説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

【課題】熱可塑性樹脂組成物への蓄熱を抑制して、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化を抑制する熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と植物性材料との合計に対して30〜95質量%の植物性材料を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、樹脂と植物性材料とを混合物とする工程と、混合物を細分化する工程と、を備え、細分化工程では、対向しつつ逆回転するローラ31とローラ32とを備え、各ローラの表面には、軸方向に沿って延びる複数の凸条312及び322を有し、隣り合う凸条の間は複数の凹部314及び324とされ、ローラ31とローラ32との凹部314と324とが合わさった空間33を連続形成可能である細分化装置を用いて、ローラの間に供給された混合物を咬み込みながら細分化して排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。更に詳しくは、製造時の熱劣化を抑制できる熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からカーボンオフセットの手法が注目されている。このカーボンオフセットの手法の一つとして、天然由来の植物材料等を配合した熱可塑性樹脂組成物を、従来の合成成分からなる熱可塑性樹脂組成物に代用しようとする研究が進められている。
即ち例えば、ポリオレフィン系樹脂と所定長の木粉とを含有する混合材料を、溶融混練し、押出成形してなる溶融樹脂混練物を冷却し、粉砕してポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、この方法により製造された樹脂組成物を用いて、押し込み成形により擬木などの木質感のある成形体を製造することができると説明されている。更に、材木、パルプ等の切削屑、及びケナフ等の植物性材料の粉砕物などの植物系充填材と、熱可塑性樹脂とを溶融混練し、押出成形した後、冷却し、ペレット化して複合材料ペレットを製造する方法(特許文献2参照)が知られている他、本発明者による熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並びに成形体及びその製造方法(特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−269709号公報
【特許文献2】特開2002−210736号公報
【特許文献3】特開2010−144056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して200質量部までの木粉を含有させた樹脂組成物を、押出成形した後に、水噴霧により冷却し、更に、再乾燥させるという冷却方法が開示されている。しかし、吸水性の高い植物材料等を含む樹脂組成物に対してこの作業を行うことは、多大な時間と不要なエネルギーコストを招くという問題がある。一方、特許文献2には、多量の植物系充填材を含有する複合材料ペレットを製造することが記載されているが、押出機にて植物系充填剤と熱可塑性樹脂とを混合した後、更に、加熱賦形型を用いて樹脂組成物の賦形を行う方法が開示されている。しかし、二度にわたる加熱を要するために熱劣化を招くおそれが大きいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂組成物への蓄熱を抑制して、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化を抑制する熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂及び植物性材料を含有し、前記熱可塑性樹脂と前記植物性材料との合計を100質量%とした場合に、前記植物性材料は30〜95質量%である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合して混合物とする混合工程と、
前記混合物を細分化装置によって細分化する細分化工程と、を備え、
前記細分化装置は、互いに対向しつつ、互いに逆方向へ回転する第1ローラと、第2ローラと、を備え、
前記第1ローラの表面には、軸方向に沿って延びる複数の凸条を有し、
前記第1ローラの互いに隣り合う凸条の間は、第1ローラの凹部とされ、
前記第1ローラの表面には、前記第1ローラの凹部が複数形成され、
前記第2ローラの表面には、軸方向に沿って延びる複数の凸条を有し、
前記第2ローラの互いに隣り合う凸条の間は、第2ローラの凹部とされ、
前記第2ローラの表面には、前記第2ローラの凹部が複数形成され、
前記第1ローラと前記第2ローラは、互いに逆方向へ回転しながら、前記第1ローラの凹部と前記第2ローラの凹部とが合わさった空間を連続形成可能とされており、
前記細分化工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの間に供給された前記混合物を、前記空間内に咬み込みながら細分化して排出する工程であることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、請求項1において、前記第1ローラの凸条は、その頂部に平坦部を有するとともに、
前記第2ローラの凸条は、その頂部に平坦部を有することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、請求項1又は2において、前記細分化装置には、前記第1ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第1スライド部材が備えられており、
前記第1スライド部材がスライドすることにより、前記第1ローラに付着した細分化済みの前記混合物を押し出して、前記第1ローラから剥がすことを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、請求項1乃至3のうちのいずれかにおいて、前記細分化装置には、前記第2ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第2スライド部材が備えられており、
前記第2スライド部材がスライドすることにより、前記第2ローラに付着した細分化済みの前記混合物を押し出して、前記第2ローラから剥がすことを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、請求項1乃至4のうちのいずれかにおいて、前記第1スライド部材と前記第2スライド部材は一体とされていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、細分化工程において、1ローラ及び第2ローラの各凸条で混合物を咬み込みながらローラ間に効率よく引き込み、更に、各ローラの凹部から形成される空間で混合物を連続的に細分化できる。これにより混合物への蓄熱を抑制し、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化を抑制できる。
