説明

熱可塑性樹脂の真空成形方法及びその装置

【課題】 酸化防止剤を用いなくても樹脂成形体の酸化劣化を防ぐことができ、かつ熱可塑性樹脂の成形及び固化に際して、予備的に樹脂成形及び固化に適する温度を正確に決めることができる。
【解決手段】 熱可塑性樹脂固形材料を成形型51に供給して一対の熱プレス体12a,12bの間に配置し、真空状態で熱プレス体12a,12bにより成形型51を保持して成形型内の材料を加熱することにより溶融させた後仮成形する。次いで真空状態のまま熱プレス体12a,12bから仮成形体の入った成形型51を取り出して別の一対の熱プレス体13a,13bの間に移動し、真空状態のまま一対の熱プレス体13a,13bにより仮成形体を熱圧成形して樹脂成形体にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空状態で熱可塑性樹脂固形材料を溶融・仮成形した後、真空状態のまま熱圧成形する熱可塑性樹脂の真空成形方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂用プレス成形機では、空気中で成形が行われるため、樹脂の酸化劣化によって最終成形品の物性が低下しやすい。このため、ほとんどの工業的プロセスにおいては、樹脂に酸化防止剤などを添加させているのが現状である。
このような添加剤は、ポリエチレンやポリプロピレンのような汎用性樹脂についてはフェノール骨格を持つもの、リンや硫黄を含んだ化学物質などが使用されている。このうち、食品包装用の樹脂生産には、FDA(食品医薬品局)認可の添加剤が用いられている。またその他の工業用途の製品生産では環境有害物質が使用されていることも少なくない。しかしFDA認可品であるといっても、プラスチック製品の生産量を考えると、この製品の廃棄時に莫大な量の添加剤が放出されていることになる。一般に上記添加剤は樹脂に対して0.2〜0.5重量%が必要とされているので、年間の国内のプラスチック生産量1200万トンから計算すると、少なく見積もっても2万トンから3万トンもの添加剤、即ち環境負荷物質が毎年廃棄され、環境問題になっている。
一方、上記添加剤はプラスチック成形品表面にブリードアウトしやすく、機械物性などの低下は抑えられるものの、成形品表面の着色性や接着性が劣る問題を抱えている。特に、電装基板などの生産工程においては、添加剤成分の染み出しによって配線不具合が起こり、歩留まりが極端に落ちてしまう。従って、添加剤を用いない場合には、樹脂の酸化劣化を防ぐために真空機構を備えたプレス装置を使用せざるを得ない。しかしこうしたプレス装置は極めて高価であり、汎用樹脂の成形に用いた場合には減価償却が難しく、しかもその適用は生産コストの高い電子部品などに限定されている。
【0003】
従来、2枚の薄い熱可塑性樹脂材料シートを真空容器に入れ、真空下でプレスの加熱板間でシートが互いに溶着しかつ成形に適する温度になるまで押圧し、その後真空容器の出口に隣接する成形プレスで希望する形状に成形する方法及び装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平3−2010号公報 特許請求の範囲 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された成形方法では、熱可塑性樹脂の成形に適する温度及びこの樹脂の固化温度を正確に設定することが困難である不具合があった。
本発明の目的は、酸化防止剤を用いなくても樹脂成形体の酸化劣化を防ぐことができ、しかも熱可塑性樹脂の成形及び固化に際して、予備的に樹脂成形及び固化に適する温度を正確に決めることができる熱可塑性樹脂の真空成形方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係る発明は、図4〜図7に示すように、熱可塑性樹脂固形材料を成形型51に供給して一対の第1熱プレス体12a,12bの間に配置する工程と、真空状態で一対の第1熱プレス体12a,12bにより成形型51を保持して成形型内の前記材料を加熱することにより溶融させた後仮成形して仮成形体にする工程と、真空状態のまま一対の第1熱プレス体12a,12bから仮成形体の入った成形型51を取り出して別の一対の第2熱プレス体13a,13bの間に移動する工程と、真空状態のまま一対の第2熱プレス体13a,13bにより仮成形体を熱圧成形して樹脂成形体にする工程とを含む熱可塑性樹脂の真空成形方法である。
【0006】
