説明

炎症性疾患および痛みの治療

T細胞増殖に関連する、または前炎症性および/もしくは抗炎症性サイトカインによって媒介される痛みなどの状態の治療または予防に有用な化合物は、化学式(I)の化合物
[式中、R1は任意選択でR5によって置換されるアリールまたはヘテロアリールであり;
R2はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R3はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R4はHまたはアルキルまたはCH2(R2もしくはR3とともに環の一部を形成する場合)であり;
R5はアルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、F、Cl、Br、I、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、CH2OHまたはOCONアルキル2である];
あるいはそれらの塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患および痛みの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫によって引き起こされる炎症事象は多くの慢性炎症性疾患の重要な原因であり、ここで長期間の炎症は組織の破壊をもたらし、広範囲の損傷および最終的には影響を受けた器官の障害を引き起こす。これらの疾患の原因は未知であるが、それらは自分自身に向かう個体の免疫系に起因すると思われるため、しばしば自己免疫と呼ばれる。その状態は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および強皮症など、多臓器に関与するものを含む。他の種類の自己免疫疾患は、筋骨格組織(関節リウマチ、強直性脊椎炎)、消化管(クローン病および潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病および慢性疲労症候群)、膵臓β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgA腎症、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群および自己免疫性膵炎)ならびに皮膚(乾癬およびアトピー性皮膚炎)などの特定の組織または器官に関与し得る。
【0003】
加えて、その原因論はおおむね知られているが、その炎症もまた慢性的で軽減されない慢性炎症性疾患がある。これらもまた、広範な組織/器官の破壊を示し、変形性関節症などの状態を含む。これらの状態は、開発途上国世界における疾患の主な原因であり、現在の治療法によって十分に治療されない。
【0004】
皮膚組織の炎症(皮膚炎)は、共通の一連の疾患である。これらの疾患は多様な治療法を用いて治療されるが、それらの多くは非常に重大な副作用を有する。
【0005】
免疫によって引き起こされる疾患に対する現在の疾患修飾性治療は(あるとすれば)、中和抗体、細胞毒性薬、コルチコステロイド、免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬および抗ムスカリン薬を含む。これらの治療はしばしば、不便な投与経路および重大な副作用を伴い、これらは服用遵守の問題につながる。さらに特定の薬物の種類は、例えば鼻炎に対する抗ヒスタミン薬のように、特定の種類の炎症性疾患のみに有効である。
【0006】
発明の概要
意外にも、化学式(I)の化合物はサイトカインの阻害剤であり、サイトカインが関与する疼痛状態における痛みの減少に効果を有するだけでなく、抗炎症特性を有することが見いだされた。本発明に従って、前述のような炎症状態は、このような化合物の使用によって治療される。
【0007】
本発明の別の態様に従って、哺乳動物における急性、慢性の痛みまたは神経障害性疼痛(癌、外科手術、関節炎、口腔外科手術、有痛性神経障害、外傷、筋骨格系損傷もしくは筋骨格系疾患、および内臓疾患に関連した痛みを含むがそれらに限定されない)ならびに片頭痛などの痛みは、化学式(I)の化合物
【化1】

【0008】
[式中、R1は任意選択でR5によって置換されるアリールまたはヘテロアリールであり;
R2はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R3はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R4はHまたはアルキルまたはCH2(R2もしくはR3とともに環の一部を形成する場合)であり;
R5はアルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、F、Cl、Br、I、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、CH2OHまたはOCONアルキル2でありうる];
あるいはそれらの塩である化合物の使用によって治療され得る。
【0009】
発明の説明
「アリール」という用語は、本明細書において用いられる場合、6〜10個の環原子を含む任意選択で置換された芳香族環系、および2つ以上の環を有し、その少なくとも1つが芳香族である任意選択で置換された多環系を指す。この用語は、例えば、フェニル基およびナフチル基を含む。
【0010】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書において用いられる場合、その少なくとも1つの原子がO、NおよびSより選択される5〜10原子の芳香族環系を指す。この用語は、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基などを含む。
【0011】
「アルキル」という用語は、本明細書において用いられる場合、1〜6個の炭素原子を有する、任意選択で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル部分を指す。この用語は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。置換基はそれぞれの場合で同一であっても異なっていてもよく、ハロゲンなどより選択されうる。「C1-6アルキル」は同一の意味を有する。
