説明

無線データ搬送装置及び無線データ搬送方式

【課題】固定的な通信回線の無い拠点や製品と管理者との間において、適切な通信相手を相互に自動認識し、効率的な大容量データの通信を低コストに実現する。
【解決手段】本発明の固定局側の無線通信装置(固定端末)は、無線アンテナ,無線通信部,サーバ処理部,タスクリスト,データ通信部,バッファ管理部,バッファを有する。移動局側の無線データ搬送装置(移動端末)は、無線アンテナ,無線通信部,サーバ判定部,タスクリスト入出力部,タスクリスト,クライアント処理部,バッファを有する。移動端末は、固定端末からタスクリストを受け取り、該リストの指示に従い、他の固定端末からのデータを授受する。移動端末はデータのみならずデータ受領応答(ACK)も運搬する。固定端末がACKを生成し、移動端末がACKを運搬し、固定端末がACKを利用することで、大容量データの生成と消去を適切に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定的な通信回線の無い拠点間において大容量データを自動的に搬送する装置と通信方式に関する。特に、複数の固定局間において、移動局が固定局と無線通信を介して大容量データや応答の搬送を仲介する通信装置と通信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
技術進歩の結果、工業用製品の信頼性は向上し、故障の頻度は低下し、故障の発生するまでの期間は長期化が進んでいる。一方で、多様な製品が地球規模で展開されている昨今の状況において、一旦故障が発生すると故障箇所の特定や補修用の部品を調達するまでの時間も長期化しつつある。そこで製品の管理者は、故障の迅速な把握に注力している。
【0003】
従来製品の管理者は、製品の稼動状況や、故障した兆候などを捕らえて、携帯電話や衛星通信回線などの無線技術を用いて、製品の稼動情報を通知するシステムを構築してきた。
【0004】
固定的な通信回線の無い拠点間において、無線通信を用いてデータを搬送する方式に関して、〔特許文献1〕に開示される方式がある。
【0005】
特許文献1に開示される無線通信システムは、採鉱用重機と運搬用重機,処理場のそれぞれに無線通信装置を有する。運搬用重機は、採鉱用重機と処理場との間で鉱石を運搬するために往復する。運搬用重機は鉱石を運搬する一方で、採鉱用重機からの採鉱作業情報を、無線通信装置を用いて受信し蓄積する。その後、運搬用重機は、処理場まで到着すると蓄積していた採鉱作業情報を無線で送信する。
【0006】
運搬用重機は、手動あるいは自動で採鉱用重機に対して採鉱情報の送信を要求する。手動の場合には、運搬用重機の運転者が採鉱用重機を認識し、採鉱用重機を示すIDを入力する例が開示されている。自動の場合には、運搬用重機の運転者が所定のボタンを押下し、周辺にある採鉱用重機からの返信を要求し、もっとも強い受信電界強度を返信する採鉱用重機を通信相手と認識する例が開示されている。
【0007】
以上により、〔特許文献1〕による無線通信システムは、採鉱場所と処理場との間において運搬用重機を仲介にして採鉱作業情報を伝達する。
【0008】
また、広い作業現場を自由に走行する車両から、車両情報を低コストで簡便に安定して収集する車両情報収集システムが、〔特許文献2〕に開示される。
〔特許文献2〕に開示される車両情報収集システムは、複数の車両と端末装置との間で、端末装置は無線LANを用いて車両情報を収集する。端末装置は、車両に向けて車両IDを要求するブロードキャスト送信を無線LANにておこなう。車両からは事故の車両IDを無線LANにて端末装置に送信する。端末装置は、車両IDを受信して、情報取得対象車両を判別し、情報取得対象車両に対して車両情報を要求するユニキャスト送信を無線LANにて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−115554号公報
【特許文献2】特開2006−148290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
対象となる製品が高価である場合や、製品の稼働率が運用者の利益や信用に多大な影響を与える場合、製品の故障を事前に予知することが経済上,企業信用上、重要である。そこで、故障の予兆を検出するために、予防保全技術へ注目が集まっている。
【0011】
予防保全を行うためには、製品が正常か異常かなどのステータスや、製品内部の温度や稼働時間などの稼動情報を通知するだけでは不十分な場合がある。予防保全を実現するには、予防保全対象製品の内部の制御メッセージや制御時に使用する多種多様なセンサ情報を管理者側に通知することが必要となる。そのため、通知すべきデータ量は膨大となり、一日あたり数百メガバイト(MB、メガは10の6乗)となる例もある。
【0012】
固定的な通信回線が無い拠点や製品の間において、製品におけるデータを、管理者側に通知する例は上述の通り存在する。大容量データを伝達するためには、経済上の理由で衛星回線や携帯電話などの無線回線は利用できず、無線LANなどの自営系無線を活用した自動データ回収の方式が必要である。しかしながら、日に数百MBにおよぶ大量のデータを伝送するためには、上述する技術には大きな課題が二点ある。
【0013】
第一の課題として、上述した方式では適切な予防保全対象製品(例えば〔特許文献1〕における採鉱用重機の無線装置)と適切な仲介者(例えば〔特許文献2〕における運搬用重機の無線端末)とを相互に自動で認識し、必要なデータの送受信をすることができない。大容量データを製品から仲介者が受信するためには、頻繁かつ効率良く通信相手を認識し、必要なデータを自動的に送受信する必要がある。
【0014】
しかしながら、〔特許文献2〕において、通信相手を認識するためには、運転者が手動で通信相手を選択するか、採鉱用重機の近傍において運転者のボタン押下による作業が必要である。〔特許文献2〕においても、車両の情報をあらかじめ端末装置に命令として与える必要がある。
【0015】
また、仲介者が大量なデータを製品から受信して管理者側に通知するためには、データの欠損に対応した再送要求や多くの仲介者によるデータ受信が必要となる。しかしながら、〔特許文献1〕と〔特許文献2〕において、データのフロー制御に関する開示は無い。
【0016】
大量データを伝送するための第二の課題は、製品におけるデータの保存容量が大きくなるが、データ保存の期間を適切に制御する方式が開示されない点である。そのため、製品におけるデータ保存領域が過大となりコストが増大する。あるいは、製品におけるデータ保存領域が過小となり、製品が必要なデータを通信する前に、データが欠損してしまう問題が発生する。
【0017】
以上の課題を鑑みて、本発明は、固定的な通信回線の無い拠点や製品と管理者との間において、大容量データを自動的に搬送するために、適切な通信相手を相互に自動認識し、効率的な大容量データの通信を可能とする。
【0018】
また、本発明は、製品におけるデータ保存領域を適切に管理するために、製品と管理者との間でデータの再送や応答を仲介する通信装置と通信方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の課題を達成するために、本発明の無線通信システムは、
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
通信対象である複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容とが記載されるクライアントタスクリストと、
該クライアントタスクリストに従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の無線中継搬送装置は、
前記サーバ判定部は前記無線中継搬送装置自身の位置情報を出力する測位手段を備え、
前記クライアントタスクリストは前記無線通信装置の位置情報を備え、
前記サーバ判定部は所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置のうち、さらに前記無線中継搬送装置自身の位置から最も近くにある前記無線通信装置を選択することを特徴とするものである。
【0021】
さらに、本発明の無線中継搬送装置は、
タスクリスト入出力部を有し、
外部端末から更新すべきタスクを記載した入力タスクリストを受信し、
前記タスクリスト入出力部は、前記入力タスクリストを入力する前記外部端末を判定して前記タスクリストの一部を前記入力タスクリストで更新する機能を有し、
前記クライアント処理部は、前記タスクリスト入出力部を介して前記入力タスクリストの更新をすることを特徴とする。
【0022】
また、上記課題を達成するために本発明は
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の無線通信装置と通信すべき処理内容とが記載されるサーバタスクリストと、を有し、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力することを特徴とするものである。
【0023】
また、上記課題を達成するために本発明は
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは少なくとも二つの無線通信装置と、少なくとも一つの無線中継搬送装置からなり、
該無線中継搬送装置は、
前記無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるクライアントタスクリストと、
前記クライアントタスクリストの記載に従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とし、
