説明

無線通信記録媒体およびその製造方法

【課題】 半導体素子とアンテナとの接続を高信頼かつ低コストに行うことが可能で、かつ、無線通信時の半導体素子の放熱を効果的に行うことが可能な無線通信記録媒体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 インレット1は、絶縁性フィルム基板2と、その上に配置されたループ状のアンテナ3と、金属箔により形成された第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5と、それらの放熱ランド上に底面部を接触させて配置された底面部に複数の電極を備える半導体素子6とを有し、第1の放熱ランド4は2つの電極ランド4aおよび4bとからなり、それらは半導体素子6の底面部の電極に接合し、かつ、電極ランド4aおよび4bはアンテナ3のループの端部3aおよび3bと接続され、第2の放熱ランド5は、第1の放熱ランド4と分離され、第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5は、それぞれ膜厚方向に開けられた多数の貫通穴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子に接続されたアンテナを有し、リーダーライタから送信される電磁波により電力が供給されることによりデータ通信を行う無線通信記録媒体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、要求されるセキュリティの高度化、管理すべき情報量の増大、あるいは非接触方式の使用上の簡便さ等から、非接触ICカードや非接触ICタグを用いた電子決済システム、入退室管理システム、商品情報データ管理システムなど、様々なシステムが導入されている。
【0003】
このような非接触の無線通信記録媒体においては、搭載された半導体素子がアンテナに接続され、リーダーライタから送信される電磁波により電力の供給がなされて無線通信が行われる。半導体素子はその供給電力により駆動されるが、この場合、通常、発熱を伴うことが知られている。
【0004】
現在、多種多様なリーダーライタが普及しており、そこから発生する磁界強度も様々である。無線通信記録媒体とリーダーライタとの組み合わせにより、それらの間の通信特性が必ずしも常に良好な状態にあるとは限らない。無線通信記録媒体に搭載された半導体素子に対してリーダーライタの磁界強度が過度に強いものであれば、半導体素子の急激な温度上昇を招き、その特性や信頼性が低下したり、時には回路自体を破壊してしまう恐れが生じる。
【0005】
しかも、無線通信記録媒体として最も普及しているICカードや薄型のICタグにおいて、その構成基材や封止材は、半導体素子の発熱の影響を受けやすく、発熱が大きい場合は変形してしまうことがある。その結果、無線通信記録媒体表面の機能が低下し、例えば平滑性が損なわれることによる印刷性の劣化や、耐久性、耐環境性の低下を引き起こすという問題が生じる。
【0006】
そこで、これらの問題を回避するための従来の方法として、特許文献1および特許文献2に記載された方法が知られている。
【0007】
特許文献1の方法は、無線ICカードにおいて、絶縁性フィルム上に形成された金属箔からなるヒートシンク上に、半導体素子をその電極が形成された底面部を上にして搭載して接着し、放熱を促すものである。この場合、半導体素子の電極と絶縁性フィルム上に形成された金属箔によるアンテナコイルとは金属線を用いたワイヤボンディングにより接続される。
【0008】
また、特許文献2の方法は、半導体素子の電極が形成された底面部とは反対側の面に金属、または熱伝導性樹脂からなる放熱構造を設けるか、または、さらに半導体素子の底面部の側にも同様な放熱構造を設けて、その放熱構造によって半導体素子を挟み込むことにより、放熱を促すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000―163543号公報
【特許文献2】特開2007―226736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1による方法では、半導体素子の電極とアンテナとをワイヤボンディングにより接続する必要があるため、半導体素子の一般的な接合方法であるフリップチップ工法を用いることが困難であるという問題がある。フリップチップ工法は、半導体素子の底面部にある電極端子にAu、Al、Cu等による金属またはそれらを含む合金の突起を形成し、その突起をPET(ポリエチレンテレフタレート)等の絶縁性フィルムの基板上に設けられた金属箔等により形成されたアンテナの両端に突き刺すことにより導通させる直接的な接合方法であり、ワイヤボンディングに比べ信頼性やコスト面で優位な接続方法である。
【0011】