本願請求項2に係る発明は、図1に示すように、減圧可能な耐圧製容器11と、この容器内の圧力を所定の圧力まで減圧する真空ポンプ14と、容器内に並設された二対の熱プレス体12a,12b,13a,13bと、これらの二対の熱プレス体のいずれか一方の間に配置される成形型51と、これらの二対の熱プレス体のいずれか他方の間に成形型51を移動させる成形型移動具46,52とを備え、図4〜図7に示すように、一方の一対の第1熱プレス体12a,12bは、成形型51に供給された熱可塑性樹脂固形材料を溶融・仮成形し、他方の一対の第2熱プレス体13a,13bは、成形型51内の仮成形体を熱圧成形して樹脂成形体にするように構成された熱可塑性樹脂の真空成形装置である。
【0007】
本願請求項3に係る発明は、請求項2に記載した真空成形装置であって、図1に示すように、成形型移動具が、成形型51を載せる、二対の熱プレス体12a,12b,13a,13bの間を移動可能な試料載台板46と、この試料載台板46を移動させる試料移動軸52とを有する。
【0008】
本願請求項4に係る発明は、請求項2に記載した真空成形装置であって、二対の熱プレス体12a,12b,13a,13bにそれぞれ設けられた温度センサ41a,41b,42a,42bと、熱プレス体12a,12b,13a,13bに内蔵されたヒータ12c,12d,13c,13dの温度を設定する温度調節器44と、この温度調節器44の設定温度と温度センサの検出温度に応じてヒータ12c,12d,13c,13dを制御するコントローラ43とを更に有する。
【発明の効果】
【0009】
本願請求項1に係る方法では、仮成形と樹脂成形とを別々の熱プレス体で、同一の真空状態で行うので、酸化防止剤を用いなくても樹脂成形体の酸化劣化を防ぐことができ、しかも仮成形の条件及び樹脂成形の固化条件を個別に調整することができる。これにより、熱可塑性樹脂の成形及び固化に際して、予備的に樹脂成形及び固化に適する温度を正確に決めることができる。
本願請求項2に係る装置では、単一の容器の内部で、一方の熱プレス体で成形した成形体を同一の真空状態で成形型移動具により、同一の成形型に入れたまま、他方の熱プレス体に移動して加圧することができ、仮成形から樹脂成形を実質的に一連に行うことができる。
【0010】
請求項3に係る装置では、試料載台板と試料移動軸を用いることにより、一方の熱プレス体から他方の熱プレス体に、容器の真空度を変えることなくかつ仮成形体の温度を低下させることなく、速やかに移動させることができる。
請求項4に係る装置では、各熱プレス体に温度センサを備えることにより、正確に所定の成形温度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の実施の形態について説明する。
図1及び図2に示すように、この実施の形態の熱可塑性樹脂の真空成形装置10は減圧可能な直方体状の耐圧製容器11を有する。本発明で使用される熱可塑性樹脂は、一般の射出成形、圧縮成形等に適する結晶性の熱可塑性樹脂である。例示すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(ポリカプロラクタム)、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。この容器11の内部には一対の第1熱プレス体12a,12b及び一対の第2熱プレス体13a,13bが左右に併設される。容器11の外部には真空ポンプ14及びプレス用油圧源16が設けられる。真空ポンプ14は管路17を介して容器11の排気口18に接続される。この真空ポンプにより容器の真空度は0.01MPa以下になる。
【0012】
容器11の上壁11aには、排気口18、ガス導入口19及びリーク口21とともに、容器内の真空度を計測する真空計22と上側の熱プレス体12a及び13aをそれぞれ上下動させる第1油圧シリンダ23及び第2油圧シリンダ24が配設される。ガス導入口19は図示しない常閉のバルブを介して窒素、アルゴン等の不活性ガス源に接続され、リーク口21は図示しない常閉のバルブを介して大気に連通する。油圧源16は管路26を介して2つの油圧シリンダ23及び24に接続される。管路26には油圧計27及び油圧源16からの油圧を2つの油圧シリンダのいずれか一方に切換える切換弁28が設けられる。この実施の形態では油圧シリンダ23又は24により第1又は第2熱プレス体を最大で5000kgf(約49000N)の力でプレスすることができる。
【0013】
容器11の内部は水平方向に中間壁11bで仕切られる。シリンダ23のピストン軸23a及びシリンダ24のピストン軸24aはそれぞれ上壁11a及び中間壁11bを貫通して上側の熱プレス体12a及び13aに接続される。中間壁11bには、ピストン軸23a及び24aの軸受31及び32と、複数の通気孔33とが設けられる。また中間壁11bの中央には第1熱プレス体12a,12bと第2熱プレス体13a,13bとの間の熱移動を遮蔽する熱遮蔽板34が垂設される。
