説明

無線評価装置

【課題】 MIMO無線機に対応した角度広がりを有する環境を再現する評価装置を提供する。
【解決手段】 MIMO無線評価装置は、評価対象PCと共に電波暗室に配置され、評価対象PCの複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメント62,64と、複数の送信信号を所定の割合で加算して、評価対象PCの複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成する加算部40,42と、複数のアンテナエレメント62,64と評価対象PCの複数のアンテナとの位置関係に基づいて、複数のアンテナエレメント62,64により形成されるアンテナビームのメインビームが評価対象PCのアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが評価対象PCのアンテナに照射されないように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行う複素係数重み付け部46,48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、MIMO無線装置の特性を評価する装置とそれを用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANなどの無線通信システムが急速に発達してきている。無線通信システムの開発においては、通信特性の評価実験が重要である。評価実験には、有線実験と無線実験とがある。有線実験は、送信機と受信機を同軸ケーブルで接続し、無線信号の減衰量を擬似した送信信号を受信機に入力することによって試験を行う。これに対し、無線実験は、送信機から受信機に対して実際に電波を送信することによって試験を行う。無線実験は、送受信アンテナや電波伝搬を含めて評価することができるので、有線実験より実環境に近い試験を行える。
【0003】
実際の無線LANが利用される環境では、例えばアクセスポイント等の送信機から、例えばステーション等の受信機までの伝搬経路上で、障害物や地形によって、反射、回折等により、多重波環境になることが多い。
【0004】
特許文献1は、多重波環境を構築する方法を開示している。特許文献1は、評価対象の無線通信端末を中心とした円の円周上に等間隔にアンテナを設置し、それぞれのアンテナに入力する送信信号の振幅と位相を制御して、円の中心部付近に多重波伝搬環境を構築する方法を提案している。
【0005】
図17は、特許文献1に記載された無線機評価装置の構成図を示す図である。デジタル信号発生器1001で発生したデータ列を変調器1002にて変調し、RF周波数の送信信号を生成し、分配回路1003で7つに分配している。コンピュータ1006は、所望の多重伝搬路環境が構築されるようデジタル信号をDAコンバータ1009に出力し、位相回路1007と減衰回路1008を制御している。フェージングエミュレータ1010では、散乱体支持部1011が保持する7つのアンテナ1012が、分配回路1003とケーブル1013a〜1013gで接続されている。そして、ポール1016上の支持台1015に支持されたアンテナ1013とアンテナ1014の出力信号がケーブル1017とケーブル1018を通り、信号処理部1000に入力される。
【0006】
信号処理部1000では、アンテナ1013からの受信信号に対し、合成回路1021が出力する信号のS/N比が最大となるよう、アンテナ1013の受信信号とアンテナ1014の受信信号が最大比合成されるように制御回路1019で制御される移相器1020により位相を変化させている。そして、誤り率検出回路1022にて、受信した信号より復調して得られるビット列とデジタル信号発生器で発生したビット列を比較して、ビットエラーレートを算出している。
【0007】
以上の構成により、多重波伝搬環境における無線装置のBER評価を行うことを可能にしている。
【特許文献1】特開2005−227213(19頁、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した構成は、SISO無線機の評価を行うための構成であり、それぞれのオムニ指向性のアンテナにフェージング環境の素波を割り当てて送信している。従
って、多重波伝搬環境を構築することはできるが、MIMO無線機の評価に有効な任意の角度広がりを与える環境を構築することは非常に困難である。もし、特許文献1の構成で、任意の角度広がりを有する環境を実現しようとすると、受信アンテナの周囲に何百本ものアンテナが必要となる。
【0009】
本発明は、上記背景に鑑み、簡易な構成により、MIMO無線端末の試験に適した角度広がりを有する環境を再現する評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線評価装置は、複数のアンテナを有する無線通信端末に試験用の複数の送信信号を送信する無線評価装置であって、前記無線通信端末と共に無反射系の環境に配置され、前記無線通信端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントと、複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記無線通信端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成する送信信号加算部と、前記複数のアンテナエレメントと前記無線通信端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記無線通信端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記無線通信端末のアンテナに照射されないように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行う複素係数重み付け部とを備える。
【0011】
このように複数の送信信号を所定の割合で加算して生成した複数の受信アンテナ向け送信信号のメインビームを無線通信端末の各アンテナに照射することにより、簡易な構成で角度広がりのある環境における受信状態を再現することができる。また、アンテナビームのグレーティングローブが無線通信端末のアンテナに照射されないようにされていると共に、アンテナアレイと無線通信端末とが無反射系の環境に配置されているので、グレーティングローブが無線通信端末のアンテナに入射されることはない。従って、受信アンテナ向け送信信号と無線通信端末の各アンテナにて受信した信号とに基づいて、通信特性の評価を適切に行える。
【0012】
本発明の無線評価装置において、前記複数のアンテナエレメントは、前記送信信号の中心周波数の1波長以上の間隔で配置されていてもよい。
【0013】
この構成により、ビーム幅の細いビームを形成して放射することができるので、メインビームを所定のアンテナに照射した際に、所定のアンテナに隣接するアンテナに照射されるビームの指向性利得を抑圧することができる。
【0014】
本発明の無線評価装置は、前記各送信信号を前記無線通信端末が有するアンテナ数と同数に分配し、分配された複数の送信信号に対してフェージングを付加するフェージング付加部を備え、前記送信信号加算部は、フェージングが付加された送信信号を加算して、前記無線通信端末が有するアンテナ数と同数の受信アンテナ向け送信信号を生成してもよい。
【0015】
このようにフェージングを付加することにより、角度広がりの度合いを変更することが可能となり、様々な受信状態を作り出すことができる。
【0016】
本発明の無線評価装置において、前記フェージング付加部は、分配された複数の送信信号に対して無相関のフェージングを付加してもよい。
【0017】
このように無相関のフェージングを付加することにより、無線評価装置から無線通信端末へのパスが多数存在する受信状態を作り出すことができる。
【0018】
本発明の無線評価装置は、前記送信信号加算部によって前記送信信号を加算するときに各送信信号に与える重みを設定する加算割合設定部を備えてもよい。
【0019】
