説明

熱硬化性ポリアミド発泡体およびその用途、ならびに熱硬化性ポリアミドの製造方法

本発明に係るポリアミド発泡体は、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを、特定の触媒の存在下で、反応させて得られ、耐熱性(熱分解特性)、モールド成型性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性ポリアミド発泡体およびその用途、ならびに熱硬化性ポリアミドの製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを反応させて得られる熱硬化性ポリアミド発泡体およびその用途、ならびに特定の触媒を用いた熱硬化性ポリアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体として代表的なものに、ポリイソシアネート化合物、およびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを出発物質として得られる軟質ポリウレタン発泡体がある。このポリウレタン発泡体は、モールド成型性やクッション性に優れていることから、広く世の中に普及している。たとえば、自動車用シートやソファーのクッション材料に使われている。しかし、これらの軟質ポリウレタン発泡体は一般的に耐熱性に劣るため、高温(160℃以上)用断熱材等の用途には適していない。従って、これらの発泡体は自動車等の内燃機関のエンジンまわりの制振材・吸音材・緩衝材等に用いることが困難である。
【0003】
そのため、高温(160℃以上)での使用に耐え、制振材・吸音材・緩衝材等の用途に使用可能な軟質の発泡体が望まれており、ポリウレタンよりも一般に耐熱性が良好なポリアミド発泡体に関する検討がなされてきた。
しかし、イソシアネートとカルボン酸の反応は反応速度が遅く、従来の方法では、ポリウレタン発泡体のように、原料を撹拌混合するだけで発泡硬化し、モールド成形性に優れ、高い耐熱性と高い生産性をもつポリアミド発泡体を得ることは実用的には困難であった。
【0004】
一般に、イソシアネートとカルボン酸とを反応させることにより二酸化炭素が発生し、アミド結合が形成されることは周知であり、この反応をポリイソシアネートとポリカルボン酸との反応に適用してポリアミドを製造することは知られている。たとえば、特許文献1(米国特許第4129715号公報)には、シート状熱可塑性ポリエステルアミドがポリエステルポリエーテルジカルボン酸とMDIから得られることが開示されている。
【0005】
また、脂環式または脂肪族カルボン酸と脂環式または脂肪族アルコールとから得られる脂肪族ポリエステルポリカルボン酸と、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートとを反応させて、ポリアミドを生成させると同時に発泡させることにより生分解性の発泡ポリアミドが得られることが知られている(特許文献2(特開平6−9760号公報)参照)。さらに、イソシアネートとカルボン酸とを反応させる際に、アミノ置換ピリジンおよび/または窒素置換イミダゾールを使用することが、生産性を向上させる点で好適であることが知られている(特許文献3(特許第3309980号公報))。
【0006】
特許文献4(英国特許第908337号公報)には、ポリヒドロキシおよび/またはポリカルボキシ化合物とポリイソシアネートとを、イソシアネートのパーハイドロトリアジン環を生成する触媒の存在下で反応させて、軟質または硬質の発泡体を製造する方法が開示されている。
また、特許文献5(米国特許第3620987号公報)には、ポリカルボン酸誘導体および/またはポリカルボン酸無水物と有機ポリイソシアネートとを、4級アミンと脂肪族アルコールとを組み合わせた触媒を用いることにより、高い耐熱性を有し、かつ建築物やパイプラインの空隙部に充填硬化可能な断熱材として用いることができるポリアミドイミドフォームが提案されている。
【0007】
さらに、特許文献6(仏国特許第1.289.074号公報)では、ポリカルボン酸と過剰のポリイソシアナートとをアルカリ金属塩等の触媒を用いてポリアミド発泡体を生産性よく得る技術が開示されている。
特許文献2(特開平6−9760号公報)および特許文献3(特許第3309980号公報)に開示された方法は、簡便にポリアミド発泡体を得ることができる優れた方法である。しかし、特許文献2(特開平6−9760号公報)には、ポリアミド発泡体のモールド成形性と耐熱性を両立できるポリカルボン酸および好適な触媒は開示されておらず、この公報に記載の方法は高耐熱性のポリアミド発泡体を生産する実用的な技術として完成されていなかった。
【0008】
特許文献3(特許第3309980号公報)に開示された方法は、ポリカルボン酸をイソシアネートと反応させ、この反応により生成する二酸化炭素を発泡剤として用いたポリウレタン発泡体の製造技術であり、水酸基を有するポリオールを実質的に全く含まない場合には発泡開始までの時間(クリーム時間)が長く、最も短い場合でも34秒であり、硬化時間は24時間を要するため、実質的にポリカルボン酸のみを用いてポリアミド発泡体を工業的に得ることは難しい。
【0009】
また、特許文献4(英国特許第908337号公報)に開示された技術は、ポリアミド発泡体を生産性よく製造できる優れた方法であるが、ポリエステルポリカルボン酸と発泡硬化時に使用する触媒の特性により、ポリアミド発泡体のモールド成形性と耐熱性を両立できることは開示されていない。
特許文献5(米国特許第3620987号公報)に開示された技術は、高耐熱性のポリアミドイミド発泡体を生産性よく製造できる優れた方法であるが、ポリエステルポリカルボン酸と発泡硬化時に使用する触媒の特性により、ポリアミドイミド発泡体のモールド成形性と耐熱性を両立できることは開示されていない。
【0010】
