説明

無線タグ

【課題】アンテナの少なくとも一部が表示手段の電極として形成されるので、表示手段を備えながら比較的簡単な構成とすることができる無線タグを提供する。
【解決手段】情報を記憶するメモリ部を備えたIC回路部と、前記IC回路部に接続され、無線タグ通信装置と信号を送受信するアンテナとを備える無線タグ回路部と、前記アンテナを介して受信した信号を整流部で整流して得られる電力を用いて情報の表示を行なう表示手段とを有する無線タグであって、前記アンテナの少なくとも一部は、前記表示手段に電力を供給するためのアンテナ電極部として構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの少なくとも一部によって電極が形成された表示手段を備える無線タグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナを備えた無線タグ回路素子を有する無線タグと、無線タグ通信装置との間で非接触で情報の読み取りや書き込みを行うRadio Frequency Identification(以下、RFIDとする)システムが知られている。
【0003】
このRFIDシステムに用いられる無線タグとして、下記特許文献1に記載の表示部を備える非接触ICカードがある。この非接触ICカードは、表示を行なう表示素子とアンテナで受信した高周波信号を処理するための集積回路とを別々に基板に作製して、貼り合わせて圧着させることで、非接触ICカードを作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−44808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような非接触ICカードにおいて、前記集積回路と表示素子を別々に形成しているので製造工程が多く、構成が複雑である。また、素子同士の接続部が多くなるので、耐久性に問題が生じるおそれもある。
【0006】
本発明は、アンテナの少なくとも一部が表示手段の電極として形成されるので、表示手段を備えながら比較的簡単な構成とすることができる無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の無線タグは、情報を記憶するメモリ部と制御部を備えた無線タグ回路部と、前記無線タグ回路部に接続され、無線タグ通信装置と信号を送受信するアンテナと、前記アンテナを介して受信した信号を整流部で整流して得られる電力を用いて情報の表示を行なう表示手段とを有する無線タグであって、前記アンテナの少なくとも一部は、前記表示手段に電力を供給するためのアンテナ電極部として構成されることを特徴とする。
【0008】
第2発明の無線タグは、上記第1発明において、前記表示手段は平板状の表示層と、前記表示層の一面側に設けられる第一電極層と、前記表示層の他面側に設けられる第二電極層を有し、前記アンテナ電極部は、前記第一電極層として形成されると共に、前記第一電極層と前記第一電極層に対して平行に配置された前記第二電極層の間に電圧が印加されることによって、前記表示手段に情報が表示されることを特徴とする。
【0009】
第3発明の無線タグは、上記第1又は第2発明において、前記アンテナを介して受信される前記信号を通過させると共に、前記信号を整流して得られる電力の通過を制限する第一制限手段を有し、前記第一制限手段が前記アンテナと前記制御部との間に設けられることを特徴とする。
【0010】
第4発明の無線タグは、上記第3発明において、前記制御部の制御によりスイッチが切り替わるスイッチ部と、前記信号の通過を制限し、前記電力の通過を許容する第二制限手段とを備え、前記スイッチ部は前記第二制限手段を介して前記第一制限手段と前記アンテナとの間に接続されることを特徴とする。
【0011】
第5発明の無線タグは、上記第1ないし第4発明において、前記表示手段は、前記アンテナを介して受信した信号に基づいて、前記情報の表示を行うことを特徴とする。
【0012】
第6発明の無線タグは、上記第4発明において、前記制御部は、前記アンテナを介して信号を送信又は受信している場合に、前記表示手段の表示切替を行なわないように前記スイッチ部を制御することを特徴とする。
【0013】
第7発明の無線タグは、上記第1ないし第6発明において、前記アンテナはダイポールアンテナ又はループアンテナであることを特徴とする。
【0014】