【0012】
第1ローラの凸条が、その頂部に平坦部を有するとともに、第2ローラの凸条も、その頂部に平坦部を有する場合には、第1ローラと第2ローラの各々凸条の頂部を余裕を持って合わせることができ、凹部同士による空間を形成し易く細分化をより安定して行うことができる。
【0013】
細分化装置に、第1ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第1スライド部材が備えられており、第1スライド部材がスライドすることにより、第1ローラに付着した細分化済みの混合物を押し出して、第1ローラから剥がすことができる場合、同様に、細分化装置に、第2ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第2スライド部材が備えられており、第2スライド部材がスライドすることにより、第2ローラに付着した細分化済みの混合物を押し出して、第2ローラから剥がすことができる場合、更には、第1スライド部材と前記第2スライド部材が一体とされている場合には、細分化工程の連続性、ライン速度を維持して、よりスムーズな熱可塑性樹脂組成物の生産を行うことができ、高い生産性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】熱可塑性樹脂組成物の製造方法を説明する模式的な説明図である。
【図2】細分化装置における第1ローラ及び第2ローラの一形態を示す斜視図である。
【図3】細分化装置における第1ローラ及び第2ローラが混合物を細分化する様子を示す斜視図である。
【図4】細分化装置における第1ローラ及び第2ローラが混合物を細分化する様子を示す正面図である。
【図5】細分化装置における第1ローラ、第2ローラ及びスライダ部材の一形態を示す斜視図である。
【図6】細分化装置における第1ローラ、第2ローラ及びスライダ部材の一形態を示す正面図である。
【図7】細分化装置におけるスライダ部材が細分化された混合物を押し出す様子を示す斜視図である。
【図8】細分化装置におけるスライダ部材が細分化された混合物を押し出す様子を示す正面図である。
【図9】細分化装置の一形態を示す側面図である。
【図10】図6における第1ローラのI−I断面、及び、第2ローラのII−II断面における断面図である。
【図11】第1ローラ及び第2ローラの表面の一形態を説明する説明図である。
【図12】第1ローラ及び第2ローラの表面の他の形態を説明する説明図である。
【図13】混合装置を説明する模式的な説明図である。
【図14】混合装置に配設された混合羽根を説明する模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0016】
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造方法
熱可塑性樹脂及び植物性材料を含有し、熱可塑性樹脂と植物性材料との合計を100質量%とした場合に、前記植物性材料が30〜95質量%である熱可塑性樹脂組成物は、
熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合して混合物とする混合工程と、混合物を細分化装置によって細分化する細分化工程と、を備え、
細分化工程において、特定の細分化装置を用いて細分化することで得られる。
【0017】
〈1〉熱可塑性樹脂組成物
本製造方法においていう熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と植物性材料との合計を100質量%とした場合に、植物性材料を30〜95質量%含有する組成物である。
【0018】
(1)熱可塑性樹脂
上記「熱可塑性樹脂」は、混合工程で植物性材料と混合される樹脂である。この熱可塑性樹脂は特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール及びABS樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等を用いることもできる。これらのうちでは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、特にエチレン−プロピレンブロック共重合体がより好ましい。熱可塑性樹脂は2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
【0019】
また、特に熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いる場合、酸変性ポリオレフィンを併用することが好ましい。酸変性ポリオレフィンを用いることにより、熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した成形体の機械的特性をより向上させることができる。酸変性ポリオレフィンのベース樹脂としては、前述の各種のポリオレフィンを用いることができる。更に、熱可塑性樹脂組成物に含有される非変性ポリオレフィンと、酸変性に用いるベース樹脂とは同種の樹脂であることが好ましい。また、同種の樹脂である場合、各々の樹脂の平均分子量、密度等の差が小さいことがより好ましく、共重合体であるときは、各々の単量体単位の割合の差が小さいことがより好ましい。
【0020】
酸変性ポリオレフィンに酸基を導入する方法も特に限定されないが、通常、ポリオレフィンに酸基を有する化合物を反応させて導入する、所謂、グラフト重合により導入することができる。酸基を有する化合物も特に限定されず、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、酸無水物が用いられることが多く、特に無水マレイン酸及び無水イタコン酸が多用される。
【0021】
酸変性ポリオレフィンにおける酸基の導入量は特に限定されないが、酸価が5以上となる導入量であることが好ましい。酸変性ポリオレフィンの酸価が5以上となる導入量であれば、酸変性ポリオレフィンを多量に配合することなく、成形体の機械的特性を十分に向上させることができる。この酸価は、10〜80、特に15〜70、更に20〜60であることがより好ましい。
尚、酸価はJIS K0070により測定することができる。
【0022】
更に、酸変性ポリオレフィンの平均分子量も特に限定されないが、重量平均分子量が10000〜200000であることが好ましい。即ち、比較的低分子量の酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。このような酸変性ポリオレフィンを用いることにより、優れた機械的特性を有する成形体とすることができる。この重量平均分子量は、15000〜150000、特に25000〜120000、更に35000〜100000であることがより好ましい。
尚、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定することができる。
【0023】