【0012】
「環」は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルでありうる。
【0013】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において用いられる場合、3〜6個の炭素原子を有する飽和脂環式部分を指す。この用語は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。この基は任意選択で本明細書に記載される任意の置換基によって置換されうる。
【0014】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書において用いられる場合、3〜7個の炭素原子ならびにN、O、S、PおよびSiの群より選択される1つ以上のヘテロ原子を有する飽和複素環部分を指す。この用語は、例えば、アゼチジニル基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、ピペリジニル基などを含む。この基は任意選択で本明細書に記載される任意の置換基によって置換されうる。
【0015】
本発明での使用に適した化学式(I)の化合物は、下記のような新規化合物を含む(がそれらに限定されない)。すなわち、
2-[2-(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-ブタン-1-オール
2-[2-(3,5-ジメチルカルバモイルオキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-エチル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-ブタン-1-オール
2-[2-(2,5-ジメトキシフェニル)-1-メチル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-ヒドロキシ-3-ウレイルフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-アミノ-3-シアノフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(3,4-ジアセチルフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(3,4-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(2,5-ジメトキシフェニル)-1-メチル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-エチル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(3-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(4-ニトロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(8-ヒドロキシキノリン-5-イル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(8-ヒドロキシ-1H-キノリン-2-オン-5-イル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(4-ヒドロキシ-3-メタンスルホンアミドフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(4-メタンスルホンアミドフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
2-[2-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(2-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-ヒドロキシ-3-メチルスルホニルフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1,3-ジオール
および
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール。
【0016】
新規ではない(登録されている)が以前には治療上の使用が提案されていない、本発明での使用に適した化学式(I)の化合物は、
2-[2-(3,5-ジtert-ブチルカルボニルオキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(3,5-ジイソプロピルカルボニルオキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(3,5-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
および
2-[2-(3,5-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
を含む。
【0017】
本発明での使用に適した化学式(I)の他の化合物は、
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール(この化合物の単一異性体は新規であるが)
2-[2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-フェニル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール(フェプラジノール)
2-[2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(3-クロロ-4-アミノ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
2-[2-(ナフタレン-2-イル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
および
