説明

炊飯器

【課題】 低たんぱく米に対する炊飯性能を向上させた炊飯器を提供する。
【解決手段】 メニュースイッチ53で選択可能な炊飯コースに低たんぱく米コースを設け、低たんぱく米コースが選択された時には、白米炊飯とは異なる低たんぱく米コースの加熱パターンに基づき、低たんぱく米炊飯加熱を行う。低たんぱく米は白米に比べ吸水が早く吸水量が多いため、低たんぱく米炊飯加熱では、吸水工程である「ひたし」工程を省略し、沸騰加熱後、弱火加熱を行う。これにより、ご飯が軟らかくなりすぎたり、ご飯が炊けていない物になったりすることなく、低たんぱく米を炊飯器で手軽に炊き上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯や保温を行なう炊飯器に関し、特に低たんぱく米に対する炊飯性能を向上させた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるような炊飯器でご飯を炊く時は、米と水を入れた鍋を加熱し、蓋の結露防止のため蓋を加熱していた。近年は、鍋側面を電磁誘導や電熱式ヒータで加熱するものや、鍋上部を電熱式ヒータで加熱するものなど、鍋側面の加熱機能を充実させた炊飯器が登場してきているが、鍋底面の温度を検知し、炊飯・保温時に鍋側面を最適に温度管理することが技術課題となっている。
【0003】
ところで、近年は、精米技術や、乳酸菌を使って米からたんぱく分を取除く技術等により、米を洗わずに水と一緒に鍋に入れて炊き上げることができる米、所謂無洗米が多く販売されるようになってきている。また、近年、腎不全患者や血糖値の高い方の食事療法用として低たんぱく米,低カロリー米(米粒タイプで米がα化されたもの)等が市販されている。この低たんぱく米は白米を加工して作られている(例えば特許文献2)ため、含水率が20〜28%と高く、一度α化されているため、水の吸水も早いという特徴を有している。
【特許文献1】特開2003−310432号公報
【特許文献2】特開平6−217719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記低たんぱく米を従来の一般的な炊飯器の白米コースで炊飯した場合は、鍋に接触する部分のご飯が固くなったり、全体にご飯がやわらかくなりすぎたりして、最適な状態で炊飯することが困難であった。これは、一般の白米コースでは、「ひたし」(吸水工程)が炊飯制御のなかに組み込まれているために、吸水が早くかつ吸水量も多い低たんぱく米が必要以上に鍋内の水を吸水し、この吸水工程の段階で水がなくなってしまい、中心部へ熱を伝え難くなるためである。さらに、低たんぱく米は糊化が早く、温度の高い鍋内面側から糊化が始まることにより米粒間隔がなくなり、鍋内面周辺の米粒間を水が通らず、中心部へ熱が伝わり難くくなるためでもある。その結果、鍋内面側の温度だけが高くなり、中心部が十分に熱せられないまま、鍋底面の温度が白米制御温度に達して炊飯を終了することとなり、軟らかい物,炊けていない物になってしまう虞がある。
【0005】
また、早炊きコースのある炊飯器もあるが、炊飯時の米の温度が98℃に達していないとご飯に粉っぽさが残り食味が低下する虞があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、低たんぱく米に対する炊飯性能を向上させた炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における請求項1の炊飯器では、低たんぱく米が白米とは異なる特性を有していることに着目し、低たんぱく米コースを選択して炊飯した場合には、炊飯手段が、白米炊飯と異なる低たんぱく米用の加熱動作制御を行なう。これにより、低たんぱく米に適した加熱動作で炊飯を行うことができる。
【0008】
本発明における請求項2の炊飯器では、低たんぱく米が白米に比べ吸水が早く吸水量が多いことに着目し、炊飯手段が、炊飯工程から吸水工程を省く加熱動作制御を行うことにより、低たんぱく米が必要以上に吸水することを防ぐことができる。
【0009】
