説明

炭素繊維微粒子およびその製造方法及び装置

【課題】炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物より、微粒子平均10μm未満に微細粉末化した炭素繊維微粒子を得る。
【解決手段】炭素繊維物を細切粉切、粉砕し、微細粉末化し微粒子平均10μm未満の炭素繊維微粒子を得る。また、該炭素繊維微粒子を得るに際し、炭素繊維を細切粉切し、該粉切された炭素繊維粒子を吸引収集備蓄し、利用前に炭素繊維微粒子にするための衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで微細粉末化することを特徴とする炭素繊維微粒子の製造方法及び装置を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維微粒子及びその製造方法と装置に関し、特に炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物から、微粒子平均10μm未満の微細粉末としたことを特徴とする炭素繊維微粒子及びその製造方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭素繊維の粉砕について、種々の方法や装置が開発されてきた。下記、特許文献1は、炭素長繊維を粉砕するに際し、粗粉砕を切断応力を利用した粉砕機で行い、微粉砕を剪断衝撃応力を利用した粉砕機で行い、超微粉砕を衝撃摩擦応力を利用した粉砕機で行うようにした微粉炭素繊維の製造方法であり、各種粉砕工程装置を専用の機器で順次小さく粉砕していくことが開示されている。
【0003】
下記、特許文献2は、繊維を高温高圧の流体処理し、処理物を媒体中で粉砕することを特徴とする微細粉砕物の製造方法である。
【0004】
下記、特許文献3は炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノファイバー集合体を得る方法及びその材料を使用粉砕し、繊維長が10μm以上のカーボンナノファイバーを得ることを特徴としている。
【0005】
また、従来から、オリエント竪型粉砕機、ロータリーカッターミル、インペラーミルなど、各粉砕装置メーカーから市販されている粉砕機、装置がある。
【特許文献1】特開平11−322314
【特許文献2】特開2003−105126
【特許文献3】特開2006−152512
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のこれらの方法で、様々な箇所から発生する種々雑多な炭素繊維を粉砕するにはその繊維の仕訳管理が複雑困難であり、装置内で材料の絡まり、残留が起こり、半製品、成品とも繊維長さのバラツキが大きく、また、繊維を高温高圧の流体処理し、処理物を媒体中で粉砕するには前処理、後処理の特殊処理装置が必要であり、従来装置を使用し粉砕処理を行っても、10数μmまで粉砕するのが限度であり、その粉砕繊維長さのバラツキも大きく、本発明者らが意図する微粒子、特に、10μm未満の微粒子を効率よく得ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる従来の欠点を解消し、効率よく、大量生産に適し、炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物から、微細粉末化した炭素繊維微粒子特に、10μm未満の微粒子を得ることを目的とする。
【0008】
さらに、この微粒子を容易に製造するための方法として、従来からの粉砕方法ではなく、細切、粉切という方法に主眼を置いた方法を開発発明し、初期の目的を達成することが出来た。すなわち、複数のカット刃より構成される回転刃を好ましくは少なくとも2段階以上のかつ多層に分け、これにより炭素繊維物を細切粉切し、細切粉切された炭素繊維粒子を吸引収集備蓄し、利用前に微細粉末化した炭素繊維微粒子とするための衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで微細化する製造方法により、10μm未満の炭素繊維微粒子を得ることが出来た。
【0009】
さらに、上記方法を得るための1実施例として下記に示す炭素繊維微粒子の製造装置を開発した。
【発明の効果】
【0010】
従来の粉砕機による従来方法では、様々な箇所から発生する種々雑多な炭素繊維を粉砕するには、材料の不均一性等から、装置内での材料の絡まり、残留が起こり、半製品、成品とも繊維長さのバラツキ発生等の問題があったが、本発明の粉切装置による方法によれば、その粉末繊維長さのバラツキも小さく、特に、10μm未満の微粒子を簡単に効率よく得ることができた。さらにこの炭素繊維微粒子により、炭素繊維の特徴である軽い、強い、変形しにくい、導電性、化学変化に強い、熱膨張がないなど多くの特徴を活かした新用途成品を開発し、従来廃物として処理されていた炭素繊維の材料再生利用拡大を目指すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物を細切粉切、粉砕し、微細粉末とすることを特徴とする炭素繊維微粒子である。
【0012】
また、前記炭素繊維微粒子を得るために、種々研究を重ね、前記炭素繊維物から、炭素繊維微粒子を得るに際し、炭素繊維を好ましくは3mm以下に細切粉切し、該粉切された炭素繊維粒子を吸引収集備蓄し、利用前に炭素繊維微粒子にするための衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで微細粉末化することにより炭素繊維微粒子の製造方法を確立した。