また、特許文献2による方法は、半導体素子の底面側、またはその反対側の面に隣接する放熱構造としてSUS材などによる金属板を、接着剤もしくは熱伝導性樹脂を介して接着する方法である。なお、接着剤で半導体素子の底面とは反対側の面に金属板を接着する方法は半導体素子を外力から保護するための補強構造として一般的に知られた手法である。しかし、この方法では放熱構造との間に接着剤を用いており、通常、その接着層の厚さが数μm程度以上あり、半導体素子から放熱構造への熱伝導が制限されるため、半導体素子の放熱が常に十分であるとはいえない。
【0012】
本発明は上記のような問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、半導体素子とアンテナとの接続を高信頼かつ低コストに行うことが可能で、かつ、無線通信時の半導体素子の放熱を効果的に行うことが可能な無線通信記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の無線通信記録媒体は、絶縁材料の薄板よりなる支持体と、前記支持体上に配置されたループ状のアンテナと、前記支持体上に金属薄板、金属箔または金属膜により形成された第1の放熱ランドおよび第2の放熱ランドと、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランド上に底面部を接触させて配置された底面部に複数の電極を備える半導体素子とを有し、前記第1の放熱ランドは互いに分離された複数の電極ランドからなり、前記電極ランドの少なくとも2つはそれぞれ前記半導体素子の底面部の電極に接合し、かつ、前記電極ランドの少なくとも2つは前記アンテナのループの端部と接続され、前記第2の放熱ランドは、前記第1の放熱ランドと非導通となるように分離され、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドは、それぞれ複数の穴または溝形状を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドと前記アンテナは前記支持体の同一面上に形成されていることが望ましい。
【0015】
また、前記支持体の前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドが形成された面の裏面側に金属薄板または金属箔または金属膜により形成された第3の放熱ランドを有し、前記第3の放熱ランドは、前記半導体素子の底面部と少なくとも一部の領域が重なるよう配置され、かつ、複数の穴または溝形状を有していてもよい。
【0016】
本発明の無線通信記録媒体の製造方法は、絶縁材料の薄板よりなる支持体上に金属薄板、金属箔または金属膜よりなる金属層を設置する工程と、前記金属層を加工することにより、ループ状のアンテナと、少なくとも2つが前記アンテナのループの端部と接続され、かつ、互いに分離された複数の電極ランドを有する第1の放熱ランドと、前記第1の放熱ランドと非導通となるように分離された第2の放熱ランドとを形成する工程と、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランド上に底面部に複数の電極を備える半導体素子を前記底面部を接触させて配置し、前記電極ランドの少なくとも2つをそれぞれ前記半導体素子の底面部の電極に接合する工程と、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドに、それぞれ複数の穴または溝を形成する工程を有することを特徴とする。
【0017】
ここで、前記支持体の前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドが形成された面の裏面側に、金属薄板、金属箔または金属膜により、複数の穴または溝形状を有する第3の放熱ランドを形成する工程を有し、前記第3の放熱ランドを、前記半導体素子の底面部と少なくとも一部の領域が重なるよう配置してもよい。
【0018】
また、本発明の無線通信記録媒体は、ICカードまたはICタグであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
蓄熱物を効率よく放熱させるには、その蓄熱物から熱容量の大きな物体(放熱対象物)に熱伝導させ、さらにその物体の表面積を増やすことが必要となる。そこで、本発明では、放熱対象となる半導体素子の底面部に重なるように金属箔等の金属層を放熱ランドとして接触させて配置することにより、放熱対象物の熱容量を大きくし、さらに表面積を拡大している。この場合、放熱ランドとして、単に一様な厚さの金属箔など用いるのでなく、その金属箔などに複数の穴または溝形状を設けることにより、表面積の拡大による放熱特性の向上と共に、放熱ランドの剛性を低下させている。
【0020】
すなわち、電力供給により発生した半導体素子の熱を放熱ランドへ伝導させ、半導体素子内の蓄熱を減少させるとともに、放熱ランドに複数の穴または溝形状を設けることにより、曲げや捻りなどの外力により発生する電極接合部への応力を低減することができ、高い信頼性を得ている。
