説明

焼却装置の制御方法

【課題】 この発明が解決しようとする課題は、被焼却物の焼却処理を自動化することである。
【解決手段】 被焼却物2を収容する一次燃焼室3と、被焼却物2から発生させた乾留ガスを燃焼させる二次燃焼室4とを備え、被焼却物2を一次燃焼室3内で乾留ガス化と置火の状態で焼却する焼却装置の制御方法であって、被焼却物2の種別と重量に基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業廃棄物等の被焼却物の焼却処理を行う焼却装置の制御方法に関する。特に、比較的小型の焼却装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や家庭ゴミ等の廃棄物(以下、「被焼却物」と云う。)の処理には、焼却処理が多用されている。これらの被焼却物の焼却処理に際し、従来の焼却方法は、前記被焼却物を燃焼室内で燃やしており、煙突から煤や煙が放出されている。また、前記被焼却物に含まれる水分が多いときは、燃え残りが発生し、この燃え残りを焼却するため、焼却処理時間が長くなっている。そこで、前記燃え残りや煤と煙をなくすため、前記被焼却物のみによる燃焼ではなく、補助燃料を用いて、前記被焼却物の焼却を促進することがある。この場合、前記被焼却物の種別や重量により、焼却処理時間が異なるが、多めの焼却処理時間を設定することがある。すなわち、前記被焼却物が燃え尽きるまでの時間の余裕をもたせるように多めに設定しており、焼却処理を早くする自動化が困難であった。従来の焼却装置は、作業者が焼却処理時間を調節している(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、従来の焼却方法においては、焼却中においてダイオキシン類(平成11年法律第105号「ダイオキシン類対策特別措置法」第2条に規定された「ダイオキシン類」のことであり、「ポリ塩化ジベンゾフラン,ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン,コプラナ−ポリ塩化ビフェニル」を総称する表現として使用する。以下同じ)の発生がある。近年、前記ダイオキシン類の排出の抑制も必要となり、その排出抑制が急務となっている。
【0004】
また、焼却中に発生したダイオキシン類をほぼ800℃以上に加熱して熱分解する,いわゆる二次燃焼方式の焼却方法においては、前記二次燃焼後において、煙道内で熱分解した前記ダイオキシン類の再合成があり、前記ダイオキシン類の完全抑制が難しかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−240932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、被焼却物の焼却処理を自動化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被焼却物を収容する一次燃焼室と、前記被焼却物から発生させた乾留ガスを燃焼させる二次燃焼室とを備え、前記被焼却物を前記一次燃焼室内で乾留ガス化と置火の状態で焼却する焼却装置の制御方法であって、前記被焼却物の種別と重量に基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、投入する前記被焼却物の種別と重量が焼却処理ごとに異なっても、前記被焼却物の種別と重量を再入力するだけで、前記運転乾留工程時間と前記運転置火工程時間が決定されるので、焼却処理の運転を自動化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、産業廃棄物等の被焼却
物の焼却処理を行う焼却装置の制御方法に適用することができる。まず、第一の実施の形態を適用する前記焼却装置の構成について説明する。前記焼却装置は、基本的には、前記被焼却物を乾留ガス化方式および二次燃焼方式により焼却処理する装置である。具体的に説明すると、この焼却装置は、前記被焼却物を連続焼却するのではなく、つぎの手順でバッチ処理により焼却する。まず、前記被焼却物に着火し焼却を開始する。この焼却に際し、燃焼用空気の供給量を制限して供給することにより、前記被焼却物から乾留ガスを発生させながら焼却する。そして、この乾留ガスを二次燃焼させる。さらに、乾留ガスが発生しなくなった前記被焼却物を置火,いわゆる「おき」の状態で焼却する。