【0014】
容器11の下壁11cの上には、ベース台36及び37を介して下側の熱プレス体12b及び13bがそれぞれ取付けられる。ベース台36と37の間には、後述する試料載台板46が第1熱プレス体と第2熱プレス体との間を円滑に移動できるように移動ローラ38が設けられる。このために、移動ローラ38の上端が下側の熱プレス体12d,13dと面一になるように、移動ローラ38の両端が下壁11cに取付けられた軸受39に回転可能に支持される。熱プレス体12a,12b,13a,13bの内部にはそれぞれヒータ12c,12d,13c,13dが設けられる。上側の熱プレス体12a及び13aにはそれぞれ第1温度センサ41a及び第2温度センサ42aが設けられ、下側の熱プレス体12b及び13bにはそれぞれ第1温度センサ41b及び第2温度センサ42bが設けられる。これらの温度センサ41a,41b,42a,42bの検出出力はコントローラ43に接続され、コントローラ43の制御出力はヒータ12c,12d,13c,13dに接続される。コントローラ43には図示しないヒータスイッチ及びヒータ温度調節器44が接続される。これらのヒータは手動でヒータスイッチを入れて温度調節器44を操作することにより、所定の温度に設定可能であり、この実施の形態では最高400℃まで熱プレス体を加熱可能である。第1熱プレス体12a,12bと第2熱プレス体13a,13bとの間を移動するフランジ46aを有する試料載台板46が下側の熱プレス体12b又は13bのいずれかに上面に配置される。
【0015】
図2に示すように、容器11の前壁11dは、熱可塑性樹脂材料又は成形体を出し入れする開口部11eを有し、この開口部11eには扉47が開口部を密閉可能に設けられる。この扉47は図1の二点鎖線に示されるように円形の覗き窓47aを有し、この覗き窓47aは補強リング付きの透明ガラス体48で封止される。
図1〜図3に示すように、試料載台板46の上には熱可塑性樹脂の成形型51が載せられる。この実施の形態では、成形型51は、ステンレス鋼からなる平板の円形状の上側成形型51aとステンレス鋼からなる凹型50(図3参照)を有する円形状の下側成形型51bとからなる。容器11の右の側壁11fには貫通孔11gが設けられ、この貫通孔11gには試料移動軸52が長手方向に摺動可能にかつ軸回りに回転可能に挿通される。側壁11fの外面には気密を保持するためのシーリングパッキング11hが取付けられる。試料移動軸52の右端にはノブ52aが、左端には引っ掛け部52bがそれぞれ取付けられる。この試料移動軸52と前述した試料載台板46とにより、試料移動具が構成される。
【0016】
このように構成された真空成形装置10を用いた成形方法について説明する。
(a) 成形型のセットと試料供給
図2に示す真空成形装置前面の扉47を開け、第1熱プレス体12a及び第2熱プレス体13aを第1油圧シリンダ23及び第2油圧シリンダ24により上昇して所定の高さで保持する。次いで図4に示すように試料載台板46を第1熱プレス体12bの上に配置する。次に凹型50を有する下側成形型51bの凹型内に粉末状の熱可塑性樹脂材料を凹型一杯に入れた後、この下側成形型51bを試料載台板46の上に載せ、更にこの同一外径を有する円板状の上側成形型51aを重ね合わせる。続いて図5に示すように油圧源16の油圧により第1油圧シリンダ23のピストン軸23aを押し下げ、一対の熱プレス体12a,12bにより上下の成形型51a,51bを保持する。このときのピストン軸23aの押圧は一対の熱プレス体12a,12bによって成形型51a,51bを固定することにある。
【0017】
(b) 第1及び第2熱プレス体の温度設定
次いで扉47を閉めてロックし、耐圧製容器11を密閉する。真空ポンプ14により容器内を排気し、所定の圧力に減圧する。減圧時に必要に応じてガス導入口19より不活性ガスを導入して内部の空気と置換する。これにより容器内部を非酸化雰囲気にすることができる。続いて図示しないヒータスイッチ及び温度調節器を操作して、コントローラ43を介してヒータ12c,12d,13c,13dに通電し、第1熱プレス体12a,12bをそれぞれ熱可塑性樹脂材料が溶融する所定の温度に加熱する。この所定温度の下限値は熱可塑性樹脂が軟化を開始する温度であり、上限値は軟化開始温度より200℃程度高い温度である。
【0018】
(c) 第1熱プレス体による仮成形