2-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-プロパン-1-オール
を含む。
【0018】
本発明は(I)の任意のジアステレオマーおよびエナンチオマーと同様に、その塩、例えば塩酸塩、代謝産物およびプロドラッグに関することが理解される。
【0019】
化学式(I)の化合物のいくつかは、アルファおよびベータアドレナリン受容体への作動性および拮抗性を介した降圧作用、血管拡張作用、交感神経刺激作用、気管支拡張作用または心臓刺激作用を有する。これらの薬剤は少なくとも1つのキラル中心を有し、アルファまたはベータアドレナリン受容体へのそれらの活性は、主にまたはもっぱら1つのエナンチオマーに備わる。分子が2つ以上のキラル中心を有する場合、アルファまたはベータアドレナリン受容体への活性は、主に1つのジアステレオマーに備わる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、好ましい(I)のジアステレオマーまたはエナンチオマーは、αまたはβアドレナリン受容体への活性をほとんどもしくは全く有さない。この活性は、適切なin vitroアッセイの使用によって測定されうる。
【0021】
本発明の化学式(I)の化合物は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および強皮症などの多臓器に関与する自己免疫疾患、筋骨格組織(関節リウマチ、強直性脊椎炎)、消化管(クローン病および潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病および慢性疲労症候群)、膵臓β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgA腎症、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群および自己免疫性膵炎)ならびに皮膚(乾癬およびアトピー性皮膚炎)などの特定の組織または器官に関与する自己免疫疾患、変形性関節症、歯周病、糖尿病性腎症、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、移植片対宿主病、慢性骨盤内炎症性疾患、子宮内膜症、慢性肝炎ならびに結核などの慢性炎症性疾患、鼻炎、喘息、アナフィラキシーならびに皮膚炎などのIgE介在性(I型)過敏症を含むがそれらに限定されない、炎症性疾患を治療するために使用される。皮膚炎状態は、光線角化症、酒さ、尋常性ざ瘡、アレルギー性接触皮膚炎、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎、水疱性類天疱瘡、皮膚薬物反応、多形性紅斑、紅斑性狼瘡、光線皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症および蕁麻疹を含む。
【0022】
患者がまた、コルチコステロイド(例としてコルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ジヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコート、フルニソリド、ベコナーゼ、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンを含む)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(例としてアザルフィジン、金チオリンゴ酸、ブシラミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、レフルノミド、メトトレキサート、ミゾリビン、ペニシラミンおよびスルファサラジンを含む)、免疫抑制剤(例としてアザチオプリン、シクロスポリンおよびミコフェノール酸を含む)、COX阻害剤(例としてアセクロフェナク、アセメタシン、アルコフェナク、アルミノプロフェン、アロキシピリン(aloxipirin)、アンフェナク、アミノフェナゾン、アントラフェニン、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンジダミン、ブチブフェン、セレコキシブ、クロルテノキサシン(chlorthenoxacine)、サリチル酸コリン、クロメタシン(chlometacin)、デキスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク、フェクロブゾン、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、サリチル酸ヒドロキシエチル、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、メフェナム酸、メタミゾール、モフェブタゾン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフェナゾン、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン、プラノプロフェン、プロピフェナゾン、プロクアゾン、ロフェコキシブ、サリチルアミド、サルサレート、スリンダク、スプロフェン、チアラミド、チノリジン、トルフェナム酸およびゾメピラクを含む)、中和抗体(例としてエタネルセプトおよびインフリキシマブを含む)、ならびに抗生物質(例としてドキシサイクリンおよびミノサイクリンを含む)より選択される他の治療薬をも投与されるか、または併用される場合、これらの化合物は本発明に従って使用されうる。
【0023】
化学式(I)の化合物は、動物モデルにおいて鎮痛活性を示す。これらの化合物の活性は、適切なin vivoアッセイの使用によって測定されうる。
【0024】
本発明はまた、慢性、急性の痛みまたは神経障害性疼痛に苦しむ患者(ヒトおよび/あるいは乳業、食肉産業もしくは毛皮産業で、または愛玩動物として飼育される哺乳動物を含む)の治療方法;より具体的には、活性成分として化学式(I)の鎮痛薬の投与を含む治療方法に関する。
【0025】
