシング65と開閉ケーシング50の間で昇降させるため、炉開閉装置21の介装スペースを小さくし、炭素製造装置1の小型化がはかれるる。
【0043】
格納ケーシング65に断熱材67を介装し、格納ケーシング65の外側に駆動機構71のモータ73と扉位置検出機構90のリミットスイッチ94,95を設けたため、モータ73とリミットスイッチ94,95耐熱性を確保できる。
【0044】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の炉開閉装置は、廃材等を加熱処理する炭素製造装置に限らず、他の装置にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態を示す炭素製造装置の断面図。
【図2】同じく炉開閉装置の正面断面図。
【図3】同じく炉開閉装置の縦断面図。
【図4】同じく炉開閉装置の横断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 炉開閉装置
2 加熱炉
2a 開口
3 ケーシング
10 コンベア
21 炉開閉装置
31 仕切り扉
32 シールレール
38 フランジ
50 開閉ケーシング
55 差込口
71 駆動機構
62 ガイドレール
65 格納ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉の開口を開閉する仕切り扉を備える炉開閉装置において、
前記仕切り扉を前記加熱炉の開口に沿って移動する駆動機構と、閉位置にて前記仕切り扉が収まる開閉ケーシングと、この開閉ケーシングから仕切り扉に沿って突出する複数のガイドレールと、仕切り扉から突出して各ガイドレールに係合する複数のシールレールとを備え、各ガイドレールと各シールレールの間に画成されるラビリンス状のシール間隙によって加熱炉を封止することを特徴とする炉開閉装置。
【請求項2】
前記ガイドレールと前記シールレールのいずれか一方を断面四角形の中空部材によって形成したことを特徴とする請求項1に記載の炉開閉装置。
【請求項3】
前記仕切り扉が挿通する差込口と、前記仕切り扉から突出するフランジとを備え、閉位置にてこのフランジが前記差込口の開口縁部に着座することによって前記差込口を閉塞することを特徴とする請求項1または2に記載の炉開閉装置。
【請求項4】
開位置にて前記仕切り扉が収まる格納ケーシングを備え、前記駆動機構は前記仕切り扉をこの格納ケーシングと前記開閉ケーシングの間で昇降させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の炉開閉装置。
【請求項5】
開位置にて前記仕切り扉が収まる格納ケーシングを備え、この格納ケーシングに断熱材を介装し、前記格納ケーシングの外側に前記駆動機構のモータを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の炉開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−64496(P2007−64496A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247304(P2005−247304)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】