【0013】
また、前記炭素繊維物から、炭素繊維粒子を得るに際し、複数のカット刃より構成される回転刃を多段層に分け、炭素繊維物をこれにより細切粉切する方法が、細かくバラツキが少なく切る事が出来る有効な手段である。
【0014】
また、本発明の炭素繊維微粒子を得るために、前記製造方法と共に、本発明の装置を完成したものである。すなわち、本装置は上部に投入口を設け、この投入口より投入された炭素繊維の規格外品や炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物を、本装置内部に設けた複数個のカット刃より構成される回転刃を上部回転刃及び、下部回転刃、さらに必要により中間に何段かの中間回転刃を設けた多段層構造の回転刃ユニットとし、該回転刃群にて剪断力を用いて裁断、細切し、粉切することを特徴とする炭素繊維微粒子の製造装置の開発を行なった。この多層カット刃は下段になるほど外径を大きくし、回転周速を早くすることが好ましい。
【0015】
また、本装置上部投入口へ切断粉切された炭素繊維粒子が、カッター刃の回転風力により舞い上がるのを防止する為に、内面上部に飛散防止スカートを設け、これを投入口より投入される炭素繊維が滑り良く内部の回転刃へ落下到達するように、排出側の180度反対位置に落とす様に設けた。
【0016】
又、回転刃の下方位置に細切粉切された繊維粒子の規制セパレータを設け、さらに下部方向に裁断によってより細かく均一化するためにロータリーカッター刃を設け、粉切機の排出口手前に多孔プレートを設け、裁断された繊維粒子を排出口の外部に設けた集塵機で、集塵機の吸引力調整により粉切機内部の粉切された炭素繊維粒子を調整吸引収集する。
【0017】
この多孔プレートを通過吸引した炭素繊維粒子は、通常環境では、凝集し易くなっているため、この時点で適宜備蓄し、炭素繊維微粒子の必要時に、次工程の衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで、本発明の最終目的である炭素繊維微粒子を製造することが好ましい。
【0018】
備蓄した炭素繊維粒子は、凝集されている場合、ミキサー又は、プロセッサーで攪拌し分散させ、最終工程の衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等で、10μm未満の炭素繊維微粒子、さらには微粒子径平均7μm以下の微細粉末化した炭素繊維微粒子を得ることができる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明装置の具体的実施例を、図面を参照して詳述する。図1は本発明の炭素繊維微粒子を得るための本発明による炭素繊維粒子の粉切装置の1例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図中、1は上部回転刃、2は中間スライス回転刃、3は下部スライス回転刃、4,5,6はスペーサー、7はナット、8は投入口、9は飛散防止スカート、10は偏向スカート、11は規制セパレータ、12はロータリーカッター刃、13はモーター、14は多孔プレート、15は排出口ダクト、16は風量調節装置、17は集塵機を示す。
【0020】
本装置内部に設けた2個の小径カット刃より構成される上部回転刃1、及び2個の中径カット刃より構成される中間スライス回転刃2にて剪断力を用いて裁断し、7個の大径カット刃より構成される下部スライス回転刃3にて衝撃力・剪断力を用い裁断によりカットをするなど少なくとも2段層以上よりなる多層カット刃を有し、各刃間は、スペーサー4,5,6で裁断に最適な間隔に保ち刃のブレを無くし、これらを1軸とし、上部をナット7で固定した。この多層カット刃は下段になるほど外径を大きくし、回転周速を早くすることが好ましい。
また、ナット7は、投入される炭素繊維が長い場合、繊維が絡まりやすく、乱流の発生を抑えるため、袋ナット、カップリングなどを取付ることが好ましい。また、上部回転刃1は、装置内での材料の絡まり、残留が起こるのを防止するため、平回転刃より、皿形刃やカップ形状の回転刃が好ましい。
【0021】
本装置の上部には規格外品や産業廃棄物炭素繊維を投入するための投入口8を設け、この投入口8より投入され切断粉切された炭素繊維粒子が、カッター刃の回転風力により投入口へ舞い上がるのを防止する為に、内面上部に飛散防止スカート9を設け、投入口より投入される炭素繊維が滑り良く内部の回転刃へ落下到達するように、投入側の180度反対位置に落とす様に偏向スカート10を設けた。
【0022】
回転刃の下方位置に、粉切された繊維粒子の規制セパレータ11を設け、さらに下部方向にロータリーカッター刃12を設け、これら各回転刃は下部に設けられたモーター13により駆動される。粉切機内部の排出口手前に多孔プレート14を設け、炭素繊維粒子をより細かく裁断すると同時にふるい分けされる。多孔プレート14の出口側は排出口ダクト15が設けられ、その途中には風量調節装置16を設け、排出口ダクト15の出口側に集塵機17を設け、集塵機17の吸引力の調整により粉切機内部の粉切された炭素繊維粒子大きさを調整し吸引収集する事が出来る。吸引力の調整は集塵機のモーター回転をインバータなどで制御することで、風量調節装置16と置き換えることも有効である。
