説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】遅延時間が大きくなっても伝送レート割り当てミスによるパケット誤り及びパケット再送を防ぐ。
【解決手段】送信機と受信機との間の伝搬路応答を取得し、伝搬路応答から、送信機から受信機に送信する第1〜第nの信号に乗ずべき第1〜第nの送信用ウェイトを生成し、各信号の伝送特性を評価するメトリックの、伝搬路応答の遅延時間に対する変動特性のうち遅延時間に対するメトリックの変動が小さい変動特性をもつ信号について伝搬路応答と該信号の送信用ウェイトとから伝送レートを制御し、小さい変動特性をもつ信号と異なる他の信号については小さい変動特性をもつ信号の該変動特性と他の信号の変動特性との関係に基づいて伝送レートを制御し、伝送レート制御された第1〜第nの信号に、生成された第1〜第nの送信用ウェイトを乗じて第1〜第nのウェイト乗算信号を生成し、第1〜第nのウェイト乗算信号をそれぞれ前記送信機の複数のアンテナを用いて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて通信を行う無線通信装置および無線通信方法に係わり、特に伝送レート制御を行う無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の無線通信を高速化することができる伝送方式として、複数の送信アンテナおよび複数の受信アンテナを用いて通信を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる伝送方式が提案されている(例えば非特許文献1)。MIMO伝送方式は、複数の送信アンテナから独立なストリームを同一周波数で多重化して送信し、受信端末では混信したストリームを空間フィルタリングや最尤判定により分離する技術である。図1は、MIMO伝送方式を用いた通信の概念図である。アンテナ1002(1002a、1002b、1002c)を用いてMIMO送信を行う送信処理部1001を備えた送信端末と、送信端末から送信された信号をアンテナ2002(2002a、2002b、2002c)を用いて受信する受信処理部2001を備えた受信端末とが示されている。通常のMIMO伝送方式においては、送信端末は受信端末との間の伝搬路応答を必要としない。このため、通常のMIMO伝送方式においては、送信端末では伝搬路応答が未知であるため、各送信ストリームに適切な伝送レートを割り当てることができない。
【0003】
一方、MIMO伝送方式において、送信端末で受信端末との間の伝搬路応答が既知であれば、更なる伝送容量の増加が期待できる。これを実現する方式の1つが、送信ビームフォーミング方式と呼ばれる技術である。図2にMIMO伝送方式に送信ビームフォーミング方式を適用した場合の概念図を示す。アンテナ3001(3002a、3002b、3002c)を用いてMIMOビーム送信を行う送信処理部3001を備えた送信端末と、送信端末からビーム送信された信号をアンテナ4002(4002a、4002b、4002c)を用いて受信する受信処理部4001を備えた受信端末とが示されている。MIMO伝送方式に送信ビームフォーミング方式を適用した場合は、伝搬路応答をもとにして指向性ビームを形成して送信を行うことができ、各ストリームを混信することなく送ることができる。また、MIMO伝送方式に送信ビームフォーミング方式を適用した場合は、送信端末では伝搬路応答が既知であるため、各送信ストリームには個別に適切な伝送レートの割り当てを行うことができる(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001-237751号公報
【非特許文献1】I. E. Telatar, “Capacity of Multi-Antenna Gaussian Channels,” European Trans. on Telecommunications, vol. 10, no. 6, pp. 585‐595, Nov. 1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、送信ビームフォーミング方式において、送信端末が伝搬路応答を取得するためには、送信端末より伝搬路応答推定用の既知信号を受信端末へ送り、受信端末で推定された伝搬路応答結果を送信端末へ通知するというパケット交換が必要である。
【0005】
送信ビームフォーミング方式をデータパケットに適用する場合はデータフレームの送信前に必ず伝搬路応答を取得するためのパケット交換を行うようにすれば、データパケットは常に最適な指向性ビームと最適な伝送レートで送信することが可能である。しかしながら、送信装置が、伝搬路応答を取得するためのパケット交換を、データパケットを送信する度に行う場合、オーバーヘッドが大きくなりシステム全体のスループットが低下してしまう。
【0006】
従って、MIMO伝送方式で送信ビームフォーミング方式を適用する場合は、送信装置で伝搬路応答を取得するためパケット交換を一度行い、複数のデータパケットにまたいで同一の伝搬路応答を用いて送信ビームフォーミング伝送を行うことで、オーバーヘッドを小さくすることが考えられる。
【0007】
送信端末で一度取得した伝搬路応答を複数のデータパケットにまたいで使用する場合、伝搬路応答を取得してからの経過時間が長くなると、送信端末で既知の伝搬路応答が実際の伝搬路応答と一致しなくなってしまう。一般に無線伝搬路は時間変動するため、送信端末が伝搬路応答を取得(計算)してからの経過時間(受信端末で伝搬路応答推定してからの経過時間と定義してもよい。以下、これらをまとめて遅延時間と呼ぶことがある。)が長くなると、伝搬路の時間変動が無視できなくなり、送信端末で既知の伝搬路応答は実際の伝搬路応答と異なってしまうのである。その結果、データパケットに適用される指向性ビーム及び伝送レートが最適なものではなくなる。特に送信端末で既知の伝搬路応答をもとにして各ストリームに割り当てた伝送レートが、実際の伝搬路応答に対して最適な伝送レートよりも高次のもとなった場合、パケット誤りやそれに伴うパケット再送が頻発してしまいシステム全体のスループットが劣化してしまう。
【0008】
本発明は上記問題を鑑み、遅延時間が大きくなっても伝送レート割り当てミスによるパケット誤り及びパケット再送を防ぐことのできる無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様としての無線通信方法は、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路応答を取得する伝搬路応答取得部と、
前記伝搬路応答から、前記受信機に送信する第1〜第nの信号に乗ずべき第1〜第nの送信用ウェイトを生成する送信用ウェイト生成部と、
各前記信号の伝送特性を評価するメトリックの、前記伝搬路応答の遅延時間に対する変動特性のうち前記遅延時間に対するメトリックの変動が小さい変動特性をもつ信号について前記伝搬路応答と該信号の送信用ウェイトとから伝送レートを制御し、前記小さい変動特性をもつ信号と異なる他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号の該変動特性と前記他の信号の変動特性との関係に基づいて伝送レートを制御する伝送レート制御部と、
伝送レート制御された前記第1〜第nの信号に、前記送信用ウェイト生成部によって生成された第1〜第nの送信用ウェイトを乗じて第1〜第nのウェイト乗算信号を生成する送信用ウェイト乗算部と、
前記第1〜第nのウェイト乗算信号をそれぞれ前記複数のアンテナを用いて送信する送信部と、
を備える。
【0010】
本発明の一態様としての無線通信方法は、
複数のアンテナをもつ送信機と、複数のアンテナをもつ受信機との間で通信を行う無線通信方法であって、
前記送信機と前記受信機との間の伝搬路応答を取得し、
前記伝搬路応答から、前記送信機から前記受信機に送信する第1〜第nの信号に乗ずべき第1〜第nの送信用ウェイトを生成し、
各前記信号の伝送特性を評価するメトリックの、前記伝搬路応答の遅延時間に対する変動特性のうち前記遅延時間に対するメトリックの変動が小さい変動特性をもつ信号について前記伝搬路応答と該信号の送信用ウェイトとから伝送レートを制御し、前記小さい変動特性をもつ信号と異なる他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号の該変動特性と前記他の信号の変動特性との関係に基づいて伝送レートを制御し、
伝送レート制御された前記第1〜第nの信号に、生成された第1〜第nの送信用ウェイトを乗じて第1〜第nのウェイト乗算信号を生成し、
前記第1〜第nのウェイト乗算信号をそれぞれ前記送信機における複数のアンテナを用いて送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線通信装置で送信ビームフォーミング伝送を行う際、伝搬路応答を取得するために必要なオーバーヘッドを低減しつつ、遅延時間が大きくなっても伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係わる無線通信装置の送信装置について図3を参照して説明する。図3は本発明の実施形態にかかる無線通信装置についてのブロック図の一例であり、多重化する送信ストリーム数2本、送信アンテナ数3本の場合を例として説明する。
【0013】
本実施形態の無線通信装置の送信装置は、伝送レート制御部301、記憶部302、符号化部303、変調部304(304a, 304b)、送信ウェイト生成部305、送信用ウェイト乗算部306、逆フーリエ変換部307(307a, 307b, 307c)、ガードインターバル(GI:Guard Interval)付加部308(308a, 308b, 308c)、無線部309(309a, 309b, 309c)、送信アンテナ310(310a, 310b, 310c)から構成される。
【0014】
(伝送レート制御部)
伝送レート制御部301では、入力される信号をもとに各送信ストリームに対する伝送レートを決定するためのメトリック値を算出し、メトリック信号311として記憶部302に入力する。また伝送レート制御部301は、メトリック信号311の入力に応じて記憶部302から通知される、各送信ストリームの伝送レートを表す伝送レート選択信号312を符号化部303及び変調部304に通知する。
【0015】
(記憶部)
記憶部302では、伝送レートを決定するための参照テーブルが保存されており、伝送レート制御部301より入力されるメトリック信号311をもとにテーブル参照を行って各送信ストリームに対する伝送レートを選択し、伝送レート選択信号312として伝送レート制御部301へ通知する。
【0016】
(符号化部)
符号化部303では、上位レイヤからの情報系列を伝送レート制御部301から通知された符号化率に基づき符号化を行い符号化信号を得る。符号化信号を生成するための符号化方式は、例えばリード・ソロモン符号、畳み込み符号、ターボ符号、LDPC(Low Density Parity Check)符号などいかなる符号化方式を使用しても構わない。また、本発明における符号化方式は、これらの方式に制限するものではなく、受信端末が復号できる符号化方式であればいかなる方式を用いても構わない。符号化信号を得るための符号化部の構成例については後に図4及び図5を参照して説明する。
【0017】
(変調部)
符号化部303から出力される符号化信号は、変調部304にてサブキャリア毎に伝送レート制御部301で決定される変調方式に基づき変調が施されて変調信号となる。変調部304で使用される変調方式は、例えばBPSKやQPSKなどのPSK(Phase Shift Keying)方式でも16QAMや32QAM、64QAM、256QAMなどのQAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式でも構わない。本発明における変調方式は上記の2つの変調方式に制限されるものではなく、その他いかなる変調方式を用いても構わない。送信装置を有する送信端末の送信相手である受信端末が復調することのできる変調方式であればいかなる変調方式を用いても構わない。
【0018】
(送信用ウェイト生成部)
送信用ウェイト生成部305では、送信端末と受信端末との間、すなわち送信端末のアンテナ310と受信端のアンテナ701(図7参照)との間の伝搬路応答を取得し、取得した伝搬路応答に基づいて、各送信ストリームについて、サブキャリア毎に無線機(無線部およびアンテナ)の数だけ送信用ウェイトを生成する。送信用ウェイト生成部305は、送信端末のアンテナ310と受信端のアンテナ701との間の伝搬路応答を取得する伝搬路応答取得部を備えている。
【0019】
(送信用ウェイト乗算部)
送信用ウェイト乗算部306では、変調部304でサブキャリア毎に変調された各変調信号が入力され、この各変調信号に送信ウェイト生成部305によって生成された送信ウェイトを乗算する。送信用ウェイト乗算部306は、サブキャリア毎に変調された信号に対して、無線機(無線部およびアンテナ)の数だけ異なるウェイトをそれぞれ乗算する。送信用ウェイト乗算部306が行う乗算の詳細については後に図6を参照して説明する。
【0020】
(逆フーリエ変換部)
逆フーリエ変換部307では、送信用ウェイト乗算部306からのそれぞれの出力信号(ウェイト乗算信号)を逆離散フーリエ変換する。ここで、逆フーリエ変換部307は、逆離散フーリエ変換を行いさえすれば、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を用いてもIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)を用いても構わない。逆フーリエ変換部307からは、それぞれ逆離散フーリエ変換された信号がそれぞれ並直列変換されて時系列信号が出力される。
【0021】
(GI付加部)
GI付加部308は、それぞれ時系列信号にガードインターバル(GI)を付加する。ガードインターバルはOFDM伝送方式で一般的に用いられている手法であり、本発明の本質になんら影響を与えないため、詳細な説明は省略する。
【0022】
(無線部&アンテナ)
無線部309は、入力された信号をディジタルアナログ(D/A)変換器でアナログ信号に変換し、周波数変換器でRF信号に変換した後、電力増幅器(Power Amplifer:以下PA)を介して各送信アンテナ310に出力する。ここで、本実施形態における無線部309は一般的な無線部で特別な機能を有するものではないため、詳細については省略する。また、送信アンテナ310についても所望の周波数で信号を送信することができるアンテナであればいかなるアンテナを用いても構わない。
【0023】
(無線通信装置の特徴)
以上で説明したように、本実施形態の無線通信装置の送信装置は、各サブキャリアの変調信号毎に異なるウェイトを用いて送信する。この結果、各変調信号は異なる指向性のビームで送信される。従って、無線通信装置は、送信に用いるウェイトに応じて伝送特性を大きく異ならせることができる。最適なウェイトは送受信端末間の伝搬路応答に基づいて決定すれば、本実施形態の無線通信装置は最適なウェイトを用いて伝送を行うことが可能になる。また、本実施形態の無線通信装置の送信装置は、各サブキャリアの変調信号を生成する際の符号化率及び変調方式を、適応的に決定して送信する。従って、無線通信装置は、送信に用いる符号化率及び変調方式に応じて伝送特性を大きく異ならせることができる。最適な符号化率及び変調方式は受信端末間の伝搬路応答と後述する本発明の特徴とにより決定され、これにより本実施形態の無線通信装置は最適な伝送レートを用いて通信を行うことが可能になる。伝搬路応答を推定することについては後に図7及び図8を参照して説明する。
【0024】
(符号化部の詳細説明)
次に、符号化信号を得るための符号化部303の構成例について図4及び図5を参照して説明する。符号化部303は、図4又は図5に示す信号分配器、符号化器、インタリーバによって構成される。符号化器で用いられる符号化方式は、例えばリード・ソロモン符号、畳み込み符号、ターボ符号、LDPC符号などいかなる符号化方式を使用しても構わない。ま符号化信号は、入力される情報系列が符号化された信号であり、図4のように信号分配器401で2つに分割された後、2つの符号化器402a、402bでそれぞれ符号化されても、図5のように1つの符号化器501で符号化された後に信号分配器502で2つに分割されても構わない。2つの符号化された信号が符号化部303から出力されていれば構わない。また、バースト誤りを防ぐために、符号化後の信号に対してインタリーバ403a、403b、503a、503bでインタリーブを施し、受信端末が既知の順序で信号の順序を入れ替えてもよい。2つのインタリーバは、同じ規則で順序の入れ替えを行ってもよいし、異なる規則で順序の入れ替えを行ってもよい。受信端末が信号の入れ替え順序を既知であれば、インタリーバではいかなる順序で信号の入れ替えを行っても構わない。
【0025】
(送信用ウェイト乗算部の詳細説明)
次に、図3の送信用ウェイト乗算部306が出力する信号について図6を参照して説明する。図6は、送信用ウェイト乗算部306が計算する第k(kはある自然数)サブキャリアのみに注目した場合である。変調部304aで変調された第kサブキャリアの変調信号をs1(k)、変調部304bで変調された第kサブキャリアの変調信号をs2(k)とおく。各変調信号は3つの無線部309a〜309cで処理されるため3つの送信用ウェイトが乗算される。以上の結果、送信用ウェイト乗算部306が逆フーリエ変換部n(n=1, 2, 3)に出力する信号は次式(1)で表すことができる。なおn=1は逆フーリエ変換部307aに対応し、n=2は逆フーリエ変換部307bに対応し、n=3は逆フーリエ変換部307cに対応するとする。
【数1】

