説明

炊飯器

【課題】炊飯器本体のコンパクト性を確保しながら炊飯性能に優れた炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器本体(図示せず)の上面開口部(図示せず)を開閉自在に覆う外蓋(図示せず)と、外蓋の底面部を形成する外蓋カバー(図示せず)に着脱自在に取り付けられる加熱板(図示せず)と、外蓋カバーの加熱板に対向する位置に配設され加熱板を誘導加熱する蓋誘導加熱コイル13を有し、蓋誘導加熱コイル13は略円形状に巻かれると共にそのコイルリード線単体13aは、偏平形状である絶縁被覆13c内に各々独立した少なくとも5本以上の複数の芯線束13bを有するもので、個々の隙間が減少するので、同じスペースに同じ断面積のコイル線であれば多くの本数が配設でき、また、従来と同じ長さしか配設できなくても、芯線1本あたりの断面積を小さくして、蓋誘導加熱コイル13全体の抵抗値を大きくすることが可能となり、加熱板による加熱パワーが増大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するもので、特に、蓋からの高出力の加熱により炊飯性能を向上させる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、鍋内の米と水を加熱するために、鍋底部に配置した鍋加熱手段が主であり、蓋内の加熱手段は、鍋内の米、水の上方の空間があるために、鍋内上層の米は加熱量が不足し、鍋内の米、水を均一に加熱することができなかった。
【0003】
さらに、本来炊飯においては水がほぼ無くなり、米の流動性が無くなる炊飯の最終工程である「蒸らし工程」で、それまでの加熱を継承し、米澱粉の糊化を完成させることが、美味なる米飯を炊くために必須であるが、この工程で、加熱を継続すると鍋底付近の米飯が焦げてしまうため加熱を弱めることが多かった。
【0004】
加熱を弱めることに伴う糊化不足を防止し、炊飯性能を向上させるための手段としては、蓋体に高熱源である誘導加熱コイルを設けて鍋開口部の上方から米を加熱するようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1に記載されたような従来の炊飯器は、本体外郭を構成する上枠と、上枠の下方には、内鍋の加熱手段である底面誘導加熱コイル、側面誘導加熱コイルが付属する難燃性部材で構成された保護枠を設置し、前記保護枠内に収容された磁性金属層を持った鍋を底面誘導加熱コイルによって加熱し、鍋内の米・水の調理物を加熱調理するようになっていた。
【0006】
上枠の上方には、鍋開口面を覆う外蓋が備えられ、外蓋は、上枠後方のヒンジ部で開閉自在に軸支されている。前記外蓋の内部には、耐熱性樹脂によって形成された外蓋カバーが設けられ、外蓋カバーの内面には、着脱可能に装着された加熱板が設けられている。前記加熱板と対向する外蓋カバーの上面部には、加熱板を電磁誘導加熱するための蓋コイルが配設されている。蓋コイルは巻き数が多いほど高いパワーが確保できるため、略平面方向1段目に複数ターンを巻き、その上方に略平面方向2段目にも複数ターンを巻き上げ、1段目と2段目のコイルは直列回路で構成されている。
【0007】
炊飯工程の炊き上げから、蒸らし工程にかけて蓋コイルに通電がなされ、加熱板を誘導加熱して、鍋上層部の米飯の加熱を行い、米の糊化を促進するようになっていた。
【0008】
以上のように、上記特許文献1に記載された従来の構成の炊飯器は、蓋からの加熱パワーにより炊飯性能を向上させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−54719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載された従来の炊飯器においては、さらに高い蓋からの加熱パワーを与えたい場合に、限られたスペースで蓋コイルのターンを増やすにも限界があるとともに、蓋体はできるだけコンパクトにしたいという相反する課題が発生して
