説明

無線伝送装置及び無線伝送方法

【課題】無線伝送装置で用いられる現状の無線伝送方法では、変調方式を切り替えるプロセスの中で伝送データの瞬断が発生することがある。
【解決手段】本発明の無線伝送方法では、無線伝送装置が、現用系統及び予備系統の無線伝送路の通信環境を監視して通信環境の状態を系統毎に識別して監視し、その系統毎の識別結果に基づいて変調・復調方式を選択すると共に、系統毎の識別結果に基づいて現用系統及び予備系統を切り替える切替信号を生成し、その切替信号に基づき、現用系統及び予備系統を切り替えることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の系統を使用しデータ列信号を伝送する無線伝送装置及び無線伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の無線伝送装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
図4は、特許文献1の無線伝送システムを示すブロック図である。
【0004】
特許文献1に記載された無線伝送システムは、無線伝送装置D1と無線伝送装置D2との間でデータ伝送を行なう。無線伝送装置D1は、送受信器D3と変調回路D5、復調回路D7、変調器制御回路D11、インタフェース回路D9で構成される。無線伝送装置D2は、送受信器D4と変調回路D6、復調回路D8、変調方式制御回路D12、遅延回路D13、インタフェース回路D10で構成される。
【0005】
無線伝送装置D2の復調回路D8は、無線伝送路の無線回線品質が変化した場合、変調方式制御回路D12に回線品質信号d101を出力する。変調方式制御回路D12は、前記回線品質信号d101に基づき変調方式を決定し、変調方式指示信号d102を変調回路D6から送受信器D4経由で対向する無線伝送装置D1の復調回路D7へ伝送する。
【0006】
無線伝送装置D1の復調回路D7は、変調方式指示信号d104を変調器制御回路D11に送信し、変調器制御信号d105に基づき、変調回路D5において変調方式を切り替える。また、遅延回路D13は、前記変調器制御信号d105により変調回路D5の変調方式切り替えが完了するまでの間、復調回路D8への復調器制御信号d103を遅延させる。
【0007】
即ち、特許文献1には、無線伝送路の回線品質を監視し、変調方式を適時切り替え、無線伝送路の回線状態に応じた変調方式でデータ伝送する無線伝送装置が記載されている。この技術を用いれば、無線伝送路の回線状態に応じた変調方式で伝送可能となり、限られた伝送路帯域を有効利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−223835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された無線伝送システムにおいても、変調方式を切り替えるプロセスの中で伝送データの瞬断が発生することを見出し得る。これは、送信側の変調方式を切り替えるタイミングと受信側の変調方式切り替えるタイミングとが必ずしも一致しないためである。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、無線伝送路の伝送路状態に応じ、変調方式を切り替えるプロセスでの伝送データの損失を無くする無線伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る無線伝送装置は、無線通信を用いてデータ列信号を伝送する現用系統及び予備系統を有する無線伝送装置において、前記現用系統及び前記予備系統の無線伝送路の通信環境を監視して通信環境の状態を系統毎に識別する監視手段と、前記監視手段の系統毎の識別結果を用いて、変調・復調方式を選択する変復調方式選択手段と、前記監視手段の系統毎の識別結果を用いて、前記現用系統及び前記予備系統を切り替える切替信号を生成する切替信号生成手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る無線伝送装置は、無線通信を用いてデータ列信号を伝送する現用系統及び予備系統を有する無線伝送装置において、基準信号となる第1のパルス列、及び、前記第1のパルス列より繰返し周波数の少ない第2のパルス列を生成する基準信号生成回路を備え、前記第1のパルス列に同期させ送信するデータ列信号を前記現用系統及び前記予備系統のフレーム多重信号として多重すると共に、前記第2のパルス列に同期させて、前記現用系統及び前記予備系統のフレーム多重信号をフレーム同期させることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線伝送路の伝送路状態に応じ、変調方式を切り替えるプロセスでの伝送データの損失を無くする無線伝送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の一形態の無線伝送システムを示すブロック図である。
