説明

熱プレス装置と熱プレス方法と熱プレスによるパターン転写方法

【課題】平プレス装置を用いて熱プレスをする際に、加熱時や冷却時に被プレス体を動かすことなく、必要時に加熱部と冷却部が分離するようにして、加熱加圧の後、短時間で冷却部を冷やすことができるようにする。
【解決手段】挟み込み部分6側から一方のプレス面7と冷却部8と冷却部8に離接可能な加熱部9とがこの順で配されて、一方のプレス面7と対向する他方のプレス面11との間で被プレス体12を挟み込みし、一方のプレス面7を、冷却部8と一体となった加熱部9からその冷却部8を介する熱伝導により加熱し、冷却部8からの加熱部9の分離により加熱部9から冷却部8への熱伝導を不能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱プレス装置と熱プレス方法に関し、特に、樹脂にスタンパーでパターンなどを熱転写する熱プレスのための装置と方法、及び熱プレスによるパターン転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から合成樹脂のシートや板材などを被プレス体とし、この被プレス体の表面に微細パターンを転写する方法としては、平プレス、ロールプレス方式がある。この内、前記ロールプレス方式ではロールにつけたスタンパー(転写パターンが形成された版やその版型)を加熱し、前記被プレス体に押し付けし、または別のロールとで挟み込んで加圧し、ロールを回転、またはロール自体を転動させて進めることで転写を行う方式である。この方式での加圧は、被プレス体と接している線上で行われ、加圧面積が少ないこと、斜め方向に剥離することから、剥離性は良いものとなっている。
【0003】
しかしながら、ロールプレス方式では、冷却を行うことができないため、転写、剥離後に被プレス体の表面の合成樹脂が高温の状態であり、この表面の合成樹脂が放冷するまでの間に転写されたパターンの低下が起こっていて、その転写性は良くないものであった。
このロールプレス方式に対し平プレス方式は生産性が劣るが、加熱し、加圧を行った後に、スタンパーを被プレス体から離さない状態にして、被プレス体に対する冷却、特にその表面の合成樹脂に対する冷却を行なうことが可能である。そのため、スタンパーのパターンを被プレス体の表面に正確に転写することが可能である。
【0004】
上記平プレス方式を実施する平プレス装置は一般に、被プレス体をプレスするプレートにヒーターが組み込まれているとともに、そのプレートに冷却のための穴が開けられていて、必要時に冷却水を流す構造になっている。そして、前記プレートは加圧に耐える剛性を持たすため厚く、また、転写時に温度を安定させるため熱容量を大きくするのにある程度の大きさを有するものになっている。
しかし、上記平プレス装置でのプレートは大きいほど冷却には時間がかかり、被プレス体への転写のための一サイクルの時間(タクトタイム)が長くなるだけでなく、被転写体に余計な熱を与えていて、被プレス体に反り、うねり、転写部分の周りでの段差などを生じさせるなどの悪影響を及ぼしている。
一サイクルの時間を短くする方法として、加熱部と冷却部を分けて、加熱後に被プレス体を冷却部へ搬送し冷却するという方法もあるが、加圧した状態で搬送する方法は装置が大型になってしまうという欠点がある。
【0005】
加熱部と冷却部とを分けながらも、被プレス体を動かさずに転写を完了させる装置として特許文献1がある。特許文献1に示された技術では加熱ブロックに対し、冷却ブロックが転写部分(被プレス体の挟み込み部分側)とは反対側にあり、加熱の際には加熱ブロックと冷却ブロックとの間に隙間を形成して冷却ブロックを加熱することがないようにしている。よって、冷却ブロックが加熱されない分、加熱時の熱容量は小さくなっている。
しかしながら、熱プレス装置としての平プレス装置では、加熱ブロックは加圧ブロックとしての役割も兼ね備えていて、大きなブロックとなっている。そのため、熱プレスによる転写の一サイクルごとに、その大きな加熱ブロック全体を冷却しなければならず、一サイクル時間の大幅な短縮には繋がらないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−136333
