説明

熱可塑性樹脂成形体の製造方法

【課題】ウエルド部の強度低下が少ない成形体を得ることができ、かつ、成形時の成形圧力を低くすることが可能な熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】キャビティを形成する第一の型及び第二の型を有し、この第一の型又は第二の型に、開閉機構を有するゲートが、複数個設けられている成形用金型を用いる熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、前記成形用金型を開放状態とし、複数のゲートを開放して前記キャビティ内へ溶融状の熱可塑性樹脂を供給する供給工程と、前記溶融状の熱可塑性樹脂を供給しながら前記成形用金型の型締めを行う型締め工程と、前記供給工程において、開放されている前記複数のゲートを、それぞれ異なるタイミングで閉じ、最後に閉じるゲートの閉鎖を、前記型締め工程完了後に行うゲート閉鎖工程とを有する熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形体は、射出成形や圧縮成形等の成形方法により製造されている。例えば、特許文献1にはランナーの最初の分岐点から各ゲートまでの長さを所定の範囲とし、保圧工程での樹脂の補填充填を、前記分岐点から最も近いゲートから行う射出成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の方法は、特定のランナー形状を有する金型でなければウエルド強度を改良することができず、既存の一般的なランナー形状を有する金型ではウエルド強度を改良することは困難であった。
本発明は、一般的なランナー形状を有する金型であっても、ウエルド部の強度低下が少ない成形体を得ることができ、かつ、成形時の成形圧力を低くすることが可能な熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、キャビティを形成する第一の型及び第二の型を有し、この第一の型又は第二の型に、開閉機構を有するゲートが、複数個設けられている成形用金型を用いる熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、前記成形用金型を開放状態とし、複数のゲートを開放して前記キャビティ内へ溶融状の熱可塑性樹脂を供給する供給工程と、前記溶融状の熱可塑性樹脂を供給しながら前記成形用金型の型締めを行う型締め工程と、前記供給工程において開放されている前記複数のゲートを、それぞれ異なるタイミングで閉じ、最後に閉じるゲートの閉鎖を、前記型締め工程完了後に行うゲート閉鎖工程とを有する熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供する。
なお、本発明における「強度」とは曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度等を意味する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一般的なランナー形状を有する金型を用いてウエルド部の強度低下が少ない成形体を得ることができ、かつ、成形時の成形圧力を低くすることが可能な熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法で好ましく用いられる金型の一例を示した図である。
【図2】本発明に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法の各工程の時間軸を示した図である。
【図3】本実施形態における供給工程の様子を示した図である。
【図4】成形体のウエルド部分の断面を示した図である。
【図5】実施例1の各工程の時間軸を示した図である。
【図6】比較例1の各工程の時間軸を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法について、図を用いて工程毎に説明する。本実施形態において、同じ構成については同じ符号を用い、再度の説明を省略することとする。
始めに、本発明で好ましく用いられる成形用金型について説明する。
【0009】
〔成形用金型〕
図1は本発明に用いる成形用金型の断面を示す図である。成形用金型1は、第一の型(雄型)10及び第二の型(雌型)20が対向して配置されている。第二の型20は、油圧又は電動機によって動作する開閉機構(図示せず)により往復運動する。第一の型10と第二の型20は、第二の型20の往復運動に伴って、第一の型10と第二の型20が接触した「閉状態」と、第一の型10と第二の型20が離間した「開状態」との間を移行し、第一の型10と第二の型20は、その間に所望形状のキャビティ30を形成する。
【0010】
第一の型10には、溶融状の熱可塑性樹脂(以下、溶融樹脂とする)を供給するためのゲートが複数個設けられている。ゲートの数は、キャビティの形状や大きさによって異なるが、少なくとも2箇所以上であることが必要である。なお、本実施形態ではゲートの数が2つの成形用金型を用いている。
