説明

熱処理粒子の製造方法並びに熱処理粒子の製造装置

【課題】粉粒体材料を媒体流動層によって熱処理する方法であって、滞留時間一定のバッチ型熱処理の長所を生かしつつ、そのバッチ処理を連続操業するものであり、粉粒体材料をそのまま投入・回収でき、バッチ処理の長所を持ったまま焼成等の熱処理を可能とし、特に発泡セラミックス粒子の製造に好適な熱処理炉を提供する。
【解決手段】粉粒体材料を反応室内の媒体流動層に導入し、その処理対象粉粒体6を飛散させず、かつ、融着・凝集させない範囲の気流を付与して、適切な流動化状態にした上で、一定時間反応室内に滞留させて熱処理した後、気流を増加させて熱処理粒子をその増加した気流に同伴させて媒体流動層外に排出させ、流動層後段に設置した分離装置4により熱処理粒子を気流と分離して回収する熱処理粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種粉体材料の焼成が可能な媒体流動層炉を連続バッチ運転させる為の改良並びに熱処理粒子、特には高性能微粒人工軽量骨材の製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流動層技術は、バッチ型と連続型の2種類に大別できる。バッチ型では流動層容器に処理対象粉粒体を投入し、各種処理して処理品を容器の下部や側面から抜き出すものが主流であった。特殊なものとして、処理後、ピストン式に層下部を持ち上げて、対象粒子の排出を促進する技術(特許文献1参照)もあるが、一般的ではない。
連続式においては、流動層容器の下部や壁面に抜き出し口を設けたものや、層表面からの溢流を利用したもの、気流によって常時層上部へ排出されていく形態のものが主流である。
流動媒体(媒体粒子)を用いる媒体流動層は、対象物が流動化困難な場合や、熱媒体効果や流動化促進を期待する場合にも用いられ、従来の焼却炉などのほかに、発泡粒子の製造にも応用されている。
しかしながら、対象物が粉粒体の媒体流動層の連続化には、媒体粒子を層内に残し、対象粒子を選別回収する、もしくは対象粒子と媒体粒子を共に回収後、選別して媒体粒子だけを流動層にリターンする必要がある。この媒体粒子の選別回収が、バッチ式流動層の連続化を困難にしている要因の一つである。
【0003】
一方、発泡体の焼成炉に関しては、発泡原理によって装置が異なり、短時間発泡(数秒単位)においては、気流層および原料通過型の媒体流動層(特許文献3参照)があり、長時間発泡(数分単位)においては、ロータリーキルンが主に用いられている。ここで、短時間発泡の粒子は、主に超軽量・低強度のバルーン形状であり、長時間発泡の粒子はそれに比べてやや重く、高強度の多孔質形状である。一般的に発泡時間を長時間にするほど、気泡の独立性が高く、均質な発泡体が得られ易い。しかしながら、粒子を溶融状態にして長く炉内に保持する必要があり、微粒であるほど融着トラブルが起こり易い。よって、1mm以下の高強度発泡体の製品化は困難であった。
【特許文献1】特開平07−016457号公報
【特許文献2】特開2004−293900号公報
【特許文献3】特開2001−278646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は粉粒体材料を媒体流動層によって熱処理すべく研究したものであり、滞留時間一定のバッチ型熱処理の長所を生かしつつ、そのバッチを連続操業できるようにするものである。すなわち、粉粒体材料をそのまま投入・回収できて、しかもバッチ式の長所を持ったまま焼成等の熱処理を可能とするものである。特に高性能微粒人工軽量骨材の製造に好適な熱処理粒子の製造方法及び熱処理粒子の製造装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため下記(1)〜(10)の構成よりなる。
(1)粉粒体材料を気流によって形成した反応室内の媒体流動層に導入し、該粉粒体材料を媒体粒子と共に流動化状態とし、熱処理をして熱処理粒子とした後、気流を増加させて該熱処理粒子を該増加した気流に同伴させて該媒体流動層外に排出させ、気固分離装置により熱処理粒子を回収することを特徴とする熱処理粒子の製造方法。
(2)前記熱処理において基準温度からの温度差を単位時間ごとに累積する積算温度によって熱処理の終了時期を決定する前記(1)記載の熱処理粒子の製造方法。
