説明

無線通信システム

【課題】複数の基地局と一つの無線端末の間でSM方式のMIMOにより下り方向の同時通信を行う場合に、パケット再送の高速化を図る。
【解決手段】基地局制御装置3は、複数の基地局A,Bに対し、無線端末1に送信するコードワード「codeword1」及び「codeword2」を予め共通に供給し(S1)、基地局Aは、無線端末1からのNackに応じてデータ再送を行う場合に、自基地局Aから送信していないコードワード「codeword2」を用いて再送データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路マルチ化(Multiple Input Multiple Output:MIMO)技術を用いた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MIMO技術が無線通信システムの周波数利用効率を向上させる技術の一つとして知られている。図7にMIMO無線通信システムの基本概念図を示す。図7において、送信局は、複数の送信アンテナからそれぞれ別々のデータ信号を同一周波数で無線送信する。受信局は、その送信された無線信号を複数の受信アンテナで受信し復元する。その復元の際に、チャネル行列Hが理想的に分かっていれば、チャネル行列Hの逆行列を受信信号に乗算することで送信信号を分離することができ、図7の例のように4本の送信アンテナから別々のデータ信号を送信した場合には最大で4倍の速度でデータ通信を行うことが可能になる。これにより、周波数利用効率の向上が図られる。
【0003】
MIMO方式としては、空間多重(Spatial Multiplexing:SM)方式と時空間符号化(Space Time Coding:STC)方式が知られている。SM方式は、複数の送信アンテナから各々異なるデータを送信することで、通信速度を向上させるものであり、周波数効率重視のMIMO方式である。STC方式は、時間方向および空間方向に符号化を行うことで、信号対雑音電力比(SNR)を低減させるものであり、通信品質重視のMIMO方式である。
【0004】
特許文献1には、複数の基地局と一つの無線端末の間でMIMOにより同時通信を行う、MIMO無線通信システムが開示されている。特許文献2には、マルチキャリア(多重搬送波)伝送方式の一つである直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)方式とMIMO方式を組み合わせた、OFDM−MIMO無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−134844号公報
【特許文献2】特表2008−523665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のMIMO無線通信システムでは、複数の基地局と一つの無線端末の間でSM方式のMIMOにより下り方向(基地局から無線端末への方向)の同時通信を行う場合に、パケット再送の高速化が課題となっている。
【0007】
一般的に、ある基地局から送信したパケットが無線端末で受信失敗した場合に、直ちに基地局から同じ無線チャネルでパケットを再送すると、無線チャネルの状態が変わっていない可能性が高いので、再び無線端末で受信失敗する確率が高いと考えられる。このため、基地局は無線端末で受信成功するまで何度もパケット再送を繰り返すことになり、パケット再送時間が長くなる。
【0008】
また、パケット毎に無線端末から基地局へ返す送達確認信号(確認応答信号(Ack)又は否定応答信号(Nack))が基地局で誤って受信されることにより、NackがAckとして誤って基地局で受信されてしまうと、基地局ではパケット再送が行われず、基地局のパケット再送よりも時間のかかる上位装置でのパケット再送が発生してしまう。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複数の基地局と一つの無線端末の間でSM方式のMIMOにより下り方向の同時通信を行う場合に、パケット再送の高速化を図ることのできる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線通信システムは、複数の基地局と一つの無線端末の間で空間多重方式のMIMOにより下り方向の同時通信を行う無線通信システムにおいて、前記複数の基地局に対し、前記無線端末に送信するデータを予め共通に供給する基地局制御装置を備え、前記基地局は、前記複数の基地局から前記無線端末へ空間多重方式のMIMOにより同時に送信するデータの最大個数に等しい数の送信バッファと、前記送信バッファ内のデータを用いてMIMO方式の送信データを生成するMIMOエンコーダと、を有し、前記送信バッファは、前記基地局制御装置から前記複数の基地局へ共通に供給されたデータをそれぞれ分担して格納し、前記MIMOエンコーダは、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じてデータ再送を行う場合に、前記送信バッファ内の自基地局から送信していないデータを用いて再送データを生成する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線通信システムにおいては、送信する基地局を変更して