説明

炎症治療において有用なピラゾール

式I、
【化1】


(式中、
1、R2、A1、A2、A3、およびA4は説明で与えられる意味を有する)の化合物および薬学的に許容可能なそれらの塩類が提供され、化合物は、リポキシゲナーゼ(例えば15−リポキシゲナーゼ)活性の阻害が所望されおよび/または必要とされる疾患の治療において、特に炎症の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に有用な新しい化合物に関する。本発明は、15−リポキシゲナーゼ活性の阻害、ひいては一般に炎症性疾患および炎症治療において有用な化合物にさらに関する。本発明はまた、このような化合物の薬剤としての使用、それらを含有する医薬組成物、およびそれらの生成のための合成経路にも関する。
【背景技術】
【0002】
本質的に炎症性である多数の疾患/障害がある。既存の炎症状態の治療法に付随する主要な問題の1つは、有効性の欠如および/または(実際のまたは認識される)副作用の蔓延である。
【0003】
喘息は工業世界の成人人口の6%〜8%が罹る慢性炎症性疾患である。子供では発生率はなお高く、ほとんどの国で10%近い。喘息は15歳以下の子供の入院の最も一般的な原因である。
【0004】
喘息の治療計画は病状の重篤性に基づく。軽症は治療されず、または吸入β作動薬のみで治療される。より重い喘息がある患者は、典型的に抗炎症化合物で定期的に治療される。
【0005】
多くの喘息に対する治療が不十分であり、それは少なくともある程度は既存の維持療法(主に吸入コルチコステロイド)のリスクによるものである。これらのリスクとしては、子供の成長遅滞、骨塩密度の損失が挙げられ、避けられるはずの病的状態および死亡の原因となる。ステロイドに代わるものとして、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRa)が開発された。これらの薬剤は経口的に投与されてもよいが、吸入されたステロイドよりもかなり有効性に劣り、通常、気道炎症を満足に管理できない。
【0006】
この要因の組み合わせにより、全喘息患者の少なくとも50%が適切に治療されていない。
【0007】
アレルギー性障害に関しても同様の治療パターンが存在し、いくつかの一般的な病状を治療するのに薬剤を利用できるが、明白な副作用を考慮して充分に活用されない。鼻炎、結膜炎、および皮膚炎はアレルギー性要素を有し得るが、原因となるアレルギーが存在しなくてもまた発生し得る。実際、この種類の非アレルギー性病状は、多くの場合治療がより困難である。
【0008】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界人口の6%〜8%が罹る一般的な疾患である。疾患は潜在的に致命的であり、この病状からの罹患率および死亡率はかなりの数である。現在のところ、COPDの経過を変更できる既知の薬物治療はない。
【0009】
言及され得るその他の炎症性疾患としては、
(a)肺線維症(これはCOPDよりもまれであるが、非常に予後の悪い重篤な障害である。治療法は存在しない)、
(b)炎症性腸疾患(罹患率の高い一群の障害。現在このような障害の対症療法のみが利用できる)、および
(c)関節リウマチおよび骨関節炎(一般的な日常生活に支障を来すほどの関節の炎症性疾患。現在治療法はなく、このような病状の管理のために中程度に効果的な対症療法のみが利用できる)が挙げられる。
【0010】
炎症はまた、疼痛の一般的な原因でもある。炎症性疼痛は、感染症、外科手術またはその他の外傷などの多くの理由から生じ得る。さらにいくつかの悪性腫瘍は、患者の総体症状を増悪させる炎症性要素を有することが知られている。
【0011】
したがって、新しいおよび/または代案の抗炎症療法は、上述の患者群の全てにとって有用であろう。特に現実のまたは知覚される副作用なしに、喘息などの炎症性疾患を治療できる効果的な抗炎症薬に対する、現実には実質的に満たされていない臨床上の必要性がある。
【0012】
哺乳類のリポキシゲナーゼは、とりわけアラキドン酸の酸素化を触媒する構造的に関連した酵素のファミリーである。炭素位置5、12、および15におけるアラキドン酸への分子酸素挿入を触媒する、3つのタイプのヒトリポキシゲナーゼが知られている。酵素はそれぞれ5−、12−、および15−リポキシゲナーゼと命名されている。
【0013】
リポキシゲナーゼの作用に続いて形成されるアラキドン酸代謝産物は、炎症促進効果をはじめとする明白な病態生理的活性を有することが知られている。
【0014】
例えばアラキドン酸に対する5−リポキシゲナーゼの作用の一次産物は、いくつかの酵素によって、多様な生理的および病態生理的に重要な代謝産物にさらに変換される。これらの中で最も重要であるロイコトリエンは、強力な気管支収縮剤である。これらの代謝産物の作用を阻害する薬剤、ならびにそれらを形成する生物学的過程の開発に向けて、多大な努力が払われている。この目的を達成するために開発された薬剤としては、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、FLAP(5リポキシゲナーゼ活性化タンパク質)の阻害剤、および前述したロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRa)が挙げられる。
【0015】
アラキドン酸を代謝する別の種類の酵素は、シクロオキシゲナーゼである。この過程によって生成されるアラキドン酸代謝産物としては、プロスタグランジン、トロンボキサン、およびプロスタサイクリンが挙げられ、それらは全て生理的または病態生理的活性を有する。特にプロスタグランジンPGE2は強力な前炎症性メディエータであり、それはまた発熱および疼痛も誘発する。したがって「NSAID」(非ステロイド性抗炎症薬)および「コキシブ」(選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤)をはじめとする、PGE2の形成を阻害するいくつかの薬剤が開発されている。これらの種類の化合物は、1つまたはいくつかのシクロオキシゲナーゼの阻害を介して主に作用する。
【0016】
したがって一般に、アラキドン酸代謝産物の形成をブロックできる薬剤は、炎症の治療において有用であろう。
【0017】
本明細書の明らかに以前に公開された文書の一覧または考察は、その文献が最新技術の一部であり、または通常の一般知識であると必ずしも認識されるべきではない。
【0018】
2−ピラゾロベンゾキサゾールは、Vinsova et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry (2006), 14(17), 5850-5865で有望な抗菌薬として開示されている。しかしその文献中には、そこで開示される化合物のいずれかのリポキシゲナーゼ阻害剤としての使用、ひいては炎症治療における使用への言及はない。
【0019】
本明細書に記載の化合物とは構造的に無関係の特定のピラゾールカルボン酸ヒドラジドが、Tihanyi et al, Eur. J. Med. Chem. - Chim. Ther., 1984, 19, 433およびGoel et al, J. Chem. Inf. Comput. Sci. 1995, 35, 510で抗炎症薬として開示されている。
【0020】
Vertuani et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 74, No. 9 (1985)は、抗炎症および鎮痛活性を有する様々なピラゾールを開示する。オキサゾール環の3位で置換されたピラゾールについての言及または提案はない。
【0021】
米国特許第6,166,041号明細書は、喘息治療のための様々なベンゾキサゾールPDE IV阻害剤を開示する。しかしこの文献は、ベンゾキサゾールのベンゼン環に(7位で)、直接、またはリンカー基を通じてのどちらかで付着する、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するフェニル環または単環によって置換されたベンゾキサゾールのみを開示する。
【0022】
国際公開第2006/092430号パンフレットおよび独国特許出願公開第10 2005 009 705号明細書は、ヒトコルチコステロイドシンターゼ阻害において、ひいてはコルチゾン過剰症および糖尿病などの疾患の治療において有用であり得る、主としてナフタレンである様々な二環式化合物を開示する。しかしそこで開示される化合物のリポキシゲナーゼ阻害剤としての使用、したがって炎症治療で有用な使用についての言及はない。
【0023】
国際公開第2007/019417号パンフレットは、サーチュイン調節因子としての様々な化合物を開示する。しかしこの文献は、一連の2つの芳香族基を含んでなる化合物のみを開示し、さらにそこではこのような化合物のリポキシゲナーゼ阻害剤としての使用、したがって炎症治療で有用な使用についての開示はない。
【0024】
国際公開第2006/04614号パンフレットは、芳香族基を含有して、グルココルチコイド受容体調節因子として有用であり得る化合物を開示する。このような化合物としては、とりわけピラゾールが挙げられる。しかしこの文献は、スルホンアミド基で置換されていないピラゾールを開示しない。
【0025】
国際公開第2004/080999号パンフレットおよび国際公開第2006/032852号パンフレットはどちらも炎症治療で使用するための様々な3−アミドピラゾールを開示する。しかしこれらの文献のどちらにも、このような治療で使用するためのN−非置換ピラゾールの開示または提案はない。
【0026】
米国特許出願公開第2005/0070589号明細書は、15−リポキシゲナーゼの有望な阻害剤として様々なピラゾールを開示する。しかしそこで開示されるピラゾールは必然的に4位でアルキル基によって置換され、それは必然的に窒素ヘテロ原子を含有する置換基によって置換される。米国特許出願公開第2004/0198768号明細書は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤として有用であり得る、ベンゾアゾールをはじめとする様々な二環式の化合物を開示する。しかしこのようなベンゾアゾールは、必然的に2位でアミノフェニル基によって置換される。欧州特許出願公開第0 418 845号明細書および国際公開第2004/080999号パンフレットはどちらも薬剤として使用するための様々なピラゾールを開示する。しかしどちらの文献も1(N)−置換ピラゾールのみに言及する。
【0027】
国際公開第2006/032851号パンフレットは、炎症治療において使用するための様々な3−アミドピラゾール開示する。さらに国際公開第2007/045868号パンフレット、国際公開第2007/051981号パンフレット、国際公開第2007/052000号パンフレット、および国際公開第2007/051982号パンフレットは、炎症治療で使用するための3−アミドピラゾールまたはアミドトリアゾールのどちらかを開示する。しかしこれらの文献のいずれにも、オキサゾール基によって3位で置換されたピラゾールの開示または提案はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に従って、式I、
【化1】

