説明

焼却灰の熱処理装置

【課題】内筒の回転速度を変えることなく被処理物の装置内滞留時間を調整できるようにされた焼却灰の熱処理装置を提供する。
【解決手段】定置する外筒内に同軸で内筒が回転自在に配され、内筒の回転により外周に付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、内筒端から外部に排出する間に、前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、内筒を支持する主軸には、付設する仕切壁体に沿って両側で、軸方向に所要ピッチで複数の送り羽根を支持部材に支持されて傾動可能に配置され、これら送り羽根を前記仕切壁体内側でリンクにて一連に連結され、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、一連のリンクを介して前記送り羽根の傾斜角と配置ピッチを調節可能にされ、内筒内での被処理灰の滞留時間を調節可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として都市ごみや産業廃棄物などの焼却施設において、排ガス処理工程などで捕集された飛灰中に含まれるダイオキシン類を分解処理するのに用いられる焼却灰の熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却設備における排ガス処理で集塵装置などから発生した低温飛灰は、一旦貯留されてから熱分解装置に送られて、ダイオキシン類の熱分解処理がなされる。この熱分解処理装置は、図11に示されるように、外筒101と、内外に飛灰搬送用の羽根103,104を取付けた内筒102を回転駆動して、受入れる飛灰を加熱処理する構成とされている。供給された飛灰は、外筒101内部と内筒102外部の間に外部から供給されて、内筒102の外壁に螺旋状に付された案内羽根103により攪拌されながら軸方向に移動され、端部に達した飛灰は内筒102の開口部106からその内筒102内に落下されて、内筒102の内部に設けられる仕切り板105に取付けた送り羽根104により攪拌されながら逆方向に送られて,この間に加熱処理されて外部に送り出される。
【0003】
この熱分解装置100では、ダイオキシン分解の熱源に電気ヒータ107などを用い、外筒101最終部から中間部に掛けてヒータ107を取付けたケーシング108を外筒101の円周に巡らせた加熱帯109が配設されている。供給される飛灰は、外筒101の前部に設けた投入部110から内筒102の外部に付された案内羽根103により、熱交換ゾーンaから前記加熱帯109にて直接加熱される一次加熱ゾーンbまで時間を掛けて送られ加熱される。一次加熱ゾーンbで飛灰中のダイオキシンは徐々に分解され、さらに分解を促進するために内筒102端部の開口部106から内筒102の内に落下され、二次加熱ゾーンcへ送り込まれる。この二次加熱ゾーンcでは、内筒102内部には逆送り羽根104付き仕切り板105が設けられており、送り込まれた飛灰は、加熱帯109から外筒101を通じて高温伝導で加熱され移動する間にダイオキシンが完全に分解される。そして、出口側に移動する間に、徐々に内筒102外部の低温の飛灰(供給された飛灰)と熱交換しつつ逆送り羽根104で内筒102の排出口112から処理排出される。また、このような処理装置については、特許文献1によって知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−126802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記熱処理装置や特許文献1により知られる処理装置では、本来の目的である飛灰の滞留時間は、内筒102の回転数で決定される。ところが、飛灰の供給量は内筒102外部の案内羽根103で運ばれる量で決まるため、内筒102の回転速度を変えると同時にその内筒102内部での移動速度も変化してしまう。したがって、供給量独自の調整ができないという問題点がある。言い換えると処理能力を高めようとして飛灰の供給量を多くすると、ダイオキシン類の処理が完全に行えない状態で装置内から送り出されてしまい、処理能力を高めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、前述のような問題点を解消するためになされたもので、内筒内部の逆送り羽根の取付けピッチや傾き角度を可変にすることで、内筒の回転速度を変えることなく被処理物の装置内滞留時間を調整できるようにされた焼却灰の熱処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、第1発明による焼却灰の熱処理装置は、
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根を支持部材に中間部で軸支されて傾動可能に配置され、これら送り羽根の支持軸を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結され、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記一連のリンクを介して前記支持部材を軸方向に移動させて前記送り羽根の傾斜角と配置ピッチを調節可能にされ、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、第2発明による焼却灰の熱処理装置は、
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根が支持部材に中間部を固着されて配置され、これら送り羽根の支持部材を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結されて、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記一連のリンクを介して前記支持部材を軸方向に移動させて送り羽根の配置ピッチが調節可能にされ、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
