熱伝導成形体
【課題】煩雑な加工プロセスや加工設備を必要とすることなく、容易にかつ安価に製造することができ、ハウジング等の構造体への適用にも好適な熱伝導成形体を提供する。
【解決手段】板状無機フィラーを5〜80vol%含む樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された穴2を有する熱伝導成形体1であって、該穴2は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴によって形成される壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体1。
A ≧ 4×T3 ……(1)
【解決手段】板状無機フィラーを5〜80vol%含む樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された穴2を有する熱伝導成形体1であって、該穴2は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴によって形成される壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体1。
A ≧ 4×T3 ……(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導性を示す樹脂成形体に関する。詳しくは、本発明は、熱伝導性フィラーによる熱伝導性の向上効果を有効に発揮させた熱伝導成形体であって、放熱シート、熱拡散板、配線基盤、ハウジング部品、軸受け等の構成材料として有用な高熱伝導成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分に熱伝導性フィラーを充填して、熱伝導性、放熱性を向上させた様々な樹脂形成体が検討されているが、その熱伝導性、放熱性は、十分に満足し得るものでは無い。
【0003】
即ち、例えば、熱伝導性フィラーが、粒子状や不定形状の場合には、マトリックス樹脂中で、熱伝導性フィラー同士が十分に接触して熱伝導経路を形成させるために、大量のフィラーを配合することが必要となり、この結果、成形性や成形体の機械的強度を著しく低下させることとなる。
【0004】
熱伝導性フィラーが、繊維状又は板状の場合には、成形時の流動や、厚み方向への圧縮によって生ずる熱伝導性フィラーの配向により熱伝導経路が形成されるため、比較的少量の熱伝導性フィラーの添加によって、熱伝導性を向上させることができる。しかしながら、シートや、ハウジング部品等の平面形状を有する成形体では、平面形状部位において、繊維状ないし板状フィラーは面方向に配向するため、面方向における熱伝導性は得られても、厚み方向の熱伝導性を十分に向上させることはできない。
【0005】
特公平6−38460号公報には、熱伝導性フィラーが面方向に配向したシートを厚み方向に切削することによって、厚み方向の熱伝導性を向上させた放熱シートが提案されている。
特開2002−270739号公報には、熱伝導性粒子が放射状に中心軸から配向している円筒状ブロックを、円筒の中心軸の周りに回転させながら、前記円筒状ブロックの外周に沿って表層部を切削することにより、厚み方向に熱伝導性粒子が配列したシートを得る方法が開示されている。
特開2003−26828号公報には、磁性を示す熱伝導性粒子及び熱伝導性繊維を含有する樹脂シートを成形硬化させる際に、シートの厚み方向に磁場を作用させることによって、熱伝導性粒子及び熱伝導性繊維を厚み方向に配列させた熱伝導シートが開示されている。
特開2004−50704号公報には、液晶性高分子をマトリックスとして用い、磁場配向によって液晶高分子を厚み方向に配向させた熱伝導性高分子成形体が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記の技術では、いずれも加工プロセスが複雑であったり、特殊な加工設備が必要であったりすることにより、製造コストが高くつく上に、ハウジング等の構造体への適用が困難であるという問題がある。一方、繊維状又は板状フィラーを用いて熱源の発熱を面方向に拡散させる場合もあるが、近年の熱源の温度上昇に対して、必ずしも充分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−38460号公報
【特許文献2】特開2002−270739号公報
【特許文献3】特開2003−26828号公報
【特許文献4】特開2004−50704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、煩雑な加工プロセスや加工設備を必要とすることなく、容易にかつ安価に製造することができ、ハウジング等の構造体への適用にも好適な熱伝導成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含む樹脂組成物を成形する際、所定の形状の穴によって形成される壁面に沿って板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーが配向することを利用して、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを成形体の厚み方向に配向させ、これにより、熱伝導性フィラーによる成形体厚み方向の熱伝導性の向上効果を有効に発揮させることができることを見出した。さらに、繊維状フィラーの流動方向の配向を増加させることで、平面方向(流動方向)への熱伝導性を、向上できることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基いて、達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] 樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0012】
[2] [1]において、該板状無機フィラーが、黒鉛及び/又は窒化ホウ素よりなることを特徴とする熱伝導成形体。
【0013】
[3] [1]又は[2]において、射出成形、又はトランスファー成形によって成形された成形体であることを特徴とする熱伝導成形体。
【0014】
[4] 樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とする熱伝導成形体。
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0015】
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の熱伝導成形体の前記穴部に、樹脂が充填されてなることを特徴とする熱伝導二色成形体。
【0016】
[6] 成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する樹脂成形体(以下「1次成形体」と称す。)と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、煩雑な加工プロセスや加工設備を必要とすることなく、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配合した樹脂組成物を所定形状に成形するのみで、樹脂成形体の厚み方向に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配向させて、熱伝導性フィラーによる熱伝導ネットワークを厚み方向に成形することができ、これにより厚み方向の熱伝導性に優れた高熱伝導成形体を提供することができる。さらに、請求項4の発明によれば、平面方向の熱伝導性に優れた高熱伝導成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1態様の実施の形態に係る熱伝導成形体を示し、(a)図は、(b)図に示す平板状成形体のA部の斜視図であり、(b)図は、該平板状成形体の平面図である。
【図2】第1図(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】第1図の熱伝導成形体の一部の断面斜視図である。
【図4】第3図のIV−IV線断面図である。
【図5】第3図のV−V線断面図である。
【図6】第2態様の実施の形態に係る熱伝導成形体の斜視図である。
【図7】第6図のVII−VII線断面図である。
【図8】第6図のVIII−VIII線断面図である。
【図9】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の斜視図である。
【図10】第9図のX−X線断面図である。
【図11】第9,10図の熱伝導成形体の成形用金型の断面図である。
【図12】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図13】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図14】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図15】第14図のXV−XV線断面図である。
【図16】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図17】実施例1,2及び比較例1,2で作製したサンプルの断面図である。
【図18】(a)図は実施例1で作製したサンプルの斜視図であり、(b)図は、このサンプルの上側の銅板をとりのぞいた状態を示す斜視図であり、(c)図は(a)図のC−C線に沿う断面図である。
【図19】実施例及び比較例において、伝熱特性の評価に用いた測定装置の概略を示す断面図である。
【図20】実施例3で作製したサンプルの断面図である。
【図21】熱伝導成形体40の斜視図である。
【図22】熱伝導成形体40の平面図である。
【図23】第22図のXXIII−XXIII線断面図である。
【図24】第22図のXXIV−XXIV線断面図である。
【図25】第22図のXXV−XXV線に沿う拡大断面図である。
【図26】熱伝導成形体の切断前の斜視図である。
【図27】熱伝導成形体の射出成形方法を示す断面図である。
【図28】熱伝導成形体60の斜視図である。
【図29】熱伝導成形体60の平面図である。
【図30】第29図のXXX−XXX線断面図である。
【図31】第29図のXXXI−XXXI線断面図である。
【図32】第29図のXXXII−XXXII線に沿う拡大断面図である。
【図33】熱伝導成形体の断面図である。
【図34】熱伝導成形体の断面図である。
【図35】熱伝導成形体の断面図である。
【図36】熱伝導成形体素板の斜視図である。
【図37】熱伝導成形体素板の平面図である。
【図38】第37図の38−38線に沿う断面図である。
【図39】第37図の39−39線に沿う断面図である。
【図40】熱伝導成形体70の斜視図である。
【図41】熱伝導成形体70の平面図である。
【図42】第41図の42−42線に沿う断面図である。
【図43】第41図の43−43線に沿う断面図である。
【図44】放熱特性の測定方法を示す断面図である。
【図45】放熱構造体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
【0020】
[第1態様(請求項1〜3)の熱伝導成形体]
第1態様の熱伝導成形体は、樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とするものである。
【0021】
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0022】
この第1態様の熱伝導成形体では、この穴部の壁面(熱伝導成形体厚み方向に延在する壁面。以下、単に「壁面」と称す場合がある。)に沿って板状無機フィラーが配向することにより、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が向上する。
【0023】
この熱伝導成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、板状無機フィラーの厚み方向の配向効率が大きくなり、厚み方向の熱伝導性が向上する。従って、本発明では、単位体積あたりの壁面の面積Aは、4×T3以上、望ましくは5×T3以上、さらに望ましくは7×T3以上とする。
【0024】
なお、ここで、壁面の面積Aとは、単位体積内に存在する、穴部の熱伝導成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、熱伝導成形体の平均厚みTに対して、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0025】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、フィラー含有樹脂組成物の射出成形やトランスファー成形などによって製造することができ、この熱伝導成形体を成形する際に、穴部の壁面に沿って樹脂組成物が流動することにより、板状無機フィラーが該壁面に沿って配向する。板状無機フィラーの形状は、流動方向に対して垂直方向にも広がりをもっているために、厚み方向への熱伝導性が向上する。なお、これに対して、繊維状フィラーでは、流動方向のみの形状であるため、厚み方向への寄与が無い。また、半溶融状態又は半硬化状態のフィラー含有樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で穴部を形成させて、この穴部の壁面に板状無機フィラーを配向させることもできる。
【0026】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する板状無機フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、熱伝導成形体の平均厚みTの70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。特に穴部が貫通穴であると、厚み方向に連続したフィラー配向層が形成されるので、厚み方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。また、厚み方向だけでなく、平面方向に熱を拡散したい場合には穴の深さを熱伝導成形体の平均厚みTの70〜99%望ましくは80〜95%に設定する。
【0027】
なお、熱伝導成形体をキャビティを有した金型によって成形するに際し、穴部成形用キャビティ内の樹脂流れ方向の下流部付近においては、キャビティ面に沿った流動が合わさるウェルドが生じるが、ウェルド部においても板状無機フィラーは配向する。従って、樹脂の流れ方向に穴部が分断されていても、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導率は十分に高いものとなる。
【0028】
穴部の深さ方向と垂直な断面における穴部の大きさとしては、最小幅(W)が成形体厚みTの0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。この最小幅Wとは、例えば穴の深さ方向と垂直な断面形状が長方形であれば、短辺の長さをさし、円形状であれば直径をさし、楕円形であれば短径をいう。穴部の最小幅Wがこれよりも小さいと、熱伝導成形体成形用金型又はスタンパの穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型又はスタンパから成形体を取り外すことが困難になる。穴部の最小幅Wがこれより大きいと、穴部の占める総面積の割合が大きくなりすぎたり、壁面の密度が小さくなり、すなわち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。スリット状の穴であると、壁に沿って安定した流動が生じやすく、高度な配向層が得られる点で望ましい。スリット状の穴は、幅に対して、長さが2倍以上であることが望ましく、さらには5倍以上例えば5〜50倍であることが望ましい。スリット形状は、直線でも良いし、曲線、屈曲、または分岐させても良い。
【0029】
また、隣接した穴部の最小間隔Qとしては、熱伝導成形体の平均厚みTの0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔Qがこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0030】
この熱伝導成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T)×長さ((9/n)×T)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0031】
この穴部には、熱伝導成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0032】
この第1態様の熱伝導成形体の平均厚みTは、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが望ましい。熱伝導成形体の平均厚みTがこれより薄くなると、穴部同士の間隙にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0033】
第1態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。
【0034】
[第2態様(請求項4)の熱伝導成形体]
本発明の第2態様の熱伝導成形体は、樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とするものである。
【0035】
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0036】
この第2態様の熱伝導成形体では、スリット状穴部の壁面に沿って繊維状フィラーを流動方向に配向させることによって、熱伝導成形体の該流動方向の熱伝導率を向上させるものである。
【0037】
すなわち、通常、繊維状フィラーは、キャビティの壁面近傍において流動方向に配向することにより、流動方向の熱伝導率が向上するが、成形体の形状によっては、分流や合流が生じたり、同心円状に広がって流動する場合があるため、必ずしも一方向への配向を形成できない。さらに、キャビティ壁面から離れた成形体の中央部付近では、一般にはランダムな配向が形成される。
【0038】
本発明の第2態様の熱伝導成形体では、スリット穴形状によって形成される壁面によって、流動方向すなわち配向方向を制御し、さらに壁面付近に生じる繊維状フィラーの配向によって、面方向の任意の方向に、優れた熱伝導性を得ることができる。
【0039】
この熱伝導成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、繊維状フィラーの流動方向の配向効率が大きくなり、流動方向の熱伝導性が向上する。従って、本発明では、単位体積あたりの壁面の面積A’は、4×T’3以上、望ましくは5×T’3以上、さらに望ましくは7×T’3以上とする。
【0040】
なお、ここで、壁面の面積A’とは、単位体積内に存在する、穴部の熱伝導成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、熱伝導成形体の平均厚みT’に対して、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0041】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、フィラー含有樹脂組成物の射出成形やトランスファー成形などによって製造することができ、この熱伝導成形体を成形する際に、穴部の壁面に沿って樹脂組成物が流動することにより、繊維状フィラーが該壁面に沿って配向する。その結果、成形体の該流動方向の熱伝導率が向上する。
【0042】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する繊維状フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、熱伝導成形体の平均厚みT’の70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。特に穴部が貫通穴であると、繊維状フィラーの配向部が増加するため、流動方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。