【0010】
前記焼却装置は、一次バーナを備えた一次燃焼室と、二次バーナを備えた二次燃焼室と、排ガス冷却用の空気導入量を調節する冷却用空気導入量調節手段を備えた冷却手段と、この冷却手段の下流側に設けた排ガスを誘引する誘引手段と、前記焼却装置を制御する制御器とにより構成されている。
【0011】
前記一次燃焼室は、前記被焼却物を収容して補助燃料を燃焼させることにより、前記被焼却物から乾留ガスを発生させ、この乾留ガスを貯留するものである。前記一次燃焼室は、前記被焼却物を収容するように、たとえば角型形状に構成されており、補助燃料を燃焼させる前記一次バーナを備えている。この一次バーナは、送風手段を備えておらず、前記誘引手段の誘引により、燃焼用空気が供給される構成としている。前記一次燃焼室には、この一次燃焼室内の圧力を検出する圧力検出手段が設けられている。
【0012】
前記二次燃焼室は、前記一次燃焼室において前記被焼却物の焼却中に発生したダイオキシン類を熱分解するとともに、前記一次燃焼室で発生した乾留ガスを燃焼させるものである。前記二次燃焼室は、たとえば角型形状で所定の容積を有して構成されており、補助燃料を燃焼させる前記二次バーナを備え、前記冷却手段と接続されている。前記二次バーナは、前記一次バーナと同様な構成としており、送風手段を備えておらず、前記誘引手段の誘引により、燃焼用空気が供給される構成としている。
【0013】
前記冷却手段は、前記ダイオキシン類が前記一次燃焼室内で熱分解した後、煙道内で再合成するのを防止するものである。前記冷却手段は、冷却用空気を導入する冷却用空気ダクトと、この冷却用空気ダクト内に設けた前記冷却用空気導入量調節手段と、この冷却用空気導入量調節手段の下流側に設けた冷却用空気と排ガスを混合する混合部とを備えている。前記冷却用空気導入量調節手段は、たとえばダンパとこのダンパの開度を調節するダンパモータとを備えている。そして、前記冷却手段の下流側には、この冷却手段通過後の排ガス(以下、「冷排ガス」と云う。)の温度を検出するガス温度検出手段が設けられている。
【0014】
前記誘引手段は、前記一次燃焼室内を大気圧以下の状態(以下、「負圧」と云う。)とすることにより、前記両燃焼室内へ燃焼用空気を供給するとともに、前記冷却手段内も負圧として前記冷却手段内へ排ガス冷却用の空気を導入するものである。前記誘引手段は、誘引駆動源,たとえば誘引ファンと、この誘引ファンを回転させるモータとを備えている。
【0015】
ここにおいて、前記誘引手段の変形例としては、エジェクタ方式による排ガスの誘引も好適である。
【0016】
前記制御器は、所定のプログラムにより前記焼却装置の運転制御を行うが、特に前記ガス温度検出手段の検出温度に基づいて、排ガス冷却用の空気導入量を調節する信号,たとえば前記ダンパの開度を調節する信号を出力する導入量調節部と、前記圧力検出手段の検出圧力値に基づいて、前記誘引手段の誘引能力を調節する信号を出力する誘引能力調節部
,たとえばインバータとを備えている。
【0017】
このような構成の前記焼却装置の運転について説明する。まず、前記誘引手段を作動させ、つぎに前記一次バーナを作動させて前記被焼却物の焼却を開始する。この焼却に際し、乾留工程として、燃焼用空気の供給量を制限して供給することにより、前記被焼却物から乾留ガスを発生させながら焼却し、この乾留ガスを前記二次燃焼室内で前記二次バーナを作動させて二次燃焼させる。そして、前記二次燃焼室からの排ガスを前記冷却手段により冷却する。さらに、置火工程として、前記一次燃焼室内で乾留ガスが発生しなくなった前記被焼却物を置火,いわゆる「おき」の状態で焼却する。そして、この置火工程においても前記二次バーナを作動させ、その排ガスを前記冷却手段により冷却する。
【0018】
この焼却処理において、前記第一の実施の形態の制御方法は、前記冷却手段通過後の排ガス温度に基づいて、前記冷却用空気導入量調節手段を作動させ、排ガス冷却用の空気導入量を調節するとともに、前記一次燃焼室内の圧力値に基づいて、前記誘引手段の誘引能力を調節する。
【0019】