従って、第kサブキャリアにおける各逆フーリエ変換部307a〜307cへの出力信号を各要素とする送信信号ベクトルは次式(2)のように表すことができる。
【数2】

但し、W(k)はウェイト行列であり、各要素は次式(3)で表すことができる。
【数3】

ここで、[・]Tは転置することを示す。送信用ウェイト乗算部306からの出力信号xn(k)は逆フーリエ変換部307に入力される。送信用ウェイトを決定する手法については後に図9及び図10を参照して伝搬路応答を求める手法を説明した直後に説明する。
【0026】
(伝搬路応答推定の詳細説明)
次に、伝搬路応答を推定することについて、図7及び図8を参照して説明する。本実施形態の無線通信装置に伝搬路応答を通知する受信端末は、図7に示すように、受信アンテナ701(701a, 701b, 701c)、無線部702(702a, 702b, 702c)、GI除去部703(703a, 703b, 703c)、フーリエ変換部704(704a, 704b, 704c)、伝搬路応答推定部705を備えている。
【0027】
無線部702は、それぞれ受信アンテナ701を介して受信した信号をディジタル信号に変換する。各無線部702a〜702cは低雑音増幅器、周波数変換器、アナログディジタル(A/D)変換器、フィルタからなる一般的な無線機であるため詳細な説明は省略する。
【0028】
GI除去部703は、それぞれ無線部702の出力信号であるディジタル信号からガードインターバルを除去する。
【0029】
フーリエ変換部704a〜704cでは、GI除去部703a〜703cから出力された信号それぞれに対して離散フーリエ変換を施し、周波数領域の信号に変換する。ここで、フーリエ変換部704は、離散フーリエ変換を行いさえすれば、FFT(Fast Fourier Transform)を用いてもDFT(Discrete Fourier Transform)を用いても構わない。
【0030】
伝搬路応答推定部705は、フーリエ変換部704の出力信号に基づいて伝搬路応答を推定する。以下詳細に説明する。
【0031】
送信信号を受信する受信端末の受信アンテナm、無線部mで受信した信号をGI除去後にFFTで周波数領域の信号に変換した信号におけるサブキャリアkの受信信号をym(k)とおくと、各無線部702a〜702cにおける受信信号を要素とする受信ベクトルy(k)は次式(4)で表すことができる。なおm=1は受信アンテナ701a、無線部702aに対応し、m=2は、受信アンテナ701b、無線部702bに対応し、m=3は、受信アンテナ701c、無線部702cに対応する。
【数4】