【0043】
スリット状穴部の深さ方向と垂直な断面における幅(W)は、成形体厚みT’の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。この幅Wとは、スリットの短径をいう。スリット幅Wがこれよりも小さいと、熱伝導成形体成形用金型の穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型から成形体を取り外すことが困難になる。穴部の幅Wがこれより大きいと、穴部の占める総面積の割合が大きくなりすぎたり、壁面の密度が小さくなり、すなわち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。スリット状の穴は、幅に対して、長さが5倍以上であり、さらには10倍以上例えば10〜50倍であることが望ましい。スリット形状は、直線でも良いし、曲線、屈曲、または分岐させても良い。
【0044】
また、隣接したスリット状穴部の最小間隔Qとしては、熱伝導成形体の平均厚みT’の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔Qがこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0045】
この熱伝導成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0046】
このスリット状穴部には、熱伝導成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0047】
この第2態様の熱伝導成形体の平均厚みT’は、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが望ましい。熱伝導成形体の平均厚みT’がこれより薄くなると、穴部同士の間隙にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0048】
第2態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。
【0049】
[第3態様(請求項5)の熱伝導成形体]
第2態様の熱伝導成形体は、上記第1態様又は第2態様の熱伝導成形体の穴部に樹脂を充填し、発熱体との接触面積を大きくするようにしたものである。
【0050】
穴部に充填する樹脂材料としては、穴部を有する第1態様又は第2態様の熱伝導成形体を形成するフィラー含有樹脂組成物と同一の材料でもよいし、異種の材料でも良い。穴部に充填する樹脂材料として、熱伝導性フィラーを添加した樹脂組成物を用いることによって、熱伝導性を向上させることができる。穴部に充填する樹脂組成物に用いる熱伝導性フィラーや樹脂成分の種類には制約は無いが、第1態様の熱伝導成形体の成形に用いる板状無機フィラー含有樹脂組成物、第2態様の熱伝導成形体の成形に用いる繊維状フィラー或いは、後述の第3態様の熱伝導成形体の1次成形体の成形に用いる板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラー含有樹脂組成物が挙げられる。このようなフィラー含有樹脂組成物を用い、穴部の壁面に沿ってフィラーが配向するように穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填すれば、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性はさらに向上する。ただし、穴部に充填する樹脂材料は、これらのフィラー含有樹脂組成物からフィラーを除いた樹脂組成物であっても良い。
【0051】
[第4態様(請求項6)の熱伝導成形体]
第4態様の熱伝導成形体は、成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する1次成形体と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とするものである。
【0052】
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0053】
即ち、この熱伝導成形体では、任意の樹脂材料を用いて成形された、深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1〜1.3の穴部を有する1次成形体の穴部に、板状無機フィラー及び/又は繊維フィラーを5〜80vol%含有するフィラー含有樹脂組成物を充填することにより、この穴部の深さ軸方向の壁面に沿ってフィラー含有樹脂組成物中のフィラーが配向する結果、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が向上する。
【0054】
ここで、該穴部の深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が大きすぎると、穴の内部で長手方向の流動すなわち、平面方向の流動が生じるため、繊維状フィラーを使用した場合には特に、厚み方向の配向が失われるため、本発明の効果を損なう。
なお、第4態様においては、1次成形体の穴部に充填する樹脂組成物に用いるフィラーとして、繊維状フィラーを用いると、厚み方向の熱伝導性が向上し易い点で望ましい。
【0055】
この1次成形体の穴部の深さ方向と垂直断面における最長部と最短部の寸法比が2以下の穴部としては、当該断面形状が円形、楕円形(円形に近い楕円形)、正方形、三角形(正三角形に近い三角形)、長方形(正方形に近い長方形)、五角形や六角形等の多角形であっても円形に近い正五角形や正六角形などが挙げられる。
【0056】
この第4態様の熱伝導成形体において、1次成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの厚み方向の配向効率が大きくなり、厚み方向の熱伝導性が向上する。従って、この単位体積あたりの壁面の面積A”は、4×T”3以上、望ましくは5×T”3以上、さらに望ましくは7×T”3以上とする。
【0057】
なお、ここで、壁面の面積A”とは、1次成形体の単位体積内に存在する穴部の1次成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、1次成形体の平均厚みT”に対して、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0058】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、樹脂材料の射出成形やトランスファー成形などによってこの1次成形体を成形し、次いでこの1次成形体の穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填して成形することにより製造することができ、フィラー含有樹脂組成物が穴部の壁面に沿って流動する際に、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーが該壁面に沿って配向することにより、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が得られる。また、半溶融状態又は半硬化状態の樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で穴部を形成させて、この穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填して壁面に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配向させることもできる。
【0059】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、1次成形体の平均厚みT”の70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。穴部が貫通穴であると、厚み方向に連続したフィラー配向が形成されるので、厚み方向の熱伝導率が向上する。
【0060】
また、穴部の深さ方向と垂直な断面における穴部の大きさとしては、前述の最短部の寸法が1次成形体の厚みT”の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。穴部の最短部の寸法がこれよりも小さいと、1次成形体の成形用金型又はスタンパの穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型又はスタンパから成形体を取り外すことが困難になる。穴部の最短部の寸法がこれより大きいと、本発明で目的とする板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの配向が得られ難くなる。
【0061】
また、隣接した穴部の最小間隔としては、1次成形体の平均厚みT”の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔がこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0062】
この1次成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0063】
この穴部には、成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0064】
この第4態様における1次成形体の平均厚みT”は、0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが好ましい。1次成形体の平均厚みT”がこれより薄くなると、穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0065】
第4態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。1次成形体の成形材料は、このようなフィラー含有樹脂組成物であっても、このようなフィラー含有樹脂組成物からフィラーを除いた樹脂組成物であっても良い。
【0066】
[熱伝導成形体の成形方法]
第1,2態様の熱伝導成形体は、前述の如く、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いてフィラー含有樹脂組成物の射出成形又はトランスファー成形などにより成形することができる。また、半溶融状態又は半硬化状態のフィラー含有樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で製造することもできる。
【0067】
第3、第4態様の熱伝導成形体は、射出成形、又はトランスファー成形等によって1次成形体を成形し、次いでこれを2次金型にインサートして成形したり、又は1次成形体を金型から取り出すことなく、コア金型のみを変えて連続的に二色成形して製造することができる。
【0068】
また、穴部に充填される突起形状を先に1次成形体として成形した後、二次材料を成形しても良い。
【0069】
二色成形体とした場合には、熱伝導成形体の厚み方向の両板面の表層部に穴部の少ない平板部を形成してもよい。この場合、この平板部の総厚みは、熱伝導成形体の平均厚みの30%以下とすることが望ましい。
【0070】
[樹脂組成物]
以下に本発明の熱伝導成形体の成形に用いる樹脂組成物について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとを含むものである。
【0071】
<樹脂成分>
本発明に係る樹脂組成物に含有され、本発明の成形体のマトリクス樹脂となる樹脂成分としては、各種の熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0072】
具体的には、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、各種の硬化性エラストマーなどが使用できる。
【0073】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)等のスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12などの各種ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの熱可塑性フッ素樹脂、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー等の、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。
【0074】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0075】
マトリックス樹脂としては、粘度が低いほうが無機フィラーを高充填しても、成形加工性を維持することができ好ましい。
【0076】
熱硬化型樹脂の粘度としては、無機フィラーを配合して成形加工する際の加工条件時(未硬化時)において0.8mPa・s〜106mPa・sが好ましい。粘度が0.8mPa未満では、粘度が低すぎて、ハンドリングが悪く、106mPa・sを超えると粘度が高すぎて、無機フィラーを充填しにくい。
【0077】
<板状無機フィラー>
本発明で用いる板状無機フィラーとしては、鱗片状、フレーク状等を含む扁平な形状のフィラーである。具体的には、アルミニウムフレーク、ニッケルフレークなどの板状金属フィラー、アルミナフレーク、窒化アルミニウムフレーク、タルク、マイカ、黒鉛(天然黒鉛、人工黒鉛、膨張黒鉛)、窒化ホウ素などの無機フィラーが挙げられる。中でも、黒鉛、窒化ホウ素などの結晶構造が六方晶構造である無機フィラーが、結晶構造の主軸と垂直面方向に熱伝導率が高いので望ましい。
【0078】
特に、黒鉛の中でも、天然黒鉛が熱伝導性に優れる点で望ましく、さらに天然黒鉛から製造された膨張黒鉛を使用すると、板面の粒子径と厚みの比が大きくなりやすいために、少ない添加量で熱伝導性を発現することが好ましい。
【0079】
板状無機フィラーの平均粒子径は、成形体中に分散した板状無機フィラーの平均粒子径として、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上で、通常500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下で、かつ、前述の成形体平均厚みTの通常1/10以下、好ましくは1/20以下、より好ましくは1/100以下である。
【0080】
板状無機フィラーの平均粒子径が上記下限より小さいと、樹脂成分と無機フィラーとの接触表面積の増加により溶融混練などする場合に加工負荷が大きくなり、配合しにくい。また、フィラーが高価なものとなりコストアップに繋がる。一方、板状無機フィラーの平均粒子径が上記上限より大きいと、成形体の強度が低下しやすくなる。
【0081】
また、板状無機フィラーの平均粒子径が、成形体の平均厚みTの1/10より大きいと、前記穴の壁面での配向が乱れやすく、本発明の効果を損なうおそれがある。
【0082】
また、板状無機フィラーの平均粒子径と厚みの比率(平均粒子径/平均厚み)は通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。この比率が小さ過ぎると配向による特定方向の熱伝導性の向上効果を十分に得ることができない。この比率は大きい程好ましいが、通常2000以下である。
【0083】
また、板状無機フィラーの板面の形状には、特に制限はなく、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形、その他の異形形状であっても良い。
【0084】
また、板状無機フィラーの板面の長径の平均値と短径の平均値との比(長径の平均値/短径の平均値)は1以上で、5以下、特に3以下、とりわけ2以下であることが好ましい。この比が過度に大きいと、前記穴部壁面の配向層における流れ方向に沿って板状フィラーの長径方向が配向し、その結果、短径が厚み方向に沿って配列するため、厚み方向への熱伝導の寄与が少なくなるため、本発明の効率を損なうおそれがある。
【0085】
なお、ここで、板状無機フィラーの短径の平均値とは、成形体中の板状無機フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の板状無機フィラーについて測定した板状無機フィラーの板面の短径の平均値であり、長径についても同様である。ここで短径とは、板状無機フィラーの板面を2本の平行な板ではさんだときに、この平行な板の間隔が最も短くなる部分の径である。また、長径とは、このように板状無機フィラーの板面を2枚の平行な板ではさんだときに、この平行な板の間隔が最も長くなる部分の径である。本発明においては上記短径の平均値を平均粒子径とする。
【0086】
また、板状無機フィラーの平均厚みとは同様に、成形体中の板状無機フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の板状無機フィラーについて測定した板状無機フィラーの板厚の平均値である。
【0087】
板状無機フィラーとしては、1種のみを用いても良く、材質や寸法、形状等の異なるものを2種以上併用しても良い。また、後述の繊維状フィラーを、併用することもできる。
【0088】
<繊維状フィラー>
本発明で用いる繊維状フィラーとしては、炭素繊維(ピッチ系、PAN系)、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、窒化珪素繊維、ステンレス、ニッケル、銅などの金属繊維、窒化アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維等の繊維状フィラーが挙げられる。中でも、炭素繊維、アルミナ繊維、窒化アルミ繊維、アラミド繊維等の無機繊維や、ポリベンザゾール繊維が熱伝導率に優れる点で望ましい。
【0089】
繊維状フィラーは、平均繊維直径が通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上で、通常50μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下で、平均繊維長さと平均繊維直径の比(平均繊維長さ/平均繊維直径)が通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上であることが望ましい。
また、繊維状フィラーの平均繊維直径は、前記穴部の深さ方向と垂直な断面における最短部の通常1/10以下、好ましくは1/20以下、より好ましくは1/100以下である。また繊維状フィラーの平均繊維長さは、前記穴部深さ(貫通穴である場合には穴部の成形体厚みに相当する)の1/3以下、好ましくは1/5以下、とりわけ好ましくは1/10以下である。
【0090】
繊維状フィラーの平均繊維直径が太すぎると、成形体の強度が損なわれるだけでなく、前記穴部へ繊維状フィラーが流れ込みにくくなったり、前記穴部での繊維状フィラーの配向が乱れ易くなり、本発明の効果を損なう。
平均繊維直径が細すぎると、繊維そのものが高価になりやすいだけでなく、一般に繊維フィラー同士が絡み合い易くなり、その結果繊維フィラーの配向が阻害される。
また、繊維状フィラーの平均繊維長さが長すぎると、前記穴部へ繊維状フィラーが流れ込みにくくなったり、前記穴部での繊維状フィラーの配向が乱れ易くなり、本発明の効果を損なう。
平均繊維長さと平均繊維直径の比が小さ過ぎると、熱伝導の経路が形成されにくいため、熱伝導性を損なう。または、フィラーを多量に添加する必要が生じる。
この比は、繊維長さが上述の範囲を超えない範囲で大きい程望ましいが、通常100以下である。
【0091】
なお、ここで、繊維状フィラーの平均繊維直径とは、成形体中の繊維状フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の繊維状フィラーについて測定した繊維状フィラーの繊維直径の平均値であり、また平均繊維長さとは同様に成形体中の繊維状フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の繊維状フィラーについて測定した繊維長さの平均値である。