再送対象のデータの再送を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無線通信システムにおいては、前記MIMOエンコーダは、データ再送を行う場合に、時空間符号化方式を適用することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る無線通信システムにおいては、前記MIMOエンコーダは、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じてデータ再送を行う場合に、まず再送データを送信する送信アンテナを変更させてデータ再送を行い、それでもまだパケット送達が成功しない場合に前記送信バッファ内の自基地局から送信していないデータを用いて再送データを生成する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る無線通信システムにおいては、前記基地局制御装置は、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じて、新たなデータを前記複数の基地局に対して共通に供給することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る無線通信システムにおいては、前記基地局は、前記無線端末からの送達確認信号を前記基地局制御装置へ転送し、前記基地局制御装置は、各基地局から受け取った送達確認信号を総合してデータ再送の有無を判断する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る無線通信システムにおいては、前記基地局制御装置は、各基地局から受け取った送達確認信号の中に1つでも否定応答信号がある場合には、該否定応答信号に係るデータの再送有りと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の基地局と一つの無線端末の間でSM方式のMIMOにより下り方向の同時通信を行う場合に、パケット再送の高速化を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るOFDM−MIMO無線通信システムの構成を示す概念図である。
【図2】同実施形態のOFDM−MIMO無線通信システムにおけるパケット再送に係る構成の実施例1である。
【図3】図2に示す基地局2が有するMIMOエンコーダ12の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1に係るパケット再送手順を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の一実施形態のOFDM−MIMO無線通信システムにおけるパケット再送に係る構成の実施例3である。
【図6】図5に示す基地局2が有するMIMOエンコーダ12の構成を示すブロック図である。
【図7】MIMO無線通信システムの基本概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るOFDM−MIMO無線通信システムの構成を示す概念図である。図1に示すOFDM−MIMO無線通信システムは、複数の基地局2と一つの無線端末1の間でOFDM方式とMIMO方式を組み合わせた同時通信を行うものである。各基地局2は、基地局制御装置3に通信回線で接続されている。また、基地局制御装置3は、バックボーンネットワーク4に接続されている。
【0020】
各基地局2と基地局制御装置3間の通信データ用の通信回線には、実際の通信トラヒック量の想定値に比して、回線容量に十分に余裕のあるものを利用することが望ましい。これは、後述するが、本実施形態では、基地局制御装置3から基地局2に対して、該基地局2から無線端末1へ実際に送信するデータと共に、該基地局2からは実際には無線端末1へ送信しないかもしれないデータを予め送っておくためである。
【0021】
また、各基地局2と基地局制御装置3間の制御信号用の通信回線には、時間的な同期をとることのできるものを利用することが望ましい。これは、複数の基地局2が連携して一つの無線端末1の間でOFDM方式とMIMO方式を組み合わせた同時通信を行う場合に、該複数の基地局2と基地局制御装置3間で時間的な同期をとって無線通信に係る動作(例えば、無線フレーム生成動作、パケット再送動作など)を行うためである。
【0022】
以下、下り方向(基地局2から無線端末1への方向)の無線通信について説明する。
【0023】
無線端末1は、複数の基地局2との間で、OFDM方式とMIMO方式を組み合わせた下り方向の同時通信を行う。各基地局2は、連携したMIMOにより下り方向の同時通信を行う。基地局制御装置3は、各基地局2を制御し、基地局間の連携を実現する。具体的には、基地局制御装置3は、無線端末1の電波受信環境を表す情報(例えば、受信電力など)に応じて、空間多重(SM)方式と時空間符号化(STC)方式とを使い分け、各基地局2から送信させるデータを変更する。
【0024】
各基地局2は、1又は複数のアンテナを有し、基地局制御装置3の制御に従ってMIMO方式の送信データをOFDM方式により1又は複数のアンテナから無線送信する。
【0025】
