説明

燃料インジェクター付着物の予防のための方法及び使用

【課題】本発明は新しい型のインジェクター付着物の除去及び予防方法を提供する。
【解決手段】少量の金属含有種を含むディーゼル燃料を使用して運転されるディーゼルエンジン中のインジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少する方法。その方法はカルボン酸とジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンの反応により生成された塩をディーゼル燃料に添加することを含み、そのディーゼルエンジンが複数の噴霧穴を有する燃料インジェクターを備えており、夫々の噴霧穴が入口及び出口を有し、かつ燃料インジェクターが下記の特性:
(i) 噴霧穴の入口直径が出口直径より大きいようにテーパーをもたされている噴霧穴、
(ii) 0.10mm以下の出口直径を有する噴霧穴、
(iii) 入口の内部エッジが丸められている噴霧穴、
(iv) 6個以上の噴霧穴、
(v) 250℃を越える運転チップ温度
の一つ以上を有する。また、インジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少するための塩の使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルエンジン中の燃料インジェクター付着物の除去又は予防のため、特に最新ディーゼルエンジン中の燃料インジェクター付着物の除去又は予防のための方法に関する。燃料インジェクター付着物を除去又は予防するための反応生成物の使用が記載される。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンからの排出物を減少するようにとの絶え間ない法的圧力がある。ヨーロッパでは2008年までに、全ての新しいディーゼルエンジンはユーロV規格に応じる必要がある。これは複雑な噴霧穴形状、多くかつ狭い噴霧穴を有し、かつインジェクターチップで高温及び高圧で運転する燃料インジェクターを特徴とする最近燃料噴射装置の開発をもたらした。運転条件におけるこの増大するきびしさの結果として、最新の共同噴射ディーゼルエンジンのインジェクターは付着物を生成する傾向がある。これらの付着物(これらはインジェクターノズルの噴霧穴の内部及び外部の両方に見られる)は、エンジン出力の損失及び煙発生の増大に直接寄与する。
ディーゼル燃料インジェクターにおける付着物の生成は新しい現象ではなく、歴史的にはあらゆる問題が通常のディーゼル洗剤添加剤の使用により適当に取り組まれていた。しかしながら、ユーロV遵守であるように開発されているエンジンの一層きびしい運転条件下で生成される付着物の型は通常のディーゼル洗剤添加剤により適当に除去又は予防されないことが観察されていた。いずれかの理論により束縛されたくないが、最新エンジン中のインジェクター付着物の生成は燃料中の少量の金属含有種の存在により悪化されると現在考えられている。実際に、本件出願人の研究はわずかな量の金属を含む汚染のある燃料の使用が付着物による重大な問題を生じないことを示した。しかしながら、通常のディーゼル燃料は低いが測定できる量の金属を含む汚染、例えば、亜鉛、銅、鉄及び鉛をしばしば含み、金属含有種はまたその他の機能を奏するために計画的に添加されるかもしれない。最新ディーゼルエンジン中で生成される付着物の分析は、予想される炭素質物質に加えて、亜鉛及び銅の如き金属が検出し得ることを示す。本発明はこれらの新しい型のインジェクター付着物の除去及び予防に特別に取り組む。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第一の局面によれば、本発明は少量の金属含有種を含むディーゼル燃料を使用して運転されるディーゼルエンジン中のインジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少する方法であって、その方法がカルボン酸とジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンの反応により生成された塩をディーゼル燃料に添加することを含み、そのディーゼルエンジンが複数の噴霧穴を有する燃料インジェクターを備えており、夫々の噴霧穴が入口及び出口を有し、かつ燃料インジェクターが下記の特性:
(i) 噴霧穴の入口直径が出口直径より大きいようにテーパーをもたされている噴霧穴、