【0092】
繊維状フィラーとしては、1種のみを用いても良く、材質や寸法、形状等の異なるものを2種以上併用しても良い。また、前述の板状無機フィラーを、併用することもできる。
【0093】
<板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量>
板状無機フィラーを含む樹脂組成物における板状無機フィラーの含有割合は、樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対する板状無機フィラーの体積割合で5vol%以上、好ましくは10vol%以上、より好ましくは20vol%以上で、80vol%以下、好ましくは60vol%以下、より好ましくは50vol%以下である。板状無機フィラーの含有割合が少な過ぎると板状無機フィラーを配合したことによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると成形性が損なわれ、また、得られる成形体の機械的強度が低下するおそれがある。
【0094】
また、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含む樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合(板状無機フィラーと繊維状フィラーを含む場合はその合計の含有割合)は、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対する板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの体積割合で5vol%以上、好ましくは10vol%以上、より好ましくは20vol%以上で、80vol%以下、好ましくは60vol%以下、より好ましくは50vol%以下である。板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合が少な過ぎると板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配合したことによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると成形性が損なわれ、また、得られる成形体の機械的強度が低下するおそれがある。
【0095】
<付加成分>
本発明で用いる樹脂組成物には、さらに熱伝導性を向上させるために、板状もしくは繊維状以外の、粒子状ないし不定形状のフィラーを添加してもよい。このようなフィラーとしては、例えば、アルミナ粒子、窒化アルミニウム粒子、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅などの金属粒子などが挙げられる。これらのフィラーを配合する場合、その配合割合は、樹脂組成物に配合した板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとこれらのフィラーとの合計の含有割合が、上記板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0096】
なお、本発明で用いる板状無機フィラー、繊維状フィラーや上述の粒子状フィラーは、マトリックス樹脂への分散性を向上させるために、シランカップリング剤などにより表面処理を施したものであっても良い。
【0097】
また、本発明で用いる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で更にその他の付加成分を添加することができる。
【0098】
このような付加成分としては例えば、フッ素樹脂パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィンオイル等の可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を挙げることができる。
【0099】
[熱伝導成形体の具体例]
以下、第1図〜第16図を参照して本発明の実施の形態に係る熱伝導成形体の形状の具体例とその製造方法等について説明する。
【0100】
<第1図〜第5図の熱伝導成形体1>
第1図は第1態様及び第2態様の実施の形態に係る熱伝導成形体1を示し、(a)図は、(b)図に示す平板状成形体の一部に穴構造を形成した熱伝導成形体1の、穴構造部分(一点鎖線で囲んだA部)の斜視図であり、(b)図は、平板状成形体の一部に穴構造を形成した熱伝導成形体1の平面図である。なお、フィラー含有樹脂組成物の熱伝導フィラーとして、板状無機フィラーを用いた場合は、第1態様であり、繊維状フィラーを用いた場合は、第2態様である。
第2図は第1図(a)のII−II線に沿う断面図、第3図は熱伝導成形体1の一部の断面斜視図、第4,5図は第3図のIV−IV線及びV−V線断面図である。
【0101】
この熱伝導成形体1は、平盤状のベース部1aと、該ベース部1aから起立する縦板状の縦部1bとを有する。この実施の形態では、縦部1bは所定間隔をあけて平行に複数枚立設されており、この縦部1b同士の間が穴部2となっている。また、第2図の左側の縦部1bの左側と、右側の縦部1bの右側(ただしベース部1aの上方部)も穴部2となっている。熱伝導成形体1の厚み方向は第1,2図の上下方向である。穴部2の深さは熱伝導成形体1の平均厚みTの70%以上、特に75%以上とりわけ80%以上であることが好ましい。特に、ベース部1aの厚みをゼロとして貫通穴とすることもできる。第1態様として用いる場合、成形体の上面から裏面にわたり、厚み方向に連続した板状無機フィラーの配向層が形成されるために、厚み方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。
【0102】
熱伝導成形体1の平均厚みTは、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが好ましい。
【0103】
この成形体1から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部2によって形成される壁面の面積(すなわち、すべての縦部1bの側面の面積の合計)Aが、A ≧ 4×T3を満たしており、好ましくはA ≧ 5×T3、より好ましくはA ≧ 7×T3である。
【0104】
穴部2の幅Wは、熱伝導成形体1の平均厚みTの0.1〜1.2倍、特に0.2〜1.0倍であることが好ましい。穴部2の間隔である縦部1bの幅Qは熱伝導成形体1の平均厚みTの0.1〜1.2倍、特に0.2〜1.0倍が好ましい。
【0105】
また、単位体積として切り出した幅(n×T)×長さ((9/n)×T)の面内中に、穴部2の閉める総面積の割合は、65%以下、特に50%以下、さらに40%以下が望ましい。
【0106】
穴部2の長さ、即ち縦部1bの延在方向の長さLは、穴部2の幅Wの2倍以上、特に5倍以上例えば5〜50倍であることが好ましい。
【0107】
縦部1bは直方体の板状であるが、これに限定されず、台形断面形状であってもよい。
【0108】
この熱伝導成形体1は、例えば第1図(b)における熱伝導成形体1の上方部分(成形体の上面近傍の側面部分)に注入口(第1図(b)に注入口20の位置を破線で示す。)を設けた金型を用い、該注入口から板状無機フィラー含有樹脂組成物を注入して成形することができる。第1図(a),(b)における矢印Yは、この成形体成形時に金型に注入されたフィラー含有樹脂組成物の流動方向を示す。
注入口からキャビティに流れこんだ樹脂組成物は縦部1b部分に流れ込み、フィラー5は縦部1bの壁面に沿って配向する。第1態様の場合、その結果、第3図および第4図に示すように、板状無機フィラーの形状に起因して、流動方向だけでなく、垂直方向すなわち成形品厚み方向へのひろがりによって、成形体厚み方向の熱伝導性が向上する。なお、縦部1bの幅Q(第2図)が小さいときには、縦部1bの厚み方向の中央付近でもフィラー5は縦部1bの縦面(すなわち穴部2の壁面)に沿って配向するようになる。
【0109】
この熱伝導成形体1では、穴部2は直線スリット状であるが、曲線スリット状でも屈曲スリット状でもよい。また、途中で分断していてもよい。
【0110】
<第6図〜第8図の熱伝導成形体6>
第6図は第3態様の実施の形態に係る熱伝導成形体6の斜視図、第7,8図は第6図のVII−VII線及びVIII−VIII線断面図である。
【0111】
第6〜8図に示す熱伝導成形体6は、第1〜5図の熱伝導成形体1の縦部1bを被包するように樹脂の二色成形部7を穴部2に充填し、熱伝導成形体1と一体に設けたものである。この二色成形部7は、熱伝導成形体1の成形にひきつづいて二色成形部7を二色成形することにより成形される。
【0112】
第7,8図の通り、二色成形部7は縦部1b同士の間の穴部2に密に充填されているだけでなく、第7図の左側の縦部1bの左側と右側の縦部1bの右側にも充填されている。
【0113】
また、二色成形部7は縦部1bの上端面をも被包している。ただし、第3態様の熱伝導成形体の場合、この縦部1bの上方部の二色成形部7の厚みが大きくなると、熱伝導成形体6の上下方向の熱伝導率が低くなるため、縦部1bの上側の二色成形部7の厚さ(高さ)t1と熱伝導成形体1のベース部1aの厚さt2の合計が、熱伝導成形体6の全体の平均厚さT0の30%以下、特に20%以下、とりわけ10%以下であることが好ましい。
【0114】
縦部1bが熱伝導成形体6の上端面に露出するようにt1=0とすると、厚み方向の熱伝導性を損なわない点で望ましい。
【0115】
この熱伝導成形体6の二色成形部7は、板状無機フィラーや繊維状フィラーその他の熱伝導性に優れるフィラーを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ただし、二色成形部7が板状無機フィラーを含有することにより、熱伝導成形体6の厚み方向の熱伝導性が向上する。特に、二色成形時に二色成形部7中の板状無機フィラーが縦部1bの壁面に沿って配向することにより、熱伝導成形体6の熱伝導性が向上する。
【0116】
なお、第6〜8図で二色成形部7に板状無機フィラーを含有させた場合、熱伝導成形体1の樹脂としては板状無機フィラーを含有しないものであってもよい。ただし、上述の通り、熱伝導成形体1と二色成形部7との双方に板状無機フィラーを含有させるのが好ましい。
【0117】
また、二色成形部7を先に成形し、熱伝導成形体1を後から二色成形して熱伝導成形体6を成形するようにしてもよい。
【0118】
<第9〜11図の熱伝導成形体1A,第12図の熱伝導成形体1B>
第1図の熱伝導成形体1では縦部は板状であるが、第9〜12図の熱伝導成形体1A,1Bのように縦部は柱状であってもよい。
【0119】
第9,10図の熱伝導成形体1Aは、ベース部1aから複数の角柱状の縦部1cを複数本立設したものである。なお、第10図は第9図のX−X線断面図であり、第11図は、この熱伝導成形体1Aの成形用金型の断面図である。
【0120】
この熱伝導成形体1Aは、第11図に示すように、キャビティ3を有した金型4を用いて成形されたものである。キャビティ3は、ベース部1aを成形するためのキャビティロワー3aと、縦部1cを成形するためのキャビティアッパー3bとからなる。
【0121】
キャビティロワー3aに対し、射出注入口4aから板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラー含有樹脂組成物が注入される。この注入口4aからキャビティロワー3aに注入されたフィラー含有樹脂組成物は、キャビティロワー3aからキャビティアッパー3bに流れ込む。キャビティアッパー3bは上方に立ち上がる狭い空室であるため、フィラー含有樹脂組成物が該キャビティアッパー3b内に流れるときに、樹脂組成物中の板状無機フィラー5及び/又は繊維状フィラーがキャビティアッパー3bの内面に沿って配向する。この結果、成形された熱伝導成形体1の縦部1cにあっては、フィラー5は、縦部1cの縦面(側周面)に沿って上下方向に配向するようになり、熱伝導成形体1Aの上下方向の熱伝導率が高いものとなる。
【0122】
第12図の熱伝導成形体1Bはベース部1aから円柱状の縦部1dを複数本立設したものである。
【0123】
縦部1c,1dは桝目状に配列されているが、千鳥状に配列されてもよい。この縦部1c,1d同士の間が穴部である。また、縦部1c,1d群の外周囲(ただしベース部1aの上部)も穴部である。
【0124】
いずれの熱伝導成形体1A,1Bにおいても、フィラー5は縦部1c,1dの側面(即ち穴部の壁面)に沿って上下方向に配向する。
【0125】
<第13図の熱伝導成形体1C>
本発明では、第13図の熱伝導成形体1Cのように、複数の板状の縦部1eをベース部1aの長手方向と交差方向特に直交方向に延設してもよい。この熱伝導成形体1Cにおいても、フィラー5は縦部1eの板面に沿って上下方向に配向する。なお、縦部1e同士の間が穴部であると共に、縦部1e群の外周囲(ただしベース部1aの上方領域)が穴部である。
【0126】
<第14図、第15図の熱伝導成形体6A,6B>
第14図は第11図の熱伝導成形体1Aの縦部1cを被包するよう二色成形部7Aを成形した熱伝導成形体6Aの水平断面図であり、同一符号は第11図と同一部分を示している。
【0127】
第15図は第13図の熱伝導成形体1Cに二色成形部7Bを一体化させた熱伝導成形体6Bの縦断面図であり、同一符号は第13図と同一部分を示している。
【0128】
第14図、第15図の熱伝導成形体6A,6Bの場合、2色成形部7A,7Bを先に成形した後に、縦部1c,1eを成形して熱伝導成形体6A,6Bを製造しても良い。
【0129】
なお、第12図、第14図において、2色成形部を1次成形体として成形した後に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを充填した樹脂組成物を該1次成形体の穴部に充填することによって成形された成形体が、本発明の第4態様の熱伝導成形体である。
【0130】
図示は省略するが、第12図の熱伝導成形体1Bにおいても二色成形部を設けてもよい。
【0131】
<第21図〜第25図熱伝導成形体>
第21図は熱伝導成形体40の斜視図、第22図は熱伝導成形体40の平面図、第23,24図は第22図のXXII−XXII、XXIII−XXIII線断面図、第25図は第22図のXXV−XXV線に沿う拡大断面図である。
この熱伝導成形体40は、第2態様に係るものであり、基部41と、該基部41から複数本平行に延出した縦棒部42と、各縦棒部42の先端同士を繋ぐように縦棒部42と直交方向に延在した横棒部43と、縦棒部42の長手方向の途中同士を連結しているタイ部44とを有している。縦棒部42同士の間は、上下両面に開放し、縦棒部42の長手方向に延在する穴部45となっている。
基部41は、縦棒部42の長手方向と直交方向に延在している。基部41の上面側には凸条部41aが長手方向に延設されている。
縦棒部42の基端側にはV字形の凹所42aが設けられている。これは、熱伝導成形体40を射出成形する際の金型絞り部によって形成されたものである。
横棒部43は、縦棒部42の先端部の下面側にのみ形成されている。即ち、横棒部43は縦棒部42よりも厚みが小さいものとなっている。これは、穴部45に縦棒部42の先端側から二色成形部用の樹脂材料を流入させるためである。同様の理由から、前記タイ部44も縦棒部42の下面側にのみ形成されている。後述の第28図〜第32図のように二色成形を行うと、二色成形部用樹脂材料は、横棒部43の上側を通って穴部45に導入され、タイ部44の上側を通って穴部45の最奥部(基部41側)にまで流入する。
横棒部43は、基部41から遠ざかるほど厚みが小さくなる断面形状を有している。横棒部43及びタイ部44は、縦棒部42を補強するためのものであり、特に、穴部45に樹脂材料を二色成形によって充填する際に縦棒部42の変形、損傷が防止される。
第25図に縦棒部42の厚みT、穴部45の幅W及び穴部45の間隔Qを記入してある。
この熱伝導成形体40は、第26図に示した、基部41に延長部46が一体的に連なる成形体40Aから該延長部46を切断除去することにより得られるものである。
この成形体40Aは、第27図に示すように、金型47のキャビティ48に成形機シリンダノズル50からスプレー49を介して樹脂材料を射出して成形したものである。キャビティ48の形状は成形体40Aの外形に合致する。成形された成形体40Aは、型開き後、エジェクタピン51を突出させることにより脱型される。
この実施の形態では、エジェクタピンは縦棒部42と延長部46を押すように配置されているが、これに限定されない。
【0132】
<第28図〜第32図の熱伝導成形体>
第28図は熱伝導成形体60の斜視図、第29図は熱伝導成形体60の平面図、第30図は第29図のXXX−XXX線断面図、第31図は第29図のXXXI−XXXI線断面図、第32図は第29図のXXXII−XXXII線に沿う拡大断面図である。
この熱伝導成形体60は、上記熱伝導成形体40の穴部45に対し二色成形部用樹脂材料を射出成形すると共に、この二色成形部用樹脂材料にて、前記基部41と反対側に基部61を形成したものである。
なお、二色成形することにより、延長部46と対称に二色成形部用樹脂材料によって基部61に連なる延長部(図示略)が形成され、この延長部を切断分離することにより第28図に示す二色成形体よりなる熱伝導成形体60となる。
穴部45内に充填された二色成形部用樹脂材料によって二色成形品縦棒部62が形成される。縦棒部42,62の上面及び下面は面一状である。基部61の形状は基部41と対称である。
【0133】
<第33図〜第35図の熱伝導成形体>
上記の第28図〜第32図の熱伝導成形体60では、二色成形された縦棒部62及び基部61は縦棒部42及び基部41の下面と面一状であるが、第33図〜第35図の熱伝導成形体60Aは、この縦棒部62及び基部61の下面を縦棒部42及び基部41の下面よりも出っ張らせるように、縦棒部62及び基部61を第28図〜第32図よりも厚く成形したものである。二色成形部用樹脂材料は、基部41の下側にまでは充填されていない。
この熱伝導成形体60Aは第3態様に係るものである。
【0134】
<第40図〜第43図の熱伝導成形体>
第40図〜第43図の熱伝導成形体は、第36図〜第39図の熱伝導成形体(ただし、この第36図〜第39図の熱伝導成形体は、後述の比較例に係るものであるので、以下の説明では熱伝導成形体素板という。)に穿孔して穴部を形成し、この穴部に樹脂材料を二色成形により充填したものである。
第36図は熱伝導成形体素板の斜視図、第37図は熱伝導成形体素板の平面図、第38図及び第39図は第37図の38−38線、39−39線に沿う断面図である。第40図は熱伝導成形体70の斜視図、第41図は熱伝導成形体70の平面図、第42図及び第43図は第41図の42−42線、43−43線に沿う断面図である。
第36図〜第39図の熱伝導成形体素板70Aは、方形の平板部73と、該平板部73の1対の平行辺部に一体的に連なる基部71,72とを有する。基部71,72は対称形状である。基部71,72の形状は前記基部51,61と同様である。熱伝導成形体素板70Aは全体として一体に射出成形されたものである。なお、この場合も、基部71,72に連なるように延長部も一体に成形され、脱型後、この延長部を切断分離している。
第40図〜第43図の熱伝導成形体70は、この熱伝導成形体素板70Aの平板部に多数の穴部74を穿設し、この穴部74に樹脂材料75を二色成形により充填したものである。
この実施の形態では、穴部74は円形であり、平板部73を厚み方向に貫通している。穴部74は平板部73の全域に均等に配置されている。
【0135】
<穴部のその他の断面形状>
本発明では、穴部は三角形、多角形や楕円形など図示以外の各種の断面形状のものとすることができる。また、複数の形状の穴部が組み合わされてもよい。第16図はかかる熱伝導成形体8の水平断面図であり、方形部の一部を突出させた断面略L字形の穴部8aと、断面円環形の穴部8bと、断面円形の穴部8cとが設けられている。穴部8bと8cは同軸状に配置されている。
【0136】