いた。また、前記特許文献1記載の従来例では、コイル線を2段に巻いてあるという高コストという二次的な課題もあることは否めない。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、蓋加熱パワーの高効率化と、コンパクト化を実現した炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う外蓋と、前記外蓋の底面部を形成する外蓋カバーと、前記外蓋カバーに着脱自在に取り付けられると共に磁性体金属からなる加熱板と、前記外蓋カバーの前記加熱板に対向する位置に配設され前記加熱板を誘導加熱する蓋コイルとを有し、前記蓋コイルは略円形状に巻かれると共にそのコイルリード線単体は、偏平形状である絶縁被覆内に各々独立した少なくとも5本以上の複数の芯線束を有してなるもので、従来はコイルリード線の各々に絶縁被覆があり巻き上げた1本1本に無駄な空間があったが、本発明によれば個々の隙間が減少することで、同じスペースに同じ断面積のコイル線であれば多くの本数が配設できる。また、蓋加熱パワーを増大させるには、リード線の抵抗値を大きくする必要があり、抵抗値は線の長さに比例し断面積に反比例するわけであるから従来に比べ同じ長さしか配設できないとしても、芯線1本あたりの断面積を小さくすることでも、蓋コイル全体の抵抗値を大きくすることが可能となり、蓋加熱パワーが増大できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の炊飯器は、限られたスペースにおいても蓋コイルの加熱パワーの増大により炊飯性能の向上を実現できるとともに製品のコンパクト化も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の蓋コイルを示す斜視図
【図3】同炊飯器の蓋コイル詳細を示す要部拡大断面図
【図4】従来の炊飯器の蓋コイル詳細を示す要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う外蓋と、前記外蓋の底面部を形成する外蓋カバーと、前記外蓋カバーに着脱自在に取り付けられると共に磁性体金属からなる加熱板と、前記外蓋カバーの前記加熱板に対向する位置に配設され前記加熱板を誘導加熱する蓋コイルとを有し、前記蓋コイルは略円形状に巻かれると共にそのコイルリード線単体は、偏平形状である絶縁被覆内に各々独立した少なくとも5本以上の複数の芯線束を有してなるもので、従来はコイルリード線の各々に絶縁被覆があり巻き上げた1本1本に無駄な空間があったが、本発明によれば個々の隙間が減少することで、同じスペースに同じ断面積のコイル線であれば多くの本数が配設できる。また、蓋加熱パワーを増大させるには、リード線の抵抗値を大きくする必要があり、抵抗値は線の長さに比例し断面積に反比例するわけであるから従来に比べ同じ長さしか配設できないとしても、芯線1本あたりの断面積を小さくすることでも、蓋コイル全体の抵抗値を大きくすることが可能となり、蓋加熱パワーが増大できる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図であり、図面を簡潔にする
ために、電気的接続のためのリード線等は省略してある。図2は、同炊飯器の蓋コイルを示す斜視図、図3は、同炊飯器の蓋コイル詳細を示す要部拡大断面図である。
【0018】
図1において、本実施の形態における炊飯器の炊飯器本体1は、有底筒状の鍋収納部1aを有し、鍋2を着脱自在に収納し、鍋収納部1aの底部に設けた底面誘導加熱コイル3により鍋2を誘導加熱し、炊飯・保温を行う。なお、底面誘導加熱コイル3を用いた誘導加熱方式でなく、鋳込みヒータで鍋2を加熱しても良いが、誘導加熱方式の方がより高火力・高効率で鍋2を加熱することができる。
【0019】
鍋センサー4は、鍋2の温度を検知し、制御部5へ信号を送る。制御部5は鍋センサー4の信号により底面誘導加熱コイル3への通電量を制御し、鍋2の加熱量を制御することで、鍋2の温度を炊飯・保温時に適温に制御する。
【0020】