一対の熱プレス体12a,12bにより上下の成形型51a,51bを保持した状態で、前記所定の温度で1分〜12時間維持することにより、熱可塑性樹脂材料を溶融させて軟化させる。次いで図5に示すように第1油圧シリンダ23のピストン軸23aを更に押し下げ、一対の熱プレス体12a,12bにより上下の成形型51a,51bを加圧して熱可塑性樹脂を仮成形する。このときの加圧力は1〜100MPaである。圧力が下限値未満では樹脂が所定の型形状に仮成形されず、上限値を超えても仮成形の度合いに変化がないため、上記範囲が選ばれる。
【0019】
(d) 第1熱プレス体から第2熱プレス体への試料移動
仮成形が終わった後、ピストン軸23aにより上側の熱プレス体12aを押し上げて圧力を解放する。図5に示すように試料移動軸52をそのノブ52aを回して引っ掛け部52bを上向きにした後、図1及び図2に示すようにノブ52aを容器内に押し込み再び回して試料載台板46のフランジ46aに引っ掛け、図6に示すように試料移動軸52を容器から引き抜いて試料載台板46を下側の第2熱プレス体13b上まで素早く移動させる。移動ローラ38の回転により成形型51を載せた試料載台板46が円滑に移動する。
【0020】
(e) 第2熱プレス体による試料の固化
試料載台板46を熱プレス体13b上まで移動させた後、第1熱プレス体12a,12bのヒータ12c,12dを切電する。更に引き続いて図7に示すようにピストン軸24aにより上側の熱プレス体13aを押し下げて成形型51を加圧する。このときの成形条件は熱可塑性樹脂を等温結晶化させるために、温度、圧力及び時間を設定する。熱可塑性樹脂の種類、成形型のサイズ、形状等により温度、圧力及び時間は変化する。例えばポリエチレンであれば100〜250℃、1〜100MPa、1分〜12時間、ポリプロピレンであれば100〜250℃、1〜100MPa、1分〜12時間、ポリエチレンテレフタレートであれば200〜300℃、1〜100MPa、1分〜12時間、ナイロン6(ポリカプロラクタム)であれば200〜300℃、1〜100MPa、1分〜12時間、ポリテトラフルオロエチレンであれば300〜400℃、1〜100MPa、1分〜12時間の成形条件が設定される。
【0021】
(f) 容器からの試料の取り出し
第2熱プレス体13a,13bにより成形型51を所定の圧力で加圧した状態で、ヒータ13c,13dを切り、第2熱プレス体13a,13bが室温になるまで放置する。その後、真空ポンプ14を止めて、バルブを開けてリーク口21から容器11内に大気を導入する。続いて室温で上側の熱プレス体13aをピストン軸24aにより上昇させ、扉47を開けて成形型51を取り出す。
【実施例】
【0022】
次に本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
[成形型のセットと試料供給]
図1及び図2に示すように真空成形装置前面の扉47を開け、上側の第1熱プレス体12a及び第2熱プレス体13aをそれぞれ上昇させて下側の熱プレス体12b及び13bとの間に5cmの隙間を設定した。次いで図4に示すように試料載台板46を第1熱プレス体12bの上に配置した。次にこの試料載台板の上に、40mm(縦)×70mm(横)×0.3mm(深さ)の矩形凹型50(図3)を有する所望の下側成形型51bを載せた(図4)。この矩形凹型内に粉末状のポリエチレン樹脂を3g入れ、平板の円形状の上側成形型51bを載せた。次に油圧ピストン軸23aによって第1熱プレス体12aを押し下げて、成形型51bを1MPaの圧力で押さえた。
【0023】
[第1及び第2熱プレス体の温度設定]
このように成形型と試料を第1熱プレス体12a,12bの間で保持した後、扉47を閉めてロックし、真空ポンプ14を駆動して容器11内を排気し、容器内を0.01Pa以下に減圧した。次にヒータスイッチを入れ、温度調節器44を操作して第1熱プレス体及び第2熱プレス体の温度をそれぞれ180℃と100℃に設定した。
【0024】
[第1熱プレス体による仮成形]
第1熱プレス体の温度を180℃にした状態を1分間維持することにより、試料のポリエチレン樹脂粉末を溶融させ、引き続いてピストン軸23aを押し下げ、第1熱プレス体の加圧力を50MPaに上昇して試料を所望の矩形に仮成形した。
【0025】
[第1熱プレス体から第2熱プレス体への試料移動]
仮成形が終わった後、ピストン軸23aにより上側の第1熱プレス体を上昇させ、その圧力を解放するとともに、図1、図2及び図6に示すように試料移動軸52により試料載台板46上の成形型51を素早く第1熱プレス体から第2熱プレス体に移動させた。この時点で第1熱プレス体は不使用になるため、ヒータ12c,12dのスイッチをオフにした。
【0026】
[第2熱プレス体による試料固化]