本発明における請求項3の炊飯器では、選択手段を白米コースと低たんぱく米コースとを交互に切り替えるものとすることにより、選択手段を操作した時に順次循環的に切り替わる炊飯コースが、他の炊飯コースに比べ頻繁に使用される白米コースと低たんぱく米コースに限定されるため、使用頻度が高い炊飯コースの選択が容易になる。
【0010】
本発明における請求項4の炊飯器では、初期状態ですでに低たんぱく米コースが選択されているため、選択手段を操作しなくてもすぐに低たんぱく米炊飯を行なうことができる。
【0011】
本発明における請求項5の炊飯器では、低たんぱく米用水位線を白米用水位線とは別に設けているため、低たんぱく米炊飯に適した水量に調整することが容易になる。
【0012】
本発明における請求項6の炊飯器では、おかゆ用水位線を白米用水位線とは別に設けているため、おかゆの調理に適した水量に調整することが容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によると、低たんぱく米を適度な硬さで手軽に炊き上げることができる。
【0014】
本発明の請求項2によると、低たんぱく米を軟らかくなりすぎることなく炊き上げることができる。
【0015】
本発明の請求項3によると、使用頻度が高い白米コースや低たんぱく米コースが選択しやすくなり、利便性を向上させることができる。
【0016】
本発明の請求項4によると、選択手段を操作しなくてもすぐに低たんぱく米炊飯を行なうことができ、利便性を向上させることができる。
【0017】
本発明の請求項5によると、低たんぱく米炊飯時に容易に最適な水量に調整することができる。
【0018】
本発明の請求項6によると、おかゆ調理時に容易に最適な水量に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の炊飯器の一実施例について図を参照しながら説明する。炊飯器の全体構成を示す図1において、1は炊飯器本体で、この炊飯器本体1は、ほぼ筒状の外枠2と、この外枠2の下面開口を塞いで固定された外板3とにより外殻が形成される。また、炊飯器本体1の内部には、上面を開口した鍋収容部4が形成される。この鍋収容部4は、外枠2の上部内周側に一体に垂設された筒部5と、この筒部5の下面開口を塞いで固定された椀状の内枠6とにより構成される。そして鍋収容部4には、米や水を収容する容器としての鍋8が着脱自在に収容される。この鍋8は、前記筒部5上に載って支持されるフランジ部9を上部に有している。
【0020】
鍋8は、熱伝導性のよいアルミニウムを主体にした鍋本体10と、この鍋本体10の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱層11とにより構成される。また、鍋8の発熱層11に対向して位置する内枠6の側面下部および底面部には、鍋8の少なくとも側面下部を電磁誘導加熱する鍋加熱手段(加熱部)としての加熱コイル12が設けられる。鍋8の略中心部には、アルミニウム部材をプレス成形した感熱板が設けてあり、炊飯器本体1に鍋8を収容したときに、この鍋8の底面外側に感熱板の表面が接触するようになっている。鍋収容部4の底部中央には、前記鍋8の底面に弾発的に接触してこの底面の温度を検知する鍋温度検知手段としての鍋温度センサ13が設けられる。感熱板の裏側面上には鍋温度センサ13が当接され、この鍋温度センサ13が感熱板の温度を検出することで、鍋8ひいては鍋8内のご飯の温度を検出する構成になっている。
【0021】
炊飯器本体1内の前方の位置には、加熱コイル12による加熱調節などの制御を行なう加熱制御手段としての制御ユニット15が配設される。この制御ユニット15は、各種基板などを実装したものであり、鍋収容部4の外面に近接して位置している。そして、制御ユニット15から加熱コイル12に高周波電流を供給すると、加熱コイル12から発生する交番磁界によって鍋8の発熱層11が加熱し、鍋8ひいては鍋8内の被炊飯物が加熱されるようになっている。なお、16は同じく炊飯器本体1内に設けられた電源供給用のコードリール、17は外枠2の外側面に枢着されるハンドルである。また32は、炊飯器本体1前方に位置する操作部としての操作パネルである。この操作パネル32の構成は、後程詳しく説明する。