前記第1発明または第2発明において、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体は、所要の間隔で中心から両側に平行して仕切壁部材を固設され、その内部に前記リンクが配設されるように構成されるのがよい(第3発明)。
【0010】
また、前記第1発明または第2発明において、内筒を支持する主軸は、4本の角型部材が内筒軸心を基準にして、所要の間隔で平行して配列構成されているのがよい(第4発明)。
【0011】
また、第1発明において、前記送り羽根が支持される支持部材は、前記主軸の軸心の左右にて、それぞれ上下に配される二本の角型部材を跨いで外側で、前記送り羽根調節手段に隣接する支持部材を除いて軸方向に摺動自在に支持されており、これら支持部材の中央部で主軸軸線に直交して回動自在に設けられる支持軸に送り羽根の基幹部が固着される構成であるのがよい(第5発明)。
【0012】
前記第5発明において、支持部材上で回動自在に支持される支持軸は、送り羽根取付け座部を支持部材に設けられる段付き凹部に嵌め合わせ、その外周部を抜け止め片により回動可能に保持されている構成であるのがよい(第6発明)。
【0013】
また、第2発明において、前記送り羽根が支持される支持部材は、前記主軸の軸心左右においてそれぞれ上下に配される二本の角型部材を跨いで外側で、前記送り羽根調節手段に隣接する支持部材を除いて軸方向に摺動自在に支持され、各左右一対の支持部材を前記主軸の空間部を貫通する支持軸により相互に連結されている構成であるのがよい(第7発明)。
【0014】
前記第1発明または第2発明において、前記送り羽根の支持部材を連結するリンクは、その基幹部を前記支持軸に枢支され、支持軸から等距離で両端部にて連結するリンクとピン連結されている構成であるのがよい(第8発明)。
【0015】
また、前記第1発明または第2発明において、前記主軸を構成する角型部材間に生じる軸線方向に空間部には、その角型部材の外側面に付される送り羽根の支持部材に、前記空間部に嵌り合う所要長さの閉鎖部材を、隣り合う各支持部材の前記閉鎖部材が交互に一部を重ね合うようにして取付けて、これら各支持部材付設の閉鎖部材によって前記主軸の空間部を閉鎖状態に形成するのがよい(第9発明)。
【0016】
また、第10発明による焼却灰の熱処理装置は、
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根が傾動可能に中間部を軸着して配置され、これら送り羽根の支持軸を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結され、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記一連のリンクを介して前記送り羽根の傾斜角を調節して、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
前記第10発明において、前記主軸は軸心の左右に所要の間隔で平行して配される一対の帯状板材を上下位置で所要間隔で繋ぎ部材にて接続されたボックス構造にされ、軸方向に所要の間隔でこの主軸を横断して配設される支持軸に、左右両外側にて、前記送り羽根が中間部を取着される構成であるのがよい(第11発明)。また、前記送り羽根は、仕切壁体の内側でそれぞれ支持軸に基端を取着されるリンクの先端を、一本の操作ロッドにそれぞれ枢着して、内筒端部に配設される送り羽根調節手段により前記操作ロッドを介して連動させて、送り羽根の傾斜角を調整可能にする構成であるのがよい(第12発明)。
【0018】
前記第10発明において、ボックス構造の主軸における上下に生じる空間部は、仕切壁体構成の仕切り板を主軸に取付けて被処理灰の移動空間と遮断される構成とするのがよい(第13発明)。
【0019】
前記第1発明,第2発明または第10発明において、前記送り羽根調節手段は、内筒端を閉鎖する面板に直交して進退自在に外部から挿入されるねじ軸と、このねじ軸の内端に支持されて前記送り羽根の傾斜もしくは位置移動を行わせるリンク構造の一端部と可動的に連結する連結片と、前記ねじ軸を軸方向に移動・固定させる支持部材とで構成されているのがよい(第14発明)。
【0020】
前記第1発明,第2発明または第10発明において、内筒の端部に設けられる外部から内部への被処理灰流入口は、その開口部縁に沿って筒体内側に突き出す開口縁壁が設けられるのがよい(第15発明)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、定置されている外筒内で回転する内筒に設けられる多数の送り羽根を、外部からリンク機構を用いて傾斜角を調節したり、その送り羽根の配置間隔を調節することにより供給される被処理灰の装置内での滞留時間を最適に選択することができるので、内筒の回転速度を変えることなく被処理物(被処理灰)の移動速度を設定して効率よく熱処理でき、処理能力を高めることができるのである。また、内筒の回転速度を変更しないで被処理物の滞留時間を変更できる。言い換えると処理量に関係なく滞留時間を変更できるので、確実な熱分解処理ができる。
【0022】
そして、第1発明によれば、外筒内に供給される被処理灰を螺旋羽根によって内筒へ供給される供給量に応じて、回転する内筒内部に配置される送り羽根をその内筒の外端部で、送り羽根調節手段によってリンク機構を操作して、主軸に沿って送り羽根の支持部材を操作すると、送り羽根の傾斜角を変更すると同時にその配置間隔が変更され、例えば送り羽根の傾斜角が軸線に対して大きくすると配置間隔が短くなって、被処理灰の送り速度が遅くなり、滞留時間が長められる。また、送り羽根を逆に操作すると送り速度が速まり、滞留時間を短くすることができる。そして、送り羽根はその傾き角度を自由に変更できると同時に軸方向に移動できるので、内筒の内壁に塊状物が付着することがあっても、送り羽根を起立させて移動することにより掻き寄せて処理することができるという利点がある。