(ii) 0.10mm以下の出口直径を有する噴霧穴、
(iii) 入口の内部エッジが丸められている噴霧穴、
(iv) 6個以上の噴霧穴、
(v) 250℃を越える運転チップ温度
の一つ以上を有することを特徴とする上記方法を提供する。
第二の局面によれば、本発明はディーゼルエンジン中のインジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少するためのカルボン酸とジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンの反応により生成された塩の使用であって、ディーゼルエンジンが第一の局面に関して特定された特性(i)〜(v)の一つ以上を有する燃料インジェクターを備えており、少量の金属含有種を含むディーゼル燃料を使用して運転されることを特徴とする上記使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
第一の局面及び第二の局面に使用される塩は最新ディーゼルエンジン燃料インジェクター中の付着物の発生を減少するのに有効であり、同等又は低い処理率で広く使用されるPIBSA-PAM洗剤と少なくとも同じ位に有効であることがわかった。しかしながら、旧型のディーゼルエンジン、例えば、工業規格XUD-9洗浄力試験に使用されるものでは、本発明における使用の塩が通常のPIBSA-PAM洗剤よりも性能がすぐれていることに注目することは驚くべきであった。
先に説明されたように、インジェクター付着物の発生は燃料中の金属含有種の存在に関連していることが明らかである。幾つかのディーゼル燃料は測定できる金属含量を含まず、その場合、インジェクター付着物の発生が減少されるであろう。しかしながら、ディーゼル燃料中の金属含有種の存在又は不在が一般にユーザーに明らかではなく、同じ供給業者からの燃料でさえも、燃料製造により変化するであろう。こうして、本発明は金属含有種が存在する場合に有益であり、また未知の金属含量の燃料を再度燃料供給する場合のインジェクター付着物の影響を少なくするための予防手段として有益である。
本発明の全ての局面の状況において、インジェクター付着物の実質的な除去はインジェクターノズルの噴霧穴の内部又は外部に存在し得る付着物がインジェクターの適切な機能が有意に損なわれない程度に除去されることを意味すると解されるべきである。これは、例えば、排出煙の増大又はエンジントルクの損失を測定することにより測定し得る。インジェクター付着物の全ての痕跡が除去されることは必要とされない。同様に、インジェクター付着物の発生の減少はどんな付着物でさえもが生成されないことを必要とせず、生成し得る付着物の量がインジェクターの適切な機能を有意に損なうのに充分ではないことのみを再度必要とする。
燃料インジェクターの特性(i)〜(v)のすべてがインジェクター付着物の生成に寄与すると現在考えられる。複数のこれらの特性を有する燃料インジェクターを使用するディーゼルエンジンが付着物を一層生成する傾向があることが観察された。こうして、本発明の実施態様において、燃料インジェクターは特性(i)〜(v)の二つ、好ましくは三つ、更に好ましくは四つ、最も好ましくは五つ全てを有する。
【0005】
好ましい実施態様において、燃料インジェクターは少なくとも特性(i)及び(ii)を有する。更に好ましい実施態様において、燃料インジェクターは少なくとも特性(i)、(ii)及び(iii)を有する。更に好ましい実施態様において、燃料インジェクターは少なくとも特性(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を有する。
この明細書において、カルボン酸とアミンの反応により生成される生成物を記載するための“塩”という用語の使用はその反応が純粋な塩を必ず生成することを意味すると解されるべきではない。その反応は塩を生成し、こうしてその反応生成物が塩を含むと現在考えられるが、その反応の複雑さのために、おそらくその他の種がまた存在するであろう。こうして、“塩”という用語は純粋な塩種だけでなく、カルボン酸とアミンの反応中に生成される種の混合物を含むと解されるべきである。