第8発明の無線タグは、上記第1ないし第7発明において、前記表示手段は、有機半導体層と、前記有機半導体層の一面側に設けられる第一電極層と、前記有機半導体層の他面側に設けられる第二電極層を有する発光手段であって、前記アンテナ電極部は、前記第一電極層を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の無線タグによれば、少なくともアンテナの一部が表示手段の電極として形成されるので、表示手段を備えた無線タグの構成として、比較的簡単な構成とすることができる。
【0016】
請求項2に係る発明の無線タグによれば、前記表示手段は平板状の表示層であって、少なくともアンテナの一部が表示手段の第一電極層として形成され、第一電極層に対して平行に配置された第二電極層との間に電圧が印加されることで、表示手段に情報が表示されるので、比較的簡単な構成であると共に、効果的に表示を行うことができる。
【0017】
請求項3に係る発明の無線タグによれば、前記アンテナより受信した信号は制御部に供給されると共に、過剰な電力が供給されることによる制御部への負荷を軽減することができる。
【0018】
請求項4に係る発明の無線タグによれば、表示領域を変化させることで、表示態様を切り替えることができる。
【0019】
請求項5に係る発明の無線タグによれば、前記表示手段は前記アンテナを介して受信した信号に基づいて、情報の表示を行なうので、効率よく効果的に表示を行なうことができる。
【0020】
請求項6に係る発明の無線タグによれば、無線タグ通信装置との信号の送受信を行なっている間は、通信以外の信号がアンテナに入ることによって通信性能が低下するのを防止して効率よく通信を行なうことができる。
【0021】
請求項7に係る発明の無線タグによれば、アンテナがダイポールアンテナ又はループアンテナなので、その一部を電極とした表示手段を形成しやすい。
【0022】
請求項8に係る発明の無線タグによれば、少なくともアンテナの一部が電極として形成され、発光手段を備えた無線タグの構成として、比較的簡単な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の通信システムの全体構成の一例を表すシステム構成図である。
【図2】本実施形態の無線タグの構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態の無線タグの一例を表す平面図である。
【図4】図3の無線タグの4−4線で切断した一部を拡大した断面模式図である。
【図5】本実施形態の別例の無線タグの構成を表すブロック図である。
【図6】本実施形態の別例の無線タグを表す平面図である。
【図7】無線タグ通信装置の構成を表すブロック図である。
【図8】無線タグ通信装置の制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図9】本実施形態の無線タグの制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図10】変形例の無線タグの構成を表すブロック図である。
【図11】変形例の無線タグを表す平面図である。
【図12】発光コマンドと発光領域の対応を示す対応テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1の無線通信システム400は、無線タグ通信装置100と無線タグ200を備えている。物品保管棚Sには複数の収納箱Bが保管されており、前記収納箱Bには工具などの物品が種類ごとに収納されている。そして、前記収納箱Bを識別するために、表示手段260を備えた無線タグ200が前記収納箱Bに貼り付けられる。
【0025】
作業者は探索目的の工具を収納した収納箱Bを探し出すために、対応する無線タグ200を識別するタグIDを指定して、無線タグ通信装置100で無線タグ200の読み取りを行う。前記所定のタグIDを有する無線タグ200は、表示手段260に情報を表示させる。本実施形態では表示手段である発光手段260が発光するので、作業者は発光する無線タグ200が貼られた探索対象の収納箱Bを容易に探し出すことができる。以下、各構成について、順を追って説明する。
【0026】
図2において、前記無線タグ200の機能的構成を説明する。無線タグ200はアンテナ210を有し、前記アンテナ210に接続された無線タグ回路部250を有する。前記無線タグ回路部250は、前記アンテナ210により受信された応答要求コマンドを含む信号を含む質問波を整流する整流部252と、この整流部252により整流された質問波のエネルギーを蓄積して表示手段260の駆動電源とするための電源部253を有する。
【0027】
前記整流部252は、前記アンテナ210から受信した信号から無線タグ回路部250の動作のための直流電圧を生成する。前記整流部252で生成された直流電圧は、無線通信を行うための電力として制御部257へ供給される。
