説明

無停電電源装置及び無停電電源装置の制御方法

【課題】 小容量で充電時間の短い蓄電池と、大容量で充電時間の長い蓄電池を併設し、入力電源停止の際に小容量の蓄電池を先に使用して復電後短時間で充電することにより、短時間の停電が短時間で繰り返したときでも大容量の蓄電池の放電を抑え、長時間の停電が発生したときに大容量の蓄電池が充電不足の状態にあることを回避すること。
【解決手段】 無停電電源装置10は、小容量短時間充電の蓄電池15と、大容量長時間充電の蓄電池16と、直流を交流に変換するインバータ12とを有し、入力電源31が停止すると蓄電池15の直流出力を開閉器17を閉路してインバータ12に供給し、インバータ12が入力電源31に代わって交流を電子機器32に供給し、蓄電池15が放電限界になると開閉器17を閉路し開閉器18を閉路して蓄電池16の出力をインバータ12に供給する。復電時には蓄電池15の充電を蓄電池16の充電より優先して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無停電電源装置及び無停電電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、入力電源と電子機器との間に設置され、入力電源が電圧低下(停電)した場合、内蔵する蓄電池の電力を電子機器に供給する装置である。無停電電源装置が入力電源に代わって電力を供給できる時間(バックアップ時間)は電子機器の消費電力と蓄電池の容量によって決まる。
【0003】
従来の無停電電源装置は、通常、数分から数十分程度の短時間の停電をバックアップする場合1つの蓄電池で構成し、数十分から数時間の長時間の停電をバックアップする場合は、特開平8−154344号公報に記載されるように同一の蓄電池を並列に接続して停電バックアップ時間を長時間にしている。蓄電池の数量は停電時に電子機器をどの程度動作させる必要があるかで決められる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−154344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に長時間のバックアップ時間に対応した蓄電池の充電時間は、放電時間に対し約10倍程度となり、充電完了前に再度停電が発生すると充電が不十分な状態でバックアップのための放電を開始することになる。従って、停電が必要とする充電時間より短い間隔で頻発すると、蓄電池の充電不足が加速され期待されるバックアップ時間を確保できなくなるという問題があった。
【0006】
特開平8−154344号公報に記載される無停電電源装置は、バックアップ時間を延長するために蓄電池を並列接続する構成としているが、充電時間を短縮する構成は備えていない。従って、停電が必要とする充電時間より短い間隔で頻発すると、蓄電池全体として充電不足が加速されてしまい上記問題を解決することはできない。
【0007】
また、充電時間を短縮するために充電時間の短い蓄電池を使用することで上記問題を解決できるが、例えば長時間に及び安定して電力を供給できる鉛蓄電池に比べて、充電時間が極めて短い有機化合物を利用した有機ラジカル電池は高価となることが予想される。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の課題を解決するために、小容量で充電時間の短い蓄電池と、大容量で充電時間の長い蓄電池を併設し、停電時に小容量の蓄電池を先に使用し復電(停電の復旧)時に短時間で充電することにより、短時間の停電が短期間で繰り返したときでも大容量の蓄電池の放電を抑え、長時間の停電が発生したときに大容量の蓄電池が充電不足の状態であることを回避できるようにした無停電電源装置及び無停電電源装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の無停電電源装置は、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aとを有し、
入力電源が停止すると蓄電池Aの電力を前記電子機器に供給し、蓄電池Aの電力量が尽きると蓄電池Bの電力を前記電子機器に供給し、
入力電源が復電した際先に蓄電池Aを充電し、蓄電池Aの充電後に蓄電池Bを充電することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の無停電電源装置は、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータとを有し、
