説明

無線タグチップ装着方法及び無線タグチップへの管理情報書込み方法

【課題】 管理対象物のサイズや形状を問わず、無線タグチップを容易に管理対象物に装着できるようにする。
【解決手段】 流動性物質18に多数の超小型の無線タグチップ11を混入してほぼ均一に分散させた無線タグチップ混入流動性物質19を作る。この無線タグチップ混入流動性物質19をディスペンサ等の塗布手段や印刷手段に収容して、トレイ17(管理対象物)の空きスペースに少なくとも1個の無線タグチップ11が含まれるように無線タグチップ混入流動性物質19を少量付着させた後、この無線タグチップ混入流動性物質19を流動性物質18の種類に応じた方法で固化(硬化)させることで、トレイ17の空きスペースに少なくとも1個の無線タグチップ11を装着する。この後、リーダライタからトレイ17の部品ID等の管理情報のデータを送信して無線タグチップ11に当該管理情報を書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象物に無線タグチップを装着する無線タグチップ装着方法及び無線タグチップへの管理情報書込み方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1(特開2004−87582号公報)に示すように、電子部品実装システムにおいて、回路基板の識別コード(IDコード)等の情報を管理するために、その管理情報を記憶した無線タグチップを管理対象物に取り付けて、外部から非接触でリーダライタで無線タグチップに記憶された管理情報を読み取るようにしたものがある。この特許文献1の管理方法では、管理対象物である回路基板に無線タグチップを装着する作業を、他の電子部品の実装作業と同じ方法で行うようにしている。具体的には、無線タグチップを収容したテープフィーダを電子部品実装機にセットした後、電子部品実装機を稼働させて、テープフィーダから供給される無線タグチップを1個ずつ吸着ノズルで吸着して回路基板の所定位置(予めクリーム状半田が塗布された部分)に無線タグチップを搭載して半田付けするようにしている。
【特許文献1】特開2004−87582号公報(第1頁、第12頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、無線タグチップも、他の半導体チップと同様に小型化が進み、最近では、チップサイズが0.4mm×0.4mmという超小型の無線タグチップが開発され、今後も更に小型化されるものと予想される。このような超小型の無線タグチップは、電子部品実装機による装着は困難である。
【0004】
しかも、電子部品実装機を用いて無線タグチップを装着する方法では、無線タグチップを装着する物品が回路基板に限定されてしまい、各種のフィーダ、トレイや様々な形状の部品に無線タグチップを装着することは不可能である。
【0005】
また、作業者が手作業でフィーダ、トレイ等に無線タグチップを装着する作業は、手間がかかることから、製造現場では敬遠されている。そのため、現状の電子部品実装ラインでは、回路基板以外のフィーダ、トレイ等の情報管理には、無線タグチップが使用されず、バーコードラベルを貼着したり、作業者の目視チェックに任されていた。
【0006】
しかし、バーコードラベルに記録可能な情報量は、無線タグチップと比較して圧倒的に少なく、製造工程の自動化に必要な様々な管理情報を全てバーコードラベルに記録することは困難である。しかも、バーコードラベルの記録情報を後から追加・変更することは不可能であるばかりか、管理対象物のサイズや形状によってはバーコードラベルを貼着するスペースの余裕が無いものもある。かといって、作業者の目視チェックに任せていたのでは、人為的なミスが発生することは避けられない。
【0007】
本発明はこれらの事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、管理対象物のサイズや形状を問わず、無線タグチップを容易に管理対象物に装着できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、管理対象物に無線タグチップを装着する無線タグチップ装着方法において、流動性物質に多数の無線タグチップを混入して無線タグチップ混入流動性物質を作り、この無線タグチップ混入流動性物質を前記管理対象物に少なくとも1個(すなわち1個又は2個以上)の無線タグチップが含まれるように付着させて固化(硬化)させることで、該無線タグチップを該管理対象物に装着するようにしたものである。