説明

無線通信端末及び測位方法

【課題】無線端末装置が基地局のサービスエリア外に位置する場合であっても位置精度の向上を図ることが可能な無線通信端末及び測位方法を提供する。
【解決手段】本発明の無線通信端末は、まず通信の候補となる基地局を捕捉して自端末の概算位置P11を求め、捕捉に成功した捕捉成功基地局(基地局BS1)が1つの場合に、先に求めた概算位置P11を軌道情報管理装置に送信して、概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報を取得し、この軌道情報に基づいてGPS衛星を捕捉する。ここで、GPS衛星の捕捉に失敗した場合に、本発明の無線通信端末は、基地局BS1のサービスエリアR1外に少なくとも1つの新たな概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49を設定し、設定した新たな概算位置とGPS衛星の軌道情報とを用いてGPS衛星を捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能を備えた無線通信端末が実用化されている。かかる無線通信端末において、自端末の位置を測位する場合にGPS衛星の捕捉に長時間を要すると利便性が低下するため、要求に応じてGPS衛星の軌道情報を無線通信端末に提供する通信システムが実現されている。この通信システムは、基地局との間で通信を行うとともに上記のGPS機能を備えた無線通信端末と、ネットワークを介して基地局と接続され、無線通信端末からの要求に応じてGPS衛星の軌道情報を無線通信端末に提供する軌道情報管理サーバとから構成されている。
【0003】
図4は、従来の通信システムの動作を示すフローチャートである。ユーザが無線通信端末の操作部を操作して測位指示を行うと、無線通信端末はPPM(Pilot Phase Measurement:基地局捕捉測定)によって自端末の概算位置を算出する(ステップS100)。具体的には、無線通信端末は、通信の候補となる基地局のサーチを行い、捕捉に成功した基地局の位置情報から自端末のおおよその位置(概算位置)を算出する。
【0004】
ここで、捕捉に成功した基地局が1つの場合には、無線通信端末はセクタセンター方式によって概算位置を算出する。セクタセンター方式とは、基地局のアンテナの指向性から無線通信端末が存在するサービスエリアの1/3領域(セクタ)を特定し、このセクタ内の中心点を無線通信端末の位置とする方式である。図5は、従来の概算位置決定方法の原理を説明するための図である。
【0005】
図5に示す通り、サービスエリアが一部重なった基地局101及び基地局102を考える。尚、図5において、基地局101のサービスエリアを、符号101aを付した円で示しており、基地局102のサービスエリアを、符号102aを付した円で示してる。いま、無線通信端末が位置P100に配置されているとすると、基地局101の捕捉には成功するが基地局102の捕捉には失敗する。このため、無線通信端末は、基地局102との間で通信が行えず基地局101との間でのみ通信が可能であるから、基地局101の「セクタ1」の中心点P101を自端末の概算位置とする。
【0006】
次に、無線通信端末は、概算位置の算出結果及びGPS衛星の軌道情報要求を基地局(基地局101)に送信する(ステップS101)。基地局は、無線通信端末から受信した概算位置の算出結果及びGPS衛星の軌道情報要求を、ネットワークを介して軌道情報管理サーバに送信する(ステップS102)。次いで、軌道情報管理サーバは、概算位置の算出結果に応じたGPS衛星の軌道情報(Almanac及びEphemeris)を基地局に送信する(ステップS103)。ここで、Almanacとは全衛星の大まかな軌道情報であり、Ephemerisとは観測衛星自身の軌道情報である。
【0007】
基地局は、これらの軌道情報を無線通信端末に送信する(ステップS104)。無線通信端末は、上記の軌道情報に基づいて、衛星捕捉情報(AA:Acquisition Assistance)を生成し(ステップS105)、この衛星捕捉情報に基づいてGPS衛星のサーチを行う(ステップS106)。ここで、無線通信端末は、GPS衛星を1つも捕捉できずに捕捉に失敗した場合(ステップS107)には、ステップS100で算出した概算位置を自端末の位置と決定する(ステップS108)。尚、従来の概算位置決定方法の他の例については、例えば以下の特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2005−83859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、無線通信端末が基地局のサービスエリア内に位置する場合には基地局との間で通信が可能であり、サービスエリア外に位置する場合には通信が不可能になるのが一般的である。例えば、図5に示す例において、基地局101のサービスエリア101a内であるが、基地局102のサービスエリア102a外となる位置P100に無線通信端末が配置されている場合には、無線通信端末は基地局101との間では通信が可能であるが基地局102との間では通信が不可能である。
【0009】
