説明

熱成形装置、及び熱成形方法

【課題】ロールシートとカットシートを併用する。
【解決手段】加熱手段によりシートを輻射加熱する加熱部と、前記加熱部から前記シートの移送方向の下流側に配置されて前記輻射加熱されたシートを成形する成形部と、を有する熱成形装置であって、シートを前記加熱部から前記成形部に移送する移送手段と、前記加熱手段と前記シートとの間に設けられた遮蔽板と、前記遮蔽板に取り付けられ、該遮蔽板の下流側において輻射加熱されるシートを把持する第一の把持機構と、前記第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられ、前記輻射加熱されるシートを把持する第二の把持機構と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを加熱して成形する熱成形装置及び熱成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱により軟化するシートを用いて容器等の製品を熱成形する熱成形装置が知られている。このような熱成形装置では、シートを加熱する加熱部と、加熱されたシートを成形する成形部とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
熱成形装置で用いられるシートは、その用途に合わせて多種多様な形状ものが用いられる。例えば、ロールシートは、ロール状に巻き取られた状態で使用される連続シートであり、ロール状に巻き取られたシートを引き出しつつ、連続的に熱成形装置に投入して使用される。一方、カットシートは、所定長にカットされたシートであり、1つ1つのカットシートを個別に熱成形装置に投入して、使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−9698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱成形装置では、ロールシートとカットシートを併用して用いることができるものは存在しなかった。熱成形装置に用いられるシートは熱可塑性の性質を備えるため、加熱部により加熱するとシートが収縮等して変形してしまう場合がある。ここで、ロールシートは、ロール状に巻き取られたシートの端を把持して引き出しつつ使用するため、上記のような変形に対応することができる。一方、カットシートは所定長にカットされた形状であるため、加熱による変形を抑制する必要がある。そのため、ロールシートを使用して成形物を製造する場合は、ロールシートに対応した熱成形装置を使用し、カットシートを使用して成形物を製造する場合は、カットシートに対応した熱成形装置を使用する必要があった。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、連続シートとカットシートを併用することができる熱成形装置、及び熱成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、加熱手段によりシートを輻射加熱する加熱部と、前記加熱部から前記シートの移送方向の下流側に配置されて前記輻射加熱されたシートを成形する成形部と、を有する熱成形装置であって、シートを前記加熱部から前記成形部に移送する移送手段と、前記加熱手段と前記シートとの間に設けられた遮蔽板と、前記遮蔽板に取り付けられ、該遮蔽板の下流側において輻射加熱されるシートを把持する第一の把持機構と、前記第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられ、前記輻射加熱されるシートを把持する第二の把持機構と、を有する構成としてある。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明では、加熱手段により連続シートを輻射加熱する加熱部と、該輻射加熱された連続シートを前記加熱部から成形部に移送する移送手段と、前記輻射加熱された連続シートを成形する前記成形部と、を有する熱成形装置のための熱成形方法であって、前記加熱部に設けられる第一の把持機構と、該第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられた第二の把持機構、とでカットシートを把持して前記第一の把持機構と前記第二の把持機構との間のカットシートを前記加熱手段により輻射加熱し、前記カットシートに対する把持を解除した後、前記輻射加熱されたカットシートを前記移送手段により前記成形部に移送し、前記輻射加熱されたカットシートを前記成形部で成形する。
【0009】
上記のように構成された発明では、シートを加熱する加熱部の内部に第一の把持機構を有し、この第一の把持機構から下流側であって、且つ成形部から上流側に第二の把持機構を設けている。そのため、カットシートを用いる場合は、第一の把持機構と第二の把持機構とでカットシートを把持することで、加熱部からの輻射熱によるカットシートの変形を抑制することができる。一方、熱成形に連続シートを用いる場合でも、第一の把持機構と第二の把持機構によりロールシートを把持することとなる。そのため、連続シートとカットシートとを併用して用いることができる。
