説明

無線基地局装置

【課題】簡単な装置構成で基地局装置周辺の落雷を検出して上位装置に通知する。
【解決手段】雷によって発生するサージから内部を保護するために電源系統等にサージ保護装置30を備える。雷ノイズ受信アンテナ12は、雷による電磁波を受信する。検波部19は、雷ノイズ受信アンテナ12の出力信号と移動通信に係る受信信号とを合成した信号からPDC方式の無線信号の受信処理における第2中間周波数に対応する通過帯域の信号を通過させて検波する。雷鳴検出部22は、雷鳴を検出する。雷信号検出部21は、検波部19の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点から雷鳴検出部22の出力信号が第2の所定の値より大きくなった時点までの時間が所定以下である場合に、雷サージ検出情報を出力する。通知部28は、雷サージ検出情報を上位装置40に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局装置に関し、特に無線基地局の周辺で発生した雷サージを検知する機能を有する無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の周辺に発生した雷は、機器内に生じる磁気結合、電流注入、高電界等によって、機器にサージを発生させ損傷を与える。そこで装置内にサージ保護素子を備え、あるいは電気的な接続を遮断する手段を設けることなどによって、雷サージを防ぐようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、稲妻等の雷光、雷音を検知することによって、電子機器の電源・アンテナ接続を遮断する手段を備える電子機器が開示されている。また、特許文献2には、稲妻の放電に伴って放送波の復調出力に生ずる雑音をもって稲妻の発生を検知し、マイクロフォンを介して雷音を検知し、両検知信号の時間差を計時し、該時間差が所定時間以下であるときに、AC電源遮断器を開成駆動する雷サージプロテクタが開示されている。さらに、特許文献3には、雷雲が接近した場合に電磁界アンテナや電極などを介して観測される電界の変化などを検出して、電気的接続を遮断する遮断手段を備える屋外基地局の雷被害防止システムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−66378号公報
【特許文献2】特開平11−18285号公報
【特許文献3】特開2002−141875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、無線基地局装置の電源系統にはサージ保護装置が設置されている。サージ保護装置内にあるバリスタ等の部品は、雷サージによって劣化するが、劣化の予測が難しいので、寿命とは関係なく一律に使用年数が経った時点で交換されることが多い。このような無線基地局装置に対し、雷サージ検出機能と遮断手段を備えることは、有効である。しかし、装置が複雑化し、コストもかかってしまう。また、従来技術における遮断手段は機械的に行うものであり、スペースの上からも実装することが容易でない場合も多い。
【0006】
本発明の目的は、簡単な装置構成で基地局装置周辺の落雷を検出して上位装置に通知することのできる無線基地局装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つのアスペクトに係る無線基地局装置は、雷によって発生する電磁波を受信する受信部と、受信部の出力信号を検波して出力する検波部と、雷鳴を検出する雷鳴検出部と、検波部の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点から雷鳴検出部の出力信号が第2の所定の値より大きくなった時点までの時間が所定以下である場合に、雷サージ検出情報を出力する雷信号検出部と、雷サージ検出情報を上位装置に通知する通知部と、を備える。
【0008】
第1の展開形態の無線基地局装置において、検波部は、受信部の出力信号と移動通信に係る受信信号とを合成した信号から所要の帯域の信号を通過させて検波することが好ましい。
【0009】
第2の展開形態の無線基地局装置において、所要の帯域は、PDC(Personal Digital Cellular)方式の無線信号の受信処理における第2中間周波数に対応する通過帯域であることが好ましい。
【0010】
第3の展開形態の無線基地局装置において、所要の帯域は、略450kHzの周波数の信号を通過させる帯域であることが好ましい。
【0011】
第4の展開形態の無線基地局装置において、雷信号検出部は、クロック信号をカウントするカウンタを備え、該カウンタは、検波部の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点でカウントを開始し、カウントした該クロック信号のパルス数が所定数に達する前に雷鳴検出部の出力信号が第2の所定の値より大きくなった場合に雷サージ検出情報を出力することが好ましい。