【0022】
21は、炊飯器本体1の上面開口部を開閉自在に覆う蓋に相当する蓋体である。この蓋体21は、炊飯器本体1の上方後部においてヒンジ22により回動可能に枢設され、炊飯器本体1の前上部に設けられたクランプ23により閉じた状態に保持される。そして、蓋体21は、その上面をなす外蓋24と、外蓋24の内側すなわち下側に固定された外蓋カバー25と、外蓋カバー25の下側に固定され鍋8の上面開口部を直接覆う内蓋27とにより概ね構成される。このなかで、蓋体21の外面に露出する外蓋24と、内蓋27を装着するための外蓋カバー25は、いずれもポリプロピレン樹脂などのプラスチックで形成される。蓋体21の内面部材である内蓋27は、被炊飯物を収容する鍋8の上面開口部に直接対向することから、耐食性および清掃性に優れたステンレス材料(オーステナイト系またはフェライト系)を選定するのが好ましく、その他、軽量でかつ強度の高いチタンやチタン合金を選定してもよい。
【0023】
蓋体21内部には、内蓋27を加熱する蓋加熱手段としての蓋ヒータ28と、内蓋27の上面に当接してこの内蓋27ひいては蓋体21の温度を検出する蓋温度検出手段としての蓋温度センサ33が設けられる。ここでの蓋温度センサ33は、特に内蓋27の温度監視により鍋8内の沸騰状態を検知する沸騰検知手段として設けられている。31は、蓋体21の上面より着脱可能に設けられ、炊飯加熱時に鍋8内の蒸気を外部に放出する蒸気口である。
【0024】
次に、操作パネル32の構成を図2に基づいて説明する。この操作パネル32の略中央には、LCD(液晶表示器)からなる表示手段41が設けられるとともに、この略矩形状の表示手段41の右側辺部を利用して炊飯コース表示手段42が設けられる。また、表示手段41の左側辺部には、行程表示手段を構成する保温ランプ43,予約ランプ44および炊飯ランプ45がそれぞれ設けられる。さらに、これらの表示部を取り囲むようにして、炊飯スイッチ51,予約スイッチ52,メニュースイッチ53,分スイッチ54,時スイッチ55,時計スイッチ59,切スイッチ60,保温/再加熱スイッチ61が各々操作手段62として設けられている。
【0025】
上記各構成のなかで、表示手段41は、具体的には現在時刻や予約炊飯時における炊き上がり予定時刻(予約時刻)を表示するものである。また65は、表示手段41の周囲に印刷形成されたコース表示部66とともに炊飯コース表示手段42を構成する指示部としての指示マークであり、各コース表示部66に交互に配置された、黒に塗り潰した縦長楕円および白抜き縦長楕円の各記号を指示する三角印で表示される。本実施例の炊飯器では複数の炊飯コース、具体的には、白米を炊く白米コースの他に、ブレンド米を炊くブレンドコース,おかゆを調理するおかゆコース,低たんぱく米を炊く低たんぱく米コースなどのいくつかの炊飯コースを選択できるようになっているが、指示マーク65はこれらを表示するコース表示部66の一つを指示して、どの炊飯コースが選択されているのかを表示するものである。
【0026】
一方、前記操作手段のなかで、時計スイッチ59は時刻合わせ時に用いるもので、時計スイッチ59を押して時計合わせモードにした状態で、時スイッチ55および分スイッチ54をそれぞれ操作することにより時計合わせができ、その後再度時計スイッチ59を押して時計合わせモードを解除すると、時計の作動が開始するようになっている。
【0027】
予約スイッチ52は、所定時刻に炊飯を終了する予約炊飯時に用いるもので、この予約スイッチ52を押して予約時刻設定モードにした状態で、時スイッチ55および分スイッチ54をそれぞれ操作することにより炊飯終了の予定時刻の設定ができ、その後炊飯スイッチ51を押すと、予約タイマが動作して予約動作が開始するようになっている。一方、予約時刻設定モード以外では、炊飯スイッチ51を押すと、すぐに炊飯が始まるようになっている。
【0028】