従って、化学式(I)の化合物は、特に、急性および慢性の痛み(癌、外科手術、関節炎、口腔外科手術、外傷、筋骨格系損傷または筋骨格系疾患、内臓疾患に関連した痛みを含むがそれらに限定されない痛み)および片頭痛などの疼痛状態の治療に使用され得る。加えて、疼痛状態は神経障害性(ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、薬物性神経障害、HIVによる神経障害、交感神経反射性ジストロフィーまたは灼熱痛、線維筋痛症、顔面筋疼痛、絞扼性神経障害、幻肢痛、三叉神経痛)であり得る。神経障害状態は、脳卒中、多発性硬化症、脊髄損傷、くも膜炎、新生物、脊髄空洞症、パーキンソン病およびてんかんに関連する中枢性疼痛を含む。
【0026】
痛みの治療のために使用される他の薬物と併用した化学式(I)の化合物の使用は、しばしば有利である。このような他の薬物は、オピエートまたはバクロフェンなどの非オピエートでありうる。特に神経障害性疼痛の治療のためには、ガバペンチンとの併用が好ましい。使用されうる他の化合物は、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬、NMDAアンタゴニスト、神経遮断薬、抗けいれん薬(anti-convulsant)、鎮痙薬(anti-spasmodic)、抗うつ薬または筋弛緩薬を含む。
【0027】
任意の適切な投与経路が使用され得る。例えば、任意の経口投与、局所投与、非経口投与、眼内投与、直腸投与、膣内投与、吸入投与、口腔投与、舌下投与および鼻腔内投与経路が適切でありうる。活性物質の用量は、疾患の性質および程度、患者の年齢および状態ならびに当業者に知られている他の要因によって決まる。一般的な用量は1日1〜3回、10〜100 mg投与される。
【0028】
化学式(I)の化合物は、下記に示されるスキームのいずれかによって調製されうる。
【化2】

【0029】
化学式(I)の他の化合物は同様に、既知のまたは当業者によって調製され得る化合物および方法を用いて調製され得ることが認識される。
【0030】
以下の実施例は本発明を説明する。
【実施例】
【0031】
実施例1
【化3】

【0032】
4-アミノ-ブロモ-3,5-ジクロロアセトフェノン
臭素(63 ml、1.22 mol)を室温でCHCl3(3 L)中の4-アミノ-3,5-ジクロロアセトフェノン(250 g、1.22 mol)の混合物に添加した。混合物を1時間撹拌し、その後、EtOH(500 ml)を添加した。混合物を0℃に冷却し、1時間撹拌した。沈殿物をろ過し、風乾した(4.7 g、67%)。1H NMR (400 MHz, DMSO):4.77 (2H, s) 6.61 (2H, bs) 、7.86 (2H, s);13C NMR (100 MHz, DMSO):63.39、117.89、128.57、129.75、146.17、195.99。
【0033】
1-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イルアミノ)エタノン
2-アミノ-2-メチル-プロパン-1-オール(180 ml、2.49 mol)をクロロホルム(650 ml)中の前生成物(237 g、0.83 mol)の混合物に添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、その後、水(380 ml)を添加した。混合物を1時間撹拌し、その後、固体をろ過した。固体を水(1 L)で粉砕(triturated)し、目的とする化合物(223 g、91%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO):0.94 (6H, s)、3.18 (2H, d J=4.4 Hz) 、3,93 (2H, s) 、4.55 (1H, m) 、6.40 (2H, s)、7.84 (2H, s);13C NMR (100 MHz, DMSO):24.21、48.87、53.73、68.52、117.92、124.57、125.79、128.62、146.07、195.30;LC-MS:291、292、293 (M + H+)。
【0034】
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
水(80 ml)中の水素化ホウ素ナトリウム(35.5 g、0.93 mol)のスラリーを、0℃でMeOH(775 ml)および水(390 ml)中の前生成物(121 g、0.41 mol)の混合物に徐々に添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、蒸発乾固した。残渣をEtOH(1.5 L)中でスラリーにしてろ過し、ろ液を蒸発乾固して白色固体(76 g、62%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3
):1.03 (6H, s)、2.53-2.58 (1H, m)、2.71-2.76 (1H, m)、4.39 (2H, bs)、4.46-4.49 (1H, m)、7.17 (2H, m);13C NMR (100 MHz, CDCl3):24.03、24.19、49.64、53.66、68.95、72.01、119.64、125.47、133.04、139.45;LC-MS:293 (M + H+)。
【0035】
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール(1)の単一エナンチオマー
2-(2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルプロパン-1-オール(2.0 g)をCHIRALPAK AS-H 5μm(250 mm x 20 mm)クロマトグラフィーカラムで、溶離液90/10 CO2/ (MeOH+1%ジエチルアミン)、流速60 ml/min、UV波長検出230 nm、温度25℃、流出圧150バールによって精製した。0.95 gの黄色油状物質を第一流出ピーク、HPLC 95.8%、エナンチオマー過剰率>99.0として単離した。0.95 gの黄色油状物質を第二流出ピーク、HPLC 92.3%、エナンチオマー過剰率>99.0として単離した。
【0036】
実施例2