この試料移動が終わった後、ピストン軸24aを押し下げ、100℃に維持された第2熱プレス体を50MPaで加圧した。この温度で1日間維持し、試料のポリエチレン樹脂を等温結晶化させた。
【0027】
[試料の取り出し]
1日間維持した後、ヒータ13c,13dをオフにし、第2熱プレス体が室温になるまで50MPaのまま放置した。その後、室温で上側の熱プレス体13aをピストン軸24aにより上昇させた。真空ポンプ14を止めて、容易内を大気圧にした後、扉47を開け、成形型51を第2熱プレス体から容器外部に取り出した。この成形型を開くと、40mm(縦)×70mm(横)×0.3mm(深さ)の矩形凹型内にポリエチレン樹脂シートが成形されていた。このシートには気泡などの欠陥部分が認められず、極めて均一な形状を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の熱可塑性樹脂の真空成形装置の要部断面構成図。
【図2】図2は図1のA−A線断面構成図。
【図3】図3は試料載台板に載せた樹脂試料を供給する前の下側成形型とこれに重ね合わせる上側成形型の斜視図。
【図4】図4は第1熱プレス体で成形型を加圧する前の状態を示す図。
【図5】図5は第1熱プレス体で成形型を加圧している状態を示す図。
【図6】図6は第1熱プレス体で成形型を加圧した後、成形型を第2熱プレス体に移動する状態を示す図。
【図7】図7は第2熱プレス体で成形型を加圧している状態を示す図。
【符号の説明】
【0029】
10 真空成形装置
11 耐圧製容器
12a,12b 一対の第1熱プレス体
12c,12d ヒータ
13a,13b 一対の第2熱プレス体
13c,13d ヒータ
14 真空ポンプ
41a,41b 第1温度センサ
42a,42b 第2温度センサ
43 コントローラ
44 ヒータの温度調節器
46 試料載台板
51 成形型
52 試料移動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂固形材料を成形型(51)に供給して一対の第1熱プレス体(12a,12b)の間に配置する工程と、真空状態で前記一対の第1熱プレス体(12a,12b)により前記成形型(51)を保持して前記成形型内の前記材料を加熱することにより溶融させた後仮成形して仮成形体にする工程と、真空状態のまま前記一対の第1熱プレス体(12a,12b)から仮成形体の入った前記成形型(51)を取り出して別の一対の第2熱プレス体(13a,13b)の間に移動する工程と、真空状態のまま前記一対の第2熱プレス体(13a,13b)により前記仮成形体を熱圧成形して樹脂成形体にする工程とを含む熱可塑性樹脂の真空成形方法。
【請求項2】
減圧可能な耐圧製容器(11)と、前記容器内の圧力を所定の圧力まで減圧する真空ポンプ(14)と、前記容器内に並設された二対の熱プレス体(12a,12b,13a,13b)と、前記二対の熱プレス体のいずれか一方の間に配置される成形型(51)と、前記二対の熱プレス体のいずれか他方の間に前記成形型(51)を移動させる成形型移動具(46,52)とを備え、
一方の一対の第1熱プレス体(12a,12b)は、成形型(51)に供給された熱可塑性樹脂固形材料を溶融・仮成形し、他方の一対の第2熱プレス体(13a,13b)は、前記成形型(51)内の仮成形体を熱圧成形して樹脂成形体にするように構成された熱可塑性樹脂の真空成形装置。
【請求項3】
成形型移動具は、成形型(51)を載せる、二対の熱プレス体(12a,12b,13a,13b)の間を移動可能な試料載台板(46)と、前記試料載台板(46)を移動させる試料移動軸(52)とを有する請求項2記載の熱可塑性樹脂の真空成形装置。
【請求項4】
二対の熱プレス体(12a,12b,13a,13b)にそれぞれ設けられた温度センサ(41a,41b,42a,42b)と、前記熱プレス体(12a,12b,13a,13b)に内蔵されたヒータ(12c,12d,13c,13d)の温度を設定する温度調節器(44)と、前記温度調節器(44)の設定温度と前記温度センサの検出温度に応じて前記ヒータ(12c,12d,13c,13d)を制御するコントローラ(43)とを更に有する請求項2記載の熱可塑性樹脂の真空成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−334959(P2006−334959A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163404(P2005−163404)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】