(3)前記流動化状態を均一流動化、気泡流動化状態のいずれかとし、流動化の様式を通常の流動層、噴流層、外部振動を付与した流動層の少なくともいずれかとする前記(1)又は(2)に記載の熱処理粒子の製造方法。
(4)前記気固分離装置が、チャンバー、フィルター又はサイクロンである前記(1)〜(3)のいずれか一に記載の熱処理粒子の製造方法。
(5)前記熱処理を前記媒体流動層外に排出させる際の気流の流速を段階的に又は連続的に増加させる前記(1)〜(4)のいずれか一に記載の熱処理粒子の製造方法。
(6)前記粉粒体材料として、高性能微粒人工軽量骨材を得るための火山ガラス、石炭灰、焼却灰、各種ガラスを少なくとも主原料としたものとする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の熱処理粒子の製造方法。
【0006】
(7)流動媒体を装入してなる反応室を有し、その反応室に粉粒体材料の装入口を設け、又、反応室の下部には流速を変えることのできるブロワーを設け、分散器を介して熱気流を反応室内に送入するようになし、反応室に続いて分離装置を設けてなることを特徴とする熱処理粒子の製造装置。
(8)前記ブロワーが、前記粉粒体を流動化させるためのものと、前記熱処理粒子を前記流動層外に排出させるためのものを分離して設けてなる前記(7)記載の熱処理粒子の製造装置。
(9)前記ブロワーによる前記粉粒体の流動化状態を通常の流動化状態、噴流による流動化状態、気流に脈動を加えた流動化状態、旋回流動化状態、もしくは外部からの振動を付与した流動化状態、のいずれかを任意に組み合わせ可能に設けてなる前記(7)又は(8)に記載の熱処理粒子の製造装置。
(10)前記気流を反応室内に送入する手段が、基準温度からの温度差を単位時間ごとに累積する積算温度により熱処理の終点を制御する制御手段を有する前記(7)〜(9)のいずれか一に記載の熱処理粒子焼成粉粒体の製造装置。
【0007】
本発明における熱処理とは、乾燥、焼成、焼結、溶融、化学反応、触媒反応など、加熱に伴い一定の効果を生じるものであれば含まれるが、特に高性能微粒人工軽量骨材の製造に好適に用いられる。軽量骨材を得るためであれば、火山ガラス、石炭灰、焼却灰、各種ガラスが原料として用いられる。
本発明では、炉体内に媒体粒子が充填され、その媒体粒子が炉体内に吹き込まれる気流により流動化して流動層が形成される。流動層は粉粒体材料の混合性が良く、粒子衝突による高伝熱性、加えて流動媒体の熱容量効果が期待でき、優れた熱処理効果をもっている。当然、流動化状態において、対象粒子が飛散せず、かつ融着・凝集を引き起こさず、なおかつ、対象粒子と媒体粒子の混合状態が保たれる(層分離しない)空塔速度に設定すべきである。流動層の高い粒子せん断効果と、媒体流動化による円滑な流動化によって、粒子融着トラブルを防ぎ、特に発泡体分野では従来困難であった、1mm以下の粒子まで焼成が期待できる。一般に媒体粒子は発泡体や原料粒子よりも比重が大きいため、流動層下部の分散板周辺で流動化し、流動化不良を起こし易い分散器ノズル間に原料粒子が滞留することを防ぐことで、融着トラブルを解消できる。上記の融着防止技術によって熱処理対象物を数分から数時間と任意に炉体内に保持することができる。流動層には熱電対のような温度センサーを挿入・浸漬することで、熱処理対象に直接接触する形で品温測定が可能である。加えて層内温度分布も少ないため、層内の数個所の温度データで、そのバッチ内の製品の温度を代表するものとして扱うことが可能である。この直接の品温測定は、他の焼成炉などでの間接的に雰囲気温度を測定する方式と比べて、より正確である。外部から与えた加熱条件で制御するよりも、現在の熱処理品の温度履歴から熱処理の終点をそのつど判断するというより高度な積算温度による制御方法に対応できる。
流動媒体は、1000℃以上の熱処理であれば、アルミナやムライトが好適で、800℃程度までであれば、シリカサンドが一般的に用いることができる。また、流動媒体の形状は球形であることが望ましく、寸法は被処理物によって違いがあるが0.1〜10mmの範囲が好ましい。
【0008】