前記無線通信装置は、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるサーバタスクリストと、を備え、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力することを特徴とするものである。
【0024】
また、上記課題を達成するために本発明は
前記無線通信システムにおいて、
前記無線中継搬送装置は、
タスクリスト入出力部を有し、
外部端末から更新すべきタスクを記載した入力タスクリストを受信し、
前記タスクリスト入出力部は、前記入力タスクリストを入力する前記外部端末を判定して前記クライアントタスクリストの一部を前記入力タスクリストで更新する機能を有し、
前記クライアント処理部は、前記タスクリスト入出力部を介して前記クライアントタスクリストの更新をすることを特徴とするものである。
【0025】
さらに、本発明は無線通信システムにおいて、
前記無線通信装置は、データ通信部とバッファ管理部とサーババッファとを有し、
前記データ通信部は、前記無線通信装置の外部装置との間でデータ受領あるいはデータ出力するインターフェースを有し、
前記サーババッファは、前記データ通信部と入出力するデータを保持し、
前記バッファ管理部は、フロー制御手段を有し、
前記フロー制御手段は、前記サーババッファに保存されるデータの内訳や欠損を管理する機能と、
データの欠損を検知した場合には前記サーバタスクリストへ欠損データを再送するタスクを追加する機能を有する
ことを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明は前記無線通信システムにおいて、
前記無線中継搬送装置はクライアントバッファを備え、
前記クライアント処理部は、
前記無線通信装置へデータを送信し、
前記無線通信装置からのデータ受領応答を前記データと対応付けて前記クライアントバッファへ受領応答リストとして保存し、
他の前記無線通信装置へ前記受領応答リストを出力することを特徴とするものである。
【0027】
本発明による別の無線通信装置は、
直接の通信経路が存在しない複数の無線通信装置間で無線中継通信装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるサーバタスクリストと、
データの搬送に使用すべき前記無線中継搬送装置を記したキャリアリストとを備え、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力し、
前記キャリアリストを入力し、前記キャリアリストに記載の無い前記無線中継搬送装置からのデータ要求に対してデータの送出を行わないことを特徴とする。
【0028】
上記課題を達成するために本発明は直接の通信経路が存在しない複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは少なくとも二つの無線通信装置と、少なくとも一つの無線中継搬送装置からなり、
前記無線中継搬送装置は、
前記無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容が記載されるクライアントタスクリストと、
前記クライアントタスクリストの記載に従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とし、
前記無線通信装置は、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるサーバタスクリストと、
データの搬送に使用すべき前記無線中継搬送装置を記したキャリアリストと、を有し、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力し、
前記キャリアリストを入力し、前記キャリアリストに記載の無い前記無線中継搬送装置からのデータ要求に対してデータの送出を行わないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、無線通信装置間のデータ授受や制御情報授受に際して、保守員や運転者のような人の操作をせずにデータ授受を実現している。その結果、スイッチ押し忘れや選択誤りのような人手による操作ミスがなく、データの授受を確実にすることが可能となる。また、保守員のような作業スキルを要する人員の確保が不要となるため、世界中のどこの機器でもデータ収集対象とすることができる。
【0030】
例えば、その応用として、様々な機器の予防保全を実現することが可能となる。また、本発明による無線データ搬送装置は、複数の無線装置間を移動して、データとデータ受領応答(ACK)を相互に受け渡しするのを仲介する。
【0031】
その結果、無線通信装置はデータの送達を確認してデータを消去することが可能となり、データを保持するメモリ容量を過剰にする必要がなくなり、適正なコストで無線通信装置を構築することが可能となる。また、送達を確認してからデータを消去するため、無線通信装置間でデータの欠損ない確実なデータ授受が可能となる。
【0032】
本発明により、自動的にデータを収集する無線データ搬送装置が複数あり、全てが無線通信装置に到達しない環境下においても、複数の無線データ搬送装置に並列にデータを搬送させることで、信頼性の高いデータ授受が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置を適用した通信システムの概要を表す。
【図2】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置を適用したシステムの例を表し、鉱石採掘現場を模した図を表す。
【図3】本発明による第一の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受する初回動作のシーケンス図を表す。
【図4】本発明による第一の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受する2回目以降の動作のシーケンス図を表す。
【図5】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリストの構成例を示す。
【図6】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のクライアント処理部のフローチャートを表す。
【図7】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリスト入出力部のフローチャートを表す。
【図8】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のサーバ判定部のフローチャートを表す。
【図9】本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のクライアント処理部におけるタスク処理手段のフローチャートを表す。
【図10】本発明による第一の実施形態における無線通信装置のサーバ処理部のフローチャートを表す。
【図11】本発明による第一の実施形態における無線通信装置の構成の一例を表す。
【図12】本発明による第二の実施形態における無線データ搬送装置を適用した通信システムの概要を表す。
【図13】本発明による第二の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受するシーケンス図を表す。
【図14】本発明による第二の実施形態における無線通信装置のサーバ処理部(一部)のフローチャートを表す。
【図15】本発明による第二の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリストの構成例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、固定的な通信回線の無い拠点間において大容量データを自動的に搬送する装置と通信方法に関する。はじめに、本発明による無線データ搬送装置を用いた通信システムについて説明する。その後、本発明による無線データ搬送装置の構成と無線通信方法を説明する。
【0035】
なお、本発明を適用する利用分野として、固定的な通信回線が無い拠点間においてデータを搬送する用途に好適である。例えば、プラントにおいてポンプやコンプレッサなどの機器を予防保全するために、これらの機器と監視室との間を保守員が無線端末を持って巡回する用途に本発明が適用できる。
【0036】
また、鉱山の鉱石採掘現場において、パワーショベルの予防保全をするために、パワーショベルと、荷降し場あるいは監視室との間で無線端末を搭載したダンプトラックが鉱石とともにデータを搬送する用途にも本発明は適用可能である。
【0037】
上記のほか、インターネットの通じていない地点や島へ、データやE−Mailを搬送する自動車/船舶/航空機などの応用にも本発明は適用可能である。
【0038】
以下の実施例では、鉱山における適用を例に説明するが、以下の実施例は、上記した通信回線の無い拠点間でデータを搬送する用途全般に適用することが可能である。
【実施例1】
【0039】
図1は、本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置を適用した通信システムの概要を表す。
【0040】
図1を用いて通信システムの構成を説明する。本発明による通信システムは、無線通信装置10,50と、無線データ搬送装置30,センサ装置4,データサーバ5から構成される。
【0041】
特に無線通信装置10,50は、無線データ搬送装置30に対してデータやタスクを与え、また無線データ搬送装置30からの要求に従いサービスを提供するサーバとして動作する装置である。
【0042】
一方、無線データ搬送装置30は、データやタスクを無線通信装置10,50から指示され、指示に従いクライアントとして動作する装置である。これらの装置の動作フローについては後述する。
【0043】