【0023】
また、第2発明によれば、送り羽根の傾き角度は一定に保たれるが、その支持部材をリンク機構と送り羽根調節手段によって軸方向に移動させることにより滞留時間の調節ができる。この構成では、送り羽根を固定的に配置するので、被処理物を掻き揚げ落下させる操作で送り羽根支持部に与える影響を少なくでき、安定的に使用できる利点がある。また、第10発明によれば、送り羽根の配置間隔を一定に保ってその傾き角度を調節可能にされているので、被処理物の移動状態を外部で送り羽根調節手段により送り羽根の傾き角を把握して確実に設定できるという利点がある。また、送り羽根の支持部がスライドしないから異物による影響を受け難く、安定状態を維持できるという利点がある。
【0024】
また、前記発明に加えて他の発明によれば、送り羽根の調節は、取扱われる被処理物と遮断された仕切壁体の内側でリンク機構を操作する構成であるので、粉流体と接触することなく円滑に動作させることができる。また、送り羽根の支持部材は、複数の角型部材をもって構成される主軸に沿って摺動できる構成とされ、その支持部材に取付く支持軸を介してリンク機構と接続されて一連で動作するので、多数の送り羽根をリンク機構の一端で進退操作することにより確実に送り羽根の調節が行える。しかも、その調節操作はねじ軸を進退させることにより行えるので、当該位置でのねじ軸の移動量で直視できない送り羽根の傾き角度を知ることができる。
【0025】
さらに、これら送り羽根は、それぞれ分解可能な構造にされているので、使用によって摩耗や破損した場合、単品で交換することができるので、メンテナンスの費用が安価であるという利点がある。
【0026】
また、第15発明によれば、内筒の一端部周面に設けられる内筒外部から内部への被処理灰流入口の開口部内側に、その縁に沿って内側へ突き出す開口壁を設けることにより、内筒内部に送り込まれた被処理灰が内筒の回転によって順次送り羽根で排出口側へ送られる際、外側へ逆流するのを防止して、確実に前進させ処理することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明による焼却灰の熱処理装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1には本発明の第1実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の概要を表わす縦断面図が示されている。図2には本実施形態の要部の一方の区画内拡大断面図が、図3には他方の区画内拡大断面図が、図4には図2のA−A視断面図(a)と送り羽根支持要部の正面図(b)およびその断面図(c)が、図5には要部の分解斜視図が、それぞれ示されている。
【0029】
この実施形態の熱処理装置1は、基台2上に支持フレーム2′によって軸心をほほ水平に保たれて支持される所要寸法の外筒3と、この外筒3内で同軸上に回転自在に軸支される主軸10に取付く内筒4と、外筒3の一部の外周を囲って被処理灰を加熱する加熱手段7および前記内筒4に付属して被処理灰をその内外で軸方向に往復移動させる被処理灰の送り手段とで構成されている。
【0030】
前記外筒3と内筒4とは、両者間に所要寸法の空間部5が形成されるようにして同心円で配されている。そして、外筒3は、前述のように支持フレーム2′により基台2上に軸心をほぼ水平に保たれて、定置されている。外筒3の外周には耐熱層6が巻き付けられて断熱処理が施され、その全長の後半部に加熱手段7として、多数の電気ヒータ7aが全周を取り巻くように配置された加熱部が設けられ、外筒3を介して内部を加熱するようにされている。前記内外筒間の空間部5に対して外筒3の前部上方に、被処理灰の供給口8が設けられ、この供給口8から空間部5に送り込まれる被処理灰を軸方向に後部に送られる間に前記加熱部(ヒータ7a)で加熱されるようになっている。
【0031】
内筒4は、前記外筒3の全長より長い寸法にされて軸心を貫通する主軸10によって前後両端部に取付く支持面板15,15′にて固着され、主軸10に加えられる回転動力で所定の速度で外筒3の内部にて回転するように設けられている。この内筒4の外周面には、前記外筒3の内部に収まる範囲で螺旋羽根9が所要のリードで取着されており、内筒4の回転により外筒3内面とこの内筒4外面との間に形成される前記空間部5に外筒3の供給口8から送り込まれる被処理灰を後端部まで移動させるように構成されている。なお、前記空間部5の前後両端は、前方において、前記外筒3の端部に取付くリング状の閉鎖板3aと内筒4周面との間に設けられるシール機構13により、後方において、外筒3側に取付くリング状の閉鎖板3bと内筒4端部の支持面板15における外周部とのシール機構13′により、それぞれ被処理灰が外部に漏れ出さないようにされている。
【0032】
さらに、内筒4の内部は、全長にわたり直径方向に仕切壁体16によって二室に分割されている。その仕切壁体16は、所要の間隔を取って直径方向に二枚の仕切り板16′(実質的には所要長さの仕切り板が全長にわたって接続形成される)を主軸10に支持させて配置されている。
【0033】
前記主軸10は、図4(a)に示されるように、軸心Cを基準にして左右方向(直径方向)に、かつ上下方向に合計四本の断面角型の棒材11(以下角型部材11という)が平行して所要間隔をとって配列され、内筒4の端部を閉じている支持面板15と前部の支持面板15′外側部分(支持面板15′箇所でもよい)で円板12,12′に固着され一体化されている。そして、その各円板12,12′を継ぎ手として一軸上に実体の支持軸10a,10bがそれぞれ接続され、それら支持軸10a,10bの軸頸部で軸受17,17′にて支承されている。
【0034】