常に原料供給と製品回収を行う一般的な連続式流動層の場合、粒子が完全混合に近いため、製品に滞留時間分布が生じる。比重が製品強度と比例関係にある発泡体の中でも、長時間発泡の発泡体では、滞留時間が著しく製品の比重に影響するため、単純な連続式流動層では、未発泡の重質粒子と過剰発泡の低強度粒子を含んだ幅広い分布をもった製品が得られることになる。この過剰発泡の粒子は、二次製品における欠陥になり、また、焼成工程においても、凝集トラブルを引き起こす危険性が高い。反対に発泡不足の重質な粒子が混合することで、製品の軽量化特性が著しく損なわれる。一般に軽量コンクリート・モルタルの分野では、強度・軽量性を両立させるべく,綿密な配合設計を行うために、不必要な比重分布を持った製品は望まれない。そのため、滞留時間が一定なバッチ方式を連続化するか、連続式で工程の内外で比重分離を行うか、のいずれかが必要となる。いずれにせよ、媒体流動層から製品を選別回収する必要がある。
【0009】
気流は対象粒子と媒体粒子を一緒に流動化させるだけの風量が必要で、かつ、熱処理が終了した段階では、気流を増加させて処理品(熱処理粒子)をその増加した気流に同伴させて媒体粒子層外に排出させ(以下、風篩という)ることによって、流動媒体と分離するのに必要な風量を出す必要がある。したがって、1個のブロワーで風量を切り替え可能としても良いが、風量の異なるブロワーを複数設けて、それらをタイミングに応じて使い分けることが好ましい。風篩とは、各粒子が上昇気流によって層外に排出される終末速度の違いによって、粉体を分離する技術である。当然、排出の対象粒子は、残留する粒子より、粒径が大きい、比重が大きいなどの理由によって、終末速度が高い必要がある。
流動化状態は、均一流動化、気泡流動化のいずれかとする。気泡流動化とは、均一流動化より風量が高く、流動層内に攪拌作用をもった気泡が生成・合体・分裂を繰り返していくものである。
【0010】
本発明はバッチ式の高品質性と連続式の高生産性を兼ね備えるために発明されたものであるが、さらに、バッチ間の均質化のために以下の制御方式も採用できる。すなわち、本発明では使用する対象粒子の焼成完了までの熱量を、基準温度以上の温度の積算値(積算温度)として把握するように設定し、所定積算温度に達したら、自動的に熱処理から風篩に切り換えるようにしておく。そして、風篩が完了したら次の流動熱処理の段階に移行する。このようにして、バッチ間の均質性を保ちながら、バッチ式の熱処理が、同一炉の連続操業として繰返される。
基準温度の設定方法には、いくつかの予備実験から実験的に求める方法と、理論的に求める方法の二種類があると思われる。理論的な場合、当該発泡技術では、ガラス配合による各温度での粘度を推算し、気泡内におけるガラスと発泡剤の反応速度、発泡ガス生成速度と気泡内圧・ガラスの粘性の関係を明らかにした上で、推算式を立てねばならない。しかしながらこれは高度な学術的な考察・解析が必要なものである。しかしここでは、製造現場で用いられるという観点から、実験的な算出が望ましい。生産現場では予備的な検証試験を行うものであるし、各材料の比熱等を正確に測定し、熱量基準で分析するよりは、直接計れる時間・温度といった値のみで製品の出来を示せる方が簡便である。
本発明は、このような基準温度からの温度差を単位時間ごとに累積した積算温度を熱処理の終了時期を決定する指標として利用することを特徴とする。単位時間とは通常は1秒であるが、粉粒体材料によっては熱処理時間が数十分単位となることもあり、このような場合には単位時間を1分として積算温度を算出する場合もあり、任意な時間を設定可能である。
【0011】
従来の制御では、目標温度にまで到達したことを確認後、一定時間保持する制御が一般的であった。そのため、温度履歴(目標温度までの所用時間と温度履歴、目標温度以上へのオーバーシュート、一定温度保持中での温度のブレ)を補正することが不可能であった。焼成条件が比重・強度にシビアに影響を与える発泡体では、このようなバッチ間での加熱条件の違いは望ましくない。本発明の熱処理粒子の製造方法においては、基準温度からの温度差を一秒ごとに累積する積算温度を導入し、コンピューター制御によって各バッチで積算温度が一定量に達した時点で焼成完了とすることを特徴とするため、そのような加熱条件の違いを、積算温度という観点で一元化し、各バッチごとの品質のブレを解消することができる。図1に従来型制御と積算温度制御を比較したが、点線で塗られた部分の面積(積算温度)が等しくなるように制御することが特徴である。従来の制御は、仕込み量や立ち上げ条件が異なるなどの原因で、制御が追随しない場合、温度の変動が起こったりしやすく、これが設定温度は同じでも製品の品質が異なるという結果を生んだ。
