説明

燃料ガス利用装置

【課題】バッテリの充電量を確保する燃料ガス利用装置を提供する。
【解決手段】バッテリ4と、燃料ガスが貯留される燃料ガス貯留部8と、フューエルリッド14と、フューエルリッド14の開閉状態を検出する開閉状態検出手段16と、燃料ガス貯留部8に貯留された燃料ガスの状態である圧力及び/又は温度を検出する燃料ガス状態検出手段11と、燃料ガス供給装置200と通信を行うための通信手段19と、開閉状態検出手段16からフューエルリッド14が開状態である旨の信号を受信すると、燃料ガス状態検出手段11から入力された燃料ガスの状態を、通信手段19を介して燃料ガス供給装置200に知らせるために充填通信を行う制御手段2cと、を備え、制御手段2cは、充填通信を開始した後、開閉状態検出手段16から受信する信号によって、フューエルリッド14が開状態のまま、所定時間が経過したと判断した場合には充填通信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の燃料ガス供給装置から供給される燃料ガスを利用する燃料ガス利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化剤ガスである酸素を含む空気と、燃料ガスである水素とが供給され、これらを用いて燃料電池により電極反応を起こし、それによって発生する電力によりモータを駆動させて移動する燃料電池車の実用化が進められている。燃料電池車には水素ガスを貯留し、燃料電池に水素を供給するための水素タンクが備えられている。また、燃料電池車の運転席には水素タンクに現在貯留されている水素ガスの残量を示すメータが備えられ、燃料電池車の走行に伴って水素タンクに貯留されている水素ガスの残量が少なくなると、上記のメータを見ることでこれを知った運転者は、燃料電池車を運転して水素ステーションに移動させる。そして、水素供給ステーションに備えられた水素供給装置によって、燃料電池車の水素タンクに水素が供給(充填)される。
【0003】
燃料電池車の水素タンクに水素が供給される際に、燃料電池車は水素ステーションのディスペンサとの間で通信(以下、充填通信と記す。)を行う。すなわち、燃料電池車は、水素タンク内に充填された水素の温度や圧力などの情報をディスペンサに送信し、ディスペンサは燃料電池車から受信した当該情報に基づいて水素を供給する際の圧力や流量、流速などを調整する。
【0004】
特許文献1には、水素を補給するための車両側の水素補給口(水素充填口)に赤外線通信装置を設け、リッド(フューエルリッド)が開けられると、ECU(Electric Control Unit)が水素補給管内の水素の圧力や温度の情報を取得して、赤外線通信装置を介して外部の水素補給装置(ディスペンサ)に当該情報を伝える技術について記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、リッドスイッチが不要となるため、リッドの小型化に対応することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−198944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、ECUが水素補給管内の圧力や温度をモニタリングし、水素補給管内の圧力が一定以上になったときに、充填通信の終了信号を発信する。したがって、特許文献1に記載の技術では、リッドが開けられた状態で燃料電池車が長時間放置された場合にも、上記終了信号がなければ、ECUは水素補給管内の水素の圧力や温度の情報を取得し続け、赤外線通信装置を介して外部の水素補給装置に当該情報を送信し続けることとなる。つまり、特許文献1に記載の技術では、リッドが開けられた状態で燃料電池車が放置されると、時間の経過とともにバッテリの充電量が除々に減少していく。
したがって、特許文献1に記載の技術では、リッドが開けられた状態で燃料電池車が長時間放置された場合に、バッテリの充電量が下がり、それに伴う放電能力の低下により燃料電池始動時にエアコンプレッサ等を起動できず、燃料電池車を始動することができない(つまり、バッテリが上がる。)という状況に陥る可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、バッテリの充電量を確保する燃料ガス利用装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として本発明は、外部の燃料ガス供給装置から供給される燃料ガスを利用する燃料ガス利用装置において、前記燃料ガス利用装置が備える機器に電力を供給するバッテリと、前記燃料ガス供給装置から供給された燃料ガスが貯留される燃料ガス貯留部と、前記燃料ガス供給装置から燃料ガスが供給される供給口を覆うフューエルリッドと、前記フューエルリッドの開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、前記燃料ガス貯留部に貯留された燃料ガスの状態である圧力及び/又は温度を検出する燃料ガス状態検出手段と、前記燃料ガス供給装置と通信を行うための通信手段と、前記開閉状態検出手段から前記フューエルリッドが開状態である旨の信号を受信すると、前記燃料ガス状態検出手段から入力された前記燃料ガスの状態を、前記通信手段を介して前記燃料ガス供給装置に知らせるために、前記バッテリから供給される電力を用いて充填通信を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記充填通信を開始した後、前記開閉状態検出手段から受信する信号によって、前記フューエルリッドが開状態のまま、所定時間が経過したと判断した場合には前記充填通信を停止することを特徴とする。