センサ装置4は、無線通信装置10が設置される被測定対象から情報を収集する装置である。例えば、被測定対象の各所における温度や湿度,圧力,振動,電圧,電流などの物理量を測定した結果を、センサ装置4は収集する。センサ装置4は通信路22を介して、収集した結果を無線通信装置10へ通知する。
【0044】
データサーバ5は、無線通信装置50が受信したデータを、通信路62を介して受信して保存する計算機である。データサーバ5はPCなどの汎用計算機や、ハードディスク装置,NAS(Network Attached Storage)装置,制御用コントローラ装置,監視用端末などの様々な装置を適用可能である。
【0045】
通信路22,62に関して、本発明は、通信路の種類によって制約されない構成となっている。本発明の実施例では通信路として、IEEE802.3仕様ネットワークのEthernet(登録商標)やIEEE1394,USB(登録商標),EIA−232/422/485,CAN(Controller Area Network)などの有線通信路や、IEEE802.11仕様準拠の無線LAN,IEEE802.15.4仕様準拠のセンサネットワーク,微弱無線などの無線通信路などを採用することが可能である。本実施例では、通信路22,62としてEthernetを採用した構成例で説明する。
【0046】
本発明の実施例では、無線通信部12,32で使用する無線の種類を制限しない。例えばIEEE802.11仕様準拠の無線LAN,IEEE802.15.4仕様準拠のセンサネットワーク,IEEE802.16仕様準拠のWiMAX,微弱無線,携帯電話パケット網などの無線通信手段を利用することが可能である。
【0047】
無線通信装置10,50は、それぞれ同様に構成することが可能であり、無線アンテナ11,無線通信部12,サーバ処理部13,タスクリスト14,データ通信部15,15′,バッファ管理部16,バッファ17を有する。また、バッファ管理部16は、フロー制御手段20を有する。データ通信部15,15′は、通信路22や通信路62に応じてそれぞれ適切なインターフェースを有する。以下では特に断りのない限り、データ通信部15,15′をまとめてデータ通信部15と称して説明する。
【0048】
無線通信部12は、無線アンテナ11から受信したデータをサーバ処理部13へ通知し、サーバ処理部13から通知されたデータを無線アンテナ11から送信する機能を有する。サーバ処理部13は無線通信部12から受信したデータを、バッファ管理部16を介してバッファ17あるいはタスクリスト14へ格納する。また、サーバ処理部13は、タスクリスト14に格納されたデータを無線通信部12へ通知する。データ通信部15はセンサ装置4あるいはデータサーバ5と通信路22,62を介して通信する。データ通信部15が通信に使用するデータについて、バッファ17へのデータ格納あるいはデータ取得を、データ通信部15はバッファ管理部16を介して行う。
【0049】
無線データ搬送装置30は、無線アンテナ31,無線通信部32,サーバ判定部33,タスクリスト入出力部34,タスクリスト35,クライアント処理部36,バッファ37を有する。クライアント処理部36はタスク処理手段38を有する。また、サーバ判定部33はタイマ39と測位手段40を有する。
【0050】
無線通信部32は、無線アンテナ31から受信したデータをクライアント処理部36へ通知し、クライアント処理部36とサーバ判定部33からの制御に従って、無線アンテナ31からデータを出力する。
【0051】
クライアント処理部36は、無線通信部32から受信したデータの一部をバッファ37へ格納する。また、クライアント処理部36は、無線通信部32から受信したデータの一部を、タスクリスト入出力部34を介してタスクリスト35へ格納する。クライアント処理部36は、無線通信部32やサーバ判定部33と通信して、タスクリスト35に含まれるタスク内容を処理する。タスク内容としては、指定された装置からのデータ取得やデータ送付、制御情報の送付などが挙げられる。タスクリスト35とクライアント処理部36の動作については、詳細を後述する。
【0052】
サーバ判定部33は、タスクリスト35に含まれる通信対象指定に従って、通信する対象である無線通信装置(サーバ)を、無線通信部32を制御して検索して判定する。サーバ判定部33は、通信対象を判定する際にタイマ39や測位手段40などを用いて、通信対象と通信を開始するかを判定する。これら判定の方法については、詳細を後述する。
【0053】
図2は、本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置を適用したシステムの例を表し、鉱石採掘現場を模した図である。
【0054】
図2は、ショベル1と事務所3との間をダンプトラック2が往復する様子を表す。ショベル1は鉱石を採掘する現場に配備され、事務所3と距離をおいて作業している。
【0055】
なお、ダンプトラック2′はダンプトラック2が鉱石を積載している状態を便宜的に表したものである。以下では特に断らない限り、ダンプトラック2とダンプトラック2′をまとめてダンプトラック2と称する。
【0056】
無線通信装置10とセンサ装置4とは通信路22を介して接続し、ショベル1に配備される。センサ装置4はショベル1の稼動情報を取得するようショベル1に配線設置される。また、無線データ搬送装置30は、ダンプトラック2に搭載される。無線通信装置50とデータサーバ5とは通信路62を介して接続し、事務所3に設置される。
【0057】
なお、図2では模式的にそれぞれの筐体や場所に固定されるよう示したが、これに限定されることはない。例えば、無線通信装置50は、無線データ搬送装置30と通信しやすいように、事務所3の外部に設置しても、また無線通信部12のみを別通信手段で延長して事務所3の外部に設置してもよい。
【0058】
ショベル1が稼動している際の稼動情報や様々な通信記録は、日に数百MBと大容量なデータにまでなる。この大容量データをショベル1から事務所3へ運びデータ処理をすることで、例えば予防保全などのアプリケーションが実現できる。
【0059】
本発明におけるダンプトラック2は、データのみならずデータ受領応答(ACK)も運搬する。無線通信装置50がACKを生成し、無線データ搬送装置30がACKを運搬し、無線通信装置10がACKを受信し認識することで、大容量データの生成と消去を適切に制御することが可能となる。また送達確認をすることで確実なデータ伝送が可能となるため、本発明は高信頼なアプリケーションに適用することが可能である。
【0060】
図2において、ショベル1やダンプトラック2,事務所3はそれぞれ1つの例を示したが、これに限定されることなく本発明は適用可能である。すなわち、複数のショベルに対して、複数のダンプトラックが到達し、それらのデータを複数の事務所に配送することが可能である。
【0061】
また、適用例として鉱石採掘現場を示したが、本発明の適用例はこれに限定されない。例えば、工場において制御機器と管理室との間を移動する保守員という構成を考える。制御機器にセンサ装置4と無線通信装置10,事務所にデータサーバ5と無線通信装置50をそれぞれ配し、保守員が無線データ搬送装置30を保持して制御機器と管理室との間を移動するよう構成すれば、本発明は適用可能である。
【0062】
また、他の適用例として、通信回線のない拠点間で電子メールや電子データを配送する例が挙げられる。電子メールなどの電子データの配送元と配送先との間で、車や二輪車,船舶,飛行機などの移動体がデータの配送を行う構成を考える。配送元と配送先に無線通信装置10と50をそれぞれ配し、移動体に無線データ搬送装置30を配置する。電子データを配送元から発信し、移動体が電子データを配送先まで運搬する。その後、移動体はACKを配送先から受領し、配送元にACKを通知する。
【0063】
以上のように、データの配送先と配送元との間に固定の通信網が存在せず、その間を移動体が存在する構成において、特に大容量のデータを高信頼に配送することが必要なアプリケーションにおいて、本発明は広く適用することが可能である。図3は、本発明による第一の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受する動作フローの一部、特に初めてデータや制御情報を授受するシーケンス図を表す。
【0064】
以降では便宜的に、ショベル1に設置される無線通信装置10をログ端末10,ダンプトラック2に搭載される無線データ搬送装置30をキャリア端末30,事務所3に設置される無線通信装置50を管理端末50と称する。
【0065】
図3に従い、動作フローを説明する。なお、本実施例では無線通信部12,32が使用する無線方式としてIEEE802.11仕様準拠の無線LANを想定する。そして、無線LANに関する用語を用いて通信フローを説明するが、本発明はこれに限定されない。図3のフローを、使用する無線仕様の機能に適切に割り付けることで、本発明は実施可能である。
【0066】
なお、これらの端末間では、無線LANの識別子である固有のSSID(Service Set Identifier)をあらかじめ共通に設定しておく。
【0067】
キャリア端末30は、周辺に通信相手が存在するか判定するために、固有SSIDを付与したプローブ要求を発行する(処理100)。キャリア端末30は、プローブ応答が得られるまで処理100を繰り返す。管理端末50は、自身に割り当てられているSSIDとプローブ要求に含まれるSSIDとが一致することを認識した場合、プローブ応答を返信する(処理101)。これらは無線LANにおける「アクティブ・スキャニング」と呼ばれる動作である。
【0068】
その後、キャリア端末30のサーバ判定部33は、受信したプローブ応答から管理端末50の存在を検知し、タイマ39や測位手段40から、所望の管理端末50と通信可能であることを確認する(処理102)。
【0069】