【0012】
それに対し、積算温度制御は、設定温度より温度過剰気味であれば、焼成時間を自動的に短くするなどして補正する。また、昇温過程も焼成に寄与していると判断しているため、一定温度を保持することなく、昇温過程のみで焼成を終わらせることも可能であり、結果的に積算温度制御の方が焼成時間を数割短縮できる。これにより、短時間高温焼成や長時間低温焼成も一元化し、炉の立ち上げで昇温が遅い場合や、仕込み量が少なく昇温が早い場合にも柔軟に対応できる。また、本発明の熱処理粒子の製造方法においては、熱電対により流動層内の温度測定が可能であるため、温度履歴を詳細に測定することが可能である。
【0013】
積算温度と発泡体比重との関係は図2に示すように、事前に予備試験において得ておくべきものである。ここで、閾値となる基準温度は、複数の温度履歴から最も積算温度と比重の相関性が得られるように値を上下させて定義する。とくに数種類の近似曲線を作成し、そのR二乗値が最大になるように決定すればよい。生産現場ではもっとも信頼性、再現性が得られ、かつ簡便な近似曲線を得るべきである。この近似曲線をコンピューターに入力しておき、目標とする発泡体比重を入力すると、必要な積算温度を自動算出させるシステムにする。このような積算温度制御は、直接流動層内に温度センサー(熱電対)を挿入でき、正確な品温測定が可能な流動層であるからこそ達成できるシステムである。
【0014】
流動層炉の後段には対象粒子およびそれと共に飛来した媒体粒子を気流より分離回収する分離手段を設ける。分離手段としては、大型のチャンバー、フィルター、サイクロン等各種気固分離手段が用いられる。分離手段においては、分離の進行状況に応じて気流の流量を変化させると良い。
風篩において、回収すべき微粒(発泡体)と粗粒(流動媒体)とすると、粗粒子の飛び出し流束(kg/ms)は、空塔速度(m/s)だけでなく、微粒子の飛び出し流束(kg/ms)にも強く影響される。すなわち、飛び出した微粒子の流れが粗粒子から見ればさながら流体のように影響し、微粒子の流れに同伴して粗粒子が飛び出す傾向が高くなる。また、微粒子の飛び出しは粒子濃度の高い回収初期の方が多いため、粗粒子の同伴の危険性が高い。そこで、回収初期には風量を抑え、微粒子の飛び出し質量流量をある程度低く制御し、これが減少してきた段階で最終的に高い分離効率を示す風量まで徐々に増加させるなど、分離回収全体を通して、極端な微粒子の飛び出し質量流束の増加を防ぐことが重要である。これによって媒体粒子の同伴飛散を低減させることが可能となる。
【0015】
加熱方式としては通常の燃料・酸素源を吹き込むバーナーのみでなく、電気炉、可燃ガス過剰雰囲気への酸素・空気吹き込み、重油噴霧などでも良く、又これらの併用でも良い。炉下部の熱風炉より燃料過剰の不完全燃焼を起こした上で、流動層部分でさらに空気や酸素ガスを吹き込んで二段燃焼させることも可能である。その結果、流動層に挿入するエアーノズルは着火部分が不要で、構造が簡便となり、又、気流によるノズル冷却効果で消耗が抑えられる。高濃度酸素を二段燃焼用に吹き込めば、燃焼排ガスの顕熱持ちだしが低減されるため、1200℃を超える高温の流動層を達成することも可能である。
【0016】
流動層に用いる分散板などの多孔板は熱遮断効果を持つ。すなわち、多孔板に高温ガスを流通させた場合、多孔板で高温ガスの輻射熱が反射し、下流側(上部)には、対流伝熱でしか熱伝達が行えなくなる。逆に上流部は反射した輻射エネルギーによって温度が上昇する。この現象は燃焼領域の保温、熱効率向上として用いられることもあるが、流動層焼成のように熱風炉で予熱し、分散板を経て流動層への熱供給を行う場合、熱遮断効果によって熱風炉からの供給熱量が低下する。この現象は、対流伝熱より輻射伝熱が支配的な800℃以上の温度領域で顕著である。よって、1000℃以上の分散板をもつ流動層焼成では、まず熱風炉と流動層内での二段加熱を採用せざるを得ない。
【0017】
粒子の投入方法は、流動層上部からの投入が望ましい。融着の危険性が少ないものは、流動層下部、分散板手前から吹き込むことも可能である。流動層のバーナーの位置は、融着付着するものは、融着付着の程度にもよるが、なるべく流動媒体の濃厚な層下部に挿入する方が望ましい。