無線端末1は、複数のアンテナを有し、各基地局2から送信された無線信号を複数のアンテナで受信し、OFDM方式の受信処理及びMIMO方式の受信処理を行う。無線端末1のアンテナは無指向性であることが望ましい。これは、複数の基地局2が連携して一つの無線端末1の間でOFDM方式とMIMO方式を組み合わせた同時通信を行う場合に、該複数の基地局2からの到来波を無指向性アンテナで効率的に受信し、又、送達確認信号(Ack又はNack)を無指向性アンテナで該複数の基地局2に対して効率的に送信するためである。
【0026】
次に、本実施形態のOFDM−MIMO無線通信システムにおけるパケット再送に係る構成について、いくつかの実施例を説明する。
【0027】
以下の各実施例では、パケット再送方式として「HARQ(Hybrid ARQ(Automatic Repeat reQuest))」を用いる。また、基地局2から無線端末1へパケットを送信するときの送信単位のデータを「コードワード(codeword)」と称する。また、無線端末1は、下り方向の同時通信を行う相手である複数の基地局2のアンテナの総数(N)と同数またはそれ以上の本数のアンテナを有する。これにより、各基地局2の各アンテナ(総数がNである)からそれぞれ異なる合計N個のコードワードがSM方式で送信されても、無線端末1は少なくともN本のアンテナで受信し、復調することができる。
【実施例1】
【0028】
図2は、本実施形態のOFDM−MIMO無線通信システムにおけるパケット再送に係る構成の実施例1である。本実施例1では、無線端末1と下り方向の同時通信を行う相手である基地局2は2つ(基地局Aと基地局Bとする)であり、各基地局A,Bは1本のアンテナを有する。無線端末1は、2本以上のアンテナを有し、各基地局A,Bの各1本のアンテナ(従ってアンテナの総数は2である)からそれぞれ異なる合計2個のコードワードがSM方式で送信されても、少なくとも2本のアンテナで受信し、復調することができる。
【0029】
図2において、基地局2は、2個のHARQ送信バッファ11とMIMOエンコーダ12とモデム(Modem)13を有する。一基地局2が有するHARQ送信バッファ11の個数は、無線端末1と下り方向の同時通信を行う複数の基地局2からSM方式で同時に送信するコードワードの最大個数に等しい。このコードワード数の最大値は、無線端末1と下り方向の同時通信を行う複数の基地局2のアンテナの総数(N)である。本実施例1では、N=2であるので、基地局2は2個のHARQ送信バッファ11を有する。
【0030】
基地局制御装置3は、基地局間の連携を実現するための制御を行う連携コントローラを備え、パケットキュー21と連携スケジューラ22を有する。基地局制御装置3において、パケットキュー21は、バックボーンネットワーク4から受信した無線端末1宛のパケットを一時的に保持する。
【0031】
連携スケジューラ22は、パケットキュー21内のパケットを基地局A,Bにより無線端末1へ送信させる送信スケジュールを作成する。このとき、連携スケジューラ22は、コードワード単位で、基地局A,Bのいずれから無線端末1へ送信させるのかをスケジューリングする。このスケジューリングの際、連携スケジューラ22は、各基地局A,Bから無線端末1へ送信されたコードワードに対する無線端末1からの送達確認信号(Ack又はNack)を参照する。連携スケジューラ22は、無線端末1からの送達確認信号を各基地局A,Bから受け取る。また、連携スケジューラ22は、各基地局A,Bに対し、MIMOエンコーディング方法を指示する。
【0032】
連携スケジューラ22は、送信スケジュールに従って基地局A,Bへコードワードを送信するが、各基地局A,Bに対して予め共通にコードワードを送信する。つまり、送信スケジュールでは、コードワード「codeword1」を基地局Aから送信し、コードワード「codeword2」を基地局Bから送信することになっていても、両方のコードワード「codeword1」及び「codeword2」を基地局A,Bの両方へ送信する。これは、送信スケジュールとは異なる基地局へは再送用として予めコードワードを送っておくものである。つまり、基地局Aに対しては、送信スケジュールでは基地局Bから送信することになっているコードワード「codeword2」を再送用として予め送っておく。同様に、基地局Bに対しては、送信スケジュールでは基地局Aから送信することになっているコードワード「codeword1」を再送用として予め送っておく。
【0033】
基地局2において、HARQ送信バッファ11は、基地局制御装置3から受信した1個のコードワードを一時的に保持する。基地局制御装置3からは、自基地局2から送信するコードワードと共に、他基地局2から送信するコードワードも送られてくるので、それら2個のコードワードを2個のHARQ送信バッファ11に1個ずつ振り分けて保持する。例えば基地局Aにおいては、送信スケジュール上の自基地局Aから送信するコードワード「codeword1」と他基地局Bから送信するコードワード「codeword2」とを受信し、第1のHARQ送信バッファ11へコードワード「codeword1」を格納し、第2のHARQ送信バッファ11へコードワード「codeword2」を格納する。
【0034】
HARQ送信バッファ11は、無線端末1へのコードワードの送信が成功するまで当該コードワードを保持する。あるコードワードに対する無線端末1からのAckが自基地局2で受信されると、当該コードワードの送信が成功したと判断される。