【0009】
これによって本発明は、フューエルリッドが開状態のまま燃料電池車(燃料ガス利用装置)が長時間放置された場合でも、所定時間が経過すると制御手段が充填通信を停止するため、必要なバッテリの充電量(SOC;State Of Charge)を確保することができ、充填通信を長時間継続して行うことに起因するバッテリ上がりを防止することができる。
【0010】
また、本発明は、前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段を備え、前記制御手段は、前記開閉状態検出手段から前記フューエルリッドが開状態である旨の信号を受信した時に、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧に対応して、前記所定時間を決定することを特徴とする。
【0011】
これによって本発明は、フューエルリッドが開かれた時点でのバッテリの電圧に対応して充填通信時間を決定できるとともに、必要以上に充填通信を行わないことによってバッテリの充電量(SOC;State Of Charge)を確保することができる。
【0012】
また、本発明は、前記制御手段は、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧が大きいほど、前記所定時間を長くするように設定されていることを特徴とする。
【0013】
これによって本発明は、フューエルリッドが開かれた時点でのバッテリの電圧を考慮した場合に許容される最大限の時間、充填通信を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段を備え、前記制御手段は、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧が、予め設定された所定電圧以下となった場合には、前記充填通信を停止することを特徴とする。
【0015】
これによって本発明は、フューエルリッドが開状態のまま放置された時間に関わらず、バッテリの電圧が所定値以下となった場合には、ただちに充填通信を停止する。したがって、本発明によれば、必要なバッテリの充電量(SOC;State Of Charge)を確保することができる。
【0016】
また、本発明は、前記制御手段は、前記充填通信を開始してから前記フューエルリッドが開状態のまま前記所定時間が経過した時を基準として、現在、前記燃料ガス貯留部に燃料ガスが供給されている、又は、過去所定時間内に前記燃料ガス貯留部に燃料ガスが供給されたと、前記燃料ガス状態検出手段から入力された信号によって判断した場合には、前記充填通信をさらに所定延長時間だけ継続することを特徴とする。
【0017】
これによって本発明は、フューエルリッドが開状態のまま所定時間が経過したときでも、例えば、燃料ガス供給装置から現在燃料ガスを供給中であった場合などに充填通信を所定時間延長して行うことによって、必要なバッテリの充電量(SOC;State Of Charge)を確保しつつ、燃料ガスの充填を継続して行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バッテリの充電量を確保する燃料ガス利用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る燃料電池車の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】燃料電池車の水素タンクへの水素の充填が完了するまでの時間と、その頻度を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】(a)は、本発明の第2実施形態に係る燃料電池車のバッテリ電圧と、充填通信時間との関係を示す図であり、(b)は、各バッテリ電圧における充填通信のオン/オフを示す図であり、(c)は、充填通信開始からの経過時間にともなうバッテリ電圧の変化を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】(a)は、燃料電池車の水素タンクへの水素の充填時間に対する水素タンク内の圧力変化を示す図であり、(b)は、燃料電池車の水素タンクへの水素の充填時間に対する水素タンク内の水素ガスの温度変化を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】(a)は、本発明の第4実施形態に係る燃料電池車について、充填通信開始からの経過時間にともなうバッテリ電圧の変化を示す図であり、(b)は、各バッテリ電圧における充填通信のオン/オフを示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
