説明

無機物表面の被覆、粘着接着及び接合方法

疎水性のポリウレタン樹脂又は疎水性のエポキシ樹脂から選ばれた2成分のプラスチック樹脂を無機質材料の表面に施与するか又は前記プラスチック樹脂により前記無機材料の複数の表面を結合し、前記プラスチック樹脂を硬化させることにより、前記プラスチック樹脂で無機質材料の表面を被覆、粘着接合、又は結合する方法であって、
前記プラスチック樹脂は化学式(I)で示され、
【化1】


(ここで、
Xは、互いに独立してOH、CH、O[CHCH
Yは、[CH 、[CHNH[CH
R、R’は、H、[CHCH
tは、0−10;
nは、1−3;
pは、0−5;
mは、4−n;
r 、sは、互いに独立して1−10である。)
一種以上のヒドロキシ−又はアルコキシアミノシラン化合物を0.01から10質量%含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物表面をプラスチック樹脂、好ましくは2成分プラスチック樹脂で、被覆、粘着接合、又は結合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土手、特に傾斜面の強化は、水の流れを調整するために度々必要となる。新しく構築した場合、及び特に水路やあぜを修復した場合に、土手領域は一般に強化されなければならない。
【0003】
現在まで、砂利と高品質のコンクリートの混合物を予め作製しておき、そのような修復のために、使用する場所に配置している。しかし、この方法では、敷地の土手のダメージを受けた領域の修復はできない。更に、一般に混合物は非常に重い。コンクリートの更なる不利な点として、弾性と多孔性の欠如である。この結果、コンクリートはストレスに耐えることができず、これらの混合物は簡単にばらばらになってしまう。
【0004】
敷地の土手のダメージを受けた領域の修復の一つの可能性は、硬化するタールの配合処方又は液体コンクリート又は液体モルタルを用いることから成る。これらは、傾斜面の砂利に施与され、砂利は強化される。この方法により、傾斜面の強化は所定の時間で為し得る。しかし、フェノール樹脂又は他の環境的に有害な化合物が所定の時間内でタールから放出されるという特に生態学的な不利益がある。
【0005】
無機物成分と造型(モールド)を作り、そして岩石層を強化するためにポリウレタンを用いることは特に鉱業の分野で同様に知られている。この方法の一つの実施の形態は、造型(モールド)の中に岩石、好ましくは砂利を入れてモールディングを作り、それにポリウレタン出発成分の液体反応混合物を施与する。硬化後に形成されたモールディングは、傾斜面に配置されることとなる。
【0006】
特許文献1に方法が述べられている。第1工程では、2成分のプラスチックの出発成分が混合装置で石と混ぜられる。そして、第2工程で、この混合物が強化すべき斜面の部分又は少なくとも部分的に流水の中に存在する構造物、例えば支持及び構造上の素子に施与され、又はプラスチックが硬化する造型(モールド)の中に導入される。使用される樹脂は、綿密な疎水性のポリウレタンであり、これはポリイソシアネートをポリオール成分と反応させることで得ることができる。ポリオール成分は、油脂化学で知られているポリオールとフェノール改質芳香族炭化水素樹脂、好ましくはフェノール改質クマロンインデン樹脂を有する。
【0007】
この方法の欠点は、低い表面張力と低い水分吸収率を有するある種の石だけが粘着接合できることである。例えば、玄武岩又は石灰岩である。花崗岩のような高い表面張力と高い水分吸収率を有する石は、粘着接合できない。
【0008】
特許文献2には、土手、山腹、斜面又は建造物を強化し、エポキシ樹脂及び遊離した無機質分子を含む合成物で安全にすることが記載されている。このように、第1工程では、エポキシ樹脂を始めとする液体が混合装置内で無機質分子と混合され得る。第2工程では、この混合物が強化されるべき土手、又は少なくとも一部分が流水の中に存在する支持及び構造上の素子である構造物に施与され得る。更に、この文献は、無機質分子とエポキシ樹脂の混合物は、造型(モールド)の中に導入されエポキシ樹脂は硬化され得ることを示している。得られたモールディングは、強化されるべき土手、又は少なくとも一部分が流水の中に存在する支持及び構造上の素子である構造物に配置される。樹脂及び無機質分子を含む混合物の水中での硬化は記載されていない。
【0009】
構造物の外壁は経年劣化を受ける。環境の影響だけではなく、落書きのようなダメージによっても建物は時間が経過するうちにみすぼらしくなる。建物正面の清掃、記念館の管理、及び自然石の回復の領域では、影響を受けやすい基質上の不純物は、度々取り除かれなければならない。広範囲の場合は、水の噴射、しかし好ましくは砂吹きにより為される。更なる表面の急速な汚染の発生を避けるために、表面を砂吹きの後にシールすることができる。