【0035】
MIMOエンコーダ12は、HARQ送信バッファ11内のコードワードを用いて、MIMO方式の送信データを生成する。このとき、MIMOエンコーダ12は、基地局制御装置3(連携スケジューラ22)から指示されたMIMOエンコーディング方法を用いて、MIMO方式の送信データを生成する。モデム13は、MIMO方式の送信データからOFDM方式の送信信号を生成する。OFDM方式の送信信号は、1本のアンテナから無線送信される。
【0036】
図3は、図2に示す基地局2が有するMIMOエンコーダ12の構成を示すブロック図である。図3において、MIMOエンコーダ12は、Ack/Nack受信機31とMIMOエンコーディングパタン保持/選択器32と行列乗算器33を有する。
【0037】
Ack/Nack受信機31は、無線端末1から送信された送達確認信号(Ack又はNack)を自基地局2のアンテナを介して受信する。この受信する送達確認信号は、自基地局2から送信したコードワードに対するものと他基地局2から送信したコードワードに対するものとの両方である。例えば基地局Aにおいては、自基地局Aから送信したコードワード「codeword1」に対する送達確認信号と、他基地局Bから送信したコードワード「codeword2」に対する送達確認信号とを受信する。
【0038】
Ack/Nack受信機31は、受信した送達確認信号の情報(送達確認信号情報)をMIMOエンコーディングパタン保持/選択器32へ送る。この送達確認信号情報は、送達確認信号(Ack又はNack)の種別の情報と、送達確認の対象のコードワードを特定する情報とを含む。なお、基地局2は、自基地局2のアンテナで受信した無線端末1からの送達確認信号を基地局制御装置3(連携スケジューラ22)へ送信する。
【0039】
MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32は、コードワードからMIMO方式の送信データを生成する際に使用するMIMOエンコーディングパタン行列を複数保持する。MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32は、基地局制御装置3(連携スケジューラ22)から指示されたMIMOエンコーディング方法に基づいて、保持しているMIMOエンコーディングパタン行列の中から、MIMO方式の送信データの生成に使用するMIMOエンコーディングパタン行列を選択する。また、MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32は、Ack/Nack受信機31から受け取った送達確認信号情報に基づいて、パケット再送用行列を選択する。MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32は、その選択した行列を行列乗算器33へ供給する。
【0040】
行列乗算器33は、MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32から受け取った行列と、2個のHARQ送信バッファ11にそれぞれ1個ずつ格納されている合計2個のコードワードとを乗算する。例えば基地局Aにおいて、送信スケジュール上の自基地局Aから送信するコードワード「codeword1」が第1のHARQ送信バッファ11に格納されており、送信スケジュール上の他基地局Bから送信するコードワード「codeword2」が第2のHARQ送信バッファ11に格納されている場合、第1のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword1」と第2のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword2」とを読み出し、コードワード「codeword1」及び「codeword2」をMIMOエンコーディングパタン保持/選択器32から受け取った行列と乗算する。
【0041】
(1)式は、行列乗算器33における行列演算(非再送の場合)を表す。(1)式において、x(0)(i)は時刻iにおける第1のHARQ送信バッファ11内のコードワード、x(1)(i)は時刻iにおける第2のHARQ送信バッファ11内のコードワード、y(0)(i)は時刻iに基地局Aから送信する送信データ、y(1)(i)は時刻iに基地局Bから送信する送信データ、W(i)は時刻iにけるMIMOエンコーディングパタン行列である。
【0042】
【数1】

【0043】
行列乗算器33は、その行列演算の結果のうち、自基地局2から送信するものを送信データとして出力する。この出力された送信データは、モデム13へ送られる。基地局Aでは(1)式のy(0)(i)が送信データとしてモデム13へ送られ、基地局Bでは(1)式のy(1)(i)が送信データとしてモデム13へ送られる。
【0044】
次に、本実施例1に係るHARQを用いたパケット再送方法を説明する。ここでは、送信スケジュールに従って、基地局Aからコードワード「codeword1」を送信し、基地局Bからコードワード「codeword2」を送信するものとする。
【0045】
[手順1]:「codeword1」及び「codeword2」の両方に対してAckが受信された場合。