特許文献6(仏国特許第1.289.074号公報)に開示された技術も、ポリアミド発泡体を生産性よく製造できる優れた方法であるが、ポリエステルポリカルボン酸と発泡硬化時に使用する触媒の特性により、ポリアミド発泡体のモールド成形性と耐熱性を両立できることは開示されていない。
【特許文献1】米国特許第4129715号公報
【特許文献2】特開平6−9760号公報
【特許文献3】特許第3309980号公報
【特許文献4】英国特許第908337号公報
【特許文献5】米国特許第3620987号公報
【特許文献6】仏国特許第1.289.074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐熱性(熱分解特性)、モールド成型性に優れた熱硬化性ポリアミド発泡体およびその製造方法、ならびにこの熱硬化性リアミド発泡体を用いた耐熱性制振材、耐熱性吸音材、耐熱性緩衝材を提供することを目的としている。さらには、クッション性にも優れた熱硬化性ポリアミド発泡体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
本発明に係る熱硬化性ポリアミド発泡体は、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを、NCOインデックスが1.6以上の条件で、P=N結合を有する化合物を触媒として、反応させて得られることを特徴としている。
【0013】
前記ポリエステルポリカルボン酸は、酸価が20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、かつ、水酸基価が前記酸価の1/8以下であることが好ましい。
前記NCOインデックスは2.0以上3.0以下であることが好ましい。
本発明に係る熱硬化性ポリアミドの製造方法は、下記化学式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR1は互いに結合して環構造を形成してもよい。xは含まれる水分子の量をモル比で示し、0〜5.0である。)
で表されるホスフィンオキシド化合物、または
下記化学式(2)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、nは1〜8の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を酸素原子または窒素原子上に有する活性水素化合物からn個のプロトンが離脱して導かれる形のn価の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ独立に3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。R2はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)で表される活性水素化合物のホスファゼニウム塩、または
下記化学式(3)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Meはメチル基を表す。a’、b’、c’およびd’はそれぞれ独立に0または1であるが、全てが同時に0ではない。)
で表される水酸化ホスファゼニウムを用いて、ポリイソシアネート化合物とポリカルボン酸とを反応させることを特徴としている。
また、本発明に係る熱硬化性ポリアミド発泡体は、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを反応させて得られる熱硬化性ポリアミド発泡体であって、該熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒を用いて上記反応をさせることにより得られることを特徴としている。
【0020】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度は、130℃以上かつ熱硬化性ポリアミド発泡体の分解温度未満であることが好ましい。
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と、3級アミン化合物触媒とを併用することが好ましい。
また、前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と、カルボン酸のアルカリ金属塩触媒および/またはカルボン酸のアルカリ土類金属塩触媒とを併用することも好ましい。
【0021】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と併用する触媒の使用量は、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒の使用量の50重量%未満であることが好ましい。
本発明に係る耐熱性制振材、耐熱性吸音材、耐熱性緩衝材は、上記熱硬化性ポリアミド発泡体からなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐熱性(熱分解特性)、モールド成型性に優れた発泡体を得ることができる。また、本発明によれば、ガラス転移温度の低い軟質発泡体であっても耐熱性(熱分解特性)に優れた発泡体が得られ、しかもクッション性に優れた発泡体が得られるため、本発明に係る発泡体は軟質発泡体として有効である。
特に、特定のポリエステルポリカルボン酸を選択すると、耐熱性(熱分解特性)に優れ、しかもクッション性等の軟質発泡体としての特性に優れた熱硬化性ポリアミド発泡体が得られ、自動車のエンジンまわり、排気管まわりの制振材・吸音材・緩衝材に適用できる。さらに、モールド成型性に優れているため目的の形状の成形物が容易に生産でき、上記の制振材、吸音材、緩衝材として広く利用することができる。また、航空機や船舶等の内燃機関を有するものなど広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施例2で製造された熱硬化性ポリアミド発泡体および比較例1で製造されたポリウレタン発泡体についての熱減量測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る発泡体は、出発物質としてポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを用い、特定の触媒存在下で反応させることを特徴としている。この発泡体は、発泡体としての特性を損なわない程度に、イソシアヌレート、ポリ尿素、ポリイミド、カルボジイミドを含んでいてもよい。また、耐熱性を損なわない程度に、エーテル結合、ウレタン結合を含んでいてもよい。
