説明

無線装置

【課題】 相手方と安定して無線通信を行なうことができる無線装置を提供する。
【解決手段】 強度検出手段30は、アレーアンテナ10の指向性ビームが指向性切換手段20によって指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えられながらアレーアンテナ10によって受信された電波の受信電波強度RSSI1〜RSSI6を検出する。ビーム決定手段40は、強度検出手段30によって検出された受信電波強度RSSI1〜RSSI6に基づいて無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。通信手段50は、アレーアンテナ10に設定する指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で必要に応じて切換えながら他の無線装置と無線通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線装置に関し、特に、指向性ビームを用いて無線通信を行なう無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指向性ビームを用いて無線通信を行なう無線通信システムが知られている(特許文献1)。この無線通信システムにおいては、2つの無線装置A,Bのうち、無線装置Aは、オムニパターンのビームで電波を送信し、無線装置Bは、指向性ビームを複数の指向性ビームに順次切換えながら無線装置Aから送信された電波を受信し、その受信した複数の電波に基づいて、無線装置Aが存在する方向を検出する。
【0003】
この場合、無線装置Bは、複数の電波のうち、最大の受信電波強度が得られたときの指向性ビームの方向を無線装置Aが存在する方向として検出する。
【0004】
その後、無線装置Bは、オムニパターンのビームで電波を送信し、無線装置Aは、指向性ビームを複数の指向性ビームに順次切換えながら無線装置Bから送信された電波を受信する。そして、無線装置Aは、無線装置Bと同じ方法によって、複数の電波に基づいて、無線装置Bが存在する方向を検出する。
【0005】
そうすると、無線装置A,Bは、相手方が存在する方向に指向性を有する指向性ビームを用いて相手方と無線通信を行なう。
【特許文献1】特開2005−150820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の無線通信システムにおける無線装置は、受信電波強度が最大である方向に指向性を有する1個の指向性ビームを検出して相手方と無線通信を行なうため、その1個の指向性ビームを用いた無線通信の通信品質が低下した場合、相手方との無線通信を安定して行なうことが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、相手方と安定して無線通信を行なうことができる無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、無線装置は、アレーアンテナと、ビーム決定手段と、通信手段とを備える。アレーアンテナは、電気的に指向性を切換え可能なアンテナである。ビーム決定手段は、無線通信に好適な複数の指向性ビームを決定する。通信手段は、アレーアンテナに設定する指向性ビームをビーム決定手段によって決定された複数の指向性ビームの範囲で必要に応じて切換えて他の無線装置と無線通信を行なう。
【0009】
好ましくは、通信手段は、複数の指向性ビームから指向性が相互に異なる2つの指向性ビームを選択し、その選択した2つの指向性ビームを切換えながら電波の送信および電波の受信をそれぞれ異なる指向性ビームを用いて行なう。
【0010】
好ましくは、通信手段は、無線通信の通信品質がしきい値よりも低下すると、無線通信に用いている指向性ビームを複数の指向性ビームの範囲で切換えて無線通信を行なう。
【0011】
好ましくは、ビーム決定手段は、複数の指向性ビームの全てに対して無線通信の通信品質がしきい値よりも低くなると、複数の指向性ビームを決定し直す。
【0012】
好ましくは、ビーム決定手段は、複数の指向性ビームを定期的に決定し直す。
【0013】
好ましくは、ビーム決定手段は、アレーアンテナの指向性が切換えられたときの受信電波の強度が強い順に複数の指向性ビームを決定する。
【0014】
好ましくは、ビーム決定手段は、アレーアンテナに到来する電波の到来方向が集中する集中度合の大きい順に複数の指向性ビームを決定する。
【発明の効果】
【0015】
この発明による無線装置においては、無線通信に適した複数の指向性ビームを決定し、その決定した複数の指向性ビームの範囲で無線通信に用いる指向性ビームを必要に応じて切換えて他の無線装置と無線通信を行なう。
【0016】
従って、この発明によれば、1つの指向性ビームを用いた無線通信の品質が低下し、相手方との無線通信が困難になっても、他の指向性ビームを用いて相手方と無線通信を行なうことができる。その結果、相手方と安定して無線通信を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による無線装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、無線装置100は、アレーアンテナ10と、指向性切換手段20と、強度検出手段30と、ビーム決定手段40と、通信手段50とを備える。
【0019】
アレーアンテナ10は、アンテナ素子1〜7と、バラクタダイオード11〜16とを含む。アンテナ素子1〜7は、x軸、y軸およびz軸からなるxyz直交座標におけるz軸に沿ってx−y平面(所定平面)に配置される。
【0020】
図2は、図1に示すx−y平面におけるアンテナ素子1〜7の平面配置図である。図2を参照して、アンテナ素子1〜6は、アンテナ素子7を中心にして正六角形に配置される。そして、アンテナ素子1〜6の各々とアンテナ素子7との間隔は、約λ/4(λ:アレーアンテナ10によって送受信される電波の波長)であり、アンテナ素子1〜6の配置間隔も、約λ/4である。
【0021】
再び、図1を参照して、アンテナ素子1〜6は、無給電素子であり、アンテナ素子7は、給電素子である。バラクタダイオード11〜16は、それぞれ、アンテナ素子1〜6と接地ノードGNDとの間に接続される。これによって、無給電素子であるアンテナ素子1〜6には、可変容量素子であるバラクタダイオード11〜16がそれぞれ装荷される。
【0022】
このように、アレーアンテナ10は、1本の給電素子(アンテナ素子7)と、6本の無給電素子(アンテナ素子1〜6)とからなる7本のアンテナ素子が給電素子を中心にして正六角形に配列された構造からなる。
【0023】
指向性切換手段20は、バラクタダイオード11〜16に制御電圧セットCVL0〜CVL6を供給し、アレーアンテナ10から放射されるビームを切換える。バラクタダイオード11〜16は、それぞれ、制御電圧セットCVL0〜CVL6によって容量(リアクタンス値)が変化する。
【0024】
制御電圧セットCV0〜CV6の各々は、6個のバラクタダイオード11〜16に対応して6個の電圧V1〜V6からなる。従って、6個の電圧V1〜V6は、それぞれ、バラクタダイオード11〜16へ供給される。
【0025】
そして、6個の電圧V1〜V6の各々は、例えば、−20Vまたは0Vの直流電圧からなる。バラクタダイオード11〜16の各々は、−20Vの直流電圧を受けると、リアクタンス値が最大(“hi”)になり、0Vの直流電圧を受けると、リアクタンス値が最小(“lo”)になる。
【0026】
各アンテナ素子1〜6は、装荷されたバラクタダイオードのリアクタンス値が最大になれば、導波器として機能し、装荷されたバラクタダイオードのリアクタンス値が最小になれば、反射器として機能する。
【0027】
従って、各アンテナ素子1〜6は、装荷されたバラクタダイオードに−20Vの直流電圧が印加されると、導波器として機能し、装荷されたバラクタダイオードに0Vの直流電圧が印加されると、反射器として機能する。
【0028】
そこで、指向性切換手段20は、制御電圧セットCV0〜CV6の各々を構成する電圧V1〜V6の電圧パターンを決定し、その決定した電圧パターンからなる制御電圧セットCV0〜CV6をバラクタダイオード11〜16へ順次供給する。
【0029】