【0010】
特許文献3には、最初に表面から汚染を、好ましくは水の噴射又は特には砂吹きによって取り除き,表面に脂肪族ポリイソシアネートをベースとした綿密な疎水性のポリウレタンを施与する方法が記載されている。使用したポリウレタンの疎水性は、油脂化学で知られている水酸基成分をポリウレタン系のポリオール成分に加えることで生じる。好ましくは、上記の成分は、フェノール改質芳香族炭化水素樹脂、特にはクマロンインデン樹脂を含む。更に、ポリウレタン系は、例えばアミン触媒、又は例えばスズ、亜鉛、ビスマスをベースとした金属触媒といった硬化のための触媒を要する。
【0011】
この方法の不利な点は、脂肪族ポリイソシアネートをベースとしたポリウレタン樹脂は、低い強度と機械的な安定性がないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO 2006/134136
【特許文献2】WO2006/134147
【特許文献3】WO2007/104659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、プラスチック樹脂、好ましくは疎水性のポリウレタン樹脂と疎水性のエポキシ樹脂から選ばれた2成分のプラスチック樹脂で、無機質材料の表面を被覆、粘着接合又は結合する方法を提供することにある。このプラスチック樹脂は、無機質材料の表面又は結合表面に施与され、プラスチック樹脂は硬化される。ここで硬化は水面下においても完全に為される。特に、全ての種類の無機物、すなわち例えば花崗岩のような高い表面張力と水分吸収率を有するそれらに適する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、疎水性のポリウレタン樹脂と疎水性のエポキシ樹脂から選ばれた2成分のプラスチック樹脂で無機質材料の表面を被覆、粘着接合、又は結合する方法により達成される。ここで、プラスチック樹脂は、無機質材料の表面又は接合表面に施与され、プラスチック樹脂は硬化される。プラスチック樹脂は、化学式(I)で示され、一種以上のヒドロキシ−又はアルコキシアミノシラン化合物を0.01〜10質量%有する。
【0015】
【化1】

【0016】
ここで、
Xは、互いに独立してOH、CH3、O[CH2pCH3
Yは、[CH2t 、[CH2rNH[CH2s
R、R’は、H、[CH2tCH3
tは、0−10;
nは、1−3;
pは、0−5;
mは、4−n;
r 、sは、互いに独立して1−10である。
【0017】
一般に、アルコキシアミノシラン化合物(I)は、トリヒドロキシ、ジアルコキシ、又はトリアルコキシアミノシラン化合物である。好ましいアルコキシラジカルXは、メトキシ及びエトキシである。アミノ基は、イソシアネート基と反応するアミノ基、すなわち第1又は第2のアミノ基でなければならない。好ましいアルキルラジカルRは、ヒドロジン、メチル及びエチルである。
【0018】
アルコキシアミノシラン化合物(I)は、好ましくは、トリヒドロキシアミノシラン化合物、又はトリアルコキシアミノシラン化合物であり、化学式(I)においてXはOH又はO[CH2pCH3及びpは0又は1である。
【0019】
更に、アルコキシアミノシラン化合物(I)は、好ましくは、アルコキシジアミノシラン化合物であり、化学式(I)において、Yは[CH23NH[CH2s であり、r 、sは1又は2で同一又は異なる。例えば、[CH23NH[CH22、[CH22NH[CH22、[CH2]NH[CH2]、[CH23NH[CH23、[CH2CH(CH3)CH2]NH[CH22、及び[CH22NH[CH23である。
【0020】
特には、アルコキシアミノシラン化合物(I)は、トリアルコキシジアミノシラン化合物であり、化学式(I)において、XはO[CH2pCH3、pは0又は1であり、Yは[CH2rNH[CH2s 、r 、s は同一又は異なり、1又は2である。
【0021】
特に好ましいアルコキシアミノシラン化合物(I)は、3−トリエトキシルプロプルアミン、N−(3−トリヒドロキシルプロピル)エチレンジアミン、N−(3−トリメトキシルプロピル)エチレンジアミン及びN−(3−メチルジメトキシメチシル−2−メチルプロピル)エチレンジアミンである。
【0022】
2成分プラスチックは液体出発成分から調製され、固体プラスチックを得るため硬化される。好ましくは、プラスチックは綿密、すなわち事実上空孔を有さないことである。発泡プラスチックと比較すると、綿密なプラスチックはより高い機械的安定性により区別される。プラスチックの内部に気泡が発生し得るが一般に重大な問題ではない。しかし、できる限り最少にしなければならない。