前記内筒4の内部には、外周に付設された螺旋羽根9とともに送り手段として多数の送り羽根20が配置されている。この送り羽根20は、前記仕切壁体16の両外側面に、前記主軸10の側面に支持される支持部材21に付されて所要の間隔で多数個、軸方向に配設されており、その支持部材21に主軸10の軸線と直交する向きで支持される送り羽根20の支持軸23を、一連に繋ぐリンク機構に取付けて、そのリンク機構によって送り羽根20の傾き角度と配置間隔との調節が行えるようにされている。
【0035】
前記送り羽根20は、図2〜図5によって示されるように、内筒4の直径よりやや長い長さで幅寸法(内筒4の半径方向の寸法)が内筒4の半径の1/2程度(ただしこれに限定されない)にされた適宜厚さの板材で、長手両端部を内筒4の内周に対応する円弧状に形成されている。そして、この送り羽根20は、その中間位置で前記支持部材21の中央にて回動自在に支持される支持軸23に取着されて、内筒4の軸線に対して被処理灰を前方(排出側へ)に向かって送り出す姿勢で傾斜して配設されている。なお、図上において、図2に対してその反対側では逆の姿勢で表れる(図3参照)が、回転によって反転するといずれも同じ向きになる。
【0036】
前記送り羽根20を支持する支持軸23は、支持部材21の中心を貫通する軸孔22に挿通して回動自在に支持され、その外側には円形座板23aが一体に形成されて支持部材21に設けられる円形凹所22aに収まるようにされ、支持部材21の外側面にボルト定着される抜け止め金具24,24にて対角位置で支持軸23が抜け出さないように保持されている。このように形成される支持軸23の他端部は、支持部材21の背面から主軸10の中心側に突き出され、その支持軸23端に後述するリンク28(28′)の基幹部が固着される。なお、前記送り羽根20の基幹部端が、前記のように形成される支持軸23の円形座板23aの表面中央を通るようにして溶接され、直交定着されている。
【0037】
前記支持部材21は、方形に形成されて、背面側を前記主軸10を構成する上下二本の角型部材11に側面部で跨座するようにスライド溝21aが横方向に形成されており、表面中心に前述の支持軸挿通孔22と円形座板23aを受入れる円形凹所22aが同軸心で設けられている。また、この支持部材21は、前記支持軸23端に取付けられるリンク28(28′)の基幹部によって支持軸23を介して主軸10からのはずれ留めを施されている。なお、構造的には同一であるが、最後端に位置する支持部材(固定支持部材21A)は、主軸10に対して固定されて軸方向にスライドしない。さらに、支持部材21が支持される主軸10における上下に配された角型部材11,11間には、間隙部が形成されており、この間隙部を塞ぐために、支持部材21の背面に、その間隙部に嵌る寸法の細長い閉じ部片25を、隣接する支持部材21のものと相互に一部を重なり合うようにして、かつスライド可能に両側で取付けられている。したがって、後述するように、内筒4内部で被処理灰が送り羽根20によって掻き揚げられて落下する操作を行って、主軸10部分に被処理灰が降り懸かってもその内部に侵入するのを防止することができる。
【0038】
このように構成される支持部材21は仕切壁体16を挟んでその両外側に対称位置と成るように所要のピッチで主軸10に沿って多数個配置される。そして、これら各支持部材21には、図2あるいは図3にて示されるように、内筒4内部での一方の区画室では送り羽根20が後傾する姿勢でいずれも等しい傾き角で支持軸23に支持されて配される。これに対して他方の区画室では、各送り羽根20の傾き方向が前記送り羽根20に対し側面視逆方向に配置される。ただし、内筒4を半回転させるといずれも同じ向きとなる。
【0039】
前記リンク28(28′)は、全長が送り羽根20の長さ寸法よりも短い寸法で支持軸23に取着された基幹部から両端部に等距離位置で連結ピン孔28aが設けられている。各リンク28(28′)はいずれも等しい長さ寸法のものが用いられ、支持軸23に対して交互に向きを変えて固着されて、両端部の連結ピン孔28aで相互にピン28b連結される。そして、固定位置の支持部材21Aにおける支持軸23に取付くリンク28Aの端部には、内筒4端の支持面板15に取付く送り羽根調節手段30に連結されて一連のリンク機構29が形成される。このリンク機構29は仕切壁体16の内側で両方の送り羽根20,20の支持部材21,21に対しても同様に形成されている。
【0040】
前記リンク機構29の端部に繋がる送り羽根調節手段30は、そのリンク機構29の延長線上で支持面板15に支持されて設けてある。この送り羽根調節手段30は、支持面板15に主軸10の軸線と同方向に平行して穿設されるねじ孔に、外部から進退自在に螺合するねじ軸31と、そのねじ軸31の先端にて回転自在に保持される連結金具32および固定雌ねじ33(ナット)とで構成されている。前記連結金具32とリンク機構29のリンク28Aとは、連結金具32に設けられる長孔32aに対して連結リンク28A端の連結ピン孔とを連結ピン28cにて繋がれている。なお、前記連結金具32に設けた長孔32aは、ねじ軸31の軸線に交差する方向で形成されており、リンク28Aの変位角に応じて連結ピン28cがその長孔32aで移動して連結を維持できるようにされている。
【0041】
一方、このような多数の送り羽根20による内筒4内部における送り手段に対して内筒4外部で加熱されて送り込まれる被処理灰の流入口40は、内筒4の後端部周面において、内部で仕切壁体16により仕切られた各区画室に対してそれぞれ一箇所ずつ、ほぼ対角位置で、最終位置で後傾した送り羽根20に流入被処理灰が受け止められるようにしてその上側位置に設けられる。この流入口40の開口部内側縁には、適宜高さ寸法で開口壁41が内側に突き出して設けられている。こうすることによって、内筒4が回転する際に受入れた被処理灰を外部に戻す(逆流する)ことなく送ることができる。
【0042】
このように形成される内筒4の内部先端には排出口50が設けられ、その排出口50の手前位置に堰(図示せず)を設けて回転により逆流を起こさず排出されるようになっている。この内筒4の先端部は、当該位置に配置される処理済灰の排出チャンバー51を経て回収装置に送り出されるようにされており、排出チャンバー51の上部にはダストフィルター52を設けて排気ガスにダストが混入して排出されないように構成されている。図中符号53は排風機、54は被処理灰のサービスタンク、55はフィーダーである(図1参照)。