炊飯器本体1の上面開口部1bは、炊飯器本体1の後部に設けられたヒンジ軸6にて開閉自在に軸支された外蓋7で覆われている。外蓋7の先端には、蓋係合部8を設けており、閉蓋時に炊飯器本体1の前方のフックボタン9と係合し、炊飯または保温中に誤って外蓋7が開成するのを防止している。フックボタン9を押すと、蓋係合部8とフックボタン9の係合がはずれ、炊飯器本体1の後部に備えられたヒンジバネ10の反力によって外蓋7が開成するように構成されている。
【0021】
次に、前記外蓋7の内部には、外蓋7をカバーする外蓋カバー11を配設しており、外蓋カバー11の内部には、鍋2を覆い、鍋2の上方部を加熱するための加熱板12が着脱自在に備えられている。加熱板12は、おもに磁性を有するステンレスで構成されている。前記外蓋カバー11の加熱板12を内装した対向位置に配設されているのが、加熱板12を電磁誘導加熱するための蓋コイルである蓋誘導加熱コイル13であり、蓋誘導加熱コイル13は、絶縁被覆で覆われた銅線(後述)が略平面上に円形状に数ターン巻かれて構成されている。また、外蓋カバー11には、前記加熱板12の温度を正確に検知するための蓋センサー14も具備されている。
【0022】
次に、図2、3を用いて蓋誘導加熱コイル13の詳細を説明する。コイルリード線単体13aは、直径0.1mm台の銅線が十数本撚り集められて作られた芯線束13bが計5本等間隔に偏平状に架橋ポリエチレン等の絶縁被覆13cでコーティングされて作られている。銅線の直径や本数、絶縁被覆材料等の選定は一例としてここに記載する。他の条件でも作製できることは言うまでもない。
【0023】
このコイルリード線単体13aを縦列方向に円形状に巻き上げて、周上に4ケ所程度を固定テープ13dにて固定されて構成されている。
【0024】
図4に従来の炊飯器における蓋コイルの詳細を示す。20aは比較的大なる線径のコイルリード線単体であり、銅線を拠り合わせた芯線束20bを、絶縁被覆20cで覆って構成され、コイルリード線単体20aを複数ターン(5ターンで表現する)巻き上げて、2段重ねにして固定テープ20dにて固定して構成されているが、コイルリード線単体20a間には無駄な空隙20eが発生していた。
【0025】
図4と、図3の本実施の形態における蓋コイル詳細と比較しながら説明する。
【0026】
蓋誘導加熱コイル13の一つの芯線束13bの直径をwとすると、断面積は、(πw/4)で計算できる。この断面積は、従来例の芯線束20bの1/5の断面積で設計されているため、従来例の芯線束20bの直径をvとし、wとの関係を数式で表わすと、
(π・w/4)=5(π・v/4)
v=√5・w(≒2.236w)
となり、断面積を1/5にするには直径を約1/2すれば良いことがわかる。したがって、従来例でコイルリード線単体20aを2段重ねにしている高さ(厚み)を変えないようにしようとすると、本実施の形態におけるコイルリード線単体13aが縦方向に1本分配列できる。
【0027】
従来5ターン分巻き上げていた幅には、本実施の形態のコイルリード線では、2倍に当たる10ターン分配設できるから、ほぼ同等のスペースに同等長さのコイルが巻き上げられるわけである。同等な長さのリード線を配設した場合、抵抗値は、断面積に反比例するわけであるから従来例より抵抗値の増大した蓋コイルが得られ、加熱板12からの加熱パワーは増大するわけである。また、無駄な空隙がなく、密集してリード線を配置できることも加熱パワーの効率アップにつながる。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態における炊飯器の動作を説明すると、使用者が鍋2内に米・水を入れ、炊飯開始スイッチ(図示せず)を操作すると、炊飯工程が実施される。炊飯工程は浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程に大別される。鍋2内の米・水の状態を鍋センサー4、蓋センサー14にて検知し、その出力が制御部5に送信され、底面誘導加熱コイル3、蓋誘導加熱コイル13に通電されて、炊飯に適した温度・時間が維持される。
【0029】
炊飯工程は、浸水工程からスタートし、鍋2内の米、水は、前記底面誘導加熱コイル3による電磁誘導加熱によって所定の温度制御をされ浸水が行われるが、その際、蓋誘導加熱コイル13は通電される必要はない。
【0030】