キャリア端末30は、ネットワークに接続する資格があることを認証してもらうために、管理端末50へ認証要求を発行する(処理103)。
【0070】
管理端末50は、必要に応じて認証処理を行い、その結果要求された端末の接続を認証した場合には認証応答を発行する(処理104)。ここで認証には、共通鍵認証やオープンシステム認証などを用いることが可能である。共通鍵認証はチャレンジ・レスポンス方式を用いる認証方式である。また、オープンシステム認証は、全て許可する認証方式である。
【0071】
キャリア端末30は、認証処理が完了した後、所望の管理端末50へ無線接続するためにアソシエーション要求を発行する(処理105)。
【0072】
その後、管理端末50は、キャリア端末30が認証されていることを確認し、アソシエーション応答を発行する(処理106)。
【0073】
管理端末50は、厳密に端末の認証をするために、802.1X認証をアソシエーション応答の後の実施としてもよい。アソシエーションが確立した後に、キャリア端末30は、端末がなすべき処理を知るために、管理端末50へタスクリスト要求を発行する(処理107)。
【0074】
管理端末50は、キャリア端末30に該当するタスクリストを選択し、キャリア端末30へタスクリスト応答を発行する(処理108)。
【0075】
この時点では、キャリア端末30は管理端末50へなすべき処理がタスクリストに記されていないので、キャリア端末30の処理は終了する。
【0076】
キャリア端末30が受信したタスクリストには、キャリア端末30がログ端末10に接続してデータを取得するよう記されていたとする。その後、キャリア端末30は再びプローブ要求を発行し、得られたプローブ応答からログ端末10に接続できたか、サーバ判定部33にて判定する処理を繰り返す。
【0077】
この間に、キャリア端末30が移動し、ログ端末10と通信可能な圏内に入ったものとする。
【0078】
キャリア端末30は周辺にログ端末10が存在するか判定するために、固有SSIDを付与したプローブ要求を発行する(処理110)。
【0079】
キャリア端末30は、プローブ応答が得られるまで処理110を繰り返す。ログ端末10は、自身に割り当てられているSSIDとプローブ要求に含まれるSSIDとが一致することを認識した場合、プローブ応答を返信する(処理111)。
【0080】
その後、キャリア端末30のサーバ判定部33は、受信したプローブ応答からログ端末10の存在を検知し、タイマ39や測位手段40から、所望のログ端末10と通信可能であることを確認する(処理112)。
【0081】
キャリア端末30は、ネットワークに接続する資格があることを認証してもらうために、ログ端末10へ認証要求を発行する(処理113)。
【0082】
ログ端末10は、必要に応じて認証処理を行い、その結果要求された端末の接続を認証した場合には認証応答を発行する(処理114)。
【0083】
ここでの認証には、前述と同様に共通鍵認証やオープンシステム認証などを用いることが可能である。
【0084】
キャリア端末30は、認証処理が完了した後、所望のログ端末10へ無線接続するためにアソシエーション要求を発行する(処理115)。
【0085】
その後、ログ端末10は、キャリア端末30が認証されていることを確認し、アソシエーション応答を発行する(処理116)。
【0086】
ここで厳密に端末の認証をするための処理は前述と同様である。
【0087】
アソシエーションが確立した後に、キャリア端末30は、端末がなすべき処理を知るために、ログ端末10へタスクリスト要求を発行する(処理117)。
【0088】
ログ端末10は、キャリア端末30に該当するタスクリストを選択し、キャリア端末30へタスクリスト応答を発行する(処理118)。
【0089】
ここで、タスクリストにはキャリア端末30がログ端末10からデータを取得するよう、データ識別子と共に指示されていたとする。キャリア端末30は、データ識別子を元にデータをログ端末10に要求する(処理119)。
【0090】
ログ端末10は対応するデータをキャリア端末30へ応答する(処理120)。キャリア端末30は、取得すべきデータがある限り、処理119と処理120を繰り返す。この間、キャリア端末30は、自身のバッファ37上に、受信したデータのリストを構築する。
【0091】
データの取得を繰り返すうちに、データを全て受信しないうちに、キャリア端末30を搭載するダンプトラック2が移動することが起こりうる。その場合には、キャリア端末30は正常にデータ受信を完了したデータのリストを保持する。そして、キャリア端末30は、再び所定のSSIDをセットしたプローブ要求を発行し、接続相手を発見することを繰り返す。
【0092】
図4は、本発明による第一の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受する動作フローの一部、特に2回目以降データや制御情報を授受するシーケンス図を表す。以下、図面を用いて説明する。
【0093】
最初、キャリア端末30は通信相手を発見するまでプローブ要求を発行する。
【0094】
この際、キャリア端末30は、通信可能圏内に存在する無線装置に応じて、タスクリスト35を参照し、記された処理を実行する。本実施例では、図3の処理の後に管理端末50の通信可能圏内にキャリア端末30が入った例を説明する。
【0095】
管理端末50の通信可能圏内にキャリア端末30が入った後は、キャリア端末30と管理端末50とは、図3と同様の接続処理を実行する(処理100〜処理106)。
【0096】
アソシエーション応答を得たキャリア端末30は、タスクリスト要求を管理端末50に発行する(処理130)。
【0097】
管理端末50は、受信データを出力するタスクを、タスクリストに含めてキャリア端末30に応答する(処理131)。
【0098】
タスクリストを受信したキャリア端末30は、タスクリストの内容を解して自身がログ端末10から受信したデータを管理端末50へ出力する(処理132)。
【0099】
データを受信できた管理端末50は、受信したデータに対応した受領応答(ACK)をキャリア端末30へ通知する(処理133)。
【0100】
キャリア端末30は、バッファ37上にACKのリストを生成して保持する。
【0101】
キャリア端末30は、ログ端末10から受信したデータのある限り、処理132〜133を繰り返す。
【0102】
その後、キャリア端末30を搭載するダンプトラック2が移動し、再びログ端末10の通信可能圏内に入るとする。キャリア端末30は、ログ端末10を認識し、タスクリストに記される処理をするために接続処理を実行する(処理110〜処理116)。
【0103】
アソシエーションが確立した後に、キャリア端末30は、端末がなすべき処理を知るために、ログ端末10へタスクリスト要求を発行する(処理117)。
【0104】
ログ端末10は、キャリア端末30に該当するタスクリストを選択し、キャリア端末30へタスクリスト応答を発行する(処理118)。
【0105】
その後、キャリア端末30は、自身のバッファ37に保持していたACKのリストをログ端末10に通知する(処理134)。
【0106】
ログ端末10は、ACKリストに記載されたACKに対して、対応するデータが管理端末50へ送達されたことを認識する。そしてログ端末10は、自身で保持していた対応データを消去する(処理135)。
【0107】
消去し終えたログ端末10は、ACKリストの受領応答をキャリア端末30へ返答する(処理136)。
ここで、タスクリストにはキャリア端末30がログ端末10からデータを取得するよう、データ識別子と共に指示されていたとする。キャリア端末30は、データ識別子を元にデータをログ端末10に要求する(処理119)。
【0108】
ログ端末10は対応するデータをキャリア端末30へ応答する(処理120)。
【0109】
キャリア端末30は、取得すべきデータがある限り、処理119と処理120を繰り返す。この間、キャリア端末30は、自身のバッファ37上に、受信したデータのリストを構築する。
【0110】
以上のようにして、キャリア端末30は、ログ端末10と管理端末50との間を移動して、データとデータ受領応答(ACK)を相互に受け渡しするのを仲介する。
【0111】
その結果、ログ端末10はデータの送達を確認してデータを消去することが可能となり、データを保持するメモリ容量を過剰にする必要がなくなり、適正なコストでログ端末10を構築することが可能となる。
【0112】
また、送達を確認してからデータを消去するため、ログ端末10と管理端末50間でデータの欠損ない確実なデータ授受が可能となる。
【0113】
更に、本発明により、自動的にデータを収集するキャリア端末30が複数あり全てが管理端末50に到達しない環境下においても、信頼性の高いデータ授受が可能となる。その結果、自動的にデータを受信するキャリア端末30を数多く用意することが可能となり、データ送達フローに問題は生じない。これは、後述する実施例で示す、これはデータの並列伝送のために有効な技術である。
【0114】
図5は、本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリスト35の構成例を示す。
【0115】
キャリア端末30のタスクリスト35は、優先度70,宛先IPアドレス71,命令元IPアドレス72,タスク73,引数74,宛先位置75,命令元位置76を有するテーブルとして構成される。また、図5では、テーブルのタプル80〜83を有するテーブルを例として示している。それぞれのタプルが一つのタスク(処理単位)に相当する。
【0116】
なお、本実施例では、ログ端末10のIPアドレスが192.168.1.10、キャリア端末30のIPアドレスが192.168.1.30、管理端末50のIPアドレスが192.168.1.50として説明する。
【0117】