【0023】
更に、プラスチックは疎水性である。結果として、プラスチックの水による劣化は抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の実施の形態では、2成分プラスチック樹脂はポリエレタン樹脂であり、ポリイソシアネート成分(i)をポリオール成分(ii)と混合することにより得られる。一般に、アルコキシアミノシラン化合物はポリオール成分(ii)中に存在する。
【0025】
ポリウレタン樹脂におけるアルコキシアミノシラン化合物(I)の含有量は、0.05から80質量%であり、好ましくは0.075から10質量%、特に好ましくは0.01から0.2質量%である。
【0026】
一般に、アルコキシアミノシラン化合物(I)は、無機物の親水性の表面に疎水性の樹脂を結合させる。無機物表面への結合は、アルコキシアミノシランの加水分解によって形成されるシラノ基により生じる。樹脂への結合は、アルコキシアミノシランの反応性アミノ基によって生じる。
【0027】
ポリウレタンの合成成分は、遊離イソシアネート基を有する化合物(ポリイソシアネート(i))及びイソシアネート基と反応する基を有する化合物である。後者は、また後述するようにポリオール成分(ii)として言及される。イソシアネート基と反応する基は、特にヒドロキシル基又はアミノ基である。アミノ基は非常に反応性であり、それゆえ反応混合を急速に為さなければならないので、ヒドロキシル基が好まれる。
【0028】
使用できるポリイソシアネート(i)は、それらのポリイソシアネートの全部、混合物、及び室温で液体である少なくとも2つのイソシアネート基を有するプレポリマである。発明の実施の形態では、芳香族ポリイソシアネート、好ましくはトルエン ジイソシアネート(TDI)とジフェニルメチレン ジイソシアネート(MDI)の異性体、特に好ましくはMDIとポリフェニレンポリメチレン ポリイソシアネート(原料MDI)の混合物が使用される。ポリイソシアネートは、例えば、イソシアヌレート基と結合すること、特にウレタン基と結合することによって変質することができる。最後に述べた化合物は、ポリイソシアネートを少なくとも2つの活性水素原子を有する化合物の化学量論的量以下の量で反応させることで調製できる。そして、通常NCOプリポリマと言及される。これらのNCO含有量は、一般に2から29質量%の範囲である。
【0029】
更なる実施の形態では、脂肪族ポリイソシアネートが使用される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。脂肪族ポリイソシアネートの高い揮発性のために、それらは一般に反応生成物、特にビウレット、アロファネート又はイソシアヌレートの形で使用される。
【0030】
ポリオール成分(ii)は、イソシアネート基と反応する少なくとも2つの水素原子を持つ非常に一般的な化合物を有する。これらは、多官能性のアルコール(ポリオール)又はより好ましくないが多官能性のアミンである。
【0031】
本発明の方法においては、使用した綿密なポリウレタンは、疎水性の最終物を有するものである。疎水性は、ポリオール成分(ii)の油脂化学で知られているヒドロキシ基により達成できる。
【0032】
好ましい実施の形態では、ポリウレタンのポリオール成分(ii)は、油脂化学で知られる一種以上ポリオールを有する。油脂化学で知られるそのようなポリオールは、動物又は野菜の油脂から得ることができる。
【0033】
油脂化学で知られているヒドロキシ基成分は多く存在する。そして、それらは油脂化学で知られているポリオールとして使用することができる。例えば、ヒマシ油、ブドウ種油のようなヒドロキシル基で改質した油、黒ヒメウイキョウ油、かぼちゃ種油、ルリヂサ種油、大豆油、小麦胚油、西洋油菜油、ひまわり油、ピーナッツ油、杏種油、ピスタチオ実油、アーモンド油、オリーブ油、マカダミア実油、アボガド油、海クロウメモドキ油、ゴマ油、ハシバミ実油、サクラソウ油、野バラ油、大麻油、ベニバナ油、クルミ油、ヒドロキシル基で改質され、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、スレアリドン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、及びセルボニック酸に基礎を置く脂肪酸エステルである。
【0034】