<燃料電池車の構成>
図1は、本発明に係る燃料電池車の構成を示すブロック図である。燃料電池車100は、燃料電池1と、ECU2と、VCU(チョッパ)3と、バッテリ4と、PDU(インバータ)5と、モータ6と、コンプレッサ7と、水素タンク8と、遮断弁9と、IG(イグニッション)10と、フューエルリッドオープナスイッチ13と、フューエルリッド14と、フューエルリッドオープナ15と、水素充填口17と、逆止弁18と、インタフェース19と、各種センサと、各配管を備えている。
ここで、図1では、酸素(酸化剤ガス)を含む空気又は水素(燃料ガス)の流れを実線の矢印で示し、三相交流電流を三重の実線で示し、直流電流を二重の実線で示し、所定の情報を伝送するための電気信号を破線の矢印で示した。
燃料電池1は、アノード流路10aを介して水素(燃料ガス)が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路10bを介して酸素(酸化剤ガス)を含む空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。
2H→4H+4e・・・式(1)
+4H+4e→2HO・・・式(2)
【0022】
ECU2は、燃料電池車100を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースなどの電子回路(図示せず)を含んで構成されている。ECU2は、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機器を制御し、各種処理を実行するようになっている。また、ECU2には必要に応じて、後記するVCU3を介してバッテリ4から電力が供給される。
ECU2は、充填通信制御部2cを備える。充填通信制御部2cは、水素タンク8に水素を充填する際に、外部の水素ステーション200が備えるディスペンサ(水素充填装置)22との間で充填通信を行うための各種制御処理を行う。
すなわち、充填通信制御部2cは、後記する圧力センサ11及び/又は温度センサ12から取得した水素タンク8内の水素圧力や水素温度などを、ECU2の図示しない記憶部に格納する。そして、充填通信制御部2cは、水素ステーション200のディスペンサ22との間で充填通信を行う際には、上記の情報を記憶部(図示せず)から読み出して、インタフェース19及び通信コネクタ24を介してディスペンサ22に送信する。また、充填通信制御部2cは、所定時間ごとに水素タンク8内の水素圧力や水素温度などの情報を記憶部(図示せず)に格納し、更新する。
【0023】
なお、充填通信制御部2cがディスペンサ22に対して送信する情報として、上記で説明した水素タンク8内の水素圧力や水素温度の他、水素タンク8の材質(アルミニウム合金製、樹脂製等)や、この材質に応じた水素タンク8の許容温度及び許容圧力、水素タンク8の使用期限、水素の充填回数などが挙げられる。このように、充填通信制御部2cがディスペンサ22に対して送信する情報を、以下、充填通信情報と記す。充填通信情報は、ECU2の図示しない記憶部に記憶され、充填通信を行う際には、充填通信制御部2cが記憶部(図示せず)から読み出して、ディスペンサ22に送信することとなる。
また、充填通信制御部2cは、後記で説明するフューエルリッド開閉センサ16によって、フューエルリッド14が開状態(ロック解除)になった旨の信号をトリガとして、充填通信を開始し、上記で説明した各情報をインタフェース19を介して外部に送信する。
さらに、充填通信制御部2cは、電圧センサ20により検出されたバッテリ4の電圧を取得し、当該電圧を監視する機能も有する。
【0024】
VCU(Voltage Control Unit)3は、ECU2からの指令に従って、燃料電池1の出力電流及び出力電圧を制御すると共に、バッテリ4の充放電を制御する。バッテリ4は、例えば、複数のリチウムイオン型の二次電池を備えて構成されており、燃料電池1の過剰電力やモータ6からの回生電力を充電したり、燃料電池1の不足電力をアシスト(補助)したりする。PDU(Power Drive Unit)5は、ECU2からの指令に従って、VCU3から入力された直流電流を三相交流電流に変換し、モータ6に供給するインバータである。モータ6は、燃料電池1及び/又はバッテリ4からの電力によって、燃料電池車100が走行するための駆動力を発生する。
【0025】
コンプレッサ7は、ECU2の指令に従って作動すると酸素を含む空気を取り込み、配管11bを介して、カソード流路10bに供給するようになっている。水素タンク8は、配管11a、遮断弁9、配管12aを介して、アノード流路10aの入口に接続されている。そして、遮断弁9がECU2からの開指令によって開かれると、水素が、水素タンク8から遮断弁9などを通って、アノード流路10aに供給されるようになっている。ちなみに、ECU2は、IG10のON信号を検知すると、燃料電池1を発電するべくアノード流路10aに水素を供給するため、遮断弁9を開く設定となっている。