カルボン酸として、式〔R'(COOH)xy(式中、夫々のR'は独立に2〜45個の炭素原子の炭化水素基であり、かつxは1〜4の整数である)に相当するものが、好適である。好ましくは、R'は8〜24個の炭素原子、更に好ましくは、12〜20個の炭素原子の炭化水素基である。好ましくは、xは1又は2であり、更に好ましくは、xは1である。好ましくは、yは1であり、その場合に、その酸は単一のR'基を有する。また、その酸は二量体、三量体又はそれ以上のオリゴマー酸であってもよく、その場合、yは1より大きく、例えば、2、3もしくは4又はそれ以上であろう。R'はアルキル基又はアルケニル基(これらは線状又は分岐であってもよい)であることが好適である。本発明において使用し得るカルボン酸の例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ネオデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリッシン酸、カプロレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸、大豆脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、魚油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、牛脂油脂肪酸及びパーム油脂肪酸が挙げられる。あらゆる比率の2種以上の酸の混合物がまた好適である。また、カルボン酸の無水物、それらの誘導体及びこれらの混合物が好適である。好ましい実施態様において、カルボン酸はトール油脂肪酸(TOFA)を含む。5重量%未満の飽和物含量を有するTOFAが特に好適であることがわかった。当業界で知られているように、TOFAは少量であるが可変量のロジン酸及びこれらの異性体を含む。5重量%未満、例えば、2重量%未満のアビエチン酸含量を有するTOFAが使用されることが好ましい。
【0006】
別の好ましい実施態様において、カルボン酸はナタネ油脂肪酸を含む。
別の好ましい実施態様において、カルボン酸は大豆脂肪酸を含む。
別の好ましい実施態様において、カルボン酸はヒマワリ油脂肪酸を含む。
また、芳香族カルボン酸及びそれらのアルキル誘導体だけでなく、芳香族ヒドロキシ酸及びそれらのアルキル誘導体が好適である。例示の例として、安息香酸、サリチル酸及びこのような種から誘導された酸が挙げられる。
カルボン酸は好ましくは少なくとも80g/100g、更に好ましくは少なくとも100g/100g、例えば、少なくとも130g/100g又は少なくとも150g/100gのヨウ素価を有する。
都合良くは、ジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンが使用されるが、その2種の混合物がまた所望により使用されてもよい。その塩はジ-n-ブチルアミンとの反応により生成されることが最も好ましい。
こうして、本発明の特に好ましい実施態様はその塩が
トール油脂肪酸とジ-n-ブチルアミン、
トール油脂肪酸とトリ-n-ブチルアミン、
ナタネ油脂肪酸とジ-n-ブチルアミン、
ナタネ油脂肪酸とトリ-n-ブチルアミン、
大豆脂肪酸とジ-n-ブチルアミン、
大豆脂肪酸とトリ-n-ブチルアミン、
ヒマワリ油脂肪酸とジ-n-ブチルアミン、及び
ヒマワリ油脂肪酸とトリ-n-ブチルアミン
の反応により生成される実施態様である。
塩はカルボン酸をアミンと混合することにより都合良く生成されてもよい。一つの成分が別の成分に添加される順序は重要ではない。酸の量対アミンの量のモル比は好適には10:1〜1:10、好ましくは10:1〜1:2、更に好ましくは2:1から1:2、例えば、1:1付近である。或る実施態様において、1.1:1〜1:1.1のモル比が好適であるとわかった。その反応は室温で行なわれてもよいが、軽く、例えば、40℃に加熱されることが好ましい。
これらの塩は本件出願人の共同未決特許出願EP05270062.2の主題であり、そこでは良好な潤滑性を燃料油組成物に与えることに加えて、それらが特に良好な低温特性を示すことがわかった。
【0007】
ディーゼル燃料
ディーゼル燃料は石油をベースとする燃料油、特に中間留出燃料油であることが好ましい。このような留出燃料油は一般に110℃から500℃まで、例えば、150℃から400℃までの範囲内で沸騰する。燃料油は大気圧留出物又は真空留出物、クラッキングされたガス油、或いはあらゆる比率の直留流並びに熱流及び/又は精油所流、例えば、接触クラッキングされた留出物及びハイドロクラッキングされた留出物のブレンドを含んでもよい。