【0021】
また、耐久性向上のため半導体素子を金属板で補強する場合、その金属も熱伝導率が高くヒートシンク的に機能するので、本発明の放熱ランドを併用することにより、さらに放熱効果は高まる。また、設計上の制約やコストの問題で上記の金属板による補強構造が取れない場合でも、本発明の放熱ランドを用いることにより、高い放熱効果が得られる。
【0022】
以上のように、本発明により、半導体素子とアンテナとの接続を高信頼かつ低コストに行うことが可能で、かつ、無線通信時の半導体素子の放熱を効果的に行うことが可能な無線通信記録媒体およびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による無線通信記録媒体の第1の実施の形態のインレットを示す模式的な平面図。
【図2】図1のインレットにおける第1および第2の放熱ランドと半導体素子の部分を示す模式的な分解斜視図。
【図3】本発明による無線通信記録媒体の第2の実施の形態のインレットを示す模式的な平面図。
【図4】図3のインレットにおける第1、第2および第3の放熱ランドと半導体素子の部分を示す模式的な分解斜視図。
【図5】本発明による無線通信記録媒体の第3の実施の形態であるシール形状タグの模式的な断面図。
【図6】本発明による無線通信記録媒体の第4の実施の形態であるICカードの模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明による無線通信記録媒体の第1の実施の形態のインレットを示す模式的な平面図であり、図2は図1のインレットにおける第1および第2の放熱ランドと半導体素子の部分を示す模式的な分解斜視図である。ICカードやICタグなどの無線通信記録媒体は、一般に、支持基板上に半導体素子とアンテナとを実装したインレットを外装基材で挟み込んで封入し、成形することにより作製される。
【0026】
図1、図2に示すように、本実施の形態の無線通信記録媒体のインレット1は、絶縁材料の薄板よりなる支持体である絶縁性フィルム基板2と、絶縁性フィルム基板2上に配置されたループ状のアンテナ3と、絶縁性フィルム基板2上に金属箔により形成された第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5と、第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5上に底面部を接触させて配置された底面部に複数の電極を備える半導体素子6とを有する。第1の放熱ランド4は、互いに分離された2つの電極ランド4aおよび4bとからなる。電極ランド4aおよび4bはそれぞれ半導体素子6の底面部の電極に接合し、かつ、アンテナ3のループの端部3aおよび3bと接続される。第2の放熱ランド5は、第1の放熱ランド4と非導通となるように分離される。第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5は、それぞれ膜厚方向に開けられた多数の貫通穴を有する。
【0027】
ここで、絶縁性フィルム基板2の材質はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などの一般的な高分子フィルムであり、絶縁性があれば特に材質は限定されない。絶縁性フィルム基板2の厚さは任意であるが好ましくは20〜100μm程度である。本実施の形態では第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5は、半導体素子6の底面部が接触する部分以外の部分に、それぞれ膜厚方向に開けられた多数の貫通穴を有するが、この穴の形状については特に限定はなく、穴は貫通していなくてもよく、形状も丸穴でなく角穴やその他の任意の形状でもよい。また、穴の代わりに任意の幅、深さ、長さ、平面形状を有する多数の溝を形成してもよい。この場合の溝は膜厚方向に貫通する溝、すなわちスリットであってもよい。その穴や溝の形成方法はレジストパターンを用いたフルエッチングやハーフエッチング、レーザ加工、開口マスクを用いた蒸着、スパッタ等があるが、所望の形状に加工できればいずれの方法でもよい。また、それらの穴や溝の形成方法によっては、絶縁性フィルム基板2の上面にも同様な形状の穴や溝が形成されても良い。
【0028】
第1の放熱ランド4は、半導体素子6の電極とアンテナ3を接続する端子としても機能する。第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5の面積は任意であるが、放熱性や通信特性の安定性を考慮すると、第1の放熱ランド4と第2の放熱ランド5の面積を加算した面積は、半導体素子6の底面部の面積に対し100%〜5000%程度が望ましい。第1放熱ランド4および第2の放熱ランド5を構成する金属箔の厚さは任意であるが、好ましくは10〜100μm程度である。その金属箔の材質としては、Al、Cu、Au、Agなどが挙げられる。