また、第一の把持機構を加熱部の内部に配置された遮蔽板に取り付けることで、第一の把持機構を取り付けるための取り付け部として遮蔽板を流用することができるため、構成をより簡易にすることが可能となる。
【0010】
ここで、熱成形には、差圧成形やプレス成形が含まれる。前記差圧成形には、真空成形や圧空成形や、真空圧空成形(圧空真空成形)が含まれる。
また、移送路とは、シートが移送手段により移送される経路を意味する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、連続シートとカットシートとを簡易な構成により併用して用いることができる。
また、請求項2に係る発明によれば、シートを間欠供給する熱成形装置においてもロールシートとカットシートとを併用することができ、同一の動作及び条件で熱成形を行うことができる。
そして、請求項3及び請求項4に係る発明によれば、上側把持部を固定構造とすることができ、簡易な構成により本発明を実現することができる。
さらに、請求項5に係る発明によれば、大きさの異なるカットシートに対しても本発明を適用することができる。
また、請求項6に係る発明によれば、成形部の成形によりシートに加わる引張り力からもシートを保持することができる。
請求項7に係る発明によれば、連続シートとカットシートとを併用して用いることが可能な熱成形方法を提供することができる。
請求項8に係る発明によれば、連続シートとカットシートとを併用して用いることが可能な熱成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】熱成形装置100の構成を示す斜視図である。
【図2】熱成形装置100の構成を説明する内部側面図である。
【図3】熱成形装置100の構成を説明するブロック構成図である。
【図4】一例としてクランプ機構14を拡大して示す図である。
【図5】クランプ機構14にクランプされるシートShを説明する上面図である。
【図6】自動モードを説明するフローチャートである。
【図7】自動モードにおけるクランプ機構14とシャッター機構20との動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.熱成形装置の構成:
2.熱成形装置の作用・効果:
3.その他の実施形態:
【0014】
1.熱成形装置の構成:
以下、図を参照して、この発明に係る熱成形装置について説明する。図1は、熱成形装置100の構成を示す斜視図である。また、図2は、熱成形装置100の構成を説明する内部側面図である。また、図3は、熱成形装置100の構成を説明するブロック構成図である。本実施形態では、熱成形装置100は容器を成形する装置として説明を行うが、熱成形装置100により成形される製品はこれに限定されない。
【0015】
図1〜図3に示すように、熱成形装置100は、移送方向に連続した熱可塑性シート(以下、単にシートとも記載する。)を、熱成形して容器を生成するための装置である。即ち、熱成形装置100は、投入口INから投入されたシートを、加熱ゾーン(加熱部)Z1で加熱して軟化させた後、成形ゾーンZ2(成形部)で成形して容器を生成する。そのため、熱成形装置100は、加熱ゾーンZ1にシートShを加熱軟化させる加熱機10と、成形ゾーンZ2に軟化したシートShを成形する成形機30と、を配置している。更に、熱成形装置100は、シートShを各ゾーンに移送するために移送機(移送手段)40と、図示しない容器取り出し機とを備えている。上記した各部は、図3に示すようにマイクロコンピューター60と直接・間接的に接続されており、このマイクロコンピューター60からの制御を受けて一定の駆動を行う。
【0016】
熱成形装置100により成形可能なシートShは、熱可塑性樹脂のような樹脂シート、熱可塑性を示す樹脂以外の熱可塑性シート等を用いることができる。樹脂シートは、熱可塑性樹脂等の樹脂を含むシートであればよく、樹脂のみからなるシートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートShの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等を用いることができる。また、シートShは、シート状ないしフィルム状になっていればよく、熱成形装置100では、ロール状に巻かれたロールシート(連続シート)Sh1と、所定長さでカットされたカットシートの両方をシートShとして用いることができる。シートの厚みは、1〜2mm程度、0.25〜1mm程度等、様々な厚みとすることが可能である。なお、本明細書中で、シートShと記載するときは、ロールシートとカットシートの両者を含む意味で使用し、ロールシートSh1、又はカットシートSh2と記載するときは、記載されたシートのみを意味するものとして使用する。
