説明

無人搬送車走行方法及び無人搬送車走行システム

【課題】合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生を抑えることができる無人搬送車走行方法及び無人搬送車走行システムを提供する。
【解決手段】無人搬送車走行システム1は、複数台の無人搬送車(AGV)2と、コントローラ6と、メモリ8とを備えている。無人搬送車2は、予め決められた走行経路に沿って走行し、移載装置に荷物を搬送する。メモリ8には、無人搬送車2が走行する走行経路を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータが設定記憶されている。コントローラ6は、無人搬送車2により搬送される荷物が移載装置に到着する予定時刻を計算し、出発地ブロックから目的地ブロックまでの各ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻を、目的地ブロックから出発地ブロックに向かって順次予約していき、無人搬送車2が走行を開始する時刻を求め、その走行開始時刻のデータを当該無人搬送車2に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車を走行経路に沿って走行させる無人搬送車走行方法及び無人搬送車走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無人搬送車走行システムとしては、例えば特許文献1に記載されているように、無人搬送車(AGV)に対して荷役作業を行う複数のステーションと、これらのステーション間に連なって配設され、AGVの走行経路を形成する複数の単位走行ゾーンと、AGVの運行を制御するAGV運行制御装置とを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−252631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、AGVの走行経路には、分岐点、合流点、交差点が存在することがある。そのような走行経路をAGVが成り行きで走行する場合には、合流点や交差点においてAGV同士を衝突させないように各AGVの走行を制御する必要があるため、AGVの待ち合わせが発生しやすくなる。しかし、上記従来技術においては、合流点や交差点でのAGVの待ち合わせについては、何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生を抑えることができる無人搬送車走行方法及び無人搬送車走行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の無人搬送車を走行経路に沿って走行させる無人搬送車走行方法において、走行経路を複数のブロックに分割する走行経路分割工程と、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻を決定する到達予定時刻決定工程と、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻に基づいて、無人搬送車の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に予約していく通過時刻予約工程と、通過時刻予約工程において予約された時刻に従って無人搬送車を走行させるように制御する走行制御工程とを含むことを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の無人搬送車走行方法においては、走行経路を複数のブロックに分割し、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻に基づいて、無人搬送車の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に予約し、その予約された時刻に従って無人搬送車を走行させるように制御する。このとき、複数の無人搬送車について各ブロックを通過する時刻を重複させないように予約することで、合流点や交差点のある走行経路に沿って複数の無人搬送車を走行させたときに、合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生を防止することができる。
【0008】
また、本発明は、複数の無人搬送車を走行経路に沿って走行させる無人搬送車走行システムにおいて、走行経路を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを記憶するブロックデータ記憶手段と、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻を決定する到達予定時刻決定手段と、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻に基づいて、無人搬送車の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に予約していく通過時刻予約手段と、通過時刻予約手段により予約された時刻に従って無人搬送車を走行させるように制御する走行制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように本発明の無人搬送車走行システムにおいては、走行経路を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを予め記憶しておく。そして、無人搬送車が目的地に到達する予定時刻に基づいて、無人搬送車の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に予約し、その予約された時刻に従って無人搬送車を走行させるように制御する。このとき、複数の無人搬送車について各ブロックを通過する時刻を重複させないように予約することで、合流点や交差点のある走行経路に沿って複数の無人搬送車を走行させたときに、合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生を防止することができる。
【0010】
好ましくは、通過時刻予約手段により予約された任意のブロックを通過する時刻が複数の無人搬送車同士で重複するかどうかを判断する重複判断手段を更に備え、到達予定時刻決定手段は、重複判断手段により任意のブロックを通過する時刻が複数の無人搬送車同士で重複すると判断されたときは、複数の無人搬送車のうち何れかの無人搬送車が目的地に到達する予定時刻を変更する。