【0029】
アンテナ3、第1の放熱ランド4、第2の放熱ランド5の形成方法は、金属箔を絶縁性フィルム基板2上に貼り付けた後、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の一般的な印刷方法でレジスト印刷を施し、エッチング処理にて形成する方法が望ましいが、開口マスクを用いた蒸着やスパッタによる形成方法であっても構わない。
【0030】
また、本実施の形態の無線通信記録媒体のインレット1において、半導体素子6とアンテナ3とからなる回路で所望の共振周波数を得るために、キャパシタを設けてもよい。このキャパシタは、アンテナ3、第1の放熱ランド4、第2の放熱ランド5と同一面上に形成した金属箔と、絶縁性フィルム基板2を介して裏側に形成された金属箔により構成してもよく、またはAg、Cu、Au、Cなどの導電性フィラーを分散した導電性インキを印刷して形成した導電膜により構成してもよい。
【0031】
半導体素子6の底面部には、フリップチップ工法でアンテナ等との接続を行うためのAuによるバンプと呼ばれる突起上の電極が形成されている。図2に示すように、アンテナと接続される電極パッドには電極用バンプ7が、機械的な接続強度を得る目的の支え用パッドには支え用バンプ8が形成されている。電極用バンプ7および支え用バンプ8は電解メッキ法、無電解メッキ法、スタッドバンプ法などの方法で形成される。電極用バンプ7および支え用バンプ8が形成された半導体素子6はフリップチップ工法で第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5と接続される。半導体素子6の電極用バンプ7は第1の放熱ランド4の電極ランド4aおよび4bに接続されることにより、アンテナ3と導通する。支え用バンプ8は第2の放熱ランド5に接続される。接続にあたっては電気的接合および物理的接合をより強固とするため、エポキシ系、アクリル系などの熱硬化型ペースト、異方性導電ペースト、異方性導電フィルムなどの接着剤9を使用することにより行われる。
【0032】
図3は本発明による無線通信記録媒体の第2の実施の形態のインレットを示す模式的な平面図であり、図4は図3のインレットにおける第1、第2、および第3の放熱ランドと半導体素子の部分を示す模式的な分解斜視図である。図3、図4に示すように、本実施の形態の無線通信記録媒体のインレット10は、第1の実施の形態と同様に、絶縁性フィルム基板2と、絶縁性フィルム基板2上に配置されたループ状のアンテナ3と、絶縁性フィルム基板2上に金属箔により形成された第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5と、第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5上に底面部を接触させて配置された底面部に複数の電極を備える半導体素子6とを有する、第1の放熱ランド4は、互いに分離された2つの電極ランド4aおよび4bとからなる。電極ランド4aおよび4bは、それぞれ半導体素子6の底面部の電極に接合し、かつ、アンテナ3のループの端部3aおよび3bと接続される。第2の放熱ランド5は、第1の放熱ランド4と非導通となるように分離される。第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5は、それぞれ膜厚方向に開けられた多数の貫通穴を有する。
【0033】
但し、本実施の形態の無線通信記録媒体のインレット10は、絶縁性フィルム基板2の第1および第2の放熱ランドが形成された面の裏面側に金属箔により形成された第3の放熱ランド13を有する。第3の放熱ランド13は、半導体素子6の底面部と一部の領域が重なるよう配置され、かつ、膜厚方向に開けられた多数の貫通穴を有する。さらに、本実施の形態の無線通信記録媒体のインレット10では、半導体素子6の外力に対する耐久性を向上させるため、ステンレス材などの金属による補強板11を半導体素子6上に設置している。
【0034】
ここで、絶縁性フィルム基板2の材質としては、第1の実施の形態と同様な多種類の材質が可能であり、第1、第2および第3の放熱ランドの貫通穴の数や形状も任意に設定でき、また貫通穴の代わりに、非貫通の穴や任意の形状の溝であってもよい。第1および第2の放熱ランドの作製方法も第1の実施の形態と同様な作製方法が可能である。
【0035】
第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5の面積や金属箔の厚さに関しては第1の実施の形態と同様である。第3の放熱ランド13の面積は半導体素子6の底面部の面積に対し100%〜5000%程度が望ましい。第3の放熱ランドを構成する金属箔の厚さは任意であるが、好ましくは10〜100μm程度である。その金属箔の材質としては、Al、Cu、Au、Agなどが挙げられる。