図1において、2つのゲート11a,11bの一端は、それぞれ溶融樹脂供給路12に接続されている。この溶融樹脂供給路12は、射出装置の射出ノズルと接続されている。射出装置によって可塑化された溶融樹脂は、溶融樹脂供給路12を通じてキャビティ30内に供給される。それぞれのゲート11a,11bには、バルブピン等の開閉機構が設けられており、溶融樹脂を供給するタイミングを自在に制御することができる。
尚、この例ではキャビティが図に向かって横方向の金型を用いているため、金型縦方向に開閉可能であるが、キャビティが縦方向で横方向に開閉可能な金型であってもよく、これらの相違は本発明の本質ではない。
【0011】
〔熱可塑性樹脂成形体の製造方法〕
図2は本実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法の各工程の時間軸を示した図である。本実施形態において、図1に記載の成形用金型を用いている。
この図2に示されるように、供給工程は、少なくとも一つのゲートが開放されてから、所定数のゲートが閉鎖されるまでの間、継続的に行なわれるため、供給工程の開始時刻をゼロ(時間)とし、終了時刻をt5(時間)とした。また型締め工程は、溶融樹脂をキャビティ内に供給しながら型締めを行う工程である。供給工程開始から所定時間経過後(時刻t2(時間))に型締めが開始され、そこから更に所定時間経過後(時刻t4(時間))に完了することとなる。
そしてゲート閉鎖工程では、供給工程で開放された複数のゲートを、それぞれ異なるタイミングで閉鎖していく。ゲートは、最後の一つが時刻t5(時間)で閉鎖されればよく、残りのゲートは供給工程開始後であればどのタイミングで閉鎖しても構わない。よって最後のゲート以外のゲートは、時刻t1〜t5(時間)の間の任意の時刻、例えば時刻t3(時間)等で適宜閉鎖される。このように、型締め工程とゲート閉鎖工程は、供給工程開始後から所定時間経過後にそれぞれ独立して行われる。
【0012】
<供給工程>
図3は、図1に記載の成形用金型1を開放状態とし、それぞれのゲート11a,11bを開放してキャビティ30内に溶融樹脂13を供給する供給工程の様子を示した図である。ゲート11a,11bを開くタイミングは同時であっても、異なっていてもよいが、供給に必要な所定数(2以上)のゲートは型締め工程完了(図2のt4)までに開放されている必要がある。なお、ゲートは複数開放されている必要があるが、キャビティの形状によっては、開放されないゲートがあってもよい。複数のゲートを型締め工程完了前に開放することによって、通常の射出成形法のように、金型を閉じた状態で溶融樹脂を供給する場合と比べ、成形圧力を低くすることが可能となる。
また、溶融樹脂13の供給は、後述する型締め工程の完了後も継続して行われている。型締め工程完了後は全てのゲートから樹脂が供給されている必要はなく、少なくとも一つのゲート11a又は11bから溶融樹脂13が供給され続けていればよい。型締め工程完了後も溶融樹脂13の供給を継続することによって、ゲート11a,11bから供給される溶融樹脂13により形成されるウエルド部において、樹脂圧力が強い側の樹脂が弱い側の樹脂に楔状に潜り込み、ウエルド部の強度を高めることが可能となる。
なお、溶融樹脂13の供給を開始する時の金型キャビティクリアランス(L1)は、型締め完了時のクリアランスよりも大きければ特に制限はない。
【0013】
本工程では、第一の型及び/又は第二の型を、所定位置まで移動させ、キャビティ容積を減少させた後に、複数のゲートのうちの所定数を開放し、キャビティ内へ溶融樹脂の供給を開始し、第一の型及び/又は第二の型を、所定位置まで移動させ、キャビティ容積を増加させながら溶融樹脂の供給を行ってもよい。
キャビティ容積を減少させたときは少なくとも一つのゲートから溶融樹脂が供給されていればよいが、残りのゲートは順次開放され、型締め工程完了後までには複数のゲートが開放されている必要がある。
【0014】
成形用金型を開きながら溶融樹脂を供給する場合、まず第一の型と第二の型との間隔が、所定間隔(L2)となるまで閉じた後に、溶融樹脂の供給を開始する。第一の型と第二の型との間隔(L2)には、特に制限はないが、1mm以上、10mm以下とすることが好ましい。間隔を1mm以上、10mm以下とすることで溶融状熱可塑性樹脂の供給圧力を低く、かつ、成形体の外観を良好にすることができる。
次いで、第一の型と第二の型との間隔が、所定間隔(L3)となるまで開いていく。このときの間隔(L3)には、特に制限はないが、表皮材を用いない場合は、成形体厚み+20mm以下とすることが成形体の外観の観点から好ましい。表皮材を用いる場合は、間隔(L3)が大きくても外観への影響がないので特に制限はないが、必要以上に大きくすると型開きに時間を要するため、成形体厚み+50mm以下であることが好ましい。
【0015】