2-(2-フェニル-2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチル-プロパン-1-オール
【化4】

【0037】
マグネティックスターラー、還流冷却器、等圧滴下漏斗を備えた250 mlの三口フラスコに、窒素下、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(10.0 ml、0.112 mol)を加えた。スチレンオキシド(7.21 ml、0.05 mol)を滴下し、溶液を一晩加熱した(外部油浴温度:105℃)。TLC分析95:5(DCM: MeOH)は、出発物質が存在しないことを示した。
【0038】
室温に冷却した後、沈殿した固体を沸騰エタノールに溶解させた。撹拌している溶液に石油エーテル(数ml)を添加し、白色固体を沈殿させた。これをろ過によって回収し、粗生成物を沸騰水中での再結晶によって精製した。白色固体が得られた(5.30 g、23.0%)。NMRおよびLCMS分析は、目的とする生成物と一致した。さらなる純物質群は、必要であれば、水性のろ液から回収され得る。
1H NMR (500MHz, MeOD) δ=1.07 (s, 6H, 2x CH3)、2.69-2.77 (m, 2H, NCH2)、3.32-3.35 (d, 1H, J = 11Hz CH2O)、3.41-3.43 (d, 1H, J = 11 Hz, CH2O)、4.71-4.74 (dd, 1H, J = 4.2 Hz, J = 8.7Hz, CH)、7.26-7.41 (m 5H, Ar)。
13C NMRスペクトル(125MHz, MeOD)δ= 23.22、24.07、50.69、54.69、69.28、74.40、127.07、128.61、129.42、144.71。
【0039】
実施例3
2-[2-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オール
【化5】

【0040】
マグネティックスターラー、還流冷却器、等圧滴下漏斗を備えた250 mlの三口フラスコに、窒素下、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(5.00 g、0.11 mol)を加えた。2-(4-フルオロフェニル)オキシラン(3.31 mL、0.05 mol)を滴下し、溶液を一晩加熱した(外部油浴温度:105℃)。TLC分析95:5(DCM: MeOH)は、出発物質が存在しないことを示した。
【0041】
室温に冷却した後、沈殿した固体をろ過によって回収し、沸騰水からの再結晶によって精製した。白色固体が得られた(2.33 g、21%)。NMRおよびLCMS分析は、目的とする生成物と一致した。さらなる純物質群は、必要であれば、水性のろ液から回収され得る。
1H NMR (500MHz, MeOD)δ=1.07 (s, 6H, 2x CH3)、2.68-2.75 (m, 2H, NCH2)、3.33-3.36 (d, 1H, J = 11.0Hz CH2O)、3.41-3.43 (d, 1H, J = 10.9Hz, CH2O)、4.70-4.73 (dd, 1H, J = 4.3 Hz, J = 8.7Hz, CH)、7.07-7.10 (m 2H, Ar)、7.40-7.43 (m, 2H, Ar)。
【0042】
以下の研究は、本発明が基づく根拠を提供する。
【0043】
ベータ2作動性機能分析
モルモットの気管輪標本を、インドメタシンを含有するクレブス溶液に懸濁した。15分間安定化させた後、標本をカルバコールによって繰り返し収縮させ、同時に、漸増する蓄積用量の試験化合物(0.1 nM〜0.1μM)で処理した。各試験化合物のベータ2作動性は、カルバコール刺激性の気管筋収縮へのその用量依存的阻害によって測定された。
【0044】
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチル-プロパン-1-オールの2つのエナンチオマーは、ベータ作動性機能分析において試験された場合、2.1μMおよび11.9 nMのIC50を与えた。フォルモテロール(Formeterol)は、この系において2.2 nMのIC50を有する。
【0045】
LPSマウスアッセイ
7週齢のBalb C ByJマウス(24〜28 g)に、i.p.(5 ml/kg)もしくは経口(10 ml/kg)投与のいずれかによって、ベヒクルまたは試験物質を投与した。30分後、これらの動物に1 mg/kg LPSの腹腔内注射を行った。LPS投与の2時間後、軽度のイソフルラン麻酔下で眼窩後穿刺によって通常のチューブに血液サンプルを採取した。サンプルを室温で凝血させ、その後、600Og、4℃で3分間遠心分離した。血清は使用するまで-20℃で保存した。血清中TNFαレベルおよびIL-10レベルをELISA法によって二連で分析した。
【0046】
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オールの2つのエナンチオマーは、LPSマウスアッセイにおいて以下の結果を与えた。すなわち、10 mg/kgでTNFα産生を65%および13%阻害、30 mg/kgでTNFα産生を78%および18%阻害。IL-10産生は10 mg/kgで420%および137%まで、30 mg/kgで336%および132%まで促進された。ラセミ化合物は、10および30 mg/kgでそれぞれ60%および61%までTNFα産生を阻害し、10および30 mg/kgでそれぞれ417%および392%までIL-10産生を促進した。
【0047】
2-[2-フェニル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オールは、10および30 mg/kgでそれぞれ47%および58%までTNFα産生を阻害し、同一の用量で345%および366%までIL-10産生を促進した。
【0048】
2-[2-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オールは、10および30 mg/kgでそれぞれ37%および37%までTNFα産生を阻害し、同一の用量で106%および125%までIL-10産生を促進した。
【0049】
