説明

熱分解装置

【課題】 半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置において、排ガスが高濃度の腐食性ガスを含む場合であっても、あるいは火炎による熱分解で高濃度の腐食性ガスが生成する場合であっても、目的の有害成分を効率よく分解することが可能で、燃焼室の構成が高温の腐食性ガスに対する優れた耐腐食性を有する熱分解装置を提供する。
【解決手段】 有害成分を熱分解する燃焼室、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するノズルを備え、該燃焼室の側壁が、燃焼室側の表面にフッ素樹脂が被覆された基材で構成され、該側壁の外周全体にわたり冷媒を流通するための流路が設けられてなる熱分解装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解して浄化する熱分解装置に関する。さらに詳細には、排ガスに含まれる有害成分が腐食性ガスであっても、あるいは火炎により有害成分が熱分解して腐食性ガスが生成する場合であっても、これらの有害成分を効率よく分解することが可能で、燃焼室の構成が高温の腐食性ガスに対する優れた耐腐食性を有する熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体工業の発展とともに、半導体製造工程においては非常に多種のガスが使用されるようになってきている。しかし、これらのガスは人体及び環境にとって有害な物質が多く、工場外へ排出するに先立って浄化することが必須のこととなっている。これらのガスを燃焼させることにより分解処理する燃焼式浄化方法は、排ガスの組成や物性によらず適用することができる便利な方法であり、特に有害成分が高濃度、大流量の場合は、乾式浄化方法や湿式浄化方法と比較して効率的である。
【0003】
燃焼式浄化方法により処理される排ガスは、プロパン、LPG、LNG等の燃料ガス、空気または酸素、必要に応じ不活性ガスと燃焼室において混合、燃焼し、無害な酸化物あるいは容易に無害化できる物質となり処理される。従来から使用されている一般的な燃焼式浄化装置は、特許文献1〜6に示すように、排ガスに含まれる有害成分を熱分解するための燃焼室、処理対象の排ガス、燃料ガス、空気等の酸素含有ガスを燃焼室へ導入するための各配管(ノズル)、燃焼後のガスを燃焼室から排出するための排出口から構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−54534号公報
【特許文献2】特開平10−110926号公報
【特許文献3】WO00/32990号公報
【特許文献4】特開2001−59613号公報
【特許文献5】特開2001−248821号公報
【特許文献6】特表2005−522660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼式浄化方法において、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四フッ化珪素、四塩化珪素、C等のハロゲン化物を処理した場合は、新たに塩化水素、フッ化水素等の酸性ガスが生成する。これらはハロゲン化物ガスと同様に腐食性ガスであり、しかも1000℃に近い温度のため、燃焼室の側面に使用される構成部材には、優れた耐熱性及び耐腐食性が要求される。そのため、例えば特許文献3においては、燃焼室の内壁材料として繊維強化セラミックスを使用することが開示されている。
【0006】
しかしながら、前記のような耐熱性、耐腐食性材料を使用しても、塩化水素、フッ化水素等の酸性ガスの濃度が比較的に高い場合(1vol%以上)は、徐々に腐食が進行する不都合があり、さらに高濃度の場合(5vol%以上)は、燃焼室の側壁が部分的に崩壊する虞があった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置において、排ガスが高濃度の腐食性ガスを含む場合であっても、あるいは火炎による熱分解で高濃度の腐食性ガスが生成する場合であっても、目的の有害成分を効率よく分解することが可能で、燃焼室の構成が高温の腐食性ガスに対する優れた耐腐食性を有する熱分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置において、燃焼室の側壁の表面をフッ素樹脂で被覆するとともに、燃焼室の側壁の外周全体にわたり水等の冷媒を流通するための流路を設けて燃焼室の側面表面の温度をフッ素樹脂の耐熱温度(約300℃)以下に冷却することにより、前述の課題が解決できることを見出し、本発明の熱分解装置に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置であって、有害成分を熱分解する燃焼室、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するノズルを備え、該燃焼室の側壁が、燃焼室側の表面にフッ素樹脂が被覆された基材で構成され、該側壁の外周全体にわたり冷媒を流通するための流路が設けられてなることを特徴とする熱分解装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱分解装置は、燃焼室の側壁が、燃焼室側の表面にフッ素樹脂が積層された基材で構成され、側壁の外周全体にわたり冷媒を流通するための流路が設けられた構成なので、排ガスの熱分解処理の際に、高温度で高濃度の腐食性ガスが燃焼室に存在しても、冷媒の流路に水等の冷媒を流通することにより、燃焼室の側壁はフッ素樹脂の耐熱温度以下に冷却され、側壁の腐食の進行を大幅に抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置に適用される。