この制御方法について詳細に説明する。まず、前記導入量調節部は、前記冷排ガスの温度を測定する。つぎに、前記導入量調節部は、前記冷排ガスの温度が所定の温度となるような信号,すなわち前記ダンパが所定の開度となるような信号を前記ダンパモータへ出力する。すると、前記混合部で冷却用空気により排ガスは、所定の目標温度,たとえば160℃の冷排ガスとなるように冷却される。この場合、前記目標温度160℃は、上下の温度幅を有してもよい。これ以降、前記導入量調節部は、前記冷排ガスの温度が継続してほぼ前記温度幅内の温度となるように、前記ダンパの開度を調節する。
【0020】
ここで、前記ダンパの開度が調節されることにより、前記一次燃焼室内の圧力値は変動する。前記一次燃焼室内の圧力値は、前記一次バーナによる補助燃料の燃焼に用いる空気の導入および前記被焼却物から乾留ガスを発生させるための一次燃焼用空気の導入のためにも一定であることが好ましい。そこで、前記誘引能力調節部は、前記一次燃焼室内の圧力値を所定の圧力値とするように前記誘引手段を調節する。具体的に説明すると、前記一次燃焼室内の圧力値に基づいて、たとえば前記誘引ファンの回転数を前記インバータにより調節する。
【0021】
これにより、排ガスの冷却が適正に行われるとともに、前記一次燃焼室内の圧力調節が自動化され、前記一次バーナの燃焼を安定して行うことができる。さらに、前記一次燃焼室と前記二次燃焼室および前記冷却手段は連通しているので、前記二次燃焼室内も圧力調節が自動化され、前記二次バーナの燃焼も安定して行うことができる。
【0022】
ここにおいて、前記一次燃焼室と前記二次燃焼室は連通しており、前記一次燃焼室内の圧力値と前記二次燃焼室内の圧力値とは、近似しているので、前記一次燃焼室内に設けた圧力検出手段の代わりに、前記二次燃焼室内に圧力検出手段を設け、この二次燃焼室内の圧力検出手段で代用することもできる。
【0023】
つぎに、前記第一の実施の形態の焼却装置を用いる第二の実施の形態の制御方法について説明する。この第二の実施の形態の制御方法においては、前記被焼却物を前記一次燃焼室内で前記乾留工程と前記置火工程で焼却するとき、前記誘引手段により導入する前記置火工程における燃焼用空気の導入量を前記乾留工程における燃焼用空気の導入量より多くするように制御する。具体的に説明すると、前記一次燃焼室の床面に満遍なく燃焼用空気を導入する一次燃焼室用空気導入手段から供給する燃焼用空気の導入量を前記置火工程のとき多くするように調節する。これにより、前記置火工程における焼却処理時間を早くすることができる。
【0024】
さらに、前記第二の実施の形態の変形例である第三の実施の形態について説明する。この第三の実施の形態の制御方法においては、前記焼却装置の運転を簡単に自動化して行うため、前記被焼却物の種別と重量に基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節する。具体的に説明すると、あらかじめ基本的なプログラムとして、前記被焼却物の種別と重量とに対応した標準乾留工程時間と標準置火工程時間とを設定し、前記制御器に入力しておく。たとえば、前記被焼却物の種別として、紙類,プラスチック類,厨芥類,草類等に区分し、それぞれの標準的な重量のときの前記標準乾留工程時間と前記標準置火工程時間とを対応させて設定し、前記制御器に入力しておく。
【0025】
そして、焼却処理に際し、前記焼却装置内へ投入する前記被焼却物の種別と重量とを前記制御器へ入力する。すると、前記制御器は、あらかじめ設定された前記標準的な重量と実際に投入した重量との重量割合を演算し、投入した前記被焼却物の種別と重量とに対応した運転乾留工程時間と運転置火工程時間を決定する。これにより、投入する前記被焼却物の種別と重量とが焼却処理ごとに異なっても、前記被焼却物の種別と重量を再入力するだけで、前記制御器が前記運転乾留工程時間と前記運転置火工程時間を決定するので、焼却処理の運転を自動化できる。
【0026】
ここにおいて、前記第三の実施の形態でより厳密に前記両運転時間を決定するに際し、前記被焼却物の発熱量を加味してこの発熱量と重量との積に基づいて、前記両運転時間を決定することも好適である。
【0027】
以上のように、これらの実施の形態によれば、有害物質を排出することなく、被焼却物の焼却時間を短縮し焼却処理を自動化することができる。
【0028】
さらに、より確実に前記ダイオキシン類の排出を抑制するために、前記焼却装置の最終処理として、前記誘引ファンの下流側に前記ダイオキシン類等を除去する有害物質除去手段を設けることも好適である。この有害物質除去手段は、たとえば前記ダイオキシン類を吸着する機能を有する吸着部材を備えている。前記誘引ファンが排出する前記冷排ガスを前記有害物質除去手段内へ押し込み、その内部に充填された前記吸着部材と接触させるものである。これにより、より一層前記ダイオキシン類の排出を抑制することができる。