【図2】本実施の一形態の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【図3】各変調方式の同期タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図4】特許文献1の無線伝送システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の一形態を図1ないし図3に基づいて説明する。
【0016】
図1は、実施の一形態の無線伝送システムを示すブロック図である。図1において、無線伝送装置A100と無線伝送装置B200は同一装置である。本実施の一形態の説明では、無線伝送装置A100をPDH(Plesiochronous Digital Hierachy)信号の送信側(入力側)とし、無線伝送装置B200を受信側(出力側)とする。また、無線伝送装置A100で送信系の構成等を説明し、無線伝送装置B200で受信系の説明を行なう。
【0017】
無線伝送装置A100は、送信系回路として、基準フレーム生成回路A1、スタッフ回路A2、現用系フレーム多重回路A3、予備系フレーム多重回路A4、現用系変調回路A5、予備系変調回路A6を有する。
【0018】
基準フレーム生成回路A1(基準信号生成回路)は、後述する現用無線フレーム多重信号a004と予備無線フレーム多重信号a005の生成基準となる基準クロック(第1のパルス列)と基準フレームパルスa002(第2のパルス列)を生成し、スタッフ回路A2、現用系フレーム多重回路A3及び予備系フレーム多重回路A4に出力する。
【0019】
スタッフ回路A2は、外部から入力されるn本(nは自然数)の受信PDHデータ列信号a001を前記基準クロックと基準フレームパルスa002に対してスタッフ同期化処理し、n本のスタッフ同期データ列a003を現用系フレーム多重回路A3と予備系フレーム多重回路A4とに出力する。
【0020】
現用系フレーム多重回路A3は、基準クロックと基準フレームパルスa002と送信系回路である現用系フレーム同期回路A10の送信する現用変調方式制御信号a016に従い、スタッフ回路A2から入力されるn本のスタッフ同期データ列a003と変調方式制御情報とを変調方式に応じて多重して現用無線フレーム多重信号a004として出力する。
【0021】
現用系変調回路A5は、現用系フレーム多重回路A3から入力される現用無線フレーム多重信号a004に対して、現用変調方式制御信号a016によって指示された変調方式を用いて変調を行い、現用無線送信信号a006を無線伝送路C30に送出する。
【0022】
予備系フレーム多重回路A4は、基準クロックと基準フレームパルスa002と送信系回路である予備系フレーム同期回路A11の送信する予備変調方式制御信号a017に従い、スタッフ回路A2から入力されるn本のスタッフ同期データ列a003と変調方式制御情報とを変調方式に応じて多重して予備無線フレーム多重信号a005として出力する。尚、無線フレーム多重信号のフレーム周期は、現用系及び予備系共に同一周期を使用する。
【0023】
予備系変調回路A6は、予備系フレーム多重回路A4から入力される予備無線フレーム多重信号a005に対して、予備変調方式制御信号a017によって指示された変調方式を用いて変調を行い、予備無線送信信号a007を無線伝送路C31に送出する。
【0024】
無線伝送装置A100は、受信系回路として、受信監視回路A7、現用系復調回路A8、予備系復調回路A9、現用系フレーム同期回路A10、予備系フレーム同期回路A11、無瞬断切替回路A12及びデスタッフ回路A13を有する。無線伝送装置A100の受信系回路は、後述する無線伝送装置B200の受信系回路と同一の構成であるため、無線伝送装置B200の説明をもって、記載を省略する。
【0025】
無線伝送装置B200は、送信系回路として、基準フレーム生成回路B1、スタッフ回路B2、現用系フレーム多重回路B3、予備系フレーム多重回路B4、現用系変調回路B5及び予備系変調回路B6を有する。無線伝送装置B200の送信系回路は、無線伝送装置A100の送信系回路と同一の構成であるため説明を省略する。
【0026】
無線伝送装置B200は、受信系回路として、受信監視回路B7、現用系復調回路B8、予備系復調回路B9、現用系フレーム同期回路B10、予備系フレーム同期回路B11、無瞬断切替回路B12及びデスタッフ回路B13を有する。
【0027】