【0028】
さらに、前記整流部252は、前記直流電圧を表示手段260が表示を行うのに必要な電力として電源部253へ供給する。また、前記電源部253は、表示手段260へ表示を行なうのに必要な所定の電圧以上に昇圧した直流電圧を生成する図示しない倍圧整流回路を有している。昇圧された直流電圧は、制御部257によりスイッチ部258がONに切り替えられたときに、表示手段260の陰極層として形成されるアンテナ210の一部であるアンテナ電極部215(図3(a)参照)と、前記表示手段の陽極層261(図4参照)に供給されて表示手段が発光する。
【0029】
なお、所定の電圧以上に昇圧された直流電圧が、前記制御部257、前記クロック抽出部254や前記変復調部256に供給されるのを防ぐために、それらとアンテナ210との間には2個のコンデンサCが挿入される。このコンデンサCは、直流電圧が通過しないようにするとともに、前記アンテナ210から受信した信号である高周波信号は通過させることができる。なお、このコンデンサCは請求項3の第一制御手段に相当する。また、通過させる高周波信号の周波数に応じて、適宜のコンデンサの値が選択される。
【0030】
変復調部256は、前記アンテナ210により受信された上記無線タグ通信装置100のアンテナからの質問波の復調を行う。また、上記制御部257からの返信信号を変調し、タグIDなどを含む信号を前記アンテナ210より応答波として送信する。
【0031】
クロック抽出部254は受信した信号からクロック成分を抽出し、受信した信号のクロック成分の周波数に対応したクロックを制御部257に供給する。
【0032】
また、前記無線タグ回路部250は所定の情報信号を記憶し得るメモリ部255を有する。そして、前記アンテナ210に接続された変復調部256と、上記メモリ部255、クロック抽出部254、及び変復調部256等を介し上記無線タグ回路部250の作動を制御するための上記制御部257とを備えている。
【0033】
制御部257は、上記変復調部256により復調された受信信号を解析し、上記メモリ部255において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部256により上記アンテナ210から返信する制御等の基本的な制御を実行する。また、後述のように、スイッチ部258のON/OFFを切り替えて、表示手段260の制御を行なう。
【0034】
前記表示手段260はテキスト文字や図柄などによって情報を表示する。前記表示手段260として、発光手段が用いられてもよく、発光することで情報の表示を行なってもよい。例えば、発光色、発光時間、発光態様などを変化させた各種発光パターンやセグメント表示などがあげられる。前記発光手段として、各種の発光素子が用いられ、例えば、発光ダイオード、有機Electro Luminescence(以下、有機ELとする)などがあげられる。なお、有機EL素子の場合は、面全体が発光するため、薄くても視認性の高い発光素子を実現できる。表示手段の詳しい構成については後述する。
【0035】
また、前記制御部257は、上記変復調部256により復調された受信信号を解析した場合に、発光指示コマンドを受信すると、スイッチ部258をONに切り替える。これにより、前記電源部253からの電力が表示手段260に供給されて、前記表示手段260に情報が表示される。なお、コイルLは、前記アンテナ210を介して受信した高周波信号が電源部253側へ供給されないように、かつ所定の電圧値を有する直流電圧がアンテナ部210へ供給可能なように、一端が前記スイッチ部258に、他端が前記アンテナ210とコンデンサCとの間にそれぞれ接続されている。このコイルLは請求項4に記載の第二制限手段である。
【0036】
図3及び図4において、本実施形態の無線タグ200の構成についてについて説明する。なお、本実施形態では表示手段260は有機半導体層を有する発光手段であるものとして説明する。
【0037】
図3(a)及び図4において、無線タグ200の本体を構成する基板201の片面側に、アンテナ210がプリント形成されると共に、前記アンテナ210は無線タグ回路部250に接続される。
【0038】
また、図3(a)の前記アンテナ210の少なくとも一部にアンテナ電極部215が形成される。前記アンテナ電極部215は、外部の無線タグ通信装置100との間で信号の送受信を行ない、かつ前記発光手段260の陰極層として形成される。本実施形態では、矩形状に3回コイルを巻いた形状として形成されている。
【0039】