カラギーナン肢アッセイ(Carrageenan Paw Assay)
絶食させた(18時間)オスのWistarラット(105〜130 g)を体重測定し、肢を脛骨足根骨関節まで水銀に浸すことによって、右後肢の水銀足容積測定装置での基礎測定値を測定した。その後、ベヒクル、参照物質および試験物質を強制経口投与(10 ml/kg)によって投与した。処理の30分後、0.9%生理食塩水中2%のカラギーナン0.1 mlを、右後肢の足底部に注射した。カラギーナン投与後1、2、3、4および5時間目に再度、足容積測定装置で右肢を測定した。
【0050】
2-[2-(4-アミノ-3,5-ジクロロフェニル)-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-メチルプロパン-1-オールのエナンチオマーの1つは、カラギーナン肢アッセイにおいて明らかな抗炎症用量反応曲線を示した。その阻害は0.3、1、3、10および30 mg/kgでそれぞれ18%、28%、26%、59%および71%であった。同アッセイにおいてイブプロフェンは100 mg/kgで38%の抗炎症性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞増殖に関連するか、または前炎症性および/もしくは抗炎症性サイトカインによって媒介される状態の治療または予防のための化合物の使用であって、前記化合物が、化学式(I)の化合物
【化1】

[式中、R1は任意選択でR5によって置換されるアリールまたはヘテロアリールであり;
R2はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R3はH、アルキルまたはCH2OHであり、R4とともに環の一部であってよく;
R4はHまたはアルキルまたはCH2(R2もしくはR3とともに環の一部を形成する場合)であり;
R5はアルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、F、Cl、Br、I、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、CH2OHまたはOCONアルキル2である];
あるいはそれらの塩である化合物の使用。
【請求項2】
前記状態が、関節リウマチ、変形性関節症または骨粗鬆症などの慢性退行性疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記状態が、多発性硬化症などの慢性脱髄疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記状態が、喘息または慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記状態が、潰瘍性大腸炎またはクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記状態が、乾癬、強皮症またはアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記状態が、歯周病または歯肉炎などの歯の疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記状態が、糖尿病性腎症、ループス腎炎、IgA腎症または糸球体腎炎である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記状態が全身性紅斑性狼瘡(SLE)である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記状態が移植片対宿主病である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記状態が疼痛状態である、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記疼痛状態が、慢性腰痛、悪性の痛み、慢性頭痛(片頭痛および群発頭痛を含む)または関節痛などの慢性の痛みである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疼痛状態が、術後疼痛、外傷後の痛みまたは急性疾患に誘発される痛みなどの急性の痛みである、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記疼痛状態が神経障害性疼痛である、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物がキラルであり、αもしくはβアドレナリン受容体での活性を相対的にほとんどまたは全く有さないエナンチオマーあるいはジアステレオマーの形である、上記の請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
患者がまた、コルチコステロイド、細胞毒性薬、抗生物質、免疫抑制剤、非ステロイド系抗炎症薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬、NMDAアンタゴニスト、神経遮断薬、抗けいれん薬、鎮痙薬、抗うつ薬および筋弛緩薬より選択される他の治療薬をも投与される、上記の請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物および前記の他の薬剤が併用で提供される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
本明細書に記載されるような新規化合物。

【公表番号】特表2009−501149(P2009−501149A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518968(P2008−518968)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002413
【国際公開番号】WO2007/003896
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507303376)ソーセイ アールアンドディ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】