【0043】
このように構成される本実施形態の焼却灰の熱処理装置1では、加熱部における電気ヒータ7aを作動させて、内筒4を駆動装置(図示省略)により所定の速度で回転駆動させて運転状態に入る。この状態でサービスタンク54に貯留されている飛灰などの被処理灰をフィーダー55によって外筒3の供給口8から内部の空間部5に供給する。供給口8から送り込まれた被処理灰は、回転する内筒4の外周に設けられた螺旋羽根9によって所定の速度で外筒3と内筒4との間に形成される空間部5を軸方向(矢印Dで示す)に後端部へ向かって移動する。この間に被処理灰は、螺旋羽根9によりかき混ぜられながら加熱ゾーンで加熱部のヒータ7aによって加熱される。
【0044】
被処理灰が空間部5の終端部に到達すると、ちょうどその位置に開口する流入口40から順次内筒4内に被処理灰が落下投入される。その流入口40の直下には後傾状態にされる送り羽根20が位置するので、落下する被処理灰を送り羽根20によって前方に送られる。この際、送り羽根20に載って滑り降りる被処理灰は、その送り羽根20が幅方向に仕切壁体16側面と反対側の内周面との間に形成される空間e(図4(a)参照)側にも滑り落ちる。内筒4は所定の速度で回転するので送り羽根20の側方では軸方向に空間部分eが連通状態になっているから、回転によってその空間部分eが上側に移動すると、自由に位置を変えられるので前側の送り羽根20による仕切側に移行することになり、回転とともに順次前方位置の送り羽根20により掬われて次第に前方に送られる。また、被処理灰はこの掬い上げられては落下する動作を繰返すうちにほぐされ、加熱部から内筒4に伝導される熱を受けて加熱され、灰中に存在するダイオキシン類が熱分解されて前方に送られる。このような被処理灰の処理操作と挙動は、仕切壁体16によって二分されている両側で同様にしてなされる。
【0045】
やがて加熱処理された処理灰が内筒4の前半部に移行すると、ちょうどその前半部の外周面では空間部5に未処理の被処理灰が供給されて螺旋羽根9によって加熱ゾーンに送られる位置に対応するので、この未処理灰に対して処理済灰が保有している熱量を内筒4の内側から外周部に向けて熱伝達され、このゾーンで予熱処理することができる。したがって、順次送り込まれる未処理灰と熱交換して加熱ゾーンでの加熱処理を促進させ、予熱によって熱回収することにより熱収支の向上を図ることができるのである。熱処理された処理済灰は、内筒4先端部の排出口50から排出チャンバー51を経て回収装置に送り出される。
【0046】
このようにして加熱処理するにあたり、本実施形態では、内筒4の回転速度は最適条件に設定して回転させるのに対して、加熱のために装置内、言い換えると内筒4内での被処理灰の滞留時間を調節することができる。すなわち、送り羽根20の傾き角およびその配置間隔を変更することによって設定滞留時間に対して処理速度を長める必要がある場合は、送り羽根調節手段30を操作して、ねじ軸31を内側へ押す方向に移動させると、連結金具32を介して連結される第1のリンク28Aが固定されている支持部材21A上の支持軸23を基点にして起きる方向に回動されるので、この第1のリンク28Aに連なる第2のリンク28を介して各リンク28が第1のリンク28A側に引き寄せられる。したがって連結される各リンク28を介して各リンク28が支持される支持部材21が主軸10の角型部材11,11に沿って一斉に固定支持部材21A側へ引き寄せられる。その結果、各送り羽根20の傾き角が鋭角方向に回動され、同時にその配置間隔が狭められる。したがって、各送り羽根20によって掻き揚げられて落下する被処理灰の移動距離が短くなることから滞留時間が長くなる。
【0047】
これとは逆に、内筒4内部での被処理灰の滞留時間を短くするには、送り羽根調節手段30におけるねじ軸31を外部で外向きに引く方向に移動操作すると、連結金具32を介して連結される第1のリンク28Aが固定支持部材21A上の支持軸23を基準にして伏せる方向に回動されるので、この第1のリンク28Aに連なる第2のリンク28から各リンク28に伝播して各支持部材21の支持軸23がリンク機構29によって前述とは逆に回動し、送り羽根20は傾き角を鈍角の方向に回動され、同時に各支持部材21が主軸10の角型部材11,11に沿って固定支持部材21Aから離れる方向に摺動して配置間隔が広がる。したがって、各送り羽根20によって掻き揚げられ落下する被処理灰の移動距離が長くなり、その結果、滞留時間が短くなる。
【0048】
このように、この実施形態によれば、内筒4内部に配置されている送り羽根20を外部からリンク機構29を操作して傾き角と配置間隔とを同時に調節することができるので、内筒4の回転速度を変更することなしに被処理灰の滞留時間を調節でき、熱処理操作を効果的に行えるのである。そして、送り羽根調節手段30において、前記送り羽根20の条件設定をねじ軸31の回動によって前進後退させる操作で調節できるので、そのねじ軸31の移動量と送り羽根20の条件を予め確認しておけば、ねじ軸31の移動によって条件を設定することができる。
【0049】
(第2実施形態)
図6には本発明の第2実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の要部を表わす斜視図が示されている。図7には図6のB−B方向に見た熱処理装置の横断面図が、図8には要部の分解斜視図が、それぞれ示されている。
【0050】
この実施形態の焼却灰の熱処理装置1Aは、前記第一実施形態の装置と基本的構成において同様であり、内筒4の内部に設けられる送り羽根20の調節について、その送り羽根20の傾きを一定条件に固定されている点で相違する。したがって、構成上異なる部分について説明し、前記実施形態のものと同様もしくは同一の構成については、前記実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0051】