また、図3(b)に示すように、前記アンテナ電極部215の上部に、発光手段260が形成される。なお、前記発光手段は前記アンテナ210の全体に形成されていてもよいし、図3(b)に示されるように、無線タグ回路部250との接合部近辺においては、発光手段260を形成しなくてもよい。また、基板201上でアンテナ電極部215が形成されていない部分に構成されていても良い。この場合、アンテナ電極部215が無い部分は発光しないが、発光手段の作成領域を限定しないで済むため、製造コストを抑えられるという利点がある。
【0040】
そして、図4のように、前記アンテナ電極部215の上面側に、以下に説明する有機半導体層265、陽極層261、封止層263が順に形成される。なお、図3(b)は前記アンテナ電極部215に前記各層が形成されたときの平面図であり、図4は図3(b)の4−4線で切断したときの断面図であって、その一部を拡大して示している。
【0041】
図3(a)の前記アンテナ電極部215は、前記発光手段260の陰極層として機能しつつ前記アンテナとして機能できるものであればよく、図4のように、有機半導体層265の下面側に形成される。例えば、アルミニウム(Al),フッ化リチウム(LiF),Alと銅(Cu)との積層,AlとLiFとの積層及びAlとバリウム(Ba)との積層等で構成される。なお、前記アンテナ電極部215は請求項に記載の第一電極層にも相当する。
【0042】
前記有機半体層265は、前記アンテナ電極部215の上面側に平板上に形成され、アンテナ電極部215と陽極層261との間に電圧が印加されることで発光する。前記有機半導体層265としては、例えばポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の高分子発光材料、及び、テトラフェニルブタジエン(TPB)、ペリレン、クマリン、ルブレン、ナイルレッド、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−ジメチルアミノスチリル−4−ピラン(DCM)、4−ジシアノメチレン−6−シーピージュロリジノスチリル−2−ターシャルブチル−4H−ピラン(DCJTB)、スクアリリウム、アルミニウム錯体(例えばAlQ3)等の低分子系材料が用いられる。前記アンテナ電極部215に接する面には、図示されない電子注入層が設けられる。電子注入層は、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかが用いられる。なお、前記有機半導体層は請求項2に記載の表示層にも相当し、平板状に形成されている。
【0043】
前記陽極層261は、前記有機半導体層265の上面側に設けられる。陽極層261は、透明電極用の材料であるインジウムチタンオキサイド(ITO)又はポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)で構成される。前記陽極層261は、前記アンテナ電極部215と前記陽極層261との間に電圧が印加されることで、前記有機半導体層265に正孔を注入する。なお、前記陽極層261が請求項に記載の第二電極層に相当し、前記陽極層261は前記アンテナ電極部215に対して平行に配置されている。
【0044】
また、封止層263が前記陽極層261の上面から上述した各層を被覆するように形成される。前記封止層263は、前記陽極層261と前記有機半導体層265と、前記アンテナ電極部215が外気に接触させないように封止する。前記封止層263として、具体例には、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリスチレン(PS),ポリエーテルサルフォン(PES),ポリイミド等のフィルムに、SiO,AL,SiNx等の無機薄膜と柔軟性のあるアクリル樹脂薄膜などを層状に複数層重ね合わせることでガスバリア性を備えたものが用いられてもよい。
【0045】
このように構成された前記発光手段260は、前記陽極層261と陰極層としての前記アンテナ電極部215との間に、陽極層261が前記アンテナ電極部215よりも高電位になるように、前記電源部253で昇圧された直流電圧が印加されることで発光する。
【0046】
図4において、前記陽極層261に印加される電圧は、前記陽極層261と前記アンテナ電極部215との電位差に等しい。前記陽極層261と前記アンテナ電極部215との間に電位差が存在すると、前記陽極層261から正孔が前記有機半導体層265に供給され、前記アンテナ電極部215から電子が有機半導体層265に供給される。そして、前記陽極層261から供給された正孔と、前記アンテナ電極部215から供給された電子とが、有機半導体層265で再結合する。
【0047】
