説明

炊飯器

【課題】蒸気を排出しない炊飯器を提供すること。
【解決手段】内蓋4に設けられ内釜2内部の蒸気の排出を制限して一定の圧力に保つ調圧弁5と、調圧弁5から排出された蒸気を蓋3の外部に放出する蒸気通路6と、内釜2を加熱する加熱手段7と、加熱手段7の電力を制御する制御手段8とを設け、蓋3には内釜2内部の温度を検出する第一の温度センサ9と、蒸気通路6には温度の変化によって調圧弁5から蒸気の排出を検出する第二の温度センサ10を設け、制御手段8は、定められた炊飯プロセスに従い加熱手段7で内釜2を加熱し、第一の温度センサ9の温度が所定温度に到達すると加熱手段7への電力の供給を低減し、第二の温度センサ10が蒸気の排出を検出すると加熱手段7への電力の供給を前記低減よりも大きく低減することで、調圧弁5の調圧動作を極力しない範囲で内釜2内の圧力を大気圧より高い状態に保つよう加熱手段7への電力の供給を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜内に加わる圧力を調整し、美味しく炊飯すると共に、炊飯時に放出する蒸気を少なくする炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの炊飯器は、ご飯を美味しく炊き上げることに重点におかれていた。
【0003】
しかし、住宅環境や生活環境の変化に伴い、ご飯を炊き上げる時に発生する大量の蒸気を嫌う傾向にある。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、炊飯を開始した後、内釜内部の圧力を調圧する調圧弁の動作により排出する蒸気を検出する蒸気温度センサによって調圧弁の動作を検出した後、加熱手段の加熱量を低下させて沸騰を継続し、調圧弁からの蒸気の排出を微量に抑えて炊飯を行うものがある。
【0005】
また、特許文献2では放熱板の温度を検出する蓋センサと、蒸気排出経路の排出温度を検出する蒸気センサの2つを用いて各検出温度が特定の温度に達するまでの所要時間を求め、判定時間に基づいて炊飯容量判別を行い、また、蒸気センサにより被調理物から発生する蒸気温度を精度よくとらえて沸騰検知を行い、吹きこぼれなどの危険性を低下したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−246657号公報
【特許文献2】特開2004−073311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の従来例では、調圧弁の動作により排出した蒸気を捉えてから加熱手段へ供給する加熱量を低下しても、内釜などは熱容量が大きいため直に温度は低下しないで蒸気を発生し続ける課題がある。
【0008】
また、特許文献2では、放熱板の温度を検出する蓋センサと、蒸気排出経路の排出温度を検出する蒸気センサの2つで蒸気を検出し、早く移行温度に達したほうで炊飯量を判断する構成が示されており、また、蒸気センサによる沸騰検知を行う場合、前記した特許文献1と同様に調圧ボールを経由した後の蒸気検出では、吹きこぼれを防止するために加熱量を低減するタイミングが遅い課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる従来の問題を解決するため、本発明では、本体と、該本体に収納される内釜と、前記本体の上部開口を覆う蓋と、該蓋に取り付けられ前記内釜の上部開口を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部の蒸気の排出を制限して一定の圧力に保つ調圧弁と、該調圧弁から排出された蒸気を前記蓋の外部に放出する蒸気通路と、前記内釜を加熱する加熱手段と、該加熱手段の電力を制御する制御手段とを設け、前記蓋には前記内釜内部の温度を検出する第一の温度センサと、前記蒸気通路には温度の変化によって前記調圧弁から蒸気の排出を検出する第二の温度センサを設け、前記制御手段は、定められた炊飯プロセスに従い前記加熱手段で前記内釜を加熱し、前記第一の温度センサの温度が所定温度に到達すると前記加熱手段への電力の供給を低減し、前記第二の温度センサが蒸気の排出を検出すると前記加熱手段への電力の供給を前記低減よりも大きく低減することで、前記調圧弁の調圧動作を極力しない範囲で前記内釜内の圧力を大気圧より高い状態に保つよう前記加熱手段への電力の供給を制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内釜内の圧力の上昇に伴う温度変化を捉え、いきなり調圧弁が動作しないように、事前に内釜を加熱する加熱量を低減して、蒸気の発生量を事前に低減することで、調圧弁を動作して蒸気通路に排出される蒸気の量を少なくすることができる。