本発明の浄化装置で処理できる排ガスに含まれる有害成分(または燃焼により生成する有害成分)としては、塩素、フッ素、塩化水素、フッ化水素等の酸性ガス、パーフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン等のハロゲン化炭素またはハロゲン化炭素水素を例示することができる。
【0011】
本発明においては、前記の有害成分の中でも、特に酸性ガス、ハロゲン化炭素、またはハロゲン化炭素水素が高濃度(1vol%以上)で排ガスに含まれている場合、あるいはこれらが燃焼により高濃度(1vol%以上)で生成する場合は、燃焼室の側壁の腐食の進行を防止できる点で効果を発揮することができる。
また、燃料ガスとしては、プロパンガス、天然ガス等を使用することができる。これらの燃料ガスまたは排ガスは、必要に応じ窒素等の不活性ガスとともに用いられる。
【0012】
以下、本発明の排ガスの浄化装置を、図1〜図3に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
尚、図1は、本発明の熱分解装置の一例を示す垂直断面図である。図2は、図1のa−a’断面における水平断面図である。また、図3は、本発明の熱分解装置とウェットスクラバーを組合せた浄化装置の例を示す構成図である。
【0013】
本発明の熱分解装置は、図1に示すように、有害成分を熱分解する燃焼室1、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル(燃料ガスを燃焼させて火炎を噴出するノズル)2、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するノズル3を備え、燃焼室の側壁4が、図2に示すように、燃焼室側の表面にフッ素樹脂の層10が被覆された基材11で構成され、側壁4の外周全体にわたり冷媒を流通するための流路5が設けられてなる熱分解装置である。尚、本発明の熱分解装置は、必要に応じて、空気または酸素を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル9を設けることができる。また、ノズル2は通常は燃焼室の上壁中心部に1個、ノズル3は通常はノズル2の外周部に等間隔に複数個設けられる。
【0014】
本発明において、燃焼室は通常は円筒形であり、その側壁はフッ素樹脂が被覆(積層)された基材で構成される。基材としては、炭素鋼、マンガン鋼、クロム鋼、モリブデン鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼等の金属材料が、熱伝導率が高く、冷媒を流したときに効率よく燃焼室の側壁を冷却でき使用可能であるが、これらの中でも通常はステンレス鋼、高ニッケル鋼が使用される。ステンレス鋼を用いる場合、マルテンサイト鋼、フェライト系ステンレス鋼も使用可能であるが、耐腐蝕性が優れている点でSUS316、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼、またはSUS329J1、SUS329J2L等のオーステナイト・フェライト系ステンレス鋼を用いることが好ましい。また、高ニッケル鋼は、30wt%以上のニッケルを含むニッケル鋼であり、インコネル、ハステロイ等を例示することができる。
【0015】
本発明において、基材に被覆(積層)するフッ素樹脂は、フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂である。例えば、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等を挙げることができるが、これらの中では分子組成が緻密で耐熱性が優れている点で、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体を用いることが好ましい。基材の厚みは、通常は1〜20mmであり、その表面に被覆(積層)するフッ素樹脂の厚みは、通常は0.1〜2.0mmである。
【0016】
本発明において、冷媒を流通するための流路5は、燃焼室の側壁4と外壁7の間隙により構成される円筒形の流路である。冷媒を流通するための流路5には、例えば燃焼室の上部及び下部の位置に、冷媒の入口または出口6が備えられる。冷媒の入口及び出口は、好ましくは冷媒が流路内で旋回流を形成するように設けられる。例えば、冷媒の入口及び出口の方向は、実質的に流路5に対して接線方向となるように設けることが好ましい。尚、本発明における燃焼室1の内径は、通常は100〜1000mmであり、冷媒を流通するための流路5の間隙は、通常は5〜100mmである。また、流路5の高さは、通常は燃焼室1の高さの1/2以上、好ましくは燃焼室1の2/3以上である。
【0017】
本発明の熱分解装置により、排ガスに含まれる有害成分を火炎により熱分解する際は、本発明の熱分解装置を用いて、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出して火炎を形成し、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するとともに、冷媒を流通するための流路に冷媒を流しながら有害成分の熱分解が行なわれる。燃焼室へ噴出される際の燃焼ガスの温度は、通常は600〜1500℃程度である。また、燃焼室のガス圧力についても特に制限されることはなく、通常は常圧であるが、10KPa(絶対圧力)のような減圧下あるいは0.5MPa(絶対圧力)のような加圧下で処理することも可能である。
【0018】
冷媒の流量は特に制限されることはないが、通常は燃焼室の側壁の温度が300℃以下となるように、好ましくは250℃以下となるように、さらに好ましくは200℃以下となるように調整される。燃焼室の側壁の温度が300℃を超えると、燃焼室の側壁のフッ素樹脂の層が崩壊し、基材の腐食が進行する虞がある。冷媒の温度は、通常は0〜50℃程度である。また、冷媒は、燃焼室の側壁を効率よく冷却するために、流路5内で旋回流となることが好ましい。