手順1では、パケット再送は発生しない。この場合、基地局制御装置3(連携スケジューラ22)は、基地局A,Bの両方に対し、次に送信する2個のコードワードを供給する。基地局A,Bは、その新たな2個のコードワードを第1及び第2のHARQ送信バッファ11へ1個ずつ格納する。HARQ送信バッファ11へは新たなコードワードを上書きすることにより、以前のコードワードは削除される。
【0046】
[手順2]:「codeword1」又は「codeword2」のNackが受信された場合。ここでは、説明の便宜上、「codeword1」のNackが受信されたとする。
手順2では、パケット再送が発生する。この場合、送信する基地局2を変更して再送対象のコードワードを送信する。つまり、再送対象のコードワードが、前回の送信を行った基地局2とは異なる基地局2から送信されるようにする。再送対象のコードワードを前回送信した基地局2からは、新しいコードワードを送信する。図4にその再送手順が示されている。
【0047】
図4において、ステップS1では、送信スケジュールに従って、基地局Aからコードワード「codeword1」を送信(初送)し、基地局Bからコードワード「codeword2」を送信(初送)する。このとき、基地局制御装置3は、基地局A,Bの両方に対し、コードワード「codeword1」及び「codeword2」を送っておく。ステップS2では、無線端末1から、コードワード「codeword1」に係るAckとコードワード「codeword2」に係るNackとが返送される。ステップS3では、Nackに対応するコードワード「codeword2」を、前回の送信を行った基地局Bとは異なる基地局Aから送信(再送)する。そして、Nackに対応するコードワード「codeword2」を前回送信した基地局Bからは、新しいコードワード「codeword3」を送信する。このとき、基地局制御装置3は、コードワード「codeword1」に係るAckの受信によって、1個のコードワード「codeword1」のみ受信成功したことを認識し、1個の新しいコードワード「codeword3」を基地局Bから送信するようにスケジューリングするが、基地局A,Bの両方に対して新しいコードワード「codeword3」を送っておく。
【0048】
(2)式は、行列乗算器33における行列演算(再送の場合)を表す。(2)式において、x(0)(i+1)は、時刻「i+1」における第1のHARQ送信バッファ11内のコードワード(新しいコードワード)であり、時刻「i+1」において基地局制御装置3から新たに受信し格納されている。x(1)(i)は、時刻iにおける第2のHARQ送信バッファ11内のコードワード(再送対象のコードワード)であり、時刻「i+1」においてもそのまま保持されている。y(0)(i+1)は時刻「i+1」に基地局Aから送信する送信データ、y(1)(i+1)は時刻「i+1」に基地局Bから送信する送信データ、W’(i)は時刻「i+1」におけるMIMOエンコーディングパタン行列である。
【0049】
【数2】

【0050】
上記(2)式に示されるように、時刻iで基地局Bから送信されたコードワード「x(1)(i)」は、時刻「i+1」で基地局Aから再送されることになる。そして、時刻「i+1」で基地局Bからは、新しいコードワード「x(0)(i+1)」が送信されることになる。
【0051】
上述したパケット再送方法によれば、基地局制御装置3から各基地局A,Bへ予め共通にコードワードを送信して各基地局A,Bで該コードワードを保持しておくことにより、再送発生時に再送対象のコードワードを基地局制御装置3から再送対象の基地局へ送る必要がないので、パケット再送時間を短縮することができる。
【0052】
また、送信する基地局2を変更して再送対象のコードワードを送信(再送)することにより、空間ダイバーシチ効果が得られる可能性があり、この結果、無線端末1で受信成功することが期待できる。これにより、パケット再送時間の短縮に寄与することができる。
【0053】
また、各基地局A,Bからそれぞれに基地局制御装置3へ送達確認信号を送ることにより、基地局制御装置3は1個のコードワードに対する送達確認信号を2経路で受信することができる。これにより、基地局制御装置3において送達確認信号の誤り耐性を向上させることが可能である。これは、特に、あるコードワードに対して、少なくともいずれかの経路からNackを受信した場合、もう一方の経路がAckであっても、Nack受信と判定することにより、NackがAckとして誤って受信されることを防ぐことができる。これにより、基地局のパケット再送よりも時間のかかる上位装置でのパケット再送が発生することを防止し、送信遅延時間の短縮に寄与することが可能となる。
【0054】
なお、Nackが所定回数繰り返して受信されたときに、送信する基地局を変更して再送対象のコードワードを送信するようにしてもよい。
【実施例2】
【0055】
実施例2では、上述の実施例1に対し、HARQを用いたパケット再送方法において「手順2」のみが異なる。以下、実施例2に係るパケット再送方法の「手順2」を説明する。
【0056】
[手順2]:「codeword1」又は「codeword2」のNackが受信された場合。ここでは、説明の便宜上、「codeword1」のNackが受信されたとする。