より具体的には、指向性切換手段20は、バラクタダイオード11〜16におけるリアクタンス値xm1〜xm6からなるリアクタンスセットxが表1に示すように変化するように電圧V1〜V6を決定して制御電圧セットCVL0〜CVL6を生成し、その生成した制御電圧セットCVL0〜CVL6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
【0030】
【表1】

【0031】
リアクタンス値xm1〜xm6の全てが“hi”であるとき(m=0)、アレーアンテナ10は、全方位に感度があるオムニパターン(無指向性のビームパターン)からなるビームBM0を放射する。また、リアクタンス値xm1が“hi”であり、リアクタンス値xm2〜xm6が“lo”であるとき(m=1)、アレーアンテナ10は、0度の方向DIR1に指向性を有する指向性ビームBM1を放射する。なお、アンテナ素子7からアンテナ素子1への方向を0度の方向とする(図2参照)。
【0032】
更に、リアクタンス値xm2が“hi”であり、リアクタンス値xm1,xm3〜xm6が“lo”であるとき(m=2)、アレーアンテナ10は、60度の方向DIR2に指向性を有する指向性ビームBM2を放射する。
【0033】
更に、リアクタンス値xm3が“hi”であり、リアクタンス値xm1,xm2,xm4〜xm6が“lo”であるとき(m=3)、アレーアンテナ10は、120度の方向DIR3に指向性を有する指向性ビームBM3を放射する。
【0034】
更に、リアクタンス値xm4が“hi”であり、リアクタンス値xm1〜xm3,xm5,xm6が“lo”であるとき(m=4)、アレーアンテナ10は、180度の方向DIR4に指向性を有する指向性ビームBM4を放射する。
【0035】
更に、リアクタンス値xm5が“hi”であり、リアクタンス値xm1〜xm4,xm6が“lo”であるとき(m=5)、アレーアンテナ10は、240度の方向DIR5に指向性を有する指向性ビームBM5を放射する。
【0036】
更に、リアクタンス値xm6が“hi”であり、リアクタンス値xm1〜xm5が“lo”であるとき(m=6)、アレーアンテナ10は、300度の方向DIR6に指向性を有する指向性ビームBM6を放射する(図2参照)。
【0037】
このように、指向性切換手段20は、無給電素子であるアンテナ素子1〜6に装荷されたバラクタダイオード11〜16のリアクタンス値xm1〜xm6を変えることによってアレーアンテナ10から放射される指向性ビームを切換える。
【0038】
そして、指向性切換手段20は、ビーム決定手段40からの切換信号EXDに応じて、上述した方法によってアレーアンテナ10から放射される指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換える。
【0039】
また、指向性切換手段20は、通信手段50からの設定信号BSETに応じて、アレーアンテナ10の指向性ビームを所定の指向性ビームに設定する。
【0040】
強度検出手段30は、アレーアンテナ10のアンテナ素子7(給電素子)と同軸ケーブルによって接続される。そして、強度検出手段30は、アレーアンテナ10が受信した電波をアンテナ素子7から受け、その受けた電波の受信電波強度RSSIを検出してビーム決定手段40へ出力する。
【0041】
ビーム決定手段40は、強度検出手段30から受けた受信電波強度RSSIに基づいて、他の無線装置との無線通信に適した好適な複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0042】
より具体的には、ビーム決定手段40は、複数の指向性ビームBM_PREFを決定する場合、通信手段50からの開始信号STに応じて、アレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えるための切換信号EXDを生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0043】
そうすると、指向性切換手段20は、切換信号EXDに応じて、上述したようにアレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えるので、強度検出手段30は、指向性ビームBM1〜BM6によってそれぞれ受信された電波RF1〜RF6をアンテナ素子7から受ける。そして、強度検出手段30は、電波RF1〜RF6に対応する受信電波強度RSSI1〜RSSI6を検出してビーム決定手段40へ出力する。
【0044】
従って、ビーム決定手段40は、受信電波強度RSSI1〜RSSI6を強度検出手段30から受け、その受けた受信電波強度RSSI1〜RSSI6の中から電波強度の強い順に2個の受信電波強度を検出する。この場合、ビーム決定手段40は、例えば、2個の受信電波強度RSSI2,RSSI6を検出するものとする。
【0045】
ビーム決定手段40は、2個の受信電波強度RSSI2,RSSI6を検出すると、2個の受信電波強度RSSI2,RSSI6が得られたときの指向性ビームBM2,BM6を検出し、その検出した指向性ビームBM2,BM6を無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定する。
【0046】
ビーム決定手段40は、アレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えるための切換信号EXDを生成して指向性切換手段20へ出力するので、受信電波強度RSSI1〜RSSI6がそれぞれ指向性ビームBM1〜BM6によって受信された電波の受信電波強度であることを認識している。従って、ビーム決定手段40は、2個の受信電波強度RSSI2,RSSI6を検出すれば、2個の受信電波強度RSSI2,RSSI6が得られたときの指向性ビームBM2,BM6を容易に検出できる。
【0047】
このように、ビーム決定手段40は、アレーアンテナ10の指向性が切換えられたときの受信電波の強度が強い順に複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0048】
ビーム決定手段40は、複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)を決定すると、その決定した複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)を通信手段50へ出力する。
【0049】
通信手段50は、複数の指向性ビームBM_PREFを決定する場合、開始信号STを生成してビーム決定手段40へ出力する。
【0050】
また、通信手段50は、複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)をビーム決定手段40から受け、アレーアンテナ10のアンテナ素子7から電波RFを受ける。そして、通信手段50は、複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)を受けると、複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)をアレーアンテナ10の指向性ビームとして設定するための設定信号BSETを生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0051】
設定信号BSETは、表1に示すmの値のうち、指向性ビームBM1〜BM6を生成するためのリアクタンスセットx〜xを指定する1〜6のいずれかからなる。
【0052】
上記の例では、複数の指向性ビームBM_PREFは、2個の指向性ビームBM2,BM6からなるので、設定信号BSETは、[2,6]からなる。従って、通信手段50は、複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)をビーム決定手段40から受けると、表2を参照して、指向性ビームBM2,BM6に対応するm=2,6を検出し、その検出したm=2,6からなる設定信号BSET=[2,6]を生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0053】
【表2】

【0054】