しかしながら、無線通信端末が基地局のサービスエリア外に位置する場合であっても、基地局から発せられる電波が届けば通信が可能になる。例えば、図5に示す例において、無線通信端末がサービスエリア101a外の位置P200に配置されていても、基地局101からの電波が位置P200まで届けば無線通信端末は基地局101との間で通信が可能である。このような状況は、基地局の配置密度、地形、建物等の要因によって、最も近くに位置する基地局とは通信できず、その基地局よりも遠方に位置する基地局とだけ通信するときに生じやすい。
【0010】
かかる場合において、無線通信端末に捕捉された基地局が基地局101のみであるとすると、無線通信端末はセクタセンター方式により基地局101の「セクタ1」の中心点P101を自端末の概算位置とする。この結果として、実際の無線端末装置の位置(位置P200)と概算位置(「セクタ1」の中心点P101)とが大きくかけ離れたものとなって衛星捕捉情報の精度が劣化し、GPS衛星の捕捉に失敗しやすくなる。ここで、GPS衛星を捕捉できない場合には、概算位置(「セクタ1」の中心点P101)を自端末の位置と決定してしまうため、位置精度が大きく悪化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無線端末装置が基地局のサービスエリア外に位置する場合であっても位置精度の向上を図ることが可能な無線通信端末及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信端末は、GPS衛星の軌道情報を管理する軌道情報管理装置(PD)から基地局(BS1〜BSn)を介して提供される、自端末の概算位置(P11)に応じたGPS衛星の軌道情報に基づいて、GPS衛星を捕捉して自端末の測位を行うGPS機能付き無線通信端末(MS)において、通信の候補となる基地局を捕捉する基地局捕捉部(10a)と、前記GPS衛星の軌道情報に基づいてGPS衛星を捕捉する衛星捕捉部(10b)と、前記基地局捕捉部が捕捉に成功した捕捉成功基地局が1つであり、且つ前記衛星捕捉部がGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置(P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49)を設定し、当該概算位置と前記GPS衛星の軌道情報とを用いたGPS衛星の捕捉を前記衛星捕捉部に行わせる制御を行う制御部(10)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、基地局捕捉部により通信の候補となる基地局が捕捉されるとともに衛星捕捉部によりGPS衛星の軌道情報に基づいてGPS衛星が捕捉され、基地局捕捉部が捕捉に成功した捕捉成功基地局が1つであり、且つ衛星捕捉部がGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置が設定され、この概算位置とGPS衛星の軌道情報とを用いたGPS衛星の捕捉が制御部の制御の下で衛星捕捉部によって行われる。
また、本発明の無線通信端末は、前記制御部が、前記捕捉成功基地局のサービスエリア(R1)外に、前記新たな概算位置を設定することを特徴としている。
また、本発明の無線通信端末は、基地局のサービスエリアが複数のセクタからなり、前記制御部は、自端末が属するとされる前記捕捉成功基地局のセクタを、前記捕捉成功基地局から離れる方向に所定距離だけ拡大した領域(RE)内に、前記新たな概算位置を設定することを特徴としている。
また、本発明の無線通信端末は、前記制御部が、前記捕捉成功基地局から離れる方向及び前記サービスエリアの周方向に沿って所定間隔で離間する複数の位置を前記新たな概算位置として設定し、当該複数の概算位置を順次用いてGPS衛星の捕捉を前記衛星捕捉部に順次行わせることを特徴としている。
更に、本発明の無線通信端末は、前記制御部が、前記新たな概算位置のうち、前記捕捉成功基地局に近いものから順にGPS衛星の捕捉のために用いることを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の測位方法は、GPS衛星の軌道情報を管理する軌道情報管理装置(PD)から基地局を介して提供される、無線端末装置(MS)の概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報に基づいて、GPS衛星を捕捉して自端末の測位を行う測位方法において、通信の候補となる基地局を捕捉して自端末の概算位置を求める基地局捕捉ステップ(S10)と、前記概算位置を前記軌道情報管理装置に送信して、前記概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報を取得する軌道情報取得ステップ(S11〜S14)と、前記軌道情報取得ステップで取得した前記軌道情報に基づいてGPS衛星を捕捉する第1衛星捕捉ステップ(S15、S16)と、第1衛星捕捉ステップでGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、捕捉成功基地局のサービスエリア(R1)外に少なくとも1つの新たな概算位置を設定する概算位置設定ステップ(S20)と、前記概算位置設定ステップで設定した新たな概算位置と前記GPS衛星の軌道情報とを用いてGPS衛星を捕捉する第2衛星捕捉ステップ(S21、S22)とを含むこと特徴としている。