また、酸変性ポリオレフィンを併用する場合、熱可塑性樹脂全体を100質量%としたときに、酸変性ポリオレフィンは1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%、特に1〜20質量%、更に1.5〜10質量%であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンの配合量が1〜30質量%であれば、射出成形等の成形時の熱可塑性樹脂組成物の流動性を飛躍的に向上させることができるとともに、成形体の機械的特性を向上させることができる。更に、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン及び/又はエチレン−プロピレン共重合体、特にエチレン−プロピレンブロック共重合体と、これらを酸変性した樹脂とを併用することがより好ましい。これによって、射出成形等の成形時の熱可塑性樹脂組成物の流動性、及び成形体の機械的特性を十分に向上させることができる。
【0024】
(2)植物性材料
上記「植物性材料」は、植物に由来する材料である。この植物性材料としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する材料が挙げられる。この植物性材料は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有し、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献することができるケナフが好ましく、更には、ケナフが有する繊維がより好ましい。また、植物のうちの用いる部位は特に限定されず、非木質部、木質部、葉部、茎部及び根部等の植物を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよいし、2箇所以上の異なる部位を併用してもよい。
【0025】
ケナフは木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。このケナフとしては、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等、並びに通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が挙げられる。植物性材料としてケナフが有する繊維を用いる場合、強靱な繊維を有する靭皮と称される外層部分を用いることができる。
【0026】
植物性材料として植物性繊維を用いる場合、繊維長及び繊維径は特に限定されないが、繊維長(L)と繊維径(t)との比(L/t)が5〜20000であることが好ましい。また、植物性繊維の繊維長は、通常、0.05〜20mmであり、繊維径は、通常、10〜150μmである。この繊維長は、JIS L1015における直接法と同様にして1本の植物性材料を伸張させずに真っ直ぐに延ばし、置尺上で測定した値である。一方、繊維径は、繊維長を測定した植物性材料について、繊維の長さ方向の中央部における繊維径を光学顕微鏡を用いて測定した値である。
【0027】
更に、植物性繊維の平均繊維長及び平均繊維径も特に限定されないが、平均繊維長は5mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。平均繊維長が5mm以下の植物性繊維を用いることにより、容易に熱可塑性樹脂と混合することができる。この平均繊維長は、JIS L1015に準拠する直接法により、単繊維を無作為に1本ずつ取り出し、伸張させずに真っ直ぐに延ばし、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。また、平均繊維径は100μm以下(通常、15μm以上)であることが好ましい。この平均繊維径は、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央部における繊維径を光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
尚、この原料繊維として用いられる植物性繊維は、通常、裁断して用いられる。
【0028】
また、植物性材料は、何ら加工することなく熱可塑性樹脂と混合してもよく、裁断し、又は粉砕して所定の大きさの植物性材料として熱可塑性樹脂と混合してもよい。更に、植物性材料は、ペレット化装置(例えば、熱可塑性樹脂組成物のペレット化に用いる装置)により所定の形状及び寸法を有する繊維ペレットとし、この繊維ペレットを熱可塑性樹脂と混合してもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂及び植物性材料を除く他の成分を含有させることができる。この他の成分は特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等の各種の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は各々1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの他の成分を配合する工程は特に限定されないが、通常、混合工程において配合し、含有させる。
【0030】
〈2〉本製造方法における各工程
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、混合装置1(図1参照)により熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合する混合工程と、得られた混合物を細分化装置30によって細分化する細分化工程と、を備える。
【0031】
(1)混合工程
上記「混合工程」は、熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合する工程である。
この混合工程では、押出タイプの混練機、押出タイプの混合機を除いた混合装置が用いられる。この混合装置は特に限定されないが、熱可塑性樹脂に多量の植物性材料を混合させることができればよく、例えば、図13及び図14に記載された混合装置を用いることができる。この特定の混合装置を用いた場合、より高い流動性を有する熱可塑性樹脂組成物をより容易に製造することができる。
【0032】
この混合装置[以下、図13(図13は、特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレットの図1を引用)及び図14(図14は、特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレットの図2を引用)参照]としては、国際公開04/076044号パンフレットに記載の混合装置1が好ましい。即ち、混合装置1は、材料供給室13と、材料供給室13に連設された混合室3と、材料供給室13と混合室3とを貫通して回転自在に設けられた回転軸5と、材料供給室13内の回転軸5に配設され、且つ材料供給室13に供給された熱可塑性樹脂と植物性材料との混合材料を混合室3へ搬送するためのスクリュー羽根12と、混合室3内の回転軸5に配設され、且つ混合材料を混合する混合羽根10a〜10fと、を備えることが好ましい。
【0033】
