説明

熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法および熱可塑性樹脂製螺旋状物

【課題】 製作速度の向上。
【解決手段】 同図に示した製造方法では、連続した状態の第一工程と第二工程とから構成されている。第一工程は、塑性変形可能な導電性内部導体(心材)12を、溶融押出し機20のクロスヘッドダイスに挿通し、所定形状のダイスにより溶融状態の熱可塑性樹を、内部導体12の外周に押出成形した後、融点未満の温度である冷却装置22で冷却しつつ引取り、長手方向に直線状に延びる直線柱状部24を有する成形物26を形成する。第二工程は、テンションローラ30と、回転引取り機32と、回転巻取り機34とを備えていて、テンションローラ30により成形物26に張力を加えながら、回転引取機32により長軸の周りに回転させることで撚りを加えて、成形物26の直線柱状部24を螺旋柱状部14bに変形させることで、熱可塑性樹脂製螺旋状物10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は 熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法および熱可塑性樹脂製螺旋状物に関し、特に、同軸ケーブルのコア、光ケーブルの担持体(スペーサー)などの通信用ケーブル、通信用電線の部材として有用な熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法および熱可塑性樹脂製螺旋状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心に内部導体(心材)を備え、その周囲に高密度ポリエチレン(HDPE)などの熱可塑性樹脂で螺旋状の被覆を施した中空構造の同軸ケーブルのコアは、例えば、特許文献1にその製造方法が開示されている。特許文献1に示されているコア体の製造方法では、内部導体(心材)の周囲に、溶融樹脂を回転(異形)ダイスにより押出成形して、螺旋状物を形成していた。
【0003】
このような構成の同軸ケーブルのコアは、発泡成形では困難な誘電率(中空率=空気の割合を高くできる)が得られるなどの利点がある。しかしながら、このような従来の製造方法には、以下に説明する欠点が有った。
【特許文献1】特開2004−55144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、回転ダイスを用いるコアの製造方法では、
A.例えば、リブが細長い(中空率が高い)場合など、形状によっては、リブが傾斜して所望の形状精度が得られない。
【0005】
B.外径の小さな螺旋状物の場合、螺旋ピッチが短くなり、製造速度を上げようとすると、回転ダイスの回転数を上げることになるが、回転ダイスの回転速度を上げるには回転軸受部の構造などから限界があり、このため、製造速度が遅くなるし、コストがアップする。
【0006】
C.内部導体(心材)が、細く、または、柔らかくなると、樹脂の回転につられて、被覆した部分も回転して螺旋ピッチが乱れる。
【0007】
D.弗素樹脂(PFA、FEP)、PPS、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PSF(ポリサルホン)、PES(ポリエーテルサルホン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、LCP(芳香族ポリエステル)など、溶融押出温度が300℃付近、或いはそれを超えるような耐熱性樹脂の場合、回転軸受部の耐熱性の高い潤滑シール構造ができないため、回転ダイスによる螺旋状物の成形ができなくなり、同軸ケーブルにおいては、誘電率の小さな弗素樹脂が好ましいが、事実上、内部導体を備えた弗素樹脂製の螺旋状物ができなかった。
【0008】
E.また、PET、PBT、など粘度の低い樹脂の場合には、回転により螺旋部分が簡単に変形してしまい、形状精度の良い螺旋状物ができない。
【0009】
また、内部導体(心材)に銅線を使用し、弗素樹脂を螺旋状に絶縁被覆した中空コアは、中空構造同軸ケーブルのコアとして有用である。発泡による方法と比べ、中空率が上げられ(空気の体積50%以上)、誘電率を小さくできる。
【0010】
しかし、良好な反射特性を得る為には、螺旋形状、螺旋ピッチなどについて高精度が要求されるが、高精度な弗素樹脂螺旋状物を製造するに有効な方法がなかった。
【0011】
