説明

無線制御装置およびデータ配信方法

【課題】イベントが発生したことをトリガーとして即時性の高いデータ配信を行なうことができる無線制御装置およびデータ配信方法を提供する。
【解決手段】無線制御装置に、ユーザ共通データが配信されたことを示すイベントの発生を認識するイベント発生認識手段と、前記イベントの発生をトリガーとして、前記ユーザ共通データを配信するデータ伝送手段とを備えることにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ共通データの提供方法に関し、特に、イベントの発生をトリガーとしてユーザ共通データを提供する無線制御装置およびデータ配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信トラヒックが少ない場合、又は特定の時間帯に、情報の種類に応じてブロードキャストサービスを行なう移動通信システムが開示されている。
【0003】
この移動通信システムによれば、通信トラヒックを測定し、通信トラヒックが所定の閾値を超えていない場合に伝送する。また、所定の時刻を設定し、この所定の時刻に格納されているデータを伝送する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−314485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した背景技術には以下の問題がある。
【0005】
上述した移動通信システムでは、サーバに格納されているデータが、通信トラヒックが少ない場合または特定の時間帯に伝送される。サービスの種類によっては、即時性が高く要求されるものがあるが、この移動通信システムでは、即時性に応じてデータを提供することができない問題がある。
【0006】
また、即時性の高いデータは、個々に回線を接続する可能性が高い。このため、無線回線が無駄に使用されることが懸念される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、イベントが発生したことをトリガーとして即時性の高いデータ配信を行う無線制御装置およびデータ配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の無線制御装置は、複数の受信源に対してデータの配信を行う無線制御装置であって、ユーザ共通データが配信されたことを示すイベントの発生を認識するイベント発生認識手段と、前記イベントの発生をトリガーとして、前記ユーザ共通データを配信するデータ伝送手段とを備えることを特徴の1つとする。
【0009】
このように構成することにより、イベントが発生したことをトリガーとして即時性の高いデータ配信を行うことができる。
【0010】
また、本発明のデータ配信方法は、1つの情報源から複数の受信源に対してデータの配信を行うデータ配信方法であって、配信されたユーザ共通データを一時的に格納するコンテンツ格納ステップと、前記ユーザ共通データが配信されたことを示すイベントの発生を認識するイベント発生認識ステップと、前記イベントの発生をトリガーとして、前記ユーザ共通データを配信するデータ伝送ステップとを有することを特徴の1つとする。
【0011】
このようにすることにより、イベントが発生したことをトリガーとして即時性の高いデータ配信を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施例によれば、イベントが発生したことをトリガーとして即時性の高いデータ配信を行う無線制御装置およびデータ配信方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本発明の実施例にかかる無線通信システムについて図1を参照して説明する。
【0015】
本実施例にかかる無線通信システムは、コアネットワーク(CN: Core Network)50内に置かれた情報発信源、例えばブロードキャスト/マルチキャスト サービス センタ(BM-SC: Broadcast/Multicast Service Center)300(以下、BM−SCと呼ぶ)と、コアネットワーク50と接続された無線基地局(Node B)200(200、200、200)と、コアネットワーク50、無線基地局200を介して、マルチキャスト ブロードキャスト マルチキャスト サービス(MBMS: Multicast Broadcast Multicast Service)コンテンツを受信する複数の受信源、例えば移動局(UE: User Equipment)100(100、100、100、100、100、100)から構成される。BM−SC300と無線基地局200との間には、中間的な制御装置が配置されるようにしてもよい。
【0016】
さらに、無線通信システムは、BM―SC300が接続されるコアネットワーク50に接続されるコンテンツプロバイダ(CP: Contents Provider)400、あるいは、他の網を介して接続されたコンテンツプロバイダ400から構成される。
【0017】