ここでn(k)は各要素が受信端末に含まれるそれぞれの無線部702における雑音を表す雑音ベクトルである。また、式(4)において受信端末の無線部数が3つとした例を示しているが、本発明の受信端末における無線部数は3つに制限されるものではない。無線通信装置において多重化されて送信された信号を受信することができさえすれば受信無線部数はいくつでも構わない。
【0032】
式(4)のH(k)は第kサブキャリアにおける送受信端末間の伝搬路応答を要素とする伝搬路行列である。この伝搬路行列の次元は、(受信端末における受信無線部数)×(無線通信装置において用いる送信無線部数)である。図7及び後述の図8の例では、無線通信装置の送信無線部数が3つ、受信端末の受信無線部数が3つの場合であるので、第kサブキャリアにおける伝搬路応答行列は3×3の行列になる。
【0033】
一般に、無線通信では伝搬路応答行列H(k)が未知の場合、受信した信号を復調することができない。従って、無線通信装置は、伝搬路応答推定用に式(4)で表した送信信号x(k)として受信端末が既知の信号を送信する。この結果、伝搬路応答推定部705は、得られたy(k)とx(k)を用いて伝搬路応答H(k)を推定することができる。
【0034】
次に、本実施形態の無線通信装置に伝搬路応答を通知する受信端末における伝搬路応答推定部の図7とは別の一例として、インパルス応答を推定し、インパルス応答をフーリエ変換する方式について図8を参照して説明する。
【0035】
本実施形態の無線通信装置に推定した伝搬路応答行列をフィードバックする受信端末は、図8に示すように、受信アンテナ701(701a, 701b, 701c)、無線部702(702a, 702b, 702c)、インパルス応答推定部803(803a, 803b, 803c)、フーリエ変換部704(704a, 704b, 704c)から構成される。図7の受信端末と同様な部分は同一の符号を付してあり、これらについての説明は省略する。インパンルス応答推定部803a〜803cは、無線部702の出力信号であるディジタル信号を入力し、このディジタル信号からインパルス応答を推定する。インパンルス応答推定部803a〜803cが推定したインパルス応答に対してフーリエ変換を施すことによって伝搬路応答行列を得る。また、図8ではフーリエ変換としてFFTを用いているが、本実施形態におけるフーリエ変換はFFTに制限されるものではない。時間領域の信号を周波数領域に変換することができればいかなる方式を用いても構わない。
【0036】
なお、ここでも図7を参照して説明したように無線通信装置が送信する既知信号を用いてインパルス応答を推定する。また、インパルス応答推定部803は、既知の信号からインパルス応答を推定する方式として最小自乗法を用いる方式や平均自乗誤差最小法などがあるが、本実施形態の本質ではないため詳細な説明は省略する。また、インパルス応答推定部803での推定方式はこれらの最小自乗法や平均自乗誤差最小法に制限されるものではない。インパルス応答推定部803は、インパルス応答が推定できればいかなる推定方式を用いても構わない。
【0037】
以上の図7及び図8を参照して示したように、受信端末で得られた伝搬路応答をデータとして無線通信装置に送信することにより、無線通信装置に伝搬路応答を通知することができる。このように、受信端末が無線通信装置に向けて推定した伝搬路応答をフィードバックすることにより無線通信装置は伝搬路応答を知ることができる。
【0038】
一方、前述したように無線通信装置と受信端末は相互に送受信を繰り返すため、無線通信装置が受信端末からの送信信号を受信することもある。この場合、信号に付加された伝搬路応答推定用の既知信号を用いて図7や図8を参照して説明した手法により受信端末から無線通信装置への伝搬路応答を推定することができる。無線通信装置での伝搬路応答の推定は、たとえば図1の送信ウェイト生成部における伝搬路応答取得部において行う。通信に用いる周波数が同一周波数の場合、無線通信装置と受信端末の性能差による若干の差は生じるものの、受信端末から無線通信装置への伝搬路応答と無線通信装置から受信端末への伝搬路応答はほぼ等価である。従って、受信時に推定した伝搬路応答から送信時の伝搬路応答を推測することが可能である。
【0039】
このように無線通信装置において伝搬路応答を既知とする方法はいくつか考えられるが、本実施形態における無線通信装置は伝搬路応答を入手する手法になんら制限を与えるものではなく、いかなる手法を用いても構わない。
【0040】
(送信用ウェイト生成例)
次に、以上のようにして得られた伝搬路応答を基に送信用ウェイトを生成する手法について説明する。送信用ウェイトの決定は送信用ウェイト生成部305において行う。
【0041】
図3の無線通信装置に対応する各ウェイトベクトルw1(k)及びw2(k)は伝搬路応答行列を特異値分解(Singular Value Decomposition:以下SVDと称する)することによって最適化できることが知られており、伝搬路応答行列H(k)はSVDにより次式(5)のように表すことができる。
【数5】

但し、[・]Hは複素共役転置、diag[・]は対角行列を表している。また、u1(k) 、u2(k) 、u3(k)は要素数が受信端末の受信無線部数に等しいベクトルであり、v1(k) 、v2(k) 、v3(k)は要素数が無線通信装置の送信無線部数に等しいベクトルであり、それぞれが次式(6−1)、
(6−2)を満たす直交ベクトルである。
【数6】

但し、δijは次式(7)で表されるクロネッカのデルタである。
【数7】

【0042】
無線通信装置は以上のようにして求められたv1(k) 、v2(k) 、v3(k)を送信用ウェイトとして用いて変調部304からの出力信号に乗算される。送信信号s1(k)の送信用ウェイトとしてv1(k)(w1(k) =v1(k))、送信信号s2(k)の送信用ウェイトとしてv2(k)(w2(k) =v2(k))を適用すると式(4)の受信信号は次式(8)で表すことができる。
【数8】

式(6)より、u1(k) とu2(k) は直交するので、受信信号y(k)にu1(k)H とu2(k)Hを乗じることによって次式(9−1)、(9−2)のようにs1(k)、s2(k)をそれぞれ抽出することができる。
【数9】

その他にも受信信号から送信された信号を抽出する手法として、伝搬路応答行列の一般化逆行列を乗じるZF法や誤差の自乗平均値を最小にするウェイト行列を乗じるMMSE法、レプリカ信号を用いて最尤推定を行う方式等があげられる。本実施形態では受信手段を特定の手法に制限するものではなく、上記又は上記以外のいかなる手法を用いても構わない。
【0043】
(チャネル容量の説明)
以上のように受信信号から抽出された信号s1(k)及びs2(k)の受信端末におけるチャネル容量c1(k)及びc2(k)は以下の式(10−1)、(10−2)のように表すことができる。チャネル容量とは、単位時間当たりに達成可能な最大の伝送速度のことである。チャネル容量の算出は受信端末で行っても良いし、後述のように図3の無線通信装置の伝送レート制御部301で行ってもよい。チャネル容量は、信号の伝送特性を評価する(伝送レート制御に用いる)メトリックの一例であり、メトリックとして他のものを用いることも可能である。
【数10】

