説明

無段変速機

【課題】少ない駆動力で駆動プーリを作動させて駆動源の駆動損失を低減するものにおいて、製造性を向上すること。
【解決手段】駆動力発生装置(5)からの駆動力によって、駆動プーリ(2)と従動プーリとの間に掛け渡された無端ベルト(4)の各プーリに対する巻き付け半径を可変する無段変速機(1)であって、梃子の原理を利用して駆動力発生装置(5)からの駆動力を増幅して駆動プーリ(2)に伝達し、無端ベルト(4)が巻き付けられたプーリ溝(13)の溝幅を可変する駆動力伝達機構(6)を備え、駆動力伝達機構(6)が、駆動プーリ(2)が取り付けられた回転軸(7)に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式の無段変速機に関し、特に油圧によって変速比が可変される無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機として、V字の溝部が形成された駆動プーリと従動プーリとに無端ベルトが掛け渡したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような無段変速機は、駆動プーリ及び従動プーリのV字状の溝幅が変わることで各プーリに対する無端ベルトの巻き掛け半径が変化し、ロー状態からオーバードライブ状態まで無段階で変速される。無段変速機では、駆動源からの駆動力によって駆動プーリの溝幅が調整され、この駆動プーリの溝幅の調整によって無端ベルトを介して従動プーリの溝幅も調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−96279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無段変速機においては、駆動プーリの溝幅を調整するために、駆動源から比較的大きな駆動力が要求される。この場合、特許文献1に記載の無段変速機のように、梃子の原理を利用した駆動力伝達機構を介して、駆動源からの駆動力を駆動プーリに伝達する構成が考えられる。駆動力伝達機構では、エンジンケースにレバーが揺動可能に軸支され、レバーの一端でエンジンケースに固定された駆動源の出力端に当接され、レバーの他端で回転軸に取り付けられた駆動プーリに当接される。
【0005】
そして、レバーの揺動中心から一端までの長さと他端までの長さとを調整することで、駆動源からの駆動力を増幅して駆動プーリに伝達し、小さな駆動力で駆動プーリを駆動して駆動源の駆動損失を低減している。しかしながら、この駆動力伝達機構では、駆動源に比較的大きな駆動力が要求されないものの、エンジンケース等のケース類にレバー等の構成部品を組み付ける作業が増加する。このため、無段変速機の製造性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、少ない駆動力で駆動プーリを作動させて駆動源の駆動損失を低減するものにおいて、製造性を向上できる無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無段変速機は、駆動源からの駆動力によって、一対のプーリ間に掛け渡された無端ベルトの前記各プーリに対する巻き付け半径を可変する無段変速機であって、梃子の原理を利用して前記駆動源からの駆動力を増幅して前記プーリに伝達し、前記無端ベルトが巻き付けられたプーリ溝の溝幅を可変する駆動力伝達機構を備え、前記駆動力伝達機構が、前記プーリが取り付けられた回転軸に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、駆動源からの駆動力が、駆動力伝達機構によって梃子の原理を利用して増幅された後にプーリに伝達される。よって、少ない駆動力でプーリを作動させて駆動源の駆動損失を低減することができる。さらに、駆動力伝達機構がプーリと共に回転軸に取り付けられた状態で、一体的に無段変速機に組み込まれるため、組み付け作業を容易にして無段変速機の製造性を向上できる。
【0009】
また本発明の上記無段変速機において、前記駆動力伝達機構は、前記回転軸に固定されるハブと、前記ハブに対して、前記駆動源からの駆動力によって軸方向に移動する可動スリーブと、前記可動スリーブの移動によって前記駆動力を前記プーリに伝達するレバーとを備え、前記レバーは、前記回転軸と一体に回転する支点を中心に揺動し、当該支点から前記可動スリーブによって前記駆動力が入力される力点までの距離よりも、当該支点から前記プーリに対して前記駆動力を出力する作用点までの距離が短く形成されている。この構成によれば、可動スリーブに入力された駆動力が、レバーによって増幅されてプーリに伝達でき、簡易な構成により梃子の原理を利用した駆動力伝達機構を構成できる。
【0010】