(式中、
1およびR2は独立して、H、ハロゲン、C16アルキルまたは−O−C16アルキルを表し、後者の2つの基は1つ以上のハロゲン原子で任意に置換され、
1、A2、A3、およびA4はそれぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、またはこれらのそれぞれは−N=を表し、
3、R4、R5、およびR6は独立して、水素またはX1を表し、
1はハロゲン、−R3a、−CN、−C(O)R3b、−C(O)OR3c、−C(O)N(R4a)R5a、−N(R4b)R5b、−N(R3d)C(O)R4c、−N(R3e)C(O)N(R4d)R5d、−N(R3f)C(O)OR4e、−N3、−NO2、−N(R3g)S(O)2N(R4f)R5f、−OR3h、−OC(O)N(R4g)R5g、−OS(O)23i、−S(O)m3j、−N(R3k)S(O)23m、−OC(O)R3n、−OC(O)OR3p、−S(O)2N(R4h)R5h、−S(O)2OH、−P(O)(OR4i)(OR5i)または−C(O)N(R3q)S(O)23rを表し、
mは0、1または2を表し、
3aはハロゲン(例えばFまたはCl)、−N(R6a)R6b、−N3、=O、および−OR6cから選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
3b〜R3h、R3k、R3n、R3q、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hは独立して、Hを表し、または1つ以上のハロゲン原子または−OR6dによって任意に置換されるC16アルキルを表し、または
4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR5g、ならびにR4hおよびR5hのペアのいずれかは、共に結合して3〜6員環を形成してもよく、その環はこれらの置換基が必然的に付着する窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子(窒素または酸素など)を任意に含有し、その環は任意にF、=Oによって置換され、および/または1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC16アルキルによって置換され、
3i、R3j、R3m、R3p、およびR3rは独立して、B1から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
4iおよびR5iは独立して、Hを表し、またはB2から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
6a、R6b、R6c、およびR6dは独立して、Hを表し、またはB3から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、または
6aおよびR6bは共に結合して3〜6員環を形成してもよく、その環はこれらの置換基が必然的に付着する窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子(窒素または酸素など)を任意に含有し、その環は任意に=Oによって置換され、および/または1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC16アルキルよって置換され、
1、B2、およびB3は独立して、F、Cl、−OCH3、−OCH2CH3、−OCHF2、−OCH2CF3、−OCF3または−OCF2CF3を表す)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩が提供されるが、
ただしR1およびR2がどちらもHを表す場合、A1、A2、A3、およびA4はそれぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、R3およびR5がHを表す場合、R4およびR6のどちらもt−ブチルを表さず、
本化合物および塩は以下において「本発明の化合物」として言及される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。このような塩は、例えば任意に溶剤中において、またはそれに塩が不溶性である媒体中において、式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基形態と、1つ以上の適切な酸または塩基の同等物とを反応させ、それに続いて標準技術(例えば真空内での凍結乾燥法または濾過)を使用して、前記溶剤または前記媒体を除去して、従来の手段によって形成されてもよい。塩はまた、例えば適切なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の本発明の化合物の対イオンを別の対イオンで交換して調製されてもよい。
【0030】
本発明の化合物は、二重結合を含有してもよく、したがって個々の各二重結合に関してE(entgegen)およびZ(zusammen)幾何異性体として存在してもよい。このような全ての異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0031】
本発明の化合物はまた、互変異性を示してもよい。全ての互変異性形態およびそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
本発明の化合物はまた、1つ以上の非対称炭素原子を含有してもよく、したがって光学および/またはジアステレオ異性を示してもよい。ジアステレオ異性体は、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶などの従来の技術を使用して分離されてもよい。例えば分別結晶またはHPLCなどの従来の技術を使用して、化合物のラセミまたはその他の混合物の分離によって、様々な立体異性体を単離してもよい。代案としては、全て当業者に知られている条件下における、ラセミ化またはエピマー化を引き起こさない条件下での適切な光学活性出発原料の反応(すなわち「キラルプール」法)によって、適切な出発原料と引き続いて適切な段階で除去できる「キラル補助基」との反応によって、例えばホモキラル酸を用いた誘導体化(すなわち動的分割をはじめとする分割)とそれに続くクロマトグラフィーなどの従来の手段によるジアステレオマー誘導体の分離によって、または適切なキラル試薬またはキラル触媒との反応によって、所望の光学的異性体を作成してもよい。全ての立体異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0033】
特に断りのない限り、本明細書で定義されるC1qアルキル(qは範囲の上限である)は直鎖であってもよく、または十分な数(すなわち最低3個)の炭素原子がある場合は分枝鎖、および/または環式であってもよい(つまりアルキルの場合、C3qシクロアルキル基を形成する)。さらに十分な数(すなわち最低4個)の炭素原子がある場合は、このような基は一部環式であってもよい。さらに特に断りのない限り、このようなアルキル基はまた飽和であってもよく、または十分な数(すなわち最低2個)の炭素原子がある場合は、特に断りのない限り不飽和であってもよい(例えばC2qアルケニルまたはC2qアルキニル基を形成する)。
【0034】
「ハロゲン」という用語は、本明細書の用法では、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0035】
言及し得るアリール基としては、C614(例えばC610)アリール基が挙げられる。このような基は、単環式、二環式または三環式であってもよく、6〜14個の環炭素原子を有し、その内少なくとも1つの環は芳香族である。C614アリール基としては、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどのナフチル、インダニル、インデニル、およびフルオレニルが挙げられる。言及し得るヘテロアリール基としては、5〜14(例えば5〜10)員環を有するものが挙げられる。このような基は単環式、二環式または三環式であってもよいが、ただし環の少なくとも1つは芳香族であり、環系の原子の少なくとも1つ(例えば1〜4個)は炭素以外(すなわちヘテロ原子)である。
【0036】
言及し得るヘテロ原子としては、リン、ケイ素、ホウ素、テルル、セレン、好ましくは酸素、窒素、およびイオウが挙げられる。
【0037】
不確かさを回避するために、本明細書で「R3b〜R3h」などの語句が用いられる場合、これは当業者によってR3b、R3c、R3d、R3e、R3f、R3g、およびR3hを包括的に意味するものと理解される。
【0038】
不確かさを回避するために、A1、A2、A3、およびA4が、それぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、またはこれらのそれぞれが−N=を表すと記載される場合、次を意味する。A1は−C(R3)=または−N=を表してもよく、A2は−C(R4)=または−N=を表してもよく、A3は−C(R5)=または−N=を表してもよく、A4は−C(R6)=または−N=を表してもよい。すなわちA1、A2、A3、およびA4はそれぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、またはこれらのそれぞれは代案としては独立して、−N=を表してもよい。
【0039】
不確かさを回避するために、式Iの化合物中の2つ以上の置換基のアイデンティティが同一であり得る場合、それぞれの置換基の実際のアイデンティティは決して相互依存しない。例えばR3、R4、R5、およびR6の2つ以上が存在してX1を表し、2つ(以上)のX1基がR3aであり、R3aがC16アルキル基である状況において、それぞれのアルキル基は同一であるかまたは異なっていてもよい。したがって例えば1つを超えるX1基が式Iの化合物中に存在する場合、このような基は決して相互依存せず、すなわちそれらは同一であるかまたは異なっていてもよい。
【0040】
言及し得る本発明の化合物としては、R3b〜R3h、R3k、R3n、R3q、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hが独立して、Hを表し、または1つ以上のハロゲン原子または−OR6dによって任意に置換されるC16アルキルを表し、またはR4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR5g、ならびにR4hおよびR5hのペアのいずれかは、共に結合して3〜6員環を形成してもよく、その環はこれらの置換基が必然的に付着する窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子(窒素または酸素など)を任意に含有し、その環は任意に=Oによって置換され、および/または1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC16アルキルによって置換されるものが挙げられる。
【0041】
言及し得る好ましい本発明の化合物としては、R1およびR2(特にR1)が独立して、(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)−O−C16アルキル、またはより好ましくはHまたはハロゲンを表すものが挙げられる。
【0042】
好ましい本発明の化合物としては、R1およびR2が独立してH、ハロゲンを表し、または1つ以上のハロゲン(例えばフルオロ)原子によって任意に置換されるC16(例えばC13)アルキルを表すものが挙げられる。
【0043】
好ましい本発明の化合物としてはまた、
1およびR2がハロゲンを表す場合、それが好ましくはフルオロまたはクロロであり、
1およびR2が任意に置換されるC16アルキルまたは−O−C16アルキルを表す場合、それらがは好ましくは、(どちらも)1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC13アルキルまたは−O−C13アルキルであり、
1およびR2が独立して、C13(例えばC12)アルキル(そのアルキル基は例えば1つ以上のハロゲン(例えばフルオロ)原子によって、上で定義されるように任意に置換される)、またはより好ましくはHまたはハロゲン(例えばFまたはCl)を表し、
1〜A4のいずれか3つ、好ましくはいずれか2つ、またはより好ましくはいずれか1つが−N=を表し、その他が(必要に応じて)−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=または−C(R6)=を表し、
mが2を表し、
4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR5g、R4hおよびR5h、およびR6aおよびR6bのペアのいずれかが共に結合する場合、それらは5〜6員環を形成し、その環は(窒素または酸素などの)さらなるヘテロ原子を任意に含有し、メチル、−CHF2またはCF3によって任意に置換され(つまり例えばピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニル(例えば4−メチルピペラジニル)環を形成する)、
3aがハロゲン(例えばフルオロ)および−OR6cから選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
3b〜R3h、R3k、R3n、R3q、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hが独立して、Hを表し、または1つ以上のハロゲン原子または−OR6dによって任意に置換されるC14(例えばC13)アルキルを表し、
3i、R3j、R3m、R3p、およびR3rが独立して、B1から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC14(例えばC13)アルキルを表し、
4iおよびR5iが独立して、Hを表し、またはB2から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC14(例えばC13)アルキルを表し、
6a、R6b、R6c、およびR6dが独立して、Hを表し、またはB3から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC13アルキルを表し、
1、B2、およびB3が独立して、−OCF3、−OCH3または、より好ましくは、FまたはClを表すものも挙げられる。
【0044】
さらなる好ましい本発明の化合物としては、
1がハロゲン(例えばF、ClまたはBr)、−R3a、−CN、−C(O)R3b、−C(O)OR3c、−C(O)N(R4a)R5a、−N(R4b)R5b、−N(R3d)C(O)R4c、−N(R3e)C(O)N(R4d)R5d、−N(R3f)C(O)OR4e、−NO2、−N(R3g)S(O)2N(R4f)R5f、−OR3h、−OC(O)N(R4g)R5g、−OS(O)23i、−S(O)m3jまたは−S(O)2N(R4h)R5hを表し、
3aがC14アルキル(例えばエチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、または特にメチル)によって任意に置換される1つ以上のハロゲン(例えばフルオロ)原子(つまり例えば−CHF2またはCF3基を形成する)を表し、
3b、R3c、R3h、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hが独立して、水素またはC14(例えばC13)アルキル(例えばメチル)を表し、または関連ペア(すなわちR4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR4g、ならびにR4hおよびR5h)が上で定義されるように共に結合し、
3d〜R3gが独立して、C12アルキル(例えばメチル)またはとりわけ水素を表し、
3iおよびR3jが独立して、1つ以上のF原子によって任意に置換されるC14(例えばC12)アルキル(例えばメチル)を表す(つまり例えばCF3基を形成する)ものが挙げられる。
【0045】
より好ましい式Iの化合物としては、
1が−C(O)N(R4a)R5a、−N(R4b)R5b、−N(H)C(O)R4c、−S(O)2CH3、−S(O)2CF3、−S(O)2N(R4h)R5h、好ましくは、−CNまたは−NO2、またはより好ましくはハロゲン、−R3aまたは−OR3hを表し、
3hが水素を表し、または1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC14(例えばC13)アルキル(例えばエチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、またはより好ましくはメチル)を表し(つまり例えば−CHF2またはCF3を形成する)、
4aおよびR5a、R4bおよびR5b、ならびにR4hおよびR5hのペアが共に結合してピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニル(例えば4−メチルピペラジニル)環を形成し、またはより好ましくは、R4a、R4b、R4c、R4h、R5a、R5b、およびR5hが独立して、水素、メチルまたはエチルを表すものが挙げられる。
【0046】
好ましい本発明の化合物としては、
1がハロゲン(例えばクロロまたはフルオロ)、R3aまたは−OR3hを表し、
1〜A4(例えばA1またはA4)のいずれか1つが−N=を表し、少なくとも1つの(例えば1つの)X1置換基が存在する場合、それが(または少なくとも1つが)好ましくはR5または特にR4位に位置し、
3aが1つ以上のハロゲン(例えばフルオロ)原子によって任意に置換されるC13アルキル(例えばメチル)を表し(つまり例えばジフルオロメチルまたは好ましくはトリフルオロメチル基を形成する)、
3hが(1つ以上のハロゲン(例えばフルオロ)原子によって任意に置換される)C13アルキルまたはより好ましくはHを表し、
3、R4、R5、およびR6が独立して、トリフルオロメチル、または好ましくは、H、メチル、フルオロ、クロロまたはヒドロキシを表すものが挙げられる。
【0047】
より好ましい本発明の化合物としては、
1およびR2が独立して、(1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換され、つまり例えばトリフルオロメチルまたは好ましくはジフルオロメチル基を形成する)メチル、より好ましくは、HまたはClを表し、
1およびR2の1つが水素以外の置換基を表す場合、それは好ましくはR2であり、
1〜A4のいずれか1つが−N=を表し、またはA1〜A4はいずれも−N=を表さず(その他は必要に応じて/妥当ならば−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=または−C(R6)=を表す)、
1〜A4のいずれか1つが−N=を表す場合、その基を表すのは好ましくはA1またはA4であり、
1が−C(R3)=または−N=を表し、
3がH、メチルまたはフルオロを表し、
2が−C(R4)=を表し、
4がメチル(1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換され、つまり例えばCHF2または好ましくはCF3基を形成する)または好ましくはH、クロロまたはフルオロを表し、
3が−C(R5)=を表し、
5がH、クロロ、フルオロ、メチルまたはヒドロキシを表し、
4が−N=またはより好ましくは、−C(R6)=を表し、
6がH、クロロまたはフルオロを表すものが挙げられる。
【0048】
1〜A4を含有する環上の好ましい置換基としては、トリフルオロメチル、好ましくはクロロ、フルオロ、メチルおよび/またはヒドロキシ置換基が挙げられる。
【0049】
特に好ましい式Iの化合物としては、下の実施例に記載されるものが挙げられる。
【0050】
式Iの化合物は、当業者によく知られている技術に従って、例えば以下に記載のようにして作られもよい。
【0051】
本発明のさらなる態様に従って、以下の工程を含んでなる、式Iの化合物を調製する方法が提供される。
(i)R2がハロゲンまたは(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルキルを表す式Iの化合物の場合は、R2が水素を表す対応する式Iの化合物と、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、水素化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、またはn−BuLi、s−BuLi、t−BuLi、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの有機リチウム塩基(その有機リチウム塩基は、任意に添加剤(例えばエーテル(例えばジメトキシエタン)またはアミン(例えばテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、(−)スパルテインまたは1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)などのリチウム配位剤)の存在下にある)などの適切な塩基(または塩基混合物)とを反応させ、それに続いて次のような適切な求電子剤と共にクエンチングする。
(a)R2が任意に置換されるC16アルキル基を表す式Iの化合物の場合は、式II、
c1a II
(式中、Rcは(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルキルを表し、L1aはハロゲン(例えばヨードまたはブロモ)またはスルホネート基(−OSO2CF3、OSO2CH3、および−OSO2−アリール(例えば−O−トシル)など)などの適切な離脱基を表す)の化合物、またはR2がCF3を表す式Iの化合物の場合は、5−(トリフルオロメチル)−ジベンゾチオフェニウムテトラフルオロホウ酸などのトリフルオロメチル化試薬、または
(b)R2がハロゲンを表す式Iの化合物の場合は、これらの原子源を提供する求電子剤。例えば臭素原子の場合、試薬としては、N−ブロモスクシンイミド、臭素、および1,2−ジブロモテトラクロロエタンが挙げられ、塩素原子の場合、試薬としては、N−クロロスクシンイミド、塩素、一塩化ヨウ素、およびヘキサクロロエタンが挙げられ、ヨウ素原子の場合、適切な試薬としては、ヨウ素、1,2−ジヨードエタン、および1,2−ジヨードテトラクロロエタンが挙げられ、フッ素原子の場合、試薬としては、キセノンプロリルジフッ化物、SELECTFLUOR(登録商標)([1−(クロロメチル)−4−フルオロ−1,4−ジアゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロホウ酸)])、CF3OF、フッ化ペルクロリル、F2、および次亜フッ素酸アセチルが挙げられる。
当業者は、(それに対して上記反応が実施される)R2が水素を表す対応する式Iの化合物が、好ましくはピラゾール環系の窒素原子において、好ましくはこれもまた指向性メタル化基(ベンゼンスルホニル基またはSEM(すなわち−CH2OC24Si(CH33)基など)である保護基によって保護されることを理解するであろう。反応は、極性非プロトン性溶剤(例えばテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル)などの適切な溶剤の存在下において、不活性雰囲気下の周囲温度以下(例えば0(C〜−78(C)で実施してもよく、(必要に応じて)標準条件下のN−保護基の脱保護がそれに続く(例えばベンゼンスルホニル基が用いられる場合は加水分解による、またはSEM基が用いられる場合はCsF、LiBF4、Bu4NF、HF/ピリジン、MgBr2/BuSHの存在下または酸(室温におけるメタノールまたはエタノール中のHCl、およびジクロロメタン中のTFA、または例えば高温下でのHBr/AcOHまたはHCl/H2Oなどのさらに強力な酸性条件など)の存在下における反応による)。
【0052】
(ii)R1および/またはR2が(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルコキシを表す式Iの化合物の場合は、式Iの化合物に対応するが関連置換基R1および/またはR2の代わりに(必要に応じて)ヒドロキシ基が存在する化合物と、Rcが(1つ以上のハロゲン置換基によって任意に置換される)C16アルキルである上で定義される式IIの化合物とを、または(R1および/またはR2におけるメトキシ基導入のために)ジアゾメタンまたはトリメチルシリルジアゾメタンとを反応させる。各反応は、当業者に知られている標準条件下で実施してもよく、例えば前者は塩基(例えば水素化ナトリウム)および適切な溶剤(例えばジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフラン)の存在下で実施してもよく、後者は適切な溶剤(例えばベンゼンなどの芳香族炭化水素またはジエチルエーテルなどのジ(アルキル)エーテル)の存在下で実施してもよい。後者の場合、ジアゾメタンはDiazald(登録商標)から調製されてもよい。
【0053】
(iii)R2がCF3を表す式Iの化合物では、R2がブロモまたは好ましくはヨードを表す対応する式Iの化合物と、CuCF3(またはCuCF3源)とを例えばHMPAおよびDMFの存在下で反応させる。当業者は、試薬CuCF3それ自体は単離されなくてもよく、Burton D.G.; Wiemers D.M.; J. Am. Chem. Soc., 1985, 107, 5014-5015 and Mawson S.D.; Weavers R.T.; Tetrahedron Letters., 1993, Vol. 34, No. 19, 3139-3140に記載の手順(例えば亜鉛と例えばDMF中のCF2Br2との反応、つまりZnCF3(またはその供給源)の形成と、それに続くHMPA中のCuBrによる処理)に従って調製されてもよいことを理解するであろう。
【0054】
(iv)例えば標準縮合/脱水条件下で、環化に影響する試薬(例えば酸)の存在下において、式III、
【化2】