現用系復調回路B8は、無線伝送装置A100から無線伝送路C30を経由して入力された現用無線受信信号b008の受信レベルを計測し、現用受信レベルモニタ信号b011を受信監視回路B7に出力する。同じく、受信監視回路B7から入力される現用復調方式制御信号b012に従がって現用系の復調方式を切り替え、現用復調信号b010を現用系フレーム同期回路B10に出力する。
【0028】
現用系フレーム同期回路B10は、前記現用復調信号b010の無線フレーム同期検出を行い、現用無線フレームデータ列b019を無瞬断切替回路B12に出力する。また、現用系フレーム同期回路B10は、無線伝送装置A100の現用系フレーム多重回路A3によって現用無線フレーム多重信号a004に多重された変調方式制御情報を抽出し、現用変調方式制御信号b016を現用系フレーム多重回路B3及び現用系変調回路B5に出力する。
【0029】
予備系復調回路B9と予備系フレーム同期回路B11は、現用系復調回路B8、現用系フレーム同期回路B10と同一構造である為、説明を省略する。
【0030】
受信監視回路B7は、現用受信モニタ信号b011と予備受信モニタ信号b014から無線伝送路C30及び無線伝送路C31の回線状態を判別し、現用復調方式制御信号b012を現用系復調回路B8と現用系フレーム多重回路B3へ、予備復調方式制御信号b015を予備系復調回路B9と予備系フレーム多重回路B4へ出力する。また、受信監視回路B7は、切替制御信号a018を無瞬断切替回路B12に出力する。
【0031】
無瞬断切替回路B12は、入力されるフレーム間の位相差を揃えるメモリを具備し、切替制御信号b018に従い、現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020との回線を切り替え、切り替え後の無線フレームデータを無線フレームデータ列b021としてデスタッフ回路B13に出力する。
【0032】
デスタッフ回路B13は、無線フレームデータ列b021からデスタッフ処理により送信PDHデータ列信号b022を抽出して外部に出力する。
【0033】
このような構成によって、本実施の一形態の無線伝送システムは、無線伝送路の伝送路状態に応じ、変調方式を切り替えるプロセスでの伝送データの損失を減少できる。
【0034】
次に、無線伝送システムの動作を図1及び図2を用いて説明する。
【0035】
本動作説明では、外部から入力される受信PDHデータ列信号a001を4本(n=4)とし、変調方式がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)ならば前記4本の受信PDHデータ列信号のうち2本分の受信PDHデータ列信号を伝送し、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)ならば4本すべての受信PDHデータ列信号を伝送するものとして説明する。また、本無線伝送システムの構成では各変調方式でのシンボル周波数を同一周波数とする。よって16QAMでの無線伝送容量は、QPSKでの無線伝送容量の2倍となる。
【0036】
また、動作説明中に記載される無線フレーム多重信号である現用無線フレーム多重信号a004及び予備無線フレーム多重信号a005は、図2のタイミングチャートで示すようにオーバヘッド領域とペイロード領域で構成される。
【0037】
図2は、本実施の一形態の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【0038】
無線フレーム多重信号は、基準クロックの周波数と基準フレームパルスとに同期し、変調方式に関わらず同期タイミングも同一である。
【0039】
無線フレーム多重信号のオーバヘッド領域には、フレーム同期確立のためのフレームビットや対向局への警報転送ビットをアサインする。ペイロード領域には、QPSKの場合前記4本のスタッフ同期データ列のうち2本を、16QAMの場合4本すべてのスタッフ同期データ列を基準フレームパルスの位相に合わせて時分割多重する。
【0040】
無線伝送装置A100と無線伝送装置B200とから成る無線伝送システムは、変調方式に関わらず同期した無線フレーム多重信号を用い、以下の様に動作する。尚、説明を明瞭とするため、各部の詳細な動作の説明は省略する。
【0041】
無線伝送装置A100の基準フレーム生成回路A1は、現用無線フレーム多重信号a004及び予備無線フレーム多重信号a005の基準となる基準クロックと基準フレームパルスa002を生成し、スタッフ回路A2、現用系フレーム多重回路A3及び予備系フレーム多重回路A4へ出力する。
【0042】
前記スタッフ回路A2は、外部から入力される4本の受信PDHデータ列信号a001を基準クロックに対してスタッフ処理し、スタッフ処理後の4本のスタッフ同期データ列a003を現用系フレーム多重回路A3および予備系フレーム多重回路A4へ出力する。
【0043】