また本発明の上記無段変速機において、前記駆動力伝達機構は、前記レバーを複数個備え、これらのレバーを前記回転軸の中心に対して放射状に配置している。この構成によれば、駆動力がプーリの周方向に分散して作用されるため、プーリの傾きを防止できる。また、複数のレバーにより駆動力を分散することで、1つ当たりのレバーが受ける反力を減少し、レバーを強度の低い安価な材料で形成できる。
【0011】
また本発明の上記無段変速機において、前記可動スリーブ及び前記ハブは互いに嵌合する凹部と凸部を備え、これら凹部と凸部が前記可動スリーブと前記ハブとの間に油圧室を形成しており、前記油圧室に作動油を供給する油路を前記回転軸内に形成している。この構成によれば、油圧室と油路の構造を簡素ができ、無段変速機の製造性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少ない駆動力で駆動プーリを作動させて駆動源の駆動損失を低減するものにおいて、無段変速機の製造性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る無段変速機の模式図である。
【図2】本実施の形態に係る無段変速機における駆動力伝達機構周辺の斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る無段変速機における駆動力伝達機構周辺の断面図である。
【図4】本実施の形態に係る動力伝達機構の駆動力の伝達動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る無段変速機1の模式図である。なお、本実施の形態に係る無段変速機1は、自動車だけでなく、自動二輪車、船舶等にも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、無段変速機1は、走行状況に応じてエンジン(内燃機関)の回転数とトルクを連続的に可変させるものであり、入力側の駆動プーリ2と出力側の従動プーリ3とに無端ベルト4を掛け渡して構成される。駆動プーリ2及び従動プーリ3は、それぞれ不図示の変速機ケースに軸支された入力側及び出力側の回転軸7、8に取り付けられている。駆動プーリ2は、回転軸7に固定された固定シーブ11と、回転軸7に軸方向に移動可能に取り付けられた可動シーブ12とを有している。
【0016】
固定シーブ11及び可動シーブ12は、対向面が傾斜して形成されており、対向面間にV字状のプーリ溝13を形成する。プーリ溝13の溝幅は、固定シーブ11に対して可動シーブ12が離反又は接近されることで可変される。また、駆動プーリ2は、駆動力発生装置(駆動源)5からの油圧によって、可動シーブ12に動力を伝達する駆動力伝達機構6を有している。駆動力伝達機構6は、詳細は後述するが、梃子の原理を利用して駆動力発生装置5からの油圧による駆動力を増幅して、可動シーブ12に伝達する。駆動力発生装置5は、油圧によって可動シーブ12を駆動するものであり、例えば、エンジンの動力の一部を使用して駆動されるオイルポンプ等で構成される。
【0017】
従動プーリ3は、回転軸8に固定された固定シーブ15と、回転軸8に軸方向に移動可能に取り付けられた可動シーブ16とを有している。固定シーブ15及び可動シーブ16は、対向面が傾斜して形成されており、対向面間にV字状のプーリ溝17を形成する。プーリ溝17の溝幅は、固定シーブ11に対して可動シーブ12が離反又は接近されることで可変される。駆動プーリ2及び従動プーリ3の各プーリ溝13、17には、無端ベルト4(Vベルト)が巻き掛けられている。
【0018】
このように構成された無段変速機1は、駆動プーリ2及び従動プーリ3に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が変化されることで変速比が連続的に変えられる。具体的には、駆動力発生装置5からの油圧によって駆動プーリ2のプーリ溝13の溝幅が狭められると、駆動プーリ2に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が大きくなる。そして、無端ベルト4が駆動プーリ2側に引き寄せられて、従動プーリ3のプーリ溝17の溝幅が広がって従動プーリ3に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が小さくなる。これにより、変速比が小さくなり、オーバードライブ状態に向けて連続的に変速される。
【0019】
また、駆動力発生装置5からの油圧が弱められると、リターンスプリング51(図3参照)によって駆動プーリ2のプーリ溝13の溝幅が広げられる。このとき、従動プーリ3に設けられた不図示のスプリング等によって従動プーリ3のプーリ溝17の溝幅が狭められて、無端ベルト4が従動プーリ3側に引き寄せられる。そして、駆動プーリ2に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が小さくなる一方で、従動プーリ3に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が大きくなる。これにより、変速比が大きくなり、ロー状態に向けて連続的に変速される。