次に、炊き上げ工程においては、鍋2内の米、水は、底面誘導加熱コイル3の通電による加熱により炊き上げられる。その際、鍋2の底面温度を前記鍋センサー4により検知し、その検知温度を制御部5に送信し、前記底面誘導加熱コイル3の電力入力時間を調整し、炊飯の炊き上げ工程を行い、鍋2内の水の沸騰が進行し、鍋2内部の米がご飯に変わる時点では、鍋2の温度は、高温になり、さらに加熱を行うとご飯の底部が焦げ付いてしまうので、ある所定温度が鍋センサー4により検知されると、制御部5により前記底面誘導加熱コイル3への電力供給は低減されるように制御され、ご飯の底部の焦げ付きが発生しないようになっている。
【0031】
また鍋2内の水の沸騰が始まり、その蒸気により加熱板12の温度が上昇すると、その温度を検知する蓋センサー14により、前記加熱板12の温度上昇速度で、鍋2内の炊飯量の判定を行っている。すなわち、加熱板12がある一定温度(80〜85℃で設定)になるまでの時間が既設定時間より長ければ、鍋2内の炊飯量が多く、その時間が短ければ炊飯量が少ないという制御を行っている。
【0032】
その中で、鍋2上部の加熱は、米がご飯に変わり、鍋2内部の水がなくなりかけている時点から、蓋誘導加熱コイル13に通電して、加熱板12に電磁誘導加熱を始める。その電磁誘導加熱により、前記加熱板12全体が温度上昇し、鍋2内のご飯の上層部は、加熱板12による熱量で、鍋2内部の水が無くなりかける時点においてのご飯の加熱をより促進し、澱粉化が促進され底面誘導加熱コイル3からの加熱の低減によるご飯の焦げ付き防止を実施するとともに炊飯性能の向上となっている。
【0033】
次に、蒸らし工程においては、鍋2内の米は、既にご飯となっており水は存在しない。その中で、前記底面誘導加熱コイル3による電磁誘導加熱を行い、鍋2が温度上昇するとご飯の底部が焦げ付いてしまうので、従来は、底面誘導加熱コイル3の加熱を必要最低限しか行えず、ご飯の澱粉化の促進が行えなかったわけであるが、本実施の形態では、鍋2
の上層部のご飯に水が若干残っている段階で、蓋誘導加熱コイル13に多大なパワー入力を行い、例えば350Wの入力で加熱板12の温度上昇を素早く行い、蒸らし工程がスタートした段階から素早く、ご飯の上層部のご飯の澱粉化を促進させて、ご飯の焦げ付き無しで炊飯性能を向上させることができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、限られたスペースにおいても蓋コイルの加熱パワーの増大により炊飯性能の向上を実現できるとともに製品のコンパクト化を実現した炊飯器を提供できるわけである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、加熱板からの加熱パワーを増大して炊飯性能の向上を実現するとともに蓋体部のコスト削減およびコンパクト化が可能となるので、その他の各種調理機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 炊飯器本体
3 底面誘導加熱コイル
7 外蓋
11 外蓋カバー
12 加熱板
13 蓋誘導加熱コイル(蓋コイル)
13a コイルリード線単体
13b 芯線束
13c 絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う外蓋と、前記外蓋の底面部を形成する外蓋カバーと、前記外蓋カバーに着脱自在に取り付けられると共に磁性体金属からなる加熱板と、前記外蓋カバーの前記加熱板に対向する位置に配設され前記加熱板を誘導加熱する蓋コイルとを有し、前記蓋コイルは略円形状に巻かれると共にそのコイルリード線単体は、偏平形状である絶縁被覆内に各々独立した少なくとも5本以上の複数の芯線束を有してなることを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165795(P2012−165795A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26828(P2011−26828)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】