【0012】
第5の展開形態の無線基地局装置において、無線基地局装置の電源系統には、雷サージ保護装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な装置構成で基地局装置周辺の落雷を検出して上位装置に通知することができる。そして、上位装置側では、雷サージ保護素子等の部品の劣化を予測して部品交換の時期を適切に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る基地局装置周辺は、雷によって発生するサージから内部を保護するために電源系統等にサージ保護装置を備える。また、雷による電磁波を受信するための雷ノイズ受信アンテナと、雷ノイズ受信アンテナの出力信号と移動通信に係る受信信号とを合成した信号から所要の帯域の信号を通過させて検波する検波部と、雷鳴を検出する雷鳴検出部と、検波部の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点から雷鳴検出部の出力信号が第2の所定の値より大きくなった時点までの時間が所定以下である場合に、雷サージ検出情報を出力する雷信号検出部と、雷サージ検出情報を上位装置に通知する通知部と、を備える。
【0015】
ここで、所要の帯域とは、PDC(Personal Digital Cellular)方式の無線信号の受信処理における第2中間周波数に対応する通過帯域である。この第2中間周波数は、450kHzであり、比較的高いエネルギーの雷の電磁波パルスノイズを検出しやすい周波数である。
【0016】
このような構成の無線基地局装置は、雷による電磁波及び雷鳴の検出をきっかけとして、雷サージを検出し、雷サージ検出情報を上位装置に通知する。上位装置側では、通知される雷サージ検出情報を元に例えば落雷の回数を集計するなどの方法によってサージ保護装置内のバリスタ等の部品劣化を予測し、部品交換の時期を把握することができる。したがって、寿命とは関係なく一律に使用年数が経った時点で部品交換を行う等の無駄を省くことができる。以下、実施例に即し、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。図1において、無線基地局装置10は、図示されない移動機とPDC方式の無線信号を送受信する基地局装置である。ここでは、雷サージを検知する機能に関わる部分のみを図示し、本発明に関わらない移動機との送受信機能等については説明を省略する。
【0018】
無線基地局装置10は、受信アンテナ11、雷ノイズ受信アンテナ12、高周波アンプ(RFAMP)13、第1のミキサ14、中間周波数アンプ(IFAMP)15、IFフィルタ16、第2のミキサ17、合波器18、IFフィルタ23、検波部19、クロック回路20、雷信号検出部21、雷鳴検出部22、通知部28を備える。また、不図示の電源系統等には、雷によって発生するサージから内部を保護するためにサージ保護装置30を備える。
【0019】
受信アンテナ11は、移動機からの受信波(希望波)を受信し、高周波アンプ13は、受信アンテナ11で受信された受信波に対して増幅などの処理を行って受信信号SG1を第1のミキサ14に出力する。第1のミキサ14は、受信信号SG1を第1中間周波数信号SG2に周波数変換する。中間周波数アンプ15は、第1中間周波数信号SG2に対して増幅などの処理を行いIFフィルタ16に出力する。IFフィルタ16は、中間周波数アンプ15の出力信号における第1中間周波数信号成分を通過させて、第2のミキサ17に出力する。
【0020】
一方、雷ノイズ受信アンテナ12は、雷によって生じる電磁波パルスノイズを捕らえる。合波器18は、雷ノイズ受信アンテナ12で受信した雷の電磁波パルスノイズと第2のミキサ17が出力する受信信号とを合成して、IFフィルタ23に出力する。IFフィルタ23は、合波器18の出力信号から第2中間周波数信号SG3を生成して検波部19に出力する。検波部19は、通常の受信時には、第2中間周波数信号SG3を復調し、上位装置40に対して復調信号SG4を送出することで受信動作を行う。また、検波部19は、第2中間周波数信号SG3を復調し、雷信号検出部21に対して、雷の電磁波パルスノイズに基づく検波信号SG6を送出する。
【0021】
また、クロック回路20は、クロック信号を発生する発振器27と、分周器26とを備える。分周器26は、発振器27が出力するクロック信号を単位時間に分周して基準となるクロック信号SG8として雷信号検出部21に出力する。
【0022】