この場合、超小型の無線タグチップを用いることで、流動性物質中に多数の無線タグチップをほぼ均一に分散させることができるため、例えばディスペンサ等の塗布手段や印刷手段を用いて、様々なサイズ・形状の管理対象物に無線タグチップ混入流動性物質を塗布・印刷等により容易に付着させることができ、管理対象物のサイズや形状を問わず、無線タグチップを容易に管理対象物に装着することができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、無線タグチップを混入する流動性物質として、印刷用インク又は接着剤を用いると良い。このようにすれば、市販の安価な流動性物質を用いて無線タグチップを管理対象物に確実に固定することができる。
【0010】
本発明の無線タグチップ装着方法は、様々な物品・装置の情報管理システムに適用可能であり、例えば、請求項3のように、電子部品実装機にセットする部品供給装置、該部品供給装置にセットするトレイ、リール、カートリッジ、該部品供給装置から供給される電子部品、回路基板のいずれか少なくとも1つに無線タグチップを装着する工程に本発明を適用しても良い。このようにすれば、電子部品実装ラインにおける情報管理システムを無線タグチップを用いて低コストで構築することができる。
【0011】
また、請求項4のように、本発明の無線タグチップ装着方法によって管理対象物に装着した無線タグチップに内蔵された書き換え可能な不揮発性メモリにデータ書込み装置によって当該管理対象物の管理情報を無線で送信して書き込むようにすると良い。このようにすれば、管理対象物に無線タグチップを装着した後、任意の時期に無線タグチップの記憶情報を追加・変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を電子部品実装機におけるトレイ型フィーダのトレイの部品情報管理に適用して具体化した一実施例を説明する。
【0013】
使用する無線タグチップ11は、チップサイズが例えば0.4mm×0.4mmという超小型の無線タグチップであり、リーダライタ12からの無線信号を受信するアンテナコイル13を内蔵し、RF部(無線通信部)14、ロジック部15、メモリ部16で構成され、リーダライタ12から送信されてくる交流電力をRF部14で直流電力に変換して、これを電源として各部の回路が動作するように構成されている。
【0014】
ここで、RF部14は、アンテナコイル13を介してリーダライタ12との間で無線信号を送受信する。ロジック部15は、アンテナコイル13で受信した無線信号を処理してメモリ部16をアクセスし、メモリ部16へのデータの書き込みと読み出しを行い、送信データを作成する。メモリ部16は、書き換え可能な不揮発性メモリ(例えばFRAM、EEPROM等)で構成されている。
【0015】
この無線タグチップ11を管理対象物であるトレイ17に装着する場合は、まず図2に示すように、流動性物質18に多数の超小型の無線タグチップ11を混入してほぼ均一に分散させた無線タグチップ混入流動性物質19を作製する。ここで、流動性物質18は、無線タグチップ11をほぼ均一に分散させた状態に保持できる粘度を有し、且つ、無線タグチップ11をトレイ17に固着する機能を有するものであれば良く、例えば、印刷用インク又は接着剤を用いれば良い。使用する印刷用インクや接着剤は、例えば、紫外線硬化タイプ、熱硬化タイプ、熱可塑性タイプ、水性タイプ、溶剤タイプ等のいずれのタイプであっても良いが、無線通信の電波を遮蔽しないように、固化(硬化)した状態で非導電性を呈するものが好ましい。
【0016】
この無線タグチップ混入流動性物質19を例えばディスペンサ20(図3参照)等の塗布手段、印刷手段、マーキングペン等に収容して、図4に示すように、管理対象物であるトレイ17の空きスペースに少なくとも1個(すなわち1個又は2個以上)の無線タグチップ11が含まれるように無線タグチップ混入流動性物質19を少量付着させる。この作業は、作業者が手作業で行っても良いし、機械化(自動化)しても良い。
【0017】
この後、トレイ17に付着した無線タグチップ混入流動性物質19を流動性物質18の種類に応じた方法(例えば紫外線硬化、熱硬化、自然乾燥、加熱乾燥等)で固化(硬化)させる。これにより、トレイ17の空きスペースに少なくとも1個の無線タグチップ11が固着された状態となる。
【0018】