但し、n(k)を囲む記号‖・‖はベクトルの自乗ノルムを表している。信号s1(k)及びs2(k)の平均電力は多重化する信号によらず一定なので、サブキャリアkにおける多重化された信号毎のチャネル容量c1(k)及びc2(k)はサブキャリアkの伝搬路応答行列の特異値λ1(k)、λ2(k)によって決まることがわかる。一般に伝搬路応答行列の特異値はそれぞれ異なる値となるため、多重化される信号毎にチャネル容量が異なる。また、到来時間の異なる複数の多重波が到来する無線環境ではサブキャリア毎に伝搬路応答行列が異なるため、サブキャリア毎のチャネル容量も異なる。
【0044】
全てのサブキャリアで特定の変調部で変調された信号にのみ特異値の大きい送信ウェイトベクトルを割り当て、つまり、λ1(k)≧λ2(k)とし、信号s1(k)の送信ウェイトベクトルw1(k)をv1(k)とした場合、全サブキャリアにわたり図3の変調部304aで変調された信号のチャネル容量が変調部304bで変調された信号のチャネル容量より大きくなり、変調部304aで変調された信号と変調部304b変調された信号の伝送品質に格差が生じる。
【0045】
従って、このような環境で効率よく通信を行うためには、チャネル容量に応じて各信号s1(k) 、s2(k)の伝送レートを割り当てた方がよい。たとえばチャネル容量の大きい信号に高伝送レートを割り当て、チャネル容量の小さい信号に低伝送レートを割り当てる。伝送レートを高くするには符号化率を高くする、若しくは変調方式の多値数を大きくすればよい。また、伝送レートを低くするには符号化率を低くする、若しくは変調方式の多値数を小さくすればよい。
【0046】
以上より、本実施形態の無線通信装置は受信端末間の伝搬路応答が既知であれば、伝搬路応答に基づき算出されるチャネル容量に応じて各信号に最適な伝送レートを割り当てることでスループット向上効果が得られる。
【0047】
(遅延による割当ミス問題)
しかし、上記に説明した受信端末から無線通信装置に通知される伝搬路応答は、無線通信装置が送信するときの実際の伝搬路応答と必ずしも一致しない場合がある。一般に無線伝搬路は時間変動するため、無線通信装置へ伝搬路応答が通知されてからの経過時間(受信端末で伝搬路応答推定してからの経過時間と定義してもよい。以下、これらをまとめて遅延時間と呼ぶことがある)が長くなると伝搬路の時間変動が無視できなくなり、無線通信装置で既知の伝搬路応答と実際の伝搬路応答は異なってしまう。
【0048】
無線通信装置から送信用ウェイトを乗算してデータパケットを送信する前に、必ず無線通信装置より伝搬路応答推定用の既知信号を受信端末へ送り、伝搬路応答推定結果を受信端末より無線通信装置へ通知するというパケット交換を行うことにより、伝搬路の時間変動は概ね無視できるため、無線通信装置で既知の伝搬路応答をもとに生成した送信用ウェイトは実際の伝搬路に対しても最適である。しかしながら、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためパケット交換をデータパケット送信する度に毎回行えば、オーバーヘッドが大きくなりスループットが低下してしまう問題がある。
【0049】
従って現実的には、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためパケット交換を一度行い、複数のデータパケットにまたいで同一の伝搬路応答及び伝搬路応答をもとに生成される送信用ウェイトを用いて送信処理することで、オーバーヘッドを小さくすることが考えられる。このような状況の場合、伝搬路応答を推定してからの経過時間が長くなると、無線通信装置で既知の伝搬路応答より生成される送信用ウェイトは、実際の伝搬路に対して最適な指向性ビームとはならない。その結果、無線通信装置により送信ビームを用いて送信される各信号s1(k) 、s2(k)は信号間干渉を起こしてしまうことになる。この場合、受信端末での受信信号から抽出された信号s1(k)及びs2(k)のチャネル容量c1(k)及びc2(k)にも影響を及ぼす。無線通信装置で既知の伝搬路応答が実際の伝搬路と一致する場合に得られるチャネル容量と、無線通信装置で既知の伝搬路応答が実際の伝搬路と一致しない場合に得られるチャネル容量は異なるため、無線通信装置で既知の伝搬路応答が実際の伝搬路と異なっているにも関わらず、無線通信装置で既知の伝搬路応答が実際の伝搬路と一致していると判断して、無線通信装置で既知の伝搬路応答を基に求まる各信号のチャネル容量に応じて各信号の伝送レートを割り当てた場合、割り当てた伝送レートが最適ではなくなる。特に最適な伝送レートよりも高い伝送レートを割り当てた場合は、パケット誤りやそれに伴うパケット再送が頻繁に起こり、その結果スループットが低下することが考えられる。
【0050】
従って、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためパケット交換によるオーバーヘッドを小さくしつつ、伝搬路の時間変動による伝送レートの割り当てミスを回避してスループットを向上させるためには、チャネル容量(メトリック)の遅延時間に対する変動特性を考慮して伝送レートの割り当てを行わなければならない。
【0051】
(提案方法の説明)
図9は、本実施形態で説明した装置構成(無線通信装置の送信無線部数3つ、送信信号数2本、受信端末の受信無線部数3つ)において、信号s1(k)、s2(k)のチャネル容量の遅延時間に対する変動特性を表している。この変動特性のグラフは本発明者により独自に行ったシミューレーション結果に基づき得られたものである。横軸は遅延時間、縦軸はチャネル容量を表す。図9から、遅延がなく理想的な場合、つまり遅延時間が0[ms]の場合は信号s1(k)のチャネル容量c1(k)は信号s2(k)のチャネル容量c2(k)より大きな値を取るが、遅延時間が大きくなるにつれて信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は劣化し、信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)の収束値(最悪値)とほぼ同一レベルとなることがわかる。さらに、信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)は、遅延時間に依らずほぼ同一の値を取ることがわかる。すなわち信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)は、遅延時間に依らず変動が小さいことがわかる。
【0052】
そこで本発明の実施形態では、チャネル容量の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号(遅延時間に対するチャネル容量の変動が小さい信号)を基準として各信号の伝送レートを決めるように伝送レート制御部301で制御を行うことで、無線通信装置で一度取得した伝搬路応答を複数パケットにまたいで使用する場合でも伝送レート割り当てミスを回避し、スループット劣化を防ぐ。
【0053】
(第1の実施形態の伝送レート制御方法)
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。OFDMベースのシステムの場合、伝送レートの割り当て方法はサブキャリア毎に異なる伝送レートを割り当てる場合と全サブキャリアで共通の伝送レートを割り当てる場合に大別できるため、前者を本実施形態で、後者を第2の実施形態でそれぞれ分けて説明する。
【0054】
(C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301で信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求める。
【0055】
信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求めるには、送信ウェイト生成部305で受信端末より通知された伝搬路応答を特異値分解することにより求まる特異値を伝送レート制御用信号313として伝送レート制御部301に送り、伝送レート制御部301で式(10−2)を用いて算出してもよい。また、伝送レート制御用信号313で伝搬路応答や送信用ウェイトを伝送レート制御部301に送り、式(11)のようにZF規範を用いてチャネル容量を算出してもよいし、式(12)のようにMMSE規範を用いてチャネル容量を算出してもよい。
【数11】

ここで、本実施形態のチャネル容量の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量として扱えるものが算出できればいかなる方法を用いても構わない。
【0056】
(C1の決定)
[2]次に伝送レート制御部301で求まった信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を基準として信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)を決定する。チャネル容量 c1(k)を決定する方法の詳細は後述する。
【0057】
(伝送レートの決定)
[3]次に伝送レート制御部301で決定したチャネル容量c1(k)、c2(k)をメトリック信号311として記憶部302に入力する。記憶部302には、チャネル容量と伝送レートの関係を示すLook-Up Table(以下、LUTと呼ぶ)が保存されており、入力されるチャネル容量からLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートを選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知する。
【0058】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0059】
([2]と[3]の詳細説明)
ここで[3]で説明した記憶部302に入力されるメトリック信号311からLUT参照により伝送レート選択する方法について、[2]で説明した信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)から信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)を決定する方法と合わせて説明する。
【0060】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法1)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k))とする。そして、図10に示すような信号s1(信号1)と信号s2(信号2)で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0061】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法2)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k))とする。そして、図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0062】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法3)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k))とする。そして図12に示すようなLUTを参照して、チャネル容量c1(k)、c2(k)の値の総和から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0063】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値(チャネル容量)の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号(遅延時間に対するチャネル容量の変動が少ない信号)を基準として伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの時間経過に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0064】
(第2の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準として伝送レート制御を行う点も第1の実施形態と同様である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、伝送レート制御の際に、伝送レートをサブキャリア毎に割り当てるのではなく、全サブキャリアで共通の伝送レートを割り当てる点である。
【0065】
システムによってはサブキャリア毎に異なる伝送レートを割り当てられるとは限らず、全サブキャリアに共通の伝送レートを割り当てなければいけない場合もある。そのような場合、例えば全サブキャリアのチャネル容量を代表する代表値(平均値または中央値など。以下では平均値を想定する)から伝送レートを決定し、全サブキャリアに共通の伝送レートを割り当てる方法がある。以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。
【0066】
(第2の実施形態の伝送レート制御方法)
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。
【0067】
(C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301で各サブキャリアの信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求め、全サブキャリアで平均したチャネル容量
【数12】