入力電源が停止すると蓄電池Aの直流出力を前記インバータに供給し、前記インバータが入力電源に代わって交流を前記電子機器に供給し、
蓄電池Aが放電限界になると蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの出力に切り換えて前記インバータに供給し、前記インバータが継続して交流を前記電子機器に供給することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の無停電電源装置は、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて容量が小さく蓄電池Aと、前記入力電源を直流に変換して蓄電池Bを充電させる充電器Bと、前記入力電源を直流に変換し充電器Bより短時間で蓄電池Aを充電させる充電器Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータと、蓄電池Aと前記インバータとを断続する開閉器Aと、蓄電池Bと前記インバータとを断続する開閉器Bとを有し、
入力電源が停止すると開閉器Aを接続状態として蓄電池Aの直流出力をインバータに供給し、蓄電池Aが放電限界になると開閉器Aを切断状態にするとともに開閉器Bを接続状態として蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの直流出力に切り換えて前記インバータに供給することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の無停電電源装置は、第2又は第3の無停電電源装置において、前記入力電源が復電すると前記蓄電池Aを先に充電し、前記蓄電池Aの充電が完了した後に前記蓄電池Bの充電を開始することを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の無停電電源装置は、第2又は第3の無停電電源装置において、前記入力電源の交流を直流に変換し前記インバータに供給する整流器を有し、前記インバータは前記入力電源が停止していないとき前記整流器から供給される直流を交流に変換して前記電子機器に交流を供給することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の無停電電源装置は、第2又は第3の無停電電源装置において、前記入力電源の入力と前記電子機器への出力とを断続する開閉器Cと、前記インバータと前記電子機器への出力とを断続する開閉器Dを有し、
前記入力電源が停止していないとき開閉器Cを接続状態として前記入力電源を前記電子機器へ供給し、前記入力電源が停止すると開閉器Dを接続状態にするとともに開閉器Cを切断状態とし前記入力電源を前記インバータの出力に切り換えて前記電子機器へ交流を供給することを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の無停電電源装置は、本発明の第1乃至第6のいずれかの無停電電源装置において、前記蓄電池Aは有機化合物を利用した有機ラジカル電池であり、前記蓄電池Bは鉛蓄電池であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第1の無停電電源装置の制御方法は、蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると蓄電池Aの電力を前記電子機器に供給し、蓄電池Aの電力量が尽きると蓄電池Bの電力を前記電子機器に供給し、
入力電源が復電した際先に蓄電池Aを充電し、蓄電池Aの充電後に蓄電池Bを充電することを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の無停電電源装置の制御方法は、蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると蓄電池Aの直流出力を前記インバータに供給し、前記インバータが入力電源に代わって交流を前記電子機器に供給し、