なお、上記の説明において、「上下」や「水平断面」は、第1図に示した姿勢における上下や水平断面を指称しているものであるが、熱伝導成形体の使用時の方向に関連するものではない。
【実施例】
【0137】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0138】
なお、以下の実施例及び比較例で成形に用いた樹脂ペレットは、下記のポリエステルエラストマーと無機フィラーとを、ポリエステルエラストマーと無機フィラーとの合計に対する無機フィラーの割合が30vol%となるように、夫々のフィード量を調整して、二軸押出機(池貝(株)製「PCM45」)により、下記の混練条件で溶融混練して得られたものである。
【0139】
<ポリエステルエラストマー>
ペルプレンP55B(東洋紡(株)製、比重1.15)
<無機フィラー>
膨張黒鉛CP・B(日本黒鉛(株)製、比重2.2)
<混練条件>
バレル温度:220℃
スクリュー回転数:150rpm
吐出量:30kg/h
【0140】
[実施例1,2、比較例1]
樹脂ペレットを90℃で4時間乾燥した後、75トン射出成形機を用いて、厚み2mm、幅2mm、長さ50mmのロッドを成形した。成形条件は、シリンダ温度240℃、金型温度80℃、充填率50cc/secとした。
【0141】
得られたロッドを切断し、破断面を電子顕微鏡にて観察した結果、ロッド内の黒鉛の平均厚みは0.6μmであった。次に、側面を研磨して電子顕微鏡にて観察し、ロッド側面に沿って配向している黒鉛の平均粒子径(短径の平均値)を測定した結果、11μmであった。上記の結果より、成形体中の黒鉛の平均粒子径/平均厚みの比は、18であった。また、同様に測定した長辺の平均値は14μmであり、長径の平均値/短径の平均値の比は1.27であった。
【0142】
次に、このロッドを用いて本発明の原理を検証するための模擬樹脂成形体を以下のようにして作製した。
得られたロッド複数本を間隔を開けて並列配置し、2枚の銅板(10mm×20mm×厚さ2mm)32,32間にはさんで第17図(a)〜(c)に示すサンプル30A〜30Cを作製し、穴部(スリット)を有する模擬樹脂成形体を得た。ここで、銅板2は、測定のばらつきを低減するために設けたものであり、ロッド31と銅板32とは熱伝導接着剤(DIEMAT社製DM6030Hk/F954)で接着した。
【0143】
実施例1のサンプル30Aは、5本のロッド31を2mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものであり、実施例2のサンプル30Bは、7本のロッド31を1mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものであり、比較例1のサンプル30Cは、3本のロッド31を7mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものである。
【0144】
なお、これらのサンプルのうち、実施例1のサンプル30Aの詳細を第18図に示す。第18図(a)は実施例1のサンプル30Aの斜視図であり、第18図(b)は、サンプル30Aから上側の銅板32をとりのぞいた状態を示す斜視図であり、第18図(c)は第18図(a)のC−C線に沿う断面図である。第17図(a)は第18図(a)のXVII−XVII線に沿う断面図に相当する。他のサンプルについても同様である。
【0145】
これらのサンプルは、ロッド31同士の間隙に穴部(スリット)が形成された樹脂成形体を模擬したものとなり、各部の寸法は次のように求められる。
【0146】
樹脂成形体の厚みT=ロッドの高さ(2mm)
単位体積(3×T)×(3×T)×T=72mm3
単位体積中の壁面総面積=単位体積中に存在するロッドの側面の面積の合計
穴部(スリット)の幅(W)=ロッド同士の間隔
穴部(スリット)の間隔(Q)=ロッドの幅
穴面積比率=単位体積における透影面積((3×T)×(3×T))に存在するロッドの透影面積の合計
【0147】
各サンプルについて求めたこれらの値を表1に示す。
【0148】
次に、第19図に示す測定装置を用いて、各サンプルの伝熱特性を評価し、結果を表1に示した。
即ち、熱電対33A,33Bを埋め込んだ20mm×10mm×2mm厚みの2枚の銅板34A,34Bの間に、サンプル30を挟み、銅板34A側には、10mm×10mm×1mm厚みのセラミックヒーター35を重ね、更に断熱板36A,36Bではさんで、ヒーター側銅板34Aをヒーター35により加熱した。
ヒーター35への出力を調整し、ヒーター側銅板34Aを90℃(±0.2℃)に安定させ、サンプル30を介した反ヒーター側の銅板34Bの温度を測定し、下記に示すΔTを測定した。
ΔT=ヒーター側銅板34Aの温度(90℃) − 反ヒーター側銅板34Bの温度
この温度差ΔTの値が小さいほど、サンプル30の熱伝導性が優れることを意味する。
【0149】
[比較例2]
樹脂ペレットを用いて、100mm×100mm×2mm厚みのプレートを、端面にフィルムゲートを有する金型を用いて成形した。得られたプレートの中央部から、10mm×20mmのサンプル片を切り出し、穴形状を有しない平板状樹脂成形体を得た。この樹脂成形体は、板面方向に黒鉛の板面が配向したものである。この樹脂成形体を実施例1のロッドと同様に2枚の銅板32,32ではさんで熱伝導接着剤で接着して第17図(d)に示すサンプル30Dを作製した。
このサンプル30Dについて、実施例1と同様の伝熱特性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0150】
【表1】
【0151】
[実施例3]
本発明の第3態様の効果を検証するために、第20図のように、実施例1で用いたと同様のロッド1を10本隙間無く並べた。すなわち、実施例1(第17図(a))の穴部が、同一の樹脂組成物によって充填された、第3態様の模擬樹脂成形体であるサンプル30Eを作製した。
このとき各ロッドの側面同士をエポキシ接着剤にて接着した。
得られたサンプルについて、実施例1と同様にΔTを測定した結果、ΔTは2.4℃であった。
【0152】
[実施例4、比較例3]
実施例3及び比較例2のサンプルから直接10mmの円盤を切り出し、レーザーフラッシュ法によって、厚み方向の熱拡散率を測定した。その結果、
実施例4:2.2×10−2cm2/秒
比較例3:0.7×10−2cm2/秒
であった。
【0153】
以上の結果から、次のことが分かる。
実施例1のサンプルは、比較例2の穴部のない平板状のサンプルに比べて、ロッドによる銅板との接触面積が50%であるにも関わらず、ΔTが小さい。すなわちロッド間のスリットの壁面に配向した黒鉛の効果によって、ヒータ側の熱を効率よく反ヒータ側へ伝えていることが分かる。
さらに、実施例2では、単位体積中の壁面総面積を増加し、穴面積比率を低下させることによって、ΔTが減少している。
一方、比較例1のように、単位体積中の壁面総面積が本発明の範囲よりも少ないと、比較例2の平板状のサンプルよりも熱伝導性が悪く、ΔTが大きくなる。
さらに、実施例3のΔTが最も低く、放熱性が最も良好であったこと、及び実施例4と比較例3の結果より、本発明の第3態様の構造を用いれば、厚み方向の放熱性がさらに改善され、通常の平板形状(比較例3)に比べて3倍程度放熱性が改善されることが明らかである。
【0154】
以下、実施例5〜13および比較例4〜9について説明する。これらの実施例5〜13および比較例4〜9で用いた樹脂組成物は、表2に示す組成物A〜Dであり、各々二軸押出し機(池貝社製 PCM45)を用いて混練し、表2に示す樹脂組成物A〜Dのペレットとした。混練条件は次の通りである。
バレル温度:300℃
スクリュー回転数:150rpm
吐出量:30Kg/hr
混練に際しては、ポリフィニレンサルファイドをトップフィードによりあらかじめ溶融させた後、無機フィラーをサイドフィーダーより投入し、夫々のフィード量を調整して所定の配合量の樹脂組成物A〜Dとした。
次に、樹脂組成物A〜Dのペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、75トン射出成形機を用いて、シリンダ温度320℃、金型温度140℃にて、次の実施例5〜13及び比較例4〜9のようにして成形を行った。
【0155】
【表2】
【0156】
[実施例5]
樹脂組成物Aを使用して、第21図〜第25図に示す形状の、第2態様の熱伝導成形体40を成形した。この熱伝導成形体40の厚み(T)、スリット幅(W)およびスリット間隔(Q)を表3に示した。横棒部43及びタイ部44の厚み(T方向の厚さ)は0.4mmである。
次に上記の成形体中の黒鉛の平均厚みおよび短径の平均粒子径を、実施例1、2と同様の方法で測定した結果、平均厚み0.4μm、平均粒子径13μm、平均粒子径/平均厚み比32.5であった。
【0157】
[実施例6,7]
実施例5において、金型の形状を変更し、成形体のスリット幅およびスリット間隔の寸法を表3の通り変更したこと以外は同様にして熱伝導成形体を成形した。
【0158】
[実施例8]
実施例5で得られた熱伝導成形体40を1次成形体とし、樹脂組成物Aをスリット状の穴部45に充填して、第3態様に係る第28図〜第32図に示す熱伝導成形体60を成形した。
【0159】
[実施例9]
1次成形体として実施例6で成形した熱伝導成形体を使用して、実施例8と同様に樹脂組成物Aをスリット状の穴部45に充填して、第3態様の熱伝導成形体を成形した。
【0160】
[比較例4]
樹脂組成物Aを使用し、第36〜39図に示すプレート状の熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0161】
[実施例10]
2次成形に用いる金型として、1次成形体の厚みよりも厚い(1.6mm厚み)キャビティを有する金型を用いた他は実施例8と同様にして、第33図〜第35図に示す熱伝導成形体60Aを成形した。
この熱伝導成形体60Aは、1次成形体としての熱伝導成形体40の厚み1.2mmのスリット状穴部45及び縦棒部42の裏側に樹脂組成物が充填されたものである。第35図における厚みTは1.6mmである。
【0162】
[比較例5]
実施例10で用いた1.6mm厚みの2次成形用キャビティを有する金型を使用し、1次成形体をインサートせずに射出成形を行ったこと以外は実施例10と同様にして、プレート状熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0163】
[比較例6]
2次成形用キャビティの厚みが3mmであること以外は実施例10で用いたものと同じ金型を使用したこと以外は実施例10と同様にして、第33図〜第35図に示す熱伝導成形体60Aの構成を有した成形体を成形した。
この成形体は、1次成形体としての熱伝導成形体40の厚み1.2mmのスリット状穴部45及び縦棒部42の裏側に樹脂組成物が充填された成形体である。この成形体は、全体の厚みT(第35図)が3mmであること以外は実施例10と同一構成のものである。
【0164】
[比較例7]
比較例6で用いた厚み3mmのキャビティを有する金型を使用し、1次成形体をインサートせずに射出成形を行ったこと以外は比較例6と同様にして、プレート状熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0165】
[実施例11]
樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、スリット状穴部を有する第1態様の熱伝導成形体40を成形した。これを1次成形体として用いたこと以外は実施例8と同様にして、スリット状穴部45に樹脂組成物Bを充填してなる第28図〜第32図に示す構造の熱伝導成形体60を成形した。
この熱伝導成形体中の窒化ホウ素の平均厚みおよび短径の平均粒子径を、実施例1、2と同様の方法で測定した結果、平均厚み0.7μm、平均粒子径8μm、平均粒子径/平均厚み比11.7であった。
【0166】
[実施例12]
実施例11において、二色成形部用樹脂材料として樹脂組成物Cを用いたこと以外は同様にして、第28図〜第32図に示す構造の熱伝導成形体60を成形した。
【0167】
[比較例8]
樹脂組成物Bを用いたこと以外は比較例4と同様にして、樹脂組成物Bよりなる熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0168】
[実施例13]
比較例4で成形した、樹脂組成物Aよりなるプレート状熱伝導成形体素板70Aに、直径1.2mmの穴を中心間距離2.4mmの間隔で100個(縦方向に10個、横方向に10個。10×10=100個)穿孔した。このように穿孔した成形体を、実施例10で用いた、1.6mm厚みの2次成形用キャビティを有する金型の該キャビティ内にインサートした後、樹脂組成物Dを射出して各穴部に充填し、第40図〜第43図に示す本発明の第4態様の熱伝導成形体70を成形した。
【0169】
[比較例9]
樹脂組成物Dを用いたこと以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物Dよりなる熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0170】
上記の実施例5〜13、および比較例4〜9の樹脂組成物および成形体の仕様を、表3〜表6に示した。
【0171】
熱拡散率測定
上記の方法で得られた成形体について、実施例4および比較例3と同様の方法で、熱拡散率を測定した。結果を表3〜表6に示す。
【0172】
放熱特性(ヒーター温度)の測定
第44図に示す装置を使用して、放熱特性を評価した。水槽80内に氷水が収容されている。銅ブロック81が、断熱ブロック80aを介して、その大部分を氷水中に水没させ、10mmだけ水面から突出するように配置されている。
この銅ブロック81上に、実施例1で用いた熱伝導接着剤を用いて成形体サンプル82を貼り付け、サンプル上面中央に実施例1で用いたヒーター83を取り付け、ヒーター83に10Vを印加した際のヒーター温度を熱電対84で測定した。
熱伝導接着剤;DIEMAT社製 DM6030Hk/F954
銅ブロック;75mm×75mm×50mm厚み
ヒーター;ミスミ社製 小型セラミックヒーターMMCPH−15−10
【0173】
なお、評価は23℃の恒温環境中で実施し、ヒーター温度の測定は、熱電対85で検出される銅ブロックの温度が0〜3℃の範囲で維持されていることを確認しながら、電圧印加後にヒーター温度が安定した後の温度を測定した。ここでヒーターの発熱は、成形体サンプルの厚み方向の熱伝導により銅ブロックへ伝わり冷却される。したがってヒーター温度が低いほど、放熱性が高いことを意味する。結果を表3〜表6に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
[考察]
実施例5〜7の結果より、本発明の第2態様の熱伝導成形体は、比較例4の通常のプレート状成形体に比べて、ヒーター温度が低く放熱性が高い。中でも、単位体積中の壁面総面積が大きい実施例6や、単位面積中の穴面積比率の小さい実施例7が効果が顕著である。
実施例8、実施例9のごとく、スリット状穴部に同一の樹脂組成物を充填した第3態様では、さらに放熱効果が大きく、熱拡散率は、比較例4の3倍以上である。
実施例10ではスリット状穴部が貫通していない場合においても、穴深さの比率が本発明の範囲内であれば、同厚みの通常のプレート成形体である比較例5に比べて優れた効果を発現する。一方、比較例7および8のごとく、穴深さの比率が本発明の範囲よりも小さい場合には、効果が極めて少ない。
実施例11および比較例8の結果から、無機フィラーとして本発明の範囲内の窒化ホウ素を用いても同様の効果が得られることが分かる。さらに、実施例12に示すように、2色成形用材料として熱伝導性の低いガラス繊維を添加した樹脂組成物を使用しても、発明の効果が得られる。特に実施例12のように、窒化ホウ素を配合した樹脂組成物熱と、ガラス繊維強化樹脂組を組み合わせた成形体は、電気絶縁性も維持される。
さらに実施例13で示したように、本発明の第4態様によると、優れた放熱特性が得られる。
なお、実施例9や、実施例13にように、異種の材料を組み合わせても放熱特性が得られることから、第45図のように、ガラス繊維強化樹脂組成物等によりハウジングや基盤などの成形体90を成形し、発熱部91にのみ本発明の熱伝導成形体92を設けることにより、安価で高い強度を有すると共に、高い放熱特性を有する構造体が構成される。
【符号の説明】
【0179】
1,1A,1B,1C,6,6A,6B,8,40,60,70 熱伝導成形体
2,45,75 穴部
3,48 キャビティ
4,47 金型
5 フィラー
7 二色成形部
31 ロッド
32 銅板
33A,33B 熱電対
34A,34B 銅板
35 ヒーター
36A,36B 断熱板
30、30A,30B,30C,30D,30E サンプル
41,61,71,72 基部
42,62 縦棒部
43 横棒部
44 タイ部
73 平板部
75 樹脂材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導性を示す樹脂成形体に関する。詳しくは、本発明は、熱伝導性フィラーによる熱伝導性の向上効果を有効に発揮させた熱伝導成形体であって、放熱シート、熱拡散板、配線基盤、ハウジング部品、軸受け等の構成材料として有用な高熱伝導成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分に熱伝導性フィラーを充填して、熱伝導性、放熱性を向上させた様々な樹脂形成体が検討されているが、その熱伝導性、放熱性は、十分に満足し得るものでは無い。
【0003】
即ち、例えば、熱伝導性フィラーが、粒子状や不定形状の場合には、マトリックス樹脂中で、熱伝導性フィラー同士が十分に接触して熱伝導経路を形成させるために、大量のフィラーを配合することが必要となり、この結果、成形性や成形体の機械的強度を著しく低下させることとなる。
【0004】
熱伝導性フィラーが、繊維状又は板状の場合には、成形時の流動や、厚み方向への圧縮によって生ずる熱伝導性フィラーの配向により熱伝導経路が形成されるため、比較的少量の熱伝導性フィラーの添加によって、熱伝導性を向上させることができる。しかしながら、シートや、ハウジング部品等の平面形状を有する成形体では、平面形状部位において、繊維状ないし板状フィラーは面方向に配向するため、面方向における熱伝導性は得られても、厚み方向の熱伝導性を十分に向上させることはできない。
【0005】
特公平6−38460号公報には、熱伝導性フィラーが面方向に配向したシートを厚み方向に切削することによって、厚み方向の熱伝導性を向上させた放熱シートが提案されている。
特開2002−270739号公報には、熱伝導性粒子が放射状に中心軸から配向している円筒状ブロックを、円筒の中心軸の周りに回転させながら、前記円筒状ブロックの外周に沿って表層部を切削することにより、厚み方向に熱伝導性粒子が配列したシートを得る方法が開示されている。
特開2003−26828号公報には、磁性を示す熱伝導性粒子及び熱伝導性繊維を含有する樹脂シートを成形硬化させる際に、シートの厚み方向に磁場を作用させることによって、熱伝導性粒子及び熱伝導性繊維を厚み方向に配列させた熱伝導シートが開示されている。
特開2004−50704号公報には、液晶性高分子をマトリックスとして用い、磁場配向によって液晶高分子を厚み方向に配向させた熱伝導性高分子成形体が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記の技術では、いずれも加工プロセスが複雑であったり、特殊な加工設備が必要であったりすることにより、製造コストが高くつく上に、ハウジング等の構造体への適用が困難であるという問題がある。一方、繊維状又は板状フィラーを用いて熱源の発熱を面方向に拡散させる場合もあるが、近年の熱源の温度上昇に対して、必ずしも充分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−38460号公報
【特許文献2】特開2002−270739号公報
【特許文献3】特開2003−26828号公報