【0011】
これにより、内釜内部を大気圧以上に保ち、高い沸点で美味に炊飯すると共に、調圧弁から蒸気が排出されるのを防いで炊飯器近傍への結露や、排出蒸気による火傷の危険を防ぐことができる。また蒸気を出さないように加熱量を制御することで、消費電力量も低くなり省エネルギーな炊飯器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施例の炊飯器の断面を示す図である。
【図2】一実施例の炊飯器の加熱の例を示す図である。
【図3】他の実施例の炊飯器の加熱の例を示す図である。
【図4】他の実施例の炊飯器の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図4を用いて本発明の一実施例を詳細に説明する。
【0014】
図1の炊飯器の断面図において、本体1に着脱自在の内釜2が収納され、本体1の上部開口を閉塞する蓋3が開閉自在に設けられている。蓋3には内釜2の上部開口を覆う内蓋4が設けられ、内蓋4の下面周縁部に取り付けられたパッキン14を内釜2の上端全周に当接して内釜2と内蓋4とで構成される空間を密閉状態に保持している。内蓋4には内釜2内部の蒸気の排出を制限して一定の圧力に保つ調圧弁5が取り付けられている。本実施例では、1.3気圧になると調圧弁5が動作し、調圧弁5から蓋3の蒸気通路6に蒸気を排出する。排出された蒸気は蒸気通路6を経て蓋3に設けられた排気口15から外部に放出される。
【0015】
本体1の内部には、内釜2を加熱する加熱手段7と、内釜2底部の温度を検出する釜底温度センサ13と、釜底温度センサ13の検出する温度情報に基づいて加熱手段7へ供給する電力を制御する制御手段8が設けられている。
【0016】
蓋3には、内釜2内部の温度を検出する第一の温度センサ9と、調圧弁5から蒸気通路6に排出した蒸気を一定の温度変化として検出する第二の温度センサ10を設けている。
【0017】
第一の温度センサ9は、内蓋4の穴部11から内釜2内部に露出するように設けられ、穴部11から蒸気が漏れないようシール部材12を介して蓋3に設けられている。
【0018】
第二の温度センサ10は、蒸気通路6に排出された蒸気によって起こる温度変化を捉えることで、調圧弁5が動作して蒸気を排出したことを検出する。
【0019】
第一の温度センサ9,第二の温度センサ10,釜底温度センサ13からの温度情報は制御手段8に伝えられ、それに応じて制御手段8は加熱手段7へ供給する電力を制御する。
【0020】
以上の構成において、その動作を説明する。
【0021】
内釜2に米と適量の水を入れ炊飯開始操作(操作ボタンは図示せず)をすると、制御手段8は美味しくご飯を炊くように定められたプロセスに従って加熱手段7の加熱量を調整しながら内釜2を加熱して炊飯が進行する。
【0022】
内釜2の加熱が進行して内釜2内部の水温が60℃を超えるころには湯気が内蓋4や第一の温度センサ9に結露しはじめ、結露によって湯気の熱が伝わり、内蓋4と第一の温度センサ9の温度が上昇し始める。
【0023】
さらに内釜2の加熱が進行すると水温が100℃に近づき湯気(以下蒸気)が激しく発生する。そうすると内蓋4と第一の温度センサ9の温度も100℃に近づく。
【0024】
この時点では、内釜2内で発生した蒸気は調圧弁5によって蒸気通路6に排出されるのを規制されているため、蒸気圧によって内釜2内部の圧力がさらに上昇して高まる。
【0025】
制御手段8は、第一の温度センサ9の温度が80℃になった時点で加熱手段7に供給する電力を弱めることで、内釜2内の圧力が一気に上昇して調圧弁5から蒸気が大量に排出されるのを防止する。本実施例では1000Wから800Wに弱める。このタイミングで加熱量を200W程度弱めても内釜2内部の圧力は上昇を続け、圧力の上昇に伴い沸点も高まり、1.1気圧では約103℃、1.2気圧では約105℃になる。
【0026】
内釜2内の温度がさらに上昇し、第一の温度センサ9で100℃以上を検出すると制御手段8は内釜2内部の圧力が大気圧以上になったと判断し、加熱手段7の加熱量をさらに800Wから400Wに弱め、さらに蒸気の発生を抑え、調圧弁5の動作する圧力内で炊飯を継続し、調圧弁5からの蒸気の排出を抑えるようにする。
【0027】
これにより、内釜2内部は1.2気圧程度を維持し、105℃で炊飯継続しながら調圧弁5から蒸気を排出しない状態を続けることで、高温で美味に炊飯を継続することができる。
【0028】
しかるに炊飯の量や水加減などによって、加熱手段7の加熱量を400Wに弱めても1.3気圧まで上昇し調圧弁5が動作して蒸気を排出する場合がある。排出された蒸気は蒸気通路6を経て排気口15へと向かう。