なお、指向性切換手段20は、通信手段50から設定信号BSET=[2,6]を受けると、設定信号BSET=[2,6]に応じて、m=2のリアクタンスセットxと、m=6のリアクタンスセットxとが選択されたことを表1を参照して認識し、m=2のリアクタンスセットx、およびm=6のリアクタンスセットxを選択可能なリアクタンスセットとして認識する。従って、指向性切換手段20は、設定信号BSET=[2,6]を受けると、新たな設定信号BSETを受けるまで、リアクタンスセットx,x〜xを選択することができない。
【0055】
そして、指向性切換手段20は、m=2のリアクタンスセットxおよびm=6のリアクタンスセットxを選択可能なリアクタンスセットとして認識すると、m=2のリアクタンスセットx、およびm=6のリアクタンスセットxのいずれかを選択してバラクタダイオード11〜16に設定する。即ち、指向性切換手段20は、指向性ビームBM2,BM6のいずれかをアレーアンテナ10に設定する。
【0056】
また、通信手段50は、設定信号BSETを指向性切換手段20へ出力した後、切換信号EXX1,EXX2のいずれかを生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0057】
指向性切換信号20が設定信号BSETに応じて選択した複数のリアクタンスセットをx〜xとして切換信号EXX1,EXX2を説明すると、次のようになる。
【0058】
切換信号EXX1は、バラクタダイオード11〜16に設定しているリアクタンスセットxを新規なリアクタンスセットxにリアクタンスセットx〜xの範囲で切換えるための信号である。この場合、リアクタンスセットxは、リアクタンスセットx〜xから選択された同じリアクタンスセットからなることはない。
【0059】
また、切換信号EXX2は、バラクタダイオード11〜16に設定しているリアクタンスセットxをリアクタンスセットxの前にバラクタダイオード11〜16に設定していたリアクタンスセットxに切換えるための信号である。
【0060】
このように、通信手段50は、設定信号BSETを指向性切換手段20へ出力した後、切換信号EXX1,EXX2のいずれかを生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0061】
更に、通信手段50は、アレーアンテナ10のアンテナ素子7から電波RFを受けると、その受けた電波に対して復調等の受信処理を施し、他の無線装置から送信された信号を受信する。そして、通信手段50は、受信処理の過程において誤りビット率等の信号品質を検出し、その検出した信号品質がしきい値Qthよりも低いとき、切換信号EXX1,EXX2のいずれかを生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0062】
更に、通信手段50は、他の無線装置へ送信する信号に対して変調等の送信処理を施して送信信号をアレーアンテナ10のアンテナ素子7へ出力する。
【0063】
図3は、無線通信に好適な複数の指向性ビームBM_PREFを決定するための動作を説明するための図である。図3においては、アレーアンテナ10Aは、アレーアンテナ10と同じ構成からなり、無線装置100と異なる他の無線装置に搭載されているものとする。
【0064】
無線装置100において、複数の指向性ビームBM_PREFを決定する場合、他の無線装置の指向性切換手段20は、オムニパターンからなるビームBM0を生成するようにアレーアンテナ10Aを制御し、アレーアンテナ10Aは、ビームBM0を放射する。
【0065】
一方、無線装置100の指向性切換手段20は、指向性ビームBM1〜BM6を順次生成するようにアレーアンテナ10を制御し、アレーアンテナ10は、指向性ビームBM1〜BM6を順次放射してビームBM0によって他の無線装置から送信された電波を受信する。
【0066】
そして、無線装置100において、強度検出手段30は、アレーアンテナ10が受信した電波RF1〜RF6の受信電波強度RSSI1〜RSSI6を検出し、ビーム決定手段40は、強度検出手段30が検出した受信電波強度RSSI1〜RSSI6に基づいて、上述した方法によって複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0067】
このように、他の無線装置は、オムニパターンからなるビームBM0によって電波を送信し、無線装置100は、アレーアンテナ10の指向性を切換えながら他の無線装置から送信された電波を受信して複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0068】
図4は、無線通信に好適な複数の指向性ビームBM_PREFを決定するための動作を説明するための他の図である。図4においても、アレーアンテナ10Aは、アレーアンテナ10と同じ構成からなり、無線装置100と異なる他の無線装置に搭載されているものとする。
【0069】
無線装置100において、複数の指向性ビームBM_PREFを決定する場合、他の無線装置の指向性切換手段20は、指向性ビームBM1〜BM6を順次生成するようにアレーアンテナ10Aを制御し、アレーアンテナ10Aは、指向性ビームBM1〜BM6を順次放射する。
【0070】
一方、無線装置100の指向性切換手段20は、指向性ビームBM1〜BM6を順次生成するようにアレーアンテナ10を制御し、アレーアンテナ10は、指向性ビームBM1〜BM6を順次放射して指向性ビームBM1〜BM6によって他の無線装置から順次送信された電波を受信する。
【0071】
この場合、無線装置100は、アレーアンテナ10Aが指向性ビームBM1〜BM6の各々によって送信した電波を、アレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えながら受信する。
【0072】
従って、アレーアンテナ10Aは、指向性ビームBM1で電波を送信した後、アレーアンテナ10が自己の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6の全てに切換えるまで待機し、その後、次の指向性ビームBM2で電波を送信する。アレーアンテナ10が自己の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6の全てに切換える時間は、既知であるので、アレーアンテナ10Aは、その既知の時間だけ1つの指向性ビームで電波を送信し、その後、次の指向性ビームによって既知の時間だけ電波を送信する。これを繰り返すことにより、アレーアンテナ10Aは、指向性ビームBM1〜BM6の全てを用いて電波を送信し、アレーアンテナ10は、アレーアンテナ10Aの指向性ビームBM1〜BM6の各々に対して、自己の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えながらアレーアンテナ10Aからの電波を受信する。
【0073】
従って、無線装置100において、アレーアンテナ10は、36個の電波RF1〜RF36をアレーアンテナ10Aから受信し、強度検出手段30は、アレーアンテナ10が受信した電波RF1〜RF36の受信電波強度RSSI1〜RSSI36を検出し、ビーム決定手段40は、強度検出手段30が検出した受信電波強度RSSI1〜RSSI36に基づいて、上述した方法によって複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0074】
このように、他の無線装置は、アレーアンテナ10Aの指向性を切換えながら電波を順次送信し、無線装置100は、アレーアンテナ10の指向性を切換えながら他の無線装置から送信された電波を受信して複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0075】
この発明においては、図3に示す方法および図4に示す方法のいずれの方法によって複数の指向性ビームBM_PREFを決定してもよい。
【0076】
図5は、無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFを用いて2つの無線装置間で無線通信を行なう動作を説明するための図である。なお、図5においては、無線装置100および他の無線装置のうち、アレーアンテナ10,10Aのみを図示する。
【0077】
無線装置100に搭載されたアレーアンテナ10および他の無線装置に搭載されたアレーアンテナ10Aは、壁200,210およびブロック220,230,240が存在する電波環境に配置される。この場合、ブロック220,230,240は、アレーアンテナ10,10A間に配置される。
【0078】