また、本発明の測位方法は、基地局のサービスエリアは複数のセクタからなり、前記設定ステップは、無線端末装置が属するとされる前記捕捉成功基地局のセクタを、前記捕捉成功基地局から離れる方向に所定距離だけ拡大した領域(RE)内に、前記新たな概算位置を設定するステップであることを特徴としている。
また、本発明の測位方法は、前記設定ステップが、前記捕捉成功基地局から離れる方向及び前記サービスエリアの周方向に沿って所定間隔で離間する複数の位置を前記新たな概算位置として設定するステップであり、前記第2衛星捕捉ステップは、複数の前記新たな概算位置を順次用いてGPS衛星の捕捉を行うステップであることを特徴としている。
更に、本発明の測位方法は、前記第2衛星捕捉ステップが、複数の前記新たな概算位置のうち、前記捕捉成功基地局に近いものから順にGPS衛星の捕捉のために用いるステップであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、捕捉に成功した基地局(捕捉成功基地局)が1つであり、且つ衛星捕捉部がGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置を捕捉成功基地局のサービスエリアの外部に設定し、この概算位置とGPS衛星の軌道情報とを用いてGPS衛星の捕捉を行っているため、端末MSが捕捉成功基地局のサービスエリア外に位置する場合であっても位置精度の向上を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による無線通信端末及び測位方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による無線通信端末及び測位方法が用いられる通信システムの構成概略図である。図1に示す通り、通信システム1は、無線通信端末(以下、端末という)MS、基地局BS1〜BSn、ネットワークN、及び軌道情報管理サーバ(軌道情報管理装置)PDを備える。
【0015】
端末MSは、例えばCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式により基地局BS1〜BSnと通信を行うGPS(Global Positioning System::全地球測位システム)機能付きの携帯電話である。この端末MSは、端末制御部10(制御部)、無線通信部11、操作部12、表示部13、音声入出力部14、及び記憶部15を備えている。また、端末制御部10は、基地局捕捉部10a及び衛星捕捉部10bを備えている。
【0016】
端末制御部10は、記憶部15に記憶されている端末制御プログラムや無線通信部11を介して取得した受信信号、操作部12から入力される操作信号に基づいて、本端末MSの動作を統括的に制御する。また、端末制御部10に設けられた基地局捕捉部10aは、無線通信部11を制御して、周辺の基地局から送信される報知信号等の制御信号をサーチすることにより通信の候補となる基地局を捕捉する。衛星捕捉部10bは、軌道情報管理サーバPDから送信されるGPS衛星の軌道情報(Almanac及びEphemeris)に基づいて衛星捕捉情報(AA:Acquisition Assistance)を生成し、この衛星捕捉情報に基づいて無線通信部11を制御することによりGPS衛星を捕捉する。
【0017】
また、端末制御部10は、基地局捕捉部10aが捕捉に成功した基地局(捕捉成功基地局)が1つであり、且つ衛星捕捉部10bがGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置を設定する。そして、この新たな概算位置と軌道情報管理サーバPDから取得したGPS衛星の軌道情報とを用いたGPS衛星の捕捉を衛星捕捉部10bに行わせる制御を行う。
【0018】
図2は、端末制御部10が設定する新たな概算位置の一例を示す図である。尚、ここでは、端末制御部10の基地局捕捉部10aが基地局BS1のみを捕捉しており、端末MSは、基地局BS1のサービスエリアR1の外側の位置P0に位置しているとする。図2に示す通り、基地局BS1のサービスエリアR1は、「セクタ1」、「セクタ2」、及「びセクタ3」からなる。ここで、端末MSは実際には基地局BS1のサービスエリアR1外に位置しているが基地局BS1を捕捉できているため、図2に示す位置P0に配置されている場合には、基地局BS1に対する方角から端末制御部10は自端末が「セクタ1」に存在していると認識する。
【0019】
ユーザの測位指示によって、最初にGPS衛星を捕捉する場合には、端末制御部10は衛星捕捉部10bに対して、「セクタ1」の中心点P11を自端末の概算位置とする。これに対し、「セクタ1」の中心点P11を概算位置としてGPS衛星の捕捉に失敗した場合には、端末制御部10は、基地局BS1のサービスエリアR1外に新たな概算位置を設定する。具体的には、図2に示す通り、自端末が存在する(属する)とされる「セクタ1」を基地局BS1から離れる方向に所定距離(例えば、数十キロメートル)だけ拡大した領域RE内に、新たな概算位置を設定する。
【0020】
より具体的には、基地局BS1のサービスエリアR1から離れる方向、及びサービスエリアR1の周方向に沿って所定間隔(例えば、十キロメートル程度)で離間する複数の位置を新たな概算位置として設定する。図2に示す例では、サービスエリアR1の周方向に沿って、概算位置P21〜P25、概算位置P31〜P37、及び概算位置P41〜P49が設定されている。また、これらは、基地局BS1のサービスエリアR1から離れる方向にも配列されている。