【0020】
図2及び図3を参照して、無段変速機1の駆動力伝達機構6について説明する。図2は、本実施の形態に係る無段変速機1における駆動力伝達機構6周辺の斜視図である。図3は、本実施の形態に係る無段変速機1における駆動力伝達機構6周辺の断面図である。なお、図2では、説明の便宜上、無端ベルト4を省略している。
【0021】
図2及び図3に示すように、回転軸7の一端側には、無端ベルト4が巻き掛けられた駆動プーリ2が取り付けられている。駆動プーリ2の固定シーブ11は、回転軸7の一端部側に固定されている。駆動プーリ2の可動シーブ12は、固定シーブ11よりも駆動力伝達機構6寄りに、固定シーブ11に対して離反又は接近可能に回転軸7に取り付けられている。駆動プーリ2のプーリ溝13には、無端ベルト4が巻き掛けられており、無端ベルト4の側面が固定シーブ11及び可動シーブ12の対向する斜面に強く密着されている。
【0022】
回転軸7には、駆動プーリ2に隣接して、可動シーブ12に対して駆動力発生装置5からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構6が取り付けられている。駆動力伝達機構6は、回転軸7に固定されたハブ21と、駆動力発生装置5からの油圧によってハブ21に対して軸方向に移動する可動スリーブ31とを有している。可動スリーブ31は、梃子機構41を介して可動シーブ12に連結されている。駆動力伝達機構6は、駆動力発生装置5からの油圧によって可動スリーブ31を移動させ、この可動スリーブ31の駆動力を梃子機構41において増幅して、可動シーブ12に作用させている。
【0023】
ハブ21は、中心部に段付の貫通孔を備える円板状に形成されている。貫通孔の可動シーブ12側は、回転軸7が嵌合される嵌合孔部22となっており、嵌合孔部22の内周面23に環状の浅溝24が形成されている。この浅溝24には、回転軸7の外周面61と嵌合孔部22の内周面23とを液密に封止するOリング52が装着される。また、貫通孔の可動スリーブ31側は、嵌合孔部22よりも大径に形成されており、可動スリーブ31の環状凸部34(凸部)を収容する有底の収容孔部25となっている。ハブ21の可動スリーブ31側の端面28には、収容孔部25を囲うように環状溝部29が形成されており、この環状溝部29にリターンスプリング51が装着されている。ハブ21は、不図示のキー等によって回転軸7と一体に回転される。
【0024】
可動スリーブ31は、中央に貫通孔を備える円板部32と、貫通孔を囲うようにして円板部32からハブ21側に突出する環状凸部34とを有している。円板部32は、ハブ21よりも薄厚で大径に形成されている。可動スリーブ31の貫通孔は、回転軸7が嵌合される嵌合孔部33となっている。環状凸部34はハブ21の収容孔部25内(凹部)へ挿入される。環状凸部34の突出長は、収容孔部25の深さよりも短く形成されている。そして、環状凸部34の突出端面35、収容孔部25(凹部)の内周面26及び底面27、回転軸7の外周面61によって、可動スリーブ31を駆動させるための環状の油圧室53が形成される。
【0025】
環状凸部34の外周面36には、環状の浅溝37が形成されており、浅溝37には環状凸部34の外周面36と収容孔部25の内周面26とを液密に封止するDリング54が装着されている。また、嵌合孔部33の内周面38には、環状の浅溝39が形成されており、浅溝39には嵌合孔部33の内周面38と回転軸7の外周面61とを液密に封止するDリング55が装着されている。円板部32は、ハブ21の環状溝部29に装着されたリターンスプリング51によってハブ21側に引き付けられている。
【0026】
油圧室53には、回転軸7の内部に形成された油路62を介して作動油が供給される。油路62は、回転軸7の延在方向に沿って形成され、回転軸7に対して放射方向に設けられた複数の連通路63を介して油圧室53に連通される。可動スリーブ31は、油路62及び連通路63を介して油圧室53に駆動力発生装置5からの油圧が作用されることで、リターンスプリング51の引き付け力に抗して軸方向に移動される。すなわち、本実施の形態に係る駆動力伝達機構6では、可動スリーブ31がピストンとして動作し、ハブ21がシリンダとして動作する。
【0027】
可動スリーブ31及びハブ21は、回転軸7の外周面に設けられた一対のストッパ56、57によって抜け止めされる。可動スリーブ31側に位置するストッパ57は、可動スリーブ31の軸方向の移動範囲を規制している。また、可動スリーブ31は、不図示のキー等によって回転軸7と一体に回転される。
【0028】