このように加算割合設定部にて、送信信号の加算割合を設定することにより、各送信信号の相関の強さを変えることができる。これにより、無線評価装置から無線通信端末へのパス数を変更することができる。
【0020】
本発明の無線評価装置において、前記加算割合設定部は、あらかじめ設定された電波の到来方向と角度広がり値とに基づいて前記複数のアンテナビームの相関値を導出し、前記相関値に基づいて前記重みを設定してもよい。
【0021】
このようにビームの相関値を用いて各送信信号の相関の強さを変えることにより、例えば、評価環境としてあらかじめ設定された電波の到来方向と角度広がりを実現することができる。
【0022】
本発明の無線評価装置は、それぞれの受信アンテナ向け送信信号を前記無線通信端末の各アンテナに向けて照射するように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に与える角度を制御する複素係数を決定する複素係数決定部を備え、前記複素係数重み付け部は、前記複素係数決定部にて決定された複素係数に基づいて、前記受信アンテナ向け送信信号の複素係数重み付けを行ってもよい。
【0023】
このように複素係数決定部にて受信アンテナ向け送信信号に与える角度を制御することにより、複数のアンテナエレメントと無線通信端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて適切に複素係数重み付けを行える。
【0024】
本発明の無線評価装置は、前記無線通信端末よりフィードバックされる受信品質を示す信号を用いてMIMO受信品質を評価するMIMO受信品質評価部を備え、前記複素係数決定部は、複素係数を変えることによってアンテナビームの方向を変え、前記MIMO受信品質評価部におけるMIMO受信品質が最良となる方向にアンテナビームを向けるための複素係数を求めてもよい。
【0025】
このようにMIMO受信品質が最良となるアンテナビームの方向を求め、当該方向にアンテナビームを向けて評価環境を作ることにより、評価対象の無線受信装置の筐体の形状、アンテナ配置、筐体の設置場所等によらず、適切なMIMO伝送品質評価を行うことが可能となる。
【0026】
本発明の無線評価装置は、前記受信アンテナ向け送信信号をアナログ信号に変換する、前記アンテナエレメントと同数のDAコンバータを備え、前記複数のDAコンバータが同一の動作クロックで動作するようにしてもよい。
【0027】
この構成により、複数のDAコンバータで変換された複数の送信信号を同期させることができる。
【0028】
本発明の無線評価装置は、一のローカル信号を発生させるローカル信号発生部と、前記複数のアンテナエレメントに入力する複数の受信アンテナ向け送信信号を前記ローカル信号によって周波数変換する周波数変換部とを備えてもよい。
【0029】
この構成により、複数のアンテナエレメントから送信される送信信号を同期させることができる。
【0030】
本発明の無線評価装置は、アナログ信号からなる複数の送信信号を生成する送信信号生成部と、一のローカル信号を発生させるローカル信号発生部と、前記複数の送信信号を前記ローカル信号によって周波数変換する複数の周波数変換部とを備えてもよい。
【0031】
この構成により、周波数変換された複数の送信信号を同期させることができる。
【0032】
本発明の無線評価装置は、前記複数の送信信号をデジタル信号に変換する複数のADコンバータを備え、前記複数のADコンバータが、同一の動作クロックで動作するようにしてもよい。
【0033】
この構成により、複数のADコンバータで変換された複数の送信信号を同期させることができる。
【0034】
本発明の無線評価装置において、前記アンテナエレメントは、前記無線通信端末と共に電波暗室に収容されてもよい。
【0035】
これにより、電波暗室にて電波の反射を抑制することにより無反射系の環境を実現すると共に、外部からの電波の侵入を防止して適切な試験環境を実現できる。
【0036】
本発明のMIMO無線端末評価装置は、複数のアンテナを有するMIMO無線端末の無線通信機能を評価するための評価装置であって、前記MIMO無線端末と共に電波暗室に配置され、前記MIMO無線端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントと、前記複数のアンテナエレメントを送信信号の中心周波数の1波長より長い間隔で保持するアンテナエレメント保持部と、評価用のパケットデータを生成するパケットデータ生成装置と、前記パケットデータを分割して複数の送信データを生成し、前記複数の送信データをMIMO変調して複数の送信信号を生成するアクセスポイントと、前記複数の送信信号を周波数変換する周波数変換部と、前記周波数変換部にて周波数変換された送信信号を分配する分配器と、分配された複数の送信信号にフェージングを付加する複数のフェージング付加部と、フェージングが付加された複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記MIMO無線端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成する送信信号加算部と、前記複数のアンテナエレメントと前記MIMO無線端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記MIMO無線端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記MIMO無線端末のアンテナに照射されないように、前記複数の受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行う複数の複素係数重み付け部と、前記複数の受信アンテナ向け送信信号を加算して、前記アンテナエレメント毎の送信信号を生成する加算器と、アンテナエレメント毎の送信信号を周波数変換し、前記アンテナエレメントに入力する周波数変換部とを備える。
【0037】
このように複数の送信信号を所定の割合で加算して生成した複数の受信アンテナ向け送信信号のメインビームをMIMO無線端末の各アンテナに照射することにより、簡易な構成で角度広がりのある環境における受信状態を再現することができる。また、アンテナビームのグレーティングローブがMIMO無線端末のアンテナに照射されないようにされていると共に、アンテナアレイとMIMO無線端末とが無反射系の環境に配置されているので、グレーティングローブがMIMO無線端末のアンテナに入射されることはない。従って、受信アンテナ向け送信信号とMIMO無線端末の各アンテナにて受信した信号とに基づいて、通信特性の評価を適切に行える。
【0038】
本発明の無線評価方法は、複数のアンテナを有する無線通信端末に試験用の複数の送信信号を送信する無線評価方法であって、前記無線通信端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントを前記無線通信端末と共に無反射系の環境に配置するステップと、複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記無線通信端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成するステップと、前記複数のアンテナエレメントと前記無線通信端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記無線通信端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記無線通信端末のアンテナに照射されないように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行うステップとを備える。
【0039】