保温スイッチ/再加熱スイッチ61は、例えば切状態でこれを押すと、保温動作に強制的に開始させたり、あるいは保温動作中にこれを押すと、通常の保温温度よりも高い温度に鍋8内のご飯を再加熱して、炊きたてのような状態にするものである。また、切操作手段である切スイッチ60は、炊飯動作,保温動作または予約炊飯動作を強制的に終了させて切状態にするものである。
【0029】
操作手段を構成するメニュースイッチ53は、加熱パターンの異なる複数の炊飯コースの中から特定の1つの炊飯コースを選択する炊飯コース選択手段に相当する。メニュースイッチ53を操作することにより、各炊飯コースの中から、所望の炊飯コースを選択することができ、これを押す毎に、白米コース,ブレンドコース,おかゆコース,低たんぱく米コースに順次循環的に切り替わって、その選択した炊飯コースが炊飯コース表示手段42に表示されるようになっている。本実施例の炊飯コース選択手段は、初期状態では低たんぱく米コースが選択されるよう構成されており、メニュースイッチ53を操作しなくてもすぐに低たんぱく米炊飯を行なうことができる。なお、このメニュースイッチ53の数は、選択できる炊飯コースの数に応じて複数設けてもよく、白米コースと低たんぱく米コースなどにそれぞれ専用のスイッチを設けてもよい。とりわけ、白米コースと低たんぱく米コースとを交互に切り替えるメニュースイッチ53を他のコースの選択スイッチと別に設けた場合には、メニュースイッチ53を操作した時に順次循環的に切り替わる炊飯コースが、他の炊飯コースに比べ頻繁に使用される白米コースと低たんぱく米コースに限定されるため、使用頻度が高い炊飯コースの選択がしやすくなる。また、炊飯コース選択手段をメニュースイッチ53のような押しボタンではなく、ダイヤル式やスライド式のスイッチなどとして、機械的に炊飯コースを選択できるようにしてもよい。
【0030】
本実施例の炊飯器は、マイクロコンピュータなどからなる制御部としての制御手段81が、制御ユニット15に搭載される。この制御手段81の記憶装置(図示せず)には所定の制御シーケンスを実行するプログラムが記憶されており、このプログラムに従って、操作手段62からの操作信号と、鍋温度センサ13および蓋温度センサ33からの温度検知信号とに基づき、加熱コイル12および蓋ヒータ28による加熱動作を制御するとともに、炊飯コース表示手段42の指示マーク65を含む表示手段41の表示動作と、保温ランプ43,予約ランプ44,および炊飯ランプ45で表示されるランプ表示部82の表示動作と、ブザーや音声などの音声報知手段83の報知動作とを制御するようになっている。
【0031】
図3を参照しながら、制御手段81の炊飯に関する構成についてさらに詳述する。制御手段81の入力側には、鍋温度センサ13,蓋温度センサ33,及びメニュースイッチ53が接続されており、一方、出力側には、加熱コイル12,蓋ヒータ28,及び炊飯コース表示手段42が接続されている。制御手段81には、白米炊飯の加熱動作制御を行う白米コース炊飯手段81aと、低たんぱく米炊飯の加熱動作制御を行う低たんぱく米炊飯手段81bとが備えられ、メニュースイッチ53の操作により特定の炊飯コースが選択されると、白米コース炊飯手段81a又は低たんぱく米炊飯手段81bが予め記憶保持された各炊飯コースの加熱パターンに対応して、鍋温度センサ13及び蓋温度センサ33からの入力信号を監視しながら加熱コイル12及び蓋ヒータ28の加熱動作を制御するように構成されている。このとき、メニュースイッチ53の操作内容は、制御手段81を通じて炊飯コース表示手段42に表示される。
【0032】
次に、低たんぱく米を炊飯する場合について説明する。前述のように、低たんぱく米は白米より含水率が多いため、白米と同じように白米コースで炊飯してしまうと、出来上がりのご飯がやわらかすぎたり、鍋8の内側に当たるところが固くなったりして安定しない。これは図6のように、白米炊飯を行う白米コースの場合、炊飯制御プログラムに吸水工程である「ひたし」があるためであり、また鍋8内面にある水位線が白米に適した水量に調節されているためでもある。