【0025】
本発明に係る熱硬化性ポリアミド発泡体の原料として用いられるポリエステルポリカルボン酸は、ポリカルボン酸とグリコールとを公知の方法によって脱水縮合して得ることができる。この脱水縮合反応は、窒素ガス等の不活性ガス中において、たとえば、無溶剤下高温重縮合、溶液重縮合等の公知の方法により行うことができる。
上記ポリカルボン酸としては、その分子中に2つ以上のカルボキシル基を有するものであれば特に制限されないが、通常炭素数が2〜12のポリカルボン酸を用いることが好ましく、中でも耐熱性の観点からエーテル結合を含まないものがより好ましい。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などが挙げられ、これらを単独もしくは2つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記グリコールとしては、その分子中に2つ以上の水酸基を有するものであれば特に制限は無いが、通常炭素数1〜12のグリコールを用いることができ、中でも耐熱性の観点からエーテル結合を含まないものが好ましい。また、脱水縮合工程において溶媒等の使用を避け、かつ公知の方法で容易に脱水縮合させるために、常温において液体であり、かつ沸点が185℃以上であるものが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち、1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられ、これらを単独もしくは2つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記ポリエステルポリカルボン酸の酸価、水酸基価および粘度等の物性は、通常の発泡体を得るために使用する場合には特に制限されないが、軟質発泡体を得るために使用する場合には、イソシアネート基とカルボキシル基との反応性、モールド成形性、クッション性の点から、酸価が20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であるものが特に好ましい。
【0028】
また、耐熱性の点から、水酸基価が酸価の1/8以下であるものが好ましく、より好ましくは1/9以下である。また、モールド成形性の点から、粘度が温度80℃で2500mPa・s以下であるものが好ましく、より好ましくは1800mPa・s以下である。
ポリエステルポリカルボン酸を得る際の脱水縮合反応において、ポリカルボン酸およびグリコールの使用割合は、特に制限されないが、前記範囲の酸価および水酸基価を得るためには、カルボン酸のカルボキシル基とグリコールの水酸基とのモル比(カルボキシル基/水酸基)で1.05以上1.4以下とすることがよく、好ましくは1.1以上1.4以下がよい。上記モル比が上記下限未満であると水酸基価を十分小さくできず、また、酸価が下がり過ぎることがある。一方、上記モル比が上記上限を超えると未反応な酸モノマーが残り特性悪化の原因となることがある。
【0029】
反応温度は、反応性の点から200℃以上270℃以下が好ましく、更に好ましくは220℃以上250℃以下である。
上記脱水縮合反応は、無触媒でも進行するため、重合触媒を使用しなくてもよいが、重合触媒の添加は反応の進行が速くなる点で好ましい。ここで使用される重合触媒としては、チタン系触媒、錫系触媒、具体的にはジブチル錫オキサイドが挙げられるが、これに限定されるものではない。重合触媒を添加する場合、その添加量は反応後に得られるポリエステルポリカルボン酸100重量部に対して1.0重量部以下であることが好ましい。なお、触媒添加量の下限値は、触媒作用が発現される量であれば特に制限されないが、たとえば0.01重量部が好ましい。
【0030】
本発明に係る熱硬化性ポリアミド発泡体の製造に使用されるポリイソシアネート化合物は特に限定されず、たとえば、炭素数が3〜12であり、少なくとも2つのイソシアネート基を有するものが例示できる。具体的には、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、前記トリレンジイソシアネートと前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとの混合物も使用できる。
【0031】
これらのうち、イソシアネート基とカルボキシル基との反応性または発泡時のキュア性の点から、ポリイソシアネート化合物として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物等の芳香族ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に係る発泡体は、ポリエステルポリカルボン酸、ポリイソシアネート、発泡触媒、および必要に応じて整泡剤やその他の成分を用いて、反応、発泡させることによって製造され、好ましくは、金型内でモールド発泡させることによって製造できる。前記その他の成分としては、たとえば、水や、添加剤(たとえば、難燃剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤)等が挙げられる。これらの添加剤としては公知の化合物が利用できる(たとえば、松平信孝、前田哲郎共編、「ポリウレタン」第8刷134−137、槙書店(1964)参照)。
【0033】