を算出する。
【0068】
信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求めるには、送信ウェイト生成部305で受信端末より通知された伝搬路応答を特異値分解することにより求まる特異値を伝送レート制御用信号313として伝送レート制御部301に送り、伝送レート制御部301で式(10−2)を用いて算出してもよい。また、伝送レート制御用信号313で伝搬路応答や送信用ウェイトを伝送レート制御部301に送り、式(11)のようなZF規範または式(12)のようなMMSE規範を用いてチャネル容量を算出してもよい。ここで、本実施形態のチャネル容量の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量として扱えるものが算出できればいかなる方法を用いても構わない。
【0069】
(C1の決定)
[2]次に伝送レート制御部301で求まった信号s2の平均チャネル容量
【数13】

を基準として信号s1の平均チャネル容量
【数14】

を決定する。
【0070】
(伝送レートの決定)
[3]次に伝送レート制御部301で求めた平均チャネル容量
【数15】

をメトリック信号311として記憶部302に入力する。記憶部302には、チャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTが保存されており、入力されるメトリック信号からLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0071】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0072】
([2]と[3]の詳細説明)
ここで[3]で説明した記憶部302に入力されるメトリック信号311からLUT参照により伝送レート選択する方法について、[2]で説明した信号s2の平均チャネル容量
【数16】

から信号s1の平均チャネル容量
【数17】

を決定する方法と合わせて説明する。
【0073】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法4)信号s1の平均チャネル容量
【数18】

は、
【数19】

とする。そして図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数20】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0074】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、個別LUT)
(方法5)信号s1の平均チャネル容量
【数21】

は、
【数22】

とする。下位信号(信号s2)の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも上位信号(信号s1)の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が小さく、全サブキャリア同一の伝送レート割り当ての場合に上位信号の方が伝送特性が良好であることを考慮して、図13に示すような信号s1と信号s2で個別のLUTを参照して、チャネル容量
【数23】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0075】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法6)下位信号(信号s2)の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも上位信号(信号s1)の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が小さく、全サブキャリア同一の伝送レート割り当ての場合に上位信号の方が伝送特性が良好であることを考慮して、信号s1の平均チャネル容量
【数24】

は、
【数25】

とし、信号s1にはアドバンテージ量α[bit/s/Hz]を与えた上で、図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数26】

の値に対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0076】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法7)信号s1の平均チャネル容量
【数27】

は、
【数28】

とする。図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数29】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0077】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法8)信号s1の平均チャネル容量
【数30】

は、
【数31】

とする。図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数32】

の値の総和から対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0078】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法9)下位信号(信号s2)の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも上位信号(信号s1)の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が小さく、全サブキャリア同一の伝送レート割り当ての場合に上位信号の方が伝送特性が良好であることを考慮して、信号s1の平均チャネル容量
【数33】

は、
【数34】

とし、信号s1にはアドバンテージ量α[bit/s/Hz]を与えた上で、図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数35】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0079】
ここで、本実施形態のチャネル容量と伝送レートの関係を示すLook-Up Tableから伝送レートを選択する方法は、上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置において遅延時間に対して変動がほとんどない信号s2のチャャネル容量を基準とした伝送レートが選択できればいかなる方法を用いても構わない。
【0080】
(第2の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準として伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0081】
(第3の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準として伝送レート制御を行う点も第1の実施形態と同様である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、伝送レート制御の際に、空間相関を考慮して伝送レートを割り当てる点である。
【0082】
図9で示した遅延時間対チャネル容量特性は伝搬路応答の相関が小さい場合であるが、例えばアンテナ間隔が狭い場合や見通し内通信の場合は無線伝搬路の空間相関が高くなる場合がある。そのような場合、各信号のチャネル容量の遅延時間に対する変動特性は図14、図15のようになる。なお、図9、図14、図15に示した特性は同一SNR(Signal to Noise Ration)によるものである。
【0083】
図14は空間相関が約0.5レベルの場合であり、図15は空間相関が約0.9レベルの場合である。図9から見て図14、図15のように空間相関が無視できない場合、空間相関が高くなると信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)と信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)の収束値(最悪値)は図9のようにほぼ同一レベルにならず、特性差を残したまま収束することがわかる。この特性差のレベルを決めるファクターは空間相関が支配的となる。
【0084】
そこで本実施形態では、伝送レート制御の際に、空間相関値毎にチャネル容量の遅延時間に対する変動特性を考慮する。以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。OFDMベースのシステムの場合、伝送レートの割り当て方法はサブキャリア毎に異なる伝送レートを割り当てる場合と全サブキャリアで共通の伝送レートを割り当てる場合に大別できるため、前者を本実施形態で、後者を第4の実施形態でそれぞれ分けて説明する。
【0085】
(第3の実施形態の伝送レート制御方法)
(C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301で信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求める。信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求めるには、送信ウェイト生成部305で受信端末より通知された伝搬路応答を特異値分解することにより求まる特異値を伝送レート制御用信号313として伝送レート制御部301に送り、伝送レート制御部301で式(10−2)を用いて算出してもよい。また、伝送レート制御用信号313で伝搬路応答や送信用ウェイトを伝送レート制御部301に送り、式(11)のようなZF規範または式(12)のようなMMSE規範を用いてチャネル容量を算出してもよい。ここで、本実施形態のチャネル容量の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量として扱えるものが算出できればいかなる方法を用いても構わない。
【0086】
(C1の決定)
[2]次に伝送レート制御部301で求まった信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を基準として信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)を決定する。チャネル容量 c1(k)を決める際、図16に示すような空間相関と第2ストリームと第1ストリームのチャネル容量の収束値(最悪値)の格差を示したテーブルを用いる。尚、第2ストリームと第1ストリームのチャネル容量の収束値(最悪値)の格差はSNRによっても異なるため、図16のテーブルはSNR毎に格差を表す値を保持している。
【0087】
空間相関は、無線通信装置で既知の伝搬路応答より、H(k)*H(k)HまたはH(k)H*H(k)として算出してもよいし、送信用ウェイト生成部305で特異値分解の際に得られる最大特異値と最小特異値を用いて条件数(最大特異値/最小特異値)を算出し、空間相関の指標としてもよい。ここで、本実施形態の空間相関の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置において空間相関として扱えるものが算出できればいかなる方法を用いても構わない。伝送レート制御部301は、空間相関値を取得する空間相関取得部を有していてもよい。
【0088】
SNRは、送信ビームフォーミングを行う通信形態において受信端末から無線通信装置へ伝搬路応答を通知する際にSNRも一緒に通知することが一般的である。従って無線通信装置はSNRを既知とすることができる。また、受信端末から無線通信装置へ伝搬路応答を通知する際のパケットに付加された既知信号を用いて無線通信装置でSNRの推定を行ってもよい。SNRの推定方法については、本発明の本質になんら影響を与えないため、詳細な説明は省略する。伝送レート制御部301は、SNRを取得するSNR取得部を有していても良い。
【0089】
(伝送レートの決定)
[3]次に伝送レート制御部301で求めたチャネル容量c1(k)、c2(k)をメトリック信号311として記憶部302に入力する。記憶部302には、チャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTが保存されており、入力されるチャネル容量からLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0090】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0091】
([2]と[3]の詳細説明)
ここで[3]で説明した記憶部302に入力されるメトリック信号311からLUT参照により伝送レート選択する方法について、[2]で説明した信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)から信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)を決定する方法と合わせて詳細に説明する。
【0092】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法1)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)+図16テーブル参照による格差値)とする。そして図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0093】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法2)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)+図16テーブル参照による格差値)とする。そして図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0094】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法3)信号s1(k)のチャネル容量 c1(k)は、(信号s1(k)のチャネル容量 c1(k))=(信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)+図16テーブル参照による格差値)とする。そして図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の総和から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0095】
以上、本実施形態では多重化する送信ストリーム2本の場合を用いて説明したが、送信ストリームが3本の場合においても伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準として伝送レート制御は行えばよい。例えば、伝送信号s2(k)のチャネル容量を基準として、信号s1(k)のチャネル容量c1(k)は、空間相関と第2ストリームと第1ストリームのチャネル容量の収束値の格差を示したテーブルを用いて決定し、同様に、信号s3(k)のチャネル容量c3(k)は、空間相関と第2ストリームと第3ストリームのチャネル容量の収束値の格差を示したテーブルを用いて決定する。そして決定したチャネル容量をもとにチャネル容量と伝送レートの関係を表すLUTを参照して、伝送レートを信号s1(k)、s2(k)、s3(k)に割り当てればよい。
【0096】
(第3の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準とし、空間相関を考慮して伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0097】
(第4の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準として伝送レート制御を行う点も第2の実施形態と同様である。本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、伝送レート制御の際に、空間相関を考慮して伝送レートを割り当てる点である。
【0098】
(第4の実施形態の伝送レート制御方法)
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。
【0099】
(C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301で各サブキャリアの信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求め、全サブキャリアで平均したチャネル容量
【数36】