第一の型及び第二の型の位置を調整する方法としては、射出成形機の型締め装置を用いて機械的に制御して調整する方法が挙げられる。また、第一の型及び第二の型の間のキャビティクリアランスを拡大する場合には、型締め装置の型締め力を溶融樹脂の供給圧力により若干開く程度に低く設定し、溶融樹脂の供給圧力により拡大する方法を採ってもよい。
機械的に制御してキャビティクリアランスを拡大する場合の拡大速度は、0.5mm/秒以上、20mm/秒以下が好ましい。拡大速度が0.5mm/秒未満の場合は、拡大に要する時間が長くなるので、成形サイクルが長くなってしまう。20mm/秒を越えるような場合には、溶融樹脂が金型の拡大速度に追従できず、金型キャビティ面の溶融樹脂の表面を押し付ける力が弱くなって、成形体表面に光沢ムラ等の外観不良を生じやすい。また、キャビティクリアランスを拡大する速度は、途中で減速や増速をしてもよい。
【0016】
<型締め工程>
本発明における型締め工程とは、上記供給工程の開始後、任意のタイミングで成形用金型の型締めを行う工程である。図2で示されるように、成形用金型の型締めは、後述するゲート閉鎖工程とは独立して行われるものである。型締めは、第一の型及び第二の型の少なくとも一方の型を移動させることにより行われる。型締めのタイミングは、供給工程の開始後、供給工程の完了前の間であれば、特に限定されるものではない。図2ではゲート閉鎖工程の後、時刻t2の時点で開始しているが、ゲート閉鎖工程の開始前に行っても同時に行ってもよい。
成形用金型を型締めするときの型締め速度は、特に制限はないが、1mm/秒以上、300mm/秒以下であることが好ましく、3mm/秒以上、100mm/秒以下がより好ましい。また、型締め速度は途中で増速したり減速したりして変化させてもよい。本発明における型締め速度は、型締め工程における金型の位置と型締め時間から算出した値を用いている。型締め速度は、油圧式の成形機を用いる場合は油の流量で、電動式の成形機を用いる場合は電動機の回転数で制御することが可能である。
【0017】
<ゲート閉鎖工程>
本発明におけるゲート閉鎖工程とは、供給工程において開放されている複数のゲートを、それぞれ異なるタイミングで閉じ、最後に閉じるゲートの閉鎖を型締め工程完了後に行う工程である。本工程完了後は樹脂がゲートから供給されることはないため、上記供給工程は本工程の完了と同時に完了する。
溶融樹脂の流れが合流するウエルド部では、同じ樹脂圧力で合流した場合と、異なる圧力で合流した場合とでウエルド強度が異なる。図4に示すように、異なる圧力で合流した溶融樹脂により形成されたウエルド部は、樹脂圧力が高い側の樹脂4が、樹脂圧力の低い側の樹脂5に多く潜り込んだ状態で形成されるため、同じ圧力で合流した溶融樹脂により形成されたウエルド部と比べ、高いウエルド強度を示す。このため、ゲートを異なるタイミングで閉じ、最後に閉じるゲートの閉鎖を型締め工程完了後に行うことによって、ウエルド部分を形成する樹脂圧力に差をつけることができ、ウエルド部の強度を向上させることができる。
【0018】
図2に示すように、ゲート閉鎖工程は、上記型締め工程と独立して行われるものである。本工程を開始するタイミング、即ち少なくとも1つのゲートを閉じるタイミングは、特に限定されるものではないが、型締め工程の完了前であることが好ましい。ゲート閉鎖工程を型締め工程完了前に開始することによって、ウエルド部を形成する際の樹脂圧力の差はより大きくなり、樹脂圧力が高い側の樹脂が、低い側の樹脂へ多く潜り込ませることが可能となり、ウエルド強度をより向上させることが可能となる。
【0019】
成形用金型が3つ以上のゲートを有する場合、近接するゲートを閉じるタイミングは、異なるタイミングであることが好ましい。近接するゲートを閉じるタイミングをずらすことによって、樹脂圧力に差が生じやすくなり、ウエルド強度をより向上させることが可能となる。また、隣接するゲートのうち、後で閉じる側のゲートを閉じるタイミングが型締め工程完了後であることが好ましい。
【0020】
ゲートの閉鎖は、それぞれのゲートにタイマーを取り付け、供給工程開始からの時刻が所定時刻となるタイミングで個別に閉鎖する方法を用いることが好ましい。
【0021】
ゲート閉鎖工程完了後は、キャビティ内に供給された溶融樹脂の冷却を行い、成形用金型から熱可塑性樹脂成形体を取り出す。
このようにして得られる成形体は、自動車内装部品や外装部品、エンジンルーム内部品、トランクルーム内部品等の自動車用部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品、住設関連部品等として幅広く使用することができる。
【0022】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂は、圧縮成形、射出成形、押出成形等で通常使用される樹脂を用いることができる。