本発明に係る熱硬化性ポリアミド発泡体の製造において、NCOインデックスは、1.6以上であることが好ましく、より好ましくは、2.0以上である。NCOインデックスを1.6以上にするとカルボキシル基とイソシアネート基との反応速度が速く、より高速度でモールド成型性することができ、より良好な発泡体が得られる。また、ヌレート結合をバランスよく形成することができ、より耐熱性に優れた発泡体が得られる。特に、軟質発泡体を得る際には、耐熱性、モールド成型性とクッション性の点から、NCOインデックスは、2.0〜3.0が望ましい。
【0034】
なお、本発明においてNCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、ポリエステルポリカルボン酸のカルボキシル基や水酸基、架橋剤等のアミノ基および水等の、イソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値を意味する。たとえば、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基数が化学量論的に等しい場合、そのNCOインデックスは1.0である。
【0035】
前記ポリエステルポリカルボン酸およびポリイソシアネートは発泡直前で混合することが好ましい。前記その他の成分は必要に応じてポリエステルポリカルボン酸と予め混合することが好ましく、これらの混合物は混合後直ちに使用しても、貯留し必要量を適宜使用してもよい。前記その他の成分の組み合わせ、混合順序、混合後の貯留時間等は適宜決定することができる。このような混合物のうち、ポリエステルポリカルボン酸とその他の成分との混合物、すなわち、ポリエステルポリカルボン酸と発泡触媒、必要に応じて整泡剤、水、およびその他添加剤(難燃剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等)を混合したものをレジンプレミックスと呼称することがある。これらの組成は、所望の軟質発泡体の特性によって適宜設定することができる。こうして得られたレジンプレミックスを、ポリイソシアネートと反応させることにより、本発明に係る発泡体が得られる。
【0036】
前記レジンプレミックスの粘度は、発泡機での混合性、モールド成型性の観点から、温度80℃で2500mPa・s以下であることが好ましい。
ポリエステルポリカルボン酸とポリイソシアネートとの混合方法は、ダイナミックミキシング、スタティックミキシングのいずれでもよく、また両者を併用してもよい。ダイナミックミキシングによる混合方法としては攪拌翼等により混合する方法が挙げられる。また、スタティックミキシングによる混合方法としては発泡機のマシンヘッド混合室内で衝突混合させる方法やスタティックミキサー等を用いて送液配管内で混合する方法等が挙げられる。
【0037】
混合温度は、所望の発泡体の要求品質、ポリエステルポリカルボン酸やレジンプレミックスの性状によって必要に応じて任意に設定することができるが、好ましくは室温以上90℃以下がよい。
混合時の圧力は目的の発泡体の要求品質、ポリエステルポリカルボン酸やレジンプレミックスの性状によって必要に応じて任意に設定することができる。加熱硬化に要する温度は、ヒートショックを起こさない範囲内であれば適宜選択できるが、好ましくは120℃以下が好ましい。また、加熱硬化に要する時間は、実用上は15分以下が望ましい。
【0038】
本発明においては、ポリエステルポリカルボン酸または水とイソシアネートとが反応して生成する脱炭酸ガスにより発泡させることが可能であり、この方法が好ましいが、必要に応じて公知の水以外の化学発泡剤または物理発泡剤を使用してもよい(たとえば、松平信孝、前田哲郎共編、「ポリウレタン」第8刷134−135、槙書店(1964)参照)。
【0039】
本発明では、熱硬化性ポリアミド発泡体の製造に使用される発泡触媒として、P=N結合を有する化合物を使用することが好ましい。この化合物を用いると、イソシアネート基とカルボキシル基との反応性が高くなり、効率的に熱硬化性ポリアミドを製造でき、その結果、前記加熱硬化に要する時間を15分以下にすることができ、モールド成型性が良好となる。また同時に、ヌレート結合が形成されるため、耐熱性に優れ、さらには難燃性に優れた発泡体が得られる。
【0040】
また、本発明では、熱硬化性ポリアミド発泡体の製造に使用される発泡触媒として、得られる熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒を使用することもできる。このような特性を持つ化合物を使用すると熱硬化性ポリアミド発泡体の耐熱性(10%重量減少時の温度)が向上する。
上記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度は、130℃以上、かつ、上記熱硬化性ポリアミド発泡体の分解温度未満であることが好ましく、特に160℃以上での使用に好適である。なお、上記熱硬化性ポリアミドの分解温度はおよそ250℃から300℃程度である。
【0041】
本発明では、上記発泡触媒として、熱分解温度が室温以上200℃以下の化合物を使用することが好ましい。熱分解温度が200℃以上の触媒を用いると熱硬化性ポリアミド発泡体の耐熱性(10%重量減少時の温度)が低下することがある。上記発泡触媒として、さらに好ましくは熱分解温度が180℃以下の化合物、最も好ましくは160℃以下の化合物を用いることが望ましい。
【0042】
このような発泡触媒の使用量は、ポリエステルポリカルボン酸100重量部に対して0.005重量部〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.01重量部〜10重量部である。
また、硬化時間を短縮する目的で、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する前記触媒と、3級アミン化合物触媒やカルボン酸のアルカリ金属塩触媒および/またはカルボン酸のアルカリ土類金属塩触媒とを併用することも好ましい。
【0043】