【特許文献4】特開2004−50704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、煩雑な加工プロセスや加工設備を必要とすることなく、容易にかつ安価に製造することができ、ハウジング等の構造体への適用にも好適な熱伝導成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含む樹脂組成物を成形する際、所定の形状の穴によって形成される壁面に沿って板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーが配向することを利用して、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを成形体の厚み方向に配向させ、これにより、熱伝導性フィラーによる成形体厚み方向の熱伝導性の向上効果を有効に発揮させることができることを見出した。さらに、繊維状フィラーの流動方向の配向を増加させることで、平面方向(流動方向)への熱伝導性を、向上できることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基いて、達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] 樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0012】
[2] [1]において、該板状無機フィラーが、黒鉛及び/又は窒化ホウ素よりなることを特徴とする熱伝導成形体。
【0013】
[3] [1]又は[2]において、射出成形、又はトランスファー成形によって成形された成形体であることを特徴とする熱伝導成形体。
【0014】
[4] 樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とする熱伝導成形体。
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0015】
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の熱伝導成形体の前記穴部に、樹脂が充填されてなることを特徴とする熱伝導二色成形体。
【0016】
[6] 成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する樹脂成形体(以下「1次成形体」と称す。)と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、煩雑な加工プロセスや加工設備を必要とすることなく、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配合した樹脂組成物を所定形状に成形するのみで、樹脂成形体の厚み方向に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配向させて、熱伝導性フィラーによる熱伝導ネットワークを厚み方向に成形することができ、これにより厚み方向の熱伝導性に優れた高熱伝導成形体を提供することができる。さらに、請求項4の発明によれば、平面方向の熱伝導性に優れた高熱伝導成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1態様の実施の形態に係る熱伝導成形体を示し、(a)図は、(b)図に示す平板状成形体のA部の斜視図であり、(b)図は、該平板状成形体の平面図である。
【図2】第1図(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】第1図の熱伝導成形体の一部の断面斜視図である。
【図4】第3図のIV−IV線断面図である。
【図5】第3図のV−V線断面図である。
【図6】第2態様の実施の形態に係る熱伝導成形体の斜視図である。
【図7】第6図のVII−VII線断面図である。
【図8】第6図のVIII−VIII線断面図である。
【図9】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の斜視図である。
【図10】第9図のX−X線断面図である。
【図11】第9,10図の熱伝導成形体の成形用金型の断面図である。
【図12】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図13】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図14】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図15】第14図のXV−XV線断面図である。
【図16】別の実施の形態に係る熱伝導成形体の断面図である。
【図17】実施例1,2及び比較例1,2で作製したサンプルの断面図である。
【図18】(a)図は実施例1で作製したサンプルの斜視図であり、(b)図は、このサンプルの上側の銅板をとりのぞいた状態を示す斜視図であり、(c)図は(a)図のC−C線に沿う断面図である。
【図19】実施例及び比較例において、伝熱特性の評価に用いた測定装置の概略を示す断面図である。
【図20】実施例3で作製したサンプルの断面図である。
【図21】熱伝導成形体40の斜視図である。
【図22】熱伝導成形体40の平面図である。
【図23】第22図のXXIII−XXIII線断面図である。
【図24】第22図のXXIV−XXIV線断面図である。
【図25】第22図のXXV−XXV線に沿う拡大断面図である。
【図26】熱伝導成形体の切断前の斜視図である。
【図27】熱伝導成形体の射出成形方法を示す断面図である。
【図28】熱伝導成形体60の斜視図である。
【図29】熱伝導成形体60の平面図である。
【図30】第29図のXXX−XXX線断面図である。
【図31】第29図のXXXI−XXXI線断面図である。
【図32】第29図のXXXII−XXXII線に沿う拡大断面図である。
【図33】熱伝導成形体の断面図である。
【図34】熱伝導成形体の断面図である。
【図35】熱伝導成形体の断面図である。
【図36】熱伝導成形体素板の斜視図である。
【図37】熱伝導成形体素板の平面図である。
【図38】第37図の38−38線に沿う断面図である。
【図39】第37図の39−39線に沿う断面図である。
【図40】熱伝導成形体70の斜視図である。
【図41】熱伝導成形体70の平面図である。
【図42】第41図の42−42線に沿う断面図である。
【図43】第41図の43−43線に沿う断面図である。
【図44】放熱特性の測定方法を示す断面図である。
【図45】放熱構造体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
【0020】
[第1態様(請求項1〜3)の熱伝導成形体]
第1態様の熱伝導成形体は、樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とするものである。
【0021】
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0022】
この第1態様の熱伝導成形体では、この穴部の壁面(熱伝導成形体厚み方向に延在する壁面。以下、単に「壁面」と称す場合がある。)に沿って板状無機フィラーが配向することにより、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が向上する。
【0023】
この熱伝導成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、板状無機フィラーの厚み方向の配向効率が大きくなり、厚み方向の熱伝導性が向上する。従って、本発明では、単位体積あたりの壁面の面積Aは、4×T3以上、望ましくは5×T3以上、さらに望ましくは7×T3以上とする。
【0024】
なお、ここで、壁面の面積Aとは、単位体積内に存在する、穴部の熱伝導成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、熱伝導成形体の平均厚みTに対して、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0025】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、フィラー含有樹脂組成物の射出成形やトランスファー成形などによって製造することができ、この熱伝導成形体を成形する際に、穴部の壁面に沿って樹脂組成物が流動することにより、板状無機フィラーが該壁面に沿って配向する。板状無機フィラーの形状は、流動方向に対して垂直方向にも広がりをもっているために、厚み方向への熱伝導性が向上する。なお、これに対して、繊維状フィラーでは、流動方向のみの形状であるため、厚み方向への寄与が無い。また、半溶融状態又は半硬化状態のフィラー含有樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で穴部を形成させて、この穴部の壁面に板状無機フィラーを配向させることもできる。
【0026】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する板状無機フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、熱伝導成形体の平均厚みTの70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。特に穴部が貫通穴であると、厚み方向に連続したフィラー配向層が形成されるので、厚み方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。また、厚み方向だけでなく、平面方向に熱を拡散したい場合には穴の深さを熱伝導成形体の平均厚みTの70〜99%望ましくは80〜95%に設定する。
【0027】
なお、熱伝導成形体をキャビティを有した金型によって成形するに際し、穴部成形用キャビティ内の樹脂流れ方向の下流部付近においては、キャビティ面に沿った流動が合わさるウェルドが生じるが、ウェルド部においても板状無機フィラーは配向する。従って、樹脂の流れ方向に穴部が分断されていても、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導率は十分に高いものとなる。
【0028】
穴部の深さ方向と垂直な断面における穴部の大きさとしては、最小幅(W)が成形体厚みTの0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。この最小幅Wとは、例えば穴の深さ方向と垂直な断面形状が長方形であれば、短辺の長さをさし、円形状であれば直径をさし、楕円形であれば短径をいう。穴部の最小幅Wがこれよりも小さいと、熱伝導成形体成形用金型又はスタンパの穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型又はスタンパから成形体を取り外すことが困難になる。穴部の最小幅Wがこれより大きいと、穴部の占める総面積の割合が大きくなりすぎたり、壁面の密度が小さくなり、すなわち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。スリット状の穴であると、壁に沿って安定した流動が生じやすく、高度な配向層が得られる点で望ましい。スリット状の穴は、幅に対して、長さが2倍以上であることが望ましく、さらには5倍以上例えば5〜50倍であることが望ましい。スリット形状は、直線でも良いし、曲線、屈曲、または分岐させても良い。
【0029】
また、隣接した穴部の最小間隔Qとしては、熱伝導成形体の平均厚みTの0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔Qがこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0030】
この熱伝導成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T)×長さ((9/n)×T)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0031】
この穴部には、熱伝導成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0032】
この第1態様の熱伝導成形体の平均厚みTは、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが望ましい。熱伝導成形体の平均厚みTがこれより薄くなると、穴部同士の間隙にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0033】
第1態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。
【0034】
[第2態様(請求項4)の熱伝導成形体]
本発明の第2態様の熱伝導成形体は、樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とするものである。
【0035】
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0036】
この第2態様の熱伝導成形体では、スリット状穴部の壁面に沿って繊維状フィラーを流動方向に配向させることによって、熱伝導成形体の該流動方向の熱伝導率を向上させるものである。
【0037】
すなわち、通常、繊維状フィラーは、キャビティの壁面近傍において流動方向に配向することにより、流動方向の熱伝導率が向上するが、成形体の形状によっては、分流や合流が生じたり、同心円状に広がって流動する場合があるため、必ずしも一方向への配向を形成できない。さらに、キャビティ壁面から離れた成形体の中央部付近では、一般にはランダムな配向が形成される。
【0038】
本発明の第2態様の熱伝導成形体では、スリット穴形状によって形成される壁面によって、流動方向すなわち配向方向を制御し、さらに壁面付近に生じる繊維状フィラーの配向によって、面方向の任意の方向に、優れた熱伝導性を得ることができる。
【0039】
この熱伝導成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、繊維状フィラーの流動方向の配向効率が大きくなり、流動方向の熱伝導性が向上する。従って、本発明では、単位体積あたりの壁面の面積A’は、4×T’3以上、望ましくは5×T’3以上、さらに望ましくは7×T’3以上とする。
【0040】
なお、ここで、壁面の面積A’とは、単位体積内に存在する、穴部の熱伝導成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、熱伝導成形体の平均厚みT’に対して、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0041】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、フィラー含有樹脂組成物の射出成形やトランスファー成形などによって製造することができ、この熱伝導成形体を成形する際に、穴部の壁面に沿って樹脂組成物が流動することにより、繊維状フィラーが該壁面に沿って配向する。その結果、成形体の該流動方向の熱伝導率が向上する。
【0042】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する繊維状フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、熱伝導成形体の平均厚みT’の70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。特に穴部が貫通穴であると、繊維状フィラーの配向部が増加するため、流動方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。
【0043】
スリット状穴部の深さ方向と垂直な断面における幅(W)は、成形体厚みT’の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。この幅Wとは、スリットの短径をいう。スリット幅Wがこれよりも小さいと、熱伝導成形体成形用金型の穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型から成形体を取り外すことが困難になる。穴部の幅Wがこれより大きいと、穴部の占める総面積の割合が大きくなりすぎたり、壁面の密度が小さくなり、すなわち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。スリット状の穴は、幅に対して、長さが5倍以上であり、さらには10倍以上例えば10〜50倍であることが望ましい。スリット形状は、直線でも良いし、曲線、屈曲、または分岐させても良い。
【0044】
また、隣接したスリット状穴部の最小間隔Qとしては、熱伝導成形体の平均厚みT’の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔Qがこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0045】
この熱伝導成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0046】
このスリット状穴部には、熱伝導成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0047】
この第2態様の熱伝導成形体の平均厚みT’は、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが望ましい。熱伝導成形体の平均厚みT’がこれより薄くなると、穴部同士の間隙にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0048】
第2態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。
【0049】
[第3態様(請求項5)の熱伝導成形体]
第2態様の熱伝導成形体は、上記第1態様又は第2態様の熱伝導成形体の穴部に樹脂を充填し、発熱体との接触面積を大きくするようにしたものである。
【0050】
穴部に充填する樹脂材料としては、穴部を有する第1態様又は第2態様の熱伝導成形体を形成するフィラー含有樹脂組成物と同一の材料でもよいし、異種の材料でも良い。穴部に充填する樹脂材料として、熱伝導性フィラーを添加した樹脂組成物を用いることによって、熱伝導性を向上させることができる。穴部に充填する樹脂組成物に用いる熱伝導性フィラーや樹脂成分の種類には制約は無いが、第1態様の熱伝導成形体の成形に用いる板状無機フィラー含有樹脂組成物、第2態様の熱伝導成形体の成形に用いる繊維状フィラー或いは、後述の第3態様の熱伝導成形体の1次成形体の成形に用いる板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラー含有樹脂組成物が挙げられる。このようなフィラー含有樹脂組成物を用い、穴部の壁面に沿ってフィラーが配向するように穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填すれば、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性はさらに向上する。ただし、穴部に充填する樹脂材料は、これらのフィラー含有樹脂組成物からフィラーを除いた樹脂組成物であっても良い。
【0051】
[第4態様(請求項6)の熱伝導成形体]
第4態様の熱伝導成形体は、成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する1次成形体と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とするものである。
【0052】
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【0053】