この構成により、本発明の無線評価装置と同様に、簡易な構成で角度広がりのある環境における受信状態を再現することができる。なお、本発明の無線評価装置の各種の構成を本発明の無線評価方法にも適用できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、簡易な構成で、角度広がりのある環境における受信状態を再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態の無線評価装置について、MIMO無線評価装置を例として、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、MIMO無線評価装置が備える伝搬環境再現装置10の構成を示す図である。伝搬環境再現装置10についての説明に先立って、MIMO無線評価装置を用いた試験環境およびMIMO無線評価装置の全体構成について説明する。
【0042】
図2は、MIMO無線評価装置70およびその試験環境を示す図である。図2に示すように、MIMO無線評価装置70は、試験用のパケットデータを生成するデータ送信パソコン(以下、「データ送信PC」という)72と、無線LANのアクセスポイント74と、アクセスポイント74から入力されたストリームにフェージング付加等を行う伝搬環境再現装置10と、伝搬環境再現装置10にて生成されたRF信号を送信する2本のアンテナ62,64を有するアレイアンテナ66とを備えている。2本のアンテナ62,64は電波暗室96内に設置される。電波暗室96内には評価対象のパソコン(以下、「評価対象PC」という)90も設置される。MIMO無線評価装置70は、2本のアンテナ62,64から、評価対象PC90の2本のアンテナ92,94に独立のビームを照射する。
【0043】
図3は、アクセスポイント74の内部構成およびデータ送信PC72を示す図である。アクセスポイント74は、データ送信PC72とイーサネット(登録商標)ケーブル80を介して接続されている。アクセスポイント74は、データ送信PC72から入力されたデータパケットに対し、ベースバンド部76で信号処理を行う。ベースバンド部76は、MIMO処理およびIEEE802.11aに準拠したOFDM処理、5.2GHz帯への周波数変換および増幅を行い、5.25GHzを中心周波数とする5.2GHz帯のRF信号であるストリーム1とストリーム2を生成する。ベースバンド部76は、無線部78にストリーム毎のベースバンド信号を出力する。無線部78は、入力されたストリーム毎の信号を、周波数変換し、周波数変換された送信信号を伝搬環境再現装置10に出力する。
【0044】
伝搬環境再現装置10に取り付けられたアンテナ62,64は、伝搬環境再現装置10から入力された送信信号を電波暗室96内に放射する。2本のアンテナ62,64は、アンテナ保持台100に保持されている。
【0045】
図4(a)は、2本のアンテナ62,64を保持するアンテナ保持台100の構成を示す図である。アンテナ保持台100は、アンテナ62,64を取り付ける保持棒102と、保持棒102を支持する脚部108および台部110とを有する。アンテナ保持棒102は、保持板104と保持板補強板106から構成されている。保持板104には、アンテナ62,64を保持するための保持用穴112,114が形成されている。2本のアンテナ62,64の間隔は、送信するRF周波数の中心周波数5.25GHzの波長の5倍の長さである。ここでは、仮にアンテナ間の距離を5波長としているが、実際にはこれは送信、受信アンテナ間の距離および想定される評価対象PCの受信アンテナ間距離により規定される。
【0046】
図4(b)は、保持用穴112にアンテナ62を保持した状態を示す断面図である。保持用穴112に両端コネクタ116が挿入される。両端コネクタ116の一方(図4(b)における上側)にSMAコネクタ118を介してアンテナ62を接続する。両端コネクタ116の他方(図4(b)における下側)に、SMAコネクタ120を介して同軸ケーブル122を接続する。
【0047】
図5は、評価対象PC90の構成例を示す図である。評価対象PC90は、ノートパソコンである。評価対象PC90は、キーボードを有する筐体130と、液晶表示部を有する筐体132とがヒンジ部134を介して接続され、折り畳み可能な構成を有する。評価
対象PC90は、液晶を有する筐体の側面に2本のMIMO用アンテナ92,94を有する。2本のアンテナ92,94の間隔は、発明の構成の説明を容易にするために評価対象PCとして一般的な距離30cmすなわち5.2波長であるとする。評価対象PC90は、MIMO用アンテナ92,94を用いてMIMO受信処理を行い、データ送信PC72が生成したパケットデータを受信することによって例えば測定のためにインストールされたソフトウエア等によりスループットの測定を行うことが可能となり、MIMO受信の品質を評価できる。
【0048】
図6は、電波暗室96内に配置されたアンテナ62,64と評価対象PC90の位置関係を示す図である。評価対象PC90を収容する電波暗室96は、電波吸収体98を備えている。電波吸収体98は、アンテナ62,64により形成されるビームのグレーティングローブ、メインローブ、およびサイドローブを吸収することにより反射波の発生を防止する。
【0049】
評価対象PC90とアンテナ92,94は、アンテナ保持台100に保持された2本のアンテナ62,64と評価対象PC90の2本のアンテナ92,94が対向するように配置される。アンテナ62とアンテナ64の中点Xと、アンテナ92とアンテナ94の中点Yとの距離は、小型の電波暗室を想定して30波長とする。以上の各仮定した条件の下では、直線XYと中点Xからアンテナ92を結んだ直線のなす角、および直線XYと中点Xからアンテナ94を結んだ直線のなす角はともに3.3°となっている。図6において、点Xを中心に右回り方向を角度の正方向とし、点Xからみた点Yの方向を0°として説明する。
【0050】
次に、図1を参照して伝搬環境再現装置10について説明する。伝搬環境再現装置10は、ローカル信号発生部12において生成されたローカル信号と、動作クロック発生部14において生成された動作クロックとを利用して、入力されたRF信号であるストリーム1とストリーム2とに対して、フェージング付加及び複素係数重み付けを行い、生成したRF信号をアンテナ62とアンテナ64へ出力する。
【0051】
以下、伝搬環境再現装置10の各構成について説明する。周波数変換部16は、ローカル信号発生部12が生成したローカル信号を利用して、入力されたRF信号であるストリーム1を周波数変換して、ストリーム1のアナログベースバンド信号をADコンバータ20に出力する。周波数変換部18は、周波数変換部16と同一のローカル信号を利用して、入力されたRF信号であるストリーム2を周波数変換して、ストリーム2のアナログベースバンド信号をADコンバータ22に出力する。
【0052】
ADコンバータ20は、入力されたストリーム1のアナログベースバンド信号をAD変換し、デジタルベースバンド信号を分配器24に出力する。ADコンバータ22は、入力されたストリーム2のアナログベースバンド信号をAD変換し、デジタルベースバンド信号を分配器26に出力する。
【0053】
分配器24は、ストリーム1のデジタルベースバンド信号を2分配し、分配されたストリーム1をフェージング付加部30と、フェージング付加部32に出力する。分配器26は、ストリーム2を2分配し、分配されたストリーム2をフェージング付加部34と、フェージング付加部36に出力する。
【0054】
無相関フェージング係数生成部28は、フェージング係数の初期値を生成し、生成した初期値をフェージング付加部30,32,34,36に入力する。これにより、フェージング付加部30,32,34,36が送信信号に付加するフェージングが無相関となるようにする。
【0055】
フェージング付加部30は、分配器24にて分配されたストリーム1の信号に、フェージングの初期値から算出したフェージングを付加し、フェージングが付加された送信信号を加算器40に出力する。フェージング付加部32は分配器24にて分配されたストリーム1の信号に、フェージングの初期値から算出したフェージングを付加し、フェージングが付加された送信信号を加算器42に出力する。フェージング付加部34は分配器26にて分配されたストリーム2の信号に、フェージングの初期値から算出したフェージングを付加し、フェージングが付加された送信信号を加算器40に出力する。フェージング付加部36は分配器26にて分配されたストリーム2の信号に、フェージングの初期値から算出したフェージングを付加し、フェージングが付加された送信信号を加算器42に出力する。