の化合物(式中、R1およびR2は上で定義されるとおりであり、L3はクロロ、ブロモ、またはヒドロキシ基などの適切な離脱基を表し、後者の基は、必要ならば任意に適切な溶剤(例えばジクロロメタン、THF、トルエンまたはベンゼン)および適切な触媒(例えばDMF)の存在下で、適切な試薬(例えば塩化オキサリル、塩化チオニルなど)を用いた処理によって活性化させて、それぞれの塩化アシルの形成をもたらしてもよい)またはその保護(例えばN−保護)誘導体と、式IV、
【化3】

(式中、
1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物とを反応させる。このような条件としては、室温、好ましくは高温(例えば還流して)におけるP25または酸(ポリリン酸など)などの試薬の存在下の反応が挙げられる。反応は好ましくはポリリン酸の存在下で、例えば高温(例えば約160℃)において、L3がヒドロキシを表す式IIIの化合物および式IVの化合物上で(対応する塩化アシルの活性化なしに)実施される。
【0055】
(v)例えば式Iの化合物の調製(上の工程段階(iv))に関して上述した条件下で、式V、
【化4】

の化合物、または式VI、
【化5】

(式中、R1、R2、A1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物を分子内環化させる。
【0056】
(vi)R2が水素を表し、R1が上で定義されるとおりである式Iの化合物の場合は、式VII、
【化6】

(式中、
Jは−Si(Rt3または−Sn(Rz3(式中、各Rtは独立して、C16アルキル(例えばメチルまたはイソプロピル)基またはアリール(例えばフェニル)基を表し、各Rzは独立して、C16アルキル(例えばメチルまたはブチル)を表す)を表し、R1、A1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物から、J基を除去する。Jが−Si(Rt3を表す場合、反応は、例えば室温において適切な溶剤(例えばテトラヒドロフラン)の存在下で、ハロゲン化物アニオン源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化水素またはフッ化カリウム)などのシリル基除去のための適切な試薬の存在下で実施してもよい。Jが−Sn(Rz3を表す場合、反応は、適切な溶剤(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、MeOHまたはEtOH(またはその混合物))の存在下における、例えば水または酸性水溶液(例えば塩酸)との反応などの標準加水分解であってもよい。
【0057】
(vii)R1またはR2の一方が任意に置換されるC16アルキル基、クロロまたはフルオロを表して他方がHを表す式Iの化合物の場合は、任意に(工程段階(i)に関して上述したような)添加剤の存在下において、R1またはR2がブロモまたはヨードを表して他方が(必要に応じて)Hを表す対応する式Iの化合物と、適切な有機リチウム塩基(例えばt−BuLi、s−BuLiまたはn−BuLi)とを反応させ、それに続いて上で定義される式IIの化合物と共に、または工程段階(i)に関して上述した塩素またはフッ素原子源と共にクエンチングする。この反応は、低温(例えば−78〜−120℃)で不活性雰囲気下において、工程段階(i)に関して上述した適切な溶剤の存在下で実施してもよい。
【0058】
(viii)R2がHを表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表す式Iの化合物の場合は、例えば縮合反応条件下で、アルコール性溶剤(例えばエタノール)の存在下において高温(例えば還流)で、式VIIA、
【化7】

(式中、
dはHを表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表し、R1は上で定義されるとおりである)の化合物と、ヒドラジン(またはその水和物または誘導体(例えばベンジルヒドラジン))とを反応させる。
【0059】
(ix)式VIIB、
【化8】

(式中、
xはクロロ、ブロモ、ヨード、スルホネート基(例えば−OS(O)2CF3、−OS(O)2CH3、−OS(O)2PhMeまたはノナフレート)、−B(OH)2、−B(ORwx2、−Sn(Rwx3またはジアゾニウム塩などの適切な離脱基を表し、各Rwxは独立して、C16アルキル基を表し、または−B(ORwx2の場合、それぞれのRwx基は共に結合して4〜6員環基(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル基など)を形成してもよく、R1およびR2は上で定義されるとおりである)の化合物と、式VIIC、
【化9】

(式中、
yはLxに関して上述した適切な離脱基を表し、特に例えば4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル基、9−ボラビシクロ[3.3.1]−ノナン(9−BBN)、−Sn(アルキル)3(例えば−SnMe3または−SnBu3)などのクロロ、ブロモ、ヨード、−B(OH)2またはその保護誘導体、または当業者に知られている類似基を表し、A1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物とを反応させる。当業者はLxおよびLyが互いに適合性であるべきで、例えばジオキサン、トルエン、エタノール、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、水、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物などの適切な溶剤中のNa2CO3、K3PO4、Cs2CO3、NaOH、KOH、K2CO3、CsF、Et3N、(i−Pr)2NEt、t−BuONaまたはt−BuOK(またはそれらの混合物)などの適切な塩基と共に、例えばCuI、Pd/C、PdCl2、Pd(OAc)2、Pd(Ph3P)2Cl2、Pd(Ph3P)4、Pd2(dba)3またはNiCl2などの金属(またはその塩または錯体)などの適切な触媒系、およびt−Bu3P、(C6113P、Ph3P、AsPh3、P(o−Tol)3、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,2’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1
,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−bi−ナフ
チル、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)、1,3−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)プロパン、キサントホス、またはその混合物などのリガンドの存在下で、交換されてもよい)ことを理解するであろう。反応はまた、例えば室温以上で(例えば溶剤系の還流温度などの高温で)、またはマイクロ波照射を使用して実施してもよい。
【0060】
3がヒドロキシを表し、
(A)R2がHを表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、例えば式Iの化合物の調製(上の工程(ix))に関して前述した条件下において、式VIII、
【化10】