油脂化学で知られる更に好ましく使用するポリオール基は、エポキシ化脂肪酸エステルをアルコールと同時反応させて、適切であれば引き続いてエスエル交換反応により開環させて得ることができる。ヒドロキシル基と油及び脂肪の結合は、これらの生成物で存在するオレフィン二重結合のエポキシ化により、そして続くエポキシド基の一価又は多価アルコールとの反応により主に為し遂げられる。エポキシド環は、ヒドロキシル基、又は多官能アルコールの場合には多数のOH基を有する構造に変換される。油と脂肪は、一般にグリセリルエステルであるため、上述した反応中に並列型のエステル変換反応も生じる。好ましく得られた化合物は、500から1500g/モルの範囲の分子量を有する。そのような生成物は例えば、ヘンケルから手に入る。
【0035】
ポリオール成分は好ましくは、少なくとも50質量%、特に少なくとも75質量%の油脂化学で知られているポリオールを有する。
【0036】
特に好ましい実施の形態では、ポリオール成分(ii)は、油脂化学で知られているポリオールに加えて、少なくとも一つのフェノール変性芳香族炭化水素樹脂、特にはクマロンインデン樹脂をも含む。これらのポリウレタン及びそれらの合成物は非常に高い疎水性を有している。
【0037】
好ましく使用される末端フェニル基を有するフェノール変質芳香族炭化水素は、クマロンインデン樹脂である。特に好ましくは、芳香族炭化水素樹脂の工業的な混合物であり、特には実質的な成分として、化学式(II)で示される化合物を含むものである。
【0038】
【化2】

【0039】
ここで、nは2〜28である。そのような、生産物は商業的に利用可能であり、例えば、商標名NOVARES(登録商標)で Ruetgers VFT AGにより提供されている。
【0040】
フェノール変質芳香族炭化水素樹脂は、特には、フェノール変質クマロンインデン樹脂で、一般にOH成分を0.5から5.0質量%有している。
【0041】
油脂化学で知られているポリオールとフェノール変質芳香族炭化水素樹脂、特にクマロンインデン樹脂は、好ましくは重量比で100:1から100:50の範囲で使用される。
【0042】
上記の化合物と共に、ポリオール成分(ii)は、少なくとも2個の活性水素原子を有する更なる化合物を含む。加水分解に対する高い安定性のゆえに、ポリエーテルアルコールが好ましい。これらは、一般にアルキレノキシドをH官能開始剤と付加的に反応させる常套で周知の方法で調製される。付随して使用されるポリエーテルアルコールは好ましくは少なくとも3官能基を有し、そして少なくとも400mg KOH/g のヒドロキシル価を、好ましくは少なくとも600mg KOH/g 、特別には400から1000mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する。これらの調整は、少なくとも3官能基開始剤とアルキレノキシドを反応させる通常ルートで為される。少なくとも3つのヒドロキシル基を分子の中に持つアルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール又はスクロースは、開始剤として好ましく使用できる。使用するアルキレンオキシドは、好ましくはプロピレンオキシドである。
【0043】
ポリイソシアネート化合物(i)及びポリオール成分(ii)は、例えば触媒、通常の補助剤、添加物等の通常の成分を含んでも良い。特に、例えばゼオライト等の乾燥剤は、成分中に水が豊富に含まれないように、そしてポリウレタンを形成するように反応混合物に添加されるべきである。これらの物質の添加は、好ましくはポリオール成分(ii)に為されることである。複合材料の長期にわたる安定性の改良のために、微生物による攻撃を避ける物質を添加することは更に利点である。更に、UV安定剤又は顔料を添加することは、モールディングの脆化を避けるのに有利である。
【0044】
使用するポリウレタンは、原理的に触媒なしで調製することが可能である。触媒は、硬化の改善のために付随的に用いることができる。選択される触媒は、反応時間ができるだけ長くなるようなものが好ましい。結果として、反応混合物は液体中に長い時間残ることが可能である。前述したように、原理的に触媒なしで完全に作用することは可能である。
【0045】
ポリイソシアネート化合物(i)は、ポリオール成分(ii)と、イソシアネート基と反応するポリオール成分のそれらの基よりもイソシアネート基の化学量論的過剰が少なくとも5%、好ましくは5から60%となるように反応する。
【0046】
疎水性のポリウレタンは、特に良好な加工性で区別される。このように、これらのポリウレタンは、濡れた岩、特に花崗岩砂利のような水分のある基質に対して特に良好な粘着性を示す。ポリウレタンは水分が存在していても硬化することで綿密な生産物を提供する。使用した綿密なポリウレタンは、薄膜層内でも完全に綿密な硬化性を示す。
【0047】