【0023】
本実施例装置へ、炭素繊維の製造各工程間で発生した規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物を適当に混在して、投入し、運転を開始したところ、集塵機の吸引力の調整60%で炭素繊維が平均2.0mm長に細切粉切され1時間当たり2kgの炭素繊維粒子を得ることが出来た。さらにこれをジェットミル粉砕機で微細粉末化すると微粒子径平均7μmの炭素繊維微粒子を得ることが出来た。また、ほぼ同等の材料で、集塵機の吸引力の調整30%で炭素繊維が平均1.0mm長に細切粉切され1時間当たり1kgの炭素繊維粒子を得ることが出来た。同様にジェットミル粉砕機で微細粉末化すると微粒子径平均5μmの炭素繊維微粒子を得ることが出来た。
【0024】
さらに、本実施例装置へ、炭素繊維が平均2.0mm長に細切粉切されたものを2パス投入を繰り返し、行うと、平均1.0mm長に細切粉切され最大値は小さくなり、粒度分布
が小さくなり、均一化の傾向がみられた。これを同様にジェットミル粉砕機で微細粉末化すると微粒子径平均3μmの炭素繊維微粒子を得ることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0025】
従来、炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等として、廃物として処理されていた炭素繊維の材料を、本発明の炭素繊維微粒子特に、従来困難とされていた10μm未満の微粒子を得ることにより、炭素繊維の軽くて・強い・変形しにくい等の性質から、本発明品は、塗料の強化材、混連物等として、さらには新素材、新用途製品の開発も期待され、再生利用拡大を可能にするものである。
【0026】
さらに、本発明の製造方法、装置により、炭素繊維微粒子を容易に、効率よく、大量生産する事が出来、産業廃棄物の減少、公害防止にも効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】炭素繊維粒子製造の紛切装置の1実施例
【符号の説明】
【0028】
1 上部回転刃
2 中間スライス回転刃
3 下部スライス回転刃
4 スペーサー
5 スペーサー
6 スペーサー
7 ナット
8 投入口
9 飛散防止スカート
10 偏向スカート
11 規制セパレータ
12 ロータリーカッター刃
13 モーター
14 多孔プレート
15 排出口ダクト
16 風量調節装置
17 集塵機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維物を細切粉切、粉砕に際し複数のカット刃より構成される回転刃を多層に分け、炭素繊維物をこれにより好ましくは3mm以下に細切粉切し、該粉切された炭素繊維粒子を吸引収集備蓄し、利用前に炭素繊維微粒子とするための衝撃摩擦力を、利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで、微細粉末化することにより出来得る微粒子平均10μm未満の微細粉末としたことを特徴とする炭素繊維微粒子。
【請求項2】
炭素繊維の製造各工程間で発生する規格外品及び、炭素繊維の産業廃棄物、廃材品等の炭素繊維物から、炭素繊維微粒子を得るに際し、複数のカット刃より構成される回転刃を多層に分け、炭素繊維物をこれにより細切粉切し、該粉切された炭素繊維粒子を吸引収集備蓄し、3mm以下に炭素繊維物を細切粉切し得る細切粉砕機を使用し、微粒子平均10μm未満の炭素繊維微粒子の製造方法。
【請求項3】
細切粉砕機を使用した後に、平均微粒子10μm未満の炭素繊維微粒子とするための衝撃摩擦力を利用したジェットミル・ボールミル・ビーズミル粉砕機等のいずれかで微細粉末化することを特徴とする炭素繊維微粒子の製造方法。
【請求項4】
複数のカット刃より構成される回転刃を少なくとも2段層以上の多層に設け、下段層になるほど外径を大きくした回転刃とし、該回転刃を回転せしめるように構成したことを特徴とする炭素繊維物の粉切装置。
【請求項5】
回転刃の上方位置に素材投入口を設け、その排出側の180度反対位置方向へ向いた繊維の飛散防止スカートを設けたことを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維物の粉切装置。
【請求項6】
回転刃の下方位置に細切された繊維粒子の規制セパレータを設け、さらに下部方向にロータリーカッター刃を設け、裁断した粉切機内部の排出口手前に多孔プレートを設け、排出口の外部に集塵機を設け、集塵機の吸引力により粉砕機内部の細切粉切された炭素繊維粒子を吸引収集することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の炭素繊維物の粉切装置。





【図1】
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【公開番号】特開2009−18963(P2009−18963A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182991(P2007−182991)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(306048100)小手川工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】