【実施例】
【0029】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明を適用する焼却装置の概略構成を示す説明図である。図1において、乾留ガス化方式および二次燃焼方式により焼却処理する焼却装置1は、被焼却物2を収容する一次燃焼室3と、この一次燃焼室3内に収容した前記被焼却物2から発生させた乾留ガスを燃焼させるための二次燃焼室4と、この二次燃焼室4から排出する排ガスを冷却する冷却手段5と、この冷却手段5の下流側に設けた排ガスを誘引する誘引手段6と、この誘引手段6の下流側に設けたダイオキシン類等を除去する有害物質除去手段7と、前記焼却装置1を制御する制御器8とにより構成されている。
【0030】
前記一次燃焼室3は、前記被焼却物2を収容するように、たとえば角型形状の第一本体部9内に形成されている。この第一本体部9は、この第一本体部9の左側壁(図1の左側の壁)に設けられた前記被焼却物2を投入する第一入口10と、この第一入口10を密閉する扉(図示省略)と、前記第一本体部9の右側壁(図1の右側の壁)に配置された補助燃料を燃焼させる一次バーナ11と、前記第一本体部9の床面12(以下、「炉床12」と云う。)に接続された一次燃焼室用空気導入手段13と、前記一次バーナ11の排ガスと前記一次燃焼室3内で発生させた乾留ガスとを前記二次燃焼室4へ排出する第一出口14と、前記一次燃焼室3内の圧力値を検出する圧力センサ15とを備えている。この実施
例においては、前記一次燃焼室用空気導入手段13は、第一一次燃焼室用空気導入手段16と第二一次燃焼室用空気導入手段17とにより構成されている。
【0031】
前記第一本体部9は、所定容積の空間部を有するものとして構成されており、この空間部において、前記一次バーナ11で補助燃料を燃焼させるとともに、前記被焼却物2から発生する乾留ガスを貯留する。すなわち、前記一次燃焼室3は、前記被焼却物2を収容する容積および前記空間部からなる所定の容積を有する構成としている。
【0032】
そして、前記第一出口14は、排ガスおよび乾留ガスを排出するための連通部18を介して前記二次燃焼室4と連通している。前記連通部18には、前記二次燃焼室4内で乾留ガスを燃焼させるとき必要となる二次燃焼室用空気を導入する二次燃焼室用空気導入手段19を設けている。
【0033】
前記二次燃焼室4は、前記一次燃焼室3で発生した乾留ガスを燃焼させるように、たとえば角型形状で所定の容積を有する第二本体部20内に形成されている。前記第二本体部20は、前記連通部18と連通する乾留ガス入口である第二入口21と、補助燃料を燃焼させる二次バーナ22と、前記二次燃焼室4からの排ガスを排出する第二出口23とを備えている。この実施例においては、前記二次バーナ22は、第一二次バーナ24と第二二次バーナ25とにより構成されている。そして、前記第二出口23は、排ガスを導く第一ダクト26を介して前記冷却手段5と接続されている。
【0034】
前記冷却手段5は、縦型で筒状に形成されたケーシング27と、このケーシング27の左側面上部(図1の左側の上部)で前記第一ダクト26と連通する排ガスの入口である第三入口28と、前記ケーシング27の上方(図1の上部側)に配置された冷却用空気を導入する冷却用空気ダクト29と、この冷却用空気ダクト29内に設けた冷却用空気の導入量を調節する冷却用空気導入量調節手段であるダンパ30と、このダンパ30を駆動するダンパモータ31と、前記ダンパ30の下流側に設けた冷却用空気と排ガスを混合する混合部32と、この混合により冷却用の空気と混合された排ガス(以下、「冷排ガス」と云う。)を排出する第三出口33とを備えている。この第三出口33は、前記ケーシング27の底部(図1の下部側)に設けられており、前記冷排ガスを排出する第二ダクト34を介して前記誘引手段6と接続されている。前記第二ダクト34には、前記冷排ガスの温度を検出する温度センサ35が設けられている。
【0035】
前記誘引手段6は、前記第二ダクト34と連通する前記冷排ガスの吸引口である第四入口36と、誘引駆動源,たとえば誘引ファン37と、この誘引ファン37を回転させるモータ38と、前記冷排ガスを排出する第四出口39とを備えている。