そして、前記電子は伝導帯を流れ、正孔は価電子帯を流れるので、正孔と電子との再結合によって、バンドギャップに相当するエネルギーを有する光子が放出される。このようにして、有機半導体層265が発光する。前記有機半導体層265からの光は、透明電極である前記陽極層261と前記封止層263を透過して、前記発光手段から外部へ光が発光される。本実施形態では、前記発光手段260は、電力が供給されると、図3(b)の太線部の領域が発光する。
【0048】
<ダイポールアンテナの場合>
上記実施形態の無線タグ200では、前記アンテナ210がループアンテナの場合を説明したが、本実施形態の無線タグ200Aは、図5及び図6のように、アンテナ210Aがダイポールアンテナより構成されていてもよい。前記アンテナ210Aには、アンテナ電極部215Aが直線状に左右対称に2箇所に形成されており(図6(a)参照)、その上面に形成される発光手段260Aも直線状に2箇所形成される(図6(b)参照)。なお、図2ないし図4と同じ符号は同様の構成を示すものとしてその説明を省略する。また、アンテナ電極部215Aの上面側に形成される発光手段260Aは、上述した発光手段260と同様の構成であり各構成についての説明を省略する。
【0049】
このように、前述した無線タグ200において、アンテナ210の少なくとも一部が発光手段の陰極層を兼ねるアンテナ電極部215として形成されることで、無線タグ200としての構成が比較的簡単な構成となる。また、前記アンテナ210と無線タグ通信装置100との距離が短くなるように配置することもできる(図1参照)。つまり、通常、発光手段260はユーザが視認しやすいように、通常無線タグ200の表面側に設けられるため、発光手段260の電極を兼ねるアンテナ電極部215が無線タグ200の表面に近い側に備えられることになる。そのため、前記無線タグ通信装置からの信号を受信しやすい位置にアンテナを備えることができ、通信性能が向上することも期待できる。なお、前記無線タグ200Aについても同様の効果が得られるので、その説明は省略する。
【0050】
次に、本実施形態の無線タグ200を用いた前記物品管理システム400において、無線タグ通信装置100と前記無線タグ200の動作について順を追って説明する。
【0051】
まず、図7を用いて、前記無線タグ通信装置100の構成について説明する。前記無線タグ通信装置100は、装置アンテナ152を介して無線タグ200との無線通信を行なう。つまり、前記無線タグ通信装置100は、前記装置アンテナ152を介して無線タグ200への応答要求コマンドを含む質問波を送信すると共に、無線タグ200から読み出された応答波を受信する高周波回路112、制御部154、記憶手段としてのRAM156及びROM155を有している。これらの高周波回路112、制御部154、記憶手段としてのRAM156及びROM155は、電気的にバスで接続されている。
【0052】
前記高周波回路112は、無線タグ200を動作させるための搬送波を発生させる。また、無線タグ200との通信を行うために、前記制御部154からの指示に基づいて無線タグ200への応答要求コマンドを含む送信命令を発生し、前記搬送波を変調して高周波信号として送信すると共に、無線タグ200において変調された高周波信号を受信、復調して前記制御部154に伝える。
【0053】
前記制御部154は、前記RAM156の一時記憶機能を利用するのと並行して、前記ROM155にあらかじめ記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより無線タグ通信装置100全体の制御を行なう。また、無線タグ通信装置100は、操作者からの指示や情報が入力される入力手段170、情報やメッセージを表示する表示手段160を備える。
【0054】
次に、図8を用いて、前記無線タグ通信装置100の制御部154によって実行される制御手順を説明する。この例では、タグ探索動作が選択されるとこのフローが開始される。
【0055】
まず、ステップS110において、キーボタンなどの入力手段170によって、図1に示すように、検索対象の収納箱Bに備えられる無線タグ200のタグIDを指定する操作情報が入力される。
【0056】
ステップS120において、高周波回路153に制御信号を出力して、前記特定のタグIDを指定して制御部157のメモリ部150に記録されたデータを読み出すタグ読み取り信号を送信する。前記タグ読み取り信号として、所定の変調を行った応答要求コマンドが、装置アンテナ152を介して通信領域内に存在する無線タグ200に送信される。
【0057】