この後、トレイ17又はリーダライタ12(データ書込み装置)を、該トレイ17の無線タグチップ11との間で無線通信可能な距離まで移動させ、リーダライタ12からトレイ17の部品ID等の管理情報のデータを送信して無線タグチップ11のメモリ部16に当該管理情報を書き込む。
【0019】
この後、このトレイ17を収容したトレイ型フィーダを電子部品実装機にセットすると、電子部品実装機側に設けられたリーダライタで、無線タグチップ11に記憶されたトレイ17の部品ID等の管理情報を読み取る。これにより、電子部品実装機の制御装置がトレイ17の管理情報を入手し、所定の生産プログラムによってトレイ17の部品ID等をチェックし、必要に応じて、新たな情報を無線タグチップ11のメモリ部16に書き込む。 以上説明した本実施例では、超小型の無線タグチップ11を用いることで、流動性物質18中に多数の無線タグチップ11をほぼ均一に分散させることができるため、例えばディスペンサ20等の塗布手段や印刷手段を用いて、様々なサイズ・形状の管理対象物(トレイ17)に無線タグチップ混入流動性物質19を塗布・印刷等により容易に付着させることができ、管理対象物(トレイ17)のサイズや形状を問わず、無線タグチップ11を容易に管理対象物(トレイ17)に装着することができる。
【0020】
本実施例では、無線タグチップ11をトレイ17に装着するようにしたが、トレイ型フィーダ、テープフィーダ、バルクフィーダ等の部品供給装置、該部品供給装置にセットするリール、カートリッジ等の部品カセット、該部品供給装置から供給する電子部品、回路基板のいずれかに無線タグチップ11を本実施例と同様の方法で装着して、それらの情報を管理するようにしても良い。
【0021】
その他、本発明は、電子部品実装技術の分野に限定されず、他の技術分野の様々な物品・装置の情報管理システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例の無線タグチップの構成例を示すブロック図である。
【図2】流動性物質に多数の超小型の無線タグチップを混入してほぼ均一に分散させた状態を模式的に示す図である。
【図3】無線タグチップ混入流動性物質の塗布に用いるディスペンサの斜視図である。
【図4】トレイに無線タグチップ混入流動性物質を付着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
11…無線タグチップ、12…リーダライタ(データ書込み装置)、13…アンテナコイル、14…RF部(無線通信部)、15…ロジック部、16…メモリ部(書き換え可能な不揮発性メモリ)、17…トレイ(管理対象物)、18…流動性物質、19…無線タグチップ混入流動性物質、20…ディスペンサ20(塗布手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象物に無線タグチップを装着する無線タグチップ装着方法において、
流動性物質に多数の無線タグチップを混入して無線タグチップ混入流動性物質を作り、この無線タグチップ混入流動性物質を前記管理対象物に少なくとも1個の無線タグチップが含まれるように付着させて固化させることで、該無線タグチップを該管理対象物に装着することを特徴とする無線タグチップ装着方法。
【請求項2】
前記流動性物質は、印刷用インク又は接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の無線タグチップ装着方法。
【請求項3】
前記管理対象物は、電子部品実装機にセットする部品供給装置、該部品供給装置にセットするトレイ、リール、カートリッジ、該部品供給装置から供給される電子部品、回路基板のいずれか少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグチップ装着方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の無線タグチップ装着方法によって前記管理対象物に装着した前記無線タグチップに内蔵された書き換え可能な不揮発性メモリにデータ書込み装置によって当該管理対象物の管理情報を無線で送信して書き込むことを特徴とする無線タグチップへの管理情報書込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−330773(P2006−330773A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148865(P2005−148865)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】