本発明において、熱分解装置により熱分解処理された後のガスは、有害成分が全て許容濃度以下の濃度まで浄化された場合は大気に放出されるが、新たに塩化水素、フッ化水素等の有害成分(容易に無害化できる成分)が生成した場合は次の処理工程に送られる。
【0019】
本発明の熱分解装置においては、このような有害成分(容易に無害化できる成分)の浄化処理を実施するための設備を併せて装備することも可能である。図3の水槽15及びスクラバーの設備は、本発明の熱分解装置により処理した排ガスについて、処理後のガスに含まれる粉化物の除去、及び新たに生成した有害成分の除去を行なうためのものであり、本発明においては必須の設備ではないが、これらの設備を備えることが好ましい。すなわち、本発明の熱分解装置の燃焼室の排出口8に、粉化物の除去部及び/または酸性ガスの除去部を設けた排ガスの浄化装置を備えることが好ましい。
【0020】
例えば、本発明の熱分解装置により、アルシン、ホスフィン、シラン、ジボラン等の水素化物を含む排ガスを処理した場合は、燃焼により各々ヒ素、リン、ケイ素、ホウ素等の固体粒子状酸化物が生成する。また、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四フッ化珪素、四塩化珪素、C等のハロゲン化物を含む排ガスを処理した場合は、新たに塩化水素、フッ化水素等の酸性ガス(容易に無害化できる成分)が生成する。図3の浄化装置においては、粉化物は主にスプレーノズル12からの散水、及び多孔板17における捕捉により除去することが可能である。また、スクラバー設備への配管20は、粉化物が容易に水槽15へ洗い流されるようにスクラバー設備側に傾斜させることが好ましい。
【0021】
本発明の熱分解装置に、水槽15及びスクラバーの設備を結合した図3に示すような浄化装置を用いた場合、塩化水素、フッ化水素等の酸性ガスは、主に充填材18により除去することが可能である。また、デミスター19により水分も併せて除去することができる。尚、図3において、13はフローメーター、14はポンプ、16は排水管、21は処理後のガスを外部へ排出する排出口を表わす。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
(熱分解装置の製作)
図1に示すような外壁がステンレス鋼(SUS316L)製の高さ2000mmの熱分解装置を製作した。熱分解室の側壁としては、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)の層(厚み0.5mm)を被覆したステンレス鋼(SUS316)(厚み3.0mm)を用いた。この側壁は、内径300mm、長さ600mmであり、さらにその外側の外壁は、内径400mm、厚さ3mmのステンレス鋼製の円筒壁である。
【0024】
尚、冷媒を流通するための流路には、燃焼室最下部の位置に冷媒の入口、また燃焼室最上部の位置に冷媒の出口を設けた。冷媒の入口及び出口は、冷媒が流路内で旋回流を形成するように、円形の流路に対して接線方向となるように設けた。
また、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズルの内径は50mm、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出する4個のノズルの内径は42mmであり、長さは共に200mmであった。その他、空気を燃焼室へ噴出するノズル9を、ノズル2とノズル3の間に設けた。
【0025】
(浄化装置の製作)
次に、熱分解装置の右下部に、縦400mm、横400mm、高さ500mmの水槽を設置し、水槽の上部には、多孔板、ポリプロピレン樹脂を主材とする充填材、及びデミスターを有するスクラバーを設置した。また、浄化装置と水槽を、傾斜した配管で接続し、スプレーノズル、フローメーター、ポンプ等を接続して図3に示すような浄化装置を完成した。
【0026】
(熱分解試験)
水槽に深さが350mmになるまで水を注入した後、ポンプ等を稼動してスプレーノズルから水を噴出させた。また、冷媒の入口から水(流量30L/min)を流した。続いて、ノズル2からプロパンガス(流量15L/min)及び空気(流量360L/min)の混合ガスを燃焼室へ導入してプロパンガスを燃焼させるとともに、ノズル9からも酸素(流量140L/min)及び窒素(流量520L/min)を熱分解室に導入した。
【0027】
次に、4個のノズル3から有害成分としてCHClF(R22)(流量17.5L/min(1個のノズル))及び窒素(流量25L/min(1個のノズル))の混合ガスを燃焼室に導入するとともに、冷媒の流路に流す水の量を調節して、熱分解室の側壁の温度を100℃以下に保持しながら、有害成分であるCHClFの熱分解処理を行なった。熱分解室の側壁の温度としては、基材であるステンレス鋼の上下方向について均等に4点を選定した。その結果、温度は上から下に向かって各々89℃、93℃、90℃、59℃であった。
【0028】
CHClFの熱分解処理は2時間行ない、この間CHClFの熱分解率を測定するために、約30分間隔で熱分解装置の排出口から排出するガスの一部をサンプリングしこれらの濃度を測定した。その結果、CHClFの熱分解率(平均値)は、92.5%であった。尚、CHClFは、熱分解により、二酸化炭素、水のほか、塩化水素、フッ化水素が生成する。しかし、浄化装置の排出口から排出するガスの一部をサンプリングしてガスを分析した結果、前記のような塩化水素、フッ化水素等の有害成分は検出されなかった。熱分解処理終了後、熱分解室の側壁の表面を観察したが、フッ素樹脂の層の剥離や腐食の痕跡は見られなかった。
【0029】
[実施例2〜7]
実施例1の熱分解試験において、有害成分を各々C、C、CHF、CCl、HCl、FClに変えたほかは実施例1と同様にして熱分解試験を行なった。これらの熱分解試験に関し、熱分解室の側壁の表面を観察した結果を表1に示す。