【0056】
図7は、無相関フェージング係数生成部28と、フェージング付加部30の内部構成を示す図である。分配器140は、分配器24より入力される送信信号を6つに等電力分配し、分配した送信信号を可変移相器141〜可変移相器146に入力する。
【0057】
可変移相器141は、無相関フェージング係数生成部28より入力されるフェージング初期値から第1の遅延パスの位相変化量を計算し、計算した移相変化量に基づいて分配された送信信号を移相させる。可変移相器141は、移相させた送信信号を振幅制御器151に入力する。振幅制御器151は、無相関フェージング係数生成部28より入力されるフェージング初期値から第1の遅延パスの振幅変化量を計算し、計算した振幅変化量に基づいて送信信号の振幅を変化させる。振幅制御器151は、振幅を変化させた送信信号を遅延器161に入力する。遅延器161は、あらかじめ決められた遅延量だけ、分配され移相され振幅変化された送信信号を遅延させて加算器170に入力する。第2のパス〜第6のパスに処理を行う可変移相器142〜146、振幅制御器152〜156、遅延器162〜166も同様の動作を行う。加算器170は、遅延器161〜遅延器166から入力された信号を加算し、加算器40に出力する。
【0058】
図8(a)〜図8(c)は、フェージング付加部30の動作を示す概念図である。図8(a)は、無相関フェージング係数生成部28によって生成されたPN系列(初期値)200を示す図である。
【0059】
レイリーフェージングは、例えば、「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎」唐沢好男著、コロナ社、P22−23に記載されているように、中心極限定理により、正規分布するランダムなI成分とQ成分をベクトルにもつフェージングを与えることで、再現することができる。
【0060】
フェージング付加部30は、図8(a)に示すPN系列200において、最初の8個の1と0の合計の平均値をI成分、続く8個の1と0の合計の平均値をQ成分として、時間t1における第1パス202の複素係数を定める。フェージング付加部30は、PN系列200の次の8個の平均値から第2パスのI成分、続く8個の平均値から第2パスのQ成分を求める。以下、同様にして、フェージング付加部30は、PN系列200の最初の96個の値に基づいて、時間t1における6つのパスの複素係数を求める。フェージング付加部30は、続く96個の値に基づいて、時刻t2における6つのパスの複素係数を求める。
【0061】
図8(b)および図8(c)は、フェージング付加部30にてフェージングを付加したパスの時刻t1、時刻t2におけるスナップショットを示す図である。図8(a)および図8(b)に示すように、6つのパスの遅延時間が求められる。
【0062】
上記ではフェージング付加部30について説明したが、フェージング付加部32,34,36もフェージング付加部30と同じ構成を有する。ただし、無相関フェージング係数生成部28は、フェージング付加部32,34,36に対して、フェージング付加部30とは異なるPN系列を与える。これにより、フェージング付加部30,32,34,36が発生するフェージングは、無相関となる。
【0063】
加算割合設定部38は、加算割合制御信号を生成し、生成した加算割合信号を加算器40と加算器42に入力する。加算器40は、入力された加算割合制御信号に基づいて、フェージングが付加されたストリーム1とストリーム2を指定された割合で加算する。加算器40は、加算した信号を複素係数重み付け部46に出力する。加算器42は、入力された加算割合制御信号に基づいて、フェージングが付加された2つの送信信号を指定された割合で加算する。加算器42は、加算した信号を複素係数重み付け部48に出力する。なお、加算器40,42は、本発明における「送信信号加算部」に相当する。
【0064】
複素係数決定部44は、アンテナ62とアンテナ64が形成するアレイアンテナのメインビームが+3.3°方向に向く様な複素重み付け係数を生成し、複素係数重み付け部46に入力する。また、複素係数決定部44は、アレイアンテナのメインビームが−3.3°方向に向くような複素重み付け係数を生成し、複素係数重み付け部48に入力する。
【0065】
複素係数重み付け部46は、複素重み付け係数に基づいて、フェージングが付加された送信信号に対し、メインビームが+3.3°方向に向き、グレーティングローブが−3.3°方向に向かないような複素係数重み付けを行う。すなわち、複素係数重み付け部46は、アンテナ92向けの送信信号を生成する。複素係数重み付け部46は、複素係数重み付けしたベースバンド信号を、加算器50および加算器52に入力する。
【0066】
複素係数重み付け部48は、複素重み付け係数に基づいて、フェージングが付加された送信信号に対し、メインビームが−3.3°方向に向き、グレーティングローブが+3.3°方向に向かないような複素係数重み付けを行う。すなわち、複素係数重み付け部48は、アンテナ94向けの送信信号を生成する。複素係数重み付け部48は、複素係数重み付けしたベースバンド信号を、加算器50および加算器52に入力する。
【0067】
図9は、複素係数重み付け部46の内部構成を示す図である。複素係数重み付け部46は、例えば、「アンテナ工学ハンドブック」オーム社、電子通信学会編のP216−P219に記載されているように、所望の方向にビームを形成するために、各アンテナエレメントに対応した移相量を計算し、計算した移相量の移相回転を送信信号に対して行って出力する。
【0068】
複素係数重み付け部46は、分配器180と2つの移相器182,184を有している。分配器180は、入力された信号を等電力同位相分配して出力する。移相器182および移相器184は、入力された複素重み付け係数により決定される移相量に基づいて、分配されて入力された送信信号の位相を変化させる。移相器182にて位相を変化させた送信信号を加算器50に入力し、移相器184にて位相を変化させた送信信号を加算器52に入力する。なお、ここでは、分配器180にて送信信号を2つに分配した後、位相を変化させる構成について説明したが、先に、移相器にて送信信号の位相を変化させた後、分配器にて送信信号を分配する構成とすることも可能である。
【0069】
図1に戻って、伝搬環境再現装置10の構成について説明する。加算器50は、入力された2つの送信デジタルベースバンド信号を加算する。加算器50に入力されるデジタルベースバンド信号は、メインビームが+3.3°方向に向くようなベースバンド信号と、メインビームが−3.3°方向に向くようなベースバンド信号である。加算器50は、加
算したベースバンド信号をDAコンバータ54に入力する。DAコンバータ54は、加算器50から入力されたベースバンド信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を周波数変換部58に入力する。周波数変換部58は、DAコンバータ54にて変換された送信アナログベースバンド信号を周波数変換し、周波数変換後のRF信号をアンテナ62に入力する。加算器52は、入力された2つの送信デジタルベースバンド信号を加算する。DAコンバータ56は、加算器50から入力されたベースバンド信号をアナログ信号に変換する。周波数変換部60は、DAコンバータ56にて変換された送信アナログベースバンド信号を周波数変換し、アンテナ64に入力する。
【0070】
周波数変換部58は、ローカル信号発生部12が生成したローカル信号を利用して、入力された重み付けされた送信アナログベースバンド信号を周波数変換して、送信アナログRF信号をアンテナ62に出力する。周波数変換部60は、周波数変換部58と同一のローカル信号を利用して、入力された重み付けされた送信アナログベースバンド信号を周波数変換して、送信アナログRF信号をアンテナ64に出力する。
【0071】
動作クロック発生部14は、伝搬環境再現装置10内のデジタル回路であるADコンバータ20,22、分配器24,26、フェージング付加部30,32,34,36、加算器40,42,50,52、複素係数重み付け部46,48、DAコンバータ54,56に、同一のクロック信号を出力し、各デジタル回路は同期して動作する。