を算出する。
【0100】
信号s2(k)のチャネル容量 c2(k)を求めるには、送信ウェイト生成部305で受信端末より通知された伝搬路応答を特異値分解することにより求まる特異値を伝送レート制御用信号313として伝送レート制御部301に送り、伝送レート制御部301で式(10−2)を用いて算出してもよい。また、伝送レート制御用信号313で伝搬路応答や送信用ウェイトを伝送レート制御部301に送り、式(11)のようなZF規範または式(12)のようなMMSE規範を用いてチャネル容量を算出してもよい。ここで、本実施形態のチャネル容量の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量が算出できればいかなる方法を用いても構わない。
【0101】
(C1の決定)
[2]次に伝送レート制御部301で求まった信号s2の平均チャネル容量
【数37】

を基準として信号s1の平均チャネル容量
【数38】

を決定する。チャネル容量
【数39】

を決める際、図16に示すような空間相関(全サブキャリアの平均値)と第2ストリームと第1ストリームのチャネル容量の格差を示したテーブルを用いる。尚、第2ストリームと第1ストリームのチャネル容量の格差はSNRによっても異なるため、図16のテーブルはSNR毎に格差を表す値を保持している。
【0102】
空間相関は、無線通信装置で既知の伝搬路応答よりH(k)*H(k)HまたはH(k)H*H(k)として算出してもよいし、送信用ウェイト生成部305で特異値分解の際に得られる最大特異値と最小特異値を用いて条件数(最大特異値/最小特異値)を算出し、空間相関の指標としてもよい。ここで、本実施形態の空間相関の算出方法は上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置において空間相関として扱えるものが算出できればいかなる方法を用いても構わない。
【0103】
SNRは、送信ビームフォーミングを行う通信形態において受信端末から無線通信装置へ伝搬路応答を通知する際にSNRも一緒に通知することが一般的である。従って無線通信装置はSNRを既知とすることができる。また、受信端末から無線通信装置へ伝搬路応答を通知する際のパケットに付加された既知信号を用いて無線通信装置でSNRの推定を行ってもよい。SNRの推定方法については、本発明の本質になんら影響を与えないため、詳細な説明は省略する。
【0104】
(伝送レートの決定)
[3]次に伝送レート制御部301で求めた平均チャネル容量
【数40】

をメトリック信号311として記憶部302に入力する。記憶部302には、チャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTが保存されており、入力されるチャネル容量からLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0105】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0106】
([2]と[3]の詳細説明)
ここで[3]で説明した記憶部302に入力される平均チャネル容量からLUT参照により伝送レート選択する方法について、[2]で説明した信号s2の平均チャネル容量
【数41】

から信号s1の平均チャネル容量
【数42】

を決定する方法と合わせて詳細に説明する。
【0107】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法4)信号s1の平均チャネル容量
【数43】

は、
【数44】

とする。図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数45】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0108】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、個別LUT)
(方法5)信号s1の平均チャネル容量
【数46】

は、
【数47】

とする。上位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも下位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が大きくなることを考慮して、図13に示すような信号s1と信号s2で個別のLUTを参照して、チャネル容量
【数48】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0109】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法6)上位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも下位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が大きくなることを考慮して、信号s1の平均チャネル容量
【数49】

は、
【数50】

とし、信号s1にはアドバンテージ量αを与えた上で、図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数51】

の値に対応する伝送レートを信号s1、s2に割り当てる。
【0110】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法7)信号s1の平均チャネル容量
【数52】

は、
【数53】

とする。図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数54】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0111】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法8)信号s1の平均チャネル容量
【数55】

は、
【数56】

とする。図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数57】

の値の総和から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0112】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法9)上位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも下位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が大きくなることを考慮して、信号s1の平均チャネル容量
【数58】

は、
【数59】

とし、信号s1にはアドバンテージ量αを与えた上で、図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数60】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0113】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法10)上位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散よりも下位信号の全サブキャリアのチャネル容量の分散の方が大きくなることを考慮して、信号s1の平均チャネル容量
【数61】

は、
【数62】

とし、信号s1にはアドバンテージ量αを与えた上で、図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数63】

の値の総和から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0114】
ここで、本実施形態のチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTから伝送レートを選択する方法は、上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量をもとに伝送レートが選択できればいかなる方法を用いても構わない。
【0115】
(第4の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値の遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる信号を基準とし、空間相関を考慮して伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0116】
(第5の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と遅延時間を考慮して伝送レート選択を行う点は第1の実施形態と同様である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、伝送レート制御の際に、空間相関とSNRに基づき遅延時間が十分大きくなった場合のチャネル容量の収束値(最悪値)をテーブル参照することで伝送レート制御を行う点である。
【0117】
遅延時間対チャネル容量変動特性を決めるファクターには、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法、空間相関、SNRが挙げられる。これらのうち適用システムが決まれば、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法は固定化することができる(例えば、送信無線部数:3つ、屋内空間のドップラー周波数:約10Hz、送信ウェイト生成法:特異値分解ベース)。そのため空間相関とSNRがわかればチャネル容量を推測することが可能であり(チャネル容量を直接的に算出することが不要)、遅延時間対チャネル容量変動特性も把握できる。
【0118】
そこで本実施形態では、伝送レート制御の際に、空間相関値とSNR基づき遅延時間が十分大きくなった場合の各信号のチャネル容量の最悪値(収束値)をテーブル参照することにより伝送レート選択を行う。
【0119】
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。OFDMベースのシステムの場合、伝送レートの割り当て方法はサブキャリア毎に異なる伝送レートを割り当てる場合と全サブキャリアで共通の伝送レートを割り当てる場合に大別できるため、前者を本実施形態で、後者を第6の実施形態でそれぞれ分けて説明する。
【0120】
(第5の実施形態の伝送レート制御方法)
(C1、C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301から記憶部302へ空間相関値とSNRを入力し、記憶部302では、図17のような遅延時間が十分に大きくなった時の各信号のチャネル容量の収束値(最悪値)を示すテーブルを参照して各信号のチャネル容量を決定する。図17のテーブルは、空間相関が小さい場合、遅延時間が十分に大きくなった時の信号1のチャネル容量と信号2のチャネル容量はほぼ同一なことから図18のようにしてテーブルを持ってもよい。
【0121】
(伝送レートの決定)
[2]次に決定したチャネル容量c1(k)、c2(k)から記憶部302に保存されているチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0122】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0123】
([2]の詳細説明)
ここで[2]で説明した記憶部302に入力されるチャネル容量からLUT参照により伝送レート選択する方法について詳細に説明する。
【0124】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法1)図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0125】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法2)図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0126】
(第5の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値において遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる値をもとに伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0127】
(第6の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と遅延時間を考慮して伝送レート選択を行う点は第2の実施形態と同様である。本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、伝送レート制御の際に、空間相関とSNRに基づき遅延時間が十分大きくなった場合のチャネル容量の収束値(最悪値)をテーブル参照することで伝送レート制御を行う点である。
【0128】
遅延時間対チャネル容量変動特性を決めるファクターには、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法、空間相関、SNRが挙げられる。これらのうち適用システムが決まれば、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法は固定化することができる(例えば、送信無線部数:3つ、屋内空間のドップラー周波数:約10Hz、送信ウェイト生成法:特異値分解ベース)。そのため空間相関とSNRがわかればチャネル容量を推測することが可能であり(チャネル容量を直接的に算出することが不要)、遅延時間対チャネル容量変動特性も把握できる。
【0129】
そこで本実施形態では、伝送レート制御の際に、空間相関値とSNRから遅延時間が十分大きくなった場合の各信号のチャネル容量の最悪値(収束値)をテーブル参照して伝送レート選択を行う。
【0130】
(第6の実施形態の伝送レート制御方法)
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。
【0131】
(C1、C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301から記憶部302へ空間相関値とSNRを入力し、記憶部302では、図17のような遅延時間が十分に大きくなった時の各信号のチャネル容量の収束値(最悪値)を示すテーブルを参照して各サブキャリアの信号s1(k)、s2(k)のチャネル容量 c1(k)、c2(k)を決定し、全サブキャリアで平均したチャネル容量
【数64】

を算出する。図17のテーブルは、空間相関が小さい場合、遅延時間が十分に大きくなった時の信号1のチャネル容量と信号2のチャネル容量はほぼ同一なことから図18のようにしてテーブルを持ってもよい。
【0132】
(伝送レートの決定)
[2]次に決定した平均チャネル容量
【数65】

から記憶部302に保存されているチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0133】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0134】
([2]の詳細説明)
ここで[2]で説明した記憶部302に入力されるチャネル容量からLUT参照により伝送レート選択する方法について詳細に説明する。
【0135】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法3)図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数66】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0136】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、個別LUT)
(方法4)図13に示すような信号s1と信号s2で個別のLUTを参照して、チャネル容量
【数67】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0137】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法5)図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数68】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0138】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法6)図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数69】