梃子機構41は、回転軸7の中心に対して放射状に延在する複数(本実施の形態では4つ)のレバー42を有している。各レバー42の延在方向の途中部分は、ハブ21に立設された支持部43に対して、第1のピン46を介して揺動可能に連結されている。各レバー42の放射方向外側に位置する一端部は、円板部32の外周縁部に立設された支持部44に対して、第2のピン47を介して揺動可能に連結されている。各レバー42の放射方向内側に位置する他端部は、可動シーブ12に固定されたプレート45に対して、第3のピン48を介して揺動可能に連結されている。
【0029】
この場合、第1のピン46は、回転軸7に対してハブ21が固定されているため、レバー42の揺動中心となる支点として機能する。第2のピン47は、可動スリーブ31を介して駆動力発生装置5からの駆動力が入力される力点として機能する。第3のピン48は、プレート45を介して駆動力発生装置5からの駆動力を可動シーブ12に出力する作用点として機能する。また、第1のピン46と第2のピン47との距離は、第1のピン46と第3のピン48との距離よりも長く形成されている。したがって、レバー42は、第2のピン47を介して入力された駆動力を増幅して、第3のピン48を介して可動シーブ12に出力する。
【0030】
このように、無段変速機1のプーリ幅を油圧にて調整する場合に、梃子の原理を利用することによって、小さな油圧で無端ベルト4によるトルク伝達に必要なプーリ推力を得ることができる。したがって、駆動力発生装置5が、エンジンの一部の動力を使用するオイルポンプ等の場合には、エンジンの動力損失を小さくして燃料消費量を低減できる。また、駆動力伝達機構6は、駆動プーリ2と共に回転軸7に取り付けられる。このため、変速機ケースに対する組み付け性を向上できる。
【0031】
さらに、無段変速機1に対して梃子機構41が放射状に配置されるため、梃子機構41を介して駆動プーリ2に作用する駆動力が、駆動プーリ2の周方向に分散して作用される。よって、回転軸7に対する駆動プーリ2の傾きを防止でき、さらに1つ当たりのレバー42が受ける反力を減少させ、レバー42を強度の低い安価な材料で形成できる。
【0032】
図4を参照して、駆動力伝達機構6による駆動力の伝達動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る駆動力伝達機構6による駆動力の伝達動作の説明図である。
【0033】
図4Aに示すように、初期状態においては、リターンスプリング51によってハブ21に可動スリーブ31が引き付けられている。可動スリーブ31は、ハブ21の端面28に対して接触する前方位置P1に位置している。環状凸部34は、可動スリーブ31が前方位置P1にある場合に、ハブ21の収容孔部25の深い位置まで進入して油圧室53を狭めている。また、可動シーブ12は、可動スリーブ31が前方位置P1に位置することで、固定シーブ11から離間する離間位置P3に位置付けられている。このため、駆動プーリ2のプーリ溝13の溝幅が広げられ、駆動プーリ2に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が小さくなっている。
【0034】
この初期状態から駆動力発生装置5によって油圧室53内に作動油が供給されると、図4Bに示すように、油圧室53を押し広げるようにして駆動力伝達機構6が作動する。この場合、作動油は、駆動力発生装置5から回転軸7内の油路62及び連通路63を介して油圧室53内に供給される。油圧室53内に生じる油圧によって、リターンスプリング51の引き付け力に抗して可動スリーブ31が後方に押し出される。可動スリーブ31の押し出しによって、レバー42の力点に後向きの駆動力が作用し、支点を中心としてレバー42が揺動して可動シーブ12を固定シーブ11に近付ける。
【0035】
このとき、レバー42の力点に入力された駆動力は、支点から力点までの距離と支点から作用点までの距離との割合に応じて増幅される。したがって、小さな油圧により可動シーブ12を駆動させることが可能となっている。そして、可動スリーブ31が、ストッパ57に対して当接する後方位置P2に位置されることで、可動シーブ12が、固定シーブ11に接近する接近位置P4に位置付けられる。これにより、駆動プーリ2のプーリ溝13の溝幅が狭めされ、駆動プーリ2に対する無端ベルト4の巻き掛け半径が大きくなる。
【0036】
次に、この状態から油圧室53内の油圧が弱められると、油圧室53を狭めるように駆動力伝達機構6が作動する。この場合、可動スリーブ31は、リターンスプリング51の引き付け力によって前方に引き戻され、可動シーブ12は、可動スリーブ31の引き戻しによって固定シーブ11から離間される。そして、可動スリーブ31が前方位置P1に移動し、可動シーブ12が離間位置P3に移動することで初期状態に戻される。
【0037】
以上のように、本実施の形態に係る無段変速機1によれば、駆動力発生装置5からの駆動力が、駆動力伝達機構6によって梃子の原理を利用して増幅された後に駆動プーリ2に伝達される。よって、少ない駆動力で駆動プーリ2を作動させて駆動力発生装置5の駆動損失を低減することができる。さらに、駆動力伝達機構6が駆動プーリ2と共に回転軸7に取り付けられた状態で、一体的に無段変速機1に組み込まれるため、組み付け作業を容易として無段変速機1の製造性を向上できる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