ステップS130では、前記応答要求コマンドに対応して前記タグIDに対応する無線タグ200から応答波を受信したか否かを判定する。この際、ステップS120において特定のタグIDを指定してタグ読取信号を送信しているため、そのタグIDを持つタグのみが応答する。ここで、所定のタグIDを受信した場合には、判定が満たされてステップS140に進む。一方、所定のタグIDを所定時間待機しても受信しない場合は、ステップS150へ進む。
【0058】
ステップS140では、前記タグIDを指定して前記無線タグ200の発光手段260に発光を指示するための発光指示コマンドを送信する。
【0059】
ステップS150では、表示手段160に探索結果に対応して記憶手段に記憶された表示画面を表示させる。例えば、指定したタグIDに対応する無線タグ回路部250から応答信号を受信している場合には、「探索対象の物品が見つかりました」などの表示を行う。一方、指定したタグIDに対応する無線タグ回路部250から応答信号を受信していない場合には、「検索対象の物品が見つかりませんでした」などの表示を行う。
【0060】
ステップS160では、入力手段170によって停止操作情報が入力されたか否かが判断される。停止操作情報が入力された場合には、このフローを終了する。一方、停止操作情報が入力されない場合は、ステップS110へ戻る。
【0061】
続いて、無線タグ200の動作について説明する。図9は、無線タグ200の制御部257によって実行される制御手順を表すフローチャートである。この例では無線タグ通信装置100からコマンド信号を受信すると、このフローが開始される。
【0062】
ステップS205では、前記アンテナ210から受信した信号が、応答要求コマンドであるかどうかが判断される。前記信号が応答要求コマンドである場合には、ステップS206へ進む。一方、前記信号が応答要求コマンドでない場合には、このフローを終了する。
【0063】
ステップS206では、前記応答要求コマンドに含まれたタグIDが無縁タグ200のメモリ部255内に保存されているタグIDと一致するかどうかが判断される。タグIDが一致する場合には、ステップS210へ進む。一方、タグIDが一致しない場合には、このフローを終了する。
【0064】
ステップS210は、無線タグ通信装置100からの応答要求コマンドに対して、無線タグ回路部250のメモリ部255に記憶されたタグIDを応答して、ステップS220へ進む。
【0065】
ステップS220では、前記無線タグ通信装置100から発光指示コマンドを受信したか否かが判断される。発光指示コマンドを受信しない場合は受信するまで待機する。一方、前記発光指示コマンドを受信した場合には、ステップS221の処理へ進む。
【0066】
ステップS221では、前記発光指示コマンドに含まれたタグIDが無縁タグ200のメモリ部255内に保存されているタグIDと一致するかどうかが判断される。タグIDが一致する場合には、ステップS225へ進む。一方、タグIDが一致しない場合には、このフローを終了する。
【0067】
ステップS225は、前記アンテナ210を介して無線タグ通信装置100からの信号を受信中であるか否か、又は前記アンテナ210を介して応答信号などを送信中であるか否かが判断される。前記アンテナ210を介して信号の受信中である又は信号の送信中であると判断された場合には、信号の送受信が終了するまでループ待機する。一方、ステップS225で前記アンテナ210を介して信号の送信中でも受信中でもないと判断された場合には、ステップS230へ進む。
【0068】
ステップS230では、受信した発光指示コマンドに基づいて、スイッチ回路部265をONにして、発光手段260を発光させてこのフローを終了する。なお、所定時間後に発光手段260の発光を停止する。
【0069】
本実施形態では、前記無線タグ200が前記無線タグ通信装置100と信号を送受信中であるときは、前記発光手段260の前記陽極層261と前記陰極層としてのアンテナ電極部215が形成された前記アンテナ部210への電力供給を行なわないので、前記アンテナ210はアンテナとしての機能のみを有する。これにより、通信以外の信号がアンテナに入ることによって通信性能へ影響が及ぼされることを防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、前記アンテナ210を介して受信した信号である発光指示コマンドに基づいて、前記発光手段260の発光を行うので、効果的に発光を行うことができる。
【0071】
<発光手段の発光領域を変化させる場合>
次に、図10及び図11を用いて、変形例の無線タグ200Bについて説明する。後述の図11(a)において、無線タグ200Bの本体を構成する基板201の片面側に、アンテナ210Bがプリント形成されると共に、前記アンテナ210Bは無線タグ回路部250に接続される。
