説明

焼結助剤、焼結体及セラミックコンデンサ

【課題】低温で焼成しても特性を損なうことなく緻密化した焼結体を得ることができる焼結助剤、焼結体及セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】Si化合物からなる第1成分、B化合物及びAl化合物の少なくともいずれかを含む第2成分、Ba化合物、Zn化合物及びカルシウムCa化合物のうち少なくとも1つを含む第3成分のモル比による組成比は、図1に表される三角図における、点A(X、Y、Z)=(0.21、0.37、0.42)、点B(X、Y、Z)=(0.364、0.192、0.444)、点C(X、Y、Z)=(0.47、0.174、0.356)、点D(X、Y、Z)=(0.618、0.182、0.20)、点E(X、Y、Z)=(0.618、0.228、0.154)および点F(X、Y、Z)=(0.261、0.375、0.364)で囲まれる範囲内を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結助剤、この焼結助剤を添加した焼結体、及びこの焼結体を誘電体層として用いたセラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミックコンデンサにおいて、誘電体層の材料として、チタン酸バリウムがよく用いられているが、この種の粉末は、そのままでは焼結し難いことから、焼結を促進させる焼結助剤を添加した上で焼成を行っている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
近年、電子回路の小型化、高密度化に伴い、セラミックコンデンサの小型大容量化が強く求められている。そして、セラミックコンデンサの小型大容量化のために、内部電極層及び誘電体層の薄層化と積層数の増加が試みられている。しかし、内部電極の薄層化が進むと、特に内部電極の材料として安価なNiやNi合金を用いた場合には、Niの球状化収縮による内部電極の切れやデラミネーション(層間剥離)などが起こりやすくなり、それに伴い容量が低下するという問題がある。これを防ぐべく焼成温度を下げることが考えられるが、焼成温度が低いと、焼結しない、緻密な焼結体が得られない、電気特性が低下するといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2002−338332号公報
【特許文献2】特開2002−338333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温で焼成しても特性を損なうことなく緻密化した焼結体を得ることができる焼結助剤、焼結体及セラミックコンデンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、シリコン(Si)の化合物からなる第1成分と、ホウ素(B)の化合物及びアルミニウム(Al)の化合物の少なくともいずれかを含む第2成分と、バリウム(Ba)の化合物、亜鉛(Zn)の化合物及びカルシウム(Ca)の化合物のうち少なくとも1つを含む第3成分と、を含む焼結助剤であって、前記第1成分のモル比をX、前記第2成分のモル比をY、前記第3成分のモル比をZとした場合、これら第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、点(X、Y、Z)=(1、0、0)、点(X、Y、Z)=(0、1、0)および点(X、Y、Z)=(0、0、1)の3点を頂点とする三角図における、点A(X、Y、Z)=(0.21、0.37、0.42)、点B(X、Y、Z)=(0.364、0.192、0.444)、点C(X、Y、Z)=(0.47、0.174、0.356)、点D(X、Y、Z)=(0.618、0.182、0.20)、点E(X、Y、Z)=(0.618、0.228、0.154)および点F(X、Y、Z)=(0.261、0.375、0.364)で囲まれる範囲内を満たすことを特徴とする焼結助剤が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、チタン酸バリウムを主成分として含む原料に、上記焼結助剤を添加して焼成してなることを特徴とする焼結体が提供される。
【0007】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、複数の電極と、これら電極間に設けられ、上記焼結体からなる誘電体層と、を備えたことを特徴とするセラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温で焼成しても特性を損なうことなく緻密化した焼結体を得ることができる焼結助剤、焼結体及セラミックコンデンサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る焼結助剤は、シリコン(Si)の化合物(例えばSiO)からなる第1成分と、ホウ素(B)の化合物(例えばB)及びアルミニウム(Al)の化合物(例えばAl)の少なくともいずれかを含む第2成分と、バリウム(Ba)の化合物(例えばBaCO)、亜鉛(Zn)の化合物(例えばZnO)及びカルシウム(Ca)の化合物(例えばCaCO)のうち少なくとも1つを含む第3成分と、を有する。
【0011】
第1成分のモル比をX、第2成分のモル比をY、第3成分のモル比をZとした場合、これら第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、点(X、Y、Z)=(1、0、0)、点(X、Y、Z)=(0、1、0)および点(X、Y、Z)=(0、0、1)の3点を頂点とする図1に表される三角図における、点A(X、Y、Z)=(0.21、0.37、0.42)、点B(X、Y、Z)=(0.364、0.192、0.444)、点C(X、Y、Z)=(0.47、0.174、0.356)、点D(X、Y、Z)=(0.618、0.182、0.20)、点E(X、Y、Z)=(0.618、0.228、0.154)および点F(X、Y、Z)=(0.261、0.375、0.364)で囲まれる範囲内を満たす。