【0017】
以下、熱成形装置100を構成する各部について詳細な説明を行う。図2に示すように、加熱機10は、加熱ゾーンZ1に配置され、投入口INから投入されるシートShを加熱軟化する。加熱機10は、ヒーター(加熱手段)11と、遮蔽板12、13と、クランプ機構(第一の把持機構)14と、を備えている。
【0018】
ヒーター11は、加熱ゾーンZ1の上側に配置される上ヒーター部11aと、加熱ゾーンZ1の下側に配置される下ヒーター部11bとを備えている。上ヒーター部11aと下ヒーター部11bは輻射ヒーターを同一面上に複数配置して構成され、移送されるシートShの面に対して上方及び下方から輻射熱により加熱を行う。また、上ヒーター部11aと下ヒーター部11bはそれぞれマイクロコンピューター60に接続されており、操作部62の操作に応じて輻射温度を変更することができる。
【0019】
また、加熱ゾーンZ1におけるシートShの移送路上流側(投入口側)には、遮蔽板12、13がヒーター11を隔てるように取り付けられている。遮蔽板12、13は、内部に水などの液体が充填されたウォータージャケットにより構成され、上ヒーター部11a及び下ヒーター部11bに比べて小さな形状である。
遮蔽板12は上ヒーター部11aの一部を、移送されるシートShから隔てるよう、上ヒーター部11aと比べて下側に取り付けられている。また、遮蔽板13は下ヒーター部11bの一部を、移送されるシートShから隔てるよう、下ヒーター部11bに比べて上側に取り付けられている。そのため、シートShが遮蔽板12、13の間を通過する間は、遮蔽板12、13が上ヒーター部11aと下ヒーター部11bとシートShとの間を隔て、シートShに輻射する輻射熱を遮る。
なお、移送路とはシートShが移送機40により移送される経路を意味する。例えば、加熱ゾーンZ1においては、移送路は移送機40により移送されるシートShの軌跡により示される。そのため、この移送路に沿った方向を移送方向と記載し、熱成形装置100の奥行きに平行であって、移送方向と交差する方向を奥行き方向と記載する。
【0020】
さらに、遮蔽板12、13にはシートShの一端をクランプするクランプ機構14が取り付けられている。図4は、一例としてクランプ機構14を拡大して示す側面図である。また、図5は、クランプ機構14を上側から見た上面図である。図に示すように、クランプ機構14は、上側クランプ(上側把持部)15と下側クランプ(下側把持部)16とを備えている。
【0021】
上側クランプ15は、遮蔽板12の下流側端部に取り付けられており、クランプバー15aと、誘導部15bとを備えている。クランプバー15aは、薄板形状であり、下面15a1の長手側を奥行き方向に配置させるとともに、面15a2を遮蔽板12から下方向に延設するよう同遮蔽板12に取り付けられている。また、誘導部15bは、クランプバー15aと比べて上流側に配置されており、シートShの端部をクランプバー15aの下側端部に誘導するよう作用する。また、誘導部15bは下流に移行するに従い下側クランプ16に近づくよう所定角度α(0<α<90の角度)で傾斜する傾斜面15b1と、この傾斜面15b1から露出するコロ部15b2とを備えている。コロ部15b2は傾斜面15b1から露出する複数のローラー(回転部材)により構成されており、傾斜面15b1に移送方向のシート端部が当接すると、ローラーの回転によりシートShを傾斜面に沿わせつつクランプバー15aの下側端部(即ち、下側クランプ16)に誘導する。
なお、誘導部15bの形状としては、コロ部15b2を備えるものに限定されない。例えば、ローラーの代わりに球体を傾斜面15b1から露出させるものであってもよい。
【0022】
また、下側クランプ16は遮蔽板13の下流側端部で上側クランプ15と対向するよう遮蔽板13に取り付けられており、クランプバー16aと、シリンダー16bとを備えている。クランプバー16aは薄板形状であり、下面16a1の長手側を奥行き方向に配置させるとともに、面16a2を遮蔽板13から上方向に延設するようシリンダー16bを介して固定されている。また、シリンダー16bはシリンダロットでクランプバー16aと固定されており、クランプバー16aを上下方向にスライドさせる。例えば、シリンダー16bはエアシリンダーであり、マイクロコンピューター60の制御に応じたエアーの供給によりシリンダーロッドを上下方向にスライドさせる。
【0023】
