説明

無線機

【課題】識別信号の専用の試験器がなくとも、無線機の識別信号を検出して表示部に表示する無線機を提供する。
【解決手段】送信信号を自己の無線機を示す識別信号とともに無線送信する無線機において、少なくとも識別信号を無線機内部で折り返し、該折り返した識別信号が表す番号を表示部に表示する無線機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線機であって相手または自己の識別信号を画面表示する無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、簡易無線の無線機等においては、送信時に音声とともに識別信号(ATIS(Automatic Transmitter Identification System)信号)の送出が義務付けられている。本識別信号は無線機1台毎に異なる番号が割り当てられており、識別信号無しの電波を発射したり、自局に割り当てられた以外の番号で送信することは、電波法により禁止されている。このような識別信号送出機能をもった無線機が幾つか知られている。
【0003】
特許文献1は、相手の無線機からの送信信号から識別信号を検出すると、一時的にスピーカへの信号供給を停止することで、送信の切り替えタイミングの不快音を回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−23169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来技術は、識別信号の応用という意味で識別信号を検出して利用しているだけである。従って、無線機が故障等により、本来送信すべき識別信号が送信されていないかどうかは専用の試験機を使用して確認しなければならず、無線機だけで容易に検出することができないため、故障に気づかずに無線機を使用することにより、結果的に識別信号無し、あるいは自局以外の識別信号を付して送信してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、専用の試験機を必要とせず無線機の本体だけで、相手または自己の送信する識別信号を容易に検出することができる無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決する一実施形態は、
送信信号を自己の無線機を示す識別信号とともに無線送信する無線機において、
少なくとも前記識別信号を無線機内部で折り返し、
該折り返した識別信号が表す番号を表示部に表示することを特徴とする無線機である。
【発明の効果】
【0008】
無線機に識別信号の復号部を設けることで、識別信号検出の専用器がなくとも無線機の本体により識別信号が正常に送信されているかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線機の構成の一例を示すブロック図。
【図2】当該無線機の識別信号の送信タイミングの一例を示すタイミングチャート。
【図3】一般的な無線機の識別信号の試験を行うための識別信号受信試験器の一例を示すブロック図。
【図4】当該無線機の第1識別信号確認モードにおける識別信号の確認処理の一例を示す説明図。
【図5】当該無線機の第2識別信号確認モードにおける識別信号の確認処理の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線機の構成の一例を示すブロック図である。無線機1は、送信部11と、受信部12と、アンテナ13と、送信部11または受信部12をアンテナ13に接続する切替スイッチ14と、送信音声を入力するマイク15と、受信音声を出力するスピーカ16と、送信音声を適当なレベルに増幅するアンプ17と、受信音声を適当なレベルに増幅するアンプ18と、送信部11の入力信号を切替えるスイッチ19と、マイクロコンピュータ等で構成する無線機のMPU20と、無線機に割当てられた識別番号を記憶するメモリ21と、無線機の表示部22と、PTTスイッチ23と、識別信号を変調および復調するためのMSK(Minimum Sift Keying)モデム(変調/復調部)24と、無線機に識別信号を外部から書き込むためのプログラマを接続するための外部インタフェース25を有している。MPU20からは、前述あるいは後述する各部への制御信号26が出力される。
【0011】
さらに、無線機1は、無線機の動作モードを通常モードと第1識別信号確認モードと第2識別信号確認モードに切替るためのスイッチ27と、MSKモデム24の復調入力を受信部からの復調信号と送信部への変調信号入力の何れかに切替えるスイッチ28と、符号化された受信識別信号を復号化して元の12桁の番号に戻すための識別信号復号部29を有している。このような構成の無線機1は、以下のように識別信号(ATIS(Automatic Transmitter Identification System)信号)の送出が義務付けられている。
【0012】
ここで、識別信号は、無線機の種別毎に定めた番号、製造者番号、および1から始まる連番で構成される12桁の番号である。通常MSK変調方式で送信される。また送信時の信号フォーマットは、
(1)ビット同期信号、(2)フレーム同期信号、(3)識別データ信号で構成される。
識別データ信号は、12桁の番号の1桁を4ビットの2進数に変換すると共に、誤り訂正符号を付加して63ビットデータに符号化したものである。符号化方法の詳細は“RCR STD−9”(電波産業会の標準規格)による。
【0013】
識別信号は、図2に示すように、無線機動作モードにおいて、送信信号の中で音声信号等の手前に設けられている。