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、平プレス装置を用いて熱プレスをする際に、加熱時や冷却時に被プレス体を動かすことなく、必要時に加熱部と冷却部が分離するようにして、加熱加圧の後、短時間で冷却部を冷やすことができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、請求項1の発明は、上プレス部と下プレス部とを備えていて、前記上下のプレス部の内の少なくとも一方のプレス部は、前記上ブレス部と下プレス部との間の被プレス体の挟み込み部分側からプレス面と冷却部とこの冷却部に離接可能な加熱部とが少なくともこの順で配されて、前記一方のプレス部のプレス面と他方のブレス部のプレス面との間で被プレス体を挟み込みし、前記一方のプレス部のプレス面を、冷却部と一体となった加熱部から前記冷却部を介する熱伝導により加熱し、冷却部からの前記加熱部の分離により加熱部から冷却部への熱伝導を不能とする構成を有することを特徴とする熱プレス装置であり、この熱プレス装置を提供して上記課題を解消するものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、上プレス部と下プレス部とを備えていて、前記上下のプレス部の内の少なくとも一方のプレス部は、前記上ブレス部と下プレス部との間の被プレス体の挟み込み部分側からプレス面と冷却部とこの冷却部に離接可能な加熱部とが少なくともこの順で配されて、前記一方のプレス部のプレス面と他方のブレス部のプレス面との間で被プレス体を挟み込みする熱プレス装置により、被プレス体を加熱加圧するにあたり、前記一方のプレス部のプレス面を、冷却部と一体となった加熱部から前記冷却部を介する熱伝導により加熱して前記被プレス体を熱プレスした後、前記冷却部側からの被プレス体に対してのプレス状態を維持しながら冷却部から加熱部を離して、冷却部を冷却することを特徴とする熱プレス方法であり、この熱プレス方法を提供して上記課題を解消するものである。
【0009】
また、請求項3の発明は、上記発明において、上記一方のプレス部のプレス面は、上記被プレス体にパターンを転写するためのスタンパーが設けられているものである。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項2または3の発明の熱プレス方法における上記被プレス体を、該被プレス体の少なくとも上記一方のプレス部のプレス面に相対する表面が熱可塑性樹脂であるものとし、この熱可塑性樹脂からなる表面に前記プレス面に形成されているパターンを転写する熱プレスによるパターン転写方法であり、このパターン転写方法により、上記課題を解消するものである。
【0011】
さらに、請求項5の発明は、請求項4の発明において、上記被プレス体の熱可塑性樹脂からなる表面側は熱可塑性樹脂が積層されているものであって、表面層の熱可塑性樹脂はガラス転移温度をTg1とし、前記表面層の下層にした熱可塑性樹脂はガラス転移温度をTg2とし、前記表面層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度と前記下層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度とが、Tg1<Tg2の関係であり、前記表面層の熱可塑性樹脂の面に相対するプレス面からのプレス温度がTg1以上とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、冷却部と加熱部とが離接可能に配されていて、冷却部から加熱部が離れて冷却部への熱伝導を不能とするので、冷却部に熱が供給されない状態にして冷却部に対する冷却が行なえるようになる。即ち、加熱部が離れたときには、加熱部を冷却しなくてよく、冷却する部分が少なくなり、冷却速度が上がり、被プレス体の熱プレスの一サイクルの時間が短くなる。
【0013】
請求項2の発明によれば、必要時に冷却部から加熱部が離れて冷却部への熱伝導を不能とするので、冷却部に熱が供給されない状態にして冷却部に対する冷却が行なえるとともに、加熱部の冷却をしなくてよい。よって、冷却する部分が少なくなり、冷却速度が上がる。さらに、つぎの熱プレスの際にプレス面を加熱するとき、加熱部と冷却部とを一体にして、冷却部とプレス面のみを加熱すればよいものとすることができ、よって、一サイクルの時間が短くなる。
