説明

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】透明性、平坦化能に優れ、特に高い耐熱温度性、耐黄変性を有しており、機能性膜特に着色樹脂膜の保護膜として好適な熱硬化性樹脂組成物の開発。
【解決手段】(A)下記式(1)で示される化合物の自己縮合物、及び/又は下記式(1)で示される化合物と下記式(2)で示される化合物との共縮合物、(B)カルボン酸無水物並びに(C)溶剤を含有する、特に着色樹脂膜の保護膜として好適な熱硬化性樹脂組成物を使用することにより解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護膜形成用に好適に使用される熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。更に詳しくは、ガラス基板等の表面に形成された機能性膜(例えばカラーフィルター等の着色樹脂膜)上に設けられる保護膜として好適なエポキシ系熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子に多用されているカラーフィルターは、その製造工程中に、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬されたり、電極としてのITO(Indium Tin Oxide)層形成時にスパッタリングにより素子表面が局部的に高温に曝されたりする。このような過酷な条件から素子の劣化や損傷を防止するために、これらに対する耐性を付与する為の保護膜の形成が一般的に行われている。又、液晶表示素子に高視野角化、高速応答化などの高性能化が要求される場合には、カラーフィルターの平坦性の向上が特に重要となるため、平坦化能の高い保護膜を設けることが必要とされる。更に、このような保護膜には、液晶に対する汚染度が低いこと、平滑性に優れていること、保護膜を形成する基材及び保護膜上に形成される層に対する密着性が良好であること、液晶表示の明るさを低下させないよう可視光透過率が高いこと、保護膜自体に着色、白化、黄変等の経時変化のないこと、衝撃、歪など物理的な力に耐えられる靭性を有すること等が要求される。
【0003】
従来、カラーフィルターの保護膜用材料としては、グリシジル基を有する重合体を含む熱硬化性樹脂組成物(特許文献1)やポリオルガノシロキサンと、カルボン酸無水物を用いた保護膜(特許文献2)等が検討されているが、これらは平坦化能が不十分であり、未だ満足できる材料ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−083248号公報
【特許文献2】特開2006−195420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記したような従来技術における欠点を改善した機能性保護膜用樹脂組成物、即ち密着性、可視光透過性等を満足し、かつ基材表面の平坦化能、表面平滑能の高い保護膜を形成することが出来るとともに、特に液晶表示用カラーフィルター着色樹脂膜の保護膜として使用した場合の、高温耐性に優れた保護膜形成用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の骨格を有するエポキシ基を有するケイ素化合物の縮合物、特定のカルボン酸無水物等を含有する熱硬化性エポキシ系樹脂組成物が上記課題を満足するものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)(A)下記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物の自己縮合物、及び/又は下記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と下記式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物との共縮合物、
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)及び式(2)において、XはC2〜C5のアルキレン基を、R1及びR2はC1〜C4のアルキル基を、Zはメチル基又はフェニル基をそれぞれ表す。)
(B)下記式(3)及び(4)で示されるカルボン酸無水物から選択される一種又は二種
【0010】
【化2】

【0011】
並びに(C)溶剤を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物、
(2)(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる機能性膜用保護膜剤、
(3)機能性膜が着色樹脂膜である(2)に記載の機能性膜用保護膜剤、
(4)(2)又は(3)に記載の機能性膜用保護膜剤を熱硬化させて得られる樹脂硬化膜、
(5)(4)に記載の樹脂硬化膜を有するカラーフィルター、
(6)(5)に記載のカラーフィルターを備えた液晶表示装置、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ系熱硬化性樹脂組成物は、透明性、平坦化能に優れる上、特に高い耐熱性を有しており、高温における安定性が高く、着色樹脂膜の保護に有利で、特に液晶表示装置に使用されるカラーフィルターの製造においてその信頼性を飛躍的向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
まず本発明で使用される下記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物の自己縮合物、及び/又は式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と下記式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物との共縮合物(A)について説明する。
【0014】
【化3】

【0015】
(式(1)及び式(2)において、XはC2〜C5のアルキレン基を、R1及びR2はC1〜C4のアルキル基を、Zはメチル基又はフェニル基をそれぞれ表す。)
式(1)におけるXの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンが挙げられ、好ましいものはエチレンである。また、式(1)及び式(2)におけるR1及びR2の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルが挙げられ、好ましいものはメチル、エチルである。
【0016】
式(1)で示されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物の具体例としては2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち好ましいものは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
【0017】