(式中RdおよびR1は上で定義されるとおりである)の化合物、またはエノールエーテル同等物(例えばメチルエノールエーテルまたはシリル(例えばトリメチルシリル)エノールエーテル)、または(例えばカルボン酸で)O−その保護誘導体と、ヒドラジン(またはその水和物または誘導体(例えばベンジルヒドラジン))との反応によって調製されてもよい。
【0061】
3がヒドロキシを表し、
(B)R1またはR2の一方がハロゲンを表して他方がHまたは任意に置換されるC16アルキルを表し、またはR1およびR2の双方がハロゲンを表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、当業者に知られている反応条下において、適切な溶剤(例えば水)などの存在下で、R1およびR2の双方がHを表し、またはR1またはR2の一方がHを表して他方が任意に置換されるC16アルキルまたはハロゲンを表す対応する式IIIの化合物と、工程段階(i)(b)に関して前述したハロゲン原子源を提供する求電子剤(例えば塩素ガス)との反応によって調製されてもよい。したがってこの様式で、関連4−ハロゲン、5−ハロゲンまたは4,5−ジハロゲン置換ピラゾールが調製されてもよい。
【0062】
3がヒドロキシを表し、
(C)R1またはR2の一方がフルオロを表して他方がHを表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、ニトロ基からフルオロ基(フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウムまたはフッ化テトラブチルアンモニウムなど)への変換のための適切な試薬を用いて、当業者に知られている条件下において、(必要に応じて)4−ニトロピラゾール−3−カルボン酸または5−ニトロピラゾール−3−カルボン酸から調製されてもよい。
【0063】
3がヒドロキシを表し、
(D)R1またはR2の一方がハロゲンを表して他方がHを表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、式IIIの化合物に対応するが、R1またはR2の一方がアミノを表して他方が(必要に応じて)Hを表す化合物の反応と、それに続く(例えばNaNO2およびHClなどを5℃で用いる、当業者に知られている試薬および条件を用いた)アミノ基からジアゾニウム塩への変換、そして次にハロゲン基への変換のための適切な求核剤の添加によって調製されてもよい。適切な求核剤としては、カリウム、ナトリウムまたは銅ハロゲン化物が挙げられる。代案としては、フルオロ基を導入するために、例えばNaBF4、HBF4またはNH4BF4の冷水溶液を投入することによって、フルオロホウ酸塩(例えばテトラフルオロホウ酸塩)源を提供する化合物を用いて適切なジアゾニウム塩を処理してもよく、つまり適切なジアゾニウムフルオロホウ酸塩(例えばジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩)を形成し、次にそれを加熱してもよい。
【0064】
3がヒドロキシを表し、
(E)R1がハロゲン(例えばFまたはCl)を表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、例えばR. Storer et al., Nucleosides & Nucleotides 18, 203 (1999)に記載の手順に従って、R1がHを表す対応する式IIIの化合物から調製されてもよい。ハロゲンまたは任意に置換されるC16アルキル基の導入のために用いてもよい適切な試薬は、式Iの化合物の調製(上の工程段階(i))に関して前述した。
【0065】
3がヒドロキシを表し、
(F)R1およびR2が独立して、ペルフルオロ−C16アルキルまたは好ましくはHまたはハロゲン(例えばクロロ)を表す式IIIの化合物(またはその誘導体)は、代案としては、例えば必要に応じて穏やかなまたは強力な(例えば過マンガン酸カリウム水溶液を用いた加熱還流)酸化条件などの当業者に知られている酸化条件下において、式IX、
【化11】

(式中、
aおよびRbは独立して、ペルフルオロ−C16アルキルまたは好ましくはHまたはハロゲン(例えばクロロ)を表す)の化合物を酸化することによって調製されてもよい。
【0066】
3がヒドロキシを表し、
(G)R2が上で定義されるとおり(例えば水素またはハロゲン)である式IIIの化合物(またはその誘導体)は、式X、
【化12】

(式中、
JおよびR1は上で定義されるとおりである)の化合物またはそのN−保護および/またはO−保護(例えばエステル)誘導体の反応によって調製されてもよい。R2がハロゲンを表す式IIIの化合物の場合は、反応は、任意に適切な溶剤(例えばヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンまたはそれらの混合物)の存在下での、当業者に知られている条件下における、フルオロキシ硫酸セシウム(フッ素化剤試薬の場合)または工程段階(i)(b)に関して前述した適切なハロゲン化試薬との反応であってもよい。R2がHを表す式IIIの化合物の場合は、式Iの化合物の調製(工程段階(vi))に関して前述した試薬および条件下での反応であってもよい。
【0067】
3がヒドロキシを表し、
(H)R1およびR2が上で定義されるとおりである式IIIの化合物(またはその誘導体)は、式IIIの化合物の調製に関して前述した(すなわち上の式IXの化合物の工程段階(F)からの)当業者に知られている酸化条件下において、式XI、
【化13】

(式中、
1およびR2は上で定義されるとおりである)の化合物の酸化によって調製されてもよい。
【0068】
3がヒドロキシを表し、
(I)R2がHを表し、R1が上で定義されるとおり(好ましくはHまたは上で定義されるように任意に置換されるC16アルキルを表す)である式IIIの化合物(またはその誘導体)は、例えば当業者に知られている条件下(適切な溶剤(例えばジエチルエーテル)の存在下および/または低温(例えば0℃〜室温)など)において、式XII、
【化14】

(式中、
1は上で定義されるとおりである(好ましくはHまたは上で定義されるように任意に置換されるC16アルキルを表す))の化合物またはその保護誘導体(例えばC16(例えばエチル)エステルなどのエステル)と、ジアゾメタンまたはその保護誘導体(例えばトリメチルシリルジアゾメタン)との反応によって調製されてもよく、または
(J)対応する式XIII、
【化15】

の化合物(またはその保護誘導体)と、上の工程段階(i)で前述した適切な塩基との反応(例えばリチウム化工程)と、それに続くCO2源である求電子剤(例えばCO2ガス)との反応と、それに続く適切な水素イオン源(例えばHCl)、または式XIV、
1cC(O)ORf XIV
(式中、RfはC16アルキルを表しL1cはハロゲン(例えばヨード、ブロモまたはクロロ)などの適切な離脱基を表す)の化合物の添加によって、つまり例えばクロロギ酸メチルまたはエチルなどを形成して調製されてもよい。したがって当業者は、ピラゾール窒素が保護される必要があるかもしれず、必要ならば引き続いて脱保護されることを理解するであろう。
【0069】
式IVの化合物は、任意に溶剤(アルコール性溶剤(例えばメタノール)または酢酸エチルなど)の存在下における、水素源(例えば水素ガスまたは新生水素(例えばギ酸アンモニウムからの))との、例えば酸性溶液存在下における亜ジオチン酸ナトリウム(Na224)、塩化スズ(II)、鉄または亜鉛の存在下での還元、または水素付加条件下における触媒(例えばパラジウム炭素または白金炭素など)存在下での還元などの、式XV、
【化16】

の化合物、または式XVI、
【化17】

(式中、
1、A2、A3およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物の還元によって調製されてもよい。
【0070】
式Vの化合物(またはその保護誘導体)は、
(a)上で定義されるような式XIIIの化合物と、例えばリチウム化工程のような上の工程段階(i)で前述した適切な塩基との反応と、それに続く式XVII、
【化18】

(式中、
xはヒドロキシ保護基(例えばベンジルなどの標準保護基)を表し、A1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物との反応と、それに続く適切な水素イオン源(例えば水または飽和NH4Cl水溶液とのクエンチング)によって調製されてもよい。この反応は、式Iの化合物の調製(工程段階(i))に関して上述したのと同様の条件下で実施してもよい。したがって当業者は、ピラゾール窒素が保護される必要があるかもしれず、必要ならば引き続いて脱保護されることを理解するであろう。
【0071】
式Vの化合物(またはその保護誘導体)は、
(b)任意に適切な塩基(例えば水素化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、ピロリジノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデカ−7−エン、水酸化ナトリウム、N−エチルジイソプロピルアミン、N−(メチルポリスチレン)−4−(メチルアミノ)ピリジン、ブチルリチウム(例えばn−、s−またはt−ブチルリチウム)またはそれらの混合物)、適切な溶剤(例えばテトラヒドロフラン、ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水またはトリエチルアミン)、および適切なカップリング剤(例えば1,1’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド(またはその塩酸塩)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ−ホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスピロリジノホスホニウムヘキサ−フルオロホスフェート、ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロ−ホスフェート、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロカーボネート、1−シクロヘキシルカルボジイミド−3−プロピルオキシメチルポリスチレン、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロリン酸またはO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸)の存在下で、例えば室温程度以上(例えば40〜180℃まで)などのカップリング条件下において、L3がヒドロキシを表してR1およびR2が上で定義されるような式IIIの化合物、またはそのN−保護および/またはO−保護(例えばエステル)誘導体、または式XVIII、
【化19】

(式中、
1およびR2は上で定義されるとおりである)の化合物のいずれかと、上で定義される式IVの化合物(または例えば−OH保護誘導体などのその保護誘導体)との反応によって調製されてもよい。当業者は、これが式VIの化合物の合成もまたもたらし得ることを理解するであろう。代案としては、式IIIの化合物との反応のために、このような化合物を任意に適切な溶剤(例えばジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、THF、トルエンまたはベンゼン)および適切な触媒(例えばDMF)の存在下で、適切な試薬(例えば塩化オキサリル、塩化チオニルなど)での処理によって最初に活性化し、それぞれの塩化アシルの形成をもたらしてもよい。次に上述のような標準条件下で、この活性化中間体を式IVの化合物と反応させてもよい。当業者は式IVの化合物が反応温度において液体である場合、それらがこの反応中で溶剤および反応物質双方の役割を果たしてもよいことを理解するであろう。この工程を実施する代案の方法としては、式IIIの化合物のO−保護誘導体(例えばエチルエステル)と式IVの化合物との反応が挙げられ、後者の化合物は、例えば不活性雰囲気内で適切な溶剤(例えばジクロロメタン)の存在下において、最初に適切な試薬(例えばトリメチルアルミニウム)で処理されてもよい。
【0072】
または式Vの化合物(またはその保護誘導体)は、
(c)例えば好ましくはPdまたはCuを含有する触媒、および水酸化カリウムまたはナトリウム、炭酸カリウム、カリウムtert−ブトキシド、およびリチウムN,N−ジイソプロピルアミドなどの塩基の存在下において、式XIX、
【化20】