【0033】
従来から鍋8の米・水が収容される内面には、図7で示すように、適正な水量を示す白米用水位線100がシリコーン樹脂などの塗料にて印刷形成されている。一般的な白米用水位線100は、鍋8の底面8aからの水位が米重量の約1.5倍の水位となるよう調整され、鍋8にバー表示されている。バー表示脇の数字は、米の合(約0.18リットル)数を表している。低たんぱく米の含水率は20%から28%と白米より多く、ものによっては2倍になることもあるため、低たんぱく米を炊飯するのに白米用水位線100を利用したのでは、水の量が多くなり、ご飯がやわらかくなりやすい。そこで、本実施例の炊飯器では、図5で示すような第1の表示部としての低たんぱく米用水位線101を白米用水位線100とは別に設けている。低たんぱく米用水位線101は、低たんぱく米を炊飯した時のご飯の含水率が60%から65%となるように、鍋8の底面8aからの水位が米重量の約1.0倍から1.2倍の水位で調整され、鍋8にバー表示されている。この低たんぱく米用水位線101には、低たんぱく米を計量したカップ量をバー表示脇に数字で表しており、当該カップ量に該当するバー表示を目安に水加減をおこなう。このため白米用水位線100で低たんぱく米を炊くための専用の計量カップや、はかりを用いなくても、一般の計量カップが使用でき、利便性も高まるものである。
【0034】
また、低たんぱく米を使用しておかゆを調理する際に使用する、第2の表示部としての低たんぱく米おかゆ用水位線102を白米おかゆ用水位線(図示せず)とは別に設けている。低たんぱく米おかゆ用水位線102も低たんぱく米用水位線101と同様に、鍋8にバー表示されている。この低たんぱく米用おかゆ水位線103には全がゆ用水位線103と5分がゆ用水位線104があり、両者とも低たんぱく米を計量したカップ量をバー表示脇に数字で表しており、当該カップ量に該当するバー表示を目安に水加減をおこなう。なお、図5における低たんぱく米用水位線101と低たんぱく米おかゆ用水位線102との位置関係が、そのまま鍋8に表示される際の相対的な位置関係となる。
【0035】
そして、本発明の炊飯器では、白米コースとは異なる加熱動作制御を行なうために、低たんぱく米炊飯専用の低たんぱく米コースを設けている。すなわち、操作パネル32に低たんぱく米コースを選択するメニュースイッチ53を設けると共に、低たんぱく米コースの選択状態を表示する炊飯コース表示手段42を設け、さらに制御手段81には通常の白米炊飯と異なる加熱パターンに基づいて加熱動作制御を行なう低たんぱく米炊飯手段81bを備えている。低たんぱく米コースの加熱パターンの詳細については後述するが、端的に言えば前記「ひたし」を省略して炊飯制御するものである。これにより、メニュースイッチ53を用いて低たんぱく米炊飯に最適な加熱動作を容易に選択でき、その選択状況が炊飯コース表示手段42で容易に確認できる。また、低たんぱく米コースを選択して炊飯した場合には、制御手段81に設けられた低たんぱく米炊飯手段81bが白米炊飯と異なる低たんぱく米用の加熱パターンに基づいて加熱動作制御を行なうため、低たんぱく米を適度な硬さで手軽に炊き上げることができる。
【0036】
実際、低たんぱく米を炊飯するには、まず低たんぱく米を鍋8の中に入れ、低たんぱく米用水位線101の該当するバー表示まで水を加えた後、炊飯コース表示手段42を見ながら、メニュースイッチ53を1回または複数回押して「低たんぱく米」に対応する位置まで指示マーク65を点灯移動させ、低たんぱく米コースを選択する。続いて、炊飯スイッチ51を押すと、制御手段81の低たんぱく米炊飯手段81bが、選択された低たんぱく米コースの加熱パターンに基づき、鍋8内に収容した被炊飯物に対し低たんぱく米炊飯加熱を開始する。
【0037】