又、式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物の具体例としてはフェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち好ましいものはフェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランである。
上記式(1)乃至式(2)で示されるケイ素化合物はいずれも市場から容易に入手が可能である。
【0018】
本発明で使用される縮合物(A)としては、上記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物の自己縮合物であっても、式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と上記式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物との共縮合物であっても、いずれでもよい。式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物の両者を使用して共縮合物を調製する場合は、式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物の合計モル数に対して式(2)で示される化合物のモル数が80モル%未満になるような割合で共縮合物を調製するのが好ましい。また、縮合物(A)としては、上記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物の自己縮合物と、式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と上記式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物との共縮合物を併用することも出来る。
【0019】
前記自己又は共縮合物は、アルカリ剤及び水の存在下、前記の各原料化合物の混合物を加熱して脱アルコ−ル化反応及び脱水反応を起こさせることにより進行する。この縮合反応において使用する水の量は、反応系全体のアルコキシ基1モルに対して、通常0.1〜1.5モル、好ましくは0.2〜1.2モルである。又、この自己又は共縮合に使用されるアルカリ剤としては、水中で塩基性を示す化合物であれば何れも使用する事が出来る。使用しうるアルカリ剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩等の無機塩基;アンモニア;トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機塩基を使用することができる。これらの中でも、反応生成物から触媒の除去が容易である点で無機塩基又はアンモニアの使用が好ましい。これらのアルカリ剤の添加量は、反応系中の原料ケイ素化合物の合計重量に対し、通常0.001〜7.5重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0020】
縮合反応は、無溶剤で行うこともできるが、溶剤中で行うのが好ましい。溶剤としては、式(1)乃至式(2)のケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限なく使用できるが、使用しうる溶剤の具体例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素等が例示できる。これらの中で、非プロトン性極性溶媒が好ましい。溶剤の使用量には、特に制限はないが、式(1)乃至式(2)のケイ素化合物の合計重量100重量部に対して、通常50〜900重量部使用するのが好ましい。
【0021】
上記各縮合反応における反応温度は、触媒量にも依るが、通常20〜160℃、好ましくは40〜140℃である。又、反応時間は通常1〜12時間である。反応生成物(縮合物)のMw(重量平均分子量)はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することが出来る。反応が終了したら、加熱を止め、前記溶剤及び水を加え、分液を行った後有機層を採り、使用した溶剤を減圧除去して目的の縮合物を得る。必要なら、得られた縮合物をゲルろ過等により精製することも出来る。
【0022】
以上のようにして得られた縮合物(A)は下記のような繰り返し単位を有した高分子化合物であると考えられる。
【0023】
【化4】

【0024】
(式(5)において、X及びZは式(1)乃至式(2)におけるのと同じ意味を表す。)
【0025】
次に、本発明において、カルボン酸無水物(B)は、硬化剤として働くもので、下記式(3)で示される4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物及び式(4)で表される5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が使用され、これらは単独で又は併用することが出来る。これら(3)および(4)は前記縮合物(A)と極めて高い相溶性を示し、(A)との反応により透明で耐熱性に優れた硬化膜の形成を可能にするものである。これらはそれぞれ合成することで調達可能であるが(3)はリカシッドTDA−100(新日本理化(株)製)、(4)はEPICRON B−4400(大日本インキ化学工業(株)製)として入手できる。
【0026】
更に本発明で使用される溶剤(C)について説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用される溶媒としては、前記(A)及び(B)に対して高い溶解能を有し、これらのものと反応性を示さないものであればいずれも制限なく使用することが出来る。使用しうる溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、好ましくは炭素数1〜4の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のグリコールエーテル類、好ましくは炭素数1〜4のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチルエトキシプロピオラート等のアルキレングリコールエーテルアセテート類、好ましくは炭素数1〜4のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテルアセテート、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸プロピル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル等のエステル類、好ましくヒドロキシ基、炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されていてもよい炭素数2〜4の脂肪酸の炭素数1〜4のアルキルエステル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0027】