粒子が濃厚でないフリーボードでの燃焼は、保温程度に設定すべきである。
【0018】
媒体粒子は、終末速度が対象粒子より大きいことは勿論であるが、できれば、粒径にもある程度の隔たりがある方が望ましい。それは、非常停止時や運転条件次第では、媒体粒子と対象粒子が混ざった状態で抜き出し、篩などで分級処理することがあるためである。おおよそ媒体粒子の方が高比重・粗大となるが、状況によって、アルミナより低比重のムライト粒子にし、その分、粒径を大きくするなどの調整が必要となる。一方で、良好な流動化状態を得るためには、媒体粒子と対象粒子の流動化開始速度に差がありすぎてはならない。
発泡体などでは、発泡前と発泡後で、比重・粒径が大幅に異なることも留意しなくてはならない。塔径の2倍以上の静止層高に相当する量の粒子を流動化させた場合、粒子層と空気層が上下にわかれてピストン運動をするスラッギング流動化状態になることがあり、温度・流動化の制御が困難になる。発泡体などは、発泡前後で静止層高が2倍になることもあるため、原料の充填量は塔径と同程度が望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、媒体流動層によって、融着防止効果があり、溶融を伴う熱処理を行うことができる。これにより、例えば軽量骨材の分野では従来困難であった、300μm以下の微粒焼成も容易となり、かかる微粒の単独粒度での商品化も可能となる。媒体粒子による伝熱特性と流動層本来の温度均一性によって、温度制御が容易となる。加えて、対象粒子を流動化させ、そこに熱電対等センサーを挿入できるため、直接対象粒子の温度が測定できる。このことにより、対象粉体の熱履歴が正確に測定できる。バッチ焼成には、温度履歴がつきものであるが、上記の正確な熱履歴測定に加え、一定温度以上の積算温度制御によって、バッチ間での焼成もより均質にすることができる。したがってバッチ式の熱処理におけるバッチ内滞留時間一定による高均質性の長所を持ったまま連続式の熱処理による高生産性の特徴を発揮して、効率の良い熱処理を提供することができる。特に高性能微粒人工軽量骨材の製造に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体的な実施例をもって説明する。図3は本発明を実施するに適した装置の一例を示す。図中、1は流動化エアーの予熱・分散を行う熱風炉部分、2は流動層を形成する濃厚層部分、3は粒子が層表面から飛散・落下を繰り返すフリーボード部分であり、これが焼成炉として筒体を形成する。4は気固分離装置としてのサイクロンであり、サイクロン4と流動層部分の間には、装置の熱膨張収縮を緩和するベローズ5等で連結することが妥当である。冷却層16は、製品の冷却機能だけでなく、品質管理の機能も設けている。
【0021】
焼成炉としては、(1)予熱期間、(2)原料投入・温度回復期間、(3)流動化熱処理期間、(4)風篩期間を順に繰り返して行う。冷却層においては、(4)の風篩期間に同期させて(1)´投入期間を開始し、これ以降、(2)´冷却期間、(3)´品質管理期間、(4)´排出期間と繰り返す。ここで焼成炉と冷却層のバッチ間隔が等しくなるように冷却時間を調整する。また、非常停止・規格外品発生にも対応するよう、各所で対策が可能な機構が設けてある。
【0022】
焼成炉の濃厚層2には、粒径1.0−0.5mmからなるムライト質媒体粒子6が装入してある。これは後から投入される原料および発泡体7と流動化によってある程度まざりあって存在する。また、流動化に伴って気泡8が発生する。本発明においては、熱風の流速を0.5〜1.2m/s(過剰ガス流束0.3〜0.9m/s)とする。より好ましくは0.9m/s以下(過剰ガス流速0.7m/s以下)である。
【0023】
12は分散板、13は充填層式分散器であり、流動層全体を流動化させるためにガスの分散を行う。流動層部分は1100℃以上に昇温するため、流動層直下の分散器は、金属や各種耐火物の一体成型物ではその耐熱性より使用が困難である。そこで、粒子と直接接触する部分の分散器13には、取替えが可能で、かつ耐熱性が高いセラミックス粒子による充填層式の分散器を採用した。直径3−4cmのアルミナボールを充填した。分散板9は、漏斗状の抜出部分を持っており、22に示すシャッター等で固定層13が保持されている。非常停止時などの粒子排出時には、このシャッター22をあけることで、固定層粒子13、媒体粒子6、原料および発泡粒子7が回収できる。また、この抜出管より層内に送風し、空気分散をより均一化させたり、過剰にこの風量を高めると、層中央に強い上昇流をもった噴流流動層も形成させたりすることができる。