無線基地局200と複数の移動局100との間では、無線基地局200から移動局100への片方向の無線チャネル、例えばSCCPCH(Secondary Common Control Physical Channel)が定義され、この無線チャネル上でMBMSコンテンツが配信される。SCCPCHは、一例であり、これに限定されるものではなく、他の無線チャネル上で伝送してもよい。
【0018】
次に、本実施例にかかるBM―SC300について、図2を参照して説明する。
【0019】
本実施例にかかるBM―SC300は、複数の受信源、例えば移動局に対してユーザ共通データ、例えばMBMSデータの配信を行う無線制御装置を備える。
【0020】
無線制御装置は、制御部302と、制御部302と接続されたMBMSデータ蓄積部304、MBMSデータ伝送部306および有線伝送部312と、MBMSデータ伝送部306および有線伝送部312と接続されたイベント認識部308と、イベント認識部308および有線伝送部312と接続された伝送路設定部310とを備える。MBMSデータ蓄積部304は有線伝送部312と接続され、MBMSデータ伝送部306はMBMSデータ蓄積部304および有線伝送部312と接続される。
【0021】
制御部302は、無線制御装置が具備する各機能エンティティに対し、制御を行い、装置全体の動作を司る。
【0022】
有線伝送部312は、コンテンツプロバイダ400から配信されたMBMSコンテンツを受信する機能、伝送路設定部310による伝送路設定後にMBMSコンテンツを配信する機能、伝送路設定用の制御信号を伝送する機能、例えばGmb signalingを備える。
【0023】
MBMSデータ伝送部306は、配信されたMBMSコンテンツをMBMSコンテンツ蓄積部304に一時的に(伝送路が設定される程度の時間)格納し、また格納されたMBMSコンテンツを伝送する機能を有する。
【0024】
MBMSデータ蓄積部304は、コンテンツプロバイダ400から配信されたユーザ共通データ、例えばMBMSコンテンツを一時的に格納する機能を有する。
【0025】
イベント発生認識部308は、コンテンツプロバイダ400からMBMSコンテンツが配信されたことをトリガーとしてイベント発生を認識する機能を有する。
【0026】
ここで、イベントについて説明する。
【0027】
本実施例の想定するイベントは、配信パターンにより以下の様に分類される。
(1)予め規定されたタイミングで発生するイベント、すなわち限定されたタイミングで発生するイベント 例えば、週刊誌、隔週誌、月刊誌等
(2)突発的なタイミングで1回だけ発生するイベント、すなわち1回限りで発生するイベント 例えば、新製品の告知、新曲の配信、スポーツ中継、ライブ中継等
(3)突発的なタイミングで発生するイベント 例えば、気象情報(台風情報、雨情報)、災害情報(地震情報、津波情報)等
(4)ランダムなタイミングで発生するイベント 例えば、特売情報、渋滞情報、レジャー情報(ダイビング情報、釣り情報、ゴルフ情報等)、投資情報、ギャンブル情報(競馬の場合には、オッズ、馬体重、配当、パドック等)等
本実施例で説明した配信パターンは一例であり、これらの方法に限定されるものではなく、他の配信パターンであってもよい。
【0028】
(1)に示されるイベントとしては、例えば、週刊誌などが挙げられる。このようなイベントでは、週の中で発売日が予め規定されており、毎週そのタイミングでイベントが発生する。しかし、発売日が休日(お盆、年末年始等も含む)の場合には、前後することがある。このような場合には、ランダムに発生するイベントになる。
【0029】
(2)に示されるイベントとしては、例えば、ライブ中継の配信などが挙げられる。このようなイベントでは、何月何日何時と予め決められた日時に1回だけ配信サービスが行われる。
【0030】
(1)、(2)に示されるようなイベントに対応するMBMSコンテンツは、MBMSサービスに事前に加入しているユーザに対して、イベント発生と同時にマルチキャストされる。したがって、サービスに加入しているユーザが在圏しているエリアが、マルチキャスト配信されるサービスエリアとなる。
【0031】
(3)に示されるイベントに対応するコンテンツとして、例えば気象情報や災害情報などが挙げられる。このようなコンテンツは、配信地域を限定してそのサービスエリアの中でブロードキャストした方が効果的である。
【0032】
(4)に示されるイベントに対応するコンテンツには、例えば特売情報などが挙げられる。このようなコンテンツは、地域を限定してブロードキャスト配信した方が効果的である。また、レジャー情報、投資情報、ギャンブル情報などは、MBMSサービスに興味があるユーザのみに配信するマルチキャストサービスが効果的である。すなわち、MBMSサービスに興味があるユーザが在圏しているエリアが配信エリアとなる。投資情報、競馬情報などの変動要因のあるサービスは、1日に何度か不定期に更新される。また、レジャー情報は、その中でも地域を限定した方が効果的なコンテンツである。
【0033】
また、イベント発生認識部308は、以下の方法によりイベントが発生したことを認識する。
【0034】
(1)コンテンツプロバイダ400からイベント発生の通知