内筒4内部に多数配設される送り羽根20は、前記実施形態のものと同様に、内筒4の直径よりやや長い長さで幅寸法(内筒4の半径方向の寸法)が内筒4の半径の1/2程度(ただしこれに限定されない)にされた適宜厚さの板材で、長手両端部を内筒4の内周に対応する円弧状に形成されている。そして、この送り羽根20は、四本の角型部材11を配列してなる主軸10に沿って摺動自在に装着される支持部材21の外側面に、軸線に交差する姿勢で所定の傾き角度にて中間位置を固着されている。
【0052】
前記送り羽根20を取付けられた支持部材21は、前記主軸10を構成する四本の角型部材11,11を軸心線の両側で跨座するようにして、それぞれ一組ずつ同一位置に配置され、その中心位置で一本の支持軸23Aを主軸10構成の角型部材11,11間を挿通してボルト23″にて締結し、主軸10を挟んで摺動可能な状態で一体的に結合されている。なお、この状態で各支持部材21に取着された送り羽根20は、側面視反転させると同一方向に傾いた姿勢で取付けられるが、主軸10の軸線方向から見た状態では左右逆向きに現れている。
【0053】
このようにして主軸10に沿って多数配置される送り羽根20を支持する支持部材21は、前記支持軸23Aに仕切壁体16の内側で、基幹部を枢支されるリンク28をクロス状に連結してなるリンク機構29Aによって一連に連結されている。そのリンク機構29Aは、前記実施形態と同様に送り羽根20の長さ寸法より短いリンク28をクロスさせて両端部でピン連結し、前記第1実施形態と同様に、最終端位置の固定支持部材21Aの支持軸23Aに枢支される第1リンク28Aの端部を支持円板15に装着される送り羽根調節手段30の連結金具32と可動的に連結して、ねじ軸31により押し引きさせることにより第1リンク28Aに連結される第2のリンク28を介して各リンク28を回動させ、そのリンク28の回動により、各支持部材21を主軸10に沿って順次一斉にスライドさせ、一定の傾斜角で各支持部材21に取着されている送り羽根20の配置間隔を変更させて、内筒4内を移動させる被処理灰の滞留時間を調節することができるのである。
【0054】
この実施形態によれば、前述のようにしてリンク機構29Aによって各支持部材21を移動させると一定の傾き角度に固定されている送り羽根20の配置ピッチを変えることができ、そのピッチの変更を送り羽根調節手段30におけるねじ軸31の移動量で決めることになり、予め送り羽根20の傾き角度の最適条件を確認して設定しておけば、配置間隔の変更量で調節でき、可動部分を少なくして簡便に対処できるという利点がある。
【0055】
(第3実施形態)
図9には第3実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の要部を表わす斜視図が示されている。図10には送り羽根の支持部を表わす拡大断面図が示されている。
【0056】
この実施形態の焼却灰の熱処理装置1Bは、前記第一実施形態の装置と基本的構成において同様であるが、内筒4に設けられる送り羽根20の支持部構造とその調節部について相違するものである。前記送り羽根20はその配置間隔を固定にして、その傾き角度を調節可能にされている点で相違する。したがって、前記実施形態のものと同様もしくは同一の構成については、前記実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0057】
この実施形態の焼却灰の熱処理装置1Bでは、内筒4を支持する主軸10Bがボックス構造に構成されている。その主軸10Bを構成する部材は、内筒4の両端部支持円板15,15′(ただし後端部側のみ図示)間で、平行して所要寸法の二枚の帯状鋼板(例えば平鋼。以下、主部材11Bという)を予め設定された間隔で繋ぎ部材11cによって接続して、所要寸法の角型断面のボックス構造に形成されている。このようにされる主軸ボックス構造部10B′を軸方向の両端部で円板12,12′により実体の軸10a,10bに接続して図示されない軸受部で支持され、かつその実体軸部10aで動力部からの回転力が伝達されるようにして、両端部支持円板15,15′に取付く構造とされている。言い換えると、この主軸10Bは内筒4の内部に位置する部分が、ボックス構造に形成されている。
【0058】
前記主軸のボックス構造部10B′には、予め設定されたピッチで軸線方向に多数の送り羽根20が両側に配設されている。それら送り羽根20は、その基幹部中央を円形座板23aを介して支持軸23に取付けられている。その送り羽根20を支持する支持軸23は、前記主軸10Bを構成するボックス構造部10B′の主部材11Bに、軸線方向に所定の間隔で軸心を横断するように配設された軸支持孔11dに挿通して、前記円形座板23aの外周縁を送り羽根20の回動範囲から外れた部分で抜け止め金具24によって移動可能に保持されている。なお、主軸10Bの両側に配される各送り羽根20の支持軸23は、各位置で概ね同軸心に配置され、左右個々に回動する。
【0059】
前記送り羽根20は、前述の実施形態のものと同様に、内筒4の直径よりやや長い長さで幅寸法(内筒4の半径方向の寸法)が内筒の半径の1/2程度(ただしこれに限定されない)にされた適宜厚さの板材で、長手両端部を内筒の内周に対応する円弧状に形成されている。このような各送り羽根20は、その支持軸23に前記主軸のボックス構造部10B′における主部材11B,11Bの内側で、リンク28Bの基端部が取着され、この各リンク28Bの先端部を主軸10Bに平行して配される長いロッド36にそれぞれピン連結されて、そのロッド36の基端を内筒4後端側の支持円板15に付設される送り羽根調節手段30の連結金具32に接続されて、傾き角の調節が行われるようにされている。なお、前記送り羽根20の基準となる傾き角は、初期設定に際してその姿勢を設定した状態で支持軸23にリンク28Bの基端が取付けられて前記ロッド36と連結される。また、前記リンク28Bとロッド36の配置は、前記主軸10Bの両側において、リンク28B,28Bを相反する向きに配置して、対称的にロッド36,36を介して支持円板15側に設けられる各送り羽根調節手段30と連結され、仕切壁体16によって区画される各区画室ごとに調節するようにされている。