即ち、この熱伝導成形体では、任意の樹脂材料を用いて成形された、深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1〜1.3の穴部を有する1次成形体の穴部に、板状無機フィラー及び/又は繊維フィラーを5〜80vol%含有するフィラー含有樹脂組成物を充填することにより、この穴部の深さ軸方向の壁面に沿ってフィラー含有樹脂組成物中のフィラーが配向する結果、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が向上する。
【0054】
ここで、該穴部の深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が大きすぎると、穴の内部で長手方向の流動すなわち、平面方向の流動が生じるため、繊維状フィラーを使用した場合には特に、厚み方向の配向が失われるため、本発明の効果を損なう。
なお、第4態様においては、1次成形体の穴部に充填する樹脂組成物に用いるフィラーとして、繊維状フィラーを用いると、厚み方向の熱伝導性が向上し易い点で望ましい。
【0055】
この1次成形体の穴部の深さ方向と垂直断面における最長部と最短部の寸法比が2以下の穴部としては、当該断面形状が円形、楕円形(円形に近い楕円形)、正方形、三角形(正三角形に近い三角形)、長方形(正方形に近い長方形)、五角形や六角形等の多角形であっても円形に近い正五角形や正六角形などが挙げられる。
【0056】
この第4態様の熱伝導成形体において、1次成形体の任意の単位体積あたりの壁面の面積が大きいほど、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの厚み方向の配向効率が大きくなり、厚み方向の熱伝導性が向上する。従って、この単位体積あたりの壁面の面積A”は、4×T”3以上、望ましくは5×T”3以上、さらに望ましくは7×T”3以上とする。
【0057】
なお、ここで、壁面の面積A”とは、1次成形体の単位体積内に存在する穴部の1次成形体の厚み方向に延在する壁面の合計の面積である。
また、単位体積とは、前述の如く、1次成形体の平均厚みT”に対して、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であるが、この単位体積を、平均的な体積として取り出すべく、nは1以上8以下の数、好ましくは2以上3以下、より好ましくは3とする。
【0058】
このような熱伝導成形体は、例えば、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いて、樹脂材料の射出成形やトランスファー成形などによってこの1次成形体を成形し、次いでこの1次成形体の穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填して成形することにより製造することができ、フィラー含有樹脂組成物が穴部の壁面に沿って流動する際に、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーが該壁面に沿って配向することにより、熱伝導成形体の厚み方向の熱伝導性が得られる。また、半溶融状態又は半硬化状態の樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で穴部を形成させて、この穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填して壁面に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配向させることもできる。
【0059】
この穴部の深さが浅いと、壁面に沿って配向する板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの割合が少なくなり、厚み方向の熱伝導が阻害される。そのため、穴の深さは、1次成形体の平均厚みT”の70%以上、望ましくは75%以上、さらに望ましくは80%以上であり、貫通穴(深さが100%)であってもよい。穴部が貫通穴であると、厚み方向に連続したフィラー配向が形成されるので、厚み方向の熱伝導率が向上する。
【0060】
また、穴部の深さ方向と垂直な断面における穴部の大きさとしては、前述の最短部の寸法が1次成形体の厚みT”の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが好ましい。穴部の最短部の寸法がこれよりも小さいと、1次成形体の成形用金型又はスタンパの穴部形成用凸部の形成が困難になる。また、成形プロセスで穴部形成用凸部が破損しやすいものとなる。さらに、金型又はスタンパから成形体を取り外すことが困難になる。穴部の最短部の寸法がこれより大きいと、本発明で目的とする板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの配向が得られ難くなる。
【0061】
また、隣接した穴部の最小間隔としては、1次成形体の平均厚みT”の0.1倍以上、1.2倍以下、特に0.2倍以上、1.0倍以下であることが望ましい。間隔がこれより狭いとフィラー含有樹脂組成物の充填が困難である。間隔がこれより大きいと、壁面の密度が小さくなり、即ち、単位体積あたりの壁面の面積が小さくなり、十分な熱伝導性が得られなくなる。
【0062】
この1次成形体では、単位体積として切り出した任意の幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)の面内中において穴部の占める総面積の割合(以下、「穴面積比率」と称す場合がある。)が65%以下、特に50%以下、とりわけ40%以下であることが望ましい。穴面積比率がこれよりも大きいと、熱伝導成形体と発熱体との接触面積が小さくなるために、伝熱量が低下するおそれがある。穴面積比率の下限としては、単位体積あたりの穴の壁面の面積を確保する上で、通常3%以上、望ましくは7%以上である。
【0063】
この穴部には、成形体を金型から容易に取り外すための抜き勾配や、段差をつけても良い。さらに穴部の壁面を傾斜させても良い。傾斜角度は、厚み方向の垂直軸に対して45°以下が望ましい。
【0064】
この第4態様における1次成形体の平均厚みT”は、0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが好ましい。1次成形体の平均厚みT”がこれより薄くなると、穴部にフィラー含有樹脂組成物を充填させることが困難であり、一方、これより厚いと厚み方向の伝熱量が低下するおそれがある。
【0065】
第4態様の熱伝導成形体であるフィラー含有樹脂組成物の構成材料の好適例については後述する。1次成形体の成形材料は、このようなフィラー含有樹脂組成物であっても、このようなフィラー含有樹脂組成物からフィラーを除いた樹脂組成物であっても良い。
【0066】
[熱伝導成形体の成形方法]
第1,2態様の熱伝導成形体は、前述の如く、穴部を形成するための凸部を有する金型を用いてフィラー含有樹脂組成物の射出成形又はトランスファー成形などにより成形することができる。また、半溶融状態又は半硬化状態のフィラー含有樹脂組成物のシートをスタンピングするなどの手法で製造することもできる。
【0067】
第3、第4態様の熱伝導成形体は、射出成形、又はトランスファー成形等によって1次成形体を成形し、次いでこれを2次金型にインサートして成形したり、又は1次成形体を金型から取り出すことなく、コア金型のみを変えて連続的に二色成形して製造することができる。
【0068】
また、穴部に充填される突起形状を先に1次成形体として成形した後、二次材料を成形しても良い。
【0069】
二色成形体とした場合には、熱伝導成形体の厚み方向の両板面の表層部に穴部の少ない平板部を形成してもよい。この場合、この平板部の総厚みは、熱伝導成形体の平均厚みの30%以下とすることが望ましい。
【0070】
[樹脂組成物]
以下に本発明の熱伝導成形体の成形に用いる樹脂組成物について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとを含むものである。
【0071】
<樹脂成分>
本発明に係る樹脂組成物に含有され、本発明の成形体のマトリクス樹脂となる樹脂成分としては、各種の熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0072】
具体的には、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、各種の硬化性エラストマーなどが使用できる。
【0073】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)等のスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12などの各種ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの熱可塑性フッ素樹脂、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー等の、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。
【0074】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0075】
マトリックス樹脂としては、粘度が低いほうが無機フィラーを高充填しても、成形加工性を維持することができ好ましい。
【0076】
熱硬化型樹脂の粘度としては、無機フィラーを配合して成形加工する際の加工条件時(未硬化時)において0.8mPa・s〜106mPa・sが好ましい。粘度が0.8mPa未満では、粘度が低すぎて、ハンドリングが悪く、106mPa・sを超えると粘度が高すぎて、無機フィラーを充填しにくい。
【0077】
<板状無機フィラー>
本発明で用いる板状無機フィラーとしては、鱗片状、フレーク状等を含む扁平な形状のフィラーである。具体的には、アルミニウムフレーク、ニッケルフレークなどの板状金属フィラー、アルミナフレーク、窒化アルミニウムフレーク、タルク、マイカ、黒鉛(天然黒鉛、人工黒鉛、膨張黒鉛)、窒化ホウ素などの無機フィラーが挙げられる。中でも、黒鉛、窒化ホウ素などの結晶構造が六方晶構造である無機フィラーが、結晶構造の主軸と垂直面方向に熱伝導率が高いので望ましい。
【0078】
特に、黒鉛の中でも、天然黒鉛が熱伝導性に優れる点で望ましく、さらに天然黒鉛から製造された膨張黒鉛を使用すると、板面の粒子径と厚みの比が大きくなりやすいために、少ない添加量で熱伝導性を発現することが好ましい。
【0079】
板状無機フィラーの平均粒子径は、成形体中に分散した板状無機フィラーの平均粒子径として、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上で、通常500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下で、かつ、前述の成形体平均厚みTの通常1/10以下、好ましくは1/20以下、より好ましくは1/100以下である。
【0080】
板状無機フィラーの平均粒子径が上記下限より小さいと、樹脂成分と無機フィラーとの接触表面積の増加により溶融混練などする場合に加工負荷が大きくなり、配合しにくい。また、フィラーが高価なものとなりコストアップに繋がる。一方、板状無機フィラーの平均粒子径が上記上限より大きいと、成形体の強度が低下しやすくなる。
【0081】
また、板状無機フィラーの平均粒子径が、成形体の平均厚みTの1/10より大きいと、前記穴の壁面での配向が乱れやすく、本発明の効果を損なうおそれがある。
【0082】
また、板状無機フィラーの平均粒子径と厚みの比率(平均粒子径/平均厚み)は通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。この比率が小さ過ぎると配向による特定方向の熱伝導性の向上効果を十分に得ることができない。この比率は大きい程好ましいが、通常2000以下である。
【0083】
また、板状無機フィラーの板面の形状には、特に制限はなく、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形、その他の異形形状であっても良い。
【0084】
また、板状無機フィラーの板面の長径の平均値と短径の平均値との比(長径の平均値/短径の平均値)は1以上で、5以下、特に3以下、とりわけ2以下であることが好ましい。この比が過度に大きいと、前記穴部壁面の配向層における流れ方向に沿って板状フィラーの長径方向が配向し、その結果、短径が厚み方向に沿って配列するため、厚み方向への熱伝導の寄与が少なくなるため、本発明の効率を損なうおそれがある。
【0085】
なお、ここで、板状無機フィラーの短径の平均値とは、成形体中の板状無機フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の板状無機フィラーについて測定した板状無機フィラーの板面の短径の平均値であり、長径についても同様である。ここで短径とは、板状無機フィラーの板面を2本の平行な板ではさんだときに、この平行な板の間隔が最も短くなる部分の径である。また、長径とは、このように板状無機フィラーの板面を2枚の平行な板ではさんだときに、この平行な板の間隔が最も長くなる部分の径である。本発明においては上記短径の平均値を平均粒子径とする。
【0086】
また、板状無機フィラーの平均厚みとは同様に、成形体中の板状無機フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の板状無機フィラーについて測定した板状無機フィラーの板厚の平均値である。
【0087】
板状無機フィラーとしては、1種のみを用いても良く、材質や寸法、形状等の異なるものを2種以上併用しても良い。また、後述の繊維状フィラーを、併用することもできる。
【0088】
<繊維状フィラー>
本発明で用いる繊維状フィラーとしては、炭素繊維(ピッチ系、PAN系)、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、窒化珪素繊維、ステンレス、ニッケル、銅などの金属繊維、窒化アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維等の繊維状フィラーが挙げられる。中でも、炭素繊維、アルミナ繊維、窒化アルミ繊維、アラミド繊維等の無機繊維や、ポリベンザゾール繊維が熱伝導率に優れる点で望ましい。
【0089】
繊維状フィラーは、平均繊維直径が通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上で、通常50μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下で、平均繊維長さと平均繊維直径の比(平均繊維長さ/平均繊維直径)が通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上であることが望ましい。
また、繊維状フィラーの平均繊維直径は、前記穴部の深さ方向と垂直な断面における最短部の通常1/10以下、好ましくは1/20以下、より好ましくは1/100以下である。また繊維状フィラーの平均繊維長さは、前記穴部深さ(貫通穴である場合には穴部の成形体厚みに相当する)の1/3以下、好ましくは1/5以下、とりわけ好ましくは1/10以下である。
【0090】
繊維状フィラーの平均繊維直径が太すぎると、成形体の強度が損なわれるだけでなく、前記穴部へ繊維状フィラーが流れ込みにくくなったり、前記穴部での繊維状フィラーの配向が乱れ易くなり、本発明の効果を損なう。
平均繊維直径が細すぎると、繊維そのものが高価になりやすいだけでなく、一般に繊維フィラー同士が絡み合い易くなり、その結果繊維フィラーの配向が阻害される。
また、繊維状フィラーの平均繊維長さが長すぎると、前記穴部へ繊維状フィラーが流れ込みにくくなったり、前記穴部での繊維状フィラーの配向が乱れ易くなり、本発明の効果を損なう。
平均繊維長さと平均繊維直径の比が小さ過ぎると、熱伝導の経路が形成されにくいため、熱伝導性を損なう。または、フィラーを多量に添加する必要が生じる。
この比は、繊維長さが上述の範囲を超えない範囲で大きい程望ましいが、通常100以下である。
【0091】
なお、ここで、繊維状フィラーの平均繊維直径とは、成形体中の繊維状フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の繊維状フィラーについて測定した繊維状フィラーの繊維直径の平均値であり、また平均繊維長さとは同様に成形体中の繊維状フィラーを顕微鏡で観察し、ランダムに200個の繊維状フィラーについて測定した繊維長さの平均値である。
【0092】
繊維状フィラーとしては、1種のみを用いても良く、材質や寸法、形状等の異なるものを2種以上併用しても良い。また、前述の板状無機フィラーを、併用することもできる。
【0093】
<板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量>
板状無機フィラーを含む樹脂組成物における板状無機フィラーの含有割合は、樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対する板状無機フィラーの体積割合で5vol%以上、好ましくは10vol%以上、より好ましくは20vol%以上で、80vol%以下、好ましくは60vol%以下、より好ましくは50vol%以下である。板状無機フィラーの含有割合が少な過ぎると板状無機フィラーを配合したことによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると成形性が損なわれ、また、得られる成形体の機械的強度が低下するおそれがある。
【0094】
また、板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含む樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合(板状無機フィラーと繊維状フィラーを含む場合はその合計の含有割合)は、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対する板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの体積割合で5vol%以上、好ましくは10vol%以上、より好ましくは20vol%以上で、80vol%以下、好ましくは60vol%以下、より好ましくは50vol%以下である。板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合が少な過ぎると板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを配合したことによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると成形性が損なわれ、また、得られる成形体の機械的強度が低下するおそれがある。
【0095】
<付加成分>
本発明で用いる樹脂組成物には、さらに熱伝導性を向上させるために、板状もしくは繊維状以外の、粒子状ないし不定形状のフィラーを添加してもよい。このようなフィラーとしては、例えば、アルミナ粒子、窒化アルミニウム粒子、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅などの金属粒子などが挙げられる。これらのフィラーを配合する場合、その配合割合は、樹脂組成物に配合した板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとこれらのフィラーとの合計の含有割合が、上記板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有割合の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0096】
なお、本発明で用いる板状無機フィラー、繊維状フィラーや上述の粒子状フィラーは、マトリックス樹脂への分散性を向上させるために、シランカップリング剤などにより表面処理を施したものであっても良い。
【0097】
また、本発明で用いる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で更にその他の付加成分を添加することができる。
【0098】