【0026】
遮断弁9は配管12aを介してアノード流路10aと接続され、ECU2からの指令に従った開閉により、水素タンク8から配管11aを介した水素の供給を調整する。IG10は、燃料電池車100の起動スイッチであり、運転席周りに設けられている。ちなみに、ECU2はIG10と接続されており、IG10のON/OFF信号を検知するようになっている。
なお、上記のECU2による燃料電池1の発電などの制御については、周知の手法を用いるため、詳細な説明を省略する。
【0027】
圧力センサ11は、水素タンク8内の水素圧力を検出するセンサであり、水素タンク8内に配置されている。そして、圧力センサ11は、検出した水素タンク8内の水素圧力を、ECU2に出力するようになっている。
温度センサ12は、水素タンク8内の水素温度を検出するセンサであり、水素タンク8内に配置されている。そして、温度センサ12は、検出した水素タンク8内の水素温度を、ECU2に出力するようになっている。
なお、圧力センサ11及び温度センサ12の位置は、適宜変更してよい。
【0028】
フューエルリッドオープナスイッチ13は、フューエルリッド14を開くためのスイッチであり、運転席周りに設けられている。ちなみに、ECU2は、フューエルリッドオープナスイッチ13と接続されており、フューエルリッドオープナスイッチ13が押下された場合に、その信号を検知するようになっている。
【0029】
フューエルリッド14は、水素充填時に開かれる回動蓋であり、燃料電池車100の車両側部に設けられている。フューエルリッド14は、通常時(非水素充填時)に水素充填口17を覆い、閉状態でロックされている。一方、水素充填時に運転者がフューエルリッドオープナスイッチ13を押下することによって、後記するフューエルリッドオープナ15がECU2からの開指令を受けた場合、フューエルリッド14は開方向に回動(ロック解除)され、開状態となるように構成されている。
フューエルリッドオープナ15は、ECU2からの指令に従って、上記のようにフューエルリッド14のロック又はロック解除を行う。ちなみに、フューエルリッドオープナ15への開指令の伝達方式は、上記のような電気的方式に限らない。例えば、フューエルリッドオープナ15と運転席下の開放レバー(図示せず)とがワイヤケーブル(図示せず)によって接続された機械的な伝達方式でもよい。
【0030】
フューエルリッド開閉センサ16は、フューエルリッド14の開閉状態を検出するセンサであり、フューエルリッド14の近傍に設けられている。そして、フューエルリッド開閉センサ16は、フューエルリッド14の開閉状態に対応した信号をECU2に出力するようになっている。
なお、上記で説明したように、ECU2は、フューエルリッド開閉センサ16によってフューエルリッド14が開状態(ロック解除)になった旨の信号を受信すると、充填通信制御部2cを起動させ、外部の水素ステーション200との間で充填通信を開始し、充填通信情報を送信する。
【0031】
水素充填口17は、水素タンク8への水素充填時に、外部の水素ステーション200の水素充填ノズル23が接続される部分であり、車両側部に設けられている。
逆止弁18は、水素充填口17を介して供給された水素を、水素タンク8への一方向に流れるよう規制する弁構造となっている。また、逆止弁18は、水素充填時に水素充填口17及び配管13aを介して水素が所定の供給圧で供給されると開くことによって、配管14aを介して水素タンク8に水素を充填するようになっている。
インタフェース19は、水素充填時に水素ステーション200の通信コネクタ24が接続される部分であり、水素充填口17の近傍に設けられている。電圧センサ20は、バッテリ4に接続されており、バッテリ4の電圧を検出してECU2に出力するようになっている。
【0032】
次に、燃料電池車100に燃料ガスである水素を供給する水素ステーション200について、簡単に説明する。
水素ステーション200は、水素貯蔵タンク21と、ディスペンサ22と、水素充填ノズル23と、通信コネクタ24と、を備えている。水素貯蔵タンク21は、燃料電池車100に水素を供給するための水素を高圧で貯蔵している。ディスペンサ(水素充填装置)22は、水素貯蔵タンク21と接続されており、燃料電池車100の水素タンク8に供給する水素の充填開始及び停止、水素を充填する際の圧力や流量などを制御する。また、ディスペンサ22は、燃料電池車100の水素タンク8に水素を充填する際に、インタフェース19及び後記する通信コネクタ24を介して、ECU2の充填通信制御部2cとの間で充填通信を行う。そして、ディスペンサ22は、充填通信を行うことによって、水素タンク8内の水素圧力や水素温度などの情報を取得し、当該情報に基づいて水素貯蔵タンク21から供給された水素の圧力などを調整して、燃料電池車100の水素タンク8に水素を充填する。
【0033】