手順2では、パケット再送が発生する。この場合、基地局A,Bは、通信品質を向上させるべく、ランク(Rank)を落としてMIMOエンコードを行う。具体的には、ランクが1である場合は、STBC又はSFBC等のSTC方式を使用してMIMOエンコードを行う。
【0057】
(3)式は、行列乗算器33におけるSTBCを用いた行列演算(再送の場合)を表す。(3)式において、x(0)(i)は時刻iにおける第1のHARQ送信バッファ11内のコードワード(再送対象のコードワード)であり、時刻「i+1」においてもそのまま保持されている。x(1)(i+1)は、時刻「i+1」における第2のHARQ送信バッファ11内のコードワード(新しいコードワード)であり、時刻「i+1」において基地局制御装置3から新たに受信し格納されている。y(0)(i+1)は時刻「i+1」に基地局Aから送信する送信データ、y(0)(i+2)は時刻「i+2」に基地局Aから送信する送信データ、y(1)(i+1)は時刻「i+1」に基地局Bから送信する送信データ、y(1)(i+2)は時刻「i+2」に基地局Bから送信する送信データである。*は複素共役を表す。
【0058】
【数3】

【0059】
本実施例2によれば、パケットを再送する際に、STC方式を用いることによって通信品質を向上させることができる。この結果、無線端末1で受信成功することが期待でき、パケット再送時間の短縮に寄与することができる。
【実施例3】
【0060】
図5は、本実施形態のOFDM−MIMO無線通信システムにおけるパケット再送に係る構成の実施例3である。本実施例3では、無線端末1と下り方向の同時通信を行う相手である基地局2は2つ(基地局Aと基地局Bとする)であり、各基地局A,Bは2本のアンテナを有する。無線端末1は、4本以上のアンテナを有し、各基地局A,Bの各2本のアンテナ(従ってアンテナの総数は4である)からそれぞれ異なる合計4個のコードワードがSM方式で送信されても、少なくとも4本のアンテナで受信し、復調することができる。
【0061】
図5において、基地局2は4個のHARQ送信バッファ11を有する。その他の構成は、図2に示す実施例1と同様である。但し、MIMOエンコーダ12は、HARQ送信バッファ11内のコードワードを用いて、2本のアンテナにそれぞれ対応した2つのMIMO方式の送信データを生成する。モデム13は、2つのMIMO方式の送信データから、2つのOFDM方式の送信信号を生成する。2つのOFDM方式の送信信号は、2本のアンテナからそれぞれ無線送信される。
【0062】
本実施例3では、無線端末1と下り方向の同時通信を行う2つの基地局A,Bのアンテナの総数(N)は4であり、従って、無線端末1と下り方向の同時通信を行う2つの基地局A,BからSM方式で同時に送信するコードワードの最大数は4であるので、各基地局A,Bは4個のHARQ送信バッファ11を有する。
【0063】
連携スケジューラ22は、送信スケジュールに従って基地局A,Bへコードワードを送信するが、各基地局A,Bに対して予め共通にコードワードを送信する。つまり、送信スケジュールでは、コードワード「codeword1」及び「codeword2」を基地局Aから送信し、コードワード「codeword3」及び「codeword4」を基地局Bから送信することになっていても、全てのコードワード「codeword1」、「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」を基地局A,Bの両方へ送信する。これは、送信スケジュールとは異なる基地局へは再送用として予めコードワードを送っておくものである。つまり、基地局Aに対しては、送信スケジュールでは基地局Bから送信することになっているコードワード「codeword3」及び「codeword4」を再送用として予め送っておく。同様に、基地局Bに対しては、送信スケジュールでは基地局Aから送信することになっているコードワード「codeword1」及び「codeword2」を再送用として予め送っておく。各基地局A,Bは、連携スケジューラ22から共通に送られた全てのコードワード「codeword1」、「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」を4個のHARQ送信バッファ11にそれぞれ1個ずつ振り分けて格納する。
【0064】
図6は、図5に示す基地局2が有するMIMOエンコーダ12の構成を示すブロック図である。図6に示すMIMOエンコーダ12は、図3に示す実施例1と同様である。但し、行列乗算器33は、MIMOエンコーディングパタン保持/選択器32から受け取った行列と、4個のHARQ送信バッファ11にそれぞれ1個ずつ格納されている合計4個のコードワードとを乗算する。例えば基地局Aにおいて、送信スケジュール上の自基地局Aから送信するコードワード「codeword1」及び「codeword2」が第1及び第2のHARQ送信バッファ11にそれぞれ格納されており、送信スケジュール上の他基地局Bから送信するコードワード「codeword3」及び「codeword4」が第3及び第4のHARQ送信バッファ11にそれぞれ格納されている場合、第1のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword1」と第2のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword2」と第3のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword3」と第4のHARQ送信バッファ11内のコードワード「codeword4」とを読み出し、コードワード「codeword1」、「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」をMIMOエンコーディングパタン保持/選択器32から受け取った行列と乗算する。このときの行列乗算器33における行列演算(再送の場合)は、上記実施例1の(1)式を4行に拡張したものである。