【0036】
前記有害物質除去手段7は、前記ダイオキシン類を吸着する機能を有する吸着部材(図示省略)を備えている。すなわち、より確実に前記ダイオキシン類の排出を抑制するものである。具体的に説明すると、前記有害物質除去手段7は、前記焼却装置1の最終処理として、前記誘引ファン37の下流側において、前記第四出口39と接続されている。前記有害物質除去手段7は、前記誘引ファン37が排出する前記冷排ガスを前記吸着部材と接触させるものである。そして、処理後の前記冷排ガスを第五出口40から大気中へ排出する。
【0037】
前記制御器8は、所定のプログラムにより前記焼却装置1の運転制御を行うが、特に前記温度センサ35の検出温度に基づいて、排ガス冷却用の空気導入量を調節する信号,たとえば前記ダンパ30の開度を調節する信号を出力する導入量調節部41と、前記圧力センサ15の検出圧力値に基づいて、前記誘引ファン37の誘引能力を調節する信号を出力する誘引能力調節部であるインバータ42とを備えている。前記導入量調節部41は、前
記温度センサ35と第一回線43を介して接続されており、また前記ダンパモータ31と第二回線44を介して接続されている。前記インバータ42は、前記圧力センサ15と第三回線45を介して接続されており、また前記モータ38と第四回線46を介して接続されている。さらに、前記制御器8は、前記一次バーナ11,前記一次燃焼室用空気導入手段13,前記二次燃焼室用空気導入手段19,前記二次バーナ22および前記有害物質除去手段7とそれぞれ回線(図示省略)を介して接続されている。
【0038】
ここにおいて、前記一次バーナ11,前記二次燃焼室用空気導入手段19,前記ダンパ30および前記誘引ファン37は、前記焼却装置1の規模に応じて、適宜複数設けることも好適である。
【0039】
このような構成の前記焼却装置1の運転について説明する。まず、前記焼却装置1の運転開始に際し、前記被焼却物2を前記一次燃焼室3内へ収容する。つぎに、前記制御器8は、あらかじめ決められたプログラムにより、前記誘引ファン37を作動させる。これ以降、前記焼却装置1の運転中は、基本的に前記誘引ファン37を連続して作動させる。
【0040】
前記誘引ファン37を作動させることにより、前記両燃焼室3,4内を大気圧以下の状態(以下、「負圧」と云う。)とするとともに、前記冷却手段5内も負圧とする。すなわち、前記ダンパ30を所定の開度としたときに対応する前記誘引ファン37の作動に基づいて、前記両燃焼室3,4内を負圧とすることにより、前記両バーナ11,22の燃焼用空気が、前記両バーナ11,22のそれぞれの空気導入口(図1において、空気が供給される状態を示す白抜きの矢印の位置に設けている。符号省略)を介して、それぞれ供給される。それと同時に、前記冷却手段5の冷却用空気が、前記誘引ファン37および前記ダンパ30の作動に基づいて、前記冷却手段5内を負圧とすることにより供給される。さらに、前記誘引ファン37により、前記冷排ガスは、前記有害物質除去手段7へ導入される。
【0041】
つぎに、この焼却装置1の基本的焼却作業を説明する。この基本的焼却作業は、バッチ処理であり、このバッチ処理は、準備工程,予熱工程,乾留工程,置火工程およびパージ工程とからなる。そして、前記誘引ファン37および前記冷却手段5は、前記各工程全部において、基本的に連続して作動する。
【0042】
前記準備工程は、前記誘引ファン37を作動させ、この誘引ファン37の作動により、前記両燃焼室3,4内を所定の負圧の状態とするとともに、前記冷却手段5の作動を開始する工程である。そして、前記両燃焼室3,4内および前記冷却手段5内がマイナス0.3 kPaの負圧状態となる時間が経過すると、前記予熱工程を開始する。
【0043】
前記予熱工程は、前記二次バーナ22を作動させ,すなわち補助燃料を燃焼させることにより、前記二次燃焼室4内の温度をほぼ820℃以上とする工程である。すなわち、前記ダイオキシン類および乾留ガスを前記二次燃焼室4内へ導入する前に、この二次燃焼室4内の温度を前記ダイオキシン類を分解することができる温度以上に予熱する。
【0044】