(式中、
1およびR2は上で定義されるとおりである)の化合物または(例えばピラゾール窒素で)N−その保護誘導体と、式XX、
【化21】

(式中、
1はハロゲン(例えばクロロ、ブロモおよびヨード)、−OSO2CF3、−B(OH)2、−Sn(Rz3(Rzは上で定義されるとおりである)、−Pb(OC(O)CH33、−Bi(W)2、−Bi(W)2(OC(O)CH32、−Bi(W)2(OC(O)CF32または−I(W)(BF4)などの適切な離脱基を表し、Wは上で定義されるようなX1から選択される1つ以上の基によってどちらも任意に置換されるアリールまたはヘテロアリール基を表し(例えばWは、上で定義されるような式Vの化合物の−OH置換されたフェニル環を含有するA1〜A4を表す)、およびA1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物、または(例えば必須−OH基において)その保護誘導体(つまり例えば式XXのベンジル保護化合物を形成する)との反応によって調製されてもよい。言及し得る触媒としてはPd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))が挙げられ、言及し得る塩基としてはセシウムカーボネートが挙げられ、言及し得るリガンドとしては2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルが挙げられ、用いてもよい溶剤としてはトルエンが挙げられる。このような反応は、不活性(例えばアルゴン)雰囲気下において高温(例えば約90℃)で実施してもよい。当業者は、上の反応中に、式XXの化合物の(例えば−OH基で)保護される誘導体が、必要であり得ることを理解するであろう。
【0073】
式VIIAの化合物は、例えば標準縮合反応条件下において、例えば式Iの化合物の調製(工程段階(i))に関して上で定義される適切な塩基、適切な溶剤、および反応条件の存在下で、式XXA、
【化22】

(式中、
1、A2、A3、A4、およびR1は、上で定義されるとおりである)の化合物と、式XXB、
d−C(O)−L4 XXB
(式中、L4はハロゲン(例えばブロモまたはクロロ)などの適切な離脱基、またはC16アルコキシ(例えばメトキシ)を表し、Rdは上で定義されるとおりである)の化合物との反応によって調製されてもよい。好ましい塩基としては、金属水素化物(例えば水素化ナトリウム)、またはアミド塩基(例えばリチウムジイソプロピルアミド)が挙げられる。
【0074】
式VIIBの化合物は、例えば式Iの化合物の調製(工程段階(i))に関して上述したのと同様な反応条件下における、例えばその工程段階(例えばリチウム化反応)に記載のものなどの適切な塩基の存在下における、前述した式XIIIの化合物の反応と、それに続く適切な求電子性化合物の存在下における反応によって調製されてもよい。例えばハロゲン源を提供する求電子剤(例えば上の工程段階(i)(b)に記載の試薬)の存在下において、Lxがハロゲンを表す式VIIBの化合物を調製するための、適切な塩化スルホニルと共にヒドロキシ基が存在する対応する化合物との反応によるスルホネート基の導入、適切な塩化スズトリアルキル(など)との反応による−Sn(Rwx)3の導入などである。−B(OH)2および−B(ORwx2の導入のためには、式Iの化合物の調製(工程段階(ix))に関して記載された反応条件下における、対応するハロゲン誘導体および適切なボロン酸(またはその誘導体)からのカップリング反応を実施してもよい。
【0075】
式VIICの化合物は、例えば式VIIBの化合物の調製に関して前述した反応条件下における、下文で定義される式XXXの化合物の反応によって調製されてもよい。代案としては、Lyがクロロまたはブロモを表す式VIICの化合物は、対応する式XXC、
【化23】

(式中、
1〜A4は上で定義されるとおりである)の化合物と、例えばPCl5、POCl3、およびPOBr3(など)のブロモまたはクロロ源を提供する適切な試薬との反応によって調製されてもよい。
【0076】
bがペルフルオロ−C16アルキルまたはハロゲンを表す式IXの化合物は、例えば式Iの化合物の調製(上の工程段階(i))に関して前述した条件と試薬を用いて、RbがHを表す対応する式IXの化合物(または例えば保護基が指向性メタル化基であるようなその保護誘導体)から調製されてもよい。
【0077】
代案としては、式IXの化合物は、当業者に知られている脱アルキル化条件下で、例えば高温(例えば150℃〜220℃)における適切な試薬(例えばピリジン塩酸塩)との反応によって、式XXI、
【化24】

(式中、
Tは任意に置換されるC16アルキル(例えばメチル)を表し、RaおよびRbは上で定義されるとおりである)の化合物のN−脱アルキル化によって調製されてもよい。このような反応は適切な溶剤の存在下で実施してもよいが、好ましくはさらなる溶剤は存在しない。
【0078】
なおも別の代案としては、式IXの化合物(好ましくはRbがHまたはハロゲンを表すもの)は、例えば式I(工程経路(vi))または式III(工程(G))の化合物の調製に関して上述した当業者に知られている試薬および手順を使用して、式XXII、
【化25】

(式中、
JおよびRaは上で定義されるとおりである)の化合物、またはそのN−保護誘導体から調製されてもよい。
【0079】
1が上で定義されるとおりであり、好ましくはHまたはCF3を表す式Xの化合物(またはそのN−保護および/またはO−保護(例えばエステル)誘導体)は、例えば高温(例えば80〜120℃)で1〜3日間にわたり、任意に不活性ガスの存在下で、好ましくは溶剤の存在なしに、式XXIII、
【化26】

(式中、
eは上で定義されるとおりであるR1を表し、好ましくは、HまたはCF3であり、Jは上で定義されるとおりである)の化合物と、式XXIV、
2−C(H)−C(O)OH XXIV
の化合物またはそのO−保護(例えばエステル)誘導体との反応によって調製されてもよい。
【0080】
1およびJが上で定義されるとおりである式Xの化合物(またはそのN−保護および/またはO−保護(例えばエステル)誘導体)はまた、例えば式IIIの化合物の調製(工程段階(F))に関して上述した当業者に知られている酸化条件下において、上で定義されるような式XXIIの化合物を酸化することで調製されてもよい。
【0081】
代案としては、R1およびJが上で定義されるとおりである式XおよびXXIIの化合物(または妥当ならば、aN−保護されるおよび/またはO−保護される(例えばエステル)その誘導体)は、式XXV、
【化27】

(式中、
1xはR1(式Xの化合物の調製の場合)またはRa(式XXIIの化合物の調製の場合)を表し、J、R1およびRaは上で定義されるとおりである)の化合物と、上の工程(i)で列挙された適切な塩基(または塩基混合物)との反応と、それに続く次のような適切な求電子剤とのクエンチングによって調製されてもよい。
(a)式Xの化合物では、CO2源(例えばCO2ガス;適切な水素イオン源(例えばHCl)の添加がその添加に続く)、または上で定義されるとおりである式XIVの化合物、または
(b)式XXIIの化合物では、式XXVI、
CH31d XXVI
(式中、
1dはハロゲン(例えばヨードまたはブロモ)またはスルホネート基(−OSO2CF3、OSO2CH3、および−OSO2−アリール(例えば−O−トシル)などの適切な離脱基を表す)の化合物(すなわち別の適切なメチル化試薬))など。
【0082】
式XIの化合物は、例えば当業者に知られている条件下で(適切な塩基(例えば炭酸カリウム)および適切な溶剤(例えばTHF)などの存在下で)ヨウ化1−アミノピリジニウムと、式XXVII、
(R1)(Cl)C=C(Cl)(R2) XXVII
(式中、
1およびR2は上で定義されるとおりであり、二重結合の配置はcisまたはtransであってもよい)の化合物との反応によって調製されてもよい。当業者は、二重結合周囲の配置が、反応の一選択性に影響し得ることを理解するであろう。
【0083】
−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=または−C(R6)=の少なくとも1つが存在してR3、R4、R5、およびR6の少なくとも1つがX1を表してX1が−S(O)2N(R4h)R5hを表す式XVの化合物は、(例えば適切な塩基(例えばトリエチルアミン)および適切な溶剤(例えばジクロロメタン)の存在下など、例えば式Vの化合物の調製(工程段階(b))に関して上述したような)例えば当業者に知られている条件下において、式XXVIII、
【化28】

(式中、
1x、A2x、A3x、およびA4xはそれぞれ上で定義されるようなA1、A2、A3、およびA4を表すが、−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=または−C(R6)=の少なくとも1つが存在して、R3、R4、R5、およびR6の少なくとも1つが−S(O)2Clを表す)の化合物または(例えば必須−OH基において)その保護誘導体(つまり例えばベンジル保護−OH基を形成する)と、式XXIX,
2N(R4h)R5h XXIX
(式中、R4hおよびR5hは上で定義されるとおりである)の化合物との反応によって調製されてもよい。当業者は、上の反応の工程のどちらでも、式XXVIIIの化合物の(例えば−OH基で)保護される誘導体が、必要であり得ることを理解するであろう。
【0084】
式XVIIIの化合物は、例えば塩化チオニルまたは塩化オキサリルの存在下で、(任意に工程段階(iii)に関して定義される適切な溶剤および触媒の存在下で)、二量体化条件下において、(例えばL3が−OHを表す)式IIIの化合物から調製されてもよい。その他の二量体化試薬としては、任意に適切な塩基(例えば4−ジメチルアミノピリジン)の存在下における、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDCI、またはその塩酸塩)などのカルボジイミドが挙げられる。
【0085】
式XXAの化合物は、適切な塩基および溶剤の存在下で、当業者に知られている反応条件下において、式XXX、
【化29】

(式中、
1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物と、式XXXI、
1−CH2−C(O)L4 XXXI
(式中、R1およびL4は上で定義されるとおりである)の化合物との反応によって調製されてもよい。例えばこのような条件は、式Iの化合物の調製(上の工程段階(i))に関して前述したものと同様であってもよく、例えば塩基は、金属水素化物(例えば水素化ナトリウム)、アミド塩基(例えばリチウムジイソプロピルアミド)または有機金属塩基(例えばn−、s−またはt−BuLiなどの有機リチウムなど)であってもよく、または代案としてはL4がハロゲン基(例えばクロロ)を表す場合、反応は例えば適切なルイス酸(例えばFeCl3、AlCl3、BF3、など)の存在下において、標準フリーデル・クラフツ・アシル化反応条件下で実施してもよい。
【0086】
式XXVの化合物は、当業者に知られている条件下において、例えばT. Hanamoto et al., Chem. Commun., 2041 (2005)に記載の手順に従って、例えば適切な溶剤(例えばヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンまたはそれらの混合物)の存在下で、任意に不活性ガスの存在下において、式XXXII、
【化30】