ポリウレタン、好ましくは上述した芳香族ポリイソシアネートをベースとしたものは、特にダムや土手等の斜面の強化に最適である。岩とポリウレタンの結合は非常に強い。更に、強い疎水性のポリウレタンを使用しているので、ポリウレタンの親水性の劣化は事実上起こり得ない。そして、それ故、本発明の方法による斜面の強化は非常に長い耐久性を有する。
【0048】
表面の被覆に用いられるポリウレタンは、表面、特に建物の正面の美観を損ねることを避けるため綿密で透明である。同様の理由で、この目的のために脂肪族ポリイソシアネートをベースとしたポリウレタンが好ましく使用される。芳香族ポリイソシアネートをベースとしたポリウレタンに比して、時間の経過で黄色にならないためである。
【0049】
発明の他の実施の形態では、2成分プラスチック樹脂は、エポキシ基を有する疎水性の成分(i)と硬化成分(ii)を混合させて得られるエポキシ樹脂である。一般に、硬化成分(ii)には、アルコキシアミノシラン化合物が存在する。
【0050】
アルコキシアミノシラン化合物(I)のエポキシ樹脂内の含有量は、0.05から10質量%、好ましくは0.075から1質量%、特に好ましくは0.1から0.5質量%である。
【0051】
好ましく使用するエポキシ基を有する化合物は、少なくとも2つのエポキシ基を有し、室温で液体である化合物である。エポキシ基を有する異なる化合物の混合物を使用することも可能である。好ましくは、これらの化合物は疎水性、又は疎水性であるエポキシ基を有する少なくとも一つの化合物の混合物である。そのような疎水性化合物は、例えば、ビスフェノールAの凝縮反応、又はエピクロルヒドリンとビスフェノールAの凝縮反応によって得られる。これらの化合物は、個々に、又は混合物として使用できる。
【0052】
実施の形態では、エポキシ基を含む上述の疎水性化合物と、エポキシ基を含む自己乳化親水性化合物との混合物を使用している。これらの親水性化合物は、エポキシ基を有する化合物の主鎖に親水性の基を導入することによって得られる。そのような化合物及び調製方法は、例えば、JP−A−7−206982及びJP−A−7−304853に開示されている。
【0053】
エポキシ基を有する化合物の単一重合を促進させる化合物、又はエポキシ基又は2次ヒドロキシル基、例えば、ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、カルボン酸無水酸とメラミンフォルムアルデヒド、ウレアホルムアルデヒドとフェニルフォルムアルデヒド添加物と共有結合反応を受ける化合物は、硬化剤として作用する。ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン又はキシルレンジアミンのような第1又は第2アミノ基を有する化合物を、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソブチルメチルケトンのようなカルボニル化合物、脂肪族、脂環族及び芳香族ポリアミン化合物、及びポリアミド化合物と反応させることにより得ることができるケチミンは、好ましく使用される。ケチミン又はケチミンを有する等価な混合物は、硬化剤として特に好ましく使用される。
【0054】
エポキシ基に対する硬化剤の反応基の比率は、好ましくは0.7:1から1.5:1、特に好ましくは1.1:1から1.4:1である。
【0055】
更に、溶媒、反応性希釈剤、フィラー及び顔料等の更なる添加物を、エポキシ基と硬化剤を有する化合物にエポキシ樹脂を加えて調製する間に、加えることも可能である。そのような添加物は、当業者にとって自明である。
【0056】
本発明の方法の好ましい使用分野を以下に述べる。
【0057】
本発明の方法によれば、石のような動きの自由な鉱物粒子は、結合して複合物とすることができる。2成分プラスチックの液体プラスチック又は液体開始成分は、石と混ぜられる。そして、第2工程で、この混合物は、強化すべき斜面の部分又は少なくとも部分的に流水の中に存在する構造物、例えば支持及び構造上の素子に施与され、又は混合物は造型(モールド)導入されプラスチックが硬化される。
【0058】
プラスチックと動きの自由な石を含む複合物は、以下の工程により調製できる。
a)動きの自由な石を混合機内でプラスチック開始成分に混ぜる、
b)混合機からこの混合物を取り出す、
c)プラスチックを硬化(硬化)させる。
【0059】
動きの自由な石は、好ましくは砂利、特に好ましくは花崗岩の砂利である。石は大きさが1から50cm、好ましくは1から20cm、特に好ましくは2から15cmである。特別には、2.5から6.5cmである。
【0060】