さらに、被覆樹脂としてポリオレフィン、特にHDPEを使用した物は、同軸ケーブル用中空コア以外に、光ケーブル用スペーサーとしても有用であるが、螺旋ピッチを短くすると、回転ダイスの回転速度を上げることになり前述の問題が発生する。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回転ダイスを使用することなく螺旋状物を製造することで、前述した回転ダイスに起因する問題A〜Eが解決され、高度な形状精度,ピッチ精度を備えた螺旋状物が得られる熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法および熱可塑性樹脂製螺旋状物を提供することにある。
【0013】
なお、弗素樹脂被覆,ポリエチレン被覆による螺旋状物は、同軸ケーブルのコアあるいは通信用電線部材などとして有用であり、また、HDPEなどの螺旋状物は、光ケーブル用スペーサー(光ケーブル用部材)として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、軟銅線、硬銅線、銅被鋼線などの塑性変形可能な導電性内部導体または心材を、押出機のクロスヘッドダイスに挿通し、所定形状のダイスにより溶融状態の熱可塑性樹脂を、前記内部導体の外周に押出成形した後、融点未満の温度で冷却しつつ引取り、長手方向に直線状に延びる直線柱状部を有する成形物を形成する第一工程と、前記成形物に張力を加えながら長軸の周りに回転引取機構、回転巻取機構を備えた装置により撚りを加えながら巻取って、前記直線柱状部を螺旋柱状部に変形させる第二工程とを含み、前記第一工程と前記第二工程とを、連続ないしは別工程で行うようにした。
【0015】
上記製造方法では、前記第二工程の回転引取機構、回転巻取機構を備えた装置を、シングルツイスト機,ダブルツイスト機などの撚り機で構成することができる。
【0016】
また、上記熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法において、前記回転引取機構を備えた装置の前後に、加熱槽,冷却槽を設け、前記熱可塑性樹脂の融点未満、軟化点以上に加熱し、冷却することにより撚り状態を固定することができる。
【0017】
また、上記熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法において、前記回転引取り機構,回転巻取り機構を備えた装置の前にて、前記成形物に加わる張力を、前記内部導体または心材の伸びが、5%以下、0.02%以上になる範囲で調整することができる。
【0018】
さらに、上記製造方法では、前記内部導体または心材は、軟銅線、或いは銀、錫などをメッキした軟銅線、或いは、これらの撚り線から選択することができる。
【0019】
また、本発明は、中心に配置される塑性変形可能な内部導体と、前記内部導体の外周に配置される熱可塑性樹脂で形成された螺旋柱状部とを有する熱可塑性樹脂製螺旋状物であって、前記螺旋柱状部は、前記内部導体が塑性変形するようにした状態で、前記直線柱状部を螺旋状に変形し、当該熱可塑性樹脂を、弗素樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂から選択される誘電率が小さな熱可塑性樹脂とするようにした。
【0020】
前記内部導体または心材を囲む前記螺旋柱状部は、前記内部導体の外径と、前記螺旋柱状部の頂点の外接円が囲む空間に対し、前記内部導体の外周に設ける環状部と前記螺旋柱状部とからなる絶縁被覆部の占める部分を除いた部分の割合が50%以上となるようにすることができる。
【0021】
前記熱可塑性樹脂製螺旋状物の外周には、外部シールド、或いは、前記外部シールドに加えてジャケットを設けて同軸ケーブルとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記構成の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法および熱可塑性樹脂製螺旋状物によれば、回転ダイスを使用することなく熱可塑性樹脂製螺旋状物を製造するので、回転ダイスを採用することで発生する諸問題の解決が図れ、高精度の螺旋状物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る熱可塑性樹脂製螺旋状物を同軸ケーブルのコアとする場合の実施の形態について説明する。図1には、本発明にかかる熱可塑性樹脂製螺旋状物の一例を示している。この図に示した螺旋状物10は、塑性変形可能な内部導体12と、この内部導体12の外周を覆う熱可塑性樹脂で形成された絶縁被覆層14とを備えている。なお、本実施例の場合には、同軸ケーブル用のコアに螺旋状物10を用いるので、内部導体12としているが、光ケーブルの担持体(スペーサー)などの通信用ケーブル、通信用電線の部材として用いる場合には、内部導体12は、心材と呼ばれる。