(式中、
1およびJは、上で定義される通りである)の化合物と、ジアゾメタンとの反応によって調製されてもよい。
【0087】
式II、VI、VII、VIII、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XIX、XX、XXB、XXC、XXI、XXIII、XXIV、XXVI、XXVII、XXVIII、XXIX、XXX、XXXI、およびXXXIIの化合物は、市販され、文献から既知であり、または本明細書に記載される方法の類推により、または標準技術に従った従来の合成手順によって適切な試薬と反応条件を使用することにより、入手可能な出発原料から得てもよい。この点において当業者は、特に“Comprehensive Organic Synthesis" by B. M. Trost and I. Fleming, Pergamon Press, 1991を参照してもよい。採用し得るさらなる参考文献としては、"Heterocyclic Chemistry" by J. A. Joule, K. Mills and G. F. Smith, 3rd edition, published by Chapman & Hall 、"Comprehensive Heterocyclic Chemistry II" by A. R. Katritzky, C. W. Rees and E. F. V. Scriven, Pergamon Press, 1996 、および "Science of Synthesis", Volumes 9-17 (Hetarenes and Related Ring Systems), Georg Thieme Verlag, 2006が挙げられる。
【0088】
上で定義される置換基R1、R2、A1、A2、A3、およびA4は、当業者によく知られている方法によって、式Iの化合物の調製のための上述の工程後またはその最中に1回以上修飾されてもよい。このような方法の例としては、置換、還元、酸化、アルキル化、アシル化、加水分解、エステル化、エーテル化、ハロゲン化、およびニトロ化が挙げられる。前駆型の基は、反応順序のあらゆる時点において、異なるこのような基に、または式Iで定義される基に変化できる。R1またはR2がClまたはF基を表す場合、このような基は、式Iの化合物の調製のための上述の工程後またはその最中に1回以上、相互転換(または別のハロゲン基から変換)されてもよい。適切な試薬としては、(クロロ基への変換のための)NiCl2が挙げられる。当業者はまた、“Comprehensive Organic Functional Group Transformations" by A. R. Katritzky, O. Meth-Cohn and C. W. Rees, Pergamon Press, 1995および/または"Comprehensive Organic Transformations" by R. C. Larock, Wiley-VCH, 1999も参照できる。
【0089】
言及し得るその他の変換としては、(例えば必要に応じてシアノアニオン源である化合物(例えばナトリウム、カリウム、銅(I)または亜鉛シアン化物)との、または1−アルキンとの反応による)、ハロゲン基(好ましくはヨードまたはブロモ)のシアノまたは1−アルキニル基への変換が挙げられる。後者の反応は、適切なカップリング触媒(例えばパラジウムおよび/または銅ベースの触媒)および適切な塩基(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミンまたはエチルジイソプロピルアミンなどのトリ−(C16アルキル)アミン)の存在下で実施してもよい。さらにアミノ基およびヒドロキシ基は、標準条件に従って当業者に知られている試薬を使用して導入されてもよい。
【0090】
本発明の化合物は、従来の技術を使用して反応混合物から単離されてもよい。
【0091】
当業者は、上述および後述の方法において、中間体化合物の官能基が、保護基によって保護される必要があるかもしないことを理解するであろう。例えばピラゾール窒素は、保護される必要があるかもしない。適切な窒素保護基としては、
(i)カルバメート基(すなわちアルコキシ−またはアリールオキシ−カルボニル基)、
(ii)アミド基(例えばアセチル基)、
(iii)N−アルキル基(例えばベンジルまたはSEM基)、
(iv)N−スルホニル基(例えばN−アリールスルホニル基)、
(v)N−ホスフィニルおよびN−ホスホリル基(例えばジアリールホスフィニルおよびジアリールホスホリル基)、または
(vi)N−シリル基(例えばN−トリメチルシリル基)
を形成するものが挙げられる。
【0092】
さらに当業者は、2つの官能基が保護される場合(例えば式IIIの化合物のカルボン酸基がエステルであり、ピラゾール窒素がベンゼンスルホニル基で保護される場合、どちらの基も一工程(例えば当業者に知られている加水分解工程)で脱保護されてもよいことを理解するであろう。
【0093】
ピラゾール窒素のためのさらなる保護基としてはメチル基が挙げられ、このメチル基は、例えば200℃の密封容器内でのマイクロ波照射の使用など、高温でピリジン塩酸塩を用いるような標準条件下で脱保護されてもよい。
【0094】
官能基の保護および脱保護は、上述のスキーム中の反応の前または後に行ってもよい。
【0095】
保護基は、当業者によく知られている、本明細書で後述される技術に従って除去されてもよい。例えば標準脱保護技術を使用して、本明細書に記載の保護される化合物/中間体を非保護化合物に化学的に変換してもよい。
【0096】
関与する化学反応のタイプが、保護基の必要性およびタイプ、ならびに合成を達成するための順序を決定づける。
【0097】
保護基の使用については、“Protective Groups in Organic Synthesis", 3rd edition, T.W. Greene & P.G.M. Wutz, Wiley-Interscience (1999)で詳述される。
【0098】
医学用途および製薬用途
本発明の化合物は薬理学的活性を有するので、有用である。したがってこのような化合物は、医薬品として望ましい。本発明のさらなる態様に従って、医薬品として使用するためのおよび/または単離された(すなわち生体外)形態の、上で定義される式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩が提供される。
【0099】
本発明の化合物はそれ自体が薬理学的活性を有し得るが、このような活性を有し得ない、本発明の化合物の特定の薬学的に許容可能な(例えば「保護される」)誘導体が存在してもまたは調製されてもよく、非経口的または経口的に投与されて、その後体内で代謝されて本発明の化合物が形成されてもよい。したがって(それらが代謝される「活性」化合物よりも薬理学的活性がかなり低いという条件で、いくらかの活性を有してもよい)このような化合物は、本発明の化合物の「プロドラッグ」として記載されてもよい。本発明の化合物の全てのプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
「本発明の化合物のプロドラッグ」には、経口または非経口投与に続いて、所定時間(例えば約1時間)内に、実験的に検出可能な量で本発明の化合物を形成する化合物が含まれる。
【0101】
特に本発明の化合物は、リポキシゲナーゼ(特に15−リポキシゲナーゼ)の活性を阻害するかもしれず、すなわち例えば後述の試験で実証されるように、それらは15−リポキシゲナーゼ、または15−リポキシゲナーゼ酵素がその一部を形成する複合体の作用を妨げ、および/または15−リポキシゲナーゼ調節効果を引き起こし得るので、有用である。したがって本発明の化合物は、リポキシゲナーゼ、特に15−リポキシゲナーゼの阻害が必要とされる病状の治療において有用であり得る。
【0102】
したがって本発明の化合物は、炎症の治療において有用であることが予期される。
【0103】
「炎症」という用語は、当業者によって、上述した身体外傷、感染症、慢性疾患、および/または外的刺激に対する(例えばアレルギー性反応の一環としての)化学的および/または生理学的反応によって引き起こされてもよい、限局性または全身性の防御反応によって特徴付けられる、あらゆる病状を含むものと理解されるであろう。有害な物質および障害組織の双方を破壊、希釈または隔離する役割を果たしてもよいこのようなあらゆる反応は、例えば発熱、腫脹、疼痛、発赤、血管拡張および/または血流量増大、白血球細胞による患部浸潤、機能喪失および/または炎症状態に付随する既知のあらゆるその他の症状によって発現されてもよい。
【0104】
したがって「炎症」という用語は、とりわけ急性、慢性、潰瘍性、特異的、アレルギー性、および壊死性炎症、および当業者に知られているその他の炎症形態をはじめとする、あらゆる炎症性疾患、障害または病状それ自体、それに付随する炎症性要素を有するあらゆる病状、および/または症状としての炎症によって特徴付けられるあらゆる病状を含むものと理解される。したがって本用語は、本発明の目的では炎症性疼痛および/または発熱もまた含む。
【0105】
病状がそれに付随する炎症性要素を有する場合、または病状が症状としての炎症によって特徴付けられる場合、当業者は、本発明の化合物が、炎症症状および/または病状に付随する炎症の治療において有用であり得ることを理解するであろう。
【0106】
したがって本発明の化合物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、アレルギー性疾患、鼻炎、炎症性腸疾患、潰瘍、炎症性疼痛、発熱、アテローム動脈硬化、冠動脈疾患、脈管炎、膵臓炎、関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、ブドウ膜炎、創傷治癒、皮膚炎、湿疹、乾癬、脳卒中、糖尿病、自己免疫疾患、アルツハイマー病、多発性硬化症、サルコイドーシス、ホジキン病、およびその他の悪性腫瘍、およびあらゆるその他の炎症性要素がある疾患の治療において有用であり得る。
【0107】
本発明の化合物はまた、対象における骨量減少低下など、炎症性機序とは無関係の効果も有し得る。この点において言及し得る病状としては、骨粗鬆症、骨関節炎、パジェット病および/または歯周病が挙げられる。したがって式Iの化合物および薬学的に許容できるそれらの塩類はまた、対象において骨塩量を増大させ、ならびに骨折の発生率低下および/または治癒に有用であり得る。
【0108】
本発明の化合物は、上述の病状の治療的および/または予防的双方の処置に望ましい。
【0109】
本発明のさらなる態様に従って、リポキシゲナーゼ(15−リポキシゲナーゼなど)と関連付けられているおよび/またはその阻害によって調節できる、疾患を治療する方法、および/またはリポキシゲナーゼ、特に15−リポキシゲナーゼ活性の阻害が所望されおよび/または必要とされる疾患(例えば炎症)を治療する方法が提供され、本方法は、上で定義される条件なしの治療的有効量の式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩を、このような病状に罹患した、または罹患しやすい患者に投与する工程を含んでなる。
【0110】
「患者」は、(ヒトをはじめとする)哺乳類の患者を含む。
【0111】
「有効量」という用語は、処置された患者に治療効果を与える化合物の量を指す。効果は、客観的(すなわ何らかの試験または標識によって測定可能)または主観的(すなわち対象が効果の徴候を与え、またはそれを感じる)であってもよい。
【0112】
本発明の化合物は、常態では、経口、静脈内、皮下、バッカル、直腸、経皮、鼻孔、気管、気管支、舌下、あらゆるその他の非経口経路または吸入によって、薬学的に許容できる剤形で投与される。
【0113】
本発明の化合物は単独で投与してもよいが、好ましくは経口投与のための錠剤、カプセルまたはエリキシル剤、直腸投与のための坐薬、非経口または筋肉内投与のための無菌溶液または懸濁液などをはじめとする、既知の医薬製剤によって投与される。
【0114】
このような製剤は、標準および/または公認製薬慣習に従って調製されてもよい。
【0115】
したがって本発明のさらなる態様に従って、薬学的に許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中で、上で定義される式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬製剤が提供される。
【0116】
例えば本発明の化合物(すなわち活性成分)の効力および物理的特性次第で、言及し得る医薬製剤としては、活性成分が重量で少なくとも1%(または少なくとも10%、少なくとも30%または少なくとも50%)存在するものが挙げられる。すなわち医薬組成物の活性成分とその他の構成要素(すなわちアジュバント、希釈剤およびキャリアの添加)との比率は、重量で少なくとも1:99(または少なくとも10:90、少なくとも30:70または少なくとも50:50)である。
【0117】
本発明は、上で定義される医薬製剤調製する方法をさらに提供し、本方法は、上で定義される式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとを結びつける工程を含んでなる。
【0118】
本発明の化合物はまた、本明細書で定義される炎症の治療において有用なその他の治療薬(例えばグルココルチコイド、または好ましくは、NSAID、コキシブ、コルチコステロイド、鎮痛剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、FLAP(5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質)阻害剤、およびロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRa)、および/または炎症の治療において有用なその他の治療薬)と併用してもよい。
【0119】
本発明のさらなる態様に従って、
(A)上で定義される(しかし例えば条件なしの)式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩、および
(B)炎症の治療において有用な別の治療薬
を含んでなる併用製品が提供され、構成要素(A)および(B)のそれぞれは、薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中で調合される。
【0120】
このような併用製品は、その他の治療薬と併せた本発明の化合物の投与を提供し、したがってそれらの剤型の少なくとも1つが本発明化合物を含んでなり、および少なくとも1つがその他の治療薬を含んでなる別個の剤型として提供されてもよく、または併用製剤として提供(すなわち調合)されてもよい(すなわち本発明の化合物およびその他の治療薬を含む単一剤型として提供される)。
【0121】
したがって