さらに、雷鳴検出部22は、雷鳴を捕らえるマイクロフォン24と、マイクロフォン24から出力される雷の音成分を通過させて音信号SG7として雷信号検出部21に出力するフィルタ25とを備える。空気中に雷が走ると、軌跡部分の空気が加熱して瞬間的に爆発膨張する。その際、雷鳴として周囲に強い衝撃音波を起こす。雷鳴検出部22は、マイクロフォン24で捉えた衝撃音である雷鳴を電気信号へ変換すると共に、電気信号をフィルタ25に通すことで、音信号SG7として雷鳴の周波数成分を通過させる。
【0023】
また、雷信号検出部21は、検波信号SG6と音信号SG7とから基地局周辺に雷が発生したかどうかを検知し、クロック信号SG8をカウントすることで雷が近距離で発生したものか否かを判断する。雷が近距離で発生したものである場合には、雷サージ検出信号SG5を通知部28に出力し、通知部28は、雷サージ検出情報を上位装置40に通知する。
【0024】
図2は、雷信号検出部21の構成を示すブロック図である。図2において、雷信号検出部21は、検波信号SG6と基準値Ref1とを比較するためのコンパレータ31と、音信号SG7と基準値Ref2とを比較するためのコンパレータ32と、クロック信号SG8をカウントするカウンタ回路33とを備える。カウンタ回路33は、コンパレータ31、32の出力信号を元にクロック信号SG8のカウントの開始、停止を行い、近距離の雷が検出された場合に雷サージ検出信号SG5を出力する。
【0025】
次に、本発明の実施例に係る無線基地局装置の雷サージ検出時の動作について図1、図2、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例に係る無線基地局装置の雷サージ検出時の動作を表すフローチャートである。
【0026】
図3において、雷信号検出部21は、検波信号SG6のレベルを検出する(ステップS11)。
【0027】
雷信号検出部21は、検波信号SG6があらかじめ決められた基準値の電界レベルを超えたか否かの判定を行う(ステップS12)。すなわち、雷信号検出部21内のコンパレータ31が検波信号SG6の検波レベルを比較し、基準値の電界レベルを超えていない時は、コンパレータ31の出力がローレベルとなる。カウンタ回路33は、ローレベルを検出すると、雷ノイズ受信アンテナ12によって雷サージは受信されていないと判断し(ステップS12のN)、カウント動作をせず、ステップS11に戻る。
【0028】
ここで基準値とは、検波信号SG6のレベルが、通常受信時の受信レベル30dBuより高い、例えば70dBu以上の信号レベルにてコンパレータ31の出力がハイレベルとなるように基準電圧(基準値Ref1に相当)を設定しており、雷の受信ノイズが70dBu以上である場合に、雷のみを検出する事が可能となっている。
【0029】
カウンタ回路33は、コンパレータ31の出力がハイレベルであることを検出すると、雷の電磁波パルスノイズを受信したと判断し(ステップS12のY)、クロック信号SG8のカウント動作を開始する(ステップS13)。そして、雷鳴検出部22の応答を待つ。すなわち、音信号SG7のレベルを検出する(ステップS14)。
【0030】
カウンタ回路33は、図4に示すように、コンパレータ31の出力がハイレベルとなったことでクロック信号SG8のカウントを開始し、雷鳴検出部22からの応答を待つ。この時、雷が発生したことによって音信号SG7のレベルがコンパレータ32の基準値Vref2を超えると、コンパレータ32の出力がハイレベルとなる。
【0031】
ここで、比較的周辺に雷が発生し、雷鳴検出部22にて雷の音が検出され、雷サージ検出信号SG5にてアラーム信号が出力される場合(ステップS15のY)について、詳述する。
【0032】
雷の発生する電磁ノイズは、電磁波であり瞬間的に検出されるが、雷鳴は音速で到達する。電磁ノイズの到達から雷鳴の到達までの時間差Δtは、図5に示すように雷が発生した場所までの距離に比例する。なお、音の速さCは、以下の式で与えられる。
C=331.5+0.61t
ただし、tは、摂氏温度であって、常温の25℃時の音の速さは、346.3m/secとなる。
【0033】
無線基地局装置と雷の発生地点との距離が500m以内の時、雷サージによって比較的大きな電気的な影響を受けると想定される。そこで基地局装置の周囲500m以内の雷サージを検出させるとするならば、常温の25℃時における到達時間Δtは、
Δt=500m/346.3(m/秒)≒1.5秒
となる。
【0034】
カウンタ回路33は、Δt=1.5秒に相当するカウント値までをカウントすることで周囲500m以内の雷サージを検出する。雷鳴検出部22において雷の音が検出され、音信号SG7は、コンパレータ32の基準値Vref2を超える。したがって、コンパレータ32の出力がハイレベルとなり、カウンタ回路33は、クロック信号SG8のカウントを停止する。ここでカウント数の合計が1.5秒以内に相当するため、カウンタ回路33は、雷サージ検出信号SG5をハイレベル(アラーム状態)とする。通知部28は、雷サージアラームとして雷サージ検出情報を上位装置40に通知し(ステップS16)、一連の処理が終了する。