【0012】
本発明者等は、上記第1〜第3成分の組成比(モル比)を様々に変えた13個の焼結助剤のサンプルA〜Mを試作した。各サンプルA〜Mにおける、第1〜第3成分の組成比(モル比)を表1に表す。
【0013】
【表1】

【0014】
サンプルAにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点A(X、Y、Z)=(0.21、0.37、0.42)で表される。
【0015】
サンプルBにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点B(X、Y、Z)=(0.364、0.192、0.444)で表される。
【0016】
サンプルCにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点C(X、Y、Z)=(0.47、0.174、0.356)で表される。
【0017】
サンプルDにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点D(X、Y、Z)=(0.618、0.182、0.20)で表される。
【0018】
サンプルEにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点E(X、Y、Z)=(0.618、0.228、0.154)で表される。
【0019】
サンプルFにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点F(X、Y、Z)=(0.261、0.375、0.364)で表される。
【0020】
サンプルGにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点G(X、Y、Z)=(0.31、0.285、0.405)で表される。
【0021】
サンプルHにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点H(X、Y、Z)=(0.365、0.245、0.39)で表される。
【0022】
サンプルIにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点I(X、Y、Z)=(0.4、0.24、0.36)で表される。
【0023】
サンプルJにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点J(X、Y、Z)=(0.45、0.245、0.305)で表される。
【0024】
サンプルKにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点K(X、Y、Z)=(0.204、0.224、0.573)で表される。
【0025】
サンプルLにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点L(X、Y、Z)=(0.416、0.102、0.482)で表される。
【0026】
サンプルMにおける第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、図1の三角図において点M(X、Y、Z)=(0.624、0.139、0.237)で表される。
【0027】
焼結助剤の各サンプルA〜Mは、図2に表すステップにしたがって製造される。
【0028】
まず、ステップS1として、表1に表す組成比に基づいて、各成分の化合物を調合し、乾式混合を行い、粉末を得る。または、各成分の化合物を調合し、湿式混合・粉砕を行いスラリーとし、このスラリーを脱水乾燥して、粉末を得るようにしてもよい。
【0029】
その得られた粉末を例えば(Pt−Rh)からなるルツボに入れ、大気中、1200〜1700℃で、3〜4時間溶融し(ステップS2)、その溶湯を鋳型に流し込み(ステップS3)、急冷してガラス化させた(ステップS4)。このガラスを粉砕して(ステップS5)、焼結助剤の各サンプルA〜Mを得た。
【0030】
主成分としてチタン酸バリウム(BaTiO)を、副成分としてバリウムの炭酸塩(BaCO)、ディスプロシウムの酸化物(DyO3)、マグネシウムの酸化物(MgO)、マンガンの酸化物(Mn)を含む原料に、前述した図1に表される三角図における点A、BおよびCで囲まれる範囲内を満たす組成を有する焼結助剤を添加し、それらを、例えば還元性雰囲気で焼成してなる。
【0031】
前述した図1に表される三角図における点A、B、C、D、EおよびFで囲まれる範囲内を満たす組成比の焼結助剤を添加して、チタン酸バリウムを主成分とする粉末を焼成することで、低温(1050℃以下)の焼成温度であっても焼結を促進させることができ、緻密で、また電気特性の悪化も抑制された焼結体を得ることができる。さらに、低温での焼成により、製造コストの低減も図れる。
【0032】
図3は、本実施形態に係るセラミックコンデンサの断面構造を例示する模式断面図である。
【0033】
このセラミックコンデンサは、対向する内部電極2間に、前述した図1に表される三角図における点A、B、C、D、EおよびFで囲まれる範囲内を満たす組成比の焼結助剤を添加して焼成された焼結体を含む誘電体層1が設けられた構造を有する。これは、その焼結体をシート状に成形したグリーンシートの片面に内部電極2を形成し、これを複数枚積層して焼成することで得られる。また、この積層体の側面には、内部電極2の端部に接続された外部電極3、4が設けられている。
【0034】