この場合、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する前記触媒と併用する触媒の使用量は、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する前記触媒の使用量の50重量%未満であることが好ましい。併用する触媒の使用量が上記上限より多くなると熱硬化性ポリアミド発泡体の耐熱性(10%重量減少時の温度)が低下することがある。
【0044】
本発明に係る発泡体は、上記ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒、好ましくは熱分解温度が室温以上200℃以下の触媒を用いて、反応、発泡させることにより製造できるが、さらに、下記の熱硬化性ポリアミドの製造方法を適用し、ポリカルボン酸として上記ポリエステルポリカルボン酸を用いて製造することが望ましい。
【0045】
本発明に係る熱硬化性ポリアミドの製造方法は、
下記化学式(1)
【0046】
【化4】

【0047】
(式中、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR1は互いに結合して環構造を形成してもよい。xは含まれる水分子の量をモル比で示し、0〜5.0である。)
で表されるホスフィンオキシド化合物、または
下記化学式(2)
【0048】
【化5】

【0049】
(式中、nは1〜8の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を酸素原子または窒素原子上に有する活性水素化合物からn個のプロトンが離脱して誘導される、n価の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ独立に3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。R2はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)
で表される活性水素化合物のホスファゼニウム塩、または
下記化学式(3)
【0050】
【化6】

【0051】
(式中、Meはメチル基を表す。a’、b’、c’およびd’はそれぞれ独立に0または1であるが、全てが同時に0ではない。)
で表される水酸化ホスファゼニウムを触媒として、ポリイソシアネート化合物とポリカルボン酸とを反応させることを特徴としている。
上記ホスフィンオキシド化合物、ホスフィンオキシド化合物およびホスファゼニウム塩のいずれかを触媒として用いることにより、イソシアネート基とカルボキシル基との反応性が極めて高くなるとともに、ヌレート結合の生成をより効率的に進めることができるようになり、耐熱性に優れ、また同時にクッション性等の軟質発泡体としての特性にも優れた、好適な軟質ポリアミド発泡体を製造することができる。
【0052】
前記化学式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物としては、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド、トリス(トリピロリジノホスホラニリデンアミノ)ホスフィンオキシド、トリス(トリピペリジノホスホラニリデンアミノ)ホスフィンオキシド等が挙げられ、好ましくはトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスフィンオキシドが用いられる。
【0053】
また、前記化学式(2)で表される活性水素化合物のホスファゼニウム塩としては、ジメチルアミノトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロライド、ジエチルアミノトリス[トリス(ジエチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムテトラフルオロボレート等が挙げられ、好ましくはテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロライドが用いられる。
【0054】
また、前記化学式(3)で表される水酸化ホスファゼニウムとしては、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、(ジメチルアミノ)トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドが挙げられ、好ましくはテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドが用いられる。
【0055】
本発明では、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する上記発泡触媒、好ましくは、前記P=N結合を有する化合物とともに、ポリウレタンフォームの製造に際して用いられる触媒として従来公知のものが併用できる(たとえば、松平信孝、前田哲郎共編、「ポリウレタン」第8刷127−129、槙書店(1964)参照)。具体的には、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチルエーテル)、モルホリン類等の脂肪族アミン類;オクタン酸スズやジブチルチンジラウレイト等の有機錫化合物;酢酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩;ポリエステルポリカルボン酸のセシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等のポリカルボン酸のアルカリ金属塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のカルボン酸のアルカリ土類金属塩;ポリエステルポリカルボン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサハイドロトリアジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等の3級アミン系触媒;カルボン酸と3級アミンとからなる4級アンモニウム塩、イミダゾール等が併用できる。これらの従来公知の触媒は、単独、または複数種を組み合わせて、上記発泡触媒と併用できる。