前述したように、低たんぱく米はα化されており水の吸収が早く、米の含水率も高い為、少ない水で素早く炊き上げる事が美味しく炊く炊飯条件となる。炊飯開始から沸騰までの加熱動作制御として、白米炊飯時には米に水を吸水させる為に加熱コイル12への通電をON/OFFさせた「ひたし」工程等(約10〜20分)がある。この「ひたし」工程があると炊飯開始から沸騰までの時間が長くなり、沸騰前に水が全て米に吸水されてうまく加熱されない。その為、低たんぱく米コースの加熱パターンでは、図4に示すように、この「ひたし」工程を省略しており、これに基づいて低たんぱく米炊飯手段81bが、炊飯開始から沸騰まで加熱コイル12からの通電をOFFすることなく一気に沸騰まで加熱させることにより、少ない水での加熱が可能となる。なお、低たんぱく米の炊飯時の温度が低いと、米が粉っぽかったり軟らかくなったりするため、鍋8内の米の温度を約6分で98℃まで上がるようにするのが好ましい。
【0038】
鍋8内の水が沸騰すると、低たんぱく米は温度の高い鍋8内面側から米の糊化が始まる。それにより、鍋8内面側の米粒間隔が無くなり湯が中心部へ通らなくなり、中心部への熱伝達が悪くなる。そこに沸騰後の加熱動作制御として白米と同様の加熱(例えば450W)を行うと、中心部への熱伝達が悪い為、鍋8内面側の温度だけが高くなってしまう。このような状況になると、鍋温度センサ13が誤って炊飯終了温度を検知してしまい、中心部が加熱されないまま炊飯を終了することとなる。その為、低たんぱく米コースの加熱パターンでは、沸騰後の加熱動作制御を白米より加熱量を減らし(例えば250W)、弱火でゆっくり加熱するようにしている。これに基づいて低たんぱく米炊飯手段81bが、鍋8を弱火でゆっくり加熱するよう加熱コイル12の加熱動作を制御することにより、鍋8内面側の温度が炊飯終了温度に達する時には中心部まで十分加熱され、食味良く低たんぱく米を炊き上げることができる。なお、炊き上がり後は、所定の時間むらしを行い低たんぱく米炊飯を終了する。
【0039】
この低たんぱく米炊飯加熱では、鍋加熱手段である加熱コイル12への通電により鍋8が加熱されるが、水が昇温し、水がほぼ沸騰(例えば90℃以上の状態)または所定時間沸騰したことを蓋温度センサ33または鍋温度センサ13、あるいは蓋温度センサ33および鍋温度センサ13の両方が検知したら、沸騰加熱を停止し、弱火にする。但し、鍋8の温度上昇が100℃を越えた120℃程度になったら、水が少ないものとして加熱過多を防止するために沸騰加熱をすぐに停止し、弱火にする。
【0040】
また炊飯開始後は、直ぐ(炊飯加熱と略同時)または例えば3分後などの所定時間後、または蓋温度センサ33が検知する内蓋27の温度が例えば50℃になったら、あるいは鍋温度センサ13で検知される鍋8の温度が60℃になったら、炊飯加熱中の沸騰前から蓋加熱手段である蓋ヒータ28で内蓋27を加熱する。なお、ここでの時間は3分に限らず任意に設定してよい。また、内蓋27の温度や鍋8の温度も、任意に設定してよい。むらし中は、その全期間に渡り蓋ヒータ28で内蓋27を加熱する。さらに、むらしが終了して保温になっても、5〜15分の任意の時間は内蓋27の加熱を継続する。このときの内蓋27の加熱は、蓋ヒータ28を常時通電する連続的加熱でも、蓋ヒータ28を断続通電する断続的加熱でもよい。このように内蓋27を加熱する理由は、特にこの内蓋27への結露を抑制し、蓋体21を開けたときに結露した露が垂れ落ちるのを防止するためである。
【0041】
蓋ヒータ28の加熱量(連続通電時、または断続通電時の平均消費電力)は、仮に制御手段81が故障して蓋ヒータ28が連続的に通電された場合であっても、内蓋27の温度が+100℃以下、好ましくは+70℃以下になるように抑制して設定するか、または放熱板26を支える外蓋カバー25の溶解温度以下になるように設定する。例えば実施例のように、外蓋カバー25がポリプロピレンで形成される場合は、ポリプロピレンの溶解温度である約+173℃前後を越えないように、蓋ヒータ28の加熱量を設定する。例えば、鍋8内が沸騰し、蒸気により約100℃に上昇した内蓋27の温度に加算して越えないようにする。したがって、外蓋カバー25がポリプロピレンの場合、内蓋27の温度を+70℃以下にするのが好ましい。
【0042】