【0072】
図10および図11は、上記したMIMO無線機装置評装置のアレイアンテナが形成するビームパターンを示す図である。例えば、「アンテナ工学ハンドブック」オーム社、電子通信学会編のP201−P202に記載されているように、ボアサイト方向にアレイアンテナのビームを形成する場合、グレーティングローブが可視領域に入らない範囲でできる限り素子間隔を大きくして使用するのが一般的である。具体的には、アンテナ間隔を、送信周波数の波長より、わずかに小さくして使用するのが普通である。これに対し、本発明では、アレイアンテナのエレメント間隔を5λ(λは、送信周波数の波長)としている。
【0073】
図10は、2本の送信アンテナから構成されるアンテナアレイが形成するビームについて、遠方界条件と仮定したときに、アンテナに給電する信号の位相を回転させ、ビームを+3.3°および−3.3°方向に向けたときの指向性利得を示したものである。グラフの縦軸は指向性利得、横軸はボアサイト方向を0°としたときのアジマス角を示している。グラフ上にはアジマス角が+10°から−10°までの範囲で、アンテナ間隔d=1.0λの時の+3.3°方向に向けたビームパターン210a、d=5λのとき−3.3°方向に向けたビームパターン211aと、d=5λの時の+3.3°方向に向けたビームパターン212aを示している。
【0074】
アンテナ62,64と評価対象PC90が図6に示す配置のとき、一方のアンテナ92に向けたビームが他方のアンテナ94へ放射される度合いについて説明する。図10のビームパターン210aから分かるように、アンテナ間隔が1λであるときに、アンテナ92のある+3.3°方向にビームを向けた場合、アンテナ94のある−3.3°方向には、+3.3°方向に比べ、指向性利得を1dB程度しか抑圧できていない。
【0075】
本実施の形態のように、アンテナ間隔を5λとした場合には、メインビームが評価対象PC90のアンテナ間隔より小さくなるため、ビーム212aによる−3.3°方向へのビームは、零点またはヌル点を形成するため大きく抑圧することが可能である。一方、ビーム211aによる+3.3°方向へのビームは零点またはヌル点を形成するため大きく抑圧することができる。これらのアンテナ指向性は、直交ビームを形成し無相関とすることができる。また、ビーム211a、212aのピーク方向をそれぞれ+3.3°、−3.3°から0°に近づけることにより、評価対象PCのアンテナの存在する+3.3°方向と−3.3°方向とに存在するビーム211aおよびビーム212aによるピーク値と零点とのレベル差が減少するため、相関が増加する。これはまた、評価対象PC90のアンテナ間隔が減少したときに、アンテナ相関が増大することを意味する。例えば、図10に示したアンテナビームにより設定された系において、様々な評価対象PC90を試験したとき、アンテナ間隔が小さい評価対象PC90においては、MIMO伝送特性が劣化する等の試験を実施するのに有効である。
【0076】
図11に、アンテナ間隔が5λであるときのビームパターンの概念図を示している。実線で示すパターン214は+3.3°方向にビームを向けた場合のビームパターンである。また、破線で示すパターン216は−3.3°方向にビームを向けた場合のビームパターンである。
【0077】
アンテナ62,64の間隔が1λよりも大きいため、アンテナ92に向けたビームパターン214の他に、ビームパターン214と同等の利得を持つグレーティングローブが多数現れるが、グレーティングローブはアンテナ94に照射されない。多数発生するグレーティングローブは、電波吸収体98に吸収される。
【0078】
図12は、3本の送信アンテナからなるアンテナアレイが形成するビームについて、遠方界条件と仮定したときに、アンテナに給電する信号の位相を回転させ、ビームを+3.3°および−3.3°方向に向けたときの指向性利得を示したものである。グラフの縦軸は指向性利得、横軸はボアサイト方向を0°としたときのアジマス角を示している。グラフ上には、アジマス角が+10°から−10°までの範囲で、アンテナ間隔d=1.0λの時の+3.3°方向に向けたビームパターン210b、d=5λのとき−3.3°方向に向けたビームパターン211bと、d=5λの時の+3.3°方向に向けたビームパターン212bを示している。図12において、図10と異なるのは、例えば図4において5波長間隔に設置された3本のアンテナを有することである。アンテナの増加に伴い、図1における複素係数重み付け部、DAコンバータ、周波数変換部が1個ずつ増加される。この場合、アンテナ制御の自由度の増加、すなわち複素係数重み付け部が1つ増加することにより図11に示すように、+3.3°方向に送出されたビームに対して、−3.3°方向への放射はサイドローブで相関抑圧することが可能となる。サイドローブでの相関抑圧は、アジマス方向の範囲または相関抑圧のレベルを複素係数の重み付けを適切に変化させることにより任意にすることが可能となる。例えば、各アンテナの振幅の重み付けを等しくする場合には図12に示すようにサイドローブレベルはピーク方向に比較して、約−10dBとなり、各アンテナの振幅の重み付けを0.7:1:0.7にした場合は、約−15dBとなり、各アンテナ振幅の重み付けを0.5:1:0.5にした場合には、サイドローブ部分は零点となる。送信2本アンテナにおいては、ビームパターン間相関度の度合いは各ビームのピークと零点により決定されていたため、電波暗室の回転台上に設置された評価PCに対して、所望の相関度を設定できる回転範囲が限られる。送信2本のアンテナによる1つのビームにおいての位相差が半波長になりお互いに信号をうち消し合う特定のポイントすなわち零点近傍に限定される。一方、送信3本アンテナにより2送信ビームを形成することにより、サイドローブ抑圧が可能となり、所望の相関抑圧ができる範囲を拡大することが可能となる。
【0079】
このような構成とすることによって、本実施の形態は、小型の電波暗室96と、送信アンテナ2本または3本で、独立したビームを評価対象PC90の2本のアンテナ92,94に照射することが可能である。以上、本実施の形態のMIMO無線評価装置70の構成について説明した。
【0080】
本実施の形態のMIMO無線評価装置は、ストリーム1とストリーム2を加算器40,
42にて加算し、2つの送信信号を生成する。複素係数重み付け部46,48は、2つの送信信号のそれぞれのメインビームが+3.3°方向、−3.3°方向に向けて照射されるように、複素係数重み付けを行う。この構成により、評価対象PC90のアンテナ92,94に対して、ストリーム1およびストリーム2を合成した送信信号のメインビームを照射することができる。ストリーム1およびストリーム2には、それぞれ無相関のフェージングが付加されており、加算器40,42にて所定の割合で加算されているので、角度広がりを持ったビームの受信環境と等価的に同じ受信環境を実現することができる。
【0081】
また、本実施の形態では、グレーティングローブが評価対象PC90のアンテナ92,94に照射されないような複素係数重み付けがなされ、かつ、評価対象PC92およびアンテナ62,64が電波暗室96に配置されている。これにより、グレーティングローブ、サイドローブは電波吸収体98に吸収されるので、グレーティングローブ、サイドローブが反射して、アンテナ92,94に入射されることがない。従って、グレーティングローブ等が試験環境に対するノイズとなることがなく、適切な試験環境を実現できる。
【0082】
上記した実施の形態では、独立したビームにおいてストーム1とストリーム2に無相関のフェージングを加える場合について説明したが、ビーム間で特定の相関を有するフェージングを加えることにより、任意の角度広がりを実現してもよい。以下、上記した実施の形態の変形例について、図1および図13(a)および図13(b)を参照しながら、説明する。
【0083】