上側クランプ15及び下側クランプ16は、遮蔽板12、13の被取り付け部に対してそれぞれネジ部材により着脱可能に固定されている。さらに、遮蔽板12、13には移送方向に複数の被取り付け部が形成されている。例えば、取り付け部は、上側クランプ15又は下側クランプ16をネジ止めするための雌ネジ穴である。そのため、クランプ機構14の取り付け位置を変化させることで、クランプ機構14とシャッター機構20との間を移送方向でピッチP1〜P3の間で可変することができる。このピッチP1〜P3は、それぞれカットシートSh2の寸法に対応した長さに応じて設定されている。即ち、ピッチP1は、熱成形装置100で使用可能な最短のカットシートSh2の長さに応じて設定された長さである。同様に、ピッチP3は、熱成形装置100で使用可能な最長のカットシートSh2の長さに応じて設定された長さである。
【0024】
図2、4、5に示すように、加熱ゾーンZ1と成形ゾーンZ2との間には、開閉式のシャッター機構(第二の把持機構)20が設置されている。シャッター機構20は、上シャッター部(第一の下流側把持部)21と下シャッター部22(第二の下流側把持部)とで加熱ゾーンZ1と成形ゾーンZ2との境界を仕切ることで、加熱ゾーンZ1の温度を一定に保つとともに、上シャッター部21と下シャッター部22とでシートShの面を上下方向でクランプして、シートShが成形機30側に引っ張られるのを防止するよう作用する。そのため、シャッター機構20は、本発明の第二の把持機構としても機能する。
【0025】
上シャッター部21は、上シャッター板21aと、この上シャッター板21aを上下方向にスライドさせるシリンダー21bとを備えている。上シャッター板21aは薄板形状であり、下面21a1の長手側を奥行き方向に配置するようシリンダー21bを介して固定されている(図4、5)。また、シリンダー21bは、シリンダーロッドで上シャッター板21aに固定されており、シリンダーの上下動に応じて上シャッター板21aを上下方向にスライドさせる。
【0026】
下シャッター部22は、上シャッター部21と上下方向で対向するよう取り付けられており、下シャッター板22aと、この下シャッター板22aを上下方向にスライドさせるシリンダー22bとを備えている。下シャッター板22aは、薄板形状であり、下面22a1の長手側を奥行き方向に配置するようシリンダー22bに固定されている(図4、5)。また、シリンダー22bは、シリンダーロッドで下シャッター板22aに固定されており、シリンダーの上下動に応じて下シャッター板22aを上下方向にスライドさせる。そのため、上シャッター板21a及び下シャッター板22aがスライドしてシートShの面と当接することで、上下方向からシートShの面をクランプ(把持)する。
【0027】
成形機30は、成形ゾーンZ2に配置され、加熱軟化したシートShを容器の形状に差圧成形する機械である。成形機30は、フレーム31と、図示しないアクチュエーターにより所定の離反位置と近接位置との間で互いに近接・離反可能な上テーブル32と下テーブル33とを備えている。なお、成形機30は差圧成形装置に限定されず、これ以外にもプレス成形装置であってもよい。
【0028】
下テーブル33には、上テーブル32の下面に対向する開口部34aを有する成形用雌型34が取り付けられている。開口部34aは、成形品の形状に応じた形状である。また、開口部34aには吸引孔が形成されており、この吸引孔に接続された図示しない真空ポンプにより開口内部の空気を吸引することができる。
【0029】
上テーブル32の下面には、上下方向に進退可能なロケーター35が取り付けられている。ロケーター35には空気通路が形成されており、図示しない空気ポンプからこの空気通路を通じて圧空が供給される。さらに、ロケーター35の下面には、上下方向に進退可能なプラグ36が取り付けられている。このプラグ36は差圧成形時にシートShを深絞り加工を施すために用いられる。
【0030】
移送機40は、熱成形装置100の加熱ゾーンZ1及び成形ゾーンZ2に配置され、シートShを各ゾーンに間欠的に移送する移送路を形成する。移送機40は、加熱ゾーンZ1から成形ゾーンZ2にかけて延設する1組のベルト機構を、各ゾーンの奥行き方向両端に配置して構成される。ベルト機構は無端状のチェーンベルトと、このチェーンベルトを回転させる回転部とを備え、マイクロコンピューター60の制御に応じて駆動する。また、チェーンベルトにはシートShの両端を把持するクランプ機構が配置されており、このクランプ機構によりシートShを保持しつつチェーンベルトが回転することで、シートShを移送させることができる。一方、熱成形装置100がロールシートSh1を使用する場合、ロール状に巻き取られたシートの端を引き出しつつ投入口INにシートを投入するシート供給機構も移送機40に含まれる。
【0031】
図3に示すように、熱成形装置100は、図示しない基板ボックス内部に、マイクロコンピューター60と、このマイクロコンピューター60からの制御信号を各部に伝える制御基板(図示しない)と、を備えている。更に、マイクロコンピューター60は制御基板を介して、センサー61、操作部62、ヒーター11、クランプ機構14、シャッター機構20、成形機30、移送機40とそれぞれ接続されている。そのため、マイクロコンピューター60は、内部メモリに記録されたプログラムを実行することで、熱成形装置100を、手動モード、自動モード、型替えモードのいずれかの駆動モードで駆動させることができる。