水素充填ノズル23は、ディスペンサ22を介して水素貯蔵タンク21と接続されており、燃料電池車100の水素タンク8に水素を充填する際に、水素充填口17に差し込まれる。そして、水素ステーション200の水素貯蔵タンク21から供給された水素は、ディスペンサ22によって圧力等が調整され、水素充填ノズル23及び水素充填口17、配管13a、逆止弁18、配管14aを介して水素タンク8に充填される。通信コネクタ24は、配線を接続するための器具であり、ディスペンサ22と接続されている。また、通信コネクタ24は、燃料電池車100の水素タンク8に水素を充填する際にインタフェース19に差し込まれる。
【0034】
<燃料電池車の動作1>
図2は、本実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。なお、上記で説明したように、ECU2の充填通信制御部2cは、フューエルリッド14が開状態になった旨の信号が、フューエルリッド開閉センサ16から入力された場合に充填通信を開始する。したがって、フューエルリッド14が開状態となってからの充填通信に関わる一連の処理は、ECU2の充填通信制御部2cが行うものとする。
図2のステップS101で、ECU2は、IG10がオフ状態となっているか否かを判断する。IG10がオフ状態となっている場合(ステップS101→Yes)、ECU2の処理は、ステップS102に進む。一方、IG10がオン状態となっている場合(ステップS101→No)、ECU2はステップ101の判断を繰り返す。
【0035】
ステップS102で、ECU2は、フューエルリッド14が開状態となっているか否かを判断する。フューエルリッド14が開状態となっている場合(ステップS102→Yes)、ECU2の処理はステップS103に進む。一方、フューエルリッド14が閉状態となっている場合、(ステップS102→No)、ECU2はステップ102の判断を繰り返す。
ステップS103で、ECU2は充填通信を開始する。つまり、ECU2は、図示しない記憶部から水素タンク8内の水素圧力及び/又は水素温度を含む充填通信情報を読み出し、インタフェース19を介して送信する。
次に、ステップS104で、ECU2は、充填通信を開始してからの経過時間が所定時間t以上であるか否かを判断する。ここで、所定時間tは予め設定された値(例えば、60min)である。
【0036】
図3は、燃料電池車の水素タンクへの水素の充填が完了するまでの時間と、その頻度を示す図である。燃料電池車100に水素が供給される直前での水素タンク8内の水素残量は、場合によってさまざまな値をとなる。例えば、水素タンク8に水素が十分に充填されている状態であっても、運転者の判断により水素ステーション200で水素の供給を受ける場合がある。この場合には、比較的短い時間(例えば、時間t:図3参照)で水素の充填が完了する。一方、水素タンク8内の水素がほとんど空の状態では、水素の充填が完了するまでに比較的長い時間(例えば、時間t:図3参照)を要する。
図3に示すような統計的なデータを予め取得しておき、上記で説明した所定時間t(図3参照)を、頻度の大部分(例えば、99%以上:図3の範囲αを参照)を包括できるように設定しておく。なお、予め設定された所定時間tは、ECU2の図示しない記憶部に記憶されている。
【0037】
再び図2に戻り、ステップS104で、充填通信を開始してから所定時間tが経過したと判断した場合(ステップS104→Yes)、ECU2はディスペンサ22に対して水素の充填を停止するよう指示する。つまり、ECU2は、インタフェース19及び通信コネクタ24を介して、ディスペンサ22に対し水素の充填を停止する旨の信号を送信する。
なお、ステップS105において、燃料電池車100が水素ステーション200ではない別の場所(例えば、駐車場など)に放置され、例えば、誤ってフューエルリッド14を開けたままの状態も考えられる。このような状況でも、つまり、水素充填ノズル23が水素充填口17に差し込まれているか否かに関わらず、ECU2は充填停止指示を、インタフェース19に対して送信するものとする。ちなみに、充填停止指示は、予め定められた所定の信号を出力すれば済むことであり、ECU2から充填停止指示を送信すること自体は、バッテリ4の充電量にはほとんど影響しない。
【0038】
次に、ステップS106で、ECU2は充填通信を停止する。また、充填通信を停止した後、ECU2は圧力センサ11や温度センサ12への通電を停止し、水素タンク8の圧力及び温度の取得も停止する。
次に、ステップS107で、ECU2は警告ランプ(図示せず)を点滅させる。警告ランプは、運転席の運転者が視認することが可能な位置に設けられている。ECU2は、当該警告ランプを点滅させることによって、フューエルリッド14が開いたまま放置されていることを運転者に通知する。
【0039】
なお、図示は省略したが、警告ランプの点滅においてもバッテリ4からの電力を要するので、上記警告ランプを予め定められた所定時間だけ点滅させるよう、ECU2の図示しない記憶部に設定しておくことが好ましい。この場合、警告ランプの点滅を開始してから上記所定時間が経過すると、ECU2は警告ランプの点滅を停止させる。ちなみに、後記する他の実施形態においても、警告ランプの点滅時間については上記と同様のことがいえる。