【0072】
本変形例では、図11(b)のように、発光手段260Bの発光領域269A、269B、269Cが形成されており、その発光領域を切り替えることにより発光態様を変化させることができる。ここで、図11(b)は、図11(a)の前記アンテナ電極部215A,215B,215Cの上面に、前記有機半導体層265と前記陽極層261と前記封止層263が形成されたときの平面図である(図4参照)。なお、図11(b)においてわかりやすいように、表示部260Bのうち、太線部が発光領域269Aを、太破線部が発光領域269Bを、薄太線部が発光領域269Cを示している。そして、後述するように電力が供給されると、それぞれの発光領域が発光する。
【0073】
それぞれの発光領域に対応して、図11(a)のようにアンテナ電極部215A,215B,215Cが形成される。前記アンテナ電極部215Aと前記アンテナ電極部215Bの間にはコンデンサC1が介在され、前記アンテナ電極部215Bと前記アンテナ電極部215Cの間にはコンデンサC2が介在される。なお、図11(a)において、アンテナ部210Bのうち、実線部がアンテナ電極部215A、破線部がアンテナ電極部215B、薄実線部がアンテナ電極部215Cを示している。
【0074】
図10において、前記無線タグ200Bの機能的構成を説明する。図2と同じ符号のものは同様の構成を示すものとしてその説明を省略する。
【0075】
前記無線タグ200はアンテナ210Bを有している。前記アンテナ210Bは、図10のように、コンデンサC1とコンデンサC2を有する。これらのコンデンサC1,C2は、直流電流の流出を制限するとともに、前記アンテナ210Bから受信した高周波信号は通過させる。また、制御部257によってON,OFFを切り替えることが可能なスイッチ部258A,258B,258Cを有する。
【0076】
これにより、前記制御部257で、前記アンテナ210Bを介して、発光領域269Aの発光を指示する発光指示コマンドを受信したと判断された場合には、制御部257は、スイッチ部258AをONに切り替え、図11(a)において、前記発光領域269Aに対する陰極層を構成するアンテナ電極部215Aと図示しない陽極層に直流電圧を印加して、図11(b)の前記発光領域269Aを発光させる制御を行なう。なお、アンテナ電極部215Aの端部には、図10及び図11(a)のコンデンサC1が設けられており、発光領域269B及び発光領域269Cに対応するアンテナ電極部215B,215Cには、電力が供給されず、前記発光領域269B及び前記発光領域269Cは発光しない。
【0077】
同様に、前記制御部257で、発光領域269Bの発光を指示する発光指示コマンドを受信したと判断された場合には、図10のスイッチ部258BをONに切り替え、図11(a)において、前記発光領域269Bに対する陰極層を構成するアンテナ電極部215Bと図示しない陽極層に直流電圧が印加され、図11(b)の前記発光領域269Bを発光させる制御を行なう。前記アンテナ電極部215Bのそれぞれの端部には、図10及び図11(a)のように、コンデンサC1及びコンデンサC2が設けられており、図11(b)の発光領域269A及び発光領域269Cに対応するアンテナ電極部215B,215Cには、電力が供給されず、前記発光領域269A及び発光領域269Cは発光しない。
【0078】
同様に、前記制御部257で、発光領域269Cの発光を指示する発光指示コマンドを受信したと判断された場合には、図10のスイッチ部258CをONに切り替え、図11(a)において、前記発光領域269Cに対する陰極層を構成するアンテナ電極部215Cと図示しない陽極層に直流電圧を印加して、図11(b)の前記発光領域269Cを発光させる制御を行なう。前記アンテナ電極部215Cの端部には、図10及び図11(a)のように、コンデンサC2が設けられており、発光領域269A及び発光領域269Bに対応するアンテナ電極部215A,215Bには、電力が供給されないので、前記発光領域269A及び前記発光領域269Bは発光しない。
【0079】
本変形例の無線タグ200Bの制御部257の動作は、前述の無線タグ200において説明した図9の動作と、以下に説明するように、ステップS230を除いて同様である。
【0080】
本変形例の無線タグ200Bでは、発光指示コマンドの種類と、それに対応する発光領域の対応テーブルがメモリ部255に記憶されている(図12参照)。上述した図9のステップS230において、本変形例では、メモリ部255を参照して受信した発光指示コマンドに関連付けて記憶されている発光領域を表示させる制御を行なう。例えば、発光指示コマンド「A」であれば、それに対応する発光領域269Aの表示を行なう制御がされる。