無線装置100は、上述した方法によって、他の無線装置との無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして指向性ビームBM2,BM6を決定する。また、他の無線装置は、上述した方法によって、無線装置100との無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして指向性ビームBM3,BM5を決定する。
【0079】
無線装置100のアレーアンテナ10は、指向性ビームBM2を用いて電波を他の無線装置のアレーアンテナ10Aへ送信する。アレーアンテナ10から放射された電波RF1は、壁200へ向かって伝搬し、壁200で反射される。そして、電波RF1は、壁200で反射された後、アレーアンテナ10Aへ向かって伝搬し、指向性ビームBM3を用いてアレーアンテナ10Aによって受信される。
【0080】
また、無線装置100のアレーアンテナ10は、指向性ビームBM6を用いて電波を他の無線装置のアレーアンテナ10Aへ送信する。アレーアンテナ10から放射された電波RF2は、壁210へ向かって伝搬し、壁210で反射される。そして、電波RF2は、壁210で反射された後、アレーアンテナ10Aへ向かって伝搬し、指向性ビームBM5を用いてアレーアンテナ10Aによって受信される。
【0081】
このように、電波が伝搬するときの障害になるブロック220,230,240がアレーアンテナ10,10A間に存在する場合、壁200,210によって反射されることによってアレーアンテナ10,10A間を伝搬する電波RF1,RF2を送受信する指向性ビームBM2,BM6;BM3,BM5がそれぞれ無線装置100および他の無線装置において無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定される。
【0082】
無線装置100および他の無線装置において複数の指向性ビームBM_PREFが決定されると、無線装置100および他の無線装置間で無線通信を行なう方法として2つの方法が存在する。
【0083】
1つ目の方法は、電波RF1,RF2のいずれか一方を用いて無線装置100および他の無線装置間で電波を送受信する方法(MTH1)であり、2つ目の方法は、電波RF1を用いて無線装置100から他の無線装置へ電波を送信し、電波RF2を用いて他の無線装置から無線装置100へ電波を送信する方法(MTH2)である。
【0084】
この2つの方法MTH1,MTH2について具体的に説明する。
【0085】
(MTH1)
方法MTH1を用いて無線装置100および他の無線装置間で無線通信を行なう場合、無線装置100の指向性切換手段20は、リアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,hi,lo,lo,lo,lo]をバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV2を生成してアレーアンテナ10のバラクタダイオード11〜16に供給する。そして、通信手段50は、信号に対して変調等の送信処理を施してアレーアンテナ10のアンテナ素子7へ出力する。
【0086】
そうすると、アレーアンテナ10は、指向性切換手段20からの制御電圧セットCV2に応じて、指向性ビームBM2を放射し、通信手段50からの信号を指向性ビームBM2によって送信する。
【0087】
そして、アレーアンテナ10から放射された電波RF1は、上述したように壁200で反射されてアレーアンテナ10Aへ伝搬する。
【0088】
一方、他の無線装置の指向性切換手段20は、リアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,lo,hi,lo,lo,lo]をバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV3を生成してアレーアンテナ10Aのバラクタダイオード11〜16に供給する。
【0089】
そうすると、アレーアンテナ10Aは、指向性切換手段20からの制御電圧セットCV3に応じて、指向性ビームBM3を放射し、電波RF1を受信する。そして、アレーアンテナ10Aのアンテナ素子7は、電波RF1を通信手段50へ出力し、通信手段50は、電波RF1に対して復調等の受信処理を施し、無線装置100から送信された信号を受信する。
【0090】
その後、他の無線装置の通信手段50は、無線装置100へ送信するための信号に対して変調等の受信処理を施してアレーアンテナ10Aのアンテナ素子7へ出力する。そして、アレーアンテナ10Aは、指向性ビームBM3を用いて信号を送信する。
【0091】
アレーアンテナ10Aから放射された電波RF1は、壁200で反射された後、アレーアンテナ10へ伝搬する。そして、アレーアンテナ10は、指向性ビームBM2によって電波RF1を受信し、その受信した電波RF1をアンテナ素子7によって通信手段50へ出力する。
【0092】
無線装置100の通信手段50は、電波RF1に対して復調等の受信処理を施して他の無線装置から送信された信号を受信する。この場合、通信手段50は、信号に対して受信処理を施す過程で誤りビット率等の信号品質を検出し、その検出した信号品質をしきい値Qthと比較する。
【0093】
そして、無線装置100の通信手段50は、信号品質がしきい値Qth以上であるとき、指向性ビームBM2を維持して他の無線装置と無線通信を行なう。一方、無線装置100の通信手段50は、信号品質がしきい値Qthよりも低いとき、切換信号EXX1を生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0094】
そうすると、無線装置100の指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、リアクタンスセットx,xからリアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,lo,lo,lo,lo,hi]を選択し、その選択したリアクタンスセットxをバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV6を生成してバラクタダイオード11〜16へ供給する。即ち、指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットxからリアクタンスセットxに切換える。
【0095】
そして、無線装置100の通信手段50は、他の無線装置へ送信するための信号に対して変調等の送信処理を施してアレーアンテナ10のアンテナ素子7へ出力する。
【0096】
そうすると、アレーアンテナ10は、制御電圧セットCV6に応じて、指向性ビームBM6を放射し、通信手段50からの信号を指向性ビームBM6によって送信する。
【0097】
アレーアンテナ10から放射された電波RF2は、壁210で反射されてアレーアンテナ10Aへ伝搬する。
【0098】
一方、他の無線装置の通信手段50は、指向性ビームBM3によって無線装置100からの電波RF1を受信できないので、切換信号EXX1を生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0099】
そうすると、他の無線装置の指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、リアクタンスセットx,xからリアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,lo,lo,lo,hi,lo]を選択し、その選択したリアクタンスセットxをバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV5を生成してバラクタダイオード11〜16へ供給する。即ち、指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットxからリアクタンスセットxに切換える。
【0100】
そして、アレーアンテナ10Aは、指向性切換手段20からの制御電圧セットCV5に応じて、指向性ビームBM5を放射し、無線装置100から送信された電波RF2を受信する。そうすると、アレーアンテナ10Aのアンテナ素子7は、電波RF2を通信手段50へ出力し、通信手段50は、電波RF2に対して復調等の受信処理を施し、無線装置100から送信された信号を受信する。