【0021】
端末制御部10は、領域RE内に設定した新たな概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49を順次用いてGPS衛星の捕捉を衛星捕捉部10bに順次行わせる。端末制御部10が衛星捕捉部10bにGPSを捕捉させる場合に、概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49をどの順序で用いるかは任意で良いが、概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49のうち、基地局BS1により近いものから順に用いるのが好ましい。これら概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49を設定してGPS衛星を捕捉することにより、装置MSが基地局BS1のサービスエリア外に位置する場合であっても位置精度の向上を図ることが可能となる。
【0022】
無線通信部11は、端末制御部10による制御の下で、端末制御部10から出力される制御信号又はデータ信号の誤り訂正符号化、変調、及びRF周波数帯への周波数変換を行った後に、送信信号として基地局BS1〜BSnの何れかに送信する。また、この無線通信部11は、基地局BS1〜BSnの何れか又はGPS衛星から受信したRF信号の、IF周波数帯への周波数変換、復調、誤り訂正復号化等を行い、受信信号として端末制御部10に出力する。
【0023】
操作部12は、電源キー、各種ファンクションキー、テンキー等の操作キーを備えており、これら操作キーによる操作入力に基づいた操作信号を端末制御部10に出力する。表示部13は、例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置を備えており、端末制御部10から入力される表示信号に基づいて所定の画像や文字を表示する。音声入出力部14は、マイク及びスピーカを備えており、マイクを介して外部から入力された音声をデジタル信号に変換して端末制御部10に出力するとともに、端末制御部10から入力される音声データをスピーカによって音声に変換して外部に出力する。記憶部15は、上記の端末制御部10で使用される端末制御プログラムや各種データを記憶するとともに、再送制御等に使用されるバッファとしての機能を有する。
【0024】
基地局BS1〜BSnは、ネットワークNに接続された携帯電話機用の基地局であり、それぞれ3つのセクタ(「セクタ1」、「セクタ2」、「セクタ3」)からなるサービスエリアを有している。そして、各セクタに存在する端末MSと通信を行い、端末MSとネットワークN(軌道情報管理サーバPD)とを接続するための中継装置としての機能を有する。ネットワークNは、携帯電話網やIP(Internet Protocol)網等から構成されたネットワークである。
【0025】
軌道情報管理サーバPDは、ネットワークNに接続され、GPS衛星の軌道情報を管理するとともに、この軌道情報を端末MSに提供するサーバである。この軌道情報管理サーバPDは、サーバ制御部20及び軌道情報データベース21を備えている。サーバ制御部20は、軌道情報管理サーバPDの動作を統括的に制御する。具体的には、端末MSから送信される概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報(Almanac及びEphemeris)を軌道情報データベース21から取得して端末MSに送信する。軌道情報データベース21は、GPS衛星の軌道情報の管理データベースであり、サーバ制御部20の要求に応じて、端末MSの概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報をサーバ制御部20に出力する。
【0026】
次に、以上説明した通信システム1を用いた測位方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態による測位方法を示すタイミングチャートである。尚、以下の説明では、端末MSが、図2の位置P0に配置されている場合について考える。ユーザが端末MSの操作部12を操作して測位指示を行うと、端末MSの端末制御部10に設けられた基地局捕捉部10aは、PPM(Pilot Phase Measurement:基地局捕捉測定)によって自端末の概算位置を算出する(ステップS10)。
【0027】
具体的には、基地局捕捉部10aは、無線通信部11を制御して、周辺の基地局から送信される報知信号等の制御信号をサーチすることにより通信の候補となる基地局を捕捉し、捕捉に成功した基地局の位置情報から自端末のおおよその位置(概算位置)を算出する。ここで、基地局BS1のみの捕捉に成功したとすると、端末MSは、基地局BS1との間でのみ通信が可能であるから、基地局BS1の「セクタ1」の中心点P11を自端末の概算位置とする。
【0028】
次に、端末MSの端末制御部10は、概算位置の算出結果及びGPS衛星の軌道情報要求を基地局BS1に送信する(ステップS11)。基地局BS1は、端末MSから受信した概算位置の算出結果及びGPS衛星の軌道情報要求を、ネットワークNを介して軌道情報管理サーバPDに送信する(ステップS12)。次いで、軌道情報管理サーバPDのサーバ制御部20は、概算位置の算出結果に応じたGPS衛星の軌道情報(Almanac及びEphemeris)を軌道情報データベース21から取得して基地局BS1に送信する(ステップS13)。