つぎに、前記二次燃焼室4内の温度が820℃以上となると、前記予熱工程を終了して前記乾留工程へ移行する。この乾留工程では、前記一次燃焼室3内において、前記一次バーナ11により補助燃料を燃焼させて前記被焼却物2に着火し、着火が開始すると、前記一次バーナ11の作動を停止する。つぎに、前記一次燃焼室3内への燃焼用空気の供給量を制限して供給することにより、前記被焼却物2を蒸し焼き状態とし、この被焼却物2から燃焼成分,すなわち乾留ガスを発生させる。これ以降、前記一次バーナ11は、乾留ガスの発生を促す必要があるとき作動を再開する。そして、前記乾留工程は、前記一次燃焼室3内で乾留ガスを発生させながら、この発生した乾留ガスを前記二次燃焼室4内で燃焼
させ、つぎにこの排ガスを前記冷却手段5で冷却し、さらに前記有害物質除去手段7で前記ダイオキシン類を除去する工程である。
【0045】
この乾留工程において、前記一次バーナ11は、着火時に作動した後は停止しているが、乾留ガスの発生が少なくなり、前記二次燃焼室4内の温度が800℃以下になると、前記一次バーナ11は、適宜作動を再開して、前記被焼却物2を加熱することにより、乾留ガスの発生を促す。そして、前記二次燃焼室4内の温度が820℃になると停止する。また、前記二次バーナ22は、前記二次燃焼室4内が820℃以下となると作動を開始する。そして、前記二次燃焼室4内に導入された乾留ガス自体の燃焼が加わり、前記二次燃焼室4内の温度が、たとえば980℃を越えると、乾留ガスだけで燃焼を継続するので、前記二次バーナ22は、補助燃料を燃焼させる必要がないので停止する。
【0046】
ここで、この乾留工程の作用について詳細に説明する。この乾留工程は、前記被焼却物2を前記ダイオキシン類の発生が少ない乾留ガス化方式にて焼却処理するとともに、前記一次燃焼室3内で発生した前記ダイオキシン類を前記二次燃焼室4内で熱分解する。同時に前記二次燃焼室4内の燃焼において発生する前記ダイオキシン類もこの二次燃焼室4内をほぼ820℃以上とすることにより、この二次燃焼室4内で熱分解する。そして、前記二次燃焼室4で燃焼および分解処理した820℃以上の排ガスを前記冷却手段5へ導入し、前記混合部32において、冷却用空気と混合することにより急激に冷却し、たとえば温度が200℃以下となるように冷却する。これにより、320℃付近の温度帯で生じやすい前記ダイオキシン類の再合成を防止する。そして、前記誘引ファン37から前記有害物質除去手段7を介して、より確実に処理された排ガスとして、前記第五出口40から大気中へ排出する。
【0047】
ここにおいて、前記乾留工程は、前記二次燃焼室4内の温度に応じて、複数の段階に分割して行うことも好適である。たとえば、初期段階において、乾留ガスの発生が少なくて前記二次燃焼室4内の温度が低いときは、前記二次バーナ22を2つとも,すなわち前記両二次バーナ24,25の両方を燃焼させる。また、後期段階において、乾留ガスの発生が多くて前記二次燃焼室4内の温度が高いときは、前記二次バーナ22を1つだけ,たとえば前記第一二次バーナ24だけ燃焼させる。これにより、焼却処理を短時間で行うとともに、省エネルギーとなる。
【0048】
つぎに、所定時間にわたる前記乾留工程が経過した後、前記置火工程へ移行する。この置火工程は、乾留ガスが発生した残りの前記被焼却物2,すなわち炭化した状態の前記被焼却物2を置火の状態,いわゆる「おき」の状態で燃焼させる工程である。この置火工程において、前記一次バーナ11は、前記一次燃焼室3内で「おき」の状態の前記被焼却物2の焼却を促す必要があるとき、補助燃料による燃焼を再開する。そして、前記二次バーナ22は、前記二次燃焼室4内の温度を820℃から980℃に維持するように補助燃料を燃焼させる。
【0049】
この置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記二次燃焼室4からの820℃以上の排ガスは、前記冷却手段5へ導入される。すなわち、冷却用空気と混合され、急激に冷却され、たとえば200℃以下に冷却される。これにより、この置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記ダイオキシン類の再合成を防止する。そして、前記誘引ファン37から前記有害物質除去手段7を介して、より確実に処理された排ガスとして前記第五出口40から大気中へ排出する。
【0050】
つぎに、前記置火工程の後、前記一次燃焼室3内の温度が所定の温度,たとえば320℃以下になると、前記一次燃焼室3からの排ガスの発生がなくなり二次燃焼させる必要がないので、前記二次バーナ22を停止し、前記パージ工程へ移行する。このパージ工程は