蓄電池Aが放電限界になると蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの出力に切り換えて前記インバータに供給し、前記インバータが継続して交流を前記電子機器に供給することを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の無停電電源装置の制御方法は、蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて容量が小さく蓄電池Bと、前記入力電源を直流に変換して蓄電池Bを充電させる充電器Bと、前記入力電源を直流に変換し充電器Bより短時間で蓄電池Aを充電させる充電器Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータと、蓄電池Aと前記インバータとを断続する開閉器Aと、蓄電池Bと前記インバータとを断続する開閉器Bとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると開閉器Aを接続状態として蓄電池Aの直流出力をインバータに供給し、蓄電池Aが放電限界になると開閉器Aを切断状態にするとともに開閉器Bを接続状態として蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの直流出力に切り換えて前記インバータに供給することを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の無停電電源装置の制御方法は、本発明の第2又は第3の無停電電源装置の制御方法において、前記無停電電源装置は、前記入力電源が復電すると前記蓄電池Aを先に充電し、前記蓄電池Aの充電が完了した後に前記蓄電池Bの充電を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、短時間の停電時には充電時間が短く小容量の蓄電池を先に放電し、復電後に短時間で充電することにより、短時間の停電が短期間で繰り返しても充電時間が長く大容量の蓄電池の放電を抑えて充電不足となることを回避し長時間のバックアップを確保できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の構成を示したブロック図である。図1を参照すると、無停電電源装置10は入力電源31と電源の供給先の電子機器32に接続され、入力電源31の電力供給が停止した場合に、入力電源31に代わって電力を供給する。
【0022】
入力電源31は交流電源として電力を供給するものであり、例えば電力会社から供給される100ボルトで50Hz又は60Hzの商用電源である。電子機器32は、例えばコンピュータやネットワーク機器のような情報処理機能を有した装置であり、図1では1台のみ接続しているが、2台以上に接続する構成でもよい。
【0023】
無停電電源装置10は、整流器11と、インバータ12と、高速充電器13(充電器Aに相当)と、低速充電器14(充電器Bに相当)と、蓄電池15(蓄電池Aに相当)と、蓄電池16(蓄電池Bに相当)と、開閉器17(開閉器Aに相当)と、開閉器18(開閉器Bに相当)と、制御部20と、検出回路21とを含む。高速充電器13は検出回路23を含み、低速充電器14は検出回路24を含む。図1では制御用の信号線(複数の信号も1本で示している)には矢印を付け、交流又は直流の電源線には矢印を付けずに両者を区別して示している。
【0024】
整流器11は入力電源31から入力した交流を整流し平滑化し直流に変換する。なお、整流器11は入力電源31が停止したとき出力側の直流が入力側に逆流することがないように構成される。インバータ12は整流器11、蓄電池15、又は蓄電池16から出力される直流を交流へ変換して電子機器32へ出力する。インバータ12が出力する交流は通常は入力電源31と同じ電圧と周波数を持った同特性の交流であるものとして以降説明するが、電圧や周波数を変えることもできる。
【0025】
蓄電池15と蓄電池16は充電が可能な二次電池であり、整流器11と同じ電圧の直流を出力する。バックアップ時間は蓄電池15又は蓄電池16の容量と電子機器32の消費電力とによって決まる。
【0026】
蓄電池16の容量は蓄電池15の容量に比べて大きくし、より長い時間電子機器32をバックアップできるものとする。また、蓄電池15は蓄電池16に比べて充電時間が短い特性を持つものとし、短時間で充電され、短時間の停電が短い間隔で連続しても、充電不足を解消しやすいようになっている。
【0027】
例えば、有機化合物を利用した有機ラジカル電池は充電時間が30秒程度と短いので蓄電池15として適用すれば30秒以上の間隔で短時間の(有機ラジカル電池の容量で足りる範囲の)停電が発生しても蓄電池16の放電を抑止することができる。また、容量が大きく充電時間が長いタイプの鉛蓄電池は蓄電池16に適している。有機ラジカル電池と鉛蓄電池との中間の特性を持つリチウムイオン蓄電池やニッケル水素蓄電池は、有機ラジカル電池又は鉛蓄電池との組み合わせにより蓄電池15としても蓄電池16としても使用できる。
【0028】