【0024】
絶縁被覆層14は、内部導体12の外周を覆う環状部14aと、環状部14aの外周にあって、放射状に突出する複数(6本)の螺旋状柱状部14bとから構成されている。このような構成の螺旋状物10は、図2に示す工程により製造される。
【0025】
同図に示した製造方法では、連続した状態の第一工程と第二工程とから構成されている。第一工程は、塑性変形可能な導電性内部導体(心材)12を、溶融押出し機20のクロスヘッドダイス21に挿通し、所定形状のダイスにより溶融状態の熱可塑性樹脂を、内部導体12の外周に押出成形した後、冷却風による冷却装置22で冷却しつつ引取り、長手方向に直線状に延びる直線柱状部24を有する成形物26が、連続的に成形される。
【0026】
図3に、この第一工程で得られる成形物26の横断面が示されおり、本実施例では、直線柱状部24は、等角度間隔で放射状に延びる6本からなっている。なお、図2に示した製造方法では、内部導体12は、複数のガイドプーリを有するクリール28から繰り出される。
【0027】
一方、第二工程は、テンションローラ30と、回転引取機32と、回転巻取機34とを備えていて、テンションローラ30により成形物26に、所定の張力を加えながら、回転引取機32により長軸の周りに回転させることで撚りを加えて、成形物26の直線柱状部24を螺旋柱状部14bに変形させることで、熱可塑性樹脂製螺旋状物10が得られる。
【0028】
本実施例の場合、テンションローラ30の後に、成形物26の熱可塑性樹脂を融点未満で軟化点以上の温度まで加熱する熱風加熱槽36が配置され、回転引取機32の後方には、冷却装置38が配置されている。
【0029】
なお、テンションローラ30の前段に配置されたものは、一対のローラを上下に所定の間隔をおいて設けたネルソン型の引取ローラ40であって、成形物26をこの引取ローラ40に捲回した後に、テンションローラ30側に送り出すことにより、回転引取機32の撚りが、第一工程におよぶことを防止している。
【0030】
図2に示した実施例では、第一工程と第二工程とを連続しておこなうために、引取ローラ40を配置しているが、第一工程と第二工程とを連続しないで別工程で行う場合には、引取ローラ40に変えて巻取機(図示省略)により巻き取られる。
【0031】
以上のような工程で螺旋状物10を製造すると、まず、第一工程では、直線柱状部24を成形するため、内部導体12の被覆を高速で行うことができ、直線柱状部24に傾斜のない高精度な成形物26が得られる。引き続いてこの形状(状態)を維持して(溶融させないで)撚ることにより、高精度な螺旋状物10を得ることができる。
【0032】
回転ダイスの回転速度は、100rpm以下であるが、回転引取機32,回転巻取機34では、500rpm程度が可能であり、生産性を格段に向上できる。なお、図2に示した実施例における回転引取機32,回転巻取機34に代えて、シングルツイスト、ダブルツイスト撚り機を採用すると、この場合には、1000rpm或いはそれ以上が可能であり、製造速度を5倍以上にできる。
【0033】
内部導体12(心材)は、軟銅線、或いは銀、錫などをメッキした軟銅線、或いは、これらの撚り線から選択することができる。軟銅線は、伸びが20〜40%であり、塑性変形しやすく、撚りを加える時、小さな張力で直線状に保つことができ、また、撚る力も少なくて済む。
【0034】
硬銅線、銅被鋼線では、撚りを加える時、直線状に保つことが(工程上可能な力で)困難な場合がある。以上のことから、軟銅線の単線、撚り線、銀メッキ軟銅線の単線、撚り線、或いは錫メッキ軟銅線の単線、撚り線が好ましい。
【0035】
内部導体12(心材)が軟銅線の場合など、撚られることで塑性変形し、螺旋状を保つことは可能であるが、細径の撚り線の場合など、捻り剛性が小さいと、螺旋(熱可塑性樹脂)被覆部の残留応力により、撚りが戻る場合がある。この場合には、軟化点以上、融点以下で加熱し残留応力を除くことにより、螺旋状態を安定化することができる。
【0036】
直線柱状部24の成形物26は、弛んだ状態で撚りを加えるとうねりが生じる。うねりを防ぐためにテンションローラ30で、所定の張力を掛けて直線状態として撚りを加える。
【0037】
この時の張力は、内部導体12の種類により異なるが、内部導体12の弾性変形域、或いは、弾性変形域を越える場合には、伸びが5%以下である範囲で調整する。この場合3%以下がより好ましい。5%を越えると、当然、直線状態からの(螺旋ラセン状物の)形状の変化が大きくなってしまう。また、内部導体12(心材)が、不均一に伸ばされ形状、ピッチが乱れる場合がある。