【0032】
ここで、手動モードとは、作業者が操作部62を逐次操作することで、操作に応じて熱成形装置100を駆動させるものである。また、自動モードとは、作業者が操作部62のヒーターセットボタン及び成形ボタンを操作することで、熱成形装置100が熱成形に係る動作を自動で行うものである。そして、型替えモードとは、成形機30の上テーブル32又は下テーブル33に取り付けられた物を取り替えるために、上テーブル32及び下テーブル33等を駆動させるものである。
【0033】
2.熱成形装置の作用・効果:
以下、熱成形装置100の動作説明として、自動モードに従った動作を説明する。図6は、自動モードを説明するフローチャートである。また、図7は、自動モードにおけるクランプ機構14とシャッター機構20との動作を説明する側面図である。即ち、図7Aは、カットシートSh2を用いた場合の動作を示し、図7Bは、ロールシートSh1を用いた場合の動作を示す。以下、主に、熱成形装置100に対してカットシートSh2が投入された場合を例に熱成形装置100の動作を説明するが、適宜、ロールシートSh1を用いた場合の動作を交える。なお、熱成形装置100が、図6に示すフローチャートに示す工程を実行することで、本発明の熱成形方法が実現される。
【0034】
自動モードでは、まず、ステップS1において、マイクロコンピューター60が移送機40を低速で駆動させる。そのため、作業者がカットシートSh2を熱成形装置100の投入口INから投入すると、移送機40がカットシートSh2を加熱ゾーンZ1に移送する。
【0035】
また、ヒーター11と比べて上流側に配置されたセンサー61がカットシートSh2の投入を検出すると(ステップS2:YES)、ステップS3で、マイクロコンピューター60が移送機40を低速駆動と比べて速い速度の高速駆動で駆動させる。以下、ステップS4〜ステップS9では、移送機40はカットシートSh2の移送と停止とを所定周期で繰返すことで間欠動作を実現する。
【0036】
ステップS4で、カットシートSh2が遮蔽板12、13の間を通過し、カットシートSh2の下流側の端部がシャッター機構20の上シャッター部21と下シャッター部22との間を超えるタイミングで、マイクロコンピューター60は移送機40の駆動を停止する。このタイミングは事前に設定されており、マイクロコンピューター60は内部に備えるタイマーをもとにこのタイミングを計時する。なお、カットシートSh2が遮蔽板12、13の間を通過する間、遮蔽板12、13はヒーター11とカットシートSh2とを隔て、カットシートSh2への輻射熱を遮る。一方、カットシートSh2が遮蔽板12、13の間を通過すると、ヒーター11から輻射される輻射熱によりカットシートSh2の温度が上昇する。
【0037】
ステップS5において、マイクロコンピューター60は、クランプ機構14とシャッター機構20とを駆動させて、カットシートSh2をクランプさせる。そのため、図7Aに示すように、カットシートSh2は、2箇所でクランプ機構14とシャッター機構20とにクランプされて保持される。
【0038】
ステップS6において、マイクロコンピューター60は、内部のタイマーを用いて所定時間が経過するまでクランプ機構14及びシャッター機構20によるクランプを保持させる。マイクロコンピューター60がクランプ機構14とシャッター機構20とを保持させる時間は、成形機30による成形時間に応じて設定される。即ち、カットシートSh2がクランプされる間、成形ゾーンZ2において先に投入されたカットシートSh2に対して成形が行われているため、少なくともカットシートSh2に対するクランプはこの時間と比べて長い時間となる。
【0039】
カットシートSh2がクランプされている状態では、遮蔽板12、13はカットシートSh2とヒーター11とを隔てず、カットシートSh2にはヒーター11からの輻射熱が継続的に加えられる。そのため、場合によってはカットシートSh2が軟化し変形が生じる可能性がある。しかしながら、カットシートSh2はクランプ機構14とシャッター機構20により両端をクランプされて保持されているため、変形を抑制することができる。
更に、成形ゾーンZ2に先に投入されたカットシートSh2を成形する間、成形機30の駆動によりカットシートSh2に対して成形機30側に向けた引張り力が生じる場合がある。しかし、カットシートSh2の成形ゾーンZ2側の端部はシャッター機構20のクランプにより保持されているため、カットシートSh2をこの引張り力から保護することができる。
【0040】