このような付加成分としては例えば、フッ素樹脂パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィンオイル等の可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を挙げることができる。
【0099】
[熱伝導成形体の具体例]
以下、第1図〜第16図を参照して本発明の実施の形態に係る熱伝導成形体の形状の具体例とその製造方法等について説明する。
【0100】
<第1図〜第5図の熱伝導成形体1>
第1図は第1態様及び第2態様の実施の形態に係る熱伝導成形体1を示し、(a)図は、(b)図に示す平板状成形体の一部に穴構造を形成した熱伝導成形体1の、穴構造部分(一点鎖線で囲んだA部)の斜視図であり、(b)図は、平板状成形体の一部に穴構造を形成した熱伝導成形体1の平面図である。なお、フィラー含有樹脂組成物の熱伝導フィラーとして、板状無機フィラーを用いた場合は、第1態様であり、繊維状フィラーを用いた場合は、第2態様である。
第2図は第1図(a)のII−II線に沿う断面図、第3図は熱伝導成形体1の一部の断面斜視図、第4,5図は第3図のIV−IV線及びV−V線断面図である。
【0101】
この熱伝導成形体1は、平盤状のベース部1aと、該ベース部1aから起立する縦板状の縦部1bとを有する。この実施の形態では、縦部1bは所定間隔をあけて平行に複数枚立設されており、この縦部1b同士の間が穴部2となっている。また、第2図の左側の縦部1bの左側と、右側の縦部1bの右側(ただしベース部1aの上方部)も穴部2となっている。熱伝導成形体1の厚み方向は第1,2図の上下方向である。穴部2の深さは熱伝導成形体1の平均厚みTの70%以上、特に75%以上とりわけ80%以上であることが好ましい。特に、ベース部1aの厚みをゼロとして貫通穴とすることもできる。第1態様として用いる場合、成形体の上面から裏面にわたり、厚み方向に連続した板状無機フィラーの配向層が形成されるために、厚み方向の熱伝導性が向上する点で望ましい。
【0102】
熱伝導成形体1の平均厚みTは、0.3〜20mm、望ましくは0.3〜4.0mm、特に0.5〜2.5mmが好ましい。
【0103】
この成形体1から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部2によって形成される壁面の面積(すなわち、すべての縦部1bの側面の面積の合計)Aが、A ≧ 4×T3を満たしており、好ましくはA ≧ 5×T3、より好ましくはA ≧ 7×T3である。
【0104】
穴部2の幅Wは、熱伝導成形体1の平均厚みTの0.1〜1.2倍、特に0.2〜1.0倍であることが好ましい。穴部2の間隔である縦部1bの幅Qは熱伝導成形体1の平均厚みTの0.1〜1.2倍、特に0.2〜1.0倍が好ましい。
【0105】
また、単位体積として切り出した幅(n×T)×長さ((9/n)×T)の面内中に、穴部2の閉める総面積の割合は、65%以下、特に50%以下、さらに40%以下が望ましい。
【0106】
穴部2の長さ、即ち縦部1bの延在方向の長さLは、穴部2の幅Wの2倍以上、特に5倍以上例えば5〜50倍であることが好ましい。
【0107】
縦部1bは直方体の板状であるが、これに限定されず、台形断面形状であってもよい。
【0108】
この熱伝導成形体1は、例えば第1図(b)における熱伝導成形体1の上方部分(成形体の上面近傍の側面部分)に注入口(第1図(b)に注入口20の位置を破線で示す。)を設けた金型を用い、該注入口から板状無機フィラー含有樹脂組成物を注入して成形することができる。第1図(a),(b)における矢印Yは、この成形体成形時に金型に注入されたフィラー含有樹脂組成物の流動方向を示す。
注入口からキャビティに流れこんだ樹脂組成物は縦部1b部分に流れ込み、フィラー5は縦部1bの壁面に沿って配向する。第1態様の場合、その結果、第3図および第4図に示すように、板状無機フィラーの形状に起因して、流動方向だけでなく、垂直方向すなわち成形品厚み方向へのひろがりによって、成形体厚み方向の熱伝導性が向上する。なお、縦部1bの幅Q(第2図)が小さいときには、縦部1bの厚み方向の中央付近でもフィラー5は縦部1bの縦面(すなわち穴部2の壁面)に沿って配向するようになる。
【0109】
この熱伝導成形体1では、穴部2は直線スリット状であるが、曲線スリット状でも屈曲スリット状でもよい。また、途中で分断していてもよい。
【0110】
<第6図〜第8図の熱伝導成形体6>
第6図は第3態様の実施の形態に係る熱伝導成形体6の斜視図、第7,8図は第6図のVII−VII線及びVIII−VIII線断面図である。
【0111】
第6〜8図に示す熱伝導成形体6は、第1〜5図の熱伝導成形体1の縦部1bを被包するように樹脂の二色成形部7を穴部2に充填し、熱伝導成形体1と一体に設けたものである。この二色成形部7は、熱伝導成形体1の成形にひきつづいて二色成形部7を二色成形することにより成形される。
【0112】
第7,8図の通り、二色成形部7は縦部1b同士の間の穴部2に密に充填されているだけでなく、第7図の左側の縦部1bの左側と右側の縦部1bの右側にも充填されている。
【0113】
また、二色成形部7は縦部1bの上端面をも被包している。ただし、第3態様の熱伝導成形体の場合、この縦部1bの上方部の二色成形部7の厚みが大きくなると、熱伝導成形体6の上下方向の熱伝導率が低くなるため、縦部1bの上側の二色成形部7の厚さ(高さ)t1と熱伝導成形体1のベース部1aの厚さt2の合計が、熱伝導成形体6の全体の平均厚さT0の30%以下、特に20%以下、とりわけ10%以下であることが好ましい。
【0114】
縦部1bが熱伝導成形体6の上端面に露出するようにt1=0とすると、厚み方向の熱伝導性を損なわない点で望ましい。
【0115】
この熱伝導成形体6の二色成形部7は、板状無機フィラーや繊維状フィラーその他の熱伝導性に優れるフィラーを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ただし、二色成形部7が板状無機フィラーを含有することにより、熱伝導成形体6の厚み方向の熱伝導性が向上する。特に、二色成形時に二色成形部7中の板状無機フィラーが縦部1bの壁面に沿って配向することにより、熱伝導成形体6の熱伝導性が向上する。
【0116】
なお、第6〜8図で二色成形部7に板状無機フィラーを含有させた場合、熱伝導成形体1の樹脂としては板状無機フィラーを含有しないものであってもよい。ただし、上述の通り、熱伝導成形体1と二色成形部7との双方に板状無機フィラーを含有させるのが好ましい。
【0117】
また、二色成形部7を先に成形し、熱伝導成形体1を後から二色成形して熱伝導成形体6を成形するようにしてもよい。
【0118】
<第9〜11図の熱伝導成形体1A,第12図の熱伝導成形体1B>
第1図の熱伝導成形体1では縦部は板状であるが、第9〜12図の熱伝導成形体1A,1Bのように縦部は柱状であってもよい。
【0119】
第9,10図の熱伝導成形体1Aは、ベース部1aから複数の角柱状の縦部1cを複数本立設したものである。なお、第10図は第9図のX−X線断面図であり、第11図は、この熱伝導成形体1Aの成形用金型の断面図である。
【0120】
この熱伝導成形体1Aは、第11図に示すように、キャビティ3を有した金型4を用いて成形されたものである。キャビティ3は、ベース部1aを成形するためのキャビティロワー3aと、縦部1cを成形するためのキャビティアッパー3bとからなる。
【0121】
キャビティロワー3aに対し、射出注入口4aから板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラー含有樹脂組成物が注入される。この注入口4aからキャビティロワー3aに注入されたフィラー含有樹脂組成物は、キャビティロワー3aからキャビティアッパー3bに流れ込む。キャビティアッパー3bは上方に立ち上がる狭い空室であるため、フィラー含有樹脂組成物が該キャビティアッパー3b内に流れるときに、樹脂組成物中の板状無機フィラー5及び/又は繊維状フィラーがキャビティアッパー3bの内面に沿って配向する。この結果、成形された熱伝導成形体1の縦部1cにあっては、フィラー5は、縦部1cの縦面(側周面)に沿って上下方向に配向するようになり、熱伝導成形体1Aの上下方向の熱伝導率が高いものとなる。
【0122】
第12図の熱伝導成形体1Bはベース部1aから円柱状の縦部1dを複数本立設したものである。
【0123】
縦部1c,1dは桝目状に配列されているが、千鳥状に配列されてもよい。この縦部1c,1d同士の間が穴部である。また、縦部1c,1d群の外周囲(ただしベース部1aの上部)も穴部である。
【0124】
いずれの熱伝導成形体1A,1Bにおいても、フィラー5は縦部1c,1dの側面(即ち穴部の壁面)に沿って上下方向に配向する。
【0125】
<第13図の熱伝導成形体1C>
本発明では、第13図の熱伝導成形体1Cのように、複数の板状の縦部1eをベース部1aの長手方向と交差方向特に直交方向に延設してもよい。この熱伝導成形体1Cにおいても、フィラー5は縦部1eの板面に沿って上下方向に配向する。なお、縦部1e同士の間が穴部であると共に、縦部1e群の外周囲(ただしベース部1aの上方領域)が穴部である。
【0126】
<第14図、第15図の熱伝導成形体6A,6B>
第14図は第11図の熱伝導成形体1Aの縦部1cを被包するよう二色成形部7Aを成形した熱伝導成形体6Aの水平断面図であり、同一符号は第11図と同一部分を示している。
【0127】
第15図は第13図の熱伝導成形体1Cに二色成形部7Bを一体化させた熱伝導成形体6Bの縦断面図であり、同一符号は第13図と同一部分を示している。
【0128】
第14図、第15図の熱伝導成形体6A,6Bの場合、2色成形部7A,7Bを先に成形した後に、縦部1c,1eを成形して熱伝導成形体6A,6Bを製造しても良い。
【0129】
なお、第12図、第14図において、2色成形部を1次成形体として成形した後に板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを充填した樹脂組成物を該1次成形体の穴部に充填することによって成形された成形体が、本発明の第4態様の熱伝導成形体である。
【0130】
図示は省略するが、第12図の熱伝導成形体1Bにおいても二色成形部を設けてもよい。
【0131】
<第21図〜第25図熱伝導成形体>
第21図は熱伝導成形体40の斜視図、第22図は熱伝導成形体40の平面図、第23,24図は第22図のXXII−XXII、XXIII−XXIII線断面図、第25図は第22図のXXV−XXV線に沿う拡大断面図である。
この熱伝導成形体40は、第2態様に係るものであり、基部41と、該基部41から複数本平行に延出した縦棒部42と、各縦棒部42の先端同士を繋ぐように縦棒部42と直交方向に延在した横棒部43と、縦棒部42の長手方向の途中同士を連結しているタイ部44とを有している。縦棒部42同士の間は、上下両面に開放し、縦棒部42の長手方向に延在する穴部45となっている。
基部41は、縦棒部42の長手方向と直交方向に延在している。基部41の上面側には凸条部41aが長手方向に延設されている。
縦棒部42の基端側にはV字形の凹所42aが設けられている。これは、熱伝導成形体40を射出成形する際の金型絞り部によって形成されたものである。
横棒部43は、縦棒部42の先端部の下面側にのみ形成されている。即ち、横棒部43は縦棒部42よりも厚みが小さいものとなっている。これは、穴部45に縦棒部42の先端側から二色成形部用の樹脂材料を流入させるためである。同様の理由から、前記タイ部44も縦棒部42の下面側にのみ形成されている。後述の第28図〜第32図のように二色成形を行うと、二色成形部用樹脂材料は、横棒部43の上側を通って穴部45に導入され、タイ部44の上側を通って穴部45の最奥部(基部41側)にまで流入する。
横棒部43は、基部41から遠ざかるほど厚みが小さくなる断面形状を有している。横棒部43及びタイ部44は、縦棒部42を補強するためのものであり、特に、穴部45に樹脂材料を二色成形によって充填する際に縦棒部42の変形、損傷が防止される。
第25図に縦棒部42の厚みT、穴部45の幅W及び穴部45の間隔Qを記入してある。
この熱伝導成形体40は、第26図に示した、基部41に延長部46が一体的に連なる成形体40Aから該延長部46を切断除去することにより得られるものである。
この成形体40Aは、第27図に示すように、金型47のキャビティ48に成形機シリンダノズル50からスプレー49を介して樹脂材料を射出して成形したものである。キャビティ48の形状は成形体40Aの外形に合致する。成形された成形体40Aは、型開き後、エジェクタピン51を突出させることにより脱型される。
この実施の形態では、エジェクタピンは縦棒部42と延長部46を押すように配置されているが、これに限定されない。
【0132】
<第28図〜第32図の熱伝導成形体>
第28図は熱伝導成形体60の斜視図、第29図は熱伝導成形体60の平面図、第30図は第29図のXXX−XXX線断面図、第31図は第29図のXXXI−XXXI線断面図、第32図は第29図のXXXII−XXXII線に沿う拡大断面図である。
この熱伝導成形体60は、上記熱伝導成形体40の穴部45に対し二色成形部用樹脂材料を射出成形すると共に、この二色成形部用樹脂材料にて、前記基部41と反対側に基部61を形成したものである。
なお、二色成形することにより、延長部46と対称に二色成形部用樹脂材料によって基部61に連なる延長部(図示略)が形成され、この延長部を切断分離することにより第28図に示す二色成形体よりなる熱伝導成形体60となる。
穴部45内に充填された二色成形部用樹脂材料によって二色成形品縦棒部62が形成される。縦棒部42,62の上面及び下面は面一状である。基部61の形状は基部41と対称である。
【0133】
<第33図〜第35図の熱伝導成形体>
上記の第28図〜第32図の熱伝導成形体60では、二色成形された縦棒部62及び基部61は縦棒部42及び基部41の下面と面一状であるが、第33図〜第35図の熱伝導成形体60Aは、この縦棒部62及び基部61の下面を縦棒部42及び基部41の下面よりも出っ張らせるように、縦棒部62及び基部61を第28図〜第32図よりも厚く成形したものである。二色成形部用樹脂材料は、基部41の下側にまでは充填されていない。
この熱伝導成形体60Aは第3態様に係るものである。
【0134】
<第40図〜第43図の熱伝導成形体>
第40図〜第43図の熱伝導成形体は、第36図〜第39図の熱伝導成形体(ただし、この第36図〜第39図の熱伝導成形体は、後述の比較例に係るものであるので、以下の説明では熱伝導成形体素板という。)に穿孔して穴部を形成し、この穴部に樹脂材料を二色成形により充填したものである。
第36図は熱伝導成形体素板の斜視図、第37図は熱伝導成形体素板の平面図、第38図及び第39図は第37図の38−38線、39−39線に沿う断面図である。第40図は熱伝導成形体70の斜視図、第41図は熱伝導成形体70の平面図、第42図及び第43図は第41図の42−42線、43−43線に沿う断面図である。
第36図〜第39図の熱伝導成形体素板70Aは、方形の平板部73と、該平板部73の1対の平行辺部に一体的に連なる基部71,72とを有する。基部71,72は対称形状である。基部71,72の形状は前記基部51,61と同様である。熱伝導成形体素板70Aは全体として一体に射出成形されたものである。なお、この場合も、基部71,72に連なるように延長部も一体に成形され、脱型後、この延長部を切断分離している。
第40図〜第43図の熱伝導成形体70は、この熱伝導成形体素板70Aの平板部に多数の穴部74を穿設し、この穴部74に樹脂材料75を二色成形により充填したものである。
この実施の形態では、穴部74は円形であり、平板部73を厚み方向に貫通している。穴部74は平板部73の全域に均等に配置されている。
【0135】
<穴部のその他の断面形状>
本発明では、穴部は三角形、多角形や楕円形など図示以外の各種の断面形状のものとすることができる。また、複数の形状の穴部が組み合わされてもよい。第16図はかかる熱伝導成形体8の水平断面図であり、方形部の一部を突出させた断面略L字形の穴部8aと、断面円環形の穴部8bと、断面円形の穴部8cとが設けられている。穴部8bと8cは同軸状に配置されている。
【0136】
なお、上記の説明において、「上下」や「水平断面」は、第1図に示した姿勢における上下や水平断面を指称しているものであるが、熱伝導成形体の使用時の方向に関連するものではない。
【実施例】
【0137】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0138】
なお、以下の実施例及び比較例で成形に用いた樹脂ペレットは、下記のポリエステルエラストマーと無機フィラーとを、ポリエステルエラストマーと無機フィラーとの合計に対する無機フィラーの割合が30vol%となるように、夫々のフィード量を調整して、二軸押出機(池貝(株)製「PCM45」)により、下記の混練条件で溶融混練して得られたものである。
【0139】
<ポリエステルエラストマー>
ペルプレンP55B(東洋紡(株)製、比重1.15)
<無機フィラー>
膨張黒鉛CP・B(日本黒鉛(株)製、比重2.2)
<混練条件>
バレル温度:220℃
スクリュー回転数:150rpm
吐出量:30kg/h
【0140】
[実施例1,2、比較例1]
樹脂ペレットを90℃で4時間乾燥した後、75トン射出成形機を用いて、厚み2mm、幅2mm、長さ50mmのロッドを成形した。成形条件は、シリンダ温度240℃、金型温度80℃、充填率50cc/secとした。
【0141】
得られたロッドを切断し、破断面を電子顕微鏡にて観察した結果、ロッド内の黒鉛の平均厚みは0.6μmであった。次に、側面を研磨して電子顕微鏡にて観察し、ロッド側面に沿って配向している黒鉛の平均粒子径(短径の平均値)を測定した結果、11μmであった。上記の結果より、成形体中の黒鉛の平均粒子径/平均厚みの比は、18であった。また、同様に測定した長辺の平均値は14μmであり、長径の平均値/短径の平均値の比は1.27であった。
【0142】
次に、このロッドを用いて本発明の原理を検証するための模擬樹脂成形体を以下のようにして作製した。
得られたロッド複数本を間隔を開けて並列配置し、2枚の銅板(10mm×20mm×厚さ2mm)32,32間にはさんで第17図(a)〜(c)に示すサンプル30A〜30Cを作製し、穴部(スリット)を有する模擬樹脂成形体を得た。ここで、銅板2は、測定のばらつきを低減するために設けたものであり、ロッド31と銅板32とは熱伝導接着剤(DIEMAT社製DM6030Hk/F954)で接着した。
【0143】
実施例1のサンプル30Aは、5本のロッド31を2mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものであり、実施例2のサンプル30Bは、7本のロッド31を1mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものであり、比較例1のサンプル30Cは、3本のロッド31を7mmの間隔をあけて配置して銅板32,32ではさんだものである。
【0144】
なお、これらのサンプルのうち、実施例1のサンプル30Aの詳細を第18図に示す。第18図(a)は実施例1のサンプル30Aの斜視図であり、第18図(b)は、サンプル30Aから上側の銅板32をとりのぞいた状態を示す斜視図であり、第18図(c)は第18図(a)のC−C線に沿う断面図である。第17図(a)は第18図(a)のXVII−XVII線に沿う断面図に相当する。他のサンプルについても同様である。
【0145】
これらのサンプルは、ロッド31同士の間隙に穴部(スリット)が形成された樹脂成形体を模擬したものとなり、各部の寸法は次のように求められる。
【0146】
樹脂成形体の厚みT=ロッドの高さ(2mm)
単位体積(3×T)×(3×T)×T=72mm3
単位体積中の壁面総面積=単位体積中に存在するロッドの側面の面積の合計
穴部(スリット)の幅(W)=ロッド同士の間隔
穴部(スリット)の間隔(Q)=ロッドの幅
穴面積比率=単位体積における透影面積((3×T)×(3×T))に存在するロッドの透影面積の合計
【0147】
各サンプルについて求めたこれらの値を表1に示す。
【0148】