の値の総和から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0139】
ここで、本実施形態のチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTから伝送レートを選択する方法は、上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量をもとに伝送レートが選択できればいかなる方法を用いても構わない。
【0140】
(第6の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送レート制御のメトリックとなる値において遅延時間に対する変動特性がほぼ一定となる値をもとに伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0141】
(第7の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と遅延時間を考慮して伝送レート選択を行う点は第1の実施形態と同様である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、伝送レート制御のメトリックの遅延時間に対する変動特性を示すテーブルを参照することで伝送レート制御を行う点である。
【0142】
遅延時間対チャネル容量変動特性を決めるファクターには、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法、空間相関、SNRが挙げられる。これらのうち適用システムが決まれば、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法は固定化することができる(例えば、送信無線部数:3つ、屋内空間のドップラー周波数:約10Hz、送信ウェイト生成法:特異値分解ベース)。そのため空間相関とSNRがわかればチャネル容量を推測することが可能であり(チャネル容量を直接的に算出することが不要)、遅延時間対チャネル容量変動特性も把握できる。
【0143】
また、一般に送信ビームフォーミング方式を用いる無線通信装置は、伝搬路推定用既知信号を送信してからの経過時間を把握するためにタイマーを備えており、そのため無線通信装置内で遅延時間を把握することができる。無線通信装置における伝送レート制御部301は、遅延時間を計算する遅延時間計算部を備えていてもよい。
【0144】
そこで本実施形態では、記憶部302が遅延時間対チャネル容量特性を示すテーブルを備え、遅延時間に相当するチャネル容量から伝送レート選択を行う。
【0145】
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。OFDMベースのシステムの場合、伝送レートの割り当て方法はサブキャリア毎に異なる伝送レートを割り当てる場合と全サブキャリアで共通の伝送レートを割り当てる場合に大別できるため、前者を本実施形態で、後者を第8の実施形態でそれぞれ分けて説明する。
【0146】
(第7の実施形態の伝送レート制御方法)
(C1、C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301から記憶部302へ空間相関値とSNRを入力し、記憶部302では、図19のような空間相関毎及びSNR毎の遅延時間とチャネル容量の関係を表すテーブルから遅延時間に応じた各信号のチャネル容量c1(k)、c2(k)を決定する。図19のテーブルは、空間相関が小さい場合、遅延時間が大きくなった時の信号1のチャネル容量と信号2のチャネル容量はほぼ同一なことから図20のようにしてテーブルを持ってもよい。
【0147】
(伝送レートの決定)
[2]次に決定したチャネル容量c1(k)、c2(k)から記憶部302に保存されているチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0148】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0149】
([2]の詳細説明)
ここで[2]で説明した記憶部302に入力されるチャネル容量からLUT参照により伝送レート選択する方法について詳細に説明する。
【0150】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法1)図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0151】
(サブキャリア毎に伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法2)図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0152】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法3)図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量 c1(k)、c2(k)の値の総和から対応する伝送レートを信号s1(k)、s2(k)に割り当てる。
【0153】
(第7の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、メトリックの遅延時間に対する特性を考慮して伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【0154】
(第8の実施形態)
本実施形態における無線通信装置の構成は図3と同一であり、伝搬路応答に基づきウェイトベクトルを決定し、サブキャリア毎に異なる指向性ビームを用いて信号を多重して送信を行う点と遅延時間を考慮して伝送レート選択を行う点は第2の実施形態と同様である。本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、伝送レート制御のメトリックの遅延時間に対する変動特性を示すテーブルを参照することで伝送レート制御を行う点である。
【0155】
遅延時間対チャネル容量変動特性を決めるファクターには、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法、空間相関、SNRが挙げられる。これらのうち適用システムが決まれば、送信無線部数、ドップラー周波数、送信ウェイト生成法は固定化することができる(例えば、送信無線部数:3つ、屋内空間のドップラー周波数:約10Hz、送信ウェイト生成法:特異値分解ベース)。そのため空間相関とSNRがわかればチャネル容量を推測することが可能であり(チャネル容量を直接的に算出することが不要)、遅延時間対チャネル容量変動特性も把握できる。
【0156】
また、一般に送信ビームフォーミング方式を用いる無線通信装置は、伝搬路推定用既知信号を送信してからの経過時間を把握するためにタイマーを備えており、そのため無線通信装置内で遅延時間を把握することができる。
【0157】
そこで本実施形態では、記憶部302が遅延時間対チャネル容量特性を示すテーブルを備え、遅延時間に相当するチャネル容量から伝送レート選択を行う。
【0158】
(第8の実施形態の伝送レート制御方法)
以下に本実施形態の具体的な伝送レート制御方法を説明する。
【0159】
(C1、C2の決定)
[1]まず最初に伝送レート制御部301から記憶部302へ空間相関値とSNRを入力し、記憶部302では、図19のような空間相関毎及びSNR毎の遅延時間とチャネル容量の関係を表すテーブルから遅延時間に応じた各信号のチャネル容量c1(k)、c2(k)を決定し、全サブキャリアで平均したチャネル容量
【数70】

を算出する。図19のテーブルは、空間相関が小さい場合、遅延時間が大きくなった時の信号1のチャネル容量と信号2のチャネル容量はほぼ同一なことから図20のようにしてテーブルを持ってもよい。
【0160】
(伝送レートの決定)
[2]次に決定したチャネル容量
【数71】

から記憶部302に保存されているチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTを参照して伝送レート選択を行い、選択された伝送レートは選択伝送レート信号312として伝送レート制御部301に通知される。
【0161】
上記に説明したチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTは、あらかじめ取得された特性(例:チャネル容量対ビット誤り率特性、チャネル容量対パケット誤り率特性など)をもとに作成しておけばよい。
【0162】
([2]の詳細説明)
ここで[2]で説明した記憶部302に入力されるチャネル容量からLUT参照により伝送レート選択する方法について詳細に説明する。
【0163】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法4)図10に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数72】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0164】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図4の符号化構成を前提、個別LUT)
(方法5)図13に示すような信号s1と信号s2で個別のLUTを参照して、チャネル容量
【数73】

の値それぞれに対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0165】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法6) 図11に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数74】

の値の相互関係から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0166】
(全サブキャリアで同一の伝送レート割当、図5の符号化構成を前提、共通LUT)
(方法7)図12に示すような信号s1と信号s2で共通のLUTを参照して、チャネル容量
【数75】