【0056】
また、従来公知の触媒を併用する場合、その使用量は熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する上記発泡触媒の50重量%未満が好ましく、ポリエステルポリカルボン酸100重量部に対して0.005重量部〜10重量部がより好ましい。
本発明に係る熱硬化性ポリアミドの製造方法が特定の触媒を使用することを特徴としていることから明らかなように、上記ポリイソシアネート化合物およびポリカルボン酸は特に限定されるものではないが、ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、前述したポリイシシアネート化合物に加えて、ナフタレン1,5ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等を用いることができる。また、これらのポリイシシアネート化合物と、フェニルイソシアネート、イソホロンイソシアネート等のモノイソシアネートとを併用することもできる。また、ポリカルボン酸としては、前述したポリエステルポリカルボン酸およびポリカルボン酸に加えて、これらと同様のものが使用でき、さらにこれらとモノカルボン酸とを併用することもできる。
【0057】
上記熱硬化性ポリアミドの製造方法は、本発明に係る発泡体を製造するに際して好適に利用できる方法である。上記方法により熱硬化性ポリアミド発泡体を製造すると、耐熱性の向上、加熱硬化時間の短縮によるモールド成型性の向上を図ることができる。
本発明により得られた発泡体の見掛け密度は、目的の発泡体の要求品質に応じて任意に設定することができる。たとえば、軟質発泡体の場合、見掛け密度は、通常10kg/m3以上150kg/m3以下に設定される。
【0058】
本発明により得られた発泡体の耐熱性は、JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に従い、流入ガスが乾燥空気、流入ガス量が200ml/分、加熱速度が10℃/分の条件で熱重量を測定し、下記式に従って算出される質量減少率ML(%)により評価される。
L=(m0−mt)/m0×100
ここに、m0は加熱前の質量(mg)、mtは加熱後温度t(℃)のときの質量(mg)を示す。
【0059】
本発明により得られた発泡体は、以下のような優れた耐熱性(熱分解特性)を有する。すなわち、質量減少率ML(%)が10%のときの温度tが320℃以上、好ましくは325℃以上、更に好ましくは330℃以上を有する。
[実施例]
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以降「部」は、特に断らない限り、「重量部」を表わす。
【0060】
また、実施例、比較例における分析、測定は以下の方法に従って行った。
(1)ポリエステルポリカルボン酸、ポリエステルポリオール、発泡触媒の特性
(i)酸価:ポリエステル樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で定義され、測定方法はJISK6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」、5.3項「酸価」に従った。
(ii)水酸基価:ポリエステル樹脂1gのアセチル化で発生する酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で定義され、測定方法はJISK6901、5.4項「水酸基価」に従った。
(iii)粘度:JISK6901、5.5.1項「ブルックフィード形粘度計法」に従い、同表6「粘度計の種類と特性」に示されるタイプI、B形粘度計、B8Mを用いて測定した。
(iv)発泡触媒の熱分解温度:JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に従い、流入ガス:乾燥空気、流入ガス量:200ml/分、加熱速度:10℃/分の条件で熱重量を測定し、質量減少率ML(%)を以下の式に従って算出し、この質量減少率ML(%)が2%のときの温度で表した。
L=(m0−mt)/m0×100
ここに、m0は加熱前の質量(mg)、mtは加熱後温度t(℃)のときの質量(mg)を示す。
(2)発泡体特性
(i)耐熱性:JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に従い、流入ガスは乾燥空気、流入ガス量は200ml/分、加熱速度は10℃/分、の条件で測定し、質量減少率ML(%)を以下の式に従って算出し、この質量減少率ML(%)が10%のときの温度で表した。
L=(m0−mt)/m0×100
ここに、m0は加熱前の質量(mg)、mtは加熱後温度t(℃)のときの質量(mg)を示す。
(ii)下記のクッション性等軟質発泡体としての特性:JIS K6400「軟質ウレタンフォーム試験方法」に従い、測定した。
・見掛け密度:測定に際して、成形した軟質発泡体のコア部を50mm×50mm×25mmに切り抜き、使用した。
・圧縮残留ひずみ:測定に際して、成形した軟質発泡体のコア部を50mm×50mm×25mmに切り抜き、使用した。試験片を50%の厚みまで圧縮した。
・引張強さおよび伸び:JIS K6400に従い、1号形を用いて測定した。
・引裂強さ:JIS K6400に従い、1号形を用いて測定した。
・湿熱圧縮残留ひずみ:測定に際して、成形した軟質発泡体のコア部を50mm×50mm×25mmに切り抜き、使用した。試験片を50%の厚みまで圧縮した。
(3)イソシアネート基含有率:JIS K1603「ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート試験方法」の5.3項「イソシアネート基含有率」に従い、測定した。