、前記両燃焼室3,4および前記冷却手段5を冷却する工程である。このパージ工程においては、前記両バーナ11,22をともに停止させ、前記誘引ファン37のみ作動させて空気を導入することにより、前記両燃焼室3,4および前記冷却手段5を冷却する。そして、前記一次燃焼室3内の温度がほぼ280℃以下となるか,あるいは所定時間にわたる前記パージ工程が終了すると、前記一次燃焼室3内に残った未燃物を取り出し、焼却処理を終了する。
【0051】
この焼却処理において、まず第一実施例の制御方法について説明する。この第一実施例の制御方法は、前記冷却手段5通過後の排ガス温度に基づいて、前記ダンパ30を作動させ、排ガス冷却用の空気導入量を調節するとともに、前記一次燃焼室3内の圧力値に基づいて、前記誘引ファン37の誘引能力を調節する。
【0052】
この制御方法について詳細に説明する。まず、前記導入量調節部41は、前記温度センサ37により前記冷排ガスの温度を測定する。つぎに、前記導入量調節部41は、前記冷排ガスの温度が所定の温度となるような信号,すなわち前記ダンパ30が所定の開度となるような信号を前記ダンパモータ31へ出力する。すると、前記ダンパモータ31が前記ダンパ30の開度を変えることにより、前記冷却用空気により排ガスは、混合部32で所定の温度範囲,たとえば160℃プラスマイナス20℃の温度幅内となる冷排ガスとなるように冷却される。これ以降、前記導入量調節部41は、前記冷排ガスの温度が継続してほぼ160℃となるように、前記ダンパ30の開度を調節する。
【0053】
ここで、前記ダンパ30の開度が調節されることにより、前記一次燃焼室3内の圧力値は変動する。前記一次燃焼室3内の圧力値は、前記一次バーナ11による補助燃料の燃焼に用いる空気の導入および前記被焼却物2から乾留ガスを発生させるための一次燃焼用空気の導入のためにも一定であることが好ましい。そこで、前記インバータ42は、前記一次燃焼室3内の圧力値を所定の圧力値とするように、前記圧力センサ15の検出値に基づいて、前記モータ38の回転数を変えて前記誘引ファン37の誘引能力を調節し、前記一次燃焼室3内の圧力値をほぼ一定に維持する。
【0054】
これにより、排ガスの冷却が適正に行われるとともに、前記一次燃焼室3内の圧力調節が自動化され、前記一次バーナ11の燃焼を安定して行うことができるとともに、乾留ガス化も安定して行うことができる。さらに、前記一次燃焼室3と前記二次燃焼室4および前記冷却手段5は連結されているので、前記二次燃焼室4内も圧力調節が自動化され、前記二次バーナ22の燃焼も安定して行うことができる。
【0055】
つぎに、第二実施例の制御方法について説明する。この第二実施例の制御方法においては、前記被焼却物2を前記一次燃焼室3内で前記乾留工程と前記置火工程で焼却するとき、前記誘引ファン37により導入する前記置火工程における燃焼用空気の導入量を前記乾留工程における燃焼用空気の導入量より多くするように制御する。具体的に説明すると、前記床面12に満遍なく燃焼用空気を導入するように配置されている前記一次燃焼室用空気導入手段13から供給する燃焼用空気の導入量を前記置火工程のとき多くするように調節する。これにより、前記置火工程における焼却処理時間を早くすることができる。
【0056】
さらに、前記第二実施例の変形例である第三実施例について説明する。この第三実施例の制御方法においては、2つのパターンについて説明する。まず、第一パターンとして、前記焼却装置1の運転を簡単に自動化して行うため、前記被焼却物2の種別と重量に基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節する。具体的に説明すると、あらかじめ基本的なプログラムとして、前記乾留工程時間と前記置火工程時間とを設定し、前記制御器8に入力しておく。たとえば、前記被焼却物2の種別として、紙類,プラスチック類,厨芥類,草類等に区分し、それぞれの標準的な重量により標
準乾留工程時間と標準置火工程時間とを設定し、前記制御器8に入力しておく。具体例として、前記紙類のときは、重量が100キログラムであるとき、前記標準乾留工程時間を90分とし、また前記標準置火工程時間を60分と設定しておく。
【0057】