【0014】
請求項3の発明によれば、スタンパーに形成されているパターンを被プレス体に転写でき、スタンパーを変えることによりさまざまなパターンを被プレス体に転写することが可能になる。
【0015】
請求項4の発明によれば、被プレス体の表面に熱可塑性樹脂を用いることで、被プレス体の表面を高温の粘度の低い状態にすることができる。そして、上記スタンパーを用いれば、スタンパーに形成されているパターンをその熱可塑性樹脂の層に写し、冷却することでそのパターン形状を簡単に固定できるので、スタンパーのパターンの正確な転写が可能になる。
【0016】
熱可塑性樹脂はガラス転移温度Tg以上ではその樹脂の粘度は極端に低くなり、転写可能になる。しかし、粘度が低いのでプレスした際にそのプレス部が沈み、周囲の非プレス部との段差が大きくなってしまう。そこで請求項5の発明により、ガラス転移温度Tg以上の温度の表面層とした熱可塑性樹脂の層ではプレス面の形状が良好に複写され、その表面層の下層のプレス温度よりTgの高い熱可塑性樹脂の層にはプレス面の沈み込みがないため、段差の高さは表面層の厚みのみで抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに本発明を図1から図4に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1は平プレス装置の形態とされた熱プレス装置で、該熱プレス装置1は上下の架台2の間に複数本のロッド3を渡し、このロッド3に上プレス部4が上下方向に移動可能にして取り付けられているとともに、下の架台2に固定されたプレートからなり前記上プレス部4の下方に位置して対向する下プレス部5が前記ロッド3に取り付けられており、下プレス部5自体は不動としている。
この熱プレス装置1は上プレス部4と下プレス部5との間を被プレス体の挟み込み部分6としている。そして、前記上プレス部4は挟み込み部分6側からプレス面7と冷却部8と加熱部9とがこの順で配されてなるものであり、この上プレス部4での冷却部8における下面の一部分にプレス面7が取り付けられて一体とされているとともに、冷却部8と加熱部9とは互いに離接可能に設けられている。
【0018】
冷却部8は熱伝導性が良好な金属部材からなり、熱プレス時に変形を生じない強度のある板状物として成形されている。図示されているようにこの冷却部8自体を冷却することで被プレス体を冷却するための冷媒(液体や気体)を通す流路10が設けられており、図示しない配管がこの流路10に接続され、必要時に冷媒を通すようにしている。
また、上プレス部4の上記加熱部9は重量が大きいものであって、挟み込み部分6に配されて上記プレス面7と下プレス部5のプレート上面からなるもう一方のプレス面11とで挟み込んだ被プレス体に対して、上方側からのプレスを行なう加圧手段としての役割を有する。そのため、加熱部9はこの加熱部自体の重量を加えながらのプレス時に変形を生じさせない十分な強度を有するとともに、前記冷却部8に密着して一体となった状態でこの冷却部8を効率よく加熱するために熱伝導性が良好な金属材料を用いており、内部には図示しないヒータが配置されている。
【0019】
上記熱プレス装置1において、被プレス体を熱プレスするに際し、熱プレスの一サイクルが開始(図4のa)される時、その時点では挟み込み前の状態であって、上プレス部4が上方の待機位置に移動して待機しており、冷却部8と加熱部9とが密着している(図1、図4のb)。
上記加熱部9は内部のヒーターの発熱で昇温していて、前記密着による熱伝導で冷却部8を設定温度まで加熱する(図4のc)。これによってプレス面7も、加熱部9から前記冷却部8を介する熱伝導により加熱される。プレス面7自体は頗る熱伝導性が良好とされているものであり、冷却部8が所定温度まで昇温すると同じ温度に昇温されるものである。