混合装置1を使用し、熱可塑性樹脂と植物性材料とを材料供給室13に投入し、スクリュー羽根12により混合室3へ搬送し、混合羽根10a〜10fを回転させることで、熱可塑性樹脂及び植物性材料がともに、混合室3の内壁へ向かって押し付けられ、内壁を打撃し、且つ混合羽根10a〜10fの回転方向に押し進められ、材料同士の衝突により発生する熱により短時間で熱可塑性樹脂が軟化し、溶融して、植物性材料と混練され、混合される。このようにして製造される混合物(熱可塑性樹脂組成物)には、例えば、射出成形が可能な優れた流動性が付与される。
【0034】
混合羽根10a〜10fは、回転軸5の周方向に一定の角度で間隔をおいた位置において軸方向に対向するとともに、回転方向において互いの対向間隔が狭くなるような取付角で回転軸5に配設され、少なくとも2枚の混合羽根(10a〜10f)によって構成される。混合羽根10a〜10fの回転軸5に対する取付角は、回転軸5に取り付けられる混合羽根10a〜10fの根元部から径方向外方の先端部まで同一であることが好ましい。また、混合羽根10a〜10fの平面形状は矩形であることが好ましい。更に、混合室3は、その構成壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより好ましい。このような構成とすることにより、混合室内が過度に昇温することを抑えることができ、熱可塑性樹脂の熱劣化を防止、又は少なくとも抑えることができる。
【0035】
混合工程における各種条件は特に限定されないが、例えば、混合時の温度は、混合室の外壁面の温度を200℃以下、特に150℃以下、更に120℃以下に制御することが好ましく、且つ50℃以上、特に60℃以上、更に80℃以上に制御することがより好ましい。また、この温度に到達させる時間は、10分以内、特に5分以内であることが好ましい。短時間で所定温度に到達させることで、急激に水分を蒸散させるとともに、混合することができ、熱可塑性樹脂の劣化をより効果的に抑えることができる。更に、前述の温度範囲を維持する時間も、15分以内、特に10分以内とすることが好ましい。また、この温度は、混合装置の混合羽根の回転速度により制御することが好ましい。より具体的には、混合羽根の先端の周速度を5〜50m/秒となるように制御することが好ましい。この範囲の周速度に制御することにより、効率よく熱可塑性樹脂を軟化させ、溶融させつつ、植物性材料とより均一に混合することができる。
【0036】
更に、この混合の終点は特に限定されないが、回転軸に負荷されるトルクの変化により決定することができる。即ち、回転軸に負荷されるトルクを測定し、そのトルクが最大値となった後に混合を停止することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂と植物性材料とを相互に十分に分散させることができる。また、トルクが最大値となった後、低下し始めてから混合を停止させることがより好ましい。更に、最大トルクに対して40%以上、特に50〜80%のトルク範囲となった時点で混合を停止することが特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂と植物性材料とを相互により十分に分散させることができるとともに、混合室内から混合物(熱可塑性樹脂組成物)を160℃以上の温度で取り出すことができ、混合室内に熱可塑性樹脂組成物が付着して残存されることをより確実に防止することができる。
【0037】
また、熱可塑性樹脂組成物に含有される上記「植物性材料」(熱可塑性樹脂と混練、混合される原料繊維として用いられる植物性材料とは異なった形態の繊維になる。また、粉砕工程及びペレット化工程を備える場合は、これらの工程において更に異なった形態の繊維になる。)の含有量は、熱可塑性樹脂と植物性材料との合計を100質量%とした場合に、30〜95質量%である。この含有量は、通常、熱可塑性樹脂組成物の製造時に熱可塑性樹脂に配合する植物性材料の配合量と同量である。即ち、熱可塑性樹脂及び植物性材料の各々の配合量の合計を100質量%としたときに、植物性材料の配合量は30〜95質量%である。この植物性材料の含有量(配合量)は33〜75質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることがより好ましい。植物性材料の含有量(配合量)が30〜95質量%であれば、優れた曲げ弾性率等を有し、実用性の観点で好ましい成形体とすることができる。
【0038】
(2)細分化工程
混合工程で得られた混合物を細分化装置30によって細分化する工程であって、且つ、細分化装置30の有する第1ローラ31と第2ローラ32の間に供給された混合物Cを、空間33内に咬み込みながら細分化して排出する工程である(図3及び4等)。
この細分化工程を備えることで、混合物Cを細分化して、混合物C(即ち、植物性材料を含む熱可塑性樹脂組成物)への蓄熱を抑制して、組成物の熱劣化を効果的に抑制できる。それとともに、後述するように、細分化した混合物(以下、単に「細分化混合物」ともいう)C1自体の温度を調節する(過度に降温させない)ことができ、細分化工程の後に他の工程を備える場合(特に後述する粉砕工程を備える場合)には、その間のラインスピードを維持しつつ、粉砕効率を低下させることなく、熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。即ち、細分化工程を備えることで、生産効率よく熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
細分化工程で用いる細分化装置は、互いに対向しつつ、互いに逆方向へ回転する第1ローラ31と、第2ローラ32と、を備えている(図1等)。この対向して配置されるとは、図2等に示されるように、第1ローラ31と第2ローラ32とが、各々凸条(第1ローラの凸条312、第2ローラの凸条322)同士を対向させて配置されることを意味する。従って、第1ローラ31の回転軸である第1ローラ軸351と、第2ローラ32の回転軸である第2ローラ軸352と、は平行に配置され、各々のローラにとっての軸方向Bは共通する。
【0040】
更に、第1ローラ31と第2ローラ32とは、逆方向へ回転される。更に、図2等に示されるように、通常、各々のローラは上方から供給された混合物Cを細分化して下方へ細分化混合物C1として排出するように回転される。従って、通常、第1ローラ31は反時計回りの方向へ回転され、第2ローラ32は時計回りの方向へ回転される。また、通常、各ローラは、互いに同じ各速度で回転される。回転速度は特に限定されず、混合物Cの温度や所望の細分化混合物C1の温度を勘案して決定されることが好ましいが、例えば、2〜10回転/分(好ましくは4〜6回転/分)とすることができる。
尚、第1ローラ31と第2ローラ32との間のクリアランスは調節可能に配置されることが好ましい。
【0041】
また、第1ローラ31の表面311aには、軸方向Bに沿って延びる複数の凸条312を有し、隣り合う凸条312の間は凹部314とされ、第1ローラの表面311aにはこの凹部314が複数形成されている。
同様に、第2ローラ32の表面321aには、軸方向Bに沿って延びる複数の凸条322を有し、互いに隣り合う凸条322の間は凹部324とされ、第2ローラの表面321aにはこの凹部324が複数形成されている。
【0042】