【0061】
<ポリエステルポリカルボン酸の製造例>
(製造例A−1)
還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置が取り付けられた重合釜に、ネオペンチルグリコールとアジピン酸とをモル比10:11で、およびジブチル錫オキサイドを反応終了時のポリエステルポリカルボン酸生成量100部に対して0.075部を仕込み、窒素を導入しながら、180℃〜260℃で脱水縮合を行った。反応生成物の酸価、水酸基価が所定の値に達したところで反応生成物を重合釜より抜き出し、冷却して、ポリエステルポリカルボン酸A−1を得た。得られたポリエステルポリカルボン酸A−1の物性値を表1に示す。
【0062】
(製造例A−2)
表1に示す、カルボン酸、グリコール、重合触媒の種類および量(モル比)で製造した以外は、ポリエステルポリカルボン酸A−2を製造した。得られたポリエステルポリカルボン酸A−2の物性値を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
<ポリエステルポリオールの製造例>
(製造例B−1)
表2に示す、カルボン酸、グリコール、重合触媒の種類および量(モル比)で製造した以外は、製造例A−1と同様にして、ポリエステルポリオールB−1を製造した。得られたポリエステルポリオールB−1の物性値を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
<ジフェニルメタンジイソシアネートの混合例>
(製造例D−1)
温度70℃に温めた三井武田ケミカル(株)製ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのコスモネートM200(イソシアネート基含有率は31.5%)を30部と、温度70℃に温めた三井武田ケミカル(株)製ジフェニルメタンジイソシアネートのコスモネートPH(イソシアネート基含有率は33.6%)を20部と、温度70℃に温めた三井武田ケミカル(株)製ジフェニルメタンジイソシアネートのo−MDI(イソシアネート基含有率は33.6%)50部とを攪拌混合後、冷却して、混合ジフェニルメタンジイソシアネートD−1を得た。イソシアネート基含有率は33.0%となった。
【0067】
[実施例1]
製造例A−1で得たポリエステルポリカルボン酸A−1を100部、および発泡触媒としてトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスフィンオキシドを2.6部混合してレジンプレミックスを調製した。このレジンプレミックスに製造例D−1で得た混合ジフェニルメタンジイソシアネートD−1をNCOインデックスが2.0となるように高圧発泡機(Gusmer Admiral社製)を用いて80℃で混合し、直ちに予め80℃に調整した内寸400×400×100mmの金型へ、吐出圧力10〜15N/cm2、吐出量20kg/分で吐出、注入し、蓋を閉めて発泡させた。100℃の熱風オーブン中で15分間加熱硬化した後、軟質ポリアミド発泡体を金型より取り出した。得られた軟質ポリアミド発泡体の物性値を表3に示す。
【0068】
[実施例2〜6]
表3に示す、ポリエステルポリカルボン酸、ポリイソシアネート、整泡剤、発泡触媒の種類および量(部数)、ならびにNCOインデックス、混合温度、加熱硬化条件で発泡した以外は、実施例1と同様にして、軟質ポリアミド発泡体を製造した。得られた軟質ポリアミド発泡体の物性値を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
[比較例1]
製造例B−1で得たポリエステルポリオールB−1を100部、整泡剤として日本ユニカー(株)製L532を1.5部、発泡触媒としてトリエチレンジアミンを2部、および水を3部混合してレジンプレミックスを調製した。このレジンプレミックスに製造例D−1で得た混合ジフェニルメタンジイソシアネートD−1をNCOインデックスが1.1となるように高圧発泡機(Gusmer Admiral社製)を用いて80℃で混合し、直ちに予め80℃に調整した内寸400×400×100mmの金型へ、吐出圧力10〜15N/cm2、吐出量20kg/分で吐出、注入し、蓋を閉めて発泡させた。100℃の熱風オーブン中で15分間加熱硬化した後、軟質ポリウレタン発泡体を金型より取り出した。得られた軟質ポリウレタン発泡体の物性値を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
[比較例2〜4]
表5に示す、ポリエステルポリカルボン酸、ポリイソシアネート、整泡剤、発泡触媒の種類および量(部数)、ならびにNCOインデックス、混合温度、加熱硬化条件で発泡した以外は、実施例1と同様にして、軟質ポリアミド発泡体を得た。得られた軟質ポリアミド発泡体の物性値を表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
(耐熱性、熱重量測定による熱減量評価)
実施例2で製造されたポリアミド発泡体および比較例1で製造されたポリウレタン発泡体について、JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に従って測定した熱減量のグラフを図1に示す。図1において、横軸は加熱後温度t(℃)、縦軸は残量率M’L=mt/m0×100(%)を示す。
ここに、m0は加熱前の質量(mg)、mtは加熱後温度t(℃)のときの質量(mg)を示す。
【0075】
このグラフから実施例2のポリアミド発泡体は比較例1のポリウレタン発泡体に比べて30℃以上耐熱性に優れていることが判る。
(評価結果)
実施例により、ポリイソシアネート化合物およびポリエステルポリカルボン酸を、NCOインデックスが1.6以上の条件で、P=N結合を有する化合物を触媒として反応させて軟質のポリアミド発泡体を形成することにより、耐熱性、モールド成型性(加熱硬化時間15分以内)およびクッション性等に優れた軟質の発泡体を得ることができることが示された。そして、その軟質ポリアミド発泡体の耐熱性は、熱重量測定における質量減少率が10%のときの温度が320℃以上であり、ポリウレタン発泡体に比べて十分に優れていることが示された。