ディーゼル燃料のその他の例として、フィッシャー-トロプッシュ燃料が挙げられる。フィッシャー-トロプッシュ燃料(またFT燃料として知られている)として、合成軽油(GTL)燃料、バイオマス液化(BTL)燃料及び石炭転化燃料として記載されたものが挙げられる。このような燃料をつくるために、合成ガス(CO+H2)が最初に生成され、次いでフィッシャー-トロプッシュ方法によりノルマルパラフィンに変換される。次いでノルマルパラフィンが接触クラッキング/リフォーミング又は異性化、ハイドロクラッキング及び水素異性化の如き方法により変性されて種々の炭化水素、例えば、イソ-パラフィン、シクロ-パラフィン及び芳香族化合物を生じる。得られるFT燃料はそのまま又はその他の燃料成分及び燃料型と組み合わせて使用し得る。また、植物源又は動物源に由来するディーゼル燃料、例えば、FAMEが好適である。これらは単独で、又はその他の型の燃料と組み合わせて使用されてもよい。
【0008】
ディーゼル燃料はアルコール成分を含まないことが好ましい。
ディーゼル燃料は有意な量の水を含まないことが好ましい。
ディーゼル燃料は好ましくはせいぜい0.05重量%、更に好ましくはせいぜい0.035重量%、特にせいぜい0.015%の硫黄含量を有する。更に低いレベルの硫黄を含む燃料、例えば、50ppm(重量基準)未満、好ましくは20ppm未満、例えば、10ppm以下の硫黄を含む燃料がまた好適である。
本明細書に説明されたように、本件出願人はユーロV遵守であるように開発されているエンジン中のインジェクター付着物の生成と関連する問題がディーゼル燃料中の金属含有種の存在と関連することを観察した。存在する場合に普通に、金属含有種は、例えば、燃料中に存在する酸性種による金属表面及び金属酸化物表面の腐食により汚染物質として存在するであろう。使用中に、ディーゼル燃料の如き燃料は、例えば、車両燃料供給系、燃料タンク、燃料輸送手段等中の金属表面と日常的に接触する。典型的には、金属を含む汚染は金属、例えば、亜鉛、鉄、銅及び鉛を含むであろう。
ディーゼル燃料中に存在し得る金属を含む汚染に加えて、金属含有種が燃料に計画的に添加され得る状況がある。例えば、当業界で知られているように、金属含有燃料によって運ばれる触媒種が特別なトラップの再生を助けるために添加され得る。このような触媒は金属、例えば、鉄、セリウム、I族金属及びII族金属、例えば、カルシウム及びストロンチウムを混合物として、又は単独でしばしばベースとする。また、白金及びマンガンが使用される。燃料がユーロV遵守であるように開発されているエンジン中で使用される場合に、このような触媒の存在がまたインジェクター付着物を生じ得る。
金属を含む汚染は、その源に応じて、不溶性粒状物又は可溶性化合物もしくは錯体の形態であり得る。金属を含む燃料によって運ばれる触媒はしばしば可溶性化合物もしくは錯体又はコロイド種である。本発明の状況の金属含有種は金属である種及び金属成分が配合された形態であるものの両方を含むことが理解されるであろう。
或る実施態様において、金属含有種は燃料によって運ばれる触媒を含む。
好ましい実施態様において、金属含有種は亜鉛を含む。
典型的には、種中の金属の合計量に関して表わされる、ディーゼル燃料中の金属含有種の量は、ディーゼル燃料の重量を基準として、0.1〜50ppm(重量基準)、例えば、0.1〜10ppm(重量基準)である。
典型的には、ディーゼル燃料中に存在する塩の量はディーゼル燃料の重量を基準として20〜400ppm(重量基準)、好ましくは50〜200ppmである。
【0009】
燃料インジェクター特性
歴史的に、ディーゼルエンジン燃料インジェクターはデザインが単純であった。近年、インジェクターデザインとエンジン性能の間の関連が一層良く理解されるようになった。例えば、燃料液滴の微細な分布が排出物の減少を促進するという知識が燃料インジェクター噴霧穴の次第に狭くなること及び増大されたインジェクター圧力をもたらした。前記のように、きたるべきユーロV排出物規格を満足するための運転が燃料インジェクターデザインの更なる進歩をもたらした。
(i) テーパーをもたされている噴霧穴
燃料インジェクターの大半は断面が一様である噴霧穴を有する。本発明において、噴霧穴は燃料が噴霧穴に入る位置(入口)における直径が燃料が噴霧穴を出る位置(出口)における直径よりも大きいようにテーパーをもたされていることが好ましい。最も典型的には、噴霧穴が円錐形又は切頭円錐形の形状であろう。
【0010】
(ii)噴霧穴直径