凸条の数及び大きさ等は特に限定されないが、通常、ローラの表面に等間隔で配置される。例えば、図11におけるDを1つのピッチ角とした場合に、角度5度のピッチで72条、角度10度のピッチで36条、角度15度のピッチで24条、角度20度のピッチで18条などとすることができる。ピッチ及び条数は用いるローラの大きさ(径)等により適宜選択できる。
また、凸条の形状特に限定されず、その断面形状は、三角形状、四角形状、及び半円形状などとすることができるが、これらのなかでは、四角形状が好ましく、更には、台形状が特に好ましい。
【0043】
更に、凸条の大きさ(凸条の頂部と底部との間の距離であって、図11におけるD)は特に限定されないが、例えば、4〜6mmが好ましい。
更に、凹部314及び324は、各々の凸条に挟まれた空間であり、各ローラの外形から凹んでいる部分である。この形態は特にされないが、例えば、三角形状、四角形状(図11等参照)、及び半円形状(図12参照)などとすることができる。
【0044】
また、各ローラの構成は特に限定されず、例えば、中実ローラを用いることもできるが、ローラ自体の蓄熱を抑制する観点から、図10に示すように、リム311及び321と、ハブ315及び325と、これらを接続するリブ316及び326とを備えることが好ましい。このように、ローラが肉抜きされていることにより、ローラ自体が混合物Cとの接触により蓄熱することが抑制できる。
各ローラのリム幅は特に限定されず、混合物Cの大きさ等により適宜の大きさとすることができる。また、ハブには、各々の回転軸が嵌合される。
また、ローラの半径(図11における距離D)は特に限定されないが、通常、第1ローラ31及ぶ第2ロータ32は、同径である。
【0045】
そして、第1ローラ31と第2ローラ32は、互いに逆方向へ回転しながら、第1ローラ31の凹部314と第2ローラ32の凹部324とが合わさった空間33を連続形成できるようになっている。即ち、第1ローラ31はA1方向へ回転し、第2ローラ32はA2方向へ回転しながら、混合物Cを咬み込んで細分化するための空間33を連続的に形成できるようになっている。
【0046】
このように連続的に正確に空間33を形成できるように、各ローラの凸条の頂部は平坦に形成されていることが好ましい。即ち、第1ローラ31の凸条312は平坦部313を有し、第2ローラ32の凸条322は平坦部323を有することが好ましい(図1、図11及び図12等)。このように平坦部を有することで、各々ローラの凸条同士が合わさり、空間33を形成するための同期幅を大きく得ることができ、より確実に空間33を形成し、混合物Cをより確実に細分化することができる。この平坦部313及び323の大きさ(図11における距離D)は特に限定されないが、0.5〜2.5mm(好ましくは1〜2mm)とすることができる。
【0047】
更に、各ローラは、その表面に細分化混合物C1が付着しないための他の構成を備えることができる。例えば、付着を抑制する被覆層を備えることができる。このような被覆層としては、フッ素樹脂層{例えば、テフロン(登録商標)コート層}が挙げられる。その他、表面にエンボス加工を施すことができる。
更には、ローラを内部にから冷却するための冷却手段を備えることができる。具体的には、ローラ内に冷媒流路を設けるとともに、ローラ内部で冷媒を流通させることができる手段が挙げられる。また、ローラの表面へ送風するエアブロー手段を備えることができる。エアブロー手段を備えることで、ローラを外部から冷却することができる。
【0048】
また、細分化工程で用いる細分化装置30には、上記構成以外に、ローラ表面に張り付いた細分化混合物C1を離間させるための構成(即ち、剥離機構)を備えることができる。具体的には、スライド部材34が挙げられる。
例えば、第1ローラ31の軸方向Bに沿ってスライド可能な第1スライド部材が備えられており、第1スライド部材がスライドすることにより、第1ローラ31に付着した細分化混合物C1を押し出して、第1ローラ31から細分化混合物C1を剥がすことができる。同様に、第2ローラ32の軸方向Bに沿ってスライド可能な第2スライド部材が備えられており、第2スライド部材がスライドすることにより、第2ローラ32に付着した細分化混合物C1を押し出して、第1ローラ32から細分化混合物C1を剥がすことができる。図5〜図8では、第1スライド部材と第2スライド部材とは一体とされているが、上述のように、スライド部材34は、各々ローラに対応して分割されていてもよい。
【0049】
スライド部材の形態は特に限定されないが、例えば、第1スライド部材と第2スライド部材とが一体とされた構成では、図5〜図8に例示されるように、略二等辺三角形状に形成されるとともに、その等辺となっている斜辺が、各々第1ローラ31及び第2ローラ32の外形に沿って、且つ、各々のローラの有する凸条の頂部とクリアランスを維持するようにカーブされた構成とすることができる。このクリアランスの大きさは特に限定されないが、各々ロールに形成された凸条の高さ(凹部の深さであって、図11における距離Dである)よりも小さいことで、ローラに張り付いた細分化混合物C1をローラから離間させることができる。
【0050】
即ち、例えば、第1ローラ31に張り付いた状態で排出された場合、第2ローラ32の凹部324によって成形された部分が、第1ローラ31の凹部314から突出することとなり、細分化混合物C1のこの突出した部分をスライド部材34で軸方向Bに押圧することで、細分化混合物C1を第1ローラ31の凹部314から剥離することができる。
このような剥離機構の構成は、上記スライド部材以外については特に限定されないが、例えば、スライド部材34をヘッドとして備えるロッドをシリンダーで往復運動させることで成し得る。
また、スライド部材34は、図5及び図7に例示するように、ローラの反対側へ突出するまでスライドしてもよいが、突出することなく小さな距離で剥離できるのであれば、適宜のスライド量とすることが好ましい。
更に、細分化混合物C1が柔らかい場合には、ローラの回転と同期させたうえで、ローラの各凹部に対応した凸部を有するスライド部材を用いて、細分化混合物をローラから離間させることもできる。
【0051】
尚、細分化混合物C1の形状等は特に限定されないものの、例えば、温度(後述する実施例における測定方法を利用)は、100〜160℃(好ましくは120〜140℃)とすることができる。特に細分化工程の後に、粉砕工程を備える場合にこの温度範囲では、粉砕効率もよい。また、室温における可塑性が小さくなり、粉砕機への自動的な投入が困難となることを抑制して、ラインを停止及びライン速度の停滞を抑制し、ライン速度を維持したまま熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
また、細分化混合物C1は、最小厚さが1cm以下となっていることが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜8mmが更に好ましい。
【0052】
(3)他の工程
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、混合工程及び細分化工程以外に、他の工程を備えることができる。例えば、細分化工程により得られた細分化混合物C1は、そのまま成形体等を成形するための原料として用いてもよいが、更に粉砕した粉砕物として利用したり、或いは、粉砕物をペレット化したりして利用できる。従って、例えば、他の工程としては、細分化工程で得られた細分化混合物C1を粉砕して粉砕物とする粉砕工程が挙げられる。更に、得られた粉砕物をペレット化するペレット化工程(粉砕物ペレット化工程)が挙げられる。