【0101】
上述した動作によって無線装置100および他の無線装置間で無線通信が行なわれ、無線装置100の通信手段50は、アレーアンテナ10の指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREF(=BM2,BM6)に含まれる全ての指向性ビームに切換えても信号品質がしきい値Qth以上に改善されない場合、開始信号STを生成してビーム決定手段40へ出力する。
【0102】
これによって、無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFが上述した動作によって決定し直される。そして、その新たに決定された複数の指向性ビームBM_PREFを用いて無線装置100および他の無線装置間で無線通信が行なわれる。
【0103】
(MTH2)
方法MTH2を用いて無線装置100および他の無線装置間で無線通信を行なう場合、無線装置100は、方法MTH1において説明した動作と同じ動作に従って、指向性ビームBM2を用いて信号を他の無線装置へ送信する。そして、他の無線装置は、方法MTH1において説明した動作と同じ動作に従って、指向性ビームBM3を用いて無線装置100からの信号を受信する。
【0104】
その後、他の無線装置において、通信手段50は、切換信号EXX1を生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0105】
そうすると、他の無線装置の指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、リアクタンスセットx,xからリアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,lo,lo,lo,hi,lo]を選択し、その選択したリアクタンスセットxをバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV5を生成してバラクタダイオード11〜16へ供給する。即ち、指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットxからリアクタンスセットxに切換える。
【0106】
そして、他の無線装置の通信手段50は、無線装置100へ送信するための信号に対して変調等の送信処理を施してアレーアンテナ10Aのアンテナ素子7へ出力する。
【0107】
そうすると、アレーアンテナ10Aは、制御電圧セットCV5に応じて、指向性ビームBM5を放射し、通信手段50からの信号を指向性ビームBM5によって送信する。
【0108】
アレーアンテナ10Aから放射された電波RF2は、壁210で反射されてアレーアンテナ10へ伝搬する。
【0109】
一方、無線装置100の通信手段50は、指向性ビームBM2によって他の無線装置へ信号を送信した後、切換信号EXX1を生成して指向性切換手段20へ出力する。
【0110】
そうすると、無線装置100の指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、リアクタンスセットx,xからリアクタンスセットx=[xm1,xm2,xm3,xm4,xm5,xm6]=[lo,lo,lo,lo,lo,hi]を選択し、その選択したリアクタンスセットxをバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV6を生成してバラクタダイオード11〜16へ供給する。即ち、指向性切換手段20は、切換信号EXX1に応じて、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットxからリアクタンスセットxに切換える。
【0111】
そして、アレーアンテナ10は、指向性切換手段20からの制御電圧セットCV6に応じて、指向性ビームBM6を放射し、他の無線装置から送信された電波RF2を受信する。そうすると、アレーアンテナ10のアンテナ素子7は、電波RF2を通信手段50へ出力し、通信手段50は、電波RF2に対して復調等の受信処理を施し、他の無線装置から送信された信号を受信する。
【0112】
その後、無線装置100の通信手段50は、切換信号EXX2を生成して指向性切換手段20へ出力する。指向性切換手段20は、切換信号EXX2に応じて、リアクタンスセットxの前にバラクタダイオード11〜16に設定していたリアクタンスセットxを選択し、その選択したリアクタンスセットxをバラクタダイオード11〜16に設定するための制御電圧セットCV2を生成してバラクタダイオード11〜16へ供給する。
【0113】
また、通信手段50は、他の無線装置に送信するための信号に対して変調等の送信処理を施してアレーアンテナ10のアンテナ素子7へ出力する。
【0114】
その後、無線装置100は、上述した動作と同じ動作によって、指向性ビームBM2を用いて信号を他の無線装置へ送信する。
【0115】
他の無線装置は、無線装置100における動作と同じ動作によって、リアクタンスセットxをリアクタンスセットxの前にバラクタダイオード11〜16に設定していたリアクタンスセットxに切換え、指向性ビームBM3によって無線装置100からの信号を受信する。
【0116】
その後、他の無線装置は、同様にして、リアクタンスセットxをリアクタンスセットxの前にバラクタダイオード11〜16に設定していたリアクタンスセットxに切換え、指向性ビームBM5によって無線装置100へ信号を送信する。
【0117】
その後、無線装置100および他の無線装置は、上述した動作を繰り返し、電波の送信と電波の受信とをそれぞれ異なる指向性ビームBM2,BM6;BM3,BM5によって行なう。
【0118】
電波の送信と電波の受信とをそれぞれ異なる指向性ビームBM2,BM6;BM3,BM5によって行なっているときに、受信した信号の信号品質がしきい値Qthよりも低くなると、方法MTH1における動作と同じ方法によって、信号を受信するために用いられている指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で他の指向性ビームに切換える。
【0119】
そして、信号を受信するために用いられている指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFに含まれる全ての指向性ビームに切換えても信号品質がしきい値Qth以上に改善されない場合、通信手段50は、開始信号STを生成してビーム決定手段40へ出力する。
【0120】
これによって、新たな複数の指向性ビームBM_PREFが決定され、その決定された新たな複数の指向性ビームBM_PREFの中から選択した2つの指向性ビームを用いて、それぞれ、異なる指向性ビームによって電波の送信および電波の受信が行なわれる。
【0121】
上述したように、無線装置100および他の無線装置がそれぞれ指向性ビームBM2,BM3を用いることによって無線装置100および他の無線装置間で電波RF1が送受信され、無線装置100および他の無線装置間でリンクが確立される。
【0122】
また、無線装置100および他の無線装置がそれぞれ指向性ビームBM6,BM5を用いることによって無線装置100および他の無線装置間で電波RF2が送受信され、無線装置100および他の無線装置間でリンクが確立される。
【0123】
従って、無線装置100および他の無線装置間で伝搬する電波RF1,RF2の方向に合致する指向性ビームBM2,BM6;BM3,BM5をそれぞれ無線装置100および他の無線装置が放射することによって、無線装置100および他の無線装置間でリンクが確立される。
【0124】
そして、電波RF1は、複数の電磁線8が集合したクラスターであり、電波RF2は、複数の電磁線9が集合したクラスターである。複数の電磁線8は、伝搬方向が相互に異なるので、電波RF1は、所定の角度広がりを有する。電波RF2についても同様である。
【0125】
従って、この各電波RF1,RF2の角度広がりによって、無線通信のゲインが異なる。
【0126】
図6は、図1に示すアレーアンテナ10が0度方向の指向性ビームを放射した場合におけるクラスターの方位角と分布指向性ゲインとの関係を示す図である。図6において、横軸は、クラスターの方位角を表し、縦軸は、分布指向性ゲインを表す。また、曲線k1は、クラスターの角度広がりが20度である場合を示し、曲線k2は、クラスターの角度広がりが40度である場合を示し、曲線k3は、クラスターの角度広がりが60度である場合を示す。