内部電極2や外部電極3、4の材料としては、Cu、Ni、W、Mo等の金属もしくはこれらの合金、In−Ga、Ag、Ag−10Pd合金等、または、カーボン、グラファイト、カーボンとグラファイトの混合物等を用いることができる。
【0035】
内部電極2は、例えば、上記の主たる材料からなる粉末に、有機バインダ、分散剤、有機溶剤、必要に応じて還元剤等を所定量加えた後に混練し、所定の粘度とした導電ペーストを、グリーンシートの片面に所定のパターンとなるように印刷し、還元雰囲気中で焼成することにより形成される。内部電極2としては、比較的安価なNiまたはNi合金が望ましい。
【0036】
また、外部電極3、4としては、低抵抗で安価であることからCuが望ましい。外部電極3、4は、内部電極2及び誘電体層1からなる積層体に対して、その外側面に塗布法などを用いて形成される。
【0037】
本実施形態に係るセラミックコンデンサによれば、1050℃以下の低温焼成が可能になることから、特にNiやNi合金を内部電極2に用いた場合でも、Niの球状化収縮を抑制でき、これに起因する電極の切れやデラミネーションなどの構造欠陥を防げる。これにより、コンデンサの容量低下を抑制できる。また、内部電極2として、空気中で容易に酸化されやすい卑金属であるNiまたはNi合金を用いた場合には、そのNiまたはNi合金が酸化されないような還元性雰囲気で焼成する必要があるが、この場合に、前述した本実施形態に係る焼結助剤を添加して焼成された焼結体は耐還元性に優れ、この焼結体を用いた誘電体層1の還元を抑制できる。これにより、誘電体層1の比誘電率を高くでき、セラミックコンデンサの容量を大きくできる。
【0038】
次に、本実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一例について説明する。
【0039】
まず、誘電体層の主成分BaTiOの原料として、例えばBaCO、TiOを調合する。
【0040】
次に、上記主成分の化合物をボールミルに入れ、水を加えて湿式で約20時間混合・粉砕を行いスラリーとする。そして、このスラリーを脱水・乾燥し、1000℃以上で仮焼した後、粉砕して、平均粒子径が0.3μm未満となるように整粒した。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡によって粉末を観察し、100個の粒子の粒子径を測長して求めた。
【0041】
次に、上記主成分に対して、副成分としてBaCO、Dy、MgO、Mnの粉末と、さらに、前述の焼結助剤の粉末と、をボールミルに入れ、トルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダおよび可塑剤とともに適度な粘度になるまで混合し、ドクターブレード法によりグリーンシートを作製した。
【0042】
次に、各グリーンシート上に、Ni粉末からなる導電ペーストを用いて内部電極を所定形状にスクリーン印刷した後、その導電ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、熱圧着して一体化し、積層体を作製した。
【0043】
そして、その積層体を空気中にて加熱することで有機バインダを除去した後、1100℃の還元性雰囲気で2時間焼成した後、さらに1000℃のNガス雰囲気中で2時間再酸化処理し、この後、内部電極が露出している積層体の端面部に外部電極を焼き付け、図3に例示される構造が得られる。
【0044】
本発明者等は、前述した焼結助剤のサンプルA〜Mを添加して得た焼結体について、比誘電率ε、誘電損失tanδ、比抵抗、容量変化率、密度を測定し、その評価を行った。その結果を、表2、表3に表す。
【0045】
【表2】

【表3】

【0046】
評価試料は、以下のようにして作製した。主成分としてチタン酸バリウムを、副成分としてBaCO、Dy、MgO、Mnを、さらに、前述のサンプルA〜Mを焼結助剤として含むグリーンシートを1(cm)角に切り、厚みが1(mm)となるように積み重ねた。次に、それを1000(kg/cm)の圧力で成型した。次に、樹脂成分を焼却するため、300℃で10時間、大気中で焼成を行い、その後、N、H及びHOからなる混合ガスの還元雰囲気中で、表2に示す焼成温度で還元雰囲気中で2時間焼成した。この後、窒素ガス中で、1000℃に安定させ2時間再酸化処理を行った。
【0047】
各評価試料において、主成分であるチタン酸バリウムにおける(Ba/Ti)比は、0.998から1.003である。その主成分に対して、Ba元素の添加量は1.0モルパーセント、Dy元素の添加量は0.9モルパーセント、Mg元素の添加量は1.1モルパーセント、Mn元素の添加量は0.2モルパーセントである。焼結助剤の各サンプルA〜Mの、主成分に対する添加量(重量部)は、表2に表すように様々に変えた。
【0048】
密度(g/cm)は、アルキメデス法を用いて測定した。
各種電気特性の測定は、上記評価試料の両端面にIn−Gaを塗布してコンデンサ構造とした上で行った。
【0049】
比誘電率εは、周波数1(kHz)、電圧1.0(V)の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び電極面積から算出した。
【0050】
誘電損失tanδ(%)は、上記比誘電率と同一条件下で、LCRメーターを用いて測定した。
【0051】
比抵抗(Ω・cm)は、25℃の条件下で、直流250[V]の電圧を1分間印加し測定した。
【0052】
密度が5.7(g/cm)以上、比誘電率が1600以上、誘電損失が3.0(%)以下の内、少なくともいずれかを満たさない場合、所望の特性が得られていないとして、評価結果を「NG」とした。
【0053】
表2によれば、図1に表される三角図における点A、B、C、D、EおよびFで囲まれる範囲内を満たす組成比の焼結助剤であれば、主成分(チタン酸バリウム)に対する添加量を適切に設定することで、上記各条件を満たす緻密で電気特性にも優れた焼結体及びコンデンサを、1050℃以下の低温焼成で得られるとの結果が得られた。