またその他、混合工程を行う前に植物性材料の予めペレット化するペレット化工程(植物性材料ペレット化工程)等も挙げられる。
【0053】
(4)粉砕工程
この粉砕工程を備える場合、粉砕装置は特に限定されず、細分化混合物C1を効率よく粉砕することができればよい。例えば、株式会社ホーライ製のZシリーズの粉砕機等を用いることができる。また、粉砕物の粒子の形状及び粒径も特に限定されず、整粒等の操作は特に必要とすることなく、成形体の原料として用いることができる。粒径(最大寸法)は1〜10mm、特に3〜8mmであることが好ましく、粒径が1〜10mmであれば、取り扱い易く、射出成形機等の成形機への供給も容易である。
【0054】
(5)粉砕物ペレット化工程
粉砕工程により得られた粉砕物は、そのまま成形体の原料として使用することができるが、ペレット化して用いることが好ましい。粉砕物をペレット化することにより射出形成等の成形がより容易になるからである。即ち、粉砕工程の後に、粉砕物ペレット化工程を備えることができる。このペレット化の方法は特に限定されないが、例えば、粉砕装置50とペレット化装置(図示省略)とを並列に配置し、粉砕と連続してペレット化することができる。また、ペレット化は粉砕物を再加熱せずに実施することもでき、粉砕装置から排出される粉砕物を押出機等により溶融混練し押し出してペレット化することもできる。
【0055】
これらのうちでは、粉砕物は加熱せず、押し固めてペレット化することが好ましい。このように、加熱せず、押し固めてペレット化することにより、粉砕物を押出機等を用いてペレット化するときに比べて、熱可塑性樹脂組成物への熱履歴を低減でき、この熱可塑性樹脂組成物を用いて成形される成形体の機械的特性をより向上させることができる。
【0056】
加熱せず押し固めてペレット化する工程では、どのような装置及び手段を用いてもよいが、各種圧縮成形法によるペレット化であることが特に好ましい。この圧縮成形法としては、例えば、ローラ式成形法及びエクストルーダ式成形法等が挙げられる。これらのうち、ローラ式成形法は、ローラ式成形機を用いる方法であり、ダイに接して回転するローラにより粉砕物がダイ内に圧入され、その後、ダイから押し出されてペレット化される。ローラ式成形機とてしは、ディスクダイ式(ローラーディスクダイ式成形機)とリングダイ式(ローラーリングダイ式成形機)が挙げられ、これらはダイの形状が異なる。一方、エクストルーダ式成形法は、エクストルーダ式成形機を用いる方法であり、スクリューオーガの回転により粉砕物がダイ内に圧入され、その後、ダイから押し出されてペレット化される。これらの圧縮成形法のうちでは、圧縮効率が高いローラーディスクダイ式成形機を用いた方法がより好ましい。
【0057】
(6)植物性材料ペレット化工程
また、混合工程で用いる植物性材料は、混合工程で用いる前に予めペレット化して用いることができる。即ち、混合工程前に、植物性材料ペレット化工程を備えることができる。植物性材料をペレット化する場合、ペレット化装置は特に限定されないが、上記(5)の粉砕物ペレット化工程と同様にローラーディスクダイ式成形機を用いることができる。このように植物性材料をペレット化することで、植物性材料と熱可塑性樹脂との嵩密度の差を小さくすることができ、作業性が向上し、混合の際の各々の材料の偏在を抑えることもできる。また、植物性材料と熱可塑性樹脂とが相互により均一に分散した熱可塑性樹脂組成物とすることができ、この組成物を用いてなる成形体の機械的強度をより向上させることができる。
【0058】
(7)混合工程からペレット化工程までの連続工程
混合工程と細分化工程とは、図1に例示されるように、混合装置1と細分化装置30とを並列に配置し、連続的に混合し、細分化する工程とすることが好ましい。即ち、混合装置1から排出される混合物C(細分化されていない混合物)を、シュート11を用いて細分化装置30に投入できる。更に、細分化装置30では、互いに逆方向に回転された第1ローラ31と第2ローラ32の間に供給された混合物Cを、各々ローラの有する凸条で咬み込んで第1ローラ31と第2ローラ32の間に引き込み、更に、各ローラの凹部が合わさって連続的に形成される空間内に、この混合物Cを咬み込みながら細分化して、ローラ間から細分化混合物C1として排出することが好ましい。
【0059】
更に、前述のような粉砕工程及び粉砕物ペレット化工程を備える場合には、これらの工程も、細分化工程に引き続いて連続されていることが好ましい。例えば、細分化装置30から排出された細分化混合物C1は、粉砕可能である程度{例えば、110〜150℃(特に好ましくは120〜140℃)にまで降温していることが好ましい}に降温しておれば、そのまま直接粉砕装置50に投入してもよい。また、細分化混合物C1がより高温(例えば、150℃を超える温度)である場合は、図1に例示されるように、細分化混合物C1をベルトコンベア40により搬送しながら放熱させた後、粉砕装置50に投入してもよい。
【0060】
ベルトコンベア40の材質(ベルト材質)は特に限定されず、ゴム製、金属製等のいずれでもよいが、金属製であり、且つメッシュ状のベルトであれば、細分化混合物C1の冷却をより促進できる。更に、ベルトコンベア40の長さも特に限定されず、1〜5m、特に2〜4mとすることができる。また、ベルトコンベア40の搬送速度も特に限定されず、このベルトコンベア40の搬送速度は、細分化混合物C1がベルトコンベア40上に存在する時間(放熱時間)が10〜80秒、特に20〜60秒程度となるものであることが好ましい。
【0061】
更に、前述のように、粉砕物をペレット化する場合、粉砕装置50とペレット化装置90とを並列に配置し、粉砕装置50により粉砕された粉砕物を、搬送用ダクトホース60内を搬送させてサイクロン70内に投入して粉塵を集塵し、その後、ロータリーバルブ80でエアーカットしてペレット化装置90に投入し、ペレット化することが好ましい。
【0062】
[3]成形体の製造方法
本発明の方法により製造された熱可塑性樹脂組成物(好ましくは細分化後、粉砕された粉砕物、又は粉砕物がペレット化されてなるペレット)は、射出成形、押出成形、圧縮成形等の各種の成形方法により、成形体とすることができる。この熱可塑性樹脂組成物は、多量の植物性材料を含有しているにもかかわらず、優れた流動性を有するため、特に高い流動性を要する射出成形に用いることが好適である。この射出成形時、熱可塑性樹脂組成物がペレット化されておれば、計量時間及び射出時間等を短縮することができ、その結果、成形サイクルが短縮されて成形効率を向上させることができる。また、射出成形等の各種の成形に用いる装置及び成形条件等は特に限定されず、熱可塑性樹脂の種類、及び成形体の形状、用途等により適宜選択し、設定すればよい。
【0063】