そして、焼却処理に際し、前記被焼却物2の種別および前記一次燃焼室3内へ投入する前記被焼却物2の重量を前記制御器8へ入力する。前記制御器8は、あらかじめ設定された重量と実際に投入した重量とを比較して、前記被焼却物2の種別に対応した運転乾留工程時間と運転置火工程時間を決定する。たとえば、前記紙類の焼却処理に際し、投入した重量が80キログラムであるとき、前記制御器8は、標準の重量との重量割合を演算し、この場合80%であるので、前記運転乾留工程時間を72分とし、また前記運転置火工程時間を48分と決定する。これにより、投入する前記被焼却物2の種別と重量が焼却処理ごとに異なっても、前記被焼却物2の種別と重量を再入力するだけで、前記制御器8が前記運転乾留工程時間と前記運転置火工程時間をそれぞれ決定するので、焼却処理の運転を自動化できる。
【0058】
つぎに、第二パターンについて説明する。この第二パターンは、前記第一パターンよりさらに厳密に制御するときのものである。すなわち、前記被焼却物の発熱量も加味して制御する。前記焼却装置1の運転を簡単に自動化して行うため、前記被焼却物2の種別と発熱量および重量とに基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節する。具体的に説明すると、あらかじめ基本的なプログラムとして、前記乾留工程時間と前記置火工程時間とを設定し、前記制御器8に入力しておく。たとえば、前記被焼却物2の種別として、紙類,プラスチック類,厨芥類,草類等に区分し、それぞれの標準的な発熱量と重量とにより標準乾留工程時間と標準置火工程時間とを設定し、前記制御器8に入力しておく。具体例として、前記紙類のときは、その発熱量が18900キロジュール/キログラム,重量が100キログラムであるとき、前記標準乾留工程時間を90分とし、また前記標準置火工程時間を60分と設定しておく。
【0059】
そして、焼却処理に際し、前記被焼却物2の種別および前記一次燃焼室3内へ投入する前記被焼却物2の発熱量および重量を前記制御器8へ入力する。前記制御器8は、あらかじめ設定された標準的な前記被焼却物2の発熱量および重量と実際に投入した前記被焼却物2の発熱量および重量とを比較して、前記被焼却物2の種別に対応した運転乾留工程時間と運転置火工程時間を決定する。たとえば、前記紙類の焼却処理に際し、湿った状態の紙類であり、発熱量が17010キロジュール/キログラム,投入した重量が80キログラムであるとき、前記制御器8は、標準の発熱量および重量との割合を演算し、この場合発熱量が90%,重量は80%であるので、前記運転乾留工程時間を約65分とし、また前記運転置火工程時間を約43分と決定する。これにより、投入する前記被焼却物2の種別と発熱量および重量とが焼却処理ごとに異なっても、前記被焼却物2の種別と発熱量および重量を再入力するだけで、前記制御器8が前記運転乾留工程時間と前記運転置火工程時間をそれぞれ決定するので、焼却処理の運転を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明を適用する焼却装置の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 焼却装置
2 被焼却物
3 一次燃焼室
4 二次燃焼室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼却物を収容する一次燃焼室と、前記被焼却物から発生させた乾留ガスを燃焼させる二次燃焼室とを備え、前記被焼却物を前記一次燃焼室内で乾留ガス化と置火の状態で焼却する焼却装置の制御方法であって、
前記被焼却物の種別と重量に基づいて、前記乾留ガス化の焼却処理時間と前記置火の状態の焼却処理時間を調節することを特徴とする焼却装置の制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−248046(P2007−248046A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127574(P2007−127574)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2002−267935(P2002−267935)の分割
【原出願日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】