上述したように冷却部8が設定温度まで昇温したら、上プレス部4のプレス面7と下プレス部5のプレス面11との間(挟み込部分6)に被プレス体12を挿入配置し、その後上プレス部4全体が降下して被プレス体12をプレス面7とプレス面11とで挟み込みし、冷却部8での前記設定温度を維持した状態でプレス(加圧、加熱)する(図4のd)。
【0020】
一定時間加圧加熱後、加熱部9のみが上方の待機位置までの上昇動作を行なって冷却部8から加熱部9が離れ(図2、図4のe)、加熱部9から冷却部8への熱伝導を不能にする。この状態では、冷却部8の下のプレス面7と下プレス部5のプレス面11での被プレス体12の挟み込みは維持されている。そして、前記加熱部9からの熱伝導を受けない状態にある冷却部8の上記流路10に冷媒を通して冷却部8の冷却を行なう(図4のf)。
冷却部8への冷媒の送り込みによって冷却部8自体の温度が下がり、この温度が下がる冷却部8によってプレス面7、被プレス体12を冷却する。勿論、下プレス部5のプレス面11側も冷却される。
冷却部8やプレス面7が、型開きできる温度として予め設定されている温度まで冷却すると、冷却部8側への冷媒の送り込が停止され、その後、冷却部8は上方の待機位置までの上昇動作を行なって被プレス体12から離れる(図4のg)。そして、熱プレスを受けた被プレス体12を挟み込み部分6から取り外し、冷却部8にあっては加熱部9と密着してその加熱部9からの熱伝導を受ける状態になり、熱プレスの一サイクルが終了する(図4のh)。
【0021】
待機位置に移動した加熱部9にあってはこれを冷却する必要はない。そのため、冷却部8によって冷却する部分が少なく、型開きする温度として設定された温度まで冷却する冷却速度が上がる。また、冷却部8で冷却を行なう前に加熱部9が離れているので、この加熱部9自体の温度の低下は極めて小さく、つぎのサイクルの熱プレスにおいて、冷却部8と密着してその冷却部8及びプレス面7を所定の温度まで熱伝導より加熱する時間も短く、熱プレスの一サイクルの時間が短かくなる。
【0022】
上記加熱部9は冷却部8とプレス面7を通して被プレス体12に熱伝導を安定的に行なう必要があるが、上述したように冷却する必要はない。そのため、この加熱部9は寸法や形状は大きいことが好ましい。
冷却部8は加熱部9と同じ金属材料か、さらには加熱部の材料より熱伝導性のよい金属材料とし、熱プレスに耐えられるだけの剛性を備え、かつ冷却速度を上げるためにできるだけ寸法や形状が小さい方が好ましい。
冷却部8において流路10の配置は限定されるものではなく、どのような配置であってもよい。熱プレスの目的により均一に冷却するようにしたり、均一に冷却しないようにすることも可能である。
【0023】
上記流路10には水などの液体や空気などの気体、さらにはこれらの混合体を流すことが可能である。また、加熱部9と密着して一体となっているときに高温の液体を流すことも可能であり、この高温の液体を流すことで加熱時に時間を短かくでき、よって、熱プレスの一サイクルの時間を短かくすることができる。
液体と気体の流路への送出開始や送出停止はバルブ操作などで行なうことが可能である。
さらに、冷却水を流し込んで冷却部を冷却するようにした構成である場合に、加熱部との密着前に流路内に冷却水の残りが生じないように空気の強制的な送り込みを行なうことが好ましい。
【0024】
上記実施の例における加熱部9の温度制御は公知の手法が採用できる。その一つとして例えば、プレス面7の近傍位置に温度センサー(図示せず)を取り付けて、その温度センサーが検出した温度情報に基づいて、加熱部9のヒーターの発熱動作を制御する制御システムを設けることが可能である。
【0025】
上記構造の熱プレス装置1における上プレス部4のプレス面7には、微細な転写パターンが形成されたスタンパーを粘着テープなどの固定手段を用いて取り付けることが可能である。このようにプレス面7に、転写パターンを有するスタンパーを取り付けて、合成樹脂製の被プレス体に対して上述した熱プレスを行なうことで、その被プレス体の表面での前記プレス面7と対向した部分にパターンの転写が行なえるようになる。転写パターンを形成するスタンパーの素材としては、ガラス製、シリコン製、ニッケル製のものなどが使用できる。