現用系無線フレーム多重回路A3は、前記基準クロックと基準フレームパルスa002に従い、スタッフ同期データ列a003を現用無線フレーム多重信号a004に生成する。尚、変調方式は、後述する変調方式制御信号によって指定される。
【0044】
現用系変調回路A5は、後述する現用変調方式制御信号a016で指定された変調方式で現用無線フレーム多重信号a004に変調し、現用無線信号a006を無線伝送路C30へ送出する。
【0045】
予備系無線フレーム多重回路A4及び予備系変調回路A6の動作は、現用系フレーム多重回路A3及び現用系変調回路A5と同一動作のため、説明を省略する。
【0046】
無線伝送路C30及びC31は、現用系及び予備系の無線信号を伝搬する。尚、無線伝送路は、フェージング等の影響によって、無線信号に時間的、空間的影響を与える。
【0047】
無線伝送装置B200の現用系復調回路B8は、伝送路C30を介して現用無線受信信号b008を受信すると共に、受信レベルをモニタリングし、現用受信レベルモニタ信号b011を受信監視回路B7へ出力する。
【0048】
受信監視回路B7は、現用受信レベルモニタ信号b011を用いて現用系の変調方式を識別し、復調方式を定め、現用復調方式制御信号b012として現用系復調回路B8へ出力する。
【0049】
現用系復調回路B8は、現用復調方式制御信号b012を識別し、受信監視回路B7で決定した現用系の復調方式に従って現用無線受信信号b008の復調を行い、現用復調信号b010を現用系フレーム同期回路B10へ出力する。
【0050】
現用系フレーム同期回路B10は、現用復調信号b010の無線フレーム同期検出を行い、フレーム同期を確立し、現用無線フレームデータ列b019を無瞬断切替回路B12へ出力する。同時的に、現用系フレーム同期回路B10は、無線伝送装置A100の現用系フレーム多重回路A3によって現用無線フレーム多重信号a004に多重された変調方式制御情報を抽出し、現用変調方式制御信号b016を現用系フレーム多重回路B3及び現用系変調回路B5へ出力する。
【0051】
予備系復調回路B9及び予備系フレーム同期回路B11の動作は、現用系復調回路B8及び現用系フレーム同期回路B10と同一動作のため、説明を省略する。
【0052】
無瞬断切替回路B12は、現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020を受信し、内蔵するメモリを用いて両無線フレームデータ列を同一タイミングに揃える。更に、無瞬断切替回路B12は、受信監視回路B7から入力される切替制御信号b018に従い現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020の一方を選択し、無線フレームデータ列b021としてデスタッフ回路B13へ出力する。
【0053】
デスタッフ回路B13は、選択した現用系もしくは予備系の変調・復調方式に従い、無線フレームデータ列b021から2本もしくは4本のスタッフ同期データ列を抽出し、デスタッフ処理を行って2本もしくは4本の送信PDHデータ列信号b201を外部へ出力する。尚、変調・復調方式が、QPSKの場合は2本、16QAMの場合は4本のPDHデータ列信号を伝送する。
【0054】
次に、変調方式の切り替え動作と無瞬断切替回路B12の切り替え動作(選択動作)について詳細に説明する。尚、現用系と予備系の切り替え及び各々の変調方式の切り替えを行う受信レベルの閾値をT1とする。
【0055】
受信監視回路B7は、無線伝送路C30と無線伝送路C31の受信レベルを監視し、受信レベルが良い(通信環境が良い)か否か判別する。受信監視回路B7は、現用系と予備系の両方の通信環境から適切な変調方式を選択し、現用系復調回路B8及び予備系復調回路B9に夫々選択した適切な変調方式を通知すると共に、無瞬断切替回路B12に選択結果を通知する。また、現用系より予備系の通信環境が良い場合には、無瞬断切替回路B12に、切替制御信号b018を用いて、予備系を用いることを通知する。更に、現用系フレーム多重回路B3及び予備系フレーム多重回路B4に夫々選択した変調方式を通知する。
【0056】
具体的には、受信監視回路B7は、無線伝送路C30とC31の通信環境を現用受信レベルモニタ信号b011と予備受信レベルモニタ信号b014を用いて識別し、閾値T1よりも高い場合に16QAMの変調方式を選択し、閾値T1よりも低い場合にはQPSKを選択し、選択結果を現用系復調回路B8に現用復調方式制御信号b012を用いて通知し、予備系復調回路B9に予備復調方式制御信号b015を用いて通知する。同時的に、無瞬断切替回路B12に、通信状態が良い系の選択結果を切替制御信号b018として通知する。更に、現用系フレーム多重回路B3及び予備系フレーム多重回路B4に夫々選択した変調方式を通知する。