高速充電器13は、検出回路23により蓄電池15の充電・放電状態を監視しながら必要に応じて入力電源31の交流を直流に変換し蓄電池15の充電を実行する充電回路(図示しない)を有し、制御部20の指示により充電回路を動作させたり停止させたりする。低速充電器14も同様に蓄電池16に対する検出回路24と充電回路(図示しない)を有し、制御部20の指示により充電回路を動作させたり停止させたりする。
【0029】
高速充電器13は短時間での充電が可能な蓄電池15の特性に応じた充電を行うことで、蓄電池15に比べて充電時間の長い蓄電池16を充電する低速充電器14より高速な充電を実現する。ただし、充電方法は蓄電池15や蓄電池16の特性に応じた充電を実行するものとするが、高速充電器13において複数の充電方法がある場合、高速充電器13はなるべく高速の充電方法を選択することで本発明の効果を高めることができる。
【0030】
また、高速充電器13と低速充電器14は、充電対象の蓄電池15又は蓄電池16が過充電から保護されなければならない特性を持つ場合、満充電状態となると充電を自動的に停止して蓄電池15又は蓄電池16を保護する機能をそれぞれの充電回路に有するものとする。
【0031】
検出回路23は、充電中に蓄電池15の充電状態を監視し蓄電池15が満充電状態となると満充電信号Aを信号線L43に出力し、充電中以外は蓄電池15の放電状態を監視し蓄電池15が放電限界に近づいたことを検出すると放電限界を予告する放電限界信号Aを信号線L43に出力する。検出回路24も検出回路23と同様に、蓄電池16の充電・放電状態を監視し満充電信号Bと放電限界信号Bを信号線L44に出力する。検出回路23と検出回路24は放電状態を監視する1方法として、例えば、蓄電池15と蓄電池16のそれぞれの直流出力側の出力電圧の低下を監視することにより放電状態を監視する方法がある。
【0032】
開閉器17は制御部20の指示により閉路(接続状態)又は開路(切断状態)し、閉路時に蓄電池15の直流出力をインバータ12へ供給する。開閉器18は制御部20の指示により閉路(接続状態)又は開路(切断状態)し、閉路時に蓄電池16の直流出力をインバータ12へ供給する。
【0033】
検出回路21は、入力電源31が正常な状態で入力されているかを検出する回路であり、入力電源31で瞬時電圧低下や停電(以降瞬時電圧低下も区別せず合わせて停電という)による電圧低下が発生するとこれを検出し入力電源異常信号を信号線L41を介して制御部20へ出力する。例えば、検出回路21は入力電源31の交流を整流して直流とし、その直流電圧が規定値以下であることを検出することにより電圧低下を検出することができる。
【0034】
この規定値とはインバータ12が定格電圧を出力できる閾値より少し大きな値である。規定値を閾値より大きくする理由は、蓄電池15から直流が供給されるまでの遅延に配慮するからである。従ってこの規定値は、遅延によってインバータ12の入力電圧が閾値未満とならないような値を閾値に加算して決定される。また、検出回路21は整流する回路を設けずに、整流器11の整流後の直流電圧を利用して検出するようにしてもよい。
【0035】
制御部20は、信号線L41、L43、L44を監視し、その結果として信号線L43、L44、L47、L48を介して高速充電器13、低速充電器14、開閉器17、開閉器18を制御する手順を備えた制御手段であり、制御内容は動作の説明で詳細に説明する。制御部20はハードウェア回路で構成してもよいが、本実施の形態では図示しないがプロセッサと記憶手段と制御回路を備え、記憶手段に記憶したプログラムをプロセッサで実行する。制御部20は実行結果を制御回路を介して信号線L43、L44、L47、L48に出力し、高速充電器13、低速充電器14、開閉器17、開閉器18を制御する。
【0036】
制御部20は信号線L43、L44を介して高速充電器13、低速充電器14に充電許可指示又は充電禁止指示を送り各充電回路の動作と停止を制御する。制御部20は信号線L47、L48を介して開閉器17、18に開路指示又は閉路指示を送り、開閉器17、18の開閉を制御する。
【0037】
次に、本発明の第1の実施の形態の動作について図面を参照して説明する。まず、入力電源31が正常な場合の動作を説明し、次に図1に加えて図2のフローチャートも参照して入力電源31が停止した場合の動作について説明する。
【0038】
なお、以降の動作説明において蓄電池15は有機ラジカル電池とし、蓄電池16は鉛蓄電池とする。また、入力電源31が正常な場合、制御部20は高速充電器13と低速充電器14の充電回路に対してそれぞれ信号線L43又はL44で充電許可指示を出力して充電回路を動作状態とし必要に応じて充電できる状態にしておく。また制御部20は開閉器17と開閉器18に対してそれぞれ信号線L47又はL48で開路指示を出力してともに開路状態とし、蓄電池15又は蓄電池16からインバータ12への出力は停止しておく。