優先度70は、宛先IPアドレス71が同一のタスクに関して、タスクの実行順序を示す。例えば、タプル80とタプル82,タプル83は、いずれも宛先IPアドレス192.168.1.10であるが、優先度すなわち実行順序はタプル80,82,83の順であることを表している。
【0118】
宛先IPアドレス71は、当該タスクを実行する対象機器のIPアドレスを示す。
【0119】
命令元IPアドレス72は、当該タスクを発行した機器のIPアドレスを示す。
【0120】
命令元IPアドレス72は、後述するタスクリスト更新の際に必要となる。
【0121】
タスク73は、当該タスクリストの保有者が実行する処理内容を示す。また、引数74はタスク73の処理の対象を示す。
【0122】
タスク73の内容として、引数74の内容を「通知」する、あるいは「取得」する、などがある。
【0123】
宛先位置75,命令元位置76は、各装置の物理位置に関する情報が記載されている。後述するサーバ判定部33で、対象となる装置と自身の位置との関連を判定する際に使用する。宛先位置75,命令元位置76に記載される情報は、キャリア端末30の位置との関連が分かる情報であれば良い。本実施例ではGPS(Global Positioning System)から取得可能な緯度と経度に関する情報を記載し、それぞれlat(Latitude)とlon(Longitude)で表す。これらの情報はあらかじめタスクリストを生成する装置にて事前に把握しておいても、対象装置から取得しても良いが、本実施例では前者の方式を用いて説明する。
【0124】
次に、図5における、タスクリスト35の内容を解説する。
【0125】
タプル80は、「キャリア端末30」からの命令で、「ログ端末10」に対して、「ACKリスト」を「通知」する処理を優先度「10」で処理することを意味する。同様にタプル81は、「キャリア端末30」からの命令で、「管理端末50」に対して、「データ」があれば「通知」する処理を優先度「10」で処理することを意味する。タプル82は、「管理端末50」からの命令で、「ログ端末10」に対して、「A001.dat」という名称のデータを「取得」する処理を優先度「20」で処理すること意味する。タプル83は、「管理端末50」からの命令で、「ログ端末10」に対して、キャリア端末30がまだ取得していないデータのうち「最新データ」を「取得」する処理を優先度「30」で処理することを意味する。
【0126】
このような、タスクリスト35の内容をクライアント処理部36やサーバ判定部33が参照することで、キャリア端末30は柔軟なデータ授受動作を実行することが可能となる。
【0127】
図6は、本発明による第一の実施形態における無線データ搬送装置のクライアント処理部36の動作を表すフローチャートである。
【0128】
クライアント処理部36は、所定の接続処理を行った後に、タスクリスト35に記載されている内容に従いデータや制御情報の授受を行う機能を有する。タスクリスト35に記載される内容を変更可能に構成することにより、ログ端末10や管理端末50が希望する通りにキャリア端末30を制御することが可能となる。
【0129】
以下、図6を用いてクライアント処理部36の動作を説明する。
クライアント処理部36は、最初にプローブ要求の発行を無線通信部32に通知する(処理140)。
【0130】
無線通信部32からのプローブ応答の有無状態を判定する(処理141)。
【0131】
プローブ応答がなければ処理140を繰り返す。プローブ応答があれば、プローブ応答元をタスクリスト35の宛先IPアドレス71から検索する(処理142)。
【0132】
検索した結果、プローブ応答元がタスクリスト35の宛先IPアドレス71に存在するか判定する(処理143)。
【0133】
宛先IPアドレス71に存在しなかった場合、処理140を繰り返す。プローブ応答元がタスクリスト35の宛先IPアドレス71に存在した(既知であった)場合、さらに全てのプローブ応答元の検索が完了したか判定する(処理144)。
【0134】
全ての応答の検索がまだであれば、処理142を繰り返す。全ての応答の検索を終えたら、クライアント処理部36はサーバ判定部33に検出された全てのプローブ応答元を通知し、サーバとして適切な対象の判定を依頼する(処理145)。
【0135】
ここでサーバとはログ端末10や管理端末50を意味する。サーバ判定の詳細については後述する。
【0136】
クライアント処理部36は、サーバ判定部33から適切なサーバを通信先として受領し、通信開始が可能か判定する(処理146)。
【0137】
通信可能なサーバがなければ、処理140を繰り返す。通信可能なサーバが存在する場合、クライアント処理部36は、無線通信部32に対して認証要求を発行する(処理147)。
【0138】
引き続き、クライアント処理部36は無線通信部32に対してアソシエーション要求を発行する(処理148)。
【0139】
ここまででサーバとの通信準備が整う。引き続き、クライアント処理部36は、現在アソシエーション中のサーバに対してタスクリストを要求するよう無線通信部32に通知する(処理149)。
【0140】
取得したタスクリストを用いてタスクリスト35を更新するよう、タスクリスト入出力部34に依頼する(処理150)。処理150の詳細については後述する。
【0141】
その後、タスクリスト35より、現在アソシエーション中のサーバのIPアドレスを宛先IPアドレス71としてもつタスクの中から、優先度のもっとも高いタスクを取得する(処理151)。
【0142】
タスクを取得できなかった場合、クライアント処理部の処理は終了する(処理152)。
【0143】
タスクを取得した場合、図5に説明した内容で処理を実行し(処理153)、処理151を繰り返す。
【0144】
図7は、本発明の第一の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリスト入出力部34の動作を表すフローチャートである。
【0145】
以下、図7に用いてタスクリスト入出力部34の動作を説明する。
タスクリスト入出力34は、クライアント処理部36からのアクセス要求のタイプを判定する(処理161)。
読み出し要求であった場合、要求のあるタプルをタスクリスト35から読み出して応答し(処理162)、タスクリスト入出力部34の処理を終了する。
【0146】
タスクリスト更新要求であった場合、タスクリストを更新するサーバのIPアドレスと一致する命令元IPアドレス72を持つタプルを検索する(処理163)。
【0147】
該当するタプルが存在する場合、該当タプルをタスクリスト35から消去する(処理164)。
【0148】
その後、更新するよう要求のあったタスクをタスクリスト35へ追加し(処理165)、タスクリスト入出力部34の処理を終了する。
【0149】
上記の処理により、タスクを依頼するサーバは、過去に依頼したタスクによらず最新のタスクを依頼することが可能となる。
【0150】
本発明の実施例では、例えば管理端末50は同一タスクを複数のキャリア端末30に依頼し、どれか一つが有効なデータを運搬することを期待するような利用方法をとることが可能である。また、タスクを依頼する時点と結果を得る時点の時間差も大きいので、過去のタスクはある時点で不要となる可能性がある。そのような場合に、タスクを初期化する本機能により、依頼から結果まで時間差が大きくなる構成であっても効率的にデータの授受をすることが可能となる。
【0151】
また、更新するタスクリストは、無線通信部32を介してクライアント処理部36へ入力されるだけでない。クライアント処理部36は、更新するタスクリストをEthernetやEIA−232などの他の通信手段(図示なし)を介して受信し、その後タスク入出力部34へタスクリストの更新要求を発行しても良い。その場合、外部の端末からタスクリストを、例えばEthernetなどの有線ネットワークを介して保守管理することが可能となる。
【0152】
図8は、本発明の第一の実施形態における無線データ搬送装置のサーバ判定部33の動作を表すフローチャートである。
【0153】
サーバ判定部33の目的は、通信相手を自動的に決定するために、所定の時間間隔で所定の受信信号強度を保ち、かつ近傍にある無線通信装置を選択することにある。図8に従い、サーバ判定部33の動作を説明する。
【0154】
サーバ判定部33は、クライアント処理部36よりプローブ要求に応答した無線通信装置(以後サーバと称する)のリストを受信する(処理180)。
【0155】
続いて、対象となるサーバを選択する判定期間となる時間をタイマ39に設定する(処理181)。
【0156】
サーバ判定部33は、タイマ39がタイムアウトしていないか判定する(処理182)。
【0157】
タイムアウトしていない場合には、処理180で検知したサーバに対して、受信信号強度を測定するためにプローブ要求を発行する(処理183)。
【0158】
プローブ応答を返してきたサーバに関して、それぞれの受信信号強度を取得する(処理184)。
【0159】
受信信号強度として、専用回路で無線のキャリア周波数の信号強度を取得しても良いが、無線通信部32が出力するRSSI(Received Signal Strength Indicator)を用いても良い。取得した受信信号強度は、プローブ応答を返してきたサーバと対応付けて保存する。その後、一定時間を待ち(処理185)、処理182を繰り返す。
【0160】
ここでの目的は、所定の時間間隔で所定の受信信号強度があることを確認することで、キャリア端末30が移動中に検知する可能性のある行程近傍にあるサーバを通信対象とせずに、キャリア端末30が対象となるログ端末10や管理端末50の脇に停車していることを検知することにある。
【0161】
そこで、例えばタイマ39にセットする値は3秒として、処理185で待つ時間を1秒とすればよい。
【0162】