次に、第19図に示す測定装置を用いて、各サンプルの伝熱特性を評価し、結果を表1に示した。
即ち、熱電対33A,33Bを埋め込んだ20mm×10mm×2mm厚みの2枚の銅板34A,34Bの間に、サンプル30を挟み、銅板34A側には、10mm×10mm×1mm厚みのセラミックヒーター35を重ね、更に断熱板36A,36Bではさんで、ヒーター側銅板34Aをヒーター35により加熱した。
ヒーター35への出力を調整し、ヒーター側銅板34Aを90℃(±0.2℃)に安定させ、サンプル30を介した反ヒーター側の銅板34Bの温度を測定し、下記に示すΔTを測定した。
ΔT=ヒーター側銅板34Aの温度(90℃) − 反ヒーター側銅板34Bの温度
この温度差ΔTの値が小さいほど、サンプル30の熱伝導性が優れることを意味する。
【0149】
[比較例2]
樹脂ペレットを用いて、100mm×100mm×2mm厚みのプレートを、端面にフィルムゲートを有する金型を用いて成形した。得られたプレートの中央部から、10mm×20mmのサンプル片を切り出し、穴形状を有しない平板状樹脂成形体を得た。この樹脂成形体は、板面方向に黒鉛の板面が配向したものである。この樹脂成形体を実施例1のロッドと同様に2枚の銅板32,32ではさんで熱伝導接着剤で接着して第17図(d)に示すサンプル30Dを作製した。
このサンプル30Dについて、実施例1と同様の伝熱特性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0150】
【表1】
【0151】
[実施例3]
本発明の第3態様の効果を検証するために、第20図のように、実施例1で用いたと同様のロッド1を10本隙間無く並べた。すなわち、実施例1(第17図(a))の穴部が、同一の樹脂組成物によって充填された、第3態様の模擬樹脂成形体であるサンプル30Eを作製した。
このとき各ロッドの側面同士をエポキシ接着剤にて接着した。
得られたサンプルについて、実施例1と同様にΔTを測定した結果、ΔTは2.4℃であった。
【0152】
[実施例4、比較例3]
実施例3及び比較例2のサンプルから直接10mmの円盤を切り出し、レーザーフラッシュ法によって、厚み方向の熱拡散率を測定した。その結果、
実施例4:2.2×10−2cm2/秒
比較例3:0.7×10−2cm2/秒
であった。
【0153】
以上の結果から、次のことが分かる。
実施例1のサンプルは、比較例2の穴部のない平板状のサンプルに比べて、ロッドによる銅板との接触面積が50%であるにも関わらず、ΔTが小さい。すなわちロッド間のスリットの壁面に配向した黒鉛の効果によって、ヒータ側の熱を効率よく反ヒータ側へ伝えていることが分かる。
さらに、実施例2では、単位体積中の壁面総面積を増加し、穴面積比率を低下させることによって、ΔTが減少している。
一方、比較例1のように、単位体積中の壁面総面積が本発明の範囲よりも少ないと、比較例2の平板状のサンプルよりも熱伝導性が悪く、ΔTが大きくなる。
さらに、実施例3のΔTが最も低く、放熱性が最も良好であったこと、及び実施例4と比較例3の結果より、本発明の第3態様の構造を用いれば、厚み方向の放熱性がさらに改善され、通常の平板形状(比較例3)に比べて3倍程度放熱性が改善されることが明らかである。
【0154】
以下、実施例5〜13および比較例4〜9について説明する。これらの実施例5〜13および比較例4〜9で用いた樹脂組成物は、表2に示す組成物A〜Dであり、各々二軸押出し機(池貝社製 PCM45)を用いて混練し、表2に示す樹脂組成物A〜Dのペレットとした。混練条件は次の通りである。
バレル温度:300℃
スクリュー回転数:150rpm
吐出量:30Kg/hr
混練に際しては、ポリフィニレンサルファイドをトップフィードによりあらかじめ溶融させた後、無機フィラーをサイドフィーダーより投入し、夫々のフィード量を調整して所定の配合量の樹脂組成物A〜Dとした。
次に、樹脂組成物A〜Dのペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、75トン射出成形機を用いて、シリンダ温度320℃、金型温度140℃にて、次の実施例5〜13及び比較例4〜9のようにして成形を行った。
【0155】
【表2】
【0156】
[実施例5]
樹脂組成物Aを使用して、第21図〜第25図に示す形状の、第2態様の熱伝導成形体40を成形した。この熱伝導成形体40の厚み(T)、スリット幅(W)およびスリット間隔(Q)を表3に示した。横棒部43及びタイ部44の厚み(T方向の厚さ)は0.4mmである。
次に上記の成形体中の黒鉛の平均厚みおよび短径の平均粒子径を、実施例1、2と同様の方法で測定した結果、平均厚み0.4μm、平均粒子径13μm、平均粒子径/平均厚み比32.5であった。
【0157】
[実施例6,7]
実施例5において、金型の形状を変更し、成形体のスリット幅およびスリット間隔の寸法を表3の通り変更したこと以外は同様にして熱伝導成形体を成形した。
【0158】
[実施例8]
実施例5で得られた熱伝導成形体40を1次成形体とし、樹脂組成物Aをスリット状の穴部45に充填して、第3態様に係る第28図〜第32図に示す熱伝導成形体60を成形した。
【0159】
[実施例9]
1次成形体として実施例6で成形した熱伝導成形体を使用して、実施例8と同様に樹脂組成物Aをスリット状の穴部45に充填して、第3態様の熱伝導成形体を成形した。
【0160】
[比較例4]
樹脂組成物Aを使用し、第36〜39図に示すプレート状の熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0161】
[実施例10]
2次成形に用いる金型として、1次成形体の厚みよりも厚い(1.6mm厚み)キャビティを有する金型を用いた他は実施例8と同様にして、第33図〜第35図に示す熱伝導成形体60Aを成形した。
この熱伝導成形体60Aは、1次成形体としての熱伝導成形体40の厚み1.2mmのスリット状穴部45及び縦棒部42の裏側に樹脂組成物が充填されたものである。第35図における厚みTは1.6mmである。
【0162】
[比較例5]
実施例10で用いた1.6mm厚みの2次成形用キャビティを有する金型を使用し、1次成形体をインサートせずに射出成形を行ったこと以外は実施例10と同様にして、プレート状熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0163】
[比較例6]
2次成形用キャビティの厚みが3mmであること以外は実施例10で用いたものと同じ金型を使用したこと以外は実施例10と同様にして、第33図〜第35図に示す熱伝導成形体60Aの構成を有した成形体を成形した。
この成形体は、1次成形体としての熱伝導成形体40の厚み1.2mmのスリット状穴部45及び縦棒部42の裏側に樹脂組成物が充填された成形体である。この成形体は、全体の厚みT(第35図)が3mmであること以外は実施例10と同一構成のものである。
【0164】
[比較例7]
比較例6で用いた厚み3mmのキャビティを有する金型を使用し、1次成形体をインサートせずに射出成形を行ったこと以外は比較例6と同様にして、プレート状熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0165】
[実施例11]
樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、スリット状穴部を有する第1態様の熱伝導成形体40を成形した。これを1次成形体として用いたこと以外は実施例8と同様にして、スリット状穴部45に樹脂組成物Bを充填してなる第28図〜第32図に示す構造の熱伝導成形体60を成形した。
この熱伝導成形体中の窒化ホウ素の平均厚みおよび短径の平均粒子径を、実施例1、2と同様の方法で測定した結果、平均厚み0.7μm、平均粒子径8μm、平均粒子径/平均厚み比11.7であった。
【0166】
[実施例12]
実施例11において、二色成形部用樹脂材料として樹脂組成物Cを用いたこと以外は同様にして、第28図〜第32図に示す構造の熱伝導成形体60を成形した。
【0167】
[比較例8]
樹脂組成物Bを用いたこと以外は比較例4と同様にして、樹脂組成物Bよりなる熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0168】
[実施例13]
比較例4で成形した、樹脂組成物Aよりなるプレート状熱伝導成形体素板70Aに、直径1.2mmの穴を中心間距離2.4mmの間隔で100個(縦方向に10個、横方向に10個。10×10=100個)穿孔した。このように穿孔した成形体を、実施例10で用いた、1.6mm厚みの2次成形用キャビティを有する金型の該キャビティ内にインサートした後、樹脂組成物Dを射出して各穴部に充填し、第40図〜第43図に示す本発明の第4態様の熱伝導成形体70を成形した。
【0169】
[比較例9]
樹脂組成物Dを用いたこと以外は比較例5と同様にして、樹脂組成物Dよりなる熱伝導成形体素板70Aを成形した。
【0170】
上記の実施例5〜13、および比較例4〜9の樹脂組成物および成形体の仕様を、表3〜表6に示した。
【0171】
熱拡散率測定
上記の方法で得られた成形体について、実施例4および比較例3と同様の方法で、熱拡散率を測定した。結果を表3〜表6に示す。
【0172】
放熱特性(ヒーター温度)の測定
第44図に示す装置を使用して、放熱特性を評価した。水槽80内に氷水が収容されている。銅ブロック81が、断熱ブロック80aを介して、その大部分を氷水中に水没させ、10mmだけ水面から突出するように配置されている。
この銅ブロック81上に、実施例1で用いた熱伝導接着剤を用いて成形体サンプル82を貼り付け、サンプル上面中央に実施例1で用いたヒーター83を取り付け、ヒーター83に10Vを印加した際のヒーター温度を熱電対84で測定した。
熱伝導接着剤;DIEMAT社製 DM6030Hk/F954
銅ブロック;75mm×75mm×50mm厚み
ヒーター;ミスミ社製 小型セラミックヒーターMMCPH−15−10
【0173】
なお、評価は23℃の恒温環境中で実施し、ヒーター温度の測定は、熱電対85で検出される銅ブロックの温度が0〜3℃の範囲で維持されていることを確認しながら、電圧印加後にヒーター温度が安定した後の温度を測定した。ここでヒーターの発熱は、成形体サンプルの厚み方向の熱伝導により銅ブロックへ伝わり冷却される。したがってヒーター温度が低いほど、放熱性が高いことを意味する。結果を表3〜表6に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
[考察]
実施例5〜7の結果より、本発明の第2態様の熱伝導成形体は、比較例4の通常のプレート状成形体に比べて、ヒーター温度が低く放熱性が高い。中でも、単位体積中の壁面総面積が大きい実施例6や、単位面積中の穴面積比率の小さい実施例7が効果が顕著である。
実施例8、実施例9のごとく、スリット状穴部に同一の樹脂組成物を充填した第3態様では、さらに放熱効果が大きく、熱拡散率は、比較例4の3倍以上である。
実施例10ではスリット状穴部が貫通していない場合においても、穴深さの比率が本発明の範囲内であれば、同厚みの通常のプレート成形体である比較例5に比べて優れた効果を発現する。一方、比較例7および8のごとく、穴深さの比率が本発明の範囲よりも小さい場合には、効果が極めて少ない。
実施例11および比較例8の結果から、無機フィラーとして本発明の範囲内の窒化ホウ素を用いても同様の効果が得られることが分かる。さらに、実施例12に示すように、2色成形用材料として熱伝導性の低いガラス繊維を添加した樹脂組成物を使用しても、発明の効果が得られる。特に実施例12のように、窒化ホウ素を配合した樹脂組成物熱と、ガラス繊維強化樹脂組を組み合わせた成形体は、電気絶縁性も維持される。
さらに実施例13で示したように、本発明の第4態様によると、優れた放熱特性が得られる。
なお、実施例9や、実施例13にように、異種の材料を組み合わせても放熱特性が得られることから、第45図のように、ガラス繊維強化樹脂組成物等によりハウジングや基盤などの成形体90を成形し、発熱部91にのみ本発明の熱伝導成形体92を設けることにより、安価で高い強度を有すると共に、高い放熱特性を有する構造体が構成される。
【符号の説明】
【0179】
1,1A,1B,1C,6,6A,6B,8,40,60,70 熱伝導成形体
2,45,75 穴部
3,48 キャビティ
4,47 金型
5 フィラー
7 二色成形部
31 ロッド
32 銅板
33A,33B 熱電対
34A,34B 銅板
35 ヒーター
36A,36B 断熱板
30、30A,30B,30C,30D,30E サンプル
41,61,71,72 基部
42,62 縦棒部
43 横棒部
44 タイ部
73 平板部
75 樹脂材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、
該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、
該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【請求項2】
請求項1において、該板状無機フィラーが、黒鉛及び/又は窒化ホウ素よりなることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、射出成形、又はトランスファー成形によって成形された成形体であることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項4】
樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、
該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、
該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、
かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とする熱伝導成形体。
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記穴部に樹脂が充填されていることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項6】
成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する樹脂成形体(以下「1次成形体」と称す。)と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、
該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、
該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、
該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【請求項1】
樹脂成分と板状無機フィラーとを含み、板状無機フィラーの含有量が、該樹脂成分と板状無機フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、
該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みTに対して70%以上の深さを有し、
該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T3)部分において、該穴部の壁面の面積Aが、下記式(1)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A ≧ 4×T3 ……(1)
ここで、単位体積とは、幅(n×T)×長さ((9/n)×T)×厚みTで算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みTとは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【請求項2】
請求項1において、該板状無機フィラーが、黒鉛及び/又は窒化ホウ素よりなることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、射出成形、又はトランスファー成形によって成形された成形体であることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項4】
樹脂成分と繊維状フィラーとを含み、繊維状フィラーの含有量が、該樹脂成分と繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であるフィラー含有樹脂組成物を成形してなり、
該成形体の厚み方向に、金型によって形成された少なくとも1つの穴部を有する熱伝導成形体であって、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該成形体の平均厚みT’に対して70%以上の深さを有し、
該成形体から任意に取り出した単位体積(9×T’3)部分において、該穴部の壁面の面積A’が、下記式(1’)を満たし、
かつ、該穴部が成形体平面方向に延在するスリット形状であり、該スリット状穴部は、その幅に対して長さが5倍以上であることを特徴とする熱伝導成形体。
A’ ≧ 4×T’3 ……(1’)
ここで、単位体積とは、幅(n×T’)×長さ((9/n)×T’)×厚みT’で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT’とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記穴部に樹脂が充填されていることを特徴とする熱伝導成形体。
【請求項6】
成形体の厚み方向に形成された少なくとも1つの穴部を有する樹脂成形体(以下「1次成形体」と称す。)と、該1次成形体の該穴部に、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーを含んだフィラー含有樹脂組成物を充填することにより形成されたフィラー含有樹脂部とを有する熱伝導成形体であって、
該フィラー含有樹脂組成物における板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーの含有量が、樹脂成分と板状無機フィラー及び/又は繊維状フィラーとの合計に対して5vol%以上80vol%以下であり、
該穴部は、貫通穴であるか、或いは該1次成形体の平均厚みT”に対して70%以上の深さを有し、
該穴部は、その深さ方向と垂直な断面における最長部と最短部の寸法比が2以下であり、
該1次成形体から任意に取り出した単位体積(9×T”3)部分において、該穴部によって形成される壁面の面積A”が、下記式(1”)を満たすことを特徴とする熱伝導成形体。
A” ≧ 4×T”3 ……(1”)
ここで、単位体積とは、幅(n×T”)×長さ((9/n)×T”)×厚みT”で算出される体積であり、nは1以上8以下の数である。
また、平均厚みT”とは、前記取り出した単位体積における平均厚みである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2010−77392(P2010−77392A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157048(P2009−157048)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超ハイブリッド材料技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(393032125)油化電子株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超ハイブリッド材料技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(393032125)油化電子株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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