(1)上で定義される(しかし例えば条件なしの)式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩、炎症の治療において有用な別の治療薬、および薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアを含む医薬製剤、および
(2)(a)薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中に、上で定義される(しかし例えば条件なしの)式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬製剤、および
(b)薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中に、炎症の治療において有用な別の治療薬を含む医薬製剤
を含んでなるパーツのキットがさらに提供され、構成要素(a)および(b)は、それぞれ他方との併用投与に適した形態で提供される。
【0122】
本発明は、上で定義される併用製品を調製する方法をさらに提供し、方法は上で定義される(しかし例えば条件なしの)式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩と、炎症の治療において有なその他の治療薬および少なくとも1つの薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとを結びつける工程を含んでなる。
【0123】
「結びつける」とは、2つの構成要素を互いに併用投与に適するようにすることを意味する。
【0124】
したがって上で定義されるパーツのキットを調製する方法との関連で、2つの構成要素を互いに「結びつける」ことにより、パーツのキットの2つの構成要素は、(i)引き続いて併用療法における互いに併せた使用のために一緒にされる別個の剤型として(すなわち互いに独立して)提供されてもよく、または
(ii)併用療法における互いに併せた使用のための「併用パック」の別個の構成要素として、一緒に包装されて提供されてもよい。
【0125】
本発明の化合物は、様々な用量で投与してもよい。経口、肺、および局所投薬量は、1日あたり約0.01mg/kg体重(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは約0.01〜約10mg/kg/日、より好ましくは約0.1〜約5.0mg/kg/日に及んでもよい。例えば経口投与では、組成物は典型的約0.01mg〜約500mg、好ましくは約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。静脈内投与では、好ましい用量は定速輸液中に約0.001〜約10mg/kg/時間に及ぶ。有利には、化合物は1日量を単回投与してもよく、または総1日量を毎日2、3または4回の分割量で投与してもよい。
【0126】
いずれにしても医師または当業者は、投与経路、治療する病状のタイプおよび重篤性、ならびに種、年齢、体重、性別、腎機能、肝機能、および治療する特定患者の反応と共に変動する可能性がある、個々の患者に最も良く適した実際の投薬量を判定できるであろう。上述の投薬量は平均的な例の具体例であり、もちろんより高いまたはより低い投薬量範囲が当然である個々の事例もあり得るし、これらは本発明の範囲内である。
【0127】
本発明の化合物は、リポキシゲナーゼ、特に15−リポキシゲナーゼの効果的および/または選択的阻害剤であるという利点を有し得る。
【0128】
本発明の化合物はまた、既述の適応症でまたはそれ以外で使用するのかどうかに関わらず、先行技術で知られている化合物よりもさらに有効で、毒性がより低く、作用時間がより長く、効力がより高く、より少ない副作用を生じて、より容易に吸収され、および/またはより良い薬物動態学的プロフィール(例えばより高い経口生物学的利用能および/またはより低いクリアランス)を有し、および/またはその他の有用な薬理学的、物理学的、または化学的特性を有するという利点を有してもよい。
【0129】
生物学的試験
用いたアッセイは、リポキシゲナーゼが、1,4−cis−ペンタジエン立体配置を含有する多価不飽和脂肪酸をそれらの対応するヒドロペルオキシまたはヒドロキシル誘導体に酸化する能力を活用する。この特定のアッセイでは、リポキシゲナーゼは精製ヒト15−リポキシゲナーゼであり、脂肪酸はアラキドン酸であった。アッセイは室温(20〜22℃)で実施され、96ウェル・マイクロタイター・プレートの各ウェルに、次が添加される。
a)35μLリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.4)。
b)阻害剤(すなわち化合物)またはビヒクル(0.5μlのDMSO)。
c)PBS中の10μLの15−リポキシゲナーゼの10倍濃縮溶液。プレートを室温で5分間インキュベートする。
d)PBS中の5μlの0.125mM アラキドン酸。次にプレートを室温で10分間インキュベートする。
e)100μlメタノールの添加によって酵素反応を終結する。
f)15−ヒドロペルオキシ−エイコサテトラエン酸または15−ヒドロキシ−エイコサテトラエン酸の量を逆相HPLCで測定する。
【0130】
次の実施例の手段によって本発明を例示し、そこでは次の略語が用いられ得る。
aq. 水性
BuLi n−ブチルリチウム
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
MS 質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴
PCA ピラゾール−3−カルボン酸
sat. 飽和
THF テトラヒドロフラン
【0131】
実施例において化合物の合成で指定される化学薬品は、例えばSigma-Aldrich Fine Chemicalsから市販される。
【0132】
特に断りのない限り、後述される実施例の化合物の1つ以上の互変異性型は原位置で調製されてもよく、および/または単離されてもよい。後述される実施例の化合物の全ての互変異性型は、開示されているものとする。
【0133】
中間体の合成:
5−クロロピラゾール−3−カルボン酸(I)
表題化合物は、2つの代案の方法から調製されてもよい。
【0134】
方法A
(a)5−クロロ−3−メチルピラゾール
2時間にわたりマイクロ波照射を使用して、密封5mL処理バイアル内の5−クロロ−1,3−ジメチルピラゾール(2.6mmol)およびピリジン塩酸塩(13.1mmol)の混合物を200℃で加熱した。室温への冷却後、EtOAc(15mL)を添加して、混合物をHCl(水性、2M;10mL)、NaCl(飽和、水性)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濃縮して副題化合物を白色固体として得た(収率:210mg(67%))。
MS (M++H) m/z = 117。
1H−NMR (DMSO−d6, 400 MHz), δ 12.66 (br s, 1H), 6.03 (m, 1H), 2.19 (s, 3H)。
【0135】
(b)5−クロロピラゾール−3−カルボン酸
5−クロロ−3−メチルピラゾール(3.6mmol;上の工程(a)参照)、水(6mL)、およびtert−ブタノール(1.2mL)の混合物を75℃に加熱し、その後KMnO4(1.42g、9mmol)を添加した。混合物を75℃で一晩撹拌して、熱いまま濾過した。固形物を沸騰水で洗浄した。合わせた冷却濾液をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物をNaCl(飽和、水性)で洗浄し、乾燥させて(MgSO4)濃縮した。粗製固形物をEtOAc/ヘキサン/ペンタンから再結晶化して、副題加工物を白色結晶として得た(収率:350mg(67%))。
1H−NMR (DMSO−d6, 400 MHz), δ 13.65 (br s, 1H), 6.80 (s, 1H)。
【0136】
方法B
(a)1−ベンゼンスルホニル−3−メチルピラゾール
アセトニトリル中の3−メチルピラゾール(5g、60.9mmol)、ベンゼン塩化スルホニル(8.55mL、67mmol)、およびトリエチルアミン(9.3mL、67mmol)の混合物を加熱して2時間還流し、放冷して濃縮した。EtOAc(300mL)を添加して溶液を濾過し、濃縮して固体残留物を得て、それをEtOAcから結晶化して表題化合物を灰色がかった粉末として得た(収率:7.92g、58%)。
1H−NMR (DMSO−d6): ( 8.35 (d, 1H), 7.97−7.94 (m, 2H), 7.78 (tt, 1H), 7.66 (t, 2H), 6.43 (d, 1H), 2.17 (s, 3H)。
【0137】
(b)5−クロロ−1−(2−クロロベンゼンスルホニル)−3−メチルピラゾール
アルゴン下において、−78℃でTHF(50mL)中の1−ベンゼンスルホニル−3−メチルピラゾール溶液(940mg、4.5mmol;上の工程(a)参照)にBuLi(1.6M、5.9mL、9.45mmol)を添加した。ヘキサクロロエタン(3.7g、15.8mmol)を添加する前に、混合物をおよそ30分間撹拌した。−78℃で18時間の撹拌後、NH4Cl(飽和、水性;50mL)を添加して、混合物を室温に放冷した。水(50mL)を添加したところ層が分離し、水相をEtOAc(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。クロマトグラフィー(1:4EtOAc/ヘプタン)による精製と、それに続くEtOAc/ヘプタンからの再結晶化によって表題化合物を白色結晶として得た(収率:1.1g、84%)。
1H−NMR (DMSO−d6): δ 8.17 (dd, 1H), 7.87−7.67 (m, 4H), 2.15 (s, 3H)。
【0138】
(c)5−クロロ−3−メチルピラゾール
EtOH(50mL)に溶解させた5−クロロ−1−(2−クロロベンゼンスルホニル)−3−メチルピラゾール(6.9g、27mmol;上の工程(b)参照)溶液に、ナトリウムエトキシド(2.5M、16.1mL、40.3mmol)を添加した。溶液を室温で30分間撹拌し、水(100mL)を添加してHCl(水性、2M)を使用して混合物を中和し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相の濃縮は、完全な溶剤除去に先だって沈殿をもたらした。沈殿物を濃し取って濾液を濃縮し、静置すると結晶化する褐色油として表題化合物を得て(収率:1.0g、33%)、それをさらなる精製なしに使用した。
1H−NMR (DMSO−d6): δ 12.66 (br s, 1H), 6.03 (d, 1H), 2.20 (s, 3H)。
【0139】
(d)5−クロロピラゾール−3−カルボン酸
水(50mL)およびtert−ブタノール(1mL)中の5−クロロ−3−メチルピラゾール(1.0g、8.8mmol;上の工程(c)参照)溶液に、水(120mL)中のKMnO4(3.5g、22mmol)溶液を70℃で5時間かけて小分けして添加した。混合物を70℃で一晩撹拌し、Celite(登録商標)を通して濾過した。無職の濾液を濃縮してHCl(水性、2M)で酸性化した。濾過によって表題化合物を白色粉末として得て、それをそれをさらなる精製なしに使用した(収率:913mg、80%)。
1H−NMR (DMSO−d6): δ 6.80 (s, 1H), 4.40 (br s, 1H)。
【0140】
4,5−ジクロロピラゾール−3−カルボン酸(II)
水(2.0L)中の5−クロロピラゾール−3−カルボン酸(中間体I、3.00g、20.5mmol)の撹拌される溶液に、室温で3時間にわたり塩素ガスを泡立てて緩慢に通気した。溶液を開放フラスコ内で18時間撹拌し、次に真空内で濃縮した。スラリーを酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた抽出物をNaCl(飽和、水性;100mL)で洗浄して乾燥させた(Na2SO4)。溶剤を真空内で除去して、生成物を白色粉末として得た。収率3.20g(86%)。
MS (M-−H) m/z = 179。
1H NMR (DMSO−d6, 400 MHz) ( 14.44 (s, 1H), 14.09 (s, 1H)。
13C NMR (CD3OD, 100 MHz) δ 160.0; 139.6; 133.1; 112.4。
【0141】
5−ジフルオロメチル−4−クロロピラゾール−3−カルボン酸(III)
(a)5−ジフルオロメチルピラゾール−3−カルボン酸
5−ジフルオロメチル−3−メチルピラゾール(500mg、3.78mmol)、t−BuOH(10mL)、および水(100mL)の混合物に、KMnO4(2.74g、9.45mmol)を小分けして添加した。混合物を75℃で18時間撹拌した。室温への冷却後、混合物を濾過して濃縮した。HCl(飽和、水性;2.0mL)を添加して、混合物をEtOAc(5×20mL)で抽出した。合わせた抽出物をNaCl(飽和、水性;25mL)で洗浄して乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。クロマトグラフィー(逆相、RP−18カラムおよび溶出剤としてCH3CN/水(1:2))を使用して残留物を精製した。(収率:250mg、41%)。
MS (M-−H) m/z = 161。
1H NMR (DMSO−d6, 400 MHz) ( 14.27 (s, 1H), 13.60 (br. s, 1H), 7.03 (t, 1H), 6.97 (s, 1H)。
【0142】
(b)5−ジフルオロメチル−4−クロロピラゾール−3−カルボン酸
水(100mL)中の5−ジフルオロメチルピラゾール−3−カルボン酸(100mg、0.62mmol)の撹拌される溶液に、室温で3時間にわたり塩素を泡立てて緩慢に通気した。混合物を開放フラスコ内で18時間にわたり撹拌し、次に濃縮した。混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出し、合わせた抽出物をNaCl(飽和、水性;25mL)で洗浄し乾燥させて(Na2SO4)、濃縮して生成物を白色粉末として得た(収率106mg、87%)。
MS (M-−H) m/z = 195, 197。
【実施例】
【0143】
実施例1〜34
一般手順
ピラゾール−3−カルボン酸(PCA)、5−クロロピラゾール−3−カルボン酸(中間体I)、4,5−ジクロロピラゾール−3−カルボン酸(中間体II)または5−ジフルオロメチル−4−クロロピラゾール−3−カルボン酸(中間体III)(1.0mmol)、関連アミノフェノール(1.1mmol)、およびポリリン酸(1.0g)の混合物を160℃で18時間加熱した。100℃に冷却後、水(25mL)および飽和水性NaHCO3(10mL)を緩慢に添加した。室温に冷却後、混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相を鹹水(20mL)で洗浄し、真空内で濃縮した。残留物をEtOAc:ヘプタンから結晶化して所望の生成物を得た。
【0144】
【表1】