【0039】
図1を参照すると、入力電源31は無停電電源装置10に交流を供給する。無停電電源装置10の整流器11は、入力電源31から入力した交流を整流し平滑して直流に変換しインバータ12へ出力する。インバータ12は整流器11により変換された直流を交流に変換し電子機器32に交流を供給する。
【0040】
このとき、蓄電池15又は蓄電池16が満充電状態でない(放電後充電をしていないか充電中の状態)と、高速充電器13は蓄電池15を充電したり、低速充電器14は蓄電池16を充電したりする。このように、入力電源31が正常な場合は整流器11の出力がインバータ12へ供給され、蓄電池15と蓄電池16は出力されず満充電でなければ充電が実行される。
【0041】
次に、入力電源31が停止した場合の動作を図1に加えて図2も参照して説明する。以降の説明では最初は蓄電池15と蓄電池16とも満充電状態になっているものとする。まず、入力電源31の電力供給が停止すると検出回路21が電圧低下を検出し入力電源異常信号を信号線L41を介して制御部20に出力する。入力電源31の電力供給が停止すると続いて整流器11からの直流出力も停止する。
【0042】
制御部20は、入力電源異常信号を受けると入力電源31の電圧低下が発生したと判断し(S61)、高速充電器13に対して充電禁止指示を送るとともに開閉器17に閉路指示を送る(S62)。
【0043】
高速充電器13は、充電禁止指示を受けると充電回路を停止させる。この場合は充電の必要がないので高速充電器13の動作は変わらないが、もし蓄電池15へ充電中の場合は充電を停止させるように充電回路が動作する。また、開閉器17は閉路指示を受けると開路状態から閉路状態に切り換えて、蓄電池15の直流出力をインバータ12へ供給する。なお、入力電源異常の検出から蓄電池15を直流出力のインバータ12へ供給までの時間は、短時間で実行されるので、整流器11からインバータ12への直流出力が閾値以下にならない間に蓄電池15の直流出力がインバータ12へ供給されるように制御される。
【0044】
これにより、インバータ12は整流器11の出力停止により入力電圧が規定値以下になる前に蓄電池15からの出力を受けて今まで通りの交流を続けて出力することができる。この後、制御部20は検出回路21により入力電源31が復電したか、蓄電池15の放電限界となったかの監視を続ける。ここで、復電とは、入力電源31が正常状態に復旧することをいう。
【0045】
制御部20は、検出回路21から入力電源異常信号が出力されなくなると入力電源31が復電したと判断し(S63)、高速充電器13に対して充電許可指示をするとともに開閉器17に対して開路指示をする(S66)。高速充電器13は、充電許可指示を受けると充電回路を動作させ、充電を開始し蓄電池15が満充電となるまで充電を続ける。開閉器17は開路指示により閉路状態から開路状態に切り換わり蓄電池15の直流出力のインバータ12への供給を停止する。インバータ12へは整流器11から直流が供給されるようになる。
【0046】
制御部20は、ステップS63で入力電源31の復電がないと判断した後、検出回路23から放電限界信号Aが出力されると蓄電池15が放電限界になると判断し(S64)、低速充電器14に対して充電禁止指示をし、開閉器18に対して閉路指示をするとともに、高速充電器13に対して充電許可指示を行い開閉器17に対して開路指示をする(S65)。制御部20は、ステップS64で放電限界信号が検出されないとステップS63へ戻る。
【0047】
低速充電器14は、充電禁止指示を受けると充電回路を停止するが、この時点では充電は必要ないので動作は変わらない。もし蓄電池16へ充電中の場合は充電を停止させるように低速充電器14の充電回路が動作する。開閉器18は閉路指示を受けると開路状態から閉路状態に切り換わり、整流器11からの出力停止と蓄電池15からの出力停止に代わって蓄電池16の直流出力をインバータ12へ供給する。この状態は入力電源31が復電するか蓄電池16が放電限界になるまで継続する。
【0048】
一方、高速充電器13は、充電許可指示を受けると充電回路を動作させるが、入力電源31が復電するまで充電は待たされる。開閉器17は開路指示により閉路状態から開路状態に切り換わり蓄電池15の出力のインバータ12への供給を停止する。
【0049】