【0127】
各角度広がりにおいて、分布指向性ゲインは、クラスターの方位角が0度である場合、つまり、クラスターの方位角がアレーアンテナ10から放射される指向性ビームの方向に一致する場合、最大になり、クラスターの方位角が大きくなるに従って(クラスターの方位角がアレーアンテナ10から放射される指向性ビームの方向からずれるに従って)小さくなる。
【0128】
従って、無線装置100および他の無線装置間で安定したリンクを確立するには、電波RF1,RF2の方向を向いた指向性ビームを選択することが重要である。
【0129】
上述したように、実施の形態1においては、無線装置100は、アレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換ながら他の無線装置から送信された電波(オムニパターンまたは指向性ビームで送信された電波)を受信し、受信電波強度RSSIの強い順に複数の指向性ビームを選択し、その選択した複数の指向性ビームを無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定する。そして、無線装置100は、その決定した複数の指向性ビームBM_PREFから選択した指向性ビームを用いて他の無線装置と無線通信を行ない、受信信号の信号品質がしきい値Qthよりも低くなると、複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で指向性ビームを切換えて他の無線装置と無線通信を行なう。つまり、無線装置100は、アレーアンテナ100に設定する指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で必要に応じて切換えて他の無線装置と無線通信を行なう。
【0130】
従って、1つの指向性ビームを用いた無線通信の通信品質が低下しても、他の指向性ビームを用いて通信品質の高い無線通信を行なうことができる。その結果、無線装置100は、相手方と安定して無線通信を行なうことができる。
【0131】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2による無線装置の構成を示す概略図である。図7を参照して、実施の形態2による無線装置100Aは、図1に示す無線装置100の強度検出手段30を方向推定手段30Aに代えたものであり、その他は、無線装置100と同じである。
【0132】
方向推定手段30Aは、アレーアンテナ10の給電素子であるアンテナ素子7と接続され、アレーアンテナ10の指向性ビームが図2に示すビームBM0および指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えられたときの受信信号y(t)(m=0〜6)をアンテナ素子7から受ける。そして、方向推定手段30Aは、受信信号y(t)に基づいて、後述する方法によって、アレーアンテナ10が到来波を受信するときの受信電力スペクトルを演算し、その演算した受信電力スペクトルにおいてピークが現れる角度(方向)を到来波の到来方向と推定し、その推定した到来方向θをビーム決定手段40へ出力する。
【0133】
なお、実施の形態2においては、ビーム決定手段40は、方向推定手段30Aから受けた電波の到来方向θが集中する集中度合の大きい順に無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFを決定する。
【0134】
アレーアンテナ10に到来する電波の到来方向を推定する方法について説明する。この発明においては、図7に示すx−y平面内における方角を示す方位角を有する到来波を到来方向推定の対象とする。
【0135】
L(Lは正の整数)個の到来波がアレーアンテナ10に到来している環境を考える。L個の到来波がアレーアンテナ10へ到来する場合、リアクタンスセットx(=xm1〜xm6)で得られる受信信号ベクトル<y>は、次式によって表わされる。
【0136】
【数1】

【0137】
なお、“T”は、転置を表す。また、この明細書においては、表記<X>は、行列XまたはベクトルXを意味する。従って、表記<y>は、式(1)におけるベクトルyを表わす。
【0138】
方向推定手段30Aは、受信信号y,y,y,・・・,yをアンテナ素子7から受けると、[y,y,y,・・・,yからなる受信信号ベクトル<y>の相関行列<Ryy>を次式によって演算する。
【0139】
【数2】

【0140】
なお、式(2)における“*”は、複素共役を表し、kは、スナップショット数であり、“H”は、エルミート転置を表す。
【0141】
そして、方向推定手段30Aは、次式によってステアリングベクトル<a(θ)>を演算する。
【0142】
【数3】

【0143】
なお、式(3)におけるθは、アンテナ素子7からアンテナ素子1への方向を0度とする到来波の到来方向であり、φ,・・・,φは、アンテナ素子7からアンテナ素子1への方向を0度とするM本の無給電素子(アンテナ素子1〜6)の方位角である。そして、到来波の個数をL個とした場合、θは、θ,θ,・・・,θからなる。
【0144】
その後、方向推定手段30Aは、式(2)によって演算した相関行列<Ryy>と、式(3)によって演算したステアリングベクトル<a(θ)>とを次式に代入して受信電力スペクトルPBF(θ)を演算する。
【0145】
【数4】

【0146】
なお、受信電力スペクトルPBF(θ)は、規格化された受信電力を表す。
【0147】
引き続いて、方向推定手段30Aは、式(4)により演算した受信電力スペクトルPBF(θ)においてピークが現れる角度θをL個の到来波の到来方向と推定する。即ち、方向推定手段30Aは、次式によってL個の到来波の到来方向を推定する。
【0148】
【数5】

【0149】
図8は、L個の到来波の到来方向を推定する動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、指向性切換手段20は、表1に示すリアクタンスセットに従ってバラクタダイオード11〜16に供給する制御電圧セットCLV0〜CLV6を順次切換え、オムニパターンを有するビームBM0と、0度、60度、120度、180度、240度および300度の方向に指向性DIR1〜DIR6を有する指向性ビームBM1〜BM6とをアレーアンテナ10に順次設定する(ステップS1)。
【0150】
そして、アレーアンテナ10は、指向性切換手段20からの制御に従ってビームBM0〜BM6(図2参照)を順次放射し、受信信号y,y,y,・・・,yを順次受信するとともに(ステップS2)、その受信した受信信号y,y,y,・・・,yをアンテナ素子7(給電素子)から方向推定手段30Aへ出力する。
【0151】
方向推定手段30Aは、アレーアンテナ10から受けた受信信号y,y,y,・・・,yに基づいて受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yを生成し、その生成した受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yに基づいて、式(2)により相関行列<Ryy>を演算する(ステップS3)。
【0152】
そして、方向推定手段30Aは、式(3)によりステアリングベクトル<a(θ)>を演算し、その演算したステアリングベクトル<a(θ)>と、式(2)により演算した相関行列<Ryy>とを式(4)に代入して受信電力スペクトルPBF(θ)を演算する。(ステップS4)。
【0153】
その後、方向推定手段30Aは、式(5)により受信電力スペクトルPBF(θ)においてピークが現れる角度θを検出し、その検出した角度θをL個の到来波の到来方向と推定する(ステップS5)。
【0154】
これにより、一連の動作が終了する。
【0155】
このように、方向推定手段30Aは、アレーアンテナ10から放射されるビームが複数のビーム(BM0〜BM6)に順次切換えられたときにアレーアンテナ10が受信した受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yに基づいて、L個の到来波の相関を示す相関行列<Ryy>を演算し、その演算した相関行列<Ryy>と、ステアリングベクトル<a(θ)>とに基づいて受信電力スペクトルPBF(θ)を演算してL個の到来波の到来方向を推定する。