そして、所定時間が経過すると(ステップS6:YES)、ステップS7では、マイクロコンピューター60はクランプ機構14及びシャッター機構20によるクランプを解除させる。そして、ステップS8では、マイクロコンピューター60は移送機40を駆動させて、カットシートSh2を成形ゾーンZ2に移送させる。
【0041】
ステップS9において、カットシートSh2が成形ゾーンZ2の成形位置に達するタイミングで、マイクロコンピューター60は、成形機30を駆動させてカットシートSh2に対して差圧成形を行う。具体的には、まず、成形機30は上テーブル32と下テーブル33とを近接位置に移動させる。そのため、ロケーター35の下面に取り付けられたプラグ36がカットシートSh2を成形用雌型34の開口部34a内部に押し込む。さらに、ロケーター35がカットシートSh2の上面と当接することで、カットシートSh2がロケーター35と成形用雌型34とに挟まれ保持される。そして、真空ポンプによる吸引により開口部34aに形成された真空圧、及び空気ポンプから空気通路を通して供給された圧空により、カットシートSh2に対して真空圧空成形(差圧成形)が行われる。なお、差圧成形後の成形品のバリは、図示しないトムソン刃等によりカットされる。
【0042】
以下、上記したステップS1〜S9までの処理は、マイクロコンピューター60に対して動作終了を示す操作入力又は、予め設定された生産数が終了するまで繰返される。
【0043】
一方、シートShとしてロールシートSh1を用いる場合、図6のステップS5において、クランプ機構14とシャッター機構20とは、カットシートSh2の場合と同様、ロールシートSh1を2面でクランプする(図7B)。そして、所定期間が経過した後(ステップS6:YES)、マイクロコンピューター60は、移送機40にロールシートSh1の引き出しを再開させ、成形ゾーンZ2にシートを移送する。そのため、成形ゾーンZ2においてロールシートSh1を用いた差圧成形が行われる。
【0044】
以上説明したように、熱成形装置100では、カットシートSh2を用いて熱成形を行う場合も、ロールシートSh2を用いた場合と同様の動作及び条件により熱成形を行うことができる。このことは、特に、カットシートSh2を用いて数点の試作品を製造した後、ロールシートSh1を用いて多数の製品を製造する場合に特に有効である。即ち、製品の試作段階においては、生産される製品の数はわずかであり、カットシートSh2を用いたほうが材料に要する費用を少なくすることができる。その一方で、カットシートSh2を用いる場合とロールシートSh1を用いる場合とでヒーター11の温度条件を一定にしておくことが望ましいが、輻射熱をカットシートSh2に加え過ぎるとカットシートSh2の変形を生じさせる。そのため、加熱ゾーンZ1の内部にカットシートSh2を把持する機構を設けていない場合、ヒーター11の設定温度をロールシートSh1を用いる場合に比べて低くする必要が生じる。そのため、カットシートSh2を用いる場合と、ロールシートSh1を用いる場合とでヒーター11の温度条件を同じにすることができない場合がある。
【0045】
一方で、本実施形態での熱成形装置100では、クランプ機構14とシャッター機構20によりカットシートSh2を2面でクランプするため、ロールシートSh1を用いた場合とカットシートSh2を用いた場合とで、ヒーター11の温度を同じ値とすることができ、同一の温度条件により製品を製造することができる。また、移送機40においても、カットシートSh2の変形を考慮する必要がないため、ロールシートSh1と同じ間欠動作によりカットシートSh2を移送することができる。
【0046】
また、クランプ機構14を遮蔽板12、13に取り付けることで、加熱機10内部にクランプ機構14を取り付けるための新たな部位を設ける必要がなくなり、簡易な構成によりクランプ機構14を取り付けることができる。
【0047】
さらに、加熱ゾーンZ1と成形ゾーンZ2との間を仕切るシャッター機構20によりシートSの下流側をクランプする構成とすれば、新たなクランプ機構を設ける必要がないため、熱成形装置100をより簡易な構成とすることが可能となる。
【0048】
3.その他の実施形態:
クランプ機構14の上側クランプ15は上下方向にスライドする構成であってもよい。即ち、上側クランプ15がシリンダーを備えることで、上下方向にスライド可能な構成としてもよい。
【0049】
また、シャッター機構20に第二の把持機構の機能を持たせることは一例であり、熱成形装置100がシャッター機構20とは別に第二の把持機構を備えるものであってもよい。
さらに、成形機30により実施される成形方法として差圧成形を用いることは一例である。これ以外にもプレス成形といった、成形前にシートShに加熱を行う成形方法であれば、成形機30がどの様な成形方法を用いるものであってもよい。
【0050】