噴霧穴は好ましくは0.10mm以下、更に好ましくは0.08mm以下の出口直径を有する。これは典型的には0.25mmの噴霧穴を有していた10〜15年前のインジェクターと比較されるかもしれない。
(iii)丸められた噴霧穴
本発明の状況において、丸められた噴霧穴は穴の入口の内縁が傾斜プロフィールではなく、湾曲又は放射状プロフィールを有するように形成され、平滑にされ、又は浸蝕されたものである。
(iv)多重噴霧穴
歴史的に、燃料インジェクターは4個までの噴霧穴を有していた。本発明は好ましくは6個以上の噴霧穴、例えば、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の噴霧穴を有する燃料インジェクターに関する。燃料インジェクターの将来のデザインは更に多くの噴霧穴を有すると予想される。
(v) 運転チップ温度
多数の噴霧穴のための一層低い燃料流量、一層高い燃料圧力及び複雑な噴霧穴形状の組み合わせが増大されたインジェクターチップ温度をもたらす。典型的には、燃料インジェクターは250℃を越え、好ましくは300℃を越える運転チップ温度を有するであろう。燃料インジェクターの運転チップ温度はディーゼルエンジンの通常の運転中のインジェクターチップの温度を表わすことが理解されるであろう。当業者は、例えば、好適に置かれた熱伝対の使用によりインジェクターチップ温度を測定する方法を知っているであろう。
特性(i)〜(iv)はインジェクター中のそれ程乱れていない燃料流れをもたらす。これは一般に有利であるが、それは燃料が存在し得る付着物を物理的に浸蝕する可能性を少なくする。運転チップ温度の上昇はまた付着物の生成に寄与すると考えられる。
本発明が今実施例のみにより記載されるであろう。
【実施例】
【0011】
塩の調製

ナタネ油脂肪酸(ROFA)(50.0g、173ミリモル)を撹拌しながらビーカーに添加した。次いでジ-n-ブチルアミン(22.36g、173ミリモル)をビーカーに添加した。発熱を測定し、その2成分が反応したことを示した。反応生成物のFTIR分析が出発酸と較べて1710cm-1における強いカルボン酸ピークの減少、並びに1553cm-1及び1399cm-1におけるカルボキシレート逆対称伸縮及び対称伸縮の相当する出現だけでなく、アンモニウム種に帰属できるピーク2300-2600cm-1の広い範囲の出現を示した。これは塩の生成の明らかな指示であった。
試験プロトコル
使用したプロトコルはGraupnerら著“最新ディーゼルエンジンに関するインジェクター付着試験”, Technische Akademic Esslingen, 5th International Colloquium, 2005年1月12-13日, 3.10, 157頁, Wilfried J Bartz編集により記載されている。簡単に言えば、そのプロトコルは燃料インジェクターチップを強調して最新ディーゼルエンジンの運転条件を反復試験することを目的とする。試験を五つのステージに分ける。
a) エンジン出力の等速測定
b) 8時間の耐久運転
c) エンジンが停止され、冷却する間の延長されたソーキング期間(3〜8時間)
d) 2回目の8時間の耐久運転
e) エンジン出力の等速測定
本明細書に示されたデータについて、上記の五つのステージを使用したが、行なわれている試験プログラムに適するようにステージb)、c)及びd)を何回か繰り返すことができる。また、ステージa)及びe)を省いてもよいが、これらは結果の理解を改善するのに有益である。結果をステージa)中の試験の開始における平均トルクとステージe)中の試験の終了における平均トルクの差として報告する。また、等速操作が実施されない場合、測定された全負荷/全速における開始トルクと最終負荷/速度の差が使用し得る。また、煙発生の差を観察する。インジェクター付着物の生成は最終出力に悪影響を有し、観察される煙の量を増加するであろう。使用したインジェクターは上記された物理的特性(i)-(v)を有していた。
最新ディーゼルエンジンで予想される条件を反復試験するために、少量の亜鉛ネオデカノエートの形態の金属汚染を使用した燃料に加えてエンジンを運転する。
使用した燃料は下記の表1に示された特性を有する低硫黄含量ディーゼル燃料であった。
【0012】
【表1】

【0013】
上記された試験プロトコルを使用して種を試験した。結果を下記の表2に示す。また、通常のPIBS-PAM洗剤を比較のために試験した。3ppmの亜鉛ネオデカノエートの形態のZnを全ての試験(未処理燃料単独以外)につき燃料に添加した。