【0065】
行列乗算器33は、その行列演算の結果のうち、自基地局2から送信する2つの送信データを出力する。この出力された2つの送信データは、モデム13へ送られる。
【0066】
次に、本実施例3に係るHARQを用いたパケット再送方法を説明する。ここでは、送信スケジュールに従って、基地局Aからコードワード「codeword1」及び「codeword2」を送信し、基地局Bからコードワード「codeword3」及び「codeword4」を送信するものとする。
【0067】
[手順1]:「codeword1」、「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」の全てに対してAckが受信された場合。
手順1では、パケット再送は発生しない。この場合、基地局制御装置3(連携スケジューラ22)は、基地局A,Bの両方に対し、次に送信する4個のコードワードを供給する。基地局A,Bは、その新たな4個のコードワードを第1から第4のHARQ送信バッファ11へ1個ずつ格納する。HARQ送信バッファ11へは新たなコードワードを上書きすることにより、以前のコードワードは削除される。
【0068】
[手順2]:「codeword1」、「codeword2」、「codeword3」又は「codeword4」のいずれかのNackが受信された場合。ここでは、説明の便宜上、「codeword1」のNackが受信されたとする。
手順2では、パケット再送が発生する。この場合、送信する基地局2を基地局Aから基地局Bに変更して再送対象のコードワード「codeword1」を送信する。従って、コードワード「codeword1」の再送は、基地局Bが行う。このときの行列乗算器33における行列演算(再送の場合)は、上記実施例1の(2)式を4行に拡張したものである。
【0069】
基地局制御装置3((連携スケジューラ22)は、基地局A,Bの両方に対し、Ackが受信されたコードワードの個数分(この場合、コードワード「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」の3個分)の新しいコードワードを送信する。各基地局A,Bは、新たな3個のコードワードを、Ackが受信されたコードワードに係る3個のHARQ送信バッファ11に振り分けて格納する。
【実施例4】
【0070】
実施例4では、上述の実施例3に対し、HARQを用いたパケット再送方法において実施例3の「手順2」の前に「手順2a」を追加する。従って、本実施例4では、HARQを用いたパケット再送方法において、まず「手順2a」を実行し、それでもまだパケット送達が成功しない場合に実施例3の「手順2」を実行する。以下、実施例4に係るパケット再送方法の「手順2a」を説明する。
【0071】
[手順2a]:「codeword1」又は「codeword2」のNackが受信された場合。ここでは、説明の便宜上、「codeword1」のNackが受信されたとする。
手順2aでは、パケット再送が発生する。この場合、送信する基地局2は同じ基地局Aのままで、送信するアンテナを変更して再送対象のコードワード「codeword1」を送信する。従って、コードワード「codeword1」の再送は、基地局Aが異なるアンテナを用いて行う。このときの行列乗算器33における行列演算(再送の場合)は、上記実施例1の(2)式を4行に拡張し、再送対象のコードワードが出力される行を同じ基地局の異なる行に変更したものである。
【0072】
基地局制御装置3(連携スケジューラ22)は、基地局A,Bの両方に対し、Ackが受信されたコードワードの個数分(この場合、コードワード「codeword2」、「codeword3」及び「codeword4」の3個分)の新しいコードワードを送信する。各基地局A,Bは、新たな3個のコードワードを、Ackが受信されたコードワードに係る3個のHARQ送信バッファ11に振り分けて格納する。
【0073】
本実施例4では、パケット再送の際に、まず、送信する基地局2は同じでアンテナのみを変更する。この場合でも、空間ダイバーシチ効果が得られる可能性があり、この結果、無線端末1で受信成功することが期待できる。これにより、パケット再送時間の短縮に寄与することができる。
【実施例5】
【0074】
実施例5では、上述の実施例3に対し、HARQを用いたパケット再送方法において「手順2」のみが異なる。以下、実施例2に係るパケット再送方法の「手順2」を説明する。
【0075】
[手順2]:「codeword1」又は「codeword2」のNackが受信された場合。ここでは、説明の便宜上、「codeword1」のNackが受信されたとする。