【0038】
また、張力が高すぎると、通過するガイドローラで通過方向が変わる時、リブがローラ面に押さえつけられ、形状が変化(傾斜)したり、潰れたりすることがある。更に、(回転)引取機32、巻取り機34などのモーター負荷が大きくなり不経済である。
【0039】
絶縁被覆層14の形成樹脂としては弗素樹脂が有用であり、弗素樹脂は、誘電率が小さく、同軸ケーブル用コアとして好適である。外部導体(シールド)として、銅パイプ、金属テープ(巻き付け)などを使用し、内部導体12(心材)との間に連続空気層を作ることができ、絶縁被覆層14全体としての誘電率を飛躍的に小さくできる。
【0040】
また、誘電率の小さなポリオレフィン、環状ポリオレフィンを使用した螺旋状物は、弗素樹脂と同様に絶縁被覆層14全体としての誘電率を飛躍的に小さくできるし、材料コストも低減できる。リサイクルも容易で環境特性に優れる。
以下に、より具体的な本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【実施例1】
【0041】
φ0.51の銀メッキ軟銅線(内部導体12)をクロスヘッドダイスに導き、この内部導体を環状に被覆する環状部24aと、環状部から径外方向に延びる6本の直線柱状部を有するノズルを通過させながらPFA樹脂(ダイキン工業
【0042】
商品名ネオフロンPFA AP201)を被覆することにより、6つの直線柱状部24bを有するコア(成形物26)を得た。得られた成形物26の柱状部24bの先端を通る外接円の直径は、1.40mm、内部導体12周りの環状部24aの被覆厚みは、0.09mm、 6本の柱状部24bのリブ厚みは、0.15mmであった。
【0043】
次に、伸度0.03%に相当する200gのバックテンションを、テンションローラ30で掛けながら供給した成形物26に対し、熱風加熱槽36にて絶縁被覆層14の表面温度120℃まで加熱し、回転引取装置32と回転巻取装置34にて、500rpm、7.5m/minの速度で引取りつつエアーで冷却する(冷却装置38)ことにより螺旋状物10を得た。
【0044】
得られた螺旋状物10を2cmおきに切り取り、10断面の外径を観察したところ、平均外径は1.39mm、標準偏差は7μmであった。螺旋状物10の撚りピッチは15mmであった。また、断面形状を確認したところ、リブの傾斜は見られなかった。さらにPFA被覆を剥いで軟銅線の状態を確認したところ、撚りによるうねりは生じていなかった。
【0045】
次に、得られた螺旋状物10を銅管に挿入した後、絶縁被覆層14と銅管とが密着する様に銅管をダイス引きで絞りこみ、外径1.78mmのセミリジッドケーブルを作成した。
【0046】
同ケーブルに SMA(Sub Miniature Type A)コネクタを取り付け、ネットワークアナライザー(アジレント社製:Sパラメータ・ベクトル・ネットワーク・アナライザ8720ES)で特性インピーダンスを測定したところ、50Ωであった。次に反射特性を測定したところ、2GHzの電圧定在波比(以下VSWRと記す)は1.05以下であった。
【実施例2】
【0047】
成形物26に撚りを入れる工程において、バックテンションを伸度0.1%に当たる600gに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で螺旋状物10を得た。得られた螺旋状物10の平均外径は、1.38mm、標準偏差は8μmであった。
【0048】
螺旋状物10のリブの撚りピッチは、15mmであった。また、撚りを入れたことによるリブの傾斜は見られなかった。次に、得られた螺旋状物10を銅管に挿入した後、絶縁被覆層14と銅管とが密着する様に銅管をダイス引きで絞りこみ、外径1.78mmのセミリジッドケーブルを作成した。
【0049】
同ケーブルにSMAコネクタを取り付け、実施例1同様に特性インピーダンスを測定したところ、50Ωであった。次に反射特性を測定したところ、2GHzのVSWRは1.05以下であった。
【実施例3】
【0050】
被覆樹脂をPFAからHDPE(三井化学 商品名 ハイゼックス6600MA)へ変更した以外は、実施例1と同様に外径1.45mmの成形物26を得た。得られた成形物26の内部導体12周りの被覆厚みは、0.09mm、6本の直線柱状部24のリブ厚みは、0.15mmであった。
【0051】
次に、伸度0.1%に相当する600gのバックテンションを掛けながら供給した成形物26に対し、熱風加熱槽36にて絶縁被覆層14の表面温度を80℃まで加熱し、回転引取機32,回転巻取機34で500rpm、12.5m/minの速度で引取りつつエアーで冷却することにより螺旋状物10を得た。