【表1−2】

【表1−3】

【0145】
【表2】

【表2−2】

1++H
【0146】
実施例35
上述の生物学的試験において実施例の表題化合物を試験したところ、10μM以下のIC50を示すことが分かった。例えば実施例の次の代表的な化合物は、次のIC50値を示した。
実施例1:224nM
実施例4:443nM
実施例11:33nM
実施例15:41nM
実施例17:49nM
実施例18:35nM
実施例32:127nM
実施例33:85nM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、
【化1】

(式中、
1およびR2は独立して、H、ハロゲン、C16アルキルまたは−O−C16アルキルを表し、後者の2つの基は1つ以上のハロゲン原子で任意に置換され、
1、A2、A3、およびA4はそれぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、またはこれらのそれぞれは代案として独立して、−N=を表してもよく、
3、R4、R5、およびR6は独立して、水素またはX1を表し、
1はハロゲン、−R3a、−CN、−C(O)R3b、−C(O)OR3c、−C(O)N(R4a)R5a、−N(R4b)R5b、−N(R3d)C(O)R4c、−N(R3e)C(O)N(R4d)R5d、−N(R3f)C(O)OR4e、−N3、−NO2、−N(R3g)S(O)2N(R4f)R5f、−OR3h、−OC(O)N(R4g)R5g、−OS(O)23i、−S(O)m3j、−N(R3k)S(O)23m、−OC(O)R3n、−OC(O)OR3p、−S(O)2N(R4h)R5h、−S(O)2OH、−P(O)(OR4i)(OR5i)または−C(O)N(R3q)S(O)23rを表し、
mは0、1または2を表し、
3aはハロゲン、−N(R6a)R6b、−N3、=O、および−OR6cから選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
3b〜R3h、R3k、R3n、R3q、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hは独立して、Hを表し、または1つ以上のハロゲン原子または−OR6dによって任意に置換されるC16アルキルを表し、または
4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR5g、ならびにR4hおよびR5hのペアのいずれかは、共に結合して3〜6員環を形成してもよく、その環はこれらの置換基が必然的に付着する窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子を任意に含有し、その環はF、=Oから、および1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC16アルキルから選択される1つ以上の置換基によって任意に置換され、
3i、R3j、R3m、R3p、およびR3rは独立して、B1から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
4iおよびR5iは独立して、Hを表し、またはB2から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、
6a、R6b、R6c、およびR6dは独立して、Hを表し、またはB3から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されるC16アルキルを表し、または
6aおよびR6bは共に結合して3〜6員環を形成してもよく、その環はこれらの置換基が必然的に付着する窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子を任意に含有し、その環は任意に=Oによって置換され、および/または1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換されるC16アルキルよって置換され、
1、B2、およびB3は独立して、F、Cl、−OCH3、−OCH2CH3、−OCHF2、−OCH2CF3、−OCF3または−OCF2CF3を表すが、
ただしR1およびR2がどちらもHを表す場合、A1、A2、A3、およびA4はそれぞれ−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=、および−C(R6)=を表し、R3およびR5がHを表す場合、R4およびR6のどちらもt−ブチルを表さない)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
1が−C(O)N(R4a)R5a、−N(R4b)R5b、−N(H)C(O)R4c、−S(O)2CH3、−S(O)2CF3、−S(O)2N(R4h)R5h、−CN、−NO2、ハロゲン、−R3aまたは−OR3hを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1がハロゲン、R3aまたは−OR3hを表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
3b、R3c、R3h、R4a〜R4h、R5a、R5b、R5d、およびR5f〜R5hが独立して、水素またはC14アルキルを表し、または関連ペア(すなわちR4aおよびR5a、R4bおよびR5b、R4dおよびR5d、R4fおよびR5f、R4gおよびR4g、ならびにR4hおよびR5h)が共に結合してピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニル環を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
3d〜R3gが独立して、C12アルキルまたは水素を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
3iおよびR3jが独立して、1つ以上のF原子によって任意に置換されるC14アルキルを表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
3hが(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C13アルキルまたはHを表す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
3aが1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC13アルキルを表す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
1およびR2が独立して、(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C13アルキル、Hまたはハロゲンを表す、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
1およびR2が独立して、(1つ以上のフルオロ原子によって任意に置換される)メチル、HまたはClを表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
1〜A4のいずれか1つが−N=を表し、またはA1〜A4はいずれも−N=を表さず、その他が、必要に応じて/妥当ならば−C(R3)=、−C(R4)=、−C(R5)=または−C(R6)=を表す、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
3、R4、R5、およびR6が独立して、トリフルオロメチル、H、メチル、フルオロ、クロロまたはヒドロキシを表す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
医薬品として使用するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項14】
薬学的に許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中に、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む、医薬製剤。
【請求項15】
リポキシゲナーゼ活性の阻害が所望されおよび/または必要とされる疾患の治療で使用するための、条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項16】
リポキシゲナーゼ活性の阻害が所望されおよび/または必要とされる疾患の治療のための薬剤を製造するための、条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項17】
リポキシゲナーゼが15−リポキシゲナーゼである請求項15に記載の化合物、または請求項16に記載の使用。
【請求項18】
疾患が炎症でありおよび/または炎症性要素を有する、請求項15〜17のいずれか一項に記載の(必要に応じた)化合物または使用。
【請求項19】
炎症性疾患が喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、アレルギー性疾患、鼻炎、炎症性腸疾患、潰瘍、疼痛、炎症性疼痛、発熱、アテローム動脈硬化、冠動脈疾患、脈管炎、膵臓炎、関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、ブドウ膜炎、創傷、皮膚炎、湿疹、乾癬、脳卒中、糖尿病、自己免疫疾患、アルツハイマー病、多発性硬化症、サルコイドーシス、ホジキン病または別の悪性病変である、請求項18に記載の化合物または使用。
【請求項20】
治療的に有効量の条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩をリポキシゲナーゼ活性の阻害が所望されおよび/または必要とされる疾患に罹患した、または罹患しやすい患者に投与する工程を含んでなる、このような病状を治療する方法。
【請求項21】
(A)条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩、および
(B)炎症の治療において有用な別の治療薬
を含んでなり、(A)および(B)の各構成要素が、薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中で調合される、併用製品。
【請求項22】
条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の式Iの化合物、または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬製剤、炎症の治療において有用な別の治療薬、および薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアを含んでなる、請求項21に記載の併用製品。
【請求項23】
(a)薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中に、条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬製剤、および
(b)薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとの混合物中に、炎症の治療において有用な別の治療薬を含む医薬製剤
を含んでなるパーツのキットを含んでなり、
構成要素(a)および(b)がそれぞれ他方との併用投与に適した形態で提供される、請求項21に記載の併用製品。
【請求項24】
(i)R2がハロゲンまたは(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルキルを表す式Iの化合物の場合は、R2が水素を表す対応する式Iの化合物と、適切な塩基(または塩基混合物)とを反応させ、それに続いて
(a)R2が任意に置換されるC16アルキル基を表す式Iの化合物の場合は、式II、
c1a II
(式中、Rcは(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルキルを表し、L1aは適切な離脱基を表す)の化合物と共に、またはR2がCF3を表す式Iの化合物の場合は、トリフルオロメチル化試薬と共に、または
(b)R2がハロゲンを表す式Iの化合物の場合は、このような原子源を提供する求電子剤と共に、
クエンチングする工程と、
(ii)R1および/またはR2が(1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換される)C16アルコキシを表す式Iの化合物の場合は、式Iの化合物に対応するが関連置換基R1および/またはR2の代わりに(必要に応じて)ヒドロキシ基が存在する化合物と、上で定義される式IIの化合物とを、または(R1および/またはR2におけるメトキシ基導入のために)ジアゾメタンとを反応させる工程と、
(iii)R2がCF3を表す式Iの化合物では、R2がブロモまたはヨードを表す対応する式Iの化合物と、CuCF3(またはCuCF3源)とを反応させる工程と、
(iv)式III、
【化2】

(式中、
1およびR2は請求項1で定義されるとおりであり、L3は適切な離脱基を表す)の化合物またはその保護誘導体と、式IV、
【化3】

(式中、
1、A2、A3、およびA4は請求項1で定義されるとおりである)の化合物とを反応させる工程と、
(v)式V
【化4】

の化合物、または式VI、
【化5】

(式中、
1、R2、A1、A2、A3、およびA4は請求項1で定義されるとおりである)の化合物を分子内環化させる工程と、
(vi)R2が水素を表し、R1が上で定義されるとおりである式Iの化合物の場合は、式VII、
【化6】

(式中、
Jは−Si(Rt3または−Sn(Rz3(式中、各Rtは独立して、C16アルキル基またはアリール基を表し、各Rzは独立して、C16アルキルを表す)を表し、R1、A1、A2、A3、およびA4は請求項1で定義されるとおりである)の化合物から、J基を除去する工程と、
(vii)R1またはR2の一方が任意に置換されるC16アルキル基、クロロまたはフルオロを表して他方がHを表す式Iの化合物の場合は、R1またはR2がブロモまたはヨードを表して他方が(必要に応じて)Hを表す対応する式Iの化合物と、適切な有機リチウム塩基とを反応させ、それに続いて上で定義される式IIの化合物と共に、または塩素またはフッ素原子源と共にクエンチングする工程と、
(viii)R2がHを表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表す式Iの化合物の場合は、式VIIA、
【化7】

(式中、
dはHを表し、または1つ以上のハロゲン原子によって任意に置換されるC16アルキルを表し、R1は上で定義されるとおりである)の化合物と、ヒドラジン(またはその水和物または誘導体)とを反応させる工程と、
(ix)式VIIB、
【化8】

(式中、
xは適切な離脱基を表し、R1およびR2は上で定義されるとおりである)の化合物と、式VIIC、
【化9】

(式中、
yは適切な離脱基を表し、A1、A2、A3、およびA4は上で定義されるとおりである)の化合物とを反応させる工程と
を含んでなる、請求項1に記載の式Iの化合物を調製する方法。
【請求項25】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとを結びつける工程を含んでなる、請求項14に記載の医薬製剤を調製する方法。
【請求項26】
条件なしの請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩と、炎症の治療において有用なその他の治療薬および少なくとも1つの薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤またはキャリアとを結びつける工程を含んでなる、請求項21〜23のいずれか一項に記載の併用製品を調製する方法。

【公表番号】特表2010−524913(P2010−524913A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503594(P2010−503594)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001387
【国際公開番号】WO2008/129280
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509289928)バイオリポックス アーベー (1)
【Fターム(参考)】