制御部20は、ステップS65を実行した後、入力電源31が復電するか蓄電池16が放電限界となるかを監視する。制御部20は、検出回路21から入力電源異常信号が出力されなくなり復電したと判断した場合(S67)、又は検出回路24から放電限界信号Bが出力され蓄電池16が放電限界になると判断した場合(S68)、開閉器18に開路指示をする(S69)。開閉器18は開路指示により閉路状態から開路状態に切り換わり、蓄電池16の出力のインバータ12への供給を停止する。これにより、例えば、蓄電池16は過放電による劣化を防止できる。
【0050】
次に、制御部20は、検出回路23からの満充電信号Aが検出されるか判断し(S70)、満充電信号Aが検出されれば低速充電器14に充電許可指示をし(S71)、満充電信号Aが検出されなければステップS60を繰り返し蓄電池15の充電完了(満充電)を待ち合わせる。復電後30秒程度で蓄電池15は満充電となり、低速充電器14は充電許可指示を受けて充電回路を動作させ充電を開始し、停電がなければ満充電となるまで充電を継続する。
【0051】
次に、停電が短時間で繰り返される場合の動作について説明する。蓄電池15が満充電の状態で電子機器32の消費電力に対して60秒間電力供給でき(すなわち60秒で放電限界となり)、放電限界から満充電までの充電時間が30秒とし、最初の停電が60秒未満で復電し、その後30秒以上経過して再度停電した場合を例に説明する。
【0052】
この場合、最初の停電によりステップS61とステップS62が実行された後、蓄電池15が放電限界(S64)となる前に入力電源31が復電(S63)するので、ステップS63が成立してステップS66が実行される。
【0053】
ステップS66が実行されると、高速充電器13は充電許可指示を受けて充電回路を動作させる。このときすでに復電しているので、高速充電器13は充電を開始し蓄電池15が満充電となるまで充電を続ける。次の停電まで30秒以上あるので、次の停電が発生したときには蓄電池15は満充電されている。従って、この条件で停電が繰り返されても大容量の蓄電池16は放電されることがなく、十分なバックアップ時間を確保し続けることができる。
【0054】
また、次の停電が30秒未満で発生し、充電量が放電量より小さい場合は、蓄電池15は満充電になる前に再度放電を開始することになる。この場合、蓄電池15が電子機器32に電力供給できる時間が60秒より小さくなってしまうが、放電限界に達する前に復電すれば蓄電池16の消費は回避できる。
【0055】
このように、停電の発生間隔と、蓄電池15の容量と充電時間との関係により、蓄電池16の放電が回避できるか否かが決まる。従って、入力電源31の供給環境や電子機器32の消費電力に対応して蓄電池15として採用する蓄電池を決めることにより、より効果的に本発明を適用することができる。
【0056】
また、大容量の蓄電池16の放電中又は放電限界後に復電した場合(ステップS69の状態)、蓄電池15は放電限界に達していて充電回路は充電許可状態となっている。このため、復電してもステップS70が実行されるため蓄電池16の充電は直ぐには開始されず、無停電電源装置10は高速充電可能な蓄電池15の充電を優先するように動作する。
【0057】
従って本発明は、蓄電池16の充電による影響を回避して高速充電特性を持つ蓄電池15を最短時間で満充電にすることができるので、長時間の停電の後に短時間(例えば60秒以内)の停電が30秒以上の間隔をあけて繰り返し発生しても、蓄電池16の充電量にかかわらず、蓄電池15のみで電子機器32への給電を継続することができる。従来のように充電の順序を制御しない方法では蓄電池15の充電が十分に実行されないので、このような場合に対応することができない。特に蓄電池16が放電限界となっている場合、蓄電池15の充電を優先することにより電力のバックアップを効率的に実行できる。
【0058】
以上のように、本発明は充電時間の異なる充電器と蓄電池の組を2組設け、充電時間の短い蓄電池の放電と充電を、充電時間の長い蓄電池に先行させて行う構成を採ることにより、短時間の停電が頻発した場合には充電時間の短い蓄電池で対応し、長時間の停電に対しては容量の大きな蓄電池の消費をなるべく抑えて充電不足の状態を回避させておき十分なバックアップ時間を確保することができる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態について図3を参照して説明する。第1の実施の形態の無停電電源装置10は、入力電源31を整流器11で直流に整流した後インバータ12で交流に戻して供給する構成となっていたのに対して、第2の実施の形態の無停電電源装置50は入力電源31を整流器11とインバータ12を介さずに出力する構成としている点に特徴がある。