【0052】
得られた螺旋状物10の平均外径は、1.44mm、外径の標準偏差は、6μmであった。螺旋状物10の撚りピッチは、25mmであった。次に螺旋状物10の断面形状を確認したところ、リブの傾斜は見られなかった。HDPEの被覆を剥いで軟銅線の状態を確認したところ、撚りによるうねりは生じていなかった。
【0053】
次に、得られた螺旋状物10を使用し、実施例1、2と同様にして銅管の外径1.84mmのセミリジッドケーブルを作成した。同ケーブルにSMAコネクタを取り付け、実施例1同様にケーブルの特性インピーダンスを測定したところ、51Ωであった。次に反射特性を測定したところ、2GHzのVSWRは1.05以下であった。
【実施例4】
【0054】
成形物26に撚りを入れる工程において、速度を5m/minとした以外は、実施例3と同様にして螺旋状物10を得た。得られた螺旋状物10の平均外径は、1.44mm、外径の標準偏差は、7μmであった。
【0055】
そして螺旋状物10のリブの撚りピッチは、10mmであった。また螺旋状物10の断面形状を観察したところ、リブは傾斜していなかった。次にHDPE被覆を剥いで軟銅線の状態を確認したところ、撚られたことによるうねりは生じていなかった。
【0056】
次に、得られた螺旋状物10を使用し、て、外径1.84mmのセミリジッドケーブルを得た。得られたセミリジッドケーブルにSMAコネクタを取り付けて特性インピーダンスを測定したところ、50Ωであった。次に反射特性を測定したところ、2GHzのVSWRは1.05以下であった。
【比較例1】
【0057】
内部導体をφ0.51銀メッキ軟銅線からφ0.51銅被鋼線にした以外は、実施例1と同様に成形物を得た。得られた成形物の柱状部先端を通る外接円の直径は、1.40mm、内部導体周りの被覆厚みは、0.09mm、6本の柱状部のリブ厚みは、0.15mmであった。
【0058】
次に、実施例1と同様に伸度0.01%相当の200gのバックテンションを掛けながら撚りを入れることにより、螺旋状物を得た。得られた螺旋状物の平均外径は、1.38mmであり、外径の標準偏差は、10μmであった。
【0059】
螺旋状物のピッチは、15mmであった。次にPFA被覆を剥いで銅被鋼線の状態を確認したところ、銅被鋼線にうねりを生じていた。次に、螺旋状物を使用して実施例1と同様にセミリジッドケーブルを作製した。このケーブルにSMAコネクタを取り付けて確認したところ、特性インピーダンスは48Ωであった。次に反射特性を測定したところ、2GHzのVSWRは1.2を超えていた。
【比較例2】
【0060】
回転引取り機で成形物に撚りを掛けるときのバックテンションを伸度10%に相当する4.1kgとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で螺旋状物を得た。得られた螺旋状物の平均外径は、1.33mmであり、外径の標準偏差は、12μmであった。また、断面形状を確認したところ内部導体とPFAの絶縁層の間に空間ができており、リブも傾斜していた。
【比較例3】
【0061】
φ0.51の銀メッキ軟銅線を80rpmで回転する回転ダイスに導き、この内部導体を環状に被覆する円環状部と、円環状部から径外方向に延びる6本の柱状部を有するノズルを通過させながらHDPE(三井化学 商品名 ハイゼックス6600MA)を被覆して2m/minの速度で引き取ることにより、螺旋状のコアを得た。得られた螺旋コアの平均外径は、1.44mm、内部導体周りの被覆厚みは0.09mm、6本の柱状部のリブ厚みは、0.15mmであった。外径の標準偏差は、17μmであった。螺旋コアの断面を観察したところ、リブが傾斜していた。螺旋コアの螺旋ピッチは25mmであった。
【比較例4】
【0062】
引取速度を0.8m/minにした以外は、比較例3と同様の条件で螺旋状物を作製した。螺旋状物の平均外径は、1.44mm、内部導体周りの被覆厚みは、0.09mm、6本の柱状部のリブ厚みは0.15mmであった。外径の標準偏差は15μmであった。螺旋コアの断面を観察したところ、リブが傾斜していた。螺旋コアの螺旋ピッチは、10mmであった。
【0063】
以上の実施例および比較例の螺旋状物の精度、製造速度についてまとめたものを以下の表1に示している。