【0060】
また、主軸のボックス構造部10B′では、前記送り羽根20の傾き角を調節するためのリンク28Bを配するために主部材11B,11Bを横方向に繋いでいる横繋ぎ部材11cは、前記送り羽根20の支持軸23が配される位置間の中間にて主部材11B,11Bの上下を接続してボックス構造となるように構成される。したがって、リンク28Bが主軸10Bから外部に突き出して動作するのを妨げない。
【0061】
この実施形態における内筒4内を二分する仕切壁体16Bは、図9および図10にて示されるように、仕切り板16b、16bを前記主軸の主部材11B外面に一辺を着脱可能にボルト締結して取付けられている。前記送り羽根20は、こうして付設された仕切壁体16Bの外側面に沿わせて配設されている。
【0062】
このように構成される本実施形態では、内筒4の内部に送り込まれる被処理灰の滞留時間を調節するのに、多数配設される送り羽根20が、その間隔を一定にされて支持軸23をリンク28Bを介してロッド36で一連につながれて送り羽根調節手段30により外部で調節可能にされているので、その送り羽根調節手段30のねじ軸31によりロッド36を押し引きすることにより送り羽根20の傾き角を変更することにより、内筒4の回転による被処理灰の移動を制御して行うことができる。要するに、送り羽根調節手段30のねじ軸31によりロッド36を押せば、連結されるリンク28Bが起立する方向に変位し、これに伴って支持軸23が回動して送り羽根20の傾き角を大きくして起立する方向に変位させることができる。そうすると、送られる被処理灰の移動距離が短くなって滞留時間が長められる。これとは逆に、送り羽根調節手段30のねじ軸31によりロッド36を引けば、リンク28Bが伏せ方向に変位して、送り羽根20も伏せ方向に回動して傾き角が小さくなり、送られる被処理灰の移動距離が長くなって滞留時間が短くなる。
【0063】
この実施形態によれば、前述のように定位置に配設される各送り羽根20を、その傾き角をリンク28Bとロッド36との連結構成によって一斉に調節できる構成にされているので、送り羽根調節手段30におけるねじ軸31の移動量で傾き角を調節して最適条件に選択できるので、機能を簡単にして目的を達成することができる。
【0064】
以上に記載された各実施形態においては、いずれも内筒内部に配設される多数の送り羽根とその支持構造並びに調節構造体が主軸を中心にして支持構成され、内筒とは直接的に結合されていないので、主軸と内筒との連結個所および支持円板との結合を解くことにより、内筒の内部から取り出して分解・組立可能に構成されている。したがって、メンテナンスに際して分解する場合には内筒から取り出して外部において点検・補修を行うことができる。また送り羽根は各単位ごとに分解組立できるので、損傷があった場合、その部品交換が容易に行え、メンテナンスを容易にするという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の概要を表わす縦断面図
【図2】第1実施形態の要部の一方の区画内拡大断面図
【図3】他方の区画内拡大断面図
【図4】図2のA−A視断面図(a)と送り羽根支持要部の正面図(b)およびその断面図(c)
【図5】要部の分解斜視図
【図6】第2実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の要部を表わす斜視図
【図7】図6のB−B方向に見た熱処理装置の横断面図
【図8】要部の分解斜視図
【図9】第3実施形態に係る焼却灰の熱処理装置の要部を表わす斜視図
【図10】送り羽根の支持部を表わす拡大断面図
【図11】従来の焼却灰の熱処理装置の概要図
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B 熱処理装置
3 外筒
4 内筒
5 空間部
7a ヒータ
8 被処理灰の供給口
9 螺旋羽根
10,10B 主軸
11 角型部材
11B 主部材
12,12′ 円板
15,15′ 支持円板
16,16B 仕切壁体
20 送り羽根
21 支持部材
21A 固定支持部材
23,23A 送り羽根の支持軸
23a 円形座板
25 閉じ部片
28,28′,28B リンク
28A 第1リンク
29,29A リンク機構
30 送り羽根調節手段
31 ねじ軸
32 連結金具
36 ロッド
40 被処理灰の流入口
41 開口壁
50 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根を支持部材に中間部で軸支されて傾動可能に配置され、これら送り羽根の支持軸を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結され、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記リンクを介して前記支持部材を軸方向に移動させて前記送り羽根の傾斜角と配置ピッチを調節可能にされ、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とする焼却灰の熱処理装置。
【請求項2】
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根が支持部材に中間部を固着されて配置され、これら送り羽根の支持部材を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結されて、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記リンクを介して前記支持部材を軸方向に移動させて送り羽根の配置ピッチが調節可能にされ、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とする焼却灰の熱処理装置。