【0011】
このような構成では、複数の無人搬送車が任意のブロックを通過する時刻が万が一重複するような場合には、複数の無人搬送車のうち何れかの無人搬送車が目的地に到達する予定時刻が変更される。このため、その変更された予定時刻に基づいて、無人搬送車の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に再予約することにより、合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、合流点や交差点での無人搬送車の待ち合わせの発生を抑えることができる。これにより、無人搬送車を用いて荷物の搬送を行う場合に、荷物の搬送能力の低下を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる無人搬送車走行システムの一実施形態において無人搬送車が走行する走行経路の一例を示す図である。
【図2】本発明に係わる無人搬送車走行システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】図1に示した走行経路の一部分を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを示す図である。
【図4】図2に示したコントローラにより実行される無人搬送車走行制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係わる無人搬送車走行方法及び無人搬送車走行システムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる無人搬送車走行システムの一実施形態において無人搬送車が走行する走行経路の一例を示す図である。同図において、本実施形態の無人搬送車走行システム1は、複数台の無人搬送車(AGV)2を予め決められた走行経路3に沿って自動的に走行させるシステムである。走行経路3は、合流点3a及び分岐点3bを有する周回状のルートとなっている。
【0016】
無人搬送車2は、そのような走行経路3に沿って一方向に走行可能であり、荷物保管場所4に保管された荷物を移載装置5まで搬送する。無人搬送車2は、特に図示はしないが、車輪を回転させる走行モータと、車輪を旋回させる旋回モータと、これらの走行モータ及び旋回モータを制御する制御ユニットと、後述するコントローラ6と無線通信を行う無線通信機とを有している。
【0017】
図2は、本発明に係わる無人搬送車走行システムの一実施形態を示す概略構成図である。同図において、無人搬送車走行システム1は、上記の複数台の無人搬送車2と、この無人搬送車2の走行制御を含むシステム全体を制御するコントローラ6と、このコントローラ6と接続され、各無人搬送車2と無線通信を行う無線装置7と、コントローラ6と接続されたメモリ8とを備えている。
【0018】
メモリ8には、無人搬送車2が走行する走行経路3を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータが設定記憶されている。各ブロックには、無人搬送車2の通過時刻(進入・退出時刻)の予約を記録することができる。
【0019】
走行経路ブロックデータの一例として、図1中の領域Aの走行経路3を複数のブロックに分割したものを図3に示す。走行経路3の各ブロックBのサイズは、図3に示すように全て同じでも良いし、ブロックB毎に異なっていても良い。また、走行経路3の合流点3a及び分岐点3bは、1つのブロックBに含まれるように構成される。
【0020】
図4は、コントローラ6により実行される無人搬送車走行制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【0021】
同図において、まず移載装置5の荷役計画等から、無人搬送車2により搬送される荷物が移載装置5に到着する予定時刻(到着予定時刻)を計算する(手順S51)。具体的には、例えば移載装置5による荷役開始予定時刻の30秒前の時刻を、荷物の到着予定時刻に決定する。
【0022】
続いて、荷物を搬送する無人搬送車2を選定する(手順S52)。このとき、搬送すべき荷物の保管位置に最も近い位置で停止(待機)している無人搬送車2を選定する。
【0023】
続いて、選定された無人搬送車2の性能データ(加速度や最高速度)等に基づいて、無人搬送車2の停止位置(出発地)から移載装置5のある位置(目的地)までの間に存在する各ブロック(図3参照)を無人搬送車2が通過するのに要する時間(通過時間)を計算する(手順S53)。ここで、無人搬送車2の加速度及び最高速度は、荷物の総重量によって変わってくる。また、荷物の保管位置に対応するブロックでは、荷物保管場所4から無人搬送車2に荷物を移載する時間を考慮して、各ブロックにおける無人搬送車2の通過時間を求める。
【0024】
例えば図3に示すような走行経路ブロックデータでは、無人搬送車2の停止位置に対応するブロック(出発地ブロック)Bから移載装置5のある位置に対応するブロック(目的地ブロック)Bまでの各ブロックB(ブロックB〜B)の通過時間を求める。
【0025】
続いて、手順S51で得られた荷物の到着予定時刻と手順S53で得られた各ブロックにおける無人搬送車2の通過時間とに基づいて、目的地ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻(進入時刻)を予約する(手順S54)。
【0026】
続いて、出発地ブロック側に1つ手前のブロックにおける無人搬送車2の通過時刻(進入・退出時刻)を予約する(手順S55)。
【0027】
続いて、当該ブロックにおいて既に予約された他の無人搬送車2の通過時刻との重複が発生していないかどうかを判断する(手順S56)。他の無人搬送車2の通過時刻との重複が発生していると判断されたときは、今回通過時刻を予約した無人搬送車2により搬送される荷物の到着予定時刻を遅らせる(手順S57)。そして、手順S54に戻り、手順S54,S55を繰り返し実行する。
【0028】
他の無人搬送車の通過時刻との重複が発生していないと判断されたときは、出発地ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻(退出時刻)の予約が完了したかどうかを判断する(手順S58)。出発地ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻の予約が完了していないと判断されたときは、手順S55に戻り、手順S55,S56を繰り返し実行する。
【0029】