成形体の形状及び寸法等は特に限定されず、その用途も特に限定されない。この成形体としては、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。これらのうち、自動車用途としては、内装材、インストルメントパネル、外装材等が挙げられ、具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、ダッシュボード、インストルメントパネル、デッキトリム、バンパ、スポイラ、カウリング及びエンジンルーム内のエアフィルターボックス等が挙げられる。更に、前述の自動車等を除く他の用途としては、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。例えば、建築物のドア表装材、ドア構造材、机、椅子、棚、箪笥等の各種家具の表装材、構造材等が挙げられる。更に他の例として、包装体、トレイ等の収容体、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造
〈1〉混合工程
ケナフ繊維(平均繊維長1.6mm)240gと、ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、商品名「VM970X」)385gと、酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名「モディックP908」)15gと、を図13の混合装置1の材料供給室13に投入し、その後、容量5リットルの混合室3に移送し、混合羽根(図14の10a〜10f)を、32kwモータに対して指令周波数35Hzにて駆動させて混合した。尚、この配合は、原料全量に対してケナフ繊維が37.5質量%の質量割合である。
その後、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇し、150%に相当する負荷に達した時点から4秒経過後を終点として混合を停止し、混合物Cを混合装置1から排出した。得られた塊状物は、最大寸法10〜20cmの塊状であり、デジタル温度計(CUSTOM社製、品名「CT−1310D型」)によって測定された塊状物の内部の温度は220〜240℃であった。
【0065】
〈2〉細分化工程
上記〈1〉で得られた塊状物(混合物C)は、混合装置1から排出されるとシュート11を通り、細分化装置30内に投入される(図1)。
細分化装置30は、図1〜12に示されるように、第1ローラ31及び第2ローラ32を備える。この第1ローラ31及び第2ローラ32は、混合物Cとの接触による熱の影響を軽減するために、リム(リム幅が20cmである)とハブとこれらを接続するリブとを備えてなる。即ち、第1ローラ31は、リム311とハブ315とこれらを接続するリブ316と、を備える(図10等)。同様に、第2ローラ32は、第2ローラのリム321とハブ325とこれらを接続するリブ326とを備える(図10等)。
【0066】
また、各々のローラのハブには各ローラを回転させるための回転軸が嵌合されている。即ち、第1ローラ31には第1ローラ軸351が嵌合され、第2ローラ32には第2ローラ軸352が嵌合されている。そして、各々の第1ローラ31及び第2ローラ32は、各々の回転軸351及び352が互いに平行となるように、且つ、各々のローラの表面を付き合わせるようにして、並列に配置されている(図2、図6及び図9等)。
【0067】
これらのローラは、細分化装置30内において、互いに逆向きに回転されるように配設されている。即ち、図9に示すように、第1ローラ31に接続された第1ローラ軸351は、軸受け382に挿通されて、第1ローラ31を第2ローラ32と同期するための第1
ローラ同期ギア353と接続され、更に、軸受け383を介して、カップリング36と接続され、更に、駆動源であるモータ37(出力1.5kW)へと接続される。
【0068】
更に、第1ローラの同期ギア353は、図9に図示されない第2ローラの同期ギアと係合され、第2ローラの同期ギアは、図9に図示されない第2ローラ軸を介して第2ローラと接続される(図9においていえば、第2ローラ、第2ローラ軸及び第2ローラの同期ギア等は、いずれも第1ローラ、第1ローラ軸及び第1ローラの同期ギアの後ろに配置されている)。
そして、細分化装置30は、モータ37からの動力により、カップリング36を介して、第1ローラ31の同期ギア353が回転され、その回転は、図示されない第2ローラ32の同期ギアへ伝達されて、第1ローラ31と第2ローラ32とは、互いに逆方向へ同じ回転数で回転されることとなる。
【0069】
第1ローラ31は、その表面311aに、軸方向Bに沿って延びる複数の凸条312を有する。この凸条312は、第1ローラ31の表面311aに角度10度(図11の角度D=10°)おきに1本の割合で合計36条を備える。更に、各々の凸条312は隣り合う凸条312の間で凹部314(即ち、凹条となっている)を形成している。そして、この第1ローラ31は、軸中心から凸条312の頂部までの距離が125mm(図11の長さD=125mm)とされている。また、凸条312の頂部から凹部314の底部までの距離は5mm(図11の長さD=5mm)とされている。更に、各凸条312は、その頂部に平坦部313を各々有す、平坦部313の長さは2mm(図11の長さD=2mm)とされている。更に、第1ローラ31の表面はその全面がフッ素樹脂加工されている。これらはいずれも第2ローラ32においても同様である(図11)。
従って、第1ローラ31と第2ローラ32とは、各々凸条の頂部の平坦部が2mmとされており、合計4mmのクリアランスをもって互いに当接して空間33を形成できるようになっている。これにより、より確実に混合物Cの細分化を行うことができる(図11)。
【0070】
また、細分化装置30は、第1ローラ31と第2ローラ32との間の下方に、第1ローラ31及び第2ローラ32の軸方向Bに沿ってスライド可能なスライド部材34を備える(図5〜図8等)。スライド部材34は、略二等辺三角形状に形成されるとともに、その等辺となっている斜辺が、各々第1ローラ31及び第2ローラ32の外形に沿って、且つ、各々のローラの有する凸条の頂部と1mmのクリアランスとなるように、カーブされている。そして、このスライド部材34が、軸方向Bへ回転軸351及び352の側からローラ31及び32の方向へ向かってスライドすることにより、各ローラの凹部314及び324に、細分化混合物C1が付着している場合に、その細分化混合物C1の端部を押して、各ローラから剥がすことができるようになっている。
【0071】
前述のように、上記〈1〉で得られた塊状物(混合物C)は、混合装置1から排出されて、上記構成の細分化装置30内に投入される(図1)。
細分化装置30内に投入されると、互いに逆方向へ向かって同じ回転速度で回転された2つのローラの間に落下される(図2〜図4)。即ち、方向A1へ向かって4回転/分の速度で回転する第1ローラ31と、方向A2へ向かって4回転/分の速度で回転する第2ローラ32と、の間に落下される。落下された混合物Cは、各々ローラが有した凸条312及び323によって、ローラ間に引き込まれるとともに、第1ローラ31の凹部314と第2ローラ32の凹部324とが合わさって連続的に形成される空間33に咬み込まれ、第1ローラ31の凸条312の頂部と第2ローラ32の凸条322の頂部とが当接されることによって切断されて、細分化混合物C1となって、両ローラの間から下方へと排出される。
【0072】