【0057】
現用系復調回路B8は、受信監視回路B7から通知された変調・復調方式に従い、受信した現用無線受信信号b008を復調処理し、現用復調信号b010として現用系フレーム同期回路B10に出力する。
【0058】
予備系復調回路B9は、受信監視回路B7から通知された変調・復調方式に従い、受信した予備無線受信信号b009を復調処理し、予備復調信号b013として予備系フレーム同期回路B11に出力する。
【0059】
現用系フレーム同期回路B10は、現用復調信号b010の同期検出を行い、現用無線フレームデータ列b019を無瞬断切替回路B12へ出力するすると共に、現用復調信号b010に多重されている変調方式制御情報を抽出し、現用変調方式制御信号b016として現用系フレーム多重回路B3及び現用系変調回路B5へ出力する。
【0060】
予備系フレーム同期回路B11は、予備復調信号b013の同期検出を行い、予備無線フレームデータ列b020を無瞬断切替回路B12へ出力するすると共に、予備復調信号b013に多重されている変調方式制御情報を抽出し、現用変調方式制御信号b017として予備系フレーム多重回路B4及び予備系変調回路B6へ出力する。
【0061】
無瞬断切替回路B12は、現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020とのフレーム間の位相差を揃え、切替制御信号b018に従い、現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020との回線を切り替えると共に、切り替え後の無線フレームデータを無線フレームデータ列b021としてデスタッフ回路B13へ出力する。
【0062】
ここで、現用無線フレームデータ列b019と予備無線フレームデータ列b020とのフレーム間の位相差を揃えることによって、切替制御信号b018で指示された系等に切り替える時に、位相差によって発生する瞬断を防止できる。
【0063】
一方、現用系フレーム多重回路B3は、受信監視回路B7から通知された変調・復調方式を、現用系無線フレーム多重信号b004に変調方式制御情報として多重する。
【0064】
予備系フレーム多重回路B4は、受信監視回路B7から通知された変調・復調方式を、生成する予備系無線フレーム多重信号b005に変調方式制御情報として多重する。
【0065】
夫々の系統の変調方式制御情報が多重された無線フレーム多重信号(b004、b005)は、現用系変調回路B5と予備系変調回路B6とで変調処理され、無線伝送路(C30、C31)を経由して無線伝送装置A100に伝送される。
【0066】
無線伝送装置A100の復調回路(A8、A9)は、夫々の系統の変調方式制御情報が多重された無線受信信号(a008、a009)を受信し、復調処理し、復調信号(a010、a013)としてフレーム同期回路(A10、A11)に通知する。
【0067】
フレーム同期回路(A10、A11)は、復調信号(a010、a013)から無線伝送装置A100の夫々の系統で用いる変調方式の情報を取得し、変調方式制御信号(a016、a017)を出力し、無線伝送装置A100から無線伝送装置B200への無線通信に用いる夫々の系統の変復調方式を指定する。
【0068】
このように動作することで、系統の切り替えを無瞬断で切替可能とし、更に、前記無瞬断切り替えを実施後に夫々の変調方式を切り替えも可能とできる。
【0069】
即ち、無線伝送路を介して受信した現用系統と予備系統の受信信号を、夫々基準クロックパルスを用いて同期処理し、基準クロックパルスを用いて同期処理した現用系統と予備系統の受信信号を夫々基準フレームパルスを用いて同期処理し、基準フレームパルスを用いて同期処理した現用系統及び予備系統の受信信号間で系統を切り替え可能とすることで、無線伝送路の伝送路状態に応じ、変調方式を切り替え時に、非同期又は同期崩れによって発生する伝送データの損失を防止できる。
【0070】
具体的には、無線変調方式の切り替えを行なう際に、無線伝送装置間を伝送する複数のPDHデータ列信号を喪失しない効果がある。これは、選択系(現用系)と非選択系(予備系)の無線伝送路を夫々別に変調方式の切り替え行い、また、各変調方式に対して無線フレームデータ列のフレーム周期(シンボル周期)を同一周期とし、更に、ペイロード領域に多重するスタッフ処理後のスタッフ同期データ列のデータ位相を同位相にする為である。
【0071】
また、適時処理を行う為、データ遅延量を抑制できる。これは、送信側で変調方式の種類を変更しても、現用系および予備系の無線フレーム多重信号のフレーム先頭位置を同一に揃え、且つ、ペイロード領域に多重するスタッフ処理後のPDHデータ列信号のデータ位相(シンボル周期)の先頭位置を揃え、受信側での現用系の伝送路と予備系の伝送路の伝送遅延差を吸収するメモリを利用して変調方式の切り替えを行なう為である。