手順2では、パケット再送が発生する。この場合、基地局A,Bは、通信品質を向上させるべく、ランク(Rank)を落としてMIMOエンコードを行う。具体的には、ランクが1である場合は、STBC又はSFBC等のSTC方式を使用してMIMOエンコードを行う。ランクの変更の仕方としては、以下に示す3通りが挙げられる。
【0076】
ランク変更方法その1:再送対象のコードワードを送信した基地局2のみのランクを落とす。本実施例5では、再送対象のコードワード「codeword1」を送信した基地局Aのみランクを落とす。
ランク変更方法その2:連携している複数の基地局2の合計ランク数を落とす。本実施例5では、連携している2つの基地局A,Bの合計ランク数を落とす。
ランク変更方法その3:再送対象のコードワードを送信した基地局2と連携している他基地局2のみのランクを落とす。本実施例5では、再送対象のコードワード「codeword1」を送信した基地局Aと連携している他基地局Bのみのランクを落とす。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施例では、連携する基地局2の数を2としたが、3つ以上の基地局2が連携する場合にも同様に適用することができる。また、アンテナの総数に応じて、コードワード数を変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…無線端末、2…基地局、3…基地局制御装置、11…HARQ送信バッファ、12…MIMOエンコーダ、13…モデム、21…パケットキュー、22…連携スケジューラ、31…Ack/Nack受信機、32…MIMOエンコーディングパタン保持/選択器、33…行列乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と一つの無線端末の間で空間多重方式のMIMOにより下り方向の同時通信を行う無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局に対し、前記無線端末に送信するデータを予め共通に供給する基地局制御装置を備え、
前記基地局は、
前記複数の基地局から前記無線端末へ空間多重方式のMIMOにより同時に送信するデータの最大個数に等しい数の送信バッファと、
前記送信バッファ内のデータを用いてMIMO方式の送信データを生成するMIMOエンコーダと、
を有し、
前記送信バッファは、前記基地局制御装置から前記複数の基地局へ共通に供給されたデータをそれぞれ分担して格納し、
前記MIMOエンコーダは、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じてデータ再送を行う場合に、前記送信バッファ内の自基地局から送信していないデータを用いて再送データを生成する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
送信する基地局を変更して再送対象のデータの再送を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記MIMOエンコーダは、データ再送を行う場合に、時空間符号化方式を適用することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記MIMOエンコーダは、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じてデータ再送を行う場合に、まず再送データを送信する送信アンテナを変更させてデータ再送を行い、それでもまだパケット送達が成功しない場合に前記送信バッファ内の自基地局から送信していないデータを用いて再送データを生成する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局制御装置は、前記複数の基地局から送信した各データに対する前記無線端末からの送達確認信号に応じて、新たなデータを前記複数の基地局に対して共通に供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記基地局は、前記無線端末からの送達確認信号を前記基地局制御装置へ転送し、
前記基地局制御装置は、各基地局から受け取った送達確認信号を総合してデータ再送の有無を判断する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記基地局制御装置は、各基地局から受け取った送達確認信号の中に1つでも否定応答信号がある場合には、該否定応答信号に係るデータの再送有りと判断することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−183256(P2010−183256A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23784(P2009−23784)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「複数基地局連携送信によるユーザスループット高速化の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】