【0024】
流動化熱処理期間では、流動化ブロワー9で送風された空気を、流量計10で調節し、バーナー11で燃焼させ、コーン型ガス分散器12、充填層式分散器13を経て、流動層2に流通させる。風篩期間では、風篩ブロワー14もあわせて運転し、発泡体7は流動層2からサイクロン4へ輸送され、ここで気流分離された後、分岐弁15を経て、冷却層16に落下させて、流動化しながら傾斜分散板17に沿って回収口25から回収される。風篩ブロワー14と流動化ブロワー9は変速できるものが一つでも良いし、速度の変化に対応できる複数のものでも良い。発泡体粒子7が層内にあまり存在しない予熱期間では、媒体粒子6の流動化が維持できる範囲であれば、バーナー11の風量を落とし、顕熱持ち出しを減少させ熱効率を向上させてもよい。
【0025】
層内には、重油バーナー18を挿入し、温度制御は、媒体粒子6、発泡体7に挿入した熱電対19によって行う。粉粒体材料の投入は、投入ホッパー20を経て、投入ノズル21より行う。熱電対19は、媒体層のみの状態と、発泡体も層内に残留している状態の二通りの状態で、それぞれ流動層部分に浸されるように配置することが重要である。発泡体7層部分に挿入された熱電対は、熱処理段階に入ってからの必要積算温度を算出し、熱処理の終了時点をチェックしてその結果を風篩用ブロワー14に指示するようになっている。
【0026】
23は流動化状態観察のための覗き穴である。24は、圧力センサープローブであり、差圧式センサーで測定できる。流動層用は、主に層内の流動化状態を判断するために用いる。
分岐弁15は、流動化熱処理期間中にまれに飛散する未発泡粒子や磨耗粉を冷却層に導入させないように外部に排出するために用いるもので、風篩期間は、冷却層とサイクロンを連結させる。また、非常停止時に風篩回収する際にも規格外品を製品ライン外へ誘導することもできる。
【0027】
冷却層16は、冷却工程ではどのような流動化状態でもよいが、製品管理の際には、発泡体の簡易比重測定と、流動媒体の偏析を行うため、均一流動化状態にすることが望ましい。ここで、冷却層用圧力センサープローブ24の区間差圧より、ΔP(区間圧力損失)≒ρ(発泡体見かけ密度)×g(重力加速度)×ε(粒子空間率)/ΔL(区間長さ)の関係より、その区間で流動化している発泡体見かけ密度を概算することができる。これにより、製品の発泡度合いのリアルタイム測定とインライン品質管理が可能である。また、大気圧との差圧を測定することで、回収された製品の全量も常時確認でき、融着トラブルによる収率低下や層内への蓄積も察知できる。また、均一流動化によって、高比重の媒体粒子を沈降分離することが可能であり、高さを変えた複数の抜出口25より、発泡体のみを回収することができる。これにより風篩で混入した媒体粒子もさらに除去し、製品の純度を高めることが出来る。
【0028】
図3ではバーナーによる加熱方式を示してあるが、流動層炉に管状電気炉を配置して、電気炉による加熱方式を採用しても良い。廃ガラスなど低融点の原料を用いた場合、焼成温度を大幅に低減させることができ、炉の材質・構造、バーナーなどによる加熱方式の選択肢が広がる。特に1000℃以下の流動層焼成においては、流動層下部の熱風炉による高温燃焼ガス供給のみで焼成が可能である。
【0029】
以下、上記装置によって軽量骨材を製造する例について具体的な実施例を説明する。
充填層式分散器13として、流動層内部にアルミナボール(直径2−3cm)を、分散板12の上に充填し用いた。熱電対19は、流動層下部(媒体粒子層内の上部)、流動層中央(発泡体粒子層の中央付近)の二点をメインに測定した。
【0030】
(原料の配合)
下記の原料をリボンミキサーによって混合し、それを平均粒径15μmまでチューブミル粉砕したものを15wt%から17wt%の添加水によって造粒した。後に、ロータリードライヤーでの乾燥を経て、300μmから600μmに分級したものに、アルミナパウダー(平均粒径1.1μm)をまぶすようにしてコーティングして、主な原料粒子とした。媒体粒子には伊藤忠セラテック製アルミナイトボール0.5−1mm規格品を0.6−1mmに分級して用いた。