【0036】
金属箔を用いた第3の放熱ランド13の形成方法は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の一般的な印刷方法でレジスト印刷を施し、エッチング処理にて形成する方法が望ましいが、開口マスクを用いた蒸着やスパッタによる形成方法であっても構わない。
【0037】
また、半導体素子6とアンテナ3とからなる回路で所望の共振周波数を得るために、第1の実施の形態と同様に構成したキャパシタを設けてもよい。
【0038】
半導体素子6は、第1の実施の形態と同様に、電極用バンプ7および支え用バンプ8により第1および第2の放熱ランドと接合される。
【0039】
補強板11の半導体素子6上への接着にはエポキシ系、アクリル系などの接着剤12を使用する。このような金属板による補強構造をとることで、金属も熱伝導率が高くヒートシンク的に機能するので、本発明の放熱ランドとの相乗効果により、放熱性をより高めることができる。さらに、第3の放熱ランド13が配置されていることによる強度向上も期待できる。補強板11の厚さは任意であるが好ましくは30〜300μm程度である。
【0040】
図5は本発明による無線通信記録媒体の第3の実施の形態であるシール形状タグの模式的な断面図である。本実施の形態のシール形状タグは、第1の実施の形態の無線通信記録媒体のインレット1を使用したものであり、ICタグとしての機能を有するものである。
【0041】
本実施の形態のシール形状タグは、片面側に粘着材15によるタック処理がなされている表層材14、インレット1、剥離台紙16により構成されている。表層材14としては紙、合成紙、表面を樹脂コートした紙あるいはPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET−G(非結晶コポリエステル)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PCV(ポリカーボネイト)などのフィルム状のものが使用でき、表層材14の片面側には粘着材15によるタック処理が施されている。粘着材15としてはアクリル系、ゴム系、エポキシ系などの材料が選択でき、特に限定はされない。表層材14のタック処理がなされている面と反対側の面にはあらかじめ所定の絵柄などを印刷しても構わない。印刷の方式はオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷など公知の印刷方式が使用でき、インキとしてはUV硬化型、溶剤型、エマルジョン型など使用でき、特に制限されない。熱転写型プリンタ、昇華型プリンタあるいはインクジェット型プリンタなどで二次印刷を行うために表層材14のタック処理がなされていない表面にコーティング処理を施したり、また、ホログラムを貼り付けたりすることなどにより、付加機能を持たせることも可能である。表層材14の厚さは任意であるが、プリンタで二次印刷するなどの後加工を考えると30〜150μm程度であるとよい。なお、インレット1の面積を表層材14の面積および表層材の裏面側に施された粘着材15によるタック処理部分の面積に対して小さくすることにより、インレット1と表層材14を剥離台紙16から剥がして対象物に貼り付ける際に、表層材14の裏面側のインレット1の部分を除いたタック処理部分の粘着力で保持可能である場合、粘着材15はなくてもよい。
【0042】
図6は本発明による無線通信記録媒体の第4の実施の形態であるICカードの模式的な断面図である。本実施の形態のICカードは、第2の実施の形態の無線通信記録媒体のインレット10を使用したものであり、ICカードとしての機能を有するものである。
【0043】
図6に示すように、本実施の形態のICカードは、カード用の基材として一般的な高分子の熱可塑性樹脂のフィルム状のシートを使用して、インレット10を挟み込み固定する。本実施の形態のICカードにおいては、2枚の中間材17でインレット10を挟み込み、さらにその外側を2枚の表層材18で挟み込んでいる。
【0044】
中間材17のシートとしては、一般的な高分子の熱可塑性樹脂であることが望ましく、PET−G(非結晶コポリエステル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PCV(ポリカーボネイト)またはホットメルトなどが挙げられる。中間材17の厚さは任意でよいが、インレット10を2層の中間材17で挟持し、さらに表層材18の厚さを加えた総厚が、所望のカードの総厚となるよう調整する。表層材18のシートとしては、一般的な高分子の熱可塑性樹脂であることが望ましく、PET−G(非結晶コポリエステル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PCV(ポリカーボネイト)などが挙げられる。あるいは紙又は表面を樹脂コートした紙としても良い。表層材18にはあらかじめ所定の絵柄などを印刷しても構わない。印刷の方式はオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷など公知の印刷方式が使用でき、インキとしてはUV硬化型、溶剤型、エマルジョン型などが使用でき、特に制限されない。表層材18の厚さは任意でよいが、印刷機による作業性を考慮すると50〜300μm程度が適当である。また、必要な耐久性に応じて印刷面上に適当な膜をコーティングしたり、フィルムをラミネートしても良い。