の値の総和から対応する伝送レートを信号s1、 s2に割り当てる。
【0167】
ここで、本実施形態のチャネル容量と伝送レートの関係を示すLUTから伝送レートを選択する方法は、上記の説明による方法に制限されるものではない。無線通信装置においてチャネル容量をもとに伝送レートが選択できればいかなる方法を用いても構わない。
【0168】
(第8の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、メトリックの遅延時間に対する特性を考慮して伝送レート制御を行うことにより、無線通信装置で伝搬路応答を取得するためのオーバーヘッドを低減しつつ、伝搬路応答を取得してからの経過時間に対して伝送レート割り当てミスを回避でき、システム全体のスループットが向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】MIMO伝送方式の概念図。
【図2】送信ビームフォーミング方式を適用したMIMO伝送方式の概念図。
【図3】本発明の実施形態にかかる無線通信装置のブロック図。
【図4】図3の符号化部の一例を示すブロック図。
【図5】図3の符号化部の別の一例を示すブロック図。
【図6】図3のウェイト乗算部が行う演算を示す図。
【図7】受信端末における伝搬路応答推定をするためのブロック図。
【図8】受信端末における伝搬路応答推定をするための図7とは異なるブロック図。
【図9】遅延時間に対するチャネル容量の変動特性を示す図(相関小)。
【図10】チャネル容量と伝送レートの関係を示す参照テーブルの一例を示す図。
【図11】チャネル容量と伝送レートの関係を示す参照テーブルの別の一例を示す図。
【図12】チャネル容量と伝送レートの関係を示す参照テーブルの別の一例を示す図。
【図13】チャネル容量と伝送レートの関係を示す参照テーブルの別の一例を示す図。
【図14】遅延時間に対するチャネル容量の変動特性を示す図(相関中)。
【図15】遅延時間に対するチャネル容量の変動特性を示す図(相関大)。
【図16】遅延時間が十分大きい場合の各信号のチャネル容量格差を示す参照テーブルの一例を示す図。
【図17】遅延時間が十分大きい場合の各信号のチャネル容量収束値を示す参照テーブルの一例を示す図。
【図18】遅延時間が十分大きい場合の各信号のチャネル容量収束値を示す参照テーブルの別の一例を示す図。
【図19】遅延時間に対するチャネル容量の変動特性を示す参照テーブルの一例を示す図。
【図20】遅延時間に対するチャネル容量の変動特性を示す参照テーブルの別の一例を示す図。
【符号の説明】
【0170】
301・・・伝送レート制御部
302・・・記憶部
303・・・符号化部
304a、304b・・・変調部
305・・・送信ウェイト生成部
306・・・送信用ウェイト乗算部
307a、307b、307c・・・逆フーリエ変換部
308a、308b、308c・・・GI付加部
309a、309b、309c、702a、702b、702c・・・無線部
310a、310b、310c、701a、701b、701c・・・アンテナ
311・・・メトリック信号
312・・・選択伝送レート信号
313・・・伝送レート制御用信号
401、502・・・信号分配器
402a、402b、501・・・符号化器
403a、403b、503a、503b・・・インタリーバ
703a、703b、703c・・・GI除去部
704a、704b、704c・・・フーリエ変換部
705・・・伝搬路応答推定部
803a、803b、803c・・・インパルス応答推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路応答を取得する伝搬路応答取得部と、
前記伝搬路応答から、前記受信機に送信する第1〜第nの信号に乗ずべき第1〜第nの送信用ウェイトを生成する送信用ウェイト生成部と、
各前記信号の伝送特性を評価するメトリックの、前記伝搬路応答の遅延時間に対する変動特性のうち前記遅延時間に対するメトリックの変動が小さい変動特性をもつ信号について前記伝搬路応答と該信号の送信用ウェイトとから伝送レートを制御し、前記小さい変動特性をもつ信号と異なる他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号の該変動特性と前記他の信号の変動特性との関係に基づいて伝送レートを制御する伝送レート制御部と、
伝送レート制御された前記第1〜第nの信号に、前記送信用ウェイト生成部によって生成された第1〜第nの送信用ウェイトを乗じて第1〜第nのウェイト乗算信号を生成する送信用ウェイト乗算部と、
前記第1〜第nのウェイト乗算信号をそれぞれ前記複数のアンテナを用いて送信する送信部と、
を備えた無線通信装置。
【請求項2】
前記送信用ウェイト乗算部は、前記第1〜第nの信号を、それぞれ複数のサブキャリアにマッピングし、
前記伝搬路応答取得部は、サブキャリア毎に前記伝搬路応答を取得し、
前記送信用ウェイト生成部は、前記第1〜第nの信号のそれぞれに対し、サブキャリアごとの第1〜第nの送信用ウェイトを生成し、
前記送信用ウェイト乗算部は、前記第1〜第nの信号のそれぞれに対し、サブキャリアごとの前記第1〜第nの送信用ウェイトを乗算し、
前記伝送レート制御部は、前記第1〜第nの信号の伝送レートをサブキャリアごとに制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記他の信号についてのサブキャリア毎のメトリックとして前記小さい変動特性をもつ信号と同一値を採用し、メトリックから前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記他の信号についてのサブキャリア毎のメトリックとして前記小さい変動特性をもつ信号と同一値を採用し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号間で各々対応するサブキャリアのメトリックの総和から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について前記サブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号についてサブキャリア毎のメトリックの代表値として前記小さい変動特性をもつ信号と同一値を採用し、メトリックの代表値から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択する請求項2記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号についてサブキャリア毎のメトリックの代表値として前記小さい変動特性をもつ信号の代表値にアドバンテージ量を加えた値を採用し、メトリックの代表値から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択する請求項2記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号についてサブキャリア毎のメトリックの代表値として前記小さい変動特性をもつ信号の代表値にアドバンテージ量を加えた値を採用し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の相互関係から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択する請求項2記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号についてのサブキャリア毎のメトリックの代表値として前記小さい変動特性をもつ信号と同一値を採用し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の総和から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたサブキャリア毎のメトリックと前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックを計算し、メトリックから前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたサブキャリア毎のメトリックと前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリックの相互関係から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたサブキャリア毎のメトリックと前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックを計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号間で各々対応するサブキャリアのメトリックの総和から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について前記サブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項12】
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記他の信号について、さらに前記サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを用いてサブキャリア毎のメトリックを計算することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、メトリックの代表値から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と、前記空間相関値に応じてあらかじめ決められた値と、アドバンテージ量とを加算することにより前記他の信号についてメトリックの代表値を得ることを特徴とする請求項13に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の相互関係から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と、前記空間相関値に応じてあらかじめ決められた値と、アドバンテージ量とを加算することにより前記他の信号についてメトリックの代表値を得ることを特徴とする請求項15記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号については前記伝搬路応答と前記信号の送信用ウェイトとからサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と前記空間相関値とに基づいてサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の総和から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号について全サブキャリアに共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項18】
前記伝送レート制御部は、前記小さい変動特性をもつ信号について計算されたメトリックの代表値と、前記空間相関値に応じてあらかじめ決められた値と、アドバンテージ量とを加算することにより前記他の信号についてメトリックの代表値を得ることを特徴とする請求項17記載の無線通信装置。
【請求項19】
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記他の信号について、さらにサブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを用いてサブキャリア毎のメトリックの代表値を計算することを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項記載の無線通信装置。
【請求項20】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と前記SNRとから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、メトリック収束値から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項21】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と前記SNRとから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値の相互関係から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項22】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と前記SNRとから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号から取得したサブキャリア毎のメトリック収束値の代表値を計算し、メトリック収束値の代表値から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項23】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と前記SNRとから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号から取得したサブキャリア毎のメトリック収束値の代表値を計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の相互関係から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項24】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と前記SNRとから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号から取得したサブキャリア毎のメトリック収束値の代表値を計算し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号の代表値の総和から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項25】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記遅延時間を計算する遅延時間計算部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、かつ、前記遅延時間の大きさに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と、前記SNRと、前記遅延時間計算部により計算される遅延時間とから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、メトリック収束値から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項26】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記遅延時間を計算する遅延時間計算部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、かつ、前記遅延時間の大きさに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と、前記SNRと、前記遅延時間計算部により計算される遅延時間とから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値の相互関係から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項27】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記遅延時間を計算する遅延時間計算部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、かつ、前記遅延時間の大きさに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と、前記SNRと、前記遅延時間計算部により計算される遅延時間とから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号間で各々対応するサブキャリアのメトリック収束値の総和から前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号についてサブキャリア毎に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項28】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記遅延時間を計算する遅延時間計算部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、かつ、前記遅延時間の大きさに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と、前記SNRと、前記遅延時間計算部により計算される遅延時間とから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号から取得したサブキャリア毎のメトリック収束値の代表値を計算し、メトリック収束値の代表値から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項29】
前記伝搬路応答から求まる、前記複数のアンテナと受信機との間の伝搬路の空間相関値を取得する空間相関取得部と、
サブキャリア毎またはサブキャリア全体のSNRを取得するSNR取得部と、
前記遅延時間を計算する遅延時間計算部と、
前記変動特性において前記遅延時間に対するメトリックの収束値であるメトリック収束値を、前記空間相関値と前記SNRとに応じて、かつ、前記遅延時間の大きさに応じて、前記小さい変動特性をもつ信号と前記他の信号とのペアごとに各信号について記述したテーブルを格納した記憶部と、をさらに備え、
前記伝送レート制御部は、前記空間相関値と、前記SNRと、前記遅延時間計算部により計算される遅延時間とから、前記記憶部を参照することにより、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号のメトリック収束値をサブキャリア毎に取得し、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号から取得したサブキャリア毎のメトリック収束値の代表値を計算し、前記小さい変動信号をもつ信号および前記他の信号の代表値の総和から前記小さい変動特性をもつ信号および前記他の信号に応じて決まる伝送レートを全サブキャリア共通に採択することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項30】
複数のアンテナをもつ送信機と、複数のアンテナをもつ受信機との間で通信を行う無線通信方法であって、
前記送信機と前記受信機との間の伝搬路応答を取得し、
前記伝搬路応答から、前記送信機から前記受信機に送信する第1〜第nの信号に乗ずべき第1〜第nの送信用ウェイトを生成し、
各前記信号の伝送特性を評価するメトリックの、前記伝搬路応答の遅延時間に対する変動特性のうち前記遅延時間に対するメトリックの変動が小さい変動特性をもつ信号について前記伝搬路応答と該信号の送信用ウェイトとから伝送レートを制御し、前記小さい変動特性をもつ信号と異なる他の信号については前記小さい変動特性をもつ信号の該変動特性と前記他の信号の変動特性との関係に基づいて伝送レートを制御し、
伝送レート制御された前記第1〜第nの信号に、生成された第1〜第nの送信用ウェイトを乗じて第1〜第nのウェイト乗算信号を生成し、
前記第1〜第nのウェイト乗算信号をそれぞれ前記送信機における複数のアンテナを用いて送信する、
無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−5296(P2009−5296A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166760(P2007−166760)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】