ビーム間に相関があるフェージング環境では、想定された伝搬モデルを構成するように適切なパラメータ値を相関係数に設定する。MIMOにおいては、一般的にシステムのリンクレベルシミュレーションを行う際の時空間モデルにより、その特性が決定されている。例えば、無線ローカルエリアネットワークの規格IEEE802.11nにおいては、「IEEE802 .11 11-03-0940-000n-tgn-channel-madel」に示すチャネルモデルが提供され、携帯電話規格3GPPにおいては、空間時間モデル(SCMモデル)として「3GPP TR 25.996 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Spatial channel model for Multiple Input Multiple Output (MIMO) simulations」に示されるMIMO伝搬モデルが提供され、そのモデルの中ではパスの到来方向と各パスの角度広がりが規定されている。
【0084】
本実施の形態においては、ビーム間のフェージング相関特性をあらかじめ決めておくために、モデルにより規定されたパスの到来方向と角度広がりを用いて、フェージングの相関係数を決定し、モデルの伝搬環境を再現する。アンテナ相関値の制御の方法について以下に詳細に記述する。フェージングが無相関の場合については上記に記載したように、図1のフェージング付加部30,32,34,36において異なるPN符号によりフェージングを発生している。
【0085】
これに対して、相関がある場合においては無相関フェージング生成部28において、フェージング付加部30,32は同じPN符号によるフェージング、フェージング付加部34,36は同じPN符号によるフェージングを付加する。すなわち、同じストリームにおいては、同じPN符号のフェージングが付加され、異なるストリームにおいては異なるフェージングが付加される。加算割合設定部38は、モデルに応じた加算割合を計算し、加算器40と加算器42に値を設定する。
【0086】
複素係数決定部44において、適切な複素係数が設定されアンテナ2本にて直交ビームが形成されている場合を例として説明する。アンテナ2本により直交ビームが形成された場合は、図10に示すように、2つのビームが形成され、そのビームのピーク方向には他方のビームの零点(ヌル)が形成される。図1に示すフェージング付加部30,32,34,36において異なるPNコードの種により生成されたレイリーフェージングが付加された場合、これらのビームは無相関となる。なお、本例では、フェージング付加部30とフェージング付加部32とが同じPN符号によるフェージング、フェージング付加部34とフェージング付加部36が同じPN符号によるフェージングを付加するので、ストリーム1とストリーム2のフェージングは無相関となり、ストリーム1から分岐した信号同士、ストリーム2から分岐した信号同士は相関を有する。
【0087】
本例では、フェージング付加部30から加算部40に入力される信号と、フェージング付加部32から加算部42に入力される信号とは相関を有し、フェージング付加部34から加算部40に入力される信号と、フェージング付加部36から加算部42に入力される信号とは相関を有する。加算部40、42は、加算割合設定部38にて設定された割合で、入力された信号を加算することにより、相関を有するビームを生成する。加算割合設定部38は、例えば、「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎」唐沢好男著、コロナ社、P66に記載されているように、下記の式(1)により角度広がりからフェージング相関特性を導出する。
【数1】

【0088】
図13(a)および図13(b)は、式(1)に基づきパスの到来角が0度および60度の場合の相関特性の計算値を示したものである。図13(a)は電波の到来方向のアジマス角が0°方向の場合、図13(b)は電波の到来方向のアジマス角が60°の場合における相関特性を示す図である。図13(a)および図13(b)では、評価対象PCのMIMOアンテナ間隔と、相関係数の関係を、角度広がりをパラメータとして示している。
【0089】
図13(a)および図13(b)において、グラフ301およびグラフ311は角度広がり30°、グラフ302およびグラフ312は角度広がり10°、グラフ303およびグラフ313は角度広がり5°、グラフ304およびグラフ314は角度広がり2°、グラフ305およびグラフ315は角度広がり1°のときの相関係数を示す。
【0090】
図13(a)および図13(b)から分かるように、評価対象PC90のアンテナ間隔は既知の値であり、到来方向のアジマス角および角度広がりは伝搬モデルにより規定される。加算割合設定部38は、これらの関係より、到来波の到来角度と角度広がりが指定されたときにビーム間の相関値を一意に決定する。加算割合設定部38は、この相関値を用いて加算割合を決定することにより、MIMOの所望の到来角度および角度広がりを実現することができる。
【0091】
上記した実施の形態では、相関のあるフェージングを付加したビームを評価対象に照射する場合、相関値を制御することで、擬似的に角度広がりのある環境でのMIMO無線機の性能を評価することができるという効果がある。
【0092】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態の無線評価装置について、MIMO無線評価装置を例として、図面を参照しながら説明する。
図14は、MIMO無線評価装置が備える伝搬環境再現装置11の構成を示す図である。第2の実施の形態の伝搬環境再現装置11の基本的な構成は、第1の実施の形態のMIMO無線評価装置10と同じであるが、第2の実施の形態の伝搬環境再現装置11は、第1のMIMO無線評価装置10の構成に加え、MIMO伝送評価部68を有する。図14において、図1と同じ符号を有するブロックは同じ機能を有する構成であり、重複する説明を省略する。
【0093】
MIMO伝送評価部68は、評価対象PC90に有線または無線により接続されている。無線を用いる場合には、評価すべき無線チャネルと異なる無線チャネルを用いる。MIMO伝送評価部68は、評価対象PC90から受信品質を示す情報のフィードバックを受ける。
【0094】
図15は、第1の実施の形態と異なるアンテナ配置を有する評価対象PC90の例を示す図である。第1の実施の形態では、図5に示すように、評価対象PC90の2つのアンテナ92、94は、評価対象PC90の筐体に対して対象に配置されていたのに対して、図15に示す例では、アンテナ94とアンテナ95は、筐体130に対して非対称に配置されている。
【0095】
図16は、第2の実施の形態のMIMO無線評価装置によるビームパターンを示す図である。図16においてビーム218,220は、無相関またはあらかじめ設定された相関を有するフェージングが付加されたビームを示す。図16において、図11と同じ符号は、図11と同じブロックを示す。図15に示す様なアンテナ配置を有する評価対象PC90を評価する際の伝搬再現装置11の動作について説明する。
【0096】
上記した第1の実施の形態で説明したように、2つのビームのピーク方向に、評価対象PC90のアンテナがある場合に、MIMOチャネルが無相関となり、良い特性が得られる。図9に示すように、筐体の両側にアンテナ92、94が設置されたと仮定した場合には、このような良い特性の状態になる。しかし、図15に示すように、アンテナの配置が対称でない場合には、両者のアンテナが同一のビーム内に入り同一のフェージング信号を受信する割合が多くなるため、相関が大きくなりMIMO伝送特性が劣化することが考えられる。
【0097】
図14の複素係数決定部44は、次のような動作によりMIMO伝送品質をモニタしながら2つのビームの方向を決定する。直交ビームの直交関係またはサイドローブによる相関を軽減した関係を保持したままビームを振るためには、複素係数において振幅を不変とし、位相を0°から360°まで変化させる。
【0098】
図16は、ビームの方向を変える動作を示す図である。伝搬環境再現装置11は、位相を変化させることにより、ビーム218,220の方向を矢印222のように振ることができる。評価対象PC90は、スループット、パケットエラー率またはビットエラー率等の符号誤り率の受信品質を測定する。そして、評価対象PC90は、測定した受信品質を示す信号を、有線または無線の信号線路を通して伝搬環境再現装置11に送信する。