更に、排出された細分化混合物C1の一部は、第1ローラ31の凹部314に張り付いた状態で排出され、また、細分化混合物C1の更に一部は、第2ローラ32の凹部324に張り付いた状態で排出される(図8)。そして、スライダ部材34が、回転軸351及び352の側からロール31及び32の側へスライドして迫り出すことにより、細分化混合物C1の回転軸351及び352側の端部が押圧されて、各々ロールの凹部から剥がされて、ローラを離れて細分化装置30の下方へと落下される(図7)。落下される細分化混合物C1は、縦横が約1cm×約2cmであり、長さが約20cmであり且つ重さが約40gの略柱形状物として排出される。
【0073】
上記下方に落下された細分化混合物C1は、図1に示すように、1分間に1.5mの速度で移動される長さ2.5mのベルトコンベア40上に落下される。そして、このベルトコンベア40上において、粉砕装置50に投入されるまでの間、放熱され、デジタル温度計(CUSTOM社製、品名「CT−1310D型」)によって測定される細分化混合物C1の内部温度は120〜140℃となる。
【0074】
〈3〉粉砕工程
上記〈2〉において、ベルトコンベア40で搬送された細分化混合物C1は、粉砕装置50(TRIA社製、型式「42−20JM」)に投入される。この粉砕装置50内では、細分化混合物C1が粉砕されて、目開き5mmのスクリーンを通過されて、粉砕物となる。
その後、粉砕物は、搬送用ダクトホース60内を搬送されて、ジェットローダー(松井製作所製、型式「JL4−VC」)によりサイクロン70内に吸引され、エア分離されて、ロータリーバルブ80にて回収される。得られた粉砕物は、110℃で5時間乾燥する。
【0075】
〈4〉成形工程
上記〈3〉までに得られた粉砕物を、射出成形機(住友重機械工業社製、形式「SE100DU」)により、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で射出成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製し、次いで、ISO178に準拠して曲げ試験を実施し、曲げ強さ及び曲げ弾性率を算出した。また、バーフロー金型を用いて同様にして射出成形し、流動長を評価した。その結果、曲げ強度は61MPa、曲げ弾性率は3700MPa、バーフロー長は360mmであった。このように、実施例の熱可塑性樹脂組成物は、十分な曲げ特性を有し、且つバーフロー長を指標とする流動性も優れていることが分かる。
【0076】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0077】
1;混合装置、11;シュート、
3;混合室、5;回転軸、10及び10a〜10f;混合羽根、12;らせん状羽根、13;材料供給室、
30;細分化装置、
31;第1ローラ、311;第1ローラのリム、311a;第1ローラの表面、312;凸条(第1ローラの凸条)、313;平坦部(第1ローラの平坦部)、314;凹部(第1ローラの凹部)、315;ハブ、316;リブ、
32;第2ローラ、321;第2ローラの表面、322;凸条(第2ローラの凸条)、323;平坦部(第2ローラの平坦部)、324;凹部(第2ローラの凹部)、
33;空間(第1ローラの凹部と第2ローラの凹部とが合わさって形成される空間)、
34;スライダ部材、
351;第1ローラ軸、352;第2ローラ軸、353;第1ローラの同期ギア、
36;カップリング、
37;駆動モータ(駆動原)、
381;支持台、382、383;軸受け、
39;フード、
40;搬送用コンベア、
50;粉砕装置、
60;搬送用ダクトホース、70;サイクロン、80;ロータリーバルブ、90;粉砕物回収器、
A1;第1ローラの回転方向、A2;第2ローラの回転方向、
B;軸方向、
C;混合物、C1;細分化された混合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び植物性材料を含有し、前記熱可塑性樹脂と前記植物性材料との合計を100質量%とした場合に、前記植物性材料は30〜95質量%である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合して混合物とする混合工程と、
前記混合物を細分化装置によって細分化する細分化工程と、を備え、
前記細分化装置は、互いに対向しつつ、互いに逆方向へ回転する第1ローラと、第2ローラと、を備え、
前記第1ローラの表面には、軸方向に沿って延びる複数の凸条を有し、
前記第1ローラの互いに隣り合う凸条の間は、第1ローラの凹部とされ、
前記第1ローラの表面には、前記第1ローラの凹部が複数形成され、
前記第2ローラの表面には、軸方向に沿って延びる複数の凸条を有し、
前記第2ローラの互いに隣り合う凸条の間は、第2ローラの凹部とされ、
前記第2ローラの表面には、前記第2ローラの凹部が複数形成され、
前記第1ローラと前記第2ローラは、互いに逆方向へ回転しながら、前記第1ローラの凹部と前記第2ローラの凹部とが合わさった空間を連続形成可能とされており、
前記細分化工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの間に供給された前記混合物を、前記空間内に咬み込みながら細分化して排出する工程であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1ローラの凸条は、その頂部に平坦部を有するとともに、
前記第2ローラの凸条は、その頂部に平坦部を有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記細分化装置には、前記第1ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第1スライド部材が備えられており、
前記第1スライド部材がスライドすることにより、前記第1ローラに付着した細分化済みの前記混合物を押し出して、前記第1ローラから剥がす請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記細分化装置には、前記第2ローラの軸方向に沿ってスライド可能な第2スライド部材が備えられており、
前記第2スライド部材がスライドすることにより、前記第2ローラに付着した細分化済みの前記混合物を押し出して、前記第2ローラから剥がす請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第1スライド部材と前記第2スライド部材は一体とされている請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−18191(P2013−18191A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153252(P2011−153252)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(511168545)有限会社 三豊技研 (1)
【出願人】(511168556)ナルミ技研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】