【0029】
基地局BS1は、軌道情報管理サーバPDからの軌道情報を端末MSに送信する(ステップS14)。端末MSの端末制御部10は、上記の軌道情報に基づいて、衛星捕捉情報(AA:Acquisition Assistance)を生成し(ステップS15)、この衛星捕捉情報に基づいてGPS衛星のサーチを行う(ステップS16)。ここで、GPS衛星を1つも捕捉できずに捕捉に失敗した場合(ステップS17)には、端末MSの端末制御部10は、図2に示す新たな概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49を設定し、これらを用いてGPS衛星をサーチさせる制御を行う。
【0030】
まず、端末MSの端末制御部10は、捕捉に成功した基地局(捕捉成功基地局)の数が1つか否かを判定する(ステップS18)。捕捉成功基地局の数が1つであった場合(ステップS18の判断結果が「YES」の場合)には、領域RE内に設定される新たな概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49の全てを用いたGPS衛星のサーチが終了した否かを判断する(ステップS19)。ここでは、新たな概算位置を用いたサーチが未だ行われていないため、判断結果は「NO」になる。
【0031】
次に、端末制御部10は、領域RE内に新たな概算位置を設定する(ステップS20)。例えば、図2に示す概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49のうちの基地局BS1に最も近い概算位置の1つである概算位置P21を新たな概算位置に設定する。次いで、端末制御部10は、ステップS14で取得した軌道情報と、ステップS20で設定した概算位置P21とに基づいて衛星捕捉情報を生成し(ステップS21)、この衛星捕捉情報に基づいて衛星捕捉部10bにGPS衛星をサーチさせ(ステップS22)、GPS衛星の捕捉に成功したか否かを判断する(ステップS23)。
【0032】
GPS衛星の捕捉に失敗した場合(ステップS23の判断結果が「NO」の場合)には、端末制御部10は、再度領域RE内に設定される新たな概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49の全てを用いたGPS衛星のサーチが終了した否かを判断する(ステップS19)。この判断結果が「NO」の場合には、端末制御部10は、先に用いた概算位置(図2に示す概算位置P21)とは異なる概算位置(例えば、図2に示す概算位置P22)を新たな概算位置に設定する。
【0033】
次いで、端末制御部10は、ステップS14で取得した軌道情報と、ステップS20で設定した概算位置P22とに基づいて、衛星捕捉情報を生成し(ステップS21)、この衛星捕捉情報に基づいて衛星捕捉部10bにGPS衛星をサーチさせ(ステップS22)、GPS衛星の捕捉に成功したか否かを判断する(ステップS23)。ここで、仮に、GPSの捕捉に成功したとすると、ステップS23の判断結果が「YES」になり、端末制御部10はGPS衛星を用いた測位を行う(ステップS24)。
【0034】
これに対し、領域RE内に設定される概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49の全てを用いたGPS衛星のサーチが終了してステップS19の判断結果が「YES」になった場合、又はステップS18で複数の捕捉成功基地局があると判断された場合(判断結果が「NO」の場合)には、端末制御部10は従来方式で測位を行う(ステップS25)。具体的には、例えば、ステップS10で算出した概算位置を自端末の位置と決定する。
【0035】
以上説明した通り、本発明の一実施形態による無線通信端末及び測位方法によれば、捕捉に成功した基地局(捕捉成功基地局)が1つであり、且つ「セクタ1」の中心点P11を自端末の概算位置としてGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置を捕捉成功基地局のサービスエリアの外部に設定し、この概算位置とGPS衛星の軌道情報とを用いてGPS衛星の捕捉を行っている。このため、端末MSが捕捉成功基地局のサービスエリア外に位置する場合であっても位置精度の向上を図ることができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態による無線通信端末及び測位方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、領域RE内の概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49のうちの基地局BS1により近い概算位置を他に優先して順に用いてGPS衛星を捕捉する場合を例に挙げて説明したが、概算位置P21〜P25,P31〜P37,P41〜P49を用いる順番については任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による無線通信端末及び測位方法が用いられる通信システムの構成概略図である。