動きの自由な石をプラスチックの開始成分に混ぜる混合機は、プラスチックの液体開始成分で石が完全に濡らされれば全ての型のものが使用できる。例えば、ドラムのような内部に設けられるオープンコンテナを持つ混合機は特に適する。混合のために、ドラムが回転し得るか、内部が移動する。
【0061】
そのような混合機は、例えば、コンクリート混合物を製造する建設工業の分野で知られ、使用されている。
【0062】
本発明の方法の実施の形態では、石のプラスチック開始成分との混合は絶え間なく行われる。このため、石とプラスチックの液体開始成分は、混合機に絶え間なく導入され、連続して濡らされた石が取り出される。この方法では、混合機の出発材料は石が十分に濡れるまで混合機に残っていなければならない。混合機は、プラスチックの液体出発成分に濡らされた石が、強化のために必要な量だけ混合機から取り出されたら、強化すべき部分領域に沿って移動できることが利点である。連続的な混合装置を静止させた状態で操作し、混合機から取り出した濡れた石を所望の場所に移送することも可能である。
【0063】
本発明の方法の連続的な構成の他の実施の形態では、混合は石が連続的に導入される回転ドラムにより為されても良い。このドラムはノズルを備え、石に連続的にプラスチックの開始成分を噴射する。ここで、ドラムの回転は、プラスチックと石の完全な混合を保証する。プラスチック/石の複合物は、ドラムの端部の開口から連続して取り出される。回転ドラムは、排出物を移送するために水平、又は様々な角度に傾けられている。
【0064】
連続的な方法の他の実施の形態では、石の移送はトンネルを介して駆動されるベルトコンベアによって連続的に為されても良い。トンネルは開口部を有しており、この開口から石の上にプラスチックの開始材料が放出される。ベルトコンベアの終端では、石が混合ドラムの開口に落とし込まれる。ドラムは、混合物を調製された移送速度で放出する。
【0065】
複合物に含まれる層の厚さは、少なくとも10cmである。何故なら、厚さが薄いと機械的な安定性が不十分であるからである。最大の厚さは、局所的な環境に依存するが、例えば5mまでである。
【0066】
モールディングの調製では、動きの自由な石と液体開始成分が混合される。混合した後に、上部が開口された造型(モールド)に流し込まれプラスチックが硬化される。複合体は、土手に適用されるように変形される。
【0067】
混合時間は少なくとも石が完全に液体混合物で濡れるだけの時間であり、プラスチックが未だ硬化しない長さである。
【0068】
石の表面に不純物が除去可能に粘着している石も使用可能である。混合工程での機械的なストレスにより、これらの不純物は石の表面から取り除かれ、もはや石同志の粘着に影響を及ぼさない。
【0069】
本発明の方法の好ましい実施の形態では、モールディングの表面に砂を用いることができる。表面に砂を粘着させるために、砂の施与は、プラスチックが完全に硬化する前に行うべきである。どのような砂でも使用できる。そのような砂は、自然の砂、水砕スラグ、又は粉砕スラグのような合成砂である。好ましい実施の形態では、石英砂が使用される。
【0070】
砂による粗い表面は、適用されたモールディング上に植物やコケ等の生命を促進することとなる。これは、例えばモールディングが自然保護地域に適用された場合には利点となる。
【0071】
石とプラスチックの比率は、少なくとも複合体の十分な強度が保証されるように選ばれる。正確な量は、例えば、無機質材料の大きさ、それぞれの土手部分におけるモールディングの厚さ、ストレスに依存する。
【0072】
本発明の方法は、少なくとも部分的に流水に存在する構造物の浸食からの保護に更に利用することができる。これは、水の流体の局所的な深化作用から理解される。特に川床では、一般にここでは狭いストレッチで強力な水流がある。そして、橋の支持体の部分で度々滞留と引き続く所謂逆流である渦流によるシャープな勾配により土台が攻撃される。同じ効果は、例えば、支持体又は橋脚の場合は、水橋及び/又は浮橋、浮、固定桟橋、桟橋又は乾ドックのような港設備に見られる。岸壁設備の場合は、ボートハウス、土手壁、掘削プラットフォーム、風力エネルギ設備、海洋ナビゲーション設備、灯台又は測定設備のような沖合設備、水力発電所、トンネル又は坑システムに見られる。
【0073】
水力エネルギを吸収することができる複合体のオープンギャップシステムは、このように波のエネルギ又は流れのエネルギを弱め、表面の浸食を実質的に止めるように作用するので、構造物へのダメージが回避され支持体及び構造上の要素の負荷容量が増加する。
【0074】
無機質材料は、第1工程で表面が洗浄化され、第2工程で2成分プラスチックにより被覆された構造物の壁である。
【0075】
表面は、最初にウォータジェット、特にはサンドブラストにより汚れが取り除かれ、それから本発明の疎水性ポリウレタン又はエポキシ樹脂が表面に施与される。