【0099】
伝搬環境再現装置11は、評価対象PC90からの受信品質のフィードバックに基づいて、ビームをアジマス方向に振った時のMIMO通信品質を測定する。そして、伝搬環境再現装置11は、MIMO通信品質が最も良い状態、すなわち、直交ビームが評価対象PCに対して最もMIMO通信品質が良くなるような通信状態となるように複素係数を決定する。以下、この環境を用いて、評価対象PC90の評価を行う。
【0100】
以上のように、本発明の第2の実施の形態によれば、評価対象PCのアンテナ配置が対称でない場合においても、MIMO伝送品質評価部68、複素計数決定部44によりMIMO通信品質が最良となるビーム形状を決定することができる。従って、筐体の形状、アンテナ配置、筐体の設置場所が限定されていない場合においても、適切なMIMO伝送品質評価が行えるという効果を有する。
【0101】
なお、本実施の形態においては、評価対象PC90のMIMO受信結果を用いて、MIMO伝送品質評価部68が品質最良点を探索する例を挙げたが、ストリーム1およびストリーム2の信号フォーマット、送信信号があらかじめわかっている場合においては、評価対象PC90のアンテナ受信RF信号または周波数変換された信号をMIMO伝送品質として伝送品質評価部68に入力し、復調および信号品質を検出するような系を構成してもよい。
【0102】
以上、本発明の無線評価装置について、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0103】
上記した実施の形態では、2本または3本のアンテナ62,64を有するアンテナアレイ66を1つ利用してMIMO無線評価装置70を構成する場合について示したが、アンテナ数が4本以上の場合にも、同様の構成で独立したビームを照射することができる。この場合、ビーム幅を小さくすることができるため、評価対象PC90が小さい場合や、携帯電話端末等の小型のMIMO無線端末の評価を行うことができる。なお、3本以上のアンテナを用いる場合、アンテナを同一直線上に設置してもよいし、円状に設置してもよい。また、同一直線上に設置する場合には、アンテナの間隔は、必ずしも等間隔でなくてもよい。これにより、メインローブを細く作るという効果が得られる。
【0104】
上記した実施の形態では、2本または3本のアンテナ62,64を有するアンテナアレイ66を1つ利用してMIMO無線評価装置70を構成する場合について示したが、アンテナアレイが2つ以上有る場合にも、同様の構成で、独立したビームを照射することができる。この場合、複数の方向から独立したビームを照射することができるため、評価対象PC90のアンテナの指向性に偏りがある場合等の評価に好適な評価装置を構築することができる。
【0105】
上記した実施の形態では、フェージング付加部30が、I成分とQ成分がそれぞれ正規分布するとしてフェージング付加量を計算する例について説明したが、位相成分が変動せず、振幅成分のみレイリー分布するとしてフェージング付加量を計算してもよい。この構成により、独立したレイリーフェージングを簡易な構成で発生させることができる。
【0106】
上記した実施の形態では、ビームフォーミングを行う複素係数重み付け部46,48が、位相の重み付けをする場合について説明したが、位相と振幅を同時に重み付けしてビームフォーミングする場合にも、同様の効果がある。この構成により、より低いサイドローブレベルをもつビームを形成することができる。
【0107】
上記した実施の形態では、送信アンテナのボアサイト方向に評価対象PC90を設置する場合について説明したが、必ずしもボアサイト方向に設置しなくてもよい。アンテナ62,64の間隔を1λよりも大きくして、独立した複数のビームを評価対象PC90のアンテナに照射することにより、本実施の形態と同様の効果を有する。
【0108】
上記した実施の形態において、評価対象PC90が2つのアンテナ92,94を有する場合について説明したが、アンテナが3つ以上の場合においても、上記した実施の形態と同様に、MIMO無線端末の試験に適した角度広がりを有する環境を再現できる。なお、アンテナが3本の場合、それぞれのアンテナに別のビームを向けるためには、メインビームがより細いことが必要となる。ここで、上記した実施の形態のようにアンテナの間隔を送信周波数の波長より大きくすることにより、細いビームを形成できるので、所定のアンテナにメインビームを照射することが可能である。なお、この場合、独立した3つのビームを形成し、評価対象PC90が備える3つのアンテナにそれぞれ別々のビームを向けてもよいし、少なくとも2つのアンテナに別々のビームを向けてもよい。
【0109】
上記した実施の形態において、送信信号にビーム制御のための位相の重み付けをする場合や、フェージングを付加する場合において、無線周波数帯の送信信号に処理を行うのか、ベースバンド帯の送信信号に処理を行うのか示していないが、どちらの周波数帯の送信信号に処理を行っても、上記した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成により、角度広がりのある環境における受信状態を再現することができ、ノートパソコンや携帯電話端末等の信号処理部、アンテナ、アンテナ配置等を評価する方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】伝搬環境再現装置の構成を示す図
【図2】MIMO無線評価装置およびその試験環境を示す図
【図3】アクセスポイントの内部構成およびデータ送信PCを示す図
【図4】(a)アンテナ保持台の構成を示す図(b)保持用穴にアンテナを保持した状態を示す断面図を示す図
【図5】評価対象PCの構成を示す図
【図6】電波暗室内に配置されたアンテナと評価対象PCの位置関係を示す図
【図7】無相関フェージング係数生成部と、フェージング付加部の内部構成を示す図
【図8】(a)無相関フェージング係数生成部によって生成されたPN系列を示す図(b)時刻t1におけるフェージング付加のスナップショットを示す図(c)時刻t2におけるフェージング付加のスナップショットを示す図
【図9】複素係数重み付け部の内部構成を示す図
【図10】アンテナが2本の時ビームを+3.3°方向に向けたときの指向性利得を示した図
【図11】アンテナ間隔が5λであるときのビームパターンの概念図
【図12】アンテナ3本の時ビームを+3.3°方向に向けたときの指向性利得を示した図
【図13】(a)パスの到来角が0度の場合の相関特性の計算値を示した図(b)パスの到来角が60度の場合の相関特性の計算値を示した図
【図14】MIMO無線評価装置が備える伝搬環境再現装置の構成を示す図
【図15】第1の実施の形態と異なるアンテナ配置を有する評価対象PCの例を示す図
【図16】第2の実施の形態の動作概念を示す図
【図17】従来の無線機評価装置の構成図
【符号の説明】
【0112】
10、11 伝搬環境再現装置
12 ローカル信号発生部
14 動作クロック発生部
16、18、58、60 周波数変換器
20、22 ADコンバータ
24、26 分配器
28 無相関フェージング係数生成部
30、32、34、36 フェージング付加部
38 加算割合設定部
40、42、50、52 加算器
44 複素係数決定部
46、48 複素係数重付け部
54、56 DAコンバータ
62、64、65 アンテナ
66 アレイアンテナ
68 MIMO伝送品質評価部
70 MIMO無線評価装置
72 データ送信パソコン
74 アクセスポイント
76 ベースバンド部
78 無線部
80 イーサネット(登録商標)ケーブル
90 評価対象パソコン
92、94 MIMO用アンテナ
96 電波暗室
98 電波吸収体
100 アンテナ保持台
102 保持棒
104 保持板
106 保持板補強板
108 脚部
110 台部
112、114 保持用穴
116 両端コネクタ
118、120 SMAコネクタ
122 同軸ケーブル
130、132 筐体
134 ヒンジ部
140 分配器
141〜146 可変移相器
151〜156 振幅制御器
161〜166 遅延器
170 加算器
180 分配器