例えば、本実施の形態に係る無段変速機は、入力側の回転軸に駆動力伝達機構を設ける構成としたが、この構成に限定されない。出力側の回転軸に設けられたプーリが、駆動プーリとして機能する場合には、出力側の回転軸に駆動力伝達機構を設けてもよい。さらに、入力側及び出力側の回転軸の両方に駆動力伝達機構を設けてもよい。
【0040】
また、本実施の形態に係る無段変速機は、駆動源としての駆動力発生装置からの油圧によって変速される構成としたが、この構成に限定されない。駆動力発生装置は、プーリに対して駆動力を発生させるものであればよく、オイルポンプに限らず、例えば電動モータ等でもよい。この場合、駆動力発生装置は、エンジンの動力の一部を利用するものに限られない。
【0041】
また、本実施の形態に係る無段変速機は、レバーの延在方向の途中部分に支点を設ける構成としたが、この構成に限定されない。レバーは、梃子として機能すればよく、例えば、延在方向の端部に支点を設ける構成としてもよい。
【0042】
また、本実施の形態に係るレバーは、ピンによって可動スリーブ、ハブ、可動シーブに連結されたが、この構成に限定されない。レバーは、可動スリーブからの駆動量を可動シーブに伝達可能な構成であればよく、可動スリーブ、ハブ、可動シーブに対する連結方法は限定されない。また、レバーの支点は、ハブに設けた支持部で支持される構成に限らず、回転軸に支持される構成としてもよい。
【0043】
また、本実施の形態に係る油圧室は、ハブに設けた収容孔部に対して可動スリーブの環状凸部を収容することで形成されたが、この構成に限られない。逆に、可動スリーブに収容孔部を設けて、ハブに環状凸部を設けて油圧室を形成してもよい。
【0044】
また、本実施の形態に係る無段変速機は、回転軸を中心として放射状に複数のレバーを配置したが、単一のレバーによって駆動力発生装置からの駆動力がプーリに伝達される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 無段変速機
2 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 無端ベルト
5 駆動力発生装置(駆動源)
6 駆動力伝達機構
7、8 回転軸
11、15 固定シーブ
12、16 可動シーブ
13、17 プーリ溝
21 ハブ
31 可動スリーブ
41 梃子機構
42 レバー
46 第1のピン
47 第2のピン
48 第3のピン
53 油圧室
62 油路
63 連通路(油路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力によって、一対のプーリ間に掛け渡された無端ベルトの前記各プーリに対する巻き付け半径を可変する無段変速機であって、
梃子の原理を利用して前記駆動源からの駆動力を増幅して前記プーリに伝達し、前記無端ベルトが巻き付けられたプーリ溝の溝幅を可変する駆動力伝達機構を備え、
前記駆動力伝達機構が、前記プーリが取り付けられた回転軸に取り付けられることを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記駆動力伝達機構は、前記回転軸に固定されるハブと、前記ハブに対して、前記駆動源からの駆動力によって軸方向に移動する可動スリーブと、前記可動スリーブの移動によって前記駆動力を前記プーリに伝達するレバーとを備え、
前記レバーは、前記回転軸と一体に回転する支点を中心に揺動し、当該支点から前記可動スリーブによって前記駆動力が入力される力点までの距離よりも、当該支点から前記プーリに対して前記駆動力を出力する作用点までの距離が短いことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記駆動力伝達機構は、前記レバーを複数個備え、これらのレバーを前記回転軸の中心に対して放射状に配置したことを特徴とする請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記可動スリーブ及び前記ハブは互いに嵌合する凹部と凸部を備え、これら凹部と凸部が前記可動スリーブと前記ハブとの間に油圧室を形成しており、
前記油圧室に作動油を供給する油路を前記回転軸内に形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219906(P2012−219906A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85988(P2011−85988)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】