【請求項3】
前記内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体は、所要の間隔で中心から両側に平行して仕切壁部材を固設され、その内部に前記リンクが配設されるように構成される請求項1または2に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項4】
前記内筒を支持する主軸は、4本の角型部材が内筒軸心を基準にして、所要の間隔で平行して配列構成されている請求項1または2に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項5】
前記送り羽根が支持される支持部材は、前記主軸の軸心の左右にて、それぞれ上下に配される二本の角型部材を跨いで外側で、前記送り羽根調節手段に隣接する支持部材を除いて軸方向に摺動自在に支持されており、これら支持部材の中央部で主軸軸線に直交して回動自在に設けられる支持軸に送り羽根の基幹部が固着される構成である請求項1に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項6】
前記支持部材上で回動自在に支持される支持軸は、送り羽根取付け座部を支持部材に設けられる段付き凹部に嵌め合わせ、その外周部を抜け止め片により回動可能に保持されている構成である請求項5に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項7】
前記送り羽根が支持される支持部材は、前記主軸の軸心左右においてそれぞれ上下に配される二本の角型部材を跨いで外側で、前記送り羽根調節手段に隣接する支持部材を除いて軸方向に摺動自在に支持され、各左右一対の支持部材を前記主軸の空間部を貫通する支持軸を介して相互に連結されている構成である請求項2に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項8】
前記送り羽根の支持部材を連結するリンクは、その基幹部を前記支持軸に枢支され、支持軸から等距離で両端部にて連結するリンクとピン連結されている構成である請求項1または2に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項9】
前記主軸を構成する角型部材間に生じる軸線方向に空間部には、その角型部材の外側面に付される送り羽根の支持部材に、前記空間部に嵌り合う所要長さの閉鎖部材を、隣り合う各支持部材の前記閉鎖部材が交互に一部を重ね合うようにして取付けて、これら各支持部材付設の閉鎖部材によって前記主軸の空間部を閉鎖状態に形成する請求項1または2に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項10】
定置する外筒内に内筒が同軸上で回転自在に配され、その内筒の回転により外周に沿い付設の螺旋羽根で内外筒間の空間の一端部に供給される被処理灰を、軸方向に他端部へ移動させた後、内筒内部に送り込んで内筒内部に配設の送り羽根で逆方向に移動させ、その内筒端部から外部に排出する間に、外筒外部から熱を加えて前記被処理灰を加熱処理する焼却灰の熱処理装置において、
内筒を支持する主軸には、内筒内部を直径方向に二分する仕切壁体に沿ってその両側で、軸方向に所要ピッチで多数の送り羽根が傾動可能に中間部を軸着して配置され、これら送り羽根の支持軸を前記仕切壁体内側でリンクによって一連に連結され、前記内筒の一端部に設けた送り羽根調節手段にて、前記リンクを介して前記送り羽根の傾斜角を調節して、内筒内での被処理灰の滞留時間が調節可能に構成されていることを特徴とする焼却灰の熱処理装置。
【請求項11】
前記主軸は、軸心の左右に所要の間隔で平行して配される一対の帯状板材を上下位置で所要間隔で繋ぎ部材にて接続されたボックス構造にされ、軸方向に所要の間隔でこの主軸を横断して配設される支持軸の左右両外側にて、前記送り羽根を取着する構成である請求項10に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項12】
前記送り羽根は、仕切壁体の内側でそれぞれ支持軸に基端を取着されるリンクの先端を、一本の操作ロッドにそれぞれ枢着して、内筒端部に配設される送り羽根調節手段により前記操作ロッドを介して連動させて、送り羽根の傾斜角を調整可能にする構成である請求項10に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項13】
ボックス構造の主軸における上下に生じる空間部は、仕切壁体構成の仕切り板を主軸に取付けて被処理灰の移動空間と遮断される構成とする請求項10に記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項14】
送り羽根調節手段は、内筒端を閉鎖する面板に直交して進退自在に外部から挿入されるねじ軸と、このねじ軸の内端に支持されて前記送り羽根の傾斜もしくは位置移動を行わせるリンク構造の一端部と可動的に連結する連結片と、前記ねじ軸を軸方向に移動・固定させる支持部材とで構成されている請求項1,2または10のいずれかに記載の焼却灰の熱処理装置。
【請求項15】
内筒の端部に設けられる外部から内部への被処理灰流入口は、その開口部縁に沿って筒体内側に突き出す開口壁が設けられる請求項1,2または10のいずれかに記載の焼却灰の熱処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−102669(P2006−102669A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294156(P2004−294156)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】