抗火石の粉砕粉末(平均粒径56μm) 100wt%
ベントナイト 7.0wt%
超微粉SiC 0.4wt%
【0031】
媒体流動層6内が1050℃程度になったら(予熱期間)、上記原料粒子を焼成炉2内に装入口21から装入する。流動媒体6と共に炉内で流動化状態に保ち、加熱を行う(投入・温度回復期間)。
その間、炉内の材料濃厚部における熱電対19と接続したコンピューターシステムによって、基準温度を超えた時点から、温度を積算する(流動化熱処理期間)。積算値が目標まで達したら、風篩ブロワー14を起動して風量を上げ、温度を低下させて焼結を止め、同時に焼結品を風篩してサイクロン4に移送する(風篩期間)。この時、若干の流動媒体6は焼結品と共に、サイクロン4に移動する。
【0032】
風篩が一段落した段階では、次の焼成段階に入るために、装入口21から新らしい粉粒体材料を投入し、上述の焼成工程並びに風篩工程を繰返す。これにより、バッチ式連続操業が達成される。
熱風炉1は、熱遮蔽によって過剰に加熱されやすく、かつ下流への熱供給効率が低下するため、常時1000℃以下になるように重油供給量を制御する。流動化の空塔速度は、0.5から0.9m/sである。
【0033】
風篩ブロワー14を起動させ、開始から1分かけて、目標値までまで上昇させる。回収時間は2−3分である。空塔速度としてはおよそ2.6m/s(at1000℃)であり、流動化ブロワーと合算すれば、およそ3.5m/sの流速が得られる。これは、1000℃での媒体粒子(0.5−1mm 見かけ比重3.75)の終末速度8.0m/sより低く、発泡体(0.6−1mm 見かけ比重0.8)の終末速度3.2m/sより高い。
【0034】
(結果)
粒子融着を起こさずに、図4に示すように比重0.7から1.4程度の発泡体が得られた。粒子の粒径は100μmからおよそ1.2mmまで、同一のバッチで焼成できることが立証された。これは、製品ラインナップとして、3号(0.6−1.2mm)、4号(0.3−0.6mm)、5号(0.15−0.3mm)の3種類にまたがるものである。100μm以下の粒子は焼成中でもサイクロンから排出されており、焼成不十分であった。
【0035】
昇温履歴の一例を図5に示す。結果、熱風炉1は風篩で温度が1100℃から600℃程度まで下がるが、熱容量が低いため、温度回復も早い。風篩によって、層内温度も1000℃近くまで低下するが、原料投入と同程度であり、プロセス全体で致命的とはなっていない。
当社3号から5号製品を同時に焼成した場合、1mm以上の発泡粒子が、層内に残存しており、これは全体重量の1割弱であった。またそのとき回収された粒子のうち、混入した媒体粒子の占める重量割合は1割程度であった。そのほとんどが回収された3号製品に混入してきた。
よって、この技術で完璧な分離を目指す場合、0.6−1mmの流動媒体に対し、4号(0.3−0.6mm)、5号(0.15−0.3mm)を中心に焼成すべきであり、その場合、層内残存、混入を共に0.5wt%以下に減らせることが確認されている。
【0036】
(I)加熱度制御の検証
パイロットプラントの前身のベンチ炉によって、焼成試験を行った。プロパンガスの空気燃焼と炉心管へのヒーター加熱を併用した。前述の図2はこの流動層ベンチ炉による骨材焼成において、得られた各種製品比重と積算温度の曲線であり、その誤差はわずか3%程度である。
【0037】
(II)多種の材料への対応
・ 廃ガラス
廃ガラス(褐色瓶ガラス)95wt% ベントナイト5wt% SiC0.3wt%の配合で、840℃、10分保持で、比重0.84、粒径600−1200μmの粒子が焼成できた。また、ここでは、熱風炉による加熱のみで、ガラスビーズの焼成を行った。
・ 石炭飛灰
フライアッシュ70wt% 廃ガラス30wt% ベントナイト5wt% SiC0.15wt%の配合で、1170℃、20分保持で、比重1.29、粒径600−1200μmの粒子が焼成できた。電気炉と可燃ガス過剰雰囲気での空気吹き込み方式の両方を行い、発泡体焼成が確認できている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記実施例では人工軽量骨材の製造について述べたが、その他にも焼結処理、溶融による球形化・表面円滑化処理にも応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一定温度以上の積算値によって焼成の終点を判断する積算温度制御方法の一例