【0072】
尚、現用系及び予備系の変調方式の切り替えは、現在選択していない系等を優先することが望ましい。
【0073】
現在選択していない系等を優先する動作を例示すれば、現用系の変復調方式をQPSKにした後に16QAMの伝送方式となっている予備系の無線伝送路C31の伝送路状態が劣化した場合には、無瞬断切替回路B12は予備無線フレームデータ列b019から現用無線フレームデータ列b020に切り替える。
【0074】
予備系は16QAMの伝送方式となっており、基準クロックが4クロックの間に4本分の送信PDHデータ列信号を伝送し、現用系はQPSKの伝送方式で2本分のPDHデータ列信号を伝送している。図2に示すタイミングチャートのように、スタッフ処理後の2本のスタッフ同期データ列CH1、CH2は、基準フレームパルスに同期して同位相にアサインされており、異なる伝送路及び異なる変調方式でも、発生するフレーム間の位相差は無い。これは、無瞬断切替回路B12の位相差を揃えるメモリの効果である。また、フレーム間の位相差が無い為、現用系と予備系の無瞬断切り替えが可能となる。
【0075】
前記無線フレームデータ列の切り替え後、予備系の変復調方式を現用系と同様の動作で16QAMからQPSKに変更することで現用系、予備系ともにQPSKの変調方式となる。
【0076】
伝送路の受信レベルが改善した場合、選択していない系の変調方式をQPSKから16QAMの変調方式に切り替えた後、無瞬断切替回路B12において選択系を切り替える。これによって、PDHデータ列信号の伝送本数は2本から4本に増え、且つ、QPSKの変調方式で通していた2本のPDHデータ列信号を瞬断することなく伝送することが可能となる。
【0077】
尚、上記実施の一形態では、16QAMとQPSKの変調方式切り替えを行なう無線伝送装置を説明したが、本発明は、32QAM以上の多値変調方式に対しても適用可能である。
【0078】
また、3種類以上の変調方式間での切り替えにおいても一定本数のPDHデータ列信号を瞬断させることなく変調方式を切り替えることが可能である。
【0079】
図3は、各変調方式の同期タイミングを例示するタイミングチャートである。
【0080】
各変調方式に対してシンボル周波数(シンボル周期)を一定とした場合、16QAMはQPSKの2倍の伝送容量となる。同じく、32QAMはQPSKに対して2.5倍、64QAMは3倍、128QAMは3.5倍、256QAMは4倍の伝送容量となる。
【0081】
変調方式をQPSKとし、2本のPDHデータ列信号を伝送するフレーム多重信号を生成する場合(図3に例示)、16QAMは4本、32QAMは5本、64QAMは6本、128QAMは7本、256QAMは8本のPDHデータ列信号をアサインすることが可能となる。
【0082】
前記した様に、現用系と予備系の変調方式が異なる場合、スタッフ処理後のスタッフ同期データ列を基準フレームパルスに対して同位相にアサインすることにより、現用系伝送路と予備系伝送路のフレーム位相を一致させる。現用系伝送路と予備系伝送路のフレーム位相を一致させることによって、現用系と予備系の切り替えを行うことでPDHデータ列信号の瞬断を防ぐことが可能となる。
【0083】
このようにして、系統切替時にフレームデータ列に多重されている各スタッフ同期データ列の連続性を保証する。
【0084】
更に、変調方式切り替え制御実行中の系を選択しないことで各スタッフ同期データ列の連続性を保証することにより、現用系、予備系切り替え時と変調方式切り替え時に発生するPDHデータ列伝送の瞬断を防ぐ。
【0085】
尚、前記した実施の一形態では、現用系を一系統、予備系を一系統としたが、現用系、予備系とも一系統に限る必要は無い。現用系を複数系統とし、予備系を一系統としても良いし、現用系を複数系統として予備系も複数系統としても良い。このときも、同様な構成及び動作を行なうことで、系統切替え時の瞬断を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
100 無線伝送装置A
200 無線伝送装置B
A1、B1 基準フレーム生成回路
A2、B2 スタッフ回路
A3、B3 現用系フレーム多重回路
A4、B4 予備系フレーム多重回路
A5、B5 現用系変調回路
A6、B6 予備系変調回路
A7、B7 受信監視回路
A8、B8 現用系復調回路
A9、B9 予備系復調回路
A10、B10 現用系フレーム同期回路
A11、B11 予備系フレーム同期回路
A12、B12 無瞬断切替回路
A13、B13 デスタッフ回路
C30、C31 無線伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現用系統及び予備系統を有する無線伝送装置で用いられる系統を切り替えてデータ列信号を伝送する無線伝送方法であって、