処理182においてタイマ39がタイムアウトした場合には、処理184で取得してきた、サーバの受信信号強度が所定の閾値を越える複数サーバの位置情報を、タスクリスト35の宛先位置75から取得し、自身の位置も測位手段40から取得する(処理186)。
【0163】
複数のサーバから、自身の位置にもっとも近いサーバを計算して選択する(処理187)。
【0164】
その結果が、所定の範囲にあるか判定する(処理188)。
【0165】
範囲の閾値を決定する際には、例えばGPSのような測位手段の検出誤差を考慮して決定すると良い。処理188の結果、所定範囲内にサーバがある場合には「通信可能サーバあり」とクライアント処理部36にサーバの識別子を通知し(処理189)、所定範囲内にサーバがない場合には「通信可能サーバなし」とクライアント処理部36へ通知する(処理190)。
【0166】
なお、測位手段40が無い場合でも本発明は有効である。その場合、上記フローチャートにおいて処理186から処理188が不要となる。代わりに、通信可能サーバの選定に、受信信号強度のみを利用することとなる。受信信号強度が最も強いサーバであっても、所定の閾値を下回る受信信号強度である場合には、「通信可能サーバなし」としてクライアント処理部36へ通知する。受信信号強度が所定の閾値を上回る場合、受信信号強度の最も強いサーバを「通信可能サーバあり」としてクライアント処理部36へ通知する。
【0167】
図9は、本発明の第一の実施形態における無線データ搬送装置のクライアント処理部36におけるタスク処理手段38の動作を表すフローチャートである。
【0168】
以下、図9を用いてタスク処理手段38の動作を説明する。
【0169】
タスク処理手段38は、クライアント処理部36からの指示でタスクリストの内容を処理する。そこで、タスク処理手段38は指示されたタスクの要求タイプを判定する(処理200)。
【0170】
タスクの要求タイプが「取得」であった場合、データ名の指定の有無を判定する(処理201)。
【0171】
データ名の指定は、タスクリスト35において引数74に指定される内容である。データ名の指定がなく「最新データ」の要求であった場合は処理202に分岐し、データ名指定があった場合は処理205へ分岐する。
【0172】
タスク処理手段38は、指示されたタスクが最新データの取得要求であった場合、最新データのリストを通信相手(例えばログ端末10)へ要求する(処理202)。
【0173】
ログ端末10はまだ送信していないデータなどをリストにして、要求に応える。その結果、タスク処理手段38は最新データのリストを取得する(処理203)。
【0174】
タスク処理手段38は、データリストから一つデータを選択する(処理204)。
【0175】
その後、選択したデータを指定してログ端末10へ取得要求を発行する(処理205)。
【0176】
ログ端末10は指定されたデータを返答する。タスク処理手段38は受信データリスト(図示なし)に受信データ名を追記し、受信データをバッファ37に保存し、受領応答を発行する(処理206)。
【0177】
その後、最新データのリストに未取得のデータがないか判定する(処理207)。
【0178】
残データがなければ、処理は終了する。残データがあれば、処理204から繰り返す。
【0179】
一方、処理200において、タスクの要求タイプが「通知」であった場合、通知すべき内容の判定を行う(処理210)。
【0180】
通知内容が「ACKリスト」であった場合、ACKリストを通信相手(例えばログ端末10)へ通知し、処理は終了する。
【0181】
通知内容が「データ」であった場合、処理206で作成していた受信データリストからデータを取り出す(処理211)。
【0182】
取り出したデータを通信相手(例えば管理端末50)へ通知する(処理212)。
【0183】
管理端末50はデータを受信すると受領応答を発行する。そこでタスク処理手段38は、受領応答を受信する(処理213)。
【0184】
タスク処理手段38は、当該データの受領応答を得たとして、ACKリストに当該データ名を追記しリストの更新をする(処理214)。
【0185】
ここでACKリストとは、通信相手と対応させた、データ名のリストである。記載されているデータは、キャリア端末30が受領応答を受けたデータ、すなわち、最終宛先まで届けたことを意味するデータである。
【0186】
その後、タスク処理手段38は、受信データリストに通知していないデータが残っていないか判定する(処理215)。残データがあれば処理211から繰り返し、残データがない場合は処理を終了する。
【0187】
図10は、本発明の第一の実施形態における無線通信装置のサーバ処理部13の動作を表すフローチャートである。
【0188】
サーバ処理部13は、キャリア端末30からのタスクリスト要求やACKリスト通知などの様々な処理要求に対して、処理要求に応じたデータの入出力や管理をする。ログ端末10と管理端末50はそれぞれサーバ処理部13を有するが、同一構成のサーバ処理部13とすることができる。
【0189】
以下、図10を用いてサーバ処理部13の動作を説明する。
【0190】
サーバ処理部13は、無線通信部12を介して通知される処理要求のタイプを判別する(処理230)。
【0191】
処理要求がタスクリスト要求であった場合、サーバ処理部13はキャリア端末30に対応したタスクを、タスクリスト14から選択して通知し(処理231)、処理を終了する。
【0192】
タスクリスト14は、あらかじめ固定した処理の記述であっても良い。また、ログ端末10におけるフロー制御手段20が、データ通知をしたがACKを受信していないデータについて、再送すべくタスクリスト14にデータ名指定のタスク、例えば図5のタプル82のようなタスクを追記しても良い。同様に、管理端末50におけるフロー制御手段20が、データのシーケンス番号が飛んでおり、一定時間経過してもデータ受信をしないデータを検知した場合、当該データを再送する要求をタスクリスト14に追記しても良い。
【0193】
処理230において、処理要求がデータリスト要求であった場合、サーバ処理部13は、バッファ管理部16へデータリスト作成を依頼し、バッファ管理部16はデータリストを作成する(処理232)。
【0194】
その後サーバ処理部13は、バッファ管理部16からデータリストを受領し、データリスト要求を発行した端末(例えばキャリア端末30)へデータリストを通知し(処理233)、処理を終了する。
【0195】
ここで、データリストの作成には、単純にバッファ17に格納されるデータをリスト化しても良い。また、データの送達確率を上げるために、データごとに複数回送信するようデータのリストを用意しても良い。複数回送信するためには、送信回数が分かるようにデータ毎にカウンタ(図示なし)をバッファ管理部16に用意する。バッファ管理部16はカウンタを参照して、所定の送信回数に満たないデータを検索し、データリストを作成する。
【0196】
処理230において、処理要求がACKリスト通知であった場合、サーバ処理部13は、ACKリストを受信する(処理234)。
【0197】
その後、サーバ処理部13は、受信したACKリストから、データ名を取得する(処理235)。
【0198】
サーバ処理部13は、取得したデータ名をバッファ管理部16に通知し、データ消去の指示をし、バッファ管理部16は、当該データを消去する(処理236)。
【0199】
サーバ処理部13は、ACKリストに消去指示をしていないデータの残りがあるか判定する(処理237)。
【0200】
残データがある場合、処理235から繰り返す。残データがない場合、ACKリストを受領し処理が完了したことを、ACKリスト通知を発行してきた端末(例えばキャリア端末30)へ応答し(処理238)、処理を終了する。
【0201】
処理230において、処理要求がデータ名を指定したデータ要求であった場合、サーバ処理部13は、当該データ名を含めてバッファ管理部16へデータ取得を指示する(処理239)。
【0202】
サーバ処理部13は取得したデータを、データ要求元に応答して(処理240)、処理を終了する。
【0203】
処理230において、処理要求がデータ通知であった場合、サーバ処理部13は、当該データを受信し、バッファ管理部16へデータを格納するよう指示する(処理241)。
【0204】
その後サーバ処理部13は、データ通知の受領応答をデータ通知元へ発行し(処理242)、処理を終了する。
【0205】
なお、それぞれの端末の役目や処理内容を固定化することで、サーバ処理部13の処理の一部を縮退させても良い。
【0206】
例えば無線装置の各端末の機能を固定化することで、タスクリスト処理を削減することが可能である。その場合、図3や図4における処理フローでタスクリスト要求と応答を削減できるが、あわせてサーバ処理部13におけるタイプ判別処理230で処理231が削減され、タスクリスト要求を判別することが不要となる。
【0207】
図11は、本発明の第一の実施形態における無線通信装置の構成の一例を表す。
【0208】
無線通信装置10,50と無線データ搬送装置30は、同様な構成で実現することが可能である。本実施例では、無線通信装置10を例に構成の説明をする。併せて、無線データ搬送装置30における機能を実現するための差分も図11に記載したので、差の部分もあわせて説明する。
【0209】
無線通信装置10は、CPU41,RAM42,不揮発メモリ43,GPS44,内部バス45,データ通信部15,無線通信部12,アンテナ11などの要素を有する。
【0210】
これら要素は内部バス45により結合して相互にデータを交換する。内部バス45は、これらの要素を結合するために必要な性能や機能を備えてなるバスであり、例として非同期メモリバスやPCI(Peripheral Component Interconnect)バス,PCI Expressなどを利用可能である。
【0211】