コンテンツプロバイダ400は、MBMSコンテンツを配信する直前に、BM−SC300に対して、イベントの発生を通知する。
【0035】
(2)BM−SC300で、コンテンツプロバイダ400から配信された付加情報が付与されたMBMSコンテンツの受信
コンテンツプロバイダ400は、配信するMBMSコンテンツに付加情報として、MBMSコンテンツの種別を示すフラグを付加して配信する。このMBMSコンテンツを受信した場合に、イベント認識部308は、この付加情報を検出することでイベント発生を認識する。
【0036】
(3)BM−SC300で、コンテンツプロバイダ400から配信されたMBMSコンテンツを解析
BM−SC300は、コンテンツプロバイダ400から配信されたMBMSコンテンツを受信すると、イベント認識部308において、MBMSコンテンツの種別を解析することにより、イベント発生を認識する。
【0037】
本実施例で説明した認識方法は一例であり、これらの方法に限定されるものではなく、他の認識方法であってもよい。
【0038】
また、イベント認識部308は、図3に示すようなイベントとサービスの対応表を備え、該対応表に基づいて、サービスタイプ、サービスエリアを決定する。
【0039】
このイベントとサービスの対応表には、イベントのタイプとして、イベント1からイベント4が定義され、イベント1としてウィークリーマガジン、イベント2として新曲配信、イベント3として津波情報、イベント4として投資情報および特売情報が対応付けられている。
【0040】
また、サービスタイプおよびサービスエリアとして、ウィークリーマガジンに対してはマルチキャストおよびサービスに加入しているユーザが在圏しているエリア、新曲配信に対してはマルチキャストおよびサービスに加入しているユーザが在圏しているエリア、津波情報に対してはブロードキャストおよび限定された地域、投資情報に対してはマルチキャストおよびサービスに加入しているユーザが在圏しているエリア、特売情報に対してはブロードキャストおよび限定された地域が対応付けられている。図3に示される対応表は一例であり、この構成に限定されるものではない。
【0041】
例えば、イベント認識部308は、イベント発生を認識すると、サービスタイプ、サービスエリアの決定を行う。上述したイベント認識方法にしたがって、例えば、コンテンツプロバイダ400から配信されるMBMSコンテンツに付加情報としてイベント種別、あるいはコンテンツ種別を示すフラグを付与することで、イベント認識部308は、イベントタイプを認識し、サービスタイプ、サービスエリアの決定を行うことができる。
【0042】
伝送路設定部310は、イベント発生をトリガーとして、該イベントのサービス対象エリアに基づいて、当該MBMSコンテンツを配信する為の伝送路の設定を行なう機能を有する。
【0043】
次に、本実施例にかかる無線制御装置の動作について、図4を参照して説明する。
【0044】
コンテンツプロバイダ400からBM−SC300に、ユーザ共通データ、例えばMBMSコンテンツが配信される。MBMSデータ伝送部306は、配信されたMBMSコンテンツ蓄積部304にMBMSコンテンツを一時的に格納する。
【0045】
次に、イベント認識部308は、イベントが発生したか否か確認する(ステップS302)。例えば、イベント認識部308は、コンテンツプロバイダ400からMBMSコンテンツが配信されたことを示すイベントの発生を、上述した認識方法により認識する。但し、認識方法はこれに限定されるものではなく、これ以外の方法で認識しても良い。
【0046】
イベントが発生した場合(ステップS302:YES)、イベント認識部308は、認識したイベントのサービスタイプを検出する(ステップS304)。例えば、イベント認識部308は、認識したイベントのサービスタイプが、マルチキャストサービスか或いは、ブロードキャストサービスかを判断する。一方、イベントが発生していない場合(ステップS302:NO)、終了する。
【0047】
次に、イベント認識部308は、認識したイベントのサービス対象エリアを検出する。この場合、イベント検出部308は、マルチキャストサービスの場合にはサービス対象エリアが規定されているか否かを判断し、ブロードキャストサービスの場合にはサービスエリア対象エリアが限定されているか否かを判断する。
【0048】
次に、伝送路設定部310は、MBMSコンテンツを配信するため、サービス対象エリアに応じて伝送路の設定を行なう(ステップS308)。ここで、伝送路の設定は、発生したイベントに応じて、サービスに加入済みの移動局を限定する場合には、サービスに加入している移動局が在圏しているエリアをカバーする無線基地局までの伝送路を確保することである。また、サービスエリアを限定する場合には、当該イベントが指定するサービスエリアをカバーする無線基地局への伝送路を確保することである。
【0049】
次に、伝送路の設定が完了したか否か確認する(ステップS310)。伝送路の設定が完了していない場合(ステップS310:NO)、ステップS310に遷移する。一方、伝送路の設定が完了している場合(ステップS310:YES)、MBMSデータ伝送部306は、マルチキャスト或いはブロードキャストで、MBMSデータ蓄積部304に蓄積されているMBMSコンテンツを配信する(ステップS312)。