前記無線伝送装置は、
前記現用系統及び前記予備系統の無線伝送路の通信環境を監視して通信環境の状態を系統毎に識別して監視し、
前記監視による系統毎の識別結果に基づいて、変調・復調方式を選択し、
前記監視による系統毎の識別結果に基づいて、前記現用系統及び前記予備系統を切り替える切替信号を生成し、
前記切替信号に基づき、現用系統及び予備系統を切り替える
ことを特徴とする無線伝送方法。
【請求項2】
請求項1記載の無線伝送方法であって、
前記現用系統及び前記予備系統の夫々で選択した変調・復調方式を、対向する無線伝送装置に送信し、
前記対向する無線伝送装置で、選択した変調・復調方式に従い変調させて前記現用系統及び前記予備系統の夫々のデータ列信号の変調・復調方式を設定する
ことを特徴とする無線伝送方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線伝送方法であって、
前記現用系統と予備系統毎に、復調した受信信号列のスタートビットを基準フレームに同期処理し、
前記同期処理した、現用系統の信号列と予備系統の信号列との信号列間の位相差を揃える処理を行う
ことを特徴とする特徴とする無線伝送方法。
【請求項4】
無線通信を用いてデータ列信号を伝送する現用系統及び予備系統を有する無線伝送装置において、
前記現用系統及び前記予備系統の無線伝送路の通信環境を監視して通信環境の状態を系統毎に識別する監視手段と、
前記監視手段の系統毎の識別結果を用いて、変調・復調方式を選択する変復調方式選択手段と、
前記監視手段の系統毎の識別結果を用いて、前記現用系統及び前記予備系統を切り替える切替信号を生成する切替信号生成手段と
を有することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線伝送装置であって、
前記変復調方式選択手段で選択した変調・復調方式を、対向する無線伝送装置に送信する手段を有することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の無線伝送装置であって、
前記現用系統と予備系統毎に、前記変復調方式選択手段からの変復調方式の選択結果を用いて、復調を行なう復調手段と、
前記現用系統と予備系統毎に、前記復調手段で復調した信号列のスタートビットを、基準フレームに同期させる同期手段と、
前記同期手段で同期された、現用系統の信号列と予備系統の信号列との信号列間の位相差を揃える手段と
を有することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項7】
請求項4ないし6の何れか一項に記載の無線伝送装置であって、
前記監視手段で監視する系統毎の通信環境の状態に応じ、シンボル周波数が同一の変調方式から、通信環境の状態に適した変調方式を選択することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項8】
請求項4ないし7の何れか一項に記載の無線伝送装置であって、
無線伝送装置を介して伝送させる信号列がPDH(Plesiochronous Digital Hierachy)信号であることを特徴とする無線伝送装置。
【請求項9】
請求項4ないし8の何れか一項に記載の無線伝送装置であって、
前記変復調方式選択手段は、3種類以上の変復調方式を選択可能とすることを特徴とする無線伝送装置。
【請求項10】
請求項4ないし9の何れか一項に記載の無線伝送装置であって、
無線伝送装置間で用いられる変復調方式は、256QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、128QAM、64QAM、32QAM、16QAM、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の何れか又は組み合わせであることを特徴とする無線伝送装置。
【請求項11】
請求項4ないし10の何れか一項に記載の無線伝送装置であって、
現用系統と予備系統の一方又は両方を複数回線化した構成であることを特徴とする無線伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188509(P2011−188509A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91854(P2011−91854)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2008−35553(P2008−35553)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】