このような樹脂としては、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂や、EPMやEPDM等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単一種類を用いても、2種以上混合して混合物として用いてもよい。混合物としてはポリマーアロイを用いてもよい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂は、ウエルド強度の改良効果を高めるために、強化繊維を含有していてもよい。強化繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、有機繊維、及びこれらの混合物等が挙げられる。中でもガラス繊維、又は有機繊維を用いることが好ましい。有機繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、綿、麻、絹、竹等が挙げられる。
【0024】
また、熱可塑性樹脂は必要に応じて酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤;シリカ等のアンチブロッキング剤;気泡防止剤;難燃剤;難燃助剤;分散剤;帯電防止剤;滑剤;染料や顔料等の着色剤;可塑剤;造核剤や結晶化促進剤等を含有していてもよい。また、ガラスフレーク、マイカ、ガラス粉、ガラスビ−ズ、タルク、クレー、アルミナ、カーボンブラック、ウォールスナイト等の板状、粉粒状、ウィスカー状の無機化合物等を含有していてもよい。
【0025】
また、熱可塑性樹脂は化学発泡剤及び物理発泡剤等の発泡剤を含有していてもよい。化学発泡剤としては重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。また、必要に応じてサリチル酸、尿素ならびにこれらを含む発泡助剤を添加してもよい。物理発泡剤としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。これらは超臨界状態であることが好ましい。
発泡剤の種類は、使用する熱可塑性樹脂の溶融温度や目的とする発泡倍率等を考慮して選択される。またその添加量は、目的とする成形体の強度、密度等を考慮して調整されるが、一般的に樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0026】
本発明に係る方法で得られる熱可塑性樹脂成形体の表面の一部には、表皮材が貼合さていてもよい。本発明に用いられる表皮材としては、例えば、モケットやトリコット等の織物や編み物、ニードルパンチカーペット等の不織布、金属フォイル、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーのシートやフィルム等が挙げられる。成形体の表面の一部に表皮材を貼合一体化する場合は、予め表皮材を金型間の所定位置に載置してから成形すればよい。
【0027】
不織布を構成する繊維としては、例えば、綿、毛、絹、麻等の天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維が挙げられる。不織布は、単一種の繊維から構成されていても、2種以上の繊維から構成されていてもよい。また、天然繊維と合成繊維との混合物で構成されていてもよい。不織布の製造方法は、ニードルパンチ式、サーマルボンド式、スパンボンド式、メルトブロー式、スパンレース式等に分類されるが、いずれの方法で製造された不織布も本発明に適用することができる。
熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーのシートや、フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂やポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのシートやフィルムが挙げられ、基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂との融着性が良好なものが好ましく使用される。
【0028】
これらの表皮材は、発泡層や裏打ち層を有する多層表皮材であってもよい。
発泡層としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、軟質又は半硬質のポリウレタン発泡体等が挙げられる。
また、裏打ち層としては、例えば、不織布、合成樹脂シートやフィルム等が挙げられる。
【0029】
なお、これらの多層表皮材は、熱可塑性樹脂からなる基材部分との接着性の観点から、熱可塑性樹脂との熱融着性が良好なものや、表皮材の裏面に溶融状熱可塑性樹脂を含浸させることによって基材樹脂との接着が可能なもの等が好ましく使用される。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
[評価方法]
(1)曲げ弾性率
実施例及び比較例で製造した成形体の曲げ弾性率は、ASTM D790に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
サンプル厚み:4.0mm