【0081】
本変形例においては、このように、制限手段としてのコンデンサC1,C2がアンテナ210Bに設けられ、前記アンテナ210Bを介して受信した発光コマンドに基づいて、制御部により切り替えられるスイッチ部が備えられることで、発光手段の発光領域を変化させることができる。
【0082】
なお、上記実施形態では、アンテナとして、コイルアンテナとダイポールアンテナを一例として説明したが、他のアンテナで構成されていてもよい。発光手段及びアンテナの形状や大きさなどは、所望とする発光手段の形態により種々の変更が可能である。また、無線タグには複数のアンテナが形成され、それに対する発光手段も複数形成されていてもよい。
【0083】
また、制限手段としてのコンデンサをアンテナに3つ以上の複数個所に設けて、さらに複数の発光領域を形成してより複雑な表示態様で変化させることも可能である。加えて、発光手段における発光領域の変化のさせ方を説明したが、この例に限られず、テキスト文字などを表示する表示手段の表示領域が変化してもよい。
【0084】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0085】
100 無線タグ通信装置
200,200A,200B 無線タグ
210,210A,210B アンテナ
215,215A,215B アンテナ電極部
261 陽極層
260,260A,260B 表示手段(発光手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するメモリ部と制御部を備えた無線タグ回路部と、前記無線タグ回路部に接続され、無線タグ通信装置と信号を送受信するアンテナと、
前記アンテナを介して受信した信号を整流部で整流して得られる電力を用いて情報の表示を行なう表示手段とを有する無線タグであって、
前記アンテナの少なくとも一部は、前記表示手段に電力を供給するためのアンテナ電極部として構成されることを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
前記表示手段は平板状の表示層と、前記表示層の一面側に設けられる第一電極層と、前記表示層の他面側に設けられる第二電極層を有し、
前記アンテナ電極部は、前記第一電極層として形成されると共に、前記第一電極層と前記第一電極層に対して平行に配置された前記第二電極層の間に電圧が印加されることによって、前記表示手段に情報が表示されることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記アンテナを介して受信される前記信号を通過させると共に、前記信号を整流して得られる電力の通過を制限する第一制限手段を有し、
前記第一制限手段が前記アンテナと前記制御部との間に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグ。
【請求項4】
前記制御部の制御によりスイッチが切り替わるスイッチ部と、
前記信号の通過を制限し、前記電力の通過を許容する第二制限手段とを備え、
前記スイッチ部は前記第二制限手段を介して前記第一制限手段と前記アンテナとの間に接続されることを特徴とする請求項3に記載の無線タグ。
【請求項5】
前記表示手段は、前記アンテナを介して受信した信号に基づいて、前記情報の表示を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線タグ。
【請求項6】
前記制御部は、前記アンテナを介して信号を送信又は受信している場合に、前記表示手段の表示切替を行なわないように前記スイッチ部を制御することを特徴とする請求項4に記載の無線タグ。
【請求項7】
前記アンテナはダイポールアンテナ又はループアンテナであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の無線タグ。
【請求項8】
前記表示手段は、有機半導体層と、前記有機半導体層の一面側に設けられる第一電極層と、前記有機半導体層の他面側に設けられる第二電極層を有する発光手段であって、
前記アンテナ電極部は、前記第一電極層を構成することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−71824(P2011−71824A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222151(P2009−222151)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】