【図2】端末制御部10が設定する新たな概算位置の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による測位方法を示すタイミングチャートである。
【図4】従来の通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】従来の概算位置決定方法の原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
10 端末制御部
10a 基地局捕捉部
10b 衛星捕捉部
BS1〜BS3 基地局
MS 端末
P11 概算位置
P21〜P25 概算位置
P31〜P37 概算位置
P41〜P49 概算位置
PD 軌道情報管理装置
R1 サービスエリア
RE 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星の軌道情報を管理する軌道情報管理装置から基地局を介して提供される、自端末の概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報に基づいて、GPS衛星を捕捉して自端末の測位を行うGPS機能付き無線通信端末において、
通信の候補となる基地局を捕捉する基地局捕捉部と、
前記GPS衛星の軌道情報に基づいてGPS衛星を捕捉する衛星捕捉部と、
前記基地局捕捉部が捕捉に成功した捕捉成功基地局が1つであり、且つ前記衛星捕捉部がGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、GPS衛星の捕捉に用いた先の概算位置とは異なる少なくとも1つの新たな概算位置を設定し、当該概算位置と前記GPS衛星の軌道情報とを用いたGPS衛星の捕捉を前記衛星捕捉部に行わせる制御を行う制御部と
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記捕捉成功基地局のサービスエリア外に、前記新たな概算位置を設定することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
基地局のサービスエリアは複数のセクタからなり、
前記制御部は、自端末が属するとされる前記捕捉成功基地局のセクタを、前記捕捉成功基地局から離れる方向に所定距離だけ拡大した領域内に、前記新たな概算位置を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記捕捉成功基地局から離れる方向及び前記サービスエリアの周方向に沿って所定間隔で離間する複数の位置を前記新たな概算位置として設定し、当該複数の概算位置を順次用いてGPS衛星の捕捉を前記衛星捕捉部に順次行わせることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記制御部は、前記新たな概算位置のうち、前記捕捉成功基地局に近いものから順にGPS衛星の捕捉のために用いることを特徴とする請求項4記載の無線通信端末。
【請求項6】
GPS衛星の軌道情報を管理する軌道情報管理装置から基地局を介して提供される、無線端末装置の概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報に基づいて、GPS衛星を捕捉して自端末の測位を行う測位方法において、
通信の候補となる基地局を捕捉して自端末の概算位置を求める基地局捕捉ステップと、
前記概算位置を前記軌道情報管理装置に送信して、前記概算位置に応じたGPS衛星の軌道情報を取得する軌道情報取得ステップと、
前記軌道情報取得ステップで取得した前記軌道情報に基づいてGPS衛星を捕捉する第1衛星捕捉ステップと、
第1衛星捕捉ステップでGPS衛星の捕捉に失敗した場合に、捕捉成功基地局のサービスエリア外に少なくとも1つの新たな概算位置を設定する概算位置設定ステップと、
前記概算位置設定ステップで設定した新たな概算位置と前記GPS衛星の軌道情報とを用いてGPS衛星を捕捉する第2衛星捕捉ステップと
を含むこと特徴とする測位方法。
【請求項7】
基地局のサービスエリアは複数のセクタからなり、
前記設定ステップは、無線端末装置が属するとされる前記捕捉成功基地局のセクタを、前記捕捉成功基地局から離れる方向に所定距離だけ拡大した領域内に、前記新たな概算位置を設定するステップであることを特徴とする請求項6記載の測位方法。
【請求項8】
前記設定ステップは、前記捕捉成功基地局から離れる方向及び前記サービスエリアの周方向に沿って所定間隔で離間する複数の位置を前記新たな概算位置として設定するステップであり、
前記第2衛星捕捉ステップは、複数の前記新たな概算位置を順次用いてGPS衛星の捕捉を行うステップである
ことを特徴とする請求項7記載の測位方法。
【請求項9】
前記第2衛星捕捉ステップは、複数の前記新たな概算位置のうち、前記捕捉成功基地局に近いものから順にGPS衛星の捕捉のために用いるステップであることを特徴とする請求項8記載の測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−157658(P2008−157658A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344015(P2006−344015)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】