これらのうち、前記自己又は共縮合物、式(3)、(4)で表されるカルボン酸無水物に対する溶解性、揮発による溶質濃度の経時変化、人体に対する毒性等を考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の炭素数2〜3のアルキレングリコールの炭素数1〜4の低級エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロペンタノン、エステル類が好ましい例として挙げられる。これら溶媒は単独若しくは混合で使用することができる。
【0028】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における、前記(A)自己又は共縮合物、(B)カルボン酸無水物、及び(C)溶剤の各成分の含有量は、通常(A)5〜50重量%、(B)1〜20重量%、(C)30〜90重量%、好ましくは(A)7〜20重量%、(B)1〜20重量%、(C)70〜87重量%である。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、透明性、耐熱性、耐薬品性、平坦性、耐黄変性等の物性を実質的に低下させない範囲で、上記以外のエポキシ樹脂(以下、「その他のエポキシ樹脂」という)を添加することができる。
【0030】
用いうるその他のエポキシ樹脂の例としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。
【0031】
上記のうちフェノール類化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログリシノール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
又、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール類、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0033】
更に、脂環式エポキシ樹脂としてはシクロヘキサン等の脂肪族環骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂としては1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類、複素環式エポキシ樹脂としてはイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂としてはヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸エステル類からなるエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂としてはアニリン、トルイジン等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としてはブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体としては、市場から入手可能な製品ではマープルーフG−0115S、同G−0130S、同G-0250S、同G−1010S、同G−0150M、同G−2050M (日油(株)製)等が挙げられ、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシドなどがあげられる。また他の重合性不飽和化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルシクロヘキサンなどがあげられる。
【0035】
これらのその他のエポキシ樹脂のうち、耐熱性、透明性等を考慮すると、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、シクロヘキサン等の脂肪族環骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類、マープルーフG−0115S、同G−0130S、同G−0250S(日油(株)製)、メタクリル酸グリシジルとスチレンの共重合体が好ましい例として挙げられる。
前記したようなその他のエポキシ樹脂を添加する場合は、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、2〜50重量%の範囲で、必要により、添加される。
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、透明性、耐熱性、耐薬品性、平坦性、耐黄変性等の物性を実質的に低下させない範囲で、エポキシ樹脂用硬化剤を添加することができる。
用いうるエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸類、多価カルボン酸無水物、フェノール類、ヒドラジン類、メルカプタン類などがあげられる。
【0037】
上記において、使用しうる多価カルボン酸の具体としては、
○シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
○フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、9,10−アントラセンジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、2,2'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ビナフチルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
○ヘキサヒドロフタル酸、1,3−アダマンタン二酢酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
○テトラヒドロフタル酸、2,3−ノルボルネンジカルボン酸;
○ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸;
○1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式トリカルボン酸;
○1,2,3−プロパントリカルボン酸等の脂肪族トリカルボン酸;
○トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌル環トリカルボン酸;
○メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、3,3'4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2'3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3'4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4'−オキシジフタル酸、3,3'4,4'−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;
○1,2,4,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸;