【0076】
脂肪族ポリイソシアネートをベースとした透明で綿密なポリウレタンが好ましく使用される。
【0077】
ポリウレタンの表面への施与は、通常の知られている方法で為し得る。好ましくはスプレー法である。ポリウレタン層の厚さは、好ましくは0.5mmから1cm、特には0.5cmから3mmである。
【0078】
発明に係る樹脂は、無機質表面に対してより良い濡れ性とより良い粘着性によって識別される。特に、花崗岩のように高い表面張力を有する材料表面も濡らされる。樹脂は無機質表面の水分には無感覚である。更に、添加触媒があることは、硬化に絶対必要なことではない。
【0079】
無機質材料は、構造物、ダム、及び堤防の一部分であり、それらに存在するクラックや空洞は2成分プラスチック樹脂により埋められる。
【0080】
例えば、本発明の方法はダムや堤防の安定化に用いることができ、ダムや堤防に存在する亀裂及び空洞は疎水性のポリウレタンにより埋められる。
【0081】
疎水性のポリウレタンは好ましくは綿密なポリウレタンである。しかし、200から1000kg/m3の範囲の密度を有する疎水性のポリウレタンフォームを用いることも可能である。より高密度の場合、フォームの機械的な安定性がもはや保証されない。
【0082】
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又は、それらの例えばウレトジオン又はイソシアヌレート基との結合により反応生成物は、ポリイソシアネート成分(i)として使用できる。しかし、芳香族ポリイソシアネートが好ましく使用される。特に好ましくは、トルエンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)のイソマーである。特に、MDIとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(原料MDI)の混合物である。ポリイソシアネートは、例えばイソシアヌレート基、特にはウレタン基との結合により変質される。最後に述べた化合物は、ポリイソシアネートを少なくとも2つの活性水素原子を有する化合物の化学量論的量以下の量で反応させることで調製できる。そして、通常NCOプリポリマと言及される。これらのNCO含有量は、一般に2から29質量%の範囲である。
【0083】
ダムや堤防のリフォームのために、ポリウレタンの液体開始成分、すなわちポリイソシアネート成分(i)とポリオール成分(ii)がダメージを受けた領域に施与され、ポリウレタンを生成するよう硬化される。
【0084】
表面のダメージには、ポリウレタンの液体開始成分が必要量に応じて、ミキシングヘッド又はスプレイガンにより手動で施与される。ダムや堤防の内部の空洞を埋めるために、ポリウレタンの液体開始成分が堤防の内部に、例えばミキシングヘッド及びランスにより導入される。
【0085】
以下の実施例により発明がより詳細に説明される。
【0086】
(実施例)
ポリオール:油脂化学で知られ、ヒマシ油をベースとするヒドロキシル基、ヒマシ油とケトンフォルムアルデヒド樹脂との反応生成物、OH数170
イソシアネート:高分子ジイソシアナートジフェニルメタン(PMDI)
添加物1:シリコン消泡剤
添加物2:N-(3-(トリメトキシリル)プロピル)エチレンジアミン
【0087】
(比較例)
ポリオール重量93部、ゼオライト乾燥剤重量6.95部、ヒマシ油50%濃度、添加物1の0.05重量部を混合しポリオール成分を得る。この準備したポリオール成分にイソシアネート重量83.7部を加え、完全に混合した。ショアD、破断伸び、引張強度、及びガラス転移温度Tgを解析するため、混合物から2mmのシートが製作された。更に、ポリウレタン樹脂から玄武岩砂利を有する複合体を製作した。この目的のため、玄武岩砂利が15cm×15cm×15cmのサイズの開口造型(モールド)に導入された。成分の液体混合物が、ウォータガンによって玄武岩砂利の上に均一に散布された。非常に長い反応時間を有する液体反応混合物は、岩を濡らし砂利の全体に浸み込んだ。綿密なポリウレタンは気泡なしに効果され、花崗岩砂利に強い結合力を与えた。測定結果は表に集約されている。
【0088】
(発明に係る実施例)