【0030】
[実施例8〜13]
実施例1の熱分解装置の製作において、熱分解室の側壁を、各々四フッ化エチレン樹脂(PTFE)の層を被覆したステンレス鋼、四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)の層を被覆したステンレス鋼、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体の層を被覆したインコネル、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体の層を被覆したハステロイ、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体の層を被覆した炭素鋼、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体の層を被覆したマンガン鋼に替えたほかは実施例1と同様にして熱分解装置を製作した。これらの熱分解装置を用いたほかは実施例1と同様にして熱分解試験を行なった。これらの熱分解試験に関し、熱分解室の側壁の表面を観察した結果を表1に示す。
【0031】
[実施例14、15]
実施例1の熱分解試験において、有害成分の濃度を各々2%、8%に変えたほかは実施例1と同様にして熱分解試験を行なった。これらの熱分解試験に関し、熱分解室の側壁の表面を観察した結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1〜3]
実施例1の熱分解装置の製作において、熱分解室の側壁を各々フッ素樹脂の層を被覆しないステンレス鋼、フッ素樹脂の層を被覆しないインコネル、フッ素樹脂の層を被覆しないハステロイに替えたほかは実施例1と同様にして熱分解装置を製作した。これらの熱分解装置を用いたほかは実施例1と同様にして熱分解試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0033】
[比較例4]
実施例1の熱分解装置の製作において、冷媒を流通するための流路を設けず、熱分解室の側壁を各々セラミック(SiC)の層を被覆したステンレス鋼に替えたほかは実施例1と同様にして熱分解装置を製作した。この熱分解装置を用いたほかは実施例1と同様にして熱分解試験を行なった。これらの熱分解試験に関し、熱分解室の側壁の表面を観察した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
以上の結果から、本発明の実施例の熱分解装置は、排ガスが高濃度の腐食性ガスを含む場合であっても、あるいは火炎による熱分解で高濃度の腐食性ガスが生成する場合であっても、有害成分を効率よく分解することができるとともに、燃焼室の構成が高温の腐食性ガスに対する優れた耐腐食性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の熱分解装置の一例を示す垂直断面図
【図2】図1のa−a’断面における水平断面図
【図3】本発明の熱分解装置とウェットスクラバーを組合せた浄化装置の例を示す構成図
【符号の説明】
【0037】
1 燃焼室
2 燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル
3 排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するノズル
4 燃焼室の側壁
5 冷媒を流通するための流路
6 冷媒の入口または出口
7 燃焼室の外壁
8 燃焼室の排出口
9 空気または酸素を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル
10 燃焼室の側壁のフッ素樹脂の層
11 燃焼室の側壁の基材
12 スプレーノズル
13 フローメーター
14 ポンプ
15 水槽
16 排水管
17 多孔板
18 充填材
19 デミスター
20 スクラバー設備への配管
21 処理後のガスを外部へ排出する排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程から排出される排ガスに含まれる有害成分を、火炎により熱分解する装置であって、有害成分を熱分解する燃焼室、燃料ガスと空気を含むガスを燃焼室へ噴出するノズル、排ガスを含むガスを燃焼室へ噴出するノズルを備え、該燃焼室の側壁が、燃焼室側の表面にフッ素樹脂が被覆された基材で構成され、該側壁の外周全体にわたり冷媒を流通するための流路が設けられてなることを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
燃焼室の側面の基材が、ステンレス鋼または高ニッケル鋼である請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
冷媒を流通するための流路が、燃焼室の側壁の外周に形成された円筒形の流路である請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項4】
冷媒を流通するための流路の冷媒入口及び冷媒出口の方向が、冷媒が流路内で旋回流を形成するように、冷媒流路に対して接線方向となるように設けられた請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項5】
有害成分が、酸性ガス、ハロゲン化炭素、またはハロゲン化炭素水素である請求項1に記載の熱分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−276307(P2010−276307A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131120(P2009−131120)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】