炊飯加熱開始後、鍋8を最大加熱量で連続的に加熱し、鍋8内の被炊飯物から蒸気が発生するようになると、鍋8に遅れて内蓋27の温度が急速に上昇して100℃に近付いていく。この温度の急速な上昇を利用して、蓋温度センサ33により鍋8内の沸騰検知を行なう。具体的には、蓋温度センサ33が90℃などの沸騰直前の温度になったら、温度上昇の変化(温度上昇率)を検知して沸騰検知を開始し、温度の上昇率が所定値以下に安定したら、沸騰したと判断する。そして、この沸騰検知の期間中は、蓋ヒータ28による内蓋27への加熱を一時的に中止し、沸騰検知が完了したら、蓋ヒータ28による内蓋27への加熱を再開するように、前記制御手段81を構成している。これにより、内蓋27を加熱することによる熱影響を受けずに、蓋ヒータ28による正確な沸騰検知を行なうことができる。
【0043】
以上のように本実施例では、被炊飯物を収容する鍋8と、鍋8を加熱する加熱部としての加熱コイル12と、加熱コイル12の加熱動作を制御する制御部としての制御手段81と、「低たんぱく米炊飯」を選択する選択手段としてのメニュースイッチ53と、「低たんぱく米炊飯」が選択された時に、加熱コイル12に「白米炊飯」と異なる加熱動作をさせる低たんぱく米炊飯手段81bとを備えている。
【0044】
本実施例では、低たんぱく米が白米とは異なる特性を有していることに着目し、低たんぱく米コースを選択して炊飯した場合には、低たんぱく米炊飯手段81bが、低たんぱく米コース用加熱パターンに基づいて白米炊飯と異なる低たんぱく米用の加熱動作制御を行なう。これにより、低たんぱく米に適した加熱動作で炊飯を行うことができる。従って、低たんぱく米を適度な硬さで手軽に炊き上げることができる。
【0045】
また本実施例では、低たんぱく米炊飯手段81bは、炊飯工程から吸水工程を省く加熱動作を行わせるものである。
【0046】
本実施例では、低たんぱく米が白米に比べ吸水が早く吸水量が多いことに着目し、低たんぱく米炊飯手段81bが、低たんぱく米コース用加熱パターンに基づいて炊飯工程から吸水工程を省く加熱動作制御を行なうことにより、低たんぱく米が必要以上に吸水することを防ぐことができる。従って、低たんぱく米を軟らかくなりすぎることなく炊き上げることができる。
【0047】
さらに本実施例では、低たんぱく米炊飯手段81bは、加熱コイル12の加熱動作を沸騰加熱後、弱火加熱にする加熱動作を行わせるものである。
【0048】
本実施例では、低たんぱく米の糊化が早いことに着目し、低たんぱく米炊飯手段81bが、低たんぱく米コース用加熱パターンに基づいて加熱コイル12の加熱動作を沸騰加熱後、弱火でゆっくり加熱するよう加熱動作制御を行なうため、鍋8内面側からの糊化が生じても、糊化した部分の乾燥を極力防ぐと共に中心部まで十分に熱を伝えることができる。従って、鍋8に接触する部分のご飯が固くなったり、ご飯が炊けていない物になったりすることなく炊き上げることができる。
【0049】
また本実施例では、メニュースイッチ53は、「白米炊飯」と「低たんぱく米炊飯」とを切り替えるものである。
【0050】
このようにすると、メニュースイッチ53を白米コースと低たんぱく米コースとを交互に切り替えるものとすることにより、メニュースイッチ53を操作した時に順次循環的に切り替わる炊飯コースが、他の炊飯コースに比べ頻繁に使用される白米コースと低たんぱく米コースに限定されるため、使用頻度が高い炊飯コースの選択が容易になる。従って、使用頻度が高い白米コースや低たんぱく米コースが選択しやすくなり、利便性を向上させることができる。
【0051】
さらに本実施例では、メニュースイッチ53は、「低たんぱく米炊飯」を初期状態とするものである。
【0052】
このようにすると、初期状態ですでに低たんぱく米コースが選択されているため、メニュースイッチ53を操作しなくてもすぐに低たんぱく米炊飯を行なうことができる。従って、メニュースイッチ53を操作しなくてもすぐに低たんぱく米炊飯を行なうことができ、利便性を向上させることができる。
【0053】
また本実施例では、鍋8に、低たんぱく米用の液量を表示する第1の表示部としての低たんぱく米用水位線101を設けている。