【0035】
一方、雷サージ検出後に雷鳴検出部22で、カウント開始から1.5秒以内に雷鳴が検出されなかった場合について説明する。音信号SG7がコンパレータ32の基準値Vref2を超えない場合(ステップS15のN)、クロック信号SG8のクロック数をカウントするカウンタ回路33の値が所定値に達したか否かを判定する(ステップS17)。所定値に満たない場合(ステップS17のN)、すなわちカウント開始から1.5秒以内である場合には、カウントを停止せず、ステップS14に戻る。カウント数の合計が1.5秒相当を超える場合、すなわち雷の発生場所が遠く、Δtが1.5秒以内に雷鳴が検出されない場合(ステップS17のY)、規定カウントに達したため、カウント動作を停止し、カウンタはクリアされる(ステップS18)。雷信号検出部21は、通知部28に対して雷サージ検出信号SG5を送出することなく、ステップS11に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】雷信号検出部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る無線基地局装置の雷サージ検出時の動作を表すフローチャートである。
【図4】カウンタ回路の動作を表すタンミングチャートである。
【図5】雷鳴到達時間と雷発生地点からの距離との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 無線基地局装置
11 受信アンテナ
12 雷ノイズ受信アンテナ
13 高周波アンプ
14 第1のミキサ
15 中間周波数アンプ
16、23 IFフィルタ
17 第2のミキサ
18 合波器
19 検波部
20 クロック回路
21 雷信号検出部
22 雷鳴検出部
24 マイクロフォン
25 フィルタ
26 分周器
27 発振器
28 通知部
30 サージ保護装置
31、32 コンパレータ
33 カウンタ回路
40 上位装置
SG1 受信信号
SG2 第1中間周波数信号
SG3 第2中間周波数信号
SG4 復調信号
SG5 雷サージ検出信号
SG6 検波信号
SG7 音信号
SG8 クロック信号
Ref1、Ref2 基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷によって発生する電磁波を受信する受信部と、
前記受信部の出力信号を検波して出力する検波部と、
雷鳴を検出する雷鳴検出部と、
前記検波部の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点から前記雷鳴検出部の出力信号が第2の所定の値より大きくなった時点までの時間が所定以下である場合に、雷サージ検出情報を出力する雷信号検出部と、
前記雷サージ検出情報を上位装置に通知する通知部と、
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
前記検波部は、前記受信部の出力信号と移動通信に係る受信信号とを合成した信号から所要の帯域の信号を通過させて検波することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記所要の帯域は、PDC(Personal Digital Cellular)方式の無線信号の受信処理における第2中間周波数に対応する通過帯域であることを特徴とする請求項2記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記所要の帯域は、略450kHzの周波数の信号を通過させる帯域であることを特徴とする請求項2記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記雷信号検出部は、クロック信号をカウントするカウンタを備え、該カウンタは、前記検波部の出力信号が第1の所定の値より大きくなった時点でカウントを開始し、カウントした該クロック信号のパルス数が所定数に達する前に前記雷鳴検出部の出力信号が第2の所定の値より大きくなった場合に前記雷サージ検出情報を出力することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。
【請求項6】
請求項1〜5記載の無線基地局装置の電源系統には、雷サージ保護装置を備えることを特徴とする無線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−214799(P2007−214799A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31440(P2006−31440)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】