スパン:50mm
曲げ速度:2mm/分
【0032】
(2)曲げ強度
実施例及び比較例で製造した成形体の曲げ強度は、ASTM D790に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
サンプル厚み:4.0mm
スパン:50mm
曲げ速度:2mm/分
【0033】
(3)衝撃強度
実施例及び比較例で製造した成形体の衝撃強度は、ASTM D256に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
サンプル厚み:4.0mm(Vノッチなし)
【0034】
[実施例1]
成形装置として商品名SLIM1016(佐藤鉄工所製、型締め力980kN、射出容量1600cc)を、熱可塑性樹脂として商品名スミストランPG4060B(住友化学社製、長繊維強化ポリプロピレン、ガラス繊維40%含有)を用いて、270×340mm、厚み4.0mmで2点ゲート(ゲートA、ゲートB)の金型を用い、中央にウエルドが形成された成形体を成形し、得られた成形体のウエルド部の強度を測定した。
【0035】
<成形条件>
成形体の製造は、上記射出成形を用い、樹脂温度220℃、金型温度30℃に設定して行った。
図5に示すように、供給工程におけるゲートを開くタイミングは、2点同時であり、キャビティ内に溶融樹脂の供給を開始する際のキャビティクリアランスは、成形体厚み+8mmであった。
型締め工程は、供給工程を開始後0.5秒後に開始した。このときの型締め速度は10mm/secであった。なお、型締め完了後(供給工程開始後1.3秒後)にキャビティ内に供給された溶融樹脂の供給量は、全供給量の20%であった。
ゲート閉鎖工程におけるゲート閉鎖のタイミングは、ゲートAは供給工程開始後1.2秒後(型締め工程の途中)であり、ゲートBは型締め工程完了後であった。
ゲート閉鎖工程後、60秒間冷却を行ってからキャビティから成形体を取り出した。
【0036】
[比較例1]
図6に示すように、成形条件を、型締め工程を供給工程開始後0.9秒後に開始し、型締め完了後にキャビティ内に供給された溶融樹脂の供給量を、全供給量の0%とし、ゲート閉鎖工程におけるゲートBの閉鎖のタイミングを、キャビティ内に全ての溶融樹脂を供給後(型締め工程の途中)とした以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造した。
【0037】
【表1】

【符号の説明】
【0038】
1 成形用金型
10 第一の型
11a〜11f ゲート
12 溶融樹脂供給路
13 溶融樹脂
20 第二の型
30 キャビティ
4 樹脂圧力が高い側の樹脂
5 樹脂圧力が低い側の樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを形成する第一の型及び第二の型を有し、この第一の型又は第二の型に、開閉機構を有するゲートが、複数個設けられている成形用金型を用いる熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
前記成形用金型を開放状態とし、複数のゲートを開放して前記キャビティ内へ溶融状の熱可塑性樹脂を供給する供給工程と、
前記溶融状の熱可塑性樹脂を供給しながら前記成形用金型の型締めを行う型締め工程と、
前記供給工程において開放されている前記複数のゲートを、それぞれ異なるタイミングで閉じ、最後に閉じるゲートの閉鎖を、前記型締め工程完了後に行うゲート閉鎖工程と
を有する熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート閉鎖工程を開始するタイミングは、前記型締め工程の完了前である請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記供給工程は、開放状態の前記成形用金型の前記第一の型及び/又は第二の型を、所定位置まで移動させ、キャビティ容積を減少させた後に、少なくとも一つのゲートを開放し、前記キャビティ内へ前記溶融状の熱可塑性樹脂の供給を開始し、
前記第一の型及び/又は第二の型を、所定位置まで移動させ、前記キャビティ容積を増加させながら前記溶融状の熱可塑性樹脂の供給を行う工程である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、強化繊維を含有する請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記強化繊維が、ガラス繊維及び/又は有機繊維である請求項4に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96424(P2012−96424A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245068(P2010−245068)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】