【0045】
さらに、マグネティックストライプを貼り付けることによる磁気記録機能、ホログラムによるセキュリティ機能、あるいは昇華型プリンタなどで二次印刷を行うためにポリエステル系、塩化ビニル系などの樹脂を主材料とした受像層をコーティングするなど、付加機能を持たせることも可能である。インレット10、中間材17、および表層材18の接着については、接着される2つのシートや基材の材質がPET−G(非結晶コポリエステル)、PVC(ポリ塩化ビニル)などであれば、市販のカード用熱プレス機により比較的簡単に互いを熱溶融接着させることができる。また、熱溶融接着できない材料であれば、接着はホットメルトなど熱可塑性の感熱性接着剤、エポキシ系などの熱硬化性接着剤、または一般的な強接着タイプの接着剤を用いて行うことができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の効果を確認するため、上記の第2の実施の形態の無線通信記録媒体のインレット10の具体的な実施例を、本発明による無線通信記録媒体の製造方法を用いて作製し、評価を行った結果について説明する。
【0047】
先ず、第1の工程として、図3および図4における絶縁性フィルム基板2として厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用し、絶縁性フィルム基板2上に厚さ30μmのAl箔を貼り、レジストマスクを用いたフルエッチング処理により、アンテナ3と第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5を形成した。ここで、第1の放熱ランド4と第2の放熱ランド5の面積を加算した面積は70mmである。また、第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5は、0.2mmピッチでφ0.1mmの丸穴の貫通孔を多数設けている。この貫通孔は、前記のレジストマスクに孔パターンを設け、前記のフルエッチング処理により作製した。
【0048】
次に、第2の工程として、絶縁性フィルム基板2の裏面側に厚さ30μmのAl箔を貼り、第1の放熱ランド4および第2の放熱ランド5と同じ位置に重なり、面積が70mmとなる第3の放熱ランド13を、レジストマスクを用いたフルエッチング処理により得た。第3の放熱ランド13も、0.2mmピッチでφ0.1mmの丸穴の貫通孔を多数設けている。
【0049】
次に、第3の工程として、ウエハー状の半導体素子を厚さ150μmに薄化加工し、半導体素子6の底面にAuによる電極用バンプ7、支え用バンプ8をスタッドバンプ法で形成後、ダイシングを行い、外形1.5mm×1.5mmの半導体素子6を得た。
【0050】
次に、第4の工程として、半導体素子3を第1の工程で形成された第1の放熱ランド4の電極ランド4a、4b、および第2の放熱ランド5へフリップチップ工法で実装した。半導体素子3と第1の放熱ランドおよび第2の放熱ランドとの間の接着剤としてはエポキシ系の熱硬化型ペーストを使用した。また、第5の工程では、補強板11として外形2.5mm×2.5mm、厚さ150μmのステンレス材を実装された半導体素子6上へエポキシ系の接着剤12で接着した。
【0051】
上記の第1〜5の工程を経てインレット10の実施例を完成した。次に、比較例として第1、第2および第3の放熱ランドを設けないで、他の構造は上記の実施例と同じである従来構造のインレットを作製し、本実施例のインレット10と放熱性の比較評価を行った。
【0052】
放熱性の比較方法としては、電磁波を一定時間印加したときの半導体素子の発熱温度を比較することにより実施した。具体的には、インレットの半導体素子6上に設けられた補強板11の表面に熱電対を貼り付け、7.5A/mの磁界を印加したときの温度変化を3分間にわたって連続的に記録した。
【0053】
測定の結果、本実施例および比較例ともに、磁界印加後、約10秒で最大温度の約90%に達し、両インレットとも3分後に最大温度を示した。その最大温度の比較より、本実施例のインレットにおける温度上昇は比較例のインレットの約70%程度であり、大幅な放熱効果の向上が確認できた。