【0029】
しかし、事前に加熱手段7への電力を低減しているので、調圧弁5を動作して蒸気通路6に排出される蒸気は少なく、蒸気通路6の経路にて蒸気が結露凝縮し、すぐには蒸気が排気口15から外部に排出されることはない。
【0030】
そして、蒸気通路6に排出された蒸気によって第二の温度センサ10の温度が急上昇し、制御手段8は第二の温度センサ10が70℃になったことを検出すると、1分間加熱手段7への電力の供給を停止した後、300Wで内釜2の加熱を再開する。これにより内釜2内部の圧力は低下し、調圧弁5から蒸気が継続して排出されることは無くなり、内釜2内部の圧力が1.2気圧程度に保たれ、高温で美味に炊飯しながら外部に蒸気を排出しない炊飯ができる。
【0031】
炊飯が進行し、やがて内釜2の内部の水が無くなると内釜2底部の温度が急上昇し、釜底温度センサ13が120℃を越えると制御手段8は水が無くなったと判断し、加熱手段7への電力の供給を停止して、蒸らしの工程に移行する。
【0032】
蒸らしは、15分間の一定時間行われ、その間も温度の低下を防ぐために、加熱手段7が間欠的に動作する。蒸らしが終了する前には内釜2内部の温度が100℃以下に低下し、内部の圧力も大気圧に戻っている。
【0033】
本実施例では、制御手段8が第一の温度センサ9と第二の温度センサ10の温度で加熱手段7の加熱量を調整する一例を示したが、図3のように第二の温度センサ10で300Wに加熱を調整した後に、第一の温度センサ9の温度低下を検出したら再び加熱量を400Wに上げ、第二の温度センサ10の温度が再び上昇したら加熱量を300Wに下げるなど、随時加熱量を調整するようにしても良い。
【0034】
また、本実施例では第一の温度センサ9を内蓋4の穴部11から内釜2内部に露出するように設けたが、図4のように内蓋4の裏面の温度を検出するように設けても良い。
【0035】
上記した本実施例によれば、第一の温度センサ9で内釜2の内部温度を、第二の温度センサ10で蒸気通路6に排出された蒸気の温度を検出することにより、調圧弁5の動作状況、すなわち内釜2内部に加わる圧力の状況を制御手段8が検知することができ、内釜2の内部を調圧弁5が動作しない範囲で、かつ大気圧以上の高い沸点で炊飯できるので、米のα化に必要とされる98℃以上を維持でき、美味に炊飯できる。
【0036】
また、排気口15から室内に蒸気を排出しないので、室内の湿度が上がって環境が悪化したり、近傍に結露して壁や家具を傷めたりすることもない。蒸気を外部に排出しないので、排出される蒸気で火傷を負う恐れもなく安全性の高い炊飯器が提供できる。
【0037】
さらに、大気圧以上を維持するのに必要な加熱量を調整するので、消費電力量も少なく、省エネルギーな炊飯器が提供できる。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
2 内釜
3 蓋
4 内蓋
5 調圧弁
6 蒸気通路
7 加熱手段
8 制御手段
9 第一の温度センサ
10 第二の温度センサ
11 穴部
12 シール部材
13 釜底温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体に収納される内釜と、前記本体の上部開口を覆う蓋と、該蓋に取り付けられ前記内釜の上部開口を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部の蒸気の排出を制限して一定の圧力に保つ調圧弁と、該調圧弁から排出された蒸気を前記蓋の外部に放出する蒸気通路と、前記内釜を加熱する加熱手段と、該加熱手段の電力を制御する制御手段とを設けた炊飯器であって、
前記蓋には前記内釜内部の温度を検出する第一の温度センサと、前記蒸気通路には温度の変化によって前記調圧弁から蒸気の排出を検出する第二の温度センサを設け、
前記制御手段は、定められた炊飯プロセスに従い前記加熱手段で前記内釜を加熱し、前記第一の温度センサの温度が所定温度に到達すると前記加熱手段への電力の供給を低減し、前記第二の温度センサが蒸気の排出を検出すると前記加熱手段への電力の供給を前記低減よりも大きく低減することで、前記調圧弁の調圧動作を極力しない範囲で前記内釜内の圧力を大気圧より高い状態に保つよう前記加熱手段への電力の供給を制御することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223304(P2012−223304A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92595(P2011−92595)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】