【0156】
受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yは、次式(6)によって表される。
【0157】
【数6】

【0158】
ただし、行列<W>は、等価ウエイト行列であり、行列<A>は、ステアリング行列であり、ベクトル<u(t)>は、到来信号ベクトルであり、ベクトル<n(t)>は、熱雑音である。なお、ステアリング行列<A>の各要素であるステアリングベクトル<a(θi)>(i=1〜Lであり、Lは、到来波の個数を示す)の各々は、式(3)によって表される。
【0159】
このように、受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yは、等価ウエイト行列<W>を用いて表され、等価ウエイト行列<W>は、アンテナ素子1〜7の素子間結合を含むものであるので、受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yに基づいて演算された受信電力スペクトルPBF(θ)は、アンテナ素子1〜7の素子間結合が反映されたスペクトルになる。即ち、受信電力スペクトルPBF(θ)は、アンテナ素子1〜7が相互に結合しながらアレーアンテナ10によって受信された電波の電力を示すスペクトルになる。そして、アンテナ素子1〜7の素子間結合は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンス値xm1〜xm6によって決定され、リアクタンスセットx(=[xm1,xm2,・・・,xm6])がどのようなリアクタンスセットに設定されても、アンテナ素子1〜7の素子間結合は生じる。即ち、アンテナ素子1〜7の素子間結合は、アレーアンテナ10の指向性を切換える精度と無関係に生じる。その結果、受信電力スペクトルPBF(θ)は、アレーアンテナ10の指向性を切換える精度に拘束されないスペクトルになる。
【0160】
従って、この発明によれば、アレーアンテナ10の指向性を切換える精度と無関係に到来波の到来方向を推定できる。
【0161】
また、受信電力スペクトルPBF(θ)に現れるピークの角度θを到来波の到来方向と推定するので、受信電力スペクトルPBF(θ)に複数のピークが現れ、その複数のピークが1つの角度付近に集中していれば、その1つの角度を電波の到来方向と推定できる。
【0162】
更に、受信電力スペクトルPBF(θ)は、受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yに基づいて演算されるので、到来波の到来方向を推定する過程において等価ウエイト行列<W>を演算しなくても到来波の到来方向を推定できる。
【0163】
なお、式(2)により相関行列<Ryy>を演算することは、受信信号に基づいてM+1本のアンテナ素子の素子間結合が反映され、かつ、L個の到来波の相関を示す相関行列を演算することに相当する。上述したように、受信信号ベクトル<y>=[y,y,y,・・・,yは、アンテナ素子1〜7の素子間結合を含む等価ウエイト行列<W>を用いて表されるからである。
【0164】
上記においては、式(4)によって演算された受信電力スペクトルPBF(θ)に基づいて、到来波の到来方向を推定すると説明したが、この発明においては、これに限られず、次の方法によって到来波の到来方向を推定してもよい。
【0165】
方向推定手段30Aは、式(2)により相関行列<Ryy>を演算した後、相関行列<Ryy>に固有値分解を施し、最大の固有値λが得られるときの固有ベクトルvを次式より求める。
【0166】
【数7】

【0167】
そして、方向推定手段30Aは、式(3)によりステアリングベクトル<a(θ)>を演算し、その演算したステアリングベクトル<a(θ)>と、式(7)により演算した固有ベクトルvとを次式に代入して受信電力スペクトルPSPECTRAL(θ)を演算する。
【0168】
【数8】

【0169】
その後、方向推定手段30Aは、受信電力スペクトルPSPECTRAL(θ)においてピークが現れる角度θを到来波の到来方向と推定する。即ち、方向推定手段30Aは、次式によって到来波の到来方向と推定する。
【0170】
【数9】

【0171】
受信電力スペクトルPSPECTRAL(θ)に基づいて、到来波の到来方向を推定する場合、相関行列<Ryy>を演算しなくても到来波の到来方向を推定できる。
【0172】
図9は、受信電力スペクトルPBFと方位角との関係を示す図である。図9において、横軸は、方位角を表し、縦軸は、受信電力スペクトルPBFを表す。
【0173】
上述した方法によって受信電力スペクトルPBFを演算すると、曲線k4によって示す受信電力スペクトルPBFが得られる。この受信電力スペクトルPBFは、ピークP1〜P7を有し、ピークP1〜P7の各々は、電波の到来方向である。従って、方向推定手段30Aは、ピークP1〜P7が現れる方位角θ1〜θ7を電波の到来方向として検出し、その検出した到来方向θ1〜θ7をビーム決定手段40へ出力する。
【0174】
ビーム決定手段40は、到来方向θ1〜θ7を受け、その受けた到来方向θ1〜θ7に基づいて、到来方向の集中度合を解析する。この場合、ピークP1〜P4に対応する到来方向θ1〜θ4は、120度の方位角に集中しており、ピークP5〜P7に対応する到来方向θ5〜θ7は、300度の方位角に集中している。そして、120度の方位角への到来方向の集中度合が300度の方位角への到来方向の集中度合よりも大きい。
【0175】
従って、ビーム決定手段40は、到来方向の集中度合が大きい順に、120度の方向および300度の方向を無線通信に適した指向性ビームの方向として決定し、その決定した指向性ビームの方向に指向性を有する指向性ビームBM3,BM6を無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定する。
【0176】
無線装置100Aが方向推定手段30Aによって電波の到来方向を推定する場合、他の無線装置は、オムニパターンからなるビームBM0で電波を送信してもよく、アレーアンテナ10Aの指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に順次切換えながら電波を送信してもよい。
【0177】
従って、実施の形態2において、無線装置100Aが電波の到来方向を推定して無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFを決定する場合も、図3または図4において説明した方法が用いられる。
【0178】
無線装置100Aは、上述した方法によって電波の到来方向を推定し、その推定した電波の到来方向に基づいて、無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFを決定すると、上述した方法MTH1,MTH2のいずれかの方法を用いて他の無線装置と無線通信を行なう。
【0179】
従って、実施の形態2においても、無線装置100Aは、相手方と安定して無線通信を行なうことができる。
【0180】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0181】
上述した実施の形態1,2においては、アレーアンテナ10は、7本のアンテナ素子1〜7を有すると説明したが、この発明においては、これに限らず、アレーアンテナ10は、1本の給電素子と、2本の無給電素子とからなる3本のアンテナ素子を少なくとも備えていればよい。
【0182】
2本の無給電素子があれば、給電素子を中心にして2本の無給電素子を対称に配置することができ、2本の無給電素子に装荷された2個のバラクタダイオードに供給する制御電圧の電圧値を多段階に制御することによって、0〜360度の範囲において、アレーアンテナ10の指向性を60度ごとに切換え可能である。
【0183】
従って、アレーアンテナ10は、少なくとも3本のアンテナ素子を備えていればよい。
【0184】
また、上述した実施の形態1,2においては、アレーアンテナ10のビームパターンは、オムニパターン、0度、60度、120度、180度、240度、300度の方向に指向性DIR1〜DIR6を有するビームパターンの順に切換えられると説明したが、この発明においては、ビームパターンを切換える順序は、任意であってもよい。
【0185】