CPU41は、不揮発メモリ43に保持されているサーバ処理部13や、バッファ管理部16,タスクリスト14などを実現するプログラムの命令や定数を読み出し、これら命令や定数を必要に応じてRAM42へ格納し、読み出しあるいは書き出しを行い、ソフトウェア処理を実行する。不揮発メモリ43として、電気的に消去や書き込み可能なEEPROMやフラッシュメモリ,ハードディスク装置やCD−ROMなどの光磁気メディアが例として挙げられる。
【0212】
バッファ17はRAM42に必要に応じて確保される。タスクリスト14は、固定的に保持する場合には不揮発メモリ43に保存すればよく、また無線装置の起動後に更新するのであれば、RAM42に確保すればよい。
【0213】
無線通信部12は、それ自体を独立したモジュール構成として、内部バス45に接続する形態としても良い。無線通信部12は内部バス45に直接接続する、あるいは必要に応じて無線通信部12と内部バス45を互いに接続するブリッジ部品(図示なし)を介して接続しても良い。
【0214】
例えば、無線通信部12がUSBによるインターフェースを有し、内部バス45がPCIバスである場合には、PCI−USBブリッジLSI(図示なし)を用いて接続するのが良い。また、無線通信部12がPCカード仕様によるインターフェースを有し、内部バス45がPCIバスである場合には、同様にPCI−PCカードブリッジLSI(図示なし)を用いて接続するのが良い。また、無線通信部12がEthernet(登録商標)によるインターフェースを有し、内部バス45がPCIバスである場合には、LAN制御用LSI(図示なし)を介して接続するのが良い。この場合、無線通信部12とアンテナ11を、Ethernetケーブルを用いて無線通信装置10から引き離して実装することが可能となる。
【0215】
データ通信部15は、通信路22から受信した通信データをCPU41へ報告し、また、内部バス45を介してCPU41から要求されたデータを通信路22へ送信する。ここで、通信路22にEthernetの例を考えると、データ通信部15として、内部バスとのインターフェースを有するLAN制御用LSIを採用するのが好適である。
【0216】
データ通信部12は、自身の状態変化や処理要求が発生したことをCPU41へ割込み信号(図示なし)で通知する。CPU41は、上記ソフトウェアの実行、データ通信部15からの割込みの処理を行い、目的とする機能を実現する。
【0217】
なお、図11の不揮発メモリ43において、ログ/管理端末用の機能と、キャリア端末用の機能をそれぞれ点線で囲んで示している。これらは排他的に実装しても、あるいは同時に実装してもよい。同時に実装する場合には、CPU41が自身の装置の役割(ログ端末,管理端末,キャリア端末)を認識して、適切な機能を有効化するよう動作すればよい。
【0218】
本発明により、ログ端末10と管理端末50との間で、キャリア端末30が往復する際に、データを相互に運搬し、データの送達確認も相互に運搬することで、データの生成や消去を適切に管理することが可能となる。
【0219】
データの大容量化が進んだ場合でも、適正なコストでデータの取得を行うことが可能となる。また、送達確認を持って元のデータを消去することが可能となり、信頼性が向上する。さらに、送達確認を受信できないデータに関して、自発的に再送、あるいは再送を要求することが可能となるので、信頼性が向上する。
【実施例2】
【0220】
図12は、本発明の第二の実施形態における無線データ搬送装置を適用した通信システムの概要を表す。
【0221】
実施例に使用する符号が同一である機能や要素等は、特に断りのない限り、実施例1で説明した機能や要素等と同一であることを意味する。
【0222】
実施例1と比べて、本実施例における通信システムは、無線通信装置310,350の構成要件が異なる。本実施例における無線通信装置310,350は、新たにキャリアリスト18とキャリア設定部19を有し、サーバ処理部313の処理が変更となる。サーバ処理部313は、キャリアリスト18に含まれるキャリア端末を優先的に選択する機能が追加される。
【0223】
以降では便宜的に、無線通信装置310をログ端末310,無線通信装置350を管理端末350と称する。
【0224】
例えば、管理端末350を操作する管理者は、日毎の作業において、どのダンプトラック2にデータ搬送をさせると効率がよいか、事前に運行計画などで把握しているとする。その場合、管理端末350のキャリア設定部19は、効率的にデータ搬送が可能なダンプトラック2に搭載されるキャリア端末30のリストを作成し、キャリアリスト18に設定する。
【0225】
キャリア端末30がキャリアリスト18を管理端末350から受信し、ログ端末310に配送することで、キャリアリスト18を管理端末350とログ端末310の間で同期することができる。
【0226】
ログ端末310は、キャリアリスト18に記載されているキャリア端末30にのみデータを送信するように構成する。高頻度に往復するキャリア端末30に優先的にデータを渡すことで、低頻度に往復するキャリア端末30にデータやACKなどの制御情報を保持され続けられることがなくなる。その結果、ログ端末310と管理端末350との間で、データの欠損が少なく、効率的なデータの配送が可能となる。
【0227】
なお、本実施例は、キャリア端末30が実施例1と同じ構成で実現可能である。
【0228】
図13は、本発明の第二の実施形態における無線装置間でデータや制御情報を授受する動作フローの一部であり、データや制御情報を授受するシーケンス図を表す。
【0229】
以下、図13を用いて、キャリアリスト18を用いた動作を説明する。
【0230】
最初、キャリア端末30は通信相手を発見するまでプローブ要求を発行する。
この際、キャリア端末30は、通信可能圏内に存在する装置に応じて、タスクリスト35を参照し、記載された処理を実行する。本実施例では、管理端末350の通信可能圏内にキャリア端末30が入った例を説明する。
【0231】
管理端末350の通信可能圏内にキャリア端末30が入った後は、キャリア端末30と管理端末350とは、図3と同様の接続処理を実行する(処理100〜処理106)。
【0232】
アソシエーション応答を得たキャリア端末30は、タスクリスト要求を管理端末350に発行する(処理260)。管理端末350は、受信データを出力するタスクを、タスクリストに含めてキャリア端末30に応答する(処理261)。
【0233】
タスクリストを受信したキャリア端末30は、タスクリストで新たに追加された「キャリアリストを取得する」というタスクにより、キャリアリストを要求する(処理262)。管理端末350は、キャリアリスト18の情報をキャリア端末30へ応答する(処理263)。
【0234】
その後、キャリア端末30を搭載するダンプトラック2が移動し、ログ端末310の通信可能圏内に入るとする。キャリア端末30は、ログ端末310を認識し、タスクリストに記される処理をするために接続処理を実行する(処理110〜処理116)。
【0235】
アソシエーションが確立した後に、キャリア端末30は、端末がなすべき処理を知るために、ログ端末310へタスクリスト要求を発行する(処理270)。
【0236】
ログ端末310は、キャリア端末30に該当するタスクリストを選択し、キャリア端末30へタスクリスト応答を発行する(処理271)。
【0237】
その後、キャリア端末30は、管理端末350により設定されたタスクリストにより、キャリアリスト18をログ端末310へ通知する(処理272)。
【0238】
ログ端末310は、キャリアリスト18の受領を確認し、受領応答を通知する(処理273)。
【0239】
キャリア端末30は、データを取得しようとデータリストをログ端末310へ要求する(処理274)。
【0240】
ここでログ端末310は、自身が有するキャリアリスト18を参照して、動作を変更する。すなわち、キャリアリスト18に記載されている「データを渡すことを許可された」キャリア端末30からの要求であれば、正当なデータリストを応答する。
【0241】
一方、キャリアリスト18に記載されていない、「データを渡すことを許可されていない」キャリア端末30からの要求であれば、空のデータリストを応答する(処理275)。
【0242】
データを渡すことを許可されたキャリア端末30は、その後引き続きデータを要求し(処理276)、その応答をログ端末310より得る(処理277)。
【0243】
一方、データを渡すことを許可されていないキャリア端末30は、空のデータリストを受領した時点で、処理が完了する。
【0244】
以上により、キャリアリスト18を利用することで、キャリア端末30へデータを渡すか否かを制御することが可能となる。その結果、管理端末350が計画したキャリア端末30にのみデータを渡すこととなり、データの送達間隔を密にすることが可能となる。
【0245】
図14は、本発明の第二の実施形態における無線通信装置のサーバ処理部313の動作を表すフローチャートの部分である。
【0246】
本実施例を実現するために、図10におけるサーバ処理のうち、データリスト要求からの処理内容を変更し、キャリアリスト通知の処理を追加する。他のサーバ処理については図10と同様であり、図14から省略する。
【0247】
以下、図14を用いて変更と追加した機能の動作を説明する。
【0248】
サーバ処理部313は、無線通信部12を介して通知される処理要求のタイプを判別する(処理230′)。
【0249】
処理要求がデータリスト要求であった場合、サーバ処理部313は、キャリアリスト18を用いて、要求元はキャリアリスト18に記載のある端末か判定する(処理280)。
【0250】
キャリアリスト18に記載されている端末からの要求の場合、バッファ管理部16へデータリスト作成を依頼し、バッファ管理部16はデータリストを作成する(処理232)。
【0251】