上記被プレス体が合成樹脂材であるとき、スタンパーが有する転写パターンの一例を挙げるならば、パターンが0.2〜2μm以下のピッチで繰り返し並び設けられているパターンが利用でき、非常に微細なパターンの転写が、被プレス体を合成樹脂材とした場合に実施できる。
【0026】
上述したように被プレス体を合成樹脂材からなるものとする場合、加熱部9からの熱伝導で加熱されるプレス面7に相対する一方の表面を、熱可塑性樹脂からなる薄層とすることが良好である。このようにすれば、プレス面7の形態がその表面の層により適正に転写され、上記スタンパーが取り付けられている場合でも、0.2〜2μm以下のピッチでの繰り返しの微細パターンが、安定して転写できる。
【0027】
さらに被プレス体12を合成樹脂材の積層体からなるものとし、加熱と加圧とを行なう上記プレス面に対する表面側が、熱可塑性樹脂からなる層の積層状態として形成されているようにすることが良好である。
そして、積層体である被プレス体は、表面層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1とし、その表面層の下層にした熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2として、表面層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度と前記下層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度とが、Tg1<Tg2の関係にする。さらに、この被プレス体を熱プレスする熱プレス装置では、前記表面層に相対するプレス面からのプレス温度をTg1以上とする。
【0028】
このようにすることで、表面層とした熱可塑性樹脂の層にはプレス面の形状が良好に転写され、その表面層の下層の熱可塑性樹脂層にはプレス面の形状がほとんど転写されない状態が得られる。よって、プレス面に上記スタンパーにより微細な転写パターンを形成すれば、適正に微細なパターンを被プレス体の表面層に転写することができるようになる。
【0029】
上記実施の例の熱プレス装置では上プレス部4を挟み込み部分側からプレス面7、冷却部8、加熱部9として上下移動可能とし、下プレス部5を一つのプレートからなる固定のものとして説明したが、図3に示すように、下プレス部5も挟み込み部分6側からプレス面11、冷却部8、加熱部9の構成としてもよく、上述した実施の例と同じように、下プレス部5側から被プレス体に対する加熱、加圧に際して、加熱部9から冷却部8を介した熱伝導がプレス面に達しさせて、そのプレス面11を加熱し、冷却時には冷却部8と加熱部9とを離して、加熱部9から冷却部8への熱伝導を不能にする構成としてもよい。
なお、この実施の例において、プレス面7、11それぞれは、冷却部8の挟み込部分6側の面で形成されているが、上記実施の例のように凸となる金属部材を一体に設けてプレス面を形成してもよい。
【0030】
(実施例)
平プレス装置の形態である本発明の熱プレス装置を用いるとともに、被プレス体として合成樹脂製のシート用い、熱プレスによってシート状レンズを成形するテストを行った。
熱プレス装置は、加熱部は通電加熱ヒーターで加熱でき、冷却部は冷却水を流すことができるよう貫通穴が開けてあり、それにホースを繋いでバルブの開閉により冷却水のコントロールができるようにした。加熱部、冷却部の上下動作は空圧シリンダーにより動作可能にした。
プレス面は、冷却部の下面に50×50mmサイズでレンズパターンを有するニッケルスタンパーを粘着テープで取り付けて形成した。
下プレス部におけるプレート上のプレス面に試料(被プレス体)を置いて、上プレス部の加熱部のみを温度制御し、下プレス部は室温のままで上下動作しない状態でテストを行った。
【0031】
被プレス体はポリカーボネートの厚1mm板を用いて、上プレス部のプレス面の設定温度170℃、圧力20MPa加圧時間30秒、その後加熱部を上昇させ冷却部はそのままで被プレス体を加圧(冷却部による挟み込み)したまま冷却部に冷却水を流した。120℃まで冷却するのに40秒かかった。
比較のため30秒加圧した後加熱部のヒーターは切るが上昇させずに加熱部と冷却部を密着させたまま冷却を行うと14分かかった。