【0076】
また、発泡触媒として熱分解温度の高い触媒を使用した場合、軟質ポリアミド発泡体の耐熱性が低下することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
自動車のエンジンまわり、排気管まわりの制振材・吸音材・緩衝材に適用できる。また、航空機等内燃機関を有する機械のエンジンまわり等に広く提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを、NCOインデックスが1.6以上の条件で、P=N結合を有する化合物を触媒として、反応させて得られる熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項2】
前記ポリエステルポリカルボン酸が、酸価が20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、かつ、水酸基価が前記酸価の1/8以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項3】
前記NCOインデックスが2.0以上3.0以下であることを特徴とする請求項1または2記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項4】
下記化学式(1)
【化7】

(式中、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR1は互いに結合して環構造を形成してもよい。xは含まれる水分子の量をモル比で示し、0〜5.0である。)
で表されるホスフィンオキシド化合物、または
下記化学式(2)
【化8】

(式中、nは1〜8の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を酸素原子または窒素原子上に有する活性水素化合物からn個のプロトンが離脱して導かれる形のn価の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ独立に3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。R2はそれぞれ独立に炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)で表される活性水素化合物のホスファゼニウム塩、または
下記化学式(3)
【化9】

(式中、Meはメチル基を表す。a’、b’、c’およびd’はそれぞれ独立に0または1であるが、全てが同時に0ではない。)
で表される水酸化ホスファゼニウムを用いて、ポリイソシアネート化合物とポリカルボン酸とを反応させることを特徴とする熱硬化性ポリアミドの製造方法。
【請求項5】
ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリカルボン酸とを反応させて得られる熱硬化性ポリアミド発泡体であって、該熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒を用いて上記反応をさせることにより得られる熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項6】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度が、130℃以上かつ該熱硬化性ポリアミド発泡体の分解温度未満であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項7】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と、3級アミン化合物触媒とを併用することを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項8】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と、カルボン酸のアルカリ金属塩触媒および/またはカルボン酸のアルカリ土類金属塩触媒とを併用することを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項9】
前記熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒と併用する触媒の使用量が、熱硬化性ポリアミド発泡体の使用温度で実質的に分解する触媒の使用量の50重量%未満であることを特徴とする請求項7または8に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体。
【請求項10】
請求項1または5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体からなる耐熱性制振材。
【請求項11】
請求項1または5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体からなる耐熱性吸音材。
【請求項12】
請求項1または5に記載の熱硬化性ポリアミド発泡体からなる耐熱性緩衝材。


【図1】
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【国際公開番号】WO2005/066235
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516879(P2005−516879)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000067
【国際出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】