一方、処理280において、キャリアリスト18に記載されていない端末からの要求と判明した場合、サーバ処理部313は、空のデータリストを作成する(処理281)。
【0252】
その後サーバ処理部313は、データリスト要求を発行した端末(例えばキャリア端末30)へデータリストを通知し(処理233)、サーバ処理を終了する。
【0253】
また、処理230′における処理要求がキャリアリスト通知であった場合、キャリアリスト18を格納する(処理282)。
【0254】
その後、キャリアリスト18を通知してきた端末へキャリアリスト受領応答を発行し(処理283)、サーバ処理を終了する。
【0255】
図15は、本発明の第二の実施形態における無線データ搬送装置のタスクリスト35の構成例を示す。
【0256】
図15は、図5で示したタスクリストの他に、本実施例を実現するために、管理端末350から追加されるタプル84を示している。タプル84のタスクは優先度高く実行される必要があるため、最新データを取得するタプル83の優先度より高く、優先度70は15が設定される。引数74とタスク73には「キャリアリスト」を「通知」するよう構成される。
【0257】
以上のようにキャリアリスト18とキャリアリスト設定部19を無線通信端末310,350に追加し、サーバ処理部313とタスクリスト14を構成することで、往復頻度の高いキャリア端末30を指定して、データ搬送を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0258】
本発明は大容量データを自動的に搬送する装置と通信方式に関し、特に、複数の固定局間において、移動局が固定局と無線通信を介して大容量データや応答の搬送を仲介する通信装置、又は通信方式に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0259】
1 ショベル
2 ダンプトラック
3 事務所
4 センサ装置
5 データサーバ
10,50,310,350 無線通信装置
11 アンテナ
12,32 無線通信部
13,313 サーバ処理部
14,35 タスクリスト
15,15′ データ通信部
16 バッファ管理部
17,37 バッファ
18 キャリアリスト
19 キャリアリスト設定部
22,62 通信路
30 無線データ搬送装置
33 サーバ判定部
34 タスクリスト入出力部
36 クライアント処理部
38 タスク処理手段
39 タイマ
40 測位手段
41 CPU
42 RAM
43 不揮発メモリ
44 GPS
45 内部バス
70〜76 タスクリストの属性要素
80〜84 タスクリストのタプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
通信対象である複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容とが記載されるクライアントタスクリストと、
該クライアントタスクリストに従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とする無線中継搬送装置。
【請求項2】
請求項1の無線中継搬送装置において、
前記サーバ判定部は前記無線中継搬送装置自身の位置情報を出力する測位手段を備え、
前記クライアントタスクリストは前記無線通信装置の位置情報を備え、
前記サーバ判定部は所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置のうち、さらに前記無線中継搬送装置自身の位置から最も近くにある前記無線通信装置を選択することを特徴とする無線中継搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2の無線中継搬送装置において、
前記無線中継搬送装置は、
タスクリスト入出力部を有し、
外部端末から更新すべきタスクを記載した入力タスクリストを受信し、
前記タスクリスト入出力部は、前記入力タスクリストを入力する前記外部端末を判定して前記タスクリストの一部を前記入力タスクリストで更新する機能を有し、
前記クライアント処理部は、前記タスクリスト入出力部を介して前記入力タスクリストの更新をすることを特徴とする無線中継搬送装置。
【請求項4】
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の無線通信装置と通信すべき処理内容とが記載されるサーバタスクリストと、を有し、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは少なくとも二つの無線通信装置と、少なくとも一つの無線中継搬送装置からなり、
該無線中継搬送装置は、
前記無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるクライアントタスクリストと、
前記クライアントタスクリストの記載に従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とし、
前記無線通信装置は、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるサーバタスクリストと、を備え、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項5の無線通信システムにおいて、
前記無線中継搬送装置は、
タスクリスト入出力部を有し、
外部端末から更新すべきタスクを記載した入力タスクリストを受信し、
前記タスクリスト入出力部は、前記入力タスクリストを入力する前記外部端末を判定して前記クライアントタスクリストの一部を前記入力タスクリストで更新する機能を有し、
前記クライアント処理部は、前記タスクリスト入出力部を介して前記クライアントタスクリストを更新することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項5又は6の無線通信システムにおいて、
前記無線通信装置は、データ通信部とバッファ管理部とサーババッファとを有し、
前記データ通信部は、前記無線通信装置の外部装置との間でデータ受領あるいはデータ出力するインターフェースを有し、
前記サーババッファは、前記データ通信部と入出力するデータを保持し、
前記バッファ管理部は、フロー制御手段を有し、
前記フロー制御手段は、前記サーババッファに保存されるデータの内訳や欠損を管理する機能と、
データの欠損を検知した場合には前記サーバタスクリストへ欠損データを再送するタスクを追加する機能を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項5から7のうちの1つの無線通信システムにおいて、
前記無線中継搬送装置はクライアントバッファを備え、
前記クライアント処理部は、
前記無線通信装置へデータを送信し、
前記無線通信装置からのデータ受領応答を前記データと対応付けて前記クライアントバッファへ受領応答リストとして保存し、
他の前記無線通信装置へ前記受領応答リストを出力することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
複数の無線通信装置間で無線中継通信装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容とが記載されるサーバタスクリストと、
データの搬送に使用すべき前記無線中継搬送装置を記したキャリアリストとを備え、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力し、
前記キャリアリストを入力し、前記キャリアリストに記載の無い前記無線中継搬送装置からのデータ要求に対してデータの送出を行わないことを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
複数の無線通信装置間で無線中継搬送装置を介してデータの授受を行う無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは少なくとも二つの無線通信装置と、少なくとも一つの無線中継搬送装置からなり、
前記無線中継搬送装置は、
前記無線通信装置から無線通信を介してデータの送受信を行うクライアント無線通信部と、
複数の前記無線通信装置のうち通信対象を選択するサーバ判定部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容が記載されるクライアントタスクリストと、
前記クライアントタスクリストの記載に従って通信対象の指示を行いデータとデータ受領応答との授受を行うクライアント処理部とを有し、
前記サーバ判定部はタイマを有し、所定時間間隔で所定の無線受信信号強度で通信可能な前記無線通信装置を選択することを特徴とし、
前記無線通信装置は、
複数の無線中継搬送装置から無線通信を介してデータの送受信を行うサーバ無線通信部と、
複数の前記無線中継搬送装置からの要求に従い処理を行うサーバ処理部と、
複数の前記無線通信装置と通信すべき処理内容との記載されるサーバタスクリストと、
データの搬送に使用すべき前記無線中継搬送装置を記したキャリアリストと、を有し、
前記サーバ処理部は、前記無線中継搬送装置との間でデータを入力し、前記データと対応したデータ受領応答を出力し、前記サーバタスクリストを入出力し、
前記キャリアリストを入力し、前記キャリアリストに記載の無い前記無線中継搬送装置からのデータ要求に対してデータの送出を行わないことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−139186(P2011−139186A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296663(P2009−296663)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】