また、スタンパーのパターンを転写してなる成形品を観察すると、加熱部を残したまま冷却した方は高温の状態が長く続くため、被プレス体の熱による歪み、反りが生じ、加熱部と冷却部を離して冷却する方法に比べ品質に劣るものになった。
【0032】
これにより、加熱部と冷却部を一体とした状態で被プレス体に対する加熱、加圧を行なった後、加熱部と冷却部を離して冷却することが、適正な転写パターンを熱プレスで得る上で良好であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の熱プレス装置の一例における上プレス部を待機上昇させた状態を示す説明図である。
【図2】一例において冷却部から加熱部を上昇移動させて冷却部の冷却を行なう状態を示す説明図である。
【図3】他の例を示す説明図である。
【図4】本発明の熱プレス方法をフローチャートの形態で示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1…熱プレス装置
4…上プレス部
5…下プレス部
6…挟み込み部分
7…プレス面
8…冷却部
9…加熱部
10…流路
11…プレス面
12…被プレス体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上プレス部と下プレス部とを備えていて、前記上下のプレス部の内の少なくとも一方のプレス部は、前記上ブレス部と下プレス部との間の被プレス体の挟み込み部分側からプレス面と冷却部とこの冷却部に離接可能な加熱部とが少なくともこの順で配されて、前記一方のプレス部のプレス面と他方のブレス部のプレス面との間で被プレス体を挟み込みし、前記一方のプレス部のプレス面を、冷却部と一体となった加熱部から前記冷却部を介する熱伝導により加熱し、冷却部からの前記加熱部の分離により加熱部から冷却部への熱伝導を不能とする構成を有することを特徴とする熱プレス装置。
【請求項2】
上プレス部と下プレス部とを備えていて、前記上下のプレス部の内の少なくとも一方のプレス部は、前記上ブレス部と下プレス部との間の被プレス体の挟み込み部分側からプレス面と冷却部とこの冷却部に離接可能な加熱部とが少なくともこの順で配されて、前記一方のプレス部のプレス面と他方のブレス部のプレス面との間で被プレス体を挟み込みする熱プレス装置により、被プレス体を加熱加圧するにあたり、
前記一方のプレス部のプレス面を、冷却部と一体となった加熱部から前記冷却部を介する熱伝導により加熱して前記被プレス体を熱プレスした後、前記冷却部側からの被プレス体に対してのプレス状態を維持しながら冷却部から加熱部を離して、冷却部を冷却することを特徴とする熱プレス方法。
【請求項3】
上記一方のプレス部のプレス面は、上記被プレス体にパターンを転写するためのスタンパーが設けられているものである請求項2記載の熱プレス方法。
【請求項4】
請求項2または3の熱プレス方法における上記被プレス体を、該被プレス体の少なくとも上記一方のプレス部のプレス面に相対する表面が熱可塑性樹脂であるものとし、この熱可塑性樹脂からなる表面に前記プレス面に形成されているパターンを転写する熱プレスによるパターン転写方法。
【請求項5】
上記被プレス体の熱可塑性樹脂からなる表面側は熱可塑性樹脂が積層されているものであって、表面層の熱可塑性樹脂はガラス転移温度をTg1とし、前記表面層の下層にした熱可塑性樹脂はガラス転移温度をTg2とし、
前記表面層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度と前記下層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度とが、Tg1<Tg2の関係であり、
前記表面層の熱可塑性樹脂の面に相対するプレス面からのプレス温度がTg1以上である請求項4に記載の熱プレスによるパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−22962(P2009−22962A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185783(P2007−185783)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】