【0014】
【表2】

【0015】
結果は未処理燃料への亜鉛の添加がトルク損失の大きな増加を生じることを示す。市販のPIBSA-PAM洗剤のみが100ppmの処理率で限界の改良を示した。PIBSA-PAM洗剤は高処理率で有効であった。塩は重要なことに低処理率で、その市販の洗剤よりも大きい改良を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量の金属含有種を含むディーゼル燃料を使用して運転されるディーゼルエンジン中のインジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少させる方法であって、その方法がカルボン酸とジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンの反応により生成された塩をディーゼル燃料に添加することを含み、そのディーゼルエンジンが複数の噴霧穴を有する燃料インジェクターを備えており、夫々の噴霧穴が入口及び出口を有し、かつ燃料インジェクターが下記の特性:
(i) 噴霧穴の入口直径が出口直径より大きいようにテーパーをもたされている噴霧穴、
(ii) 0.10mm以下の出口直径を有する噴霧穴、
(iii) 入口の内部エッジが丸められている噴霧穴、
(iv) 6個以上の噴霧穴、
(v) 250℃を越える運転チップ温度
の一つ以上を有することを特徴とする上記方法。
【請求項2】
燃料インジェクターが特性(i)〜(v)の二つ、好ましくは三つ、更に好ましくは四つ、最も好ましくは五つ全てを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃料インジェクターが少なくとも特性(i)及び(ii)、好ましくは少なくとも特性(i)、(ii)及び(iii)、更に好ましくは少なくとも特性(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を有する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸が脂肪酸又は脂肪酸の混合物、好ましくはトール油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、大豆脂肪酸又はヒマワリ油脂肪酸を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
塩を燃料の重量を基準として、20〜400ppm(重量基準)の量でディーゼル燃料に添加する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
金属含有種が亜鉛、銅、鉄、鉛、セリウム、I族もしくはII族の金属、白金又はマンガンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
金属含有種が亜鉛を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
金属含有種が燃料によって運ばれた触媒を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ディーゼル燃料中の金属含有種の量(種中の金属の合計量に関して表わされる)がディーゼル燃料の重量を基準として、0.1〜50ppm(重量基準)である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ディーゼルエンジン中のインジェクター付着物を実質的に除去し、又はその発生を減少させるためのカルボン酸とジ-n-ブチルアミン又はトリ-n-ブチルアミンの反応により生成された塩の使用であって、ディーゼルエンジンが請求項1で定義される特性(i)〜(v)の一つ以上を有する燃料インジェクターを備えており、少量の金属含有種を含むディーゼル燃料を使用して運転されることを特徴とする上記使用。
【請求項11】
ディーゼル燃料がアルコール成分を含まない、請求項1から9のいずれかに記載の方法、又は請求項10記載の使用。

【公開番号】特開2008−64099(P2008−64099A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231781(P2007−231781)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】