182、184 移相器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを有する無線通信端末に試験用の複数の送信信号を送信する無線評価装置であって、
前記無線通信端末と共に無反射系の環境に配置され、前記無線通信端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントと、
複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記無線通信端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成する送信信号加算部と、
前記複数のアンテナエレメントと前記無線通信端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記無線通信端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記無線通信端末のアンテナに照射されないように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行う複素係数重み付け部と、
を備える無線評価装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナエレメントは、前記送信信号の中心周波数の1波長以上の間隔で配置されている請求項1に記載の無線評価装置。
【請求項3】
前記各送信信号を前記無線通信端末が有するアンテナ数と同数に分配し、分配された複数の送信信号に対してフェージングを付加するフェージング付加部を備え、
前記送信信号加算部は、フェージングが付加された送信信号を加算して、前記無線通信端末が有するアンテナ数と同数の受信アンテナ向け送信信号を生成する請求項1または2に記載の無線評価装置。
【請求項4】
前記フェージング付加部は、分配された複数の送信信号に対して無相関のフェージングを付加する請求項3に記載の無線評価装置。
【請求項5】
前記送信信号加算部によって前記送信信号を加算するときに各送信信号に与える重みを設定する加算割合設定部を備える請求項1〜4のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項6】
前記加算割合設定部は、あらかじめ設定された電波の到来方向と角度広がり値とに基づいて前記複数のアンテナビームの相関値を導出し、前記相関値に基づいて前記重みを設定する請求項5の無線評価装置。
【請求項7】
それぞれの受信アンテナ向け送信信号を前記無線通信端末の各アンテナに向けて照射するように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に与える角度を制御する複素係数を決定する複素係数決定部を備え、
前記複素係数重み付け部は、前記複素係数決定部にて決定された複素係数に基づいて、前記受信アンテナ向け送信信号の複素係数重み付けを行う請求項1〜6のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項8】
前記無線通信端末よりフィードバックされる受信品質を示す信号を用いてMIMO受信品質を評価するMIMO受信品質評価部を備え、
前記複素係数決定部は、複素係数を変えることによってアンテナビームの方向を変え、前記MIMO受信品質評価部におけるMIMO受信品質が最良となる方向にアンテナビームを向けるための複素係数を求める請求項7の無線評価装置。
【請求項9】
前記受信アンテナ向け送信信号をアナログ信号に変換する、前記アンテナエレメントと同数のDAコンバータを備え、
前記複数のDAコンバータが同一の動作クロックで動作する請求項1〜8のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項10】
一のローカル信号を発生させるローカル信号発生部と、
前記複数のアンテナエレメントに入力する複数の受信アンテナ向け送信信号を前記ローカル信号によって周波数変換する周波数変換部と、
を備える請求項1〜9のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項11】
アナログ信号からなる複数の送信信号を生成する送信信号生成部と、
一のローカル信号を発生させるローカル信号発生部と、
前記複数の送信信号を前記ローカル信号によって周波数変換する複数の周波数変換部と、
を備える請求項1〜10のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項12】
前記複数の送信信号をデジタル信号に変換する複数のADコンバータを備え、
前記複数のADコンバータが、同一の動作クロックで動作する請求項11に記載の無線評価装置。
【請求項13】
前記アンテナエレメントは、前記無線通信端末と共に電波暗室に収容される請求項1〜12のいずれかに記載の無線評価装置。
【請求項14】
複数のアンテナを有するMIMO無線端末の無線通信機能を評価するための評価装置であって、
前記MIMO無線端末と共に電波暗室に配置され、前記MIMO無線端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントと、
前記複数のアンテナエレメントを送信信号の中心周波数の1波長より長い間隔で保持するアンテナエレメント保持部と、
評価用のパケットデータを生成するパケットデータ生成装置と、
前記パケットデータを分割して複数の送信データを生成し、前記複数の送信データをMIMO変調して複数の送信信号を生成するアクセスポイントと、
前記複数の送信信号を周波数変換する周波数変換部と、
前記周波数変換部にて周波数変換された送信信号を分配する分配器と、
分配された複数の送信信号にフェージングを付加する複数のフェージング付加部と、
フェージングが付加された複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記MIMO無線端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成する送信信号加算部と、
前記複数のアンテナエレメントと前記MIMO無線端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記MIMO無線端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記MIMO無線端末のアンテナに照射されないように、前記複数の受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行う複数の複素係数重み付け部と、
前記複数の受信アンテナ向け送信信号を加算して、前記アンテナエレメント毎の送信信号を生成する加算器と、
アンテナエレメント毎の送信信号を周波数変換し、前記アンテナエレメントに入力する周波数変換部と、
を備えるMIMO無線端末評価装置。
【請求項15】
複数のアンテナを有する無線通信端末に試験用の複数の送信信号を送信する無線評価方法であって、
前記無線通信端末の複数のアンテナに対して別々のビームを照射する複数のアンテナエレメントを前記無線通信端末と共に無反射系の環境に配置するステップと、
複数の送信信号を所定の割合で加算して、前記無線通信端末の複数のアンテナのそれぞれに対応した複数の受信アンテナ向け送信信号を生成するステップと、
前記複数のアンテナエレメントと前記無線通信端末の複数のアンテナとの位置関係に基づいて、前記複数のアンテナエレメントにより形成されるアンテナビームのメインビームが前記無線通信端末のアンテナに照射されると共にアンテナビームのグレーティングローブが前記無線通信端末のアンテナに照射されないように、それぞれの受信アンテナ向け送信信号に複素係数重み付けを行うステップと、
を備える無線評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−49966(P2009−49966A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267093(P2007−267093)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】