一般的な無線機においては、無線機1で示された無線機の動作モードを通常モードと識別信号確認モードに切替るためのスイッチ27、MSKモデム24の復調入力を受信部からの復調信号と送信部への変調信号入力の何れかに切替えるスイッチ28、符号化された受信識別信号を復号化して元の12桁の番号に戻すための識別信号復号部29等は設けられていない。
【0014】
そこで、一般的な無線機においては、図3に示すように複数の無線機40、42の間で送信信号41を送信する状況において、識別信号受信試験器44等を用意して、無線機42から信号43を受け、識別信号受信試験器44で正常な識別信号が無線機40から送信されているかを判断しなければならない。
【0015】
すなわち、識別信号受信試験器44は、MSKモデム45と、識別信号復号部46と、表示部47で構成される。MSKモデム45は、復調出力43に含まれるMSK変調された識別信号をデジタル信号に戻して識別信号復号部46に出力する。
ここで、識別信号復号部46は、符号化された識別信号を、元の12桁の番号に復号化して表示部47に対して出力する。表示部47は、被試験無線機40に割り当てられた12桁の識別番号を表示する。この表示部の表示内容を確認することにより、被試験無線機40から正常に識別信号が送出されていることを確認する。
【0016】
無線機の生産・出荷時においては、通常は無線機の一台毎に、識別信号が正常に送出されていることを図3の構成で確認して出荷する。しかし、無線機が故障等により、出荷時に送信していた識別信号がその後に送信されなくなってしまう場合もあるので、上述した専用の識別信号受信試験器44によって試験する必要がある。
【0017】
・本発明に係る無線機1による識別信号の確認処理
ここで、本発明の一実施形態に係る図1の無線機1においては、専用の識別信号受信試験器44を必要とせず、本体により識別信号を復号し検出して画面に表示することができる。すなわち、図1において、PTTスイッチ23が押されることにより、MPU20は制御信号を供給して送信部11を起動し、送信電波の発射を開始する。次にメモリ21に記憶される識別信号を読み出し、MSKモデム24に対して出力する。また制御信号をスイッチ19に供給してスイッチ19をMSKモデム24の出力側に切替える。これにより、まず識別信号が無線機から送出される。識別信号の送出が終了すると、MPU20は、制御信号をスイッチ19に供給してスイッチ19をマイク15側に切替える。これにより、マイクからの送信音声が送出される。
【0018】
次に、スイッチ27が押されることで、通常モードから第1識別信号確認モードに切替えた場合の動作を説明する。受信時は、MPU20からの制御信号をスイッチ28に供給することでスイッチ28を受信部出力側に接続する。受信部12で受信した識別信号はMSKモデム24により復調された後、識別信号復号部29に入力し、元の12桁の番号に復号され、MPU20に入力する。MPU20は通常は表示部22に無線機のチャネル番号等を表示するが、第1識別信号確認モードでは図4に示すように、受信した識別番号を表示する。
【0019】
以上説明した動作により、本発明に係る無線機2台を図4に示すように2台対向で用いて、一方の無線機から送出した識別番号を他方の無線機1の表示部22に表示することにより、専用機を必要とせずに識別信号の送出の確認を行うことができる。
次に、スイッチ27が再度押されて第2識別信号確認モードに切替えた場合の動作を説明する。通常動作モードと、第1識別信号確認モード、第2識別信号確認モードの切替は、一例としてスイッチ27を押す毎に交互に切換わるものとする。
【0020】
第2識別信号確認モードではPTTスイッチ23を押しても無線機1は送信しない。スイッチ19はMSKモデムの変調出力側に接続し、スイッチ28は送信部11への変調信号入力側に接続する。これにより、通常は送信部11に入力する識別信号が折り返してMSKモデム24の復調入力に入る。次に識別信号復号部29で元の12桁の番号に復号し、MPU20に入力する。MPU20は、通常は表示部22に相手の無線機のチャネル番号等を表示するが、第2識別信号確認モードでは自己の無線機1が送信する識別番号を表示する。
【0021】
以上説明した動作により、本発明に係る無線機1によれば、無線機単独で自己の送出する識別信号および相手の無線機の識別信号が、専用の識別信号受信試験器44を用いることなく正常に出力されていることの確認を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0022】
11…送信部、12…受信部、13…アンテナ、14…切替スイッチ、19…スイッチ、20…MPU、21…メモリ、22…表示器、27…動作モード切替スイッチ、28…スイッチ、29…識別信号復号部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を自己の無線機を示す識別信号とともに無線送信する無線機において、
少なくとも前記識別信号を無線機内部で折り返し、
該折り返した識別信号が表す番号を表示部に表示することを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213077(P2010−213077A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58140(P2009−58140)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】