【0060】
図3を参照すると、無停電電源装置50は入力電源31から交流を受けて電子機器32に交流を供給する。無停電電源装置50は、無停電電源装置10に対して、開閉器51(開閉器Cに相当)と開閉器52(開閉器Dに相当)を追加し、制御部53が開閉器51と開閉器52の制御を行い、整流器11を含まない点で相違する。他の機能は同じであるので図1と同じ符号を付している。
【0061】
無停電電源装置50は入力電源31を整流器11ではなく開閉器51で受ける。開閉器51の出力は開閉器52の出力と結合されて電子機器32へ供給される。一方、蓄電池15と蓄電池16の直流出力は開閉器17又開閉器18を介してインバータ12に供給され、インバータ12で交流に変換される。インバータ12の交流出力は開閉器52を介して電子機器32に供給される。
【0062】
次に本発明の第2の実施の形態の動作について無停電電源装置10との相違点を中心に説明する。入力電源31で停電が発生すると検出回路21で入力電源異常信号が出力される。制御部53は入力電源異常信号を検出すると図2のフローチャートに従って制御し、開閉器17又は開閉器18の少なくとも一方を閉路指示するとき(ステップS62とS65)に同時に開閉器51を開路指示し開閉器52を閉路指示する。また、開閉器17と開閉器18の双方を開路状態とするように開路指示をするとき(ステップS66とS69)に、同時に開閉器51を閉路指示し開閉器52を開路指示する。
【0063】
このように制御することにより、入力電源31が停止したとき、蓄電池15又は蓄電池16から電力を電子機器32に供給するために開閉器52を閉路状態とし、同時に入力電源31への逆流を回避するために開閉器51を開路状態とする。無停電電源装置10では整流器11が逆流を抑止する機能を果たしていたため開閉器51に相当する構成が不要であった。また、入力電源31が復電したときは逆の操作をする。この他の動作は無停電電源装置10と同様であるので説明は省略するが、無停電電源装置50においても、無停電電源装置10と同様の動作をし、同様の効果が得られることは容易に理解できる。
【0064】
また、以上の説明では、第1及び第2の実施の形態とも2組の充電器と蓄電池を組み合わせた構成としているが、これらの組を充電時間により高速、中速、低速の3組に拡張する構成も容易に実現できる。具体的な実現方法も上記の説明から容易に理解できるので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の動作を示したフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
10 無停電電源装置
11 整流器
12 インバータ
13 高速充電器
14 低速充電器
17、18 開閉器
15、16 蓄電池
20 制御部
21、23、24 検出回路
31 入力電源
32 電子機器
50 無停電電源装置
51、52 開閉器
53 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aとを有し、
入力電源が停止すると蓄電池Aの電力を前記電子機器に供給し、蓄電池Aの電力量が尽きると蓄電池Bの電力を前記電子機器に供給し、
入力電源が復電した際先に蓄電池Aを充電し、蓄電池Aの充電後に蓄電池Bを充電することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータとを有し、
入力電源が停止すると蓄電池Aの直流出力を前記インバータに供給し、前記インバータが入力電源に代わって交流を前記電子機器に供給し、
蓄電池Aが放電限界になると蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの出力に切り換えて前記インバータに供給し、前記インバータが継続して交流を前記電子機器に供給することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項3】
交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置において、
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて容量が小さく蓄電池Aと、前記入力電源を直流に変換して蓄電池Bを充電させる充電器Bと、前記入力電源を直流に変換し充電器Bより短時間で蓄電池Aを充電させる充電器Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータと、蓄電池Aと前記インバータとを断続する開閉器Aと、蓄電池Bと前記インバータとを断続する開閉器Bとを有し、