更に、上述した実施の形態1,2においては、無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして2個の指向性ビームを決定すると説明したが、この発明においては、これに限らず、3個以上の指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFとして決定するようにしてもよい。
【0186】
更に、上述した実施の形態1,2においては、受信電波強度の強い順に2個の指向性ビームを選択し、その選択した2個の指向性ビームを無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定すると説明したが、この発明においては、これに限らず、受信電波強度のしきい値を設け、アレーアンテナ10の指向性ビームを指向性ビームBM1〜BM6に切換えながら受信した電波の受信電波強度RSSI1〜RSSI6のうち、受信電波強度のしきい値以上の受信電波強度が得られるときの指向性ビームを全て無線通信に適した複数の指向性ビームBM_PREFとして決定するようにしてもよい。
【0187】
更に、この発明においては、誤りビット率、フレームエラー率、パケットエラー率、信号対ノイズ比、信号電力、搬送波信号対雑音比、および信号に対する干渉雑音を含む雑音比の各々にしきい値を設け、誤りビット率、フレームエラー率、パケットエラー率、信号対ノイズ比、信号電力、搬送波信号対雑音比、および信号に対する干渉雑音を含む雑音比のいずれかがしきい値以上になるときの指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFとして決定するようにしてもよい。
【0188】
更に、上述した実施の形態1,2においては、誤りビット率がしきい値Qthよりも低くなると、複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で指向性ビームを切換えて無線通信を行なうと説明したが、この発明においては、これに限らず、受信信号強度、フレームエラー率、パケットエラー率、信号対ノイズ比、信号電力、搬送波信号対雑音比、および信号に対する干渉雑音を含む雑音比のいずれかがしきい値よりも低くなると、複数の指向性ビームBM_PREFの範囲で指向性ビームを切換えて無線通信を行なうようにしてもよい。
【0189】
更に、上述した実施の形態1,2においては、アレーアンテナ10の指向性ビームを複数の指向性ビームBM_PREFに含まれる全ての指向性ビームに切換えても受信信号の信号品質がしきい値Qth以上にならないとき、複数の指向性ビームBM_PREFを決定し直すと説明したが、この発明においては、これに限らず、複数の指向性ビームBM_PREFを定期的に決定し直すようにしてもよい。
【0190】
更に、この発明においては、一定時間内に受信された受信電波強度、または一定時間内に検出された電波の到来方向の集中度合に基づいて複数の指向性ビームBM_PREFを決定するようにしてもよい。
【0191】
更に、この発明においては、MUSIC(MUtiple Signal Classification)法およびESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法等を用いて電波の到来方向を検出し、その検出した到来方向の集中度合に基づいて、複数の指向性ビームBM_PREFを決定するようにしてもよい。
【0192】
更に、この発明は、無線装置100,100Aが屋外および屋内のいずれに配置されて無線通信を行なう場合にも、安定した無線通信を行なうことができるという効果を享受するが、特に、無線装置100,100Aが屋内に配置されて無線通信を行なう場合に顕著な効果を奏する。
【0193】
また、電波の到来方向を推定する方法としては、上述した方法に限られるものではなく、本出願人が既に出願した特開2004−15147号公報、特開2004−254001号公報、特開2004−257753号公報などに記載された技術を用いても良い。
【0194】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0195】
この発明は、相手方と安定して無線通信を行なうことができる無線装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】この発明の実施の形態1による無線装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すx−y平面におけるアンテナ素子の平面配置図である。
【図3】無線通信に好適な複数の指向性ビームを決定するための動作を説明するための図である。
【図4】無線通信に好適な複数の指向性ビームを決定するための動作を説明するための他の図である。
【図5】無線通信に適した複数の指向性ビームを用いて2つの無線装置間で無線通信を行なう動作を説明するための図である。
【図6】図1に示すアレーアンテナが0度方向の指向性ビームを放射した場合におけるクラスターの方位角と分布指向性ゲインとの関係を示す図である。
【図7】実施の形態2による無線装置の構成を示す概略図である。
【図8】L個の到来波の到来方向を推定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】受信電力スペクトルと方位角との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0197】
1〜7 アンテナ素子、10,10A アレーアンテナ、11〜16 バラクタダイオード、20 指向性切換手段、30 強度検出手段、30A 方向推定手段、40 ビーム決定手段、50 通信手段、100,100A 無線装置、200,210 壁、220,230,240 ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に指向性を切換え可能なアレーアンテナと、
無線通信に好適な複数の指向性ビームを決定するビーム決定手段と、
前記アレーアンテナに設定する指向性ビームを前記決定された複数の指向性ビームの範囲で必要に応じて切換えて他の無線装置と無線通信を行なう通信手段とを備える無線装置。
【請求項2】
前記通信手段は、前記複数の指向性ビームから指向性が相互に異なる2つの指向性ビームを選択し、その選択した2つの指向性ビームを切換えながら電波の送信および電波の受信をそれぞれ異なる指向性ビームを用いて行なう、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記通信手段は、前記無線通信の通信品質がしきい値よりも低下すると、前記無線通信に用いている指向性ビームを前記複数の指向性ビームの範囲で切換えて前記無線通信を行なう、請求項1または請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記ビーム決定手段は、前記複数の指向性ビームの全てに対して前記無線通信の通信品質が前記しきい値よりも低くなると、前記複数の指向性ビームを決定し直す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項5】
前記ビーム決定手段は、前記複数の指向性ビームを定期的に決定し直す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項6】
前記ビーム決定手段は、前記アレーアンテナの指向性が切換えられたときの受信電波の強度が強い順に前記複数の指向性ビームを決定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項7】
前記ビーム決定手段は、前記アレーアンテナに到来する電波の到来方向が集中する集中度合の大きい順に前記複数の指向性ビームを決定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−74600(P2007−74600A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261447(P2005−261447)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「超高速ギガビット無線LANの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】