【0054】
このようにすると、低たんぱく米用水位線101を白米用水位線100とは別に設けているため、低たんぱく米炊飯に適した水量に調整することが容易になる。従って、低たんぱく米炊飯時に容易に最適な水量に調整することができる。
【0055】
さらに本実施例では、鍋8に、低たんぱく米おかゆ用の液量を表示する第2の表示部としての低たんぱく米おかゆ用水位線102を設けている。
【0056】
このようにすると、低たんぱく米おかゆ用水位線102を白米おかゆ用水位線とは別に設けているため、低たんぱく米おかゆの調理に適した水量に調整することが容易になる。従って、低たんぱく米おかゆ調理時に容易に最適な水量に調整することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。複数の炊飯コースを設けず、低たんぱく米専用の炊飯器としてもよい。また、低たんぱく米炊飯時に、蓋ヒータ28を利用して鍋8内の低たんぱく米を上下方向から加熱してもよい。この場合、加熱コイル12の加熱量が、沸騰加熱後、弱火加熱となるので、蓋ヒータ28の加熱量を加熱コイル12の加熱量よりも多くして全体の加熱量を補うようにしてもよい。蓋ヒータ28の加熱量増加に伴う弊害を防止するため、蓋体21内部に内蓋27上面に対向して断熱材を設けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施例における炊飯器の要部縦断面図である。
【図2】同上、炊飯器に設けられた操作パネルの拡大図である。
【図3】同上、炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】同上、炊飯器の加熱動作を模式的に示した説明図である。
【図5】同上、炊飯器の鍋内面に表示された水位線の拡大図である。
【図6】従来例における炊飯器の加熱動作を模式的に示した説明図である。
【図7】同上、炊飯器の鍋内面に表示された水位線の拡大図である。
【符号の説明】
【0059】
1 炊飯器本体
8 鍋
12 加熱コイル(加熱部)
53 メニュースイッチ(選択手段)
81 制御手段(制御部)
81b 低たんぱく米炊飯手段
101 低たんぱく米用水位線(表示部)
102 低たんぱく米おかゆ用水位線(表示部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を収容する鍋と、前記鍋を加熱する加熱部と、加熱動作を制御する制御部と、「低たんぱく米炊飯」を選択する選択手段と、「低たんぱく米炊飯」が選択された時に、「白米炊飯」と異なる加熱動作をさせる炊飯手段とを備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯手段は、炊飯工程から吸水工程を省く加熱動作を行わせるものであることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記選択手段は、「白米炊飯」と「低たんぱく米炊飯」とを切り替えるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記選択手段は、「低たんぱく米炊飯」を初期状態とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋に、低たんぱく米用の液量を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記鍋に、おかゆ用の液量を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の炊飯器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−81656(P2006−81656A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268189(P2004−268189)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】