○1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族テトラカルボン酸;
等が挙げられ、これらの中で、特に透明性、耐熱性に優れるという理由から、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−アダマンタン二酢酸及び1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が好ましい例として挙げられる。
【0038】
使用しうる多価カルボン酸無水物の具体例としては、
○脂肪族ジカルボン酸無水物;
無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸
○脂環族多価カルボン酸二無水物;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物
○芳香族多価カルボン酸無水物;
無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸
等が挙げられる。
【0039】
使用しうるフェノール類の具体例としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。これらの中で、透明性・耐熱透明性に優れるフェノール化合物が望ましく、例えば2,4-ビスフェノールS、トリヒドロキシフェニルフォスフィンオキシドがより好ましい。
【0040】
使用しうるヒドラジン類の具体例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0041】
使用しうるメルカプタン類の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]、イソシアヌレート1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
【0042】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合することもできる。これらはそれ自体公知の方法により本発明の熱硬化性樹脂組成物に添加される。
【0043】
例えば、本発明で使用しうる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とカルボキシル基を2個以上有する化合物との縮合反応を促進する機能のあるものであればいずれも使用可能であり、イミダゾ−ル系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤、アンモニウム系硬化促進剤、ルイス酸系硬化促進剤等がその例として挙げられが、本発明においては、イミダゾ−ル系硬化促進剤の使用が特に好ましい。使用しうるイミダゾール系硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ−〔1,2−a〕ベンズイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール又は1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種イミダゾール化合物が挙げられる。これらの中で、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ−〔1,2−a〕ベンズイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが特に好ましい例として挙げられる。
【0044】
又、用いうるカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。これらの中でシラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。カップリング剤を使用する事により基材との密着性が向上し、かつ耐湿信頼性に優れた保護膜が得られる。
【0045】
硬化促進剤の添加量は本発明の熱硬化性樹脂組成物において0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。
又、カップリング剤の使用量は本発明の熱硬化性樹脂組成物において、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%である。
【0046】
同様に、界面活性剤は熱硬化性樹脂組成物の塗布適性をより向上させるために、必要により、添加するものである。使用しうる界面活性剤の具体例としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機系界面活性剤が挙げられ、例えばBM−1000、BM−1100(BMCHEMIE社製)、メガファックF470、同F472、同BL−20、同R−08、同R−30、同R−90(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−381、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106、同KH−40(旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(東レシリコーン(株)製)、フタージェント710FS、同710FM、同710FL、同222F、同245F、FTX750FM、同730FL、同730FM、同730FS、同240D((株)ネオス製)、PolyFOXPF−636、同PF−651、同PF−652、同PF−3320(OMNOVA社製)、グラノール400、グラノール420、グラノール440、ターレンKY−5020、フローレンDOPA−15BHFS、同DOPA17HF、同DOPA−33、同DOPA−44、同TG−720W、同TG−750W、ポリフローKL−245、同KL−260、同KL−500、同KL−600、同WS−30(共栄社化学(株)製)、ユニダインDS−403、同DS−451、同NS−1602、同NS−1603、同NS―1605(ダイキン工業(株)製)等のシリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又は有機系界面活性剤が適宜用いられる。
その界面活性剤の添加量は本発明の熱硬化性樹脂組成物において、通常0.001〜0.5重量%、好ましくは0.08〜0.3重量%である。
【0047】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した自己又は共縮合物(A)、カルボン酸無水物(B)及び(C)溶剤、並びに必要に応じ前記各種添加剤を均一に溶解させることによりワニスとして得ることができる。この場合、固形分濃度が通常15〜50重量%、好ましくは15〜30重量%となるように調整するのが好ましい。又、上記のようにして得られた本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要により、例えば0.05〜1μmのフィルターを用いて精密濾過を行ってもよい。
【0048】
このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物により形成される塗膜は、ガラス、木、金属、プラスチック等種々の基材上に設けられた機能性膜に対して優れた密着性を有し、平滑性、耐熱耐黄変性、透明性、靭性において優れていることから、有機EL素子やプラズマディスプレイパネルといった高可視光透過率が要求される分野における塗膜(高可視光透過率塗膜)として、また液晶汚染性に優れることより、液晶表示用カラーフィルター等の着色樹脂膜上に保護膜を形成させる場合等の機能性膜用保護膜剤として特に有用である。
本発明において、基材上に設けられた機能性膜のもっとも好ましいものは液晶表示用カラーフィルター製造のための着色樹脂膜である。
【0049】
着色樹脂膜を含む機能性膜の保護膜として使用する場合は、通常スピンコート法により塗布が行われる。膜厚は通常、加熱硬化後0.1〜10μmに、好ましくは0.5〜8μmになるような条件で塗布される。この際、塗布作業を効率的に行うため、本発明の熱硬化性樹脂組成物又は機能性膜用保護膜剤の25℃における粘度を2〜30mPa・s、好ましくは3〜10mPa・sになるように調整するのが好ましい。
【0050】
塗布後の乾燥、硬化条件は組成物溶液中の成分割合(配合比)、溶剤の種類によって最適な条件を適宜選択する必要があるが、通常、70〜100℃でプリベークを行い、溶剤を除去した後、150〜250℃で10分〜1.5時間ポストベークを行い硬化させて本発明の硬化膜が形成される。なお、硬化温度は一定でなくても良く、例えば昇温しながら硬化を行ってもよい。プリベークによる溶媒除去、及びポストベーク硬化はオーブン、ホットプレート等を用いて行うことができる。
【0051】
上記のようにして本発明の保護膜が形成された機能性膜はそれぞれの膜に応じ種々の機器の調製に供される。
【0052】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物又は機能性膜用保護膜剤をカラーフィルター用着色樹脂膜の保護膜として用いる場合について説明する。
液晶表示素子に用いられる通常のカラーフィルターは、ガラス基板等の透明基板上に、赤・青・緑等の着色透明パターンを規則的に配列したものである。着色透明パターンの形成には、各色の顔料、バインダー樹脂、反応性希釈剤、光重合剤、溶剤等からなるカラーレジストを用いるフォトリソグラフ法が広く用いられている。フォトリソグラフ法は、該レジストを基板上に塗布した後、所定のパターンを有したフォトマスクを介して露光し、その後不要な部分の現像除去を行い、この工程を少なくとも赤、青、緑の着色パターンごとに3回繰り返してパターン化された着色樹脂膜を製造する。このパターン化された着色樹脂膜上に前記したような方法により本発明の保護膜を設け、カラーフィルターとし、次いで下記するような透明電極が設けられる。
【0053】
通常の液晶表示装置は、一般に、カラーフィルター部(必要に応じてITO製膜、ITOパターンニングが施される)、液晶部、バックライト部及び偏光フィルム部から構成されるので、そのカラーフィルター部に本発明の保護膜を施したカラーフィルターを使用することにより、本発明の液晶表示装置とすることができる。
【0054】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、透明性に優れる上、特に高い耐熱温度を有しており、高温における安定性が高く、着色樹脂膜等の機能性膜の保護膜として有利で、特にカラーフィルターの保護膜として好適に使用でき、このような保護膜を設けたカラーフィルターを用いた液晶表示装置においてはその信頼性を大幅に向上することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を以って本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は重量部を、「%」は重量%をそれぞれ意味する。
【0056】
合成例1 エポキシ基を有するケイ素化合物(A−1)の合成
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(前記式(1)で表される化合物、信越化学工業(株)製)237部、フェニルトリメトキシシラン(前記式(2)で表される化合物、信越化学工業(株)製)127部、メチルイソブチルケトン731部を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、0.5%水酸化カリウム水溶液43.6部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、還流下80℃にて5時間反応させた。
反応終了後、メチルイソブチルケトン400部及び水400部を加え、分液を行い、有機層を採り、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりケイ素化合物(A−1)270部を得た。得られたケイ素化合物のエポキシ当量は251g/eq、Mw=1500であった。
【0057】
合成例2 エポキシ基を有するケイ素化合物(A−2)の合成
メチルトリメトキシシラン27部、ジメチルジメトキシシラン12部、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン49部、メチルイソブチルケトン749部、トリエチルアミン13部を反応容器に仕込み、攪拌しながら水90部を30分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、10%リン酸カリウム水溶液400部を加え、有機層を洗浄したのち、有機層を減圧下で除去することによりケイ素化合物(A−2)65部を得た。得られたケイ素化合物のエポキシ当量は257g/eqであった。
【0058】
実施例1〜実施例4、比較例1、2
表1に示される各成分を同じく同表に示される組成比に従って溶剤に溶解し、それぞれ固形分濃度約20%の本発明の熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物の粘度はいずれも3〜5mPa・s(東機産業(株)製R型粘度計で10rpmの条件で測定)であった。
なお、硬化剤としてトリメリット酸無水物(注6)を使用した場合、組成物を完全に溶解させるために溶剤(C−1)及び(C−2)を用いた。比較例2は特許文献2の実施例1に準じて調製したものである。
【0059】
表1 組成表(単位;部)
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 比較例1 比較例2
ケイ素化合物(A-1)(注1) 100 100 50 50 100
ケイ素化合物(A-2)(注2) 24 100
硬化剤(B-1)(注3) 28 26 11
硬化剤(B-2)(注4) 24
硬化剤(注5) 12
硬化剤(注6) 24 63
エポキシ樹脂(注7) 50 25
エポキシ樹脂(注8) 25
硬化促進剤(注9) 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0
硬化促進剤(注10) 0.6
界面活性剤(注11) 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0