なお、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10…加熱機、11…ヒーター、11a…上ヒーター部、11b…下ヒーター部、12、13…遮蔽板、14…クランプ機構(第一の把持機構)、15…上側クランプ(上側把持部)、15a…クランプバー、15b…誘導部、15b1…傾斜面、15b2…コロ部、16…下側クランプ(下側把持部)、16a…クランプバー、16b…シリンダー、20…シャッター機構(第二の把持機構)、21…上シャッター部(第一の下流側把持部)、21a…上シャッター板、21b…シリンダー、22…下シャッター部(第二の下流側把持部)、22a…下シャッター板、22b…シリンダー、30…成形機、31…フレーム、32…上テーブル、33…下テーブル、34…成形用雌型、34a…開口部、35…ロケーター、36…プラグ、40…移送機、60…マイクロコンピューター、61…センサー、62…操作部、100…熱成形装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段によりシートを輻射加熱する加熱部と、前記加熱部から前記シートの移送方向の下流側に配置されて前記輻射加熱されたシートを成形する成形部と、を有する熱成形装置であって、
シートを前記加熱部から前記成形部に移送する移送手段と、
前記加熱手段と前記シートとの間に設けられた遮蔽板と、
前記遮蔽板に取り付けられ、該遮蔽板の下流側において輻射加熱されるシートを把持する第一の把持機構と、
前記第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられ、前記輻射加熱されるシートを把持する第二の把持機構と、を有することを特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
前記移送手段は、前記成形部の動作に合わせて前記シートを間欠的に移送することを特徴とする請求項1に記載の熱成形装置。
【請求項3】
前記第一の把持機構は、前記シートの上側に設けられた上側把持部と、前記シートの下側に設けられた下側把持部とで前記シートを把持し、
前記上側把持部は固定構造であって、前記下側把持部は上下方向にスライドする構造であって、
前記上側把持部には前記シートを前記下側把持部側へ誘導する誘導部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱成形装置。
【請求項4】
前記誘導部は、下流側になるほど前記下側把持部に近づく傾斜面と、この傾斜面に設けられた回転部材とを備えることを特徴とする請求項3に記載の熱成形装置。
【請求項5】
前記遮蔽板は、前記第一の把持機構を取り付ける被取り付け部を前記移送方向における複数の位置に備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱成形装置。
【請求項6】
前記第二の把持機構は、前記シートの一面側に設けられた第一の下流側把持部と、前記シートの他面側の設けられた第二の下流側把持部とで前記輻射加熱されるシートを把持することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱成形装置。
【請求項7】
加熱手段により連続シートを輻射加熱する加熱部と、該輻射加熱された連続シートを前記加熱部から成形部に移送する移送手段と、前記輻射加熱された連続シートを成形する前記成形部と、を有する熱成形装置のための熱成形方法であって、
前記加熱部に設けられる第一の把持機構と、該第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられた第二の把持機構、とでカットシートを把持して前記第一の把持機構と前記第二の把持機構との間のカットシートを前記加熱手段により輻射加熱し、
前記カットシートに対する把持を解除した後、前記輻射加熱されたカットシートを前記移送手段により前記成形部に移送し、
前記輻射加熱されたカットシートを前記成形部で成形することを特徴とする熱成形方法。
【請求項8】
加熱手段により連続シートを輻射加熱する加熱部と、該輻射加熱された連続シートを前記加熱部から成形部に移送する移送手段と、前記輻射加熱された連続シートを成形する成形部と、を有する熱成形装置であって、
前記加熱部に設けられる第一の把持機構であって該第一の把持機構の下流側において輻射加熱されるカットシートを把持するための第一の把持機構と、
前記第一の把持機構から下流側であって前記成形部から上流側に設けられ、前記輻射加熱されるカットシートを把持するための第二の把持機構と、を有することを特徴とする熱成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56486(P2013−56486A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196693(P2011−196693)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】