【0050】
以上、説明したように、本実施例では、コンテンツプロバイダからユーザ共通データ、例えばMBMSコンテンツが配信されたことをトリガーとして、MBMSコンテンツを複数の受信源に配信する。このため、即時性の高いコンテンツの提供が可能となる効果が見込める。また、ランダムに配信されるコンテンツに対してもMBMSコンテンツを受信源に提供できる効果が見込める。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明にかかる無線制御装置およびデータ配信方法は、無線通信システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例にかかる無線通信システムを示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる無線制御装置を示すブロック図である。
【図3】イベントとサービスの対応表の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる無線制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
100、100、100、100、100、100、100 移動局(UE)
200、200、200、200 無線基地局(Node-B)
300 MB−SC(ブロードキャスト/マルチキャスト サービス センタ)
400、400、400 コンテンツ プロバイダ(CP)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信源に対してデータの配信を行う無線制御装置であって:
ユーザ共通データが配信されたことを示すイベントの発生を認識するイベント発生認識手段;
前記イベントの発生をトリガーとして、前記ユーザ共通データを配信するデータ伝送手段;
を備えることを特徴とする無線制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線制御装置において:
前記イベント発生認識手段は、限定されたタイミングで発生するイベント、1回限りで発生するイベント、突発的なタイミングで発生するイベント、ランダムなタイミングで発生するイベントのうち少なくとも1つを認識することを特徴とする無線制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線制御装置において:
前記イベント発生認識手段は、イベント発生の通知、ユーザ共通データに付加された情報およびユーザ共通データの解析の少なくとも1つに基づいて、イベントの発生を認識することを特徴とする無線制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の無線制御装置において:
前記イベントのサービス対象エリアに基づいて、前記ユーザ共通データを配信する伝送路を設定する伝送路設定手段;
を備えることを特徴とする無線制御装置。
【請求項5】
1つの情報源から複数の受信源に対してデータの配信を行うデータ配信方法であって:
配信されたユーザ共通データを一時的に格納するコンテンツ格納ステップ;
前記ユーザ共通データが配信されたことを示すイベントの発生を認識するイベント発生認識ステップ;
前記イベントの発生をトリガーとして、前記ユーザ共通データを配信するデータ伝送ステップ;
を有することを特徴とするデータ配信方法。
【請求項6】
請求項5に記載のデータ配信方法において:
前記イベント発生認識ステップは、限定されたタイミングで発生するイベント、1回限りで発生するイベント、突発的なタイミングで発生するイベント、ランダムなタイミングで発生するイベントのうち少なくとも1つを認識するステップ;
を有することを特徴とするデータ配信方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のデータ配信方法において:
前記イベント発生認識ステップは、イベント発生の通知、ユーザ共通データに付加された情報およびユーザ共通データの解析の少なくとも1つに基づいて、イベントの発生を認識するステップ;
を有することを特徴とするデータ配信方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載のデータ配信方法において:
前記イベントのサービス対象エリアを検出するサービス対象エリア検出ステップ;
検出されたサービス対象エリアに基づいて、前記ユーザ共通データを配信する伝送路を設定する伝送路設定ステップ;
を有することを特徴とするデータ配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−74576(P2007−74576A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261373(P2005−261373)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】