【図2】積算温度と製品比重の相関関係を示したグラフ
【図3】本発明を実施するための装置例
【図4】本発明による製品の比重と強度の関係を示すグラフ
【図5】風篩工程による連続バッチ化の温度履歴
【符号の説明】
【0040】
1 熱風炉部分
2 流動層濃厚層部分
3 フリーボード部分
4 サイクロン
5 ベローズ
6 媒体粒子
7 発泡体
8 気泡
9 流動化ブロワー
10 流量計
11 バーナー
12 コーン型ガス分散器
13 充填層式分散器
14 風篩ブロワー
15 分岐弁
16 冷却層
17 傾斜分散板
18 重油バーナー
19 熱電対
20 投入ホッパー
21 投入ノズル
22 シャッター
23 覗き穴
24 圧力センサープローブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体材料を気流によって形成した反応室内の媒体流動層に導入し、該粉粒体材料を媒体粒子と共に流動化状態とし、熱処理をして熱処理粒子とした後、気流を増加させて該熱処理粒子を該増加した気流に同伴させて該媒体流動層外に排出させ、気固分離手段により熱処理粒子を回収することを特徴とする熱処理粒子の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理において、基準温度からの温度差を単位時間ごとに累積した積算温度により熱処理の終了時期を決定する請求項1記載の熱処理粒子の製造方法。
【請求項3】
前記流動化状態を均一流動化、気泡流動化状態のいずれかとし、流動化の様式を通常の流動層、噴流層、外部振動を付与した流動層の少なくともいずれかとする請求項1又は2に記載の熱処理粒子の製造方法。
【請求項4】
前記気固分離手段が、チャンバー、フィルター又はサイクロンのいずれか一以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱処理粒子の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理粒子を前記媒体流動層外に排出させる際の気流の流速を段階的に又は連続的に増加させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱処理粒子の製造方法。
【請求項6】
前記粉粒体材料として、高性能微粒人工軽量骨材を得るための火山ガラス、石炭灰、焼却灰、各種ガラスを少なくとも主原料としたものとする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱処理粒子の製造方法。
【請求項7】
流動媒体を装入してなる反応室を有し、その反応室上部に粉粒体材料の装入口を設け、又、反応室の下部には流速を変えることのできるブロワーを設け、分散器を介して気流を反応室内に送入するようになし、反応室に続いて分離装置を設けてなることを特徴とする熱処理粒子の製造装置。
【請求項8】
前記ブロワーが、前記粉粒体を流動化させるためのものと、前記熱処理粒子を前記流動層外に排出させるためのものを分離して設けてなる請求項7記載の熱処理粒子の製造装置。
【請求項9】
前記ブロワーによる前記粉粒体の流動化状態を通常の流動化状態、噴流による流動化状態、気流に脈動を加えた流動化状態、旋回流動化状態もしくは外部からの振動を付与した流動化状態、のいずれかを任意に組み合わせ可能に設けてなる請求項7又は請求項8に記載の熱処理粒子の製造装置。
【請求項10】
前記気流を反応室内に送入する手段が、基準温度からの温度差を単位時間ごとに累積した積算温度により熱処理の終点を制御する制御手段を有する請求項7〜9のいずれか一項に記載の熱処理粒子の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−292379(P2007−292379A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120089(P2006−120089)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(307021243)
【出願人】(307021254)
【Fターム(参考)】