出発地ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻(退出時刻)の予約が完了したと判断されたときは、その退出時刻から無人搬送車2が走行を開始する時刻(走行開始時刻)を求め、その走行開始時刻データを無線装置7を介して当該無人搬送車2に送信する(手順S59)。
【0030】
このような処理を実行することによって、出発地ブロックから目的地ブロックまでの各ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻が、無人搬送車2の走行方向とは逆向きに目的地ブロックから出発地ブロックに向かって順次予約されていくこととなる(図3の矢印参照)。
【0031】
例えば図3に示すような走行経路ブロックデータでは、ブロックB〜Bにおける無人搬送車2の通過時刻が順次予約されていき、無人搬送車2に対して走行開始時刻が指示される。そして、無人搬送車2の走行開始時刻になると、無人搬送車2は、出発地から目的地に向かって、予約されたブロックB〜Bの通過時刻に従って走行するようになる。
【0032】
以上において、メモリ8は、走行経路3を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを記憶するブロックデータ記憶手段を構成する。コントローラ6の上記手順S51,S57は、無人搬送車2が目的地に到達する予定時刻を決定する到達予定時刻決定手段を構成する。同手順S52〜S55,S58は、無人搬送車2が目的地に到達する予定時刻に基づいて、無人搬送車2の出発地から目的地までの各ブロックを無人搬送車2が通過する時刻を、目的地に対応するブロックから出発地に対応するブロックに向けて順に予約していく通過時刻予約手段を構成する。同手順S59と無線装置7とは、通過時刻予約手段により予約された時刻に従って無人搬送車2を走行させるように制御する走行制御手段を構成する。
【0033】
また、コントローラ6の上記手順S56は、通過時刻予約手段により予約された任意のブロックを通過する時刻が複数の無人搬送車2同士で重複するかどうかを判断する重複判断手段を構成する。
【0034】
以上のように本実施形態にあっては、無人搬送車2が走行する走行経路3を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを設定し、荷役計画等に基づいて移載装置5への荷物の到着予定時刻を計算し、当該荷物を搬送する無人搬送車2が通る各ブロックの通過時刻を目的地ブロックから出発地ブロックに向けて順に予約していく。このとき、任意のブロックにおける通過時刻が他の無人搬送車2の通過時刻と重複したときは、当該荷物の到着予定時刻を遅らせて、無人搬送車2が通る各ブロックの通過時刻を予約し直すようにする。
【0035】
これにより、無人搬送車2が出発地から移載装置5のある目的地に向かって走行経路3上を走行するときに、途中の合流点3aにおいて無人搬送車2が待ち合わせのために停止することが無くなるため、無人搬送車2の渋滞の発生を防止することができる。従って、無人搬送車2の平均走行速度が下がることが防止されるため、荷物の搬送能力の低下を抑制することが可能となる。また、移載装置5に対する荷物の到着順序を入れ替えなくて済むため、当初予定された荷役計画通りの順番で荷役作業を実施することができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、走行経路3の各ブロックにおける無人搬送車2の通過時刻を予約する際に、他の無人搬送車2の通過時刻との重複が発生したときは、今回予約を行っている無人搬送車2が目的地に到着する予定時刻を遅らせるようにしたが、特にその手法には限られず、何れかの無人搬送車2が目的地に到着する予定時刻を早めても良い。
【符号の説明】
【0037】
1…無人搬送車走行システム、2…無人搬送車、3…搬送経路、6…コントローラ(到達予定時刻決定手段、通過時刻予約手段、走行制御手段、重複判断手段)、7…無線装置(走行制御手段)、8…メモリ(ブロックデータ記憶手段)、B…ブロック、B…出発地ブロック、B…目的地ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無人搬送車を走行経路に沿って走行させる無人搬送車走行方法において、
前記走行経路を複数のブロックに分割する走行経路分割工程と、
前記無人搬送車が目的地に到達する予定時刻を決定する到達予定時刻決定工程と、
前記無人搬送車が前記目的地に到達する予定時刻に基づいて、前記無人搬送車の出発地から前記目的地までの各ブロックを前記無人搬送車が通過する時刻を、前記目的地に対応するブロックから前記出発地に対応するブロックに向けて順に予約していく通過時刻予約工程と、
前記通過時刻予約工程において予約された時刻に従って前記無人搬送車を走行させるように制御する走行制御工程とを含むことを特徴とする無人搬送車走行方法。
【請求項2】
複数の無人搬送車を走行経路に沿って走行させる無人搬送車走行システムにおいて、
前記走行経路を複数のブロックに分割してなる走行経路ブロックデータを記憶するブロックデータ記憶手段と、
前記無人搬送車が目的地に到達する予定時刻を決定する到達予定時刻決定手段と、
前記無人搬送車が前記目的地に到達する予定時刻に基づいて、前記無人搬送車の出発地から前記目的地までの各ブロックを前記無人搬送車が通過する時刻を、前記目的地に対応するブロックから前記出発地に対応するブロックに向けて順に予約していく通過時刻予約手段と、
前記通過時刻予約手段により予約された時刻に従って前記無人搬送車を走行させるように制御する走行制御手段とを備えることを特徴とする無人搬送車走行システム。
【請求項3】
前記通過時刻予約手段により予約された任意のブロックを通過する時刻が前記複数の無人搬送車同士で重複するかどうかを判断する重複判断手段を更に備え、
前記到達予定時刻決定手段は、前記重複判断手段により前記任意のブロックを通過する時刻が前記複数の無人搬送車同士で重複すると判断されたときは、前記複数の無人搬送車のうち何れかの無人搬送車が前記目的地に到達する予定時刻を変更することを特徴とする請求項2記載の無人搬送車走行システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−227716(P2011−227716A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97017(P2010−97017)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】