溶剤(C-1)(注12) 148 352 94 452 226 152
溶剤(C-2)(注13) 233 505
溶剤(C-3)(注14) 356 138 469 98
【0060】
注1 合成例1で得られたエポキシ基を有するケイ素化合物
注2 合成例2で得られたエポキシ基を有するケイ素化合物
注3 式(3)で表されるカルボン酸無水物(リカシッドTDA−100、新日本理化(株)製)
注4 式(4)で表されるカルボン酸無水物(EPICRON B−4400、大日本インキ化学工業(株)製)
注5 テトラヒドロフタル酸
注6 トリメリット酸無水物
注7 マープルーフG−0250S(エポキシ樹脂、日油(株)製)
注8 マープルーフG−0115S(エポキシ樹脂、日油(株)製)
注9 1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)
注10 2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)
注11 メガファックF470(フッ素系界面活性剤、大日本インキ(株)製)
注12 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
注13 プロピレングリコールモノメチルエーテル
注14 シクロペンタノン
【0061】
実施例5〜実施例7、比較例3、4
前記実施例1〜実施例4及び比較例1、2で得られた本発明及び比較用の各熱硬化性樹脂組成物を厚さ0.7mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて、硬化後の膜厚が1.5μmになるように塗布し(但し、ITOスパッタ耐性試験においては膜厚2μm)、85℃、2分の条件でプリベークを行った後、230℃、30分の条件で熱硬化を行い、本発明及び比較用の各硬化皮膜を得た。
【0062】
○評価試験
実施例5〜実施例7及び比較例3、4で得られた各硬化皮膜について、次の各項目について評価試験を行い、表2に示される結果を得た。
(1)透明性
分光光度計(U−3310 (株)日立製作所製)により、400〜800nmにおける透過率を測定した。表2においては最低の透過率の値を示した。400〜800nmの全域において、透過率95%以上であることが好ましい。
(2)耐熱透明性(塗膜黄変性試験)
各硬化皮膜の設けられたガラス基板を250℃のオーブン中に60分間放置し、400〜800nmにおける透過率を測定した。表2においては最低の透過率の値を示した。400〜800nmの全域において、透過率95%以上であることが好ましい。
(3)ITOスパッタ耐性
ガラス基板上に前記各熱硬化性樹脂組成物を2μmの硬化膜厚になるように塗布し、85℃、2分の条件でプリベークを行った後、230℃、30分の条件で熱硬化を行った。得られた硬化皮膜上に240℃でITOを膜厚2500Å、シート抵抗値5.7Ω/cm2になるようにスパッタした時の硬化膜の状態を目視により観察した。次の基準により評価した。
○:外観に変化の見られない
△:部分的に皺又はクラックの発生がみられる
×:硬化皮膜全体に皺、クラック又は白濁が発生している
(4)耐溶剤性
前記で得られた各硬化皮膜の設けられたガラス基板をイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンの各溶剤に40℃、45分浸漬した後の各硬化皮膜の減少度合を触針式表面粗さ計(P−15 テンコ−ル(株)製)で測定した。いずれの溶剤に浸漬した時もそれらの減少度合が5%以下である場合、○と評価した。
(5)平坦性
ガラス基板上に赤、緑、青の着色樹脂層が形成された基板(最大段差0.5ミクロン)に、前記各熱硬化性樹脂組成物を1.5ミクロンの硬化膜厚になるように塗布し、85℃、2分の条件でプリベークを行った後、230℃、30分の条件で熱硬化を行った後、表面の平坦性を前記触針式表面粗さ計で測定した。表2には最大の段差値を示した。0.2μm以下であることが好ましい。
【0063】
評価結果
上記各評価試験で得られた結果を表2に示した。
表2 評価試験の結果
実施例5 実施例6 実施例7 実施例8 比較例3 比較例4
(注1) (実施例1) (実施例2) (実施例3) (実施例4) (比較例1) (比較例2)
○透明性(%) 99 97 98 99 白色化 白色化
○耐熱透明性(%) 96 95 97 98 ━ ━
○ITOスパッタ耐性 ○ ○ ○ ○ ━ ━
○耐溶剤性 ○ ○ ○ ○ ━ ━
○平坦性(μm) 0.17 0.14 0.15 0.15 ━ ━
【0064】
注1 保護膜調製に供した熱硬化性樹脂組成物の得られた実施例番号、比較例番号を示す。
【0065】
表2の結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られた保護膜は、透明性に優れる上、特に高い耐熱温度性を有しており、高温における安定性が高く、更に、耐溶剤性、平坦性に優れている。
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は着色樹脂膜用の保護膜剤として有用で、特に液晶表示装置用のカラーフィルターに使用される着色樹脂膜の保護膜として使用することによりカラーフィルターの性能及びその製造の信頼性を大幅に向上することができる。
なお比較例3及び、特許文献2の実施例1に準じて調製された比較例4の熱硬化性樹脂組成物は白く濁った膜しか与えず、明らかに透明性が不良であったので上記各試験は実施しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物の自己縮合物、及び/又は下記式(1)で示されるエポキシ基を有するケイ素化合物と下記式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物との共縮合物、
【化1】

(式(1)及び式(2)において、XはC2〜C5のアルキレン基を、R1及びR2はC1〜C4のアルキル基を、Zはメチル基又はフェニル基をそれぞれ表す。)
(B)下記式(3)及び(4)で示されるカルボン酸無水物から選択される一種又は二種
【化2】

並びに(C)溶剤を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる機能性膜用保護膜剤
【請求項3】
機能性膜が着色樹脂膜である請求項2に記載の機能性膜用保護膜剤
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の機能性膜用保護膜剤を熱硬化させて得られる樹脂硬化膜
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂硬化膜を有するカラーフィルター
【請求項6】
請求項5に記載のカラーフィルターを備えた液晶表示装置

【公開番号】特開2009−209260(P2009−209260A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53435(P2008−53435)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】