入力電源が停止すると開閉器Aを接続状態として蓄電池Aの直流出力をインバータに供給し、蓄電池Aが放電限界になると開閉器Aを切断状態にするとともに開閉器Bを接続状態として蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの直流出力に切り換えて前記インバータに供給することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項4】
前記入力電源が復電すると前記蓄電池Aを先に充電し、前記蓄電池Aの充電が完了した後に前記蓄電池Bの充電を開始することを特徴とする請求項2又は3の無停電電源装置。
【請求項5】
前記入力電源の交流を直流に変換し前記インバータに供給する整流器を有し、前記インバータは前記入力電源が停止していないとき前記整流器から供給される直流を交流に変換して前記電子機器に交流を供給することを特徴とする請求項2又は3の無停電電源装置。
【請求項6】
前記入力電源の入力と前記電子機器への出力とを断続する開閉器Cと、前記インバータと前記電子機器への出力とを断続する開閉器Dを有し、
前記入力電源が停止していないとき開閉器Cを接続状態として前記入力電源を前記電子機器へ供給し、前記入力電源が停止すると開閉器Dを接続状態にするとともに開閉器Cを切断状態とし前記入力電源を前記インバータの出力に切り換えて前記電子機器へ交流を供給することを特徴とする請求項2又は3の無停電電源装置。
【請求項7】
前記蓄電池Aは有機化合物を利用した有機ラジカル電池であり、前記蓄電池Bは鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの無停電電源装置。
【請求項8】
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると蓄電池Aの電力を前記電子機器に供給し、蓄電池Aの電力量が尽きると蓄電池Bの電力を前記電子機器に供給し、
入力電源が復電した際先に蓄電池Aを充電し、蓄電池Aの充電後に蓄電池Bを充電することを特徴とする無停電電源装置の制御方法。
【請求項9】
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて短時間で充電される蓄電池Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると蓄電池Aの直流出力を前記インバータに供給し、前記インバータが入力電源に代わって交流を前記電子機器に供給し、
蓄電池Aが放電限界になると蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの出力に切り換えて前記インバータに供給し、前記インバータが継続して交流を前記電子機器に供給することを特徴とする無停電電源装置の制御方法。
【請求項10】
蓄電池Bと、蓄電池Bに比べて容量が小さく蓄電池Bと、前記入力電源を直流に変換して蓄電池Bを充電させる充電器Bと、前記入力電源を直流に変換し充電器Bより短時間で蓄電池Aを充電させる充電器Aと、直流を交流に変換して変換した交流を前記電子機器に供給するインバータと、蓄電池Aと前記インバータとを断続する開閉器Aと、蓄電池Bと前記インバータとを断続する開閉器Bとを有し、交流の入力電源が停止したときに入力電源に代わって電子機器に交流を供給する無停電電源装置の制御方法であって、
入力電源が停止すると開閉器Aを接続状態として蓄電池Aの直流出力をインバータに供給し、蓄電池Aが放電限界になると開閉器Aを切断状態にするとともに開閉器Bを接続状態として蓄電池Aの直流出力を蓄電池Bの直流出力に切り換えて前記インバータに供給することを特徴とする無停電電源装置の制御方法。
【請求項11】
前記無停電電源装置は、前記入力電源が復電すると前記蓄電池Aを先に充電し、前記蓄電池Aの充電が完了した後に前記蓄電池Bの充電を開始することを特徴とする請求項9又は10の無停電電源装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−211860(P2008−211860A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43501(P2007−43501)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】