【0054】
また、本発明者等は、誘電体層と電極とを積層した試料についての各種評価を行った。この結果を、表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
誘電体層一層あたりの厚さは5μmで、有効誘電体層は10層とした。また、一層あたりの内部(対向)電極面積は、0.91[mm]とした。
誘電体層は、表2を参照して前述した評価試験と同様に、以下のようにして作製した。主成分としてチタン酸バリウムを、副成分としてBaCO、Dy、MgO、Mnを、さらに、表4に表される種類の焼結助剤を含むスラリーをドクターブレード法によりペットフィルムに塗布し、焼成後5μmとなるグリーンシートを成型した。得られたグリーンシートに内部電極であるNiペーストを印刷により形成した。これらを10層に積層し、熱圧着することにより積層体を得た。次いで、この積層体を幅2.0mm、長さが3.8mm、厚さ0.6mmとなるように加工した。次にこれを大気中にて、300℃で10時間加熱して勇気バインダ(樹脂成分)を焼却した。その後、N、H及びHOからなる混合ガスの還元雰囲気中で、表4に示す焼成温度で2時間焼成した。次に窒素ガス雰囲気中で、1000℃に安定させ2時間再酸化処理を行った。その後、焼結させた積層体の外側面(対向する位置にある切断面)にCuからなる導電性ペーストを塗布し、Nガス雰囲気中で650℃の温度で焼き付け、図3に示すように内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、積層セラミックコンデンサを作成した。各評価試料において、主成分であるチタン酸バリウムにおける(Ba/Ti)比は、0.998である。その主成分に対して、Ba元素の添加量は、Ba化合物のBaに換算して1.0モル部であり、Dy元素の添加量は、Dy化合物のDyに換算して0.9モル部であり、Mg元素の添加量は、Mg化合物のMgに換算して1.1モル部であり、Mn元素の添加量は、Mn化合物のMnに換算して0.2モル部である。焼結助剤の各サンプルの、主成分に対する添加量(重量部)は、表4に表す通りである。各種特性の測定方法で、比誘電率εは、周波数1(kHz)、電圧1.0(V)の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び内部電極面積から算出した。誘電損失tanδ(%)は、比誘電率と同一条件下で、LCRメーターを用いて測定した。容量変化率は、各積層セラミックコンデンサを恒温槽に入れ、−55℃から85℃の各温度において、周波数1(kHz)、電圧1.0(V)の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定した。
【0057】
表4の結果より、前述した本実施形態に係る焼結助剤を用いて得られた積層体は、EIA(Electronic Industries Association)のX5R規格(−55℃から85℃の容量変化率(25℃基準)がプラスマイナス15%)に適合することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る焼結助剤に含まれる第1〜第3成分の組成範囲を表す三角図である。
【図2】本発明の実施形態に係る焼結助剤の製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るセラミックコンデンサの断面構造を例示する模式断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…誘電体層、2…内部電極、3,4…外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)の化合物からなる第1成分と、ホウ素(B)の化合物及びアルミニウム(Al)の化合物の少なくともいずれかを含む第2成分と、バリウム(Ba)の化合物、亜鉛(Zn)の化合物及びカルシウム(Ca)の化合物のうち少なくとも1つを含む第3成分と、を含む焼結助剤であって、
前記第1成分のモル比をX、前記第2成分のモル比をY、前記第3成分のモル比をZとした場合、これら第1成分、第2成分、第3成分のモル比による組成比(X、Y、Z)は、点(X、Y、Z)=(1、0、0)、点(X、Y、Z)=(0、1、0)および点(X、Y、Z)=(0、0、1)の3点を頂点とする三角図における、点A(X、Y、Z)=(0.21、0.37、0.42)、点B(X、Y、Z)=(0.364、0.192、0.444)、点C(X、Y、Z)=(0.47、0.174、0.356)、点D(X、Y、Z)=(0.618、0.182、0.20)、点E(X、Y、Z)=(0.618、0.228、0.154)および点F(X、Y、Z)=(0.261、0.375、0.364)で囲まれる範囲内を満たすことを特徴とする焼結助剤。
【請求項2】
チタン酸バリウムを主成分として含む原料に、請求項1記載の焼結助剤を添加して焼成してなることを特徴とする焼結体。
【請求項3】
複数の電極と、
前記電極間に設けられ、請求項2記載の焼結体からなる誘電体層と、
を備えたことを特徴とするセラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記電極は、NiまたはNi合金を含むことを特徴とする請求項3記載のセラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−156182(P2008−156182A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349415(P2006−349415)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】