【0054】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は、これらの実施の形態や実施例に限られるものではないことはいうまでもなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更が可能である。例えば、支持体、アンテナ、第1、第2、第3の放熱ランドの材料、形状、構造、および使用する半導体素子の種類や形状、各部の配置方法、実装方法などは、本発明を適用する無線通信記録媒体の目的や用途に応じて任意に選択可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、10 インレット
2 絶縁性フィルム基板
3 アンテナ
3a、3b ループの端部
4 第1の放熱ランド
4a、4b 電極ランド
5 第2の放熱ランド
6 半導体素子
7 電極用バンプ
8 支え用バンプ
9、12 接着剤
11 補強板
13 第3の放熱ランド
14、18 表層材
15 粘着材
16 剥離台紙
17 中間材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料の薄板よりなる支持体と、前記支持体上に配置されたループ状のアンテナと、前記支持体上に金属薄板、金属箔または金属膜により形成された第1の放熱ランドおよび第2の放熱ランドと、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランド上に底面部を接触させて配置された底面部に複数の電極を備える半導体素子とを有し、前記第1の放熱ランドは互いに分離された複数の電極ランドからなり、前記電極ランドの少なくとも2つはそれぞれ前記半導体素子の底面部の電極に接合し、かつ、前記電極ランドの少なくとも2つは前記アンテナのループの端部と接続され、前記第2の放熱ランドは、前記第1の放熱ランドと非導通となるように分離され、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドは、それぞれ複数の穴または溝形状を有することを特徴とする無線通信記録媒体。
【請求項2】
前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドと前記アンテナは前記支持体の同一面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信記録媒体。
【請求項3】
前記支持体の前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドが形成された面の裏面側に金属薄板、金属箔または金属膜により形成された第3の放熱ランドを有し、前記第3の放熱ランドは、前記半導体素子の底面部と少なくとも一部の領域が重なるよう配置され、かつ、複数の穴または溝形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信記録媒体。
【請求項4】
絶縁材料の薄板よりなる支持体上に金属薄板、金属箔または金属膜よりなる金属層を設置する工程と、前記金属層を加工することにより、ループ状のアンテナと、少なくとも2つが前記アンテナのループの端部と接続されかつ互いに分離された複数の電極ランドを有する第1の放熱ランドと、前記第1の放熱ランドと非導通となるように分離された第2の放熱ランドとを形成する工程と、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランド上に底面部に複数の電極を備える半導体素子を前記底面部を接触させて配置し、前記電極ランドの少なくとも2つをそれぞれ前記半導体素子の底面部の電極に接合する工程と、前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドに、それぞれ複数の穴または溝を形成する工程を有することを特徴とする無線通信記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記支持体の前記第1の放熱ランドおよび前記第2の放熱ランドが形成された面の裏面側に、金属薄板または金属箔または金属膜により、複数の穴または溝形状を有する第3の放熱ランドを形成する工程と、前記第3の放熱ランドを、前記半導体素子の底面部と少なくとも一部の領域が重なるよう配置する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の無線通信記録媒体の製造方法。
【請求項6】
ICカードまたはICタグとしての機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3720(P2013−3720A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132356(P2011−132356)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】