【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明にかかる合成樹脂製螺旋状物の製造方法および螺旋状物によれば、精度の高い螺旋状物が、速い生産速度で製造することができるので、同軸ケーブルなどに有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明にかかる熱可塑性樹脂製螺旋状物の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造工程の説明図である。
【図3】図2に示した第一工程で得られる成形物の断面説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 熱可塑性樹脂製螺旋状物
12 内部導体
14 絶縁被覆層
14a 環状部
14b 螺旋柱状部
20 押出機
22 冷却装置
24a 環状部
24b 直線柱状部
26 成形物
30 テンションローラ
32 回転引取機
34 回転巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟銅線、硬銅線、銅被鋼線などの塑性変形可能な導電性内部導体または心材を、押出機のクロスヘッドダイスに挿通し、
所定形状のダイスにより溶融状態の熱可塑性樹脂を、前記内部導体の外周に押出成形した後、融点未満の温度で冷却しつつ引取り、長手方向に直線状に延びる直線柱状部を有する成形物を形成する第一工程と、
前記成形物に張力を加えながら長軸の周りに回転引取り機構、回転巻取り機構を備えた装置により撚りを加えながら巻取って、前記直線柱状部を螺旋柱状部に変形させる第二工程とを含み、
前記第一工程と前記第二工程とを、連続ないしは別工程で行うことを特徴とする熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法。
【請求項2】
前記第二工程の回転引取り機構、回転巻取り機構を備えた装置が、シングルツイスト機,ダブルツイスト機などの撚り機であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法において、
前記回転引取り機構を備えた装置の前後に、加熱槽,冷却槽を設け、前記熱可塑性樹脂の融点未満、軟化点以上に加熱し、冷却することにより撚り状態を固定することを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑樹脂製螺旋状物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法において、
前記回転引取り機構,回転巻取り機構を備えた装置の前にて、前記成形物に加わる張力を、前記内部導体または心材の伸びが5%以下、0.02%以上になる範囲で調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法。
【請求項5】
前記内部導体または心材は、軟銅線、或いは銀、錫などをメッキした軟銅線、或いは、これらの撚り線であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の製造方法。
【請求項6】
中心に配置される塑性変形可能な内部導体と、前記内部導体の外周に配置される熱可塑性樹脂で形成された螺旋柱状部とを有する熱可塑性樹脂製螺旋状物であって、
前記螺旋柱状部は、前記内部導体が塑性変形するようにした状態で、前記直線柱状部を螺旋状に変形形成し、
当該熱可塑性樹脂を、弗素樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂から選択される誘電率が小さな熱可塑性樹脂とすることを特徴とする熱可塑性樹脂製螺旋状物。
【請求項7】
前記内部導体または心材を囲む前記螺旋柱状部は、前記内部導体の外径と、前記螺旋柱状部の頂点の外接円が囲む空間に対し、前記内部導体の外周に設ける環状部と前記螺旋柱状部とからなる絶縁被覆部の占める部分を除いた部分の割合が50%以上であることを特徴とする請求項6項記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物。
【請求項8】
請求項6又は7記載の熱可塑性樹脂製螺旋状物の外周に、外部シールド、或いは、前記外部シールドに加えてジャケットを設けて同軸ケーブルとすることを特徴とする熱可可塑性樹脂製螺旋状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−221889(P2006−221889A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32534(P2005−32534)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】