ポリオール重量93部、ゼオライト乾燥剤重量6.85部、ヒマシ油50%濃度、添加物1の0.05重量部を混合しポリオール成分を得る。この混合物に添加物2の0.1重量部を加え、ポリオール成分が完成した。この調製したポリオール成分にイソシアネートを重量83.7部加え、完全に混合された。ショアD、破断伸び、引張強度、及びガラス転移温度Tgを解析するため、混合物から2mmのシートが製作された。更に、ポリウレタン樹脂から玄武岩砂利を有する複合体を製作した。この目的のため、玄武岩砂利が15cm×15cm×15cmのサイズの開口造型(モールド)に導入された。成分の液体混合物が、ウォータガンによって玄武岩砂利の上に均一に散布された。非常に長い反応時間を有する液体反応混合物は、岩を濡らし砂利の全体に浸み込んだ。綿密なポリウレタンは気泡なしに効果され、花崗岩砂利に強い結合力を与えた。測定結果は表に集約されている。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性のポリウレタン樹脂又は疎水性のエポキシ樹脂から選ばれた2成分のプラスチック樹脂を無機質材料の表面に施与するか又は前記プラスチック樹脂により前記無機材料の複数の表面を結合し、前記プラスチック樹脂を硬化させることにより、前記プラスチック樹脂で無機質材料の表面を被覆、粘着接合、又は結合する方法であって、
前記プラスチック樹脂は化学式(I)で示され、
【化1】

(ここで、
Xは、互いに独立してOH、CH3、O[CH2pCH3
Yは、[CH2t 、[CH2rNH[CH2s
R、R’は、H、[CH2tCH3
tは、0−10;
nは、1−3;
pは、0−5;
mは、4−n;
r 、sは、互いに独立して1−10である。)
一種以上のヒドロキシ−又はアルコキシアミノシラン化合物を0.01から10質量%含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アルコキシアミノシラン化合物(I)は、トリヒドロキシアミノシラン化合物、又はトリアルコキシアミノシラン化合物であり、前記化学式(I)において、XはOH又はO[CH2pCH3及びpは0又は1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシアミノシラン化合物(I)は、アルコキシジアミノシラン化合物であり、化学式(I)において、Yは[CH2rNH[CH2s であり、r、s は同一又は異なり1又は2であることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の方法。
【請求項4】
ポリイソシアネート成分(i)をポリオール成分(ii)と混合することにより得られる前記2成分プラスチック樹脂は、ポリウレタン樹脂であり、前記アルコキシアミノシラン化合物は、前記ポリオール成分(ii)中に存在することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリウレタンのポリオール成分(ii)は、油脂化学で知られる一種以上のポリオールを含み、動物又は野菜の油脂から得られることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオール成分(ii)は、フェノール変質芳香族炭化水素樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2成分プラスチック樹脂は、エポキシド基を有する前記疎水性成分(i)と硬化成分(ii)とを混合することにより得られ、前記アルコキシアミノシラン化合物は前記硬化成分(ii)中に存在することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック樹脂は、水中で硬化することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記無機質材料は、粘着結合して複合体を生成する動きの自由な石であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記無機質材料は、第1工程で表面が清浄化され、第2工程で前記2成分プラスチックにより被覆される構造物の壁であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記無機質材料は、構造物、ダム及び堤防の一部分であり、それらに存在する亀裂及び空洞は前記2成分のプラスチック樹脂により埋められることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−505739(P2012−505739A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531475(P2011−531475)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063397
【国際公開番号】WO2010/043644
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】