また、ECU2は、警告ランプの点滅と併せて、フューエルリッド14が開いたまま放置されていることを音声により運転者に通知してもよい。
【0040】
ステップS104で、充填通信を開始してから所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS104→No)、ECU2の処理はステップS108に進む。ステップS108で、ECU2はフューエルリッド14が閉状態であるか否かを判断する。ステップS108で、フューエルリッド14が閉状態である場合(ステップS108→Yes)、ECU2の処理はステップS109に進む。一方、フューエルリッド14が開状態である場合(ステップS108→No)、ECU2の処理はステップS104に戻る。ステップS109で、ECU2は充填通信を停止する。
【0041】
なお、図2のEND1における燃料電池車100としては、次のような状況が想定される。例えば、水素ステーション200で燃料電池車100が、水素タンク8の許容範囲内で最大限の水素を充填され(充填完了)、フューエルリッド14が閉められた状況が想定される。また、水素タンク8の許容範囲内で最大限の水素は充填されてはいないが、所定量の水素を充填した時点で水素供給を中止し、フューエルリッド14を閉めた状況が想定される。また、フューエルリッド14は開けられたものの、水素を充填せずに所定時間t内にフューエルリッド14が閉められた場合が想定される。
したがって、図2のEND1は、ECU2が異常(フューエルリッド14が所定時間t以上開けたままの状態である)を検知しないで、終了する場合である。
【0042】
これに対して、図2のEND2における燃料電池車100としては、次のような状況が想定される。例えば、燃料電池車100が、駐車場などの水素ステーション200以外の場所に放置され、何らかの誤りでフューエルリッド14が開けたままとなっている状況が想定される。また、フューエルリッド14自体が故障又は凍結などして、例えば運転者がフューエルリッド14を閉めようとしても完全には閉まらず、事実上フューエルリッド14が開けたままとなっている状況が想定される。また、水素ステーション200で燃料電池車100が水素の供給を受ける際に、ディスペンサ22との間での通信に不具合が生じて、水素充填ノズル23が差し込まれたものの水素が供給されずに、そのまま時間が経過してしまったという状況も想定される。
したがって、図2のEND2は、ECU2が異常を検知して警告ランプ(図示せず)を点滅させることによって、運転者に知らせて終了する場合である。
【0043】
ちなみに、END2の場合で、警告ランプ(図示せず)の点滅によって、フューエルリッド14が開状態のまま所定時間t以上放置されていることを運転者が知って、水素の充填を再度行いたいと考えた場合には、次のようにして対処することができる。
例えば、END2ではオフ状態となっているIG10を運転者がいったんオンにして、さらにオフに切り替えればよい。この場合にECU2の処理は、図2のステップS102に戻ることとなる。また、例えばEND2では開状態となっているフューエルリッド14を運転者がいったん閉め、さらに開けてもよい。この場合にECU2の処理は、図2のステップS103に戻ることとなる。
【0044】
<実施形態の効果1>
本実施形態に係る燃料電池車100によれば、フューエルリッド14が開いた状態が所定時間t以上継続した場合には、ECU2(充填通信制御部2c)が充填通信を停止する。そして、充填通信を停止した後は、充填通信制御部2cにおいて電力が消費されなくなるため、フューエルリッド14を開けたまま所定時間t以上が経過した場合でも、バッテリ4の充電量はほとんど下がらない。つまり、必要以上に充填通信を行わないことによってバッテリ4の充電量(SOC;State Of Charge)を確保し、バッテリ4が上がることを防止することができる。
【0045】
また、燃料電池車100によれば、充填通信を停止した後、ECU2は圧力センサ11や温度センサ12への通電を停止し、水素タンク8内での水素圧力及び水素温度の取得も停止する。したがって、フューエルリッド14を開けたまま所定時間t以上が経過した場合でも、圧力センサ11や温度センサ12で電力が消費されなくなるため、バッテリ4の充電量はほとんど下がらない。つまり、必要以上に充填通信を行わないことによってバッテリ4の充電量(SOC;State Of Charge)を確保し、バッテリ4が上がることを防止することができる。
【0046】
また、燃料電池車100によれば、充填通信を行う際の許容時間tは、図3に示す頻度の大部分(例えば、99%以上:図3の範囲αを参照)を包括できるように設定しておく。したがって、正常に水素の充填が行われる場合には、十分な量の水素を水素タンク8に充填することができる。
【0047】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る燃料電池車100の構成は、図1に示したものと同様であるため、燃料電池車100の各構成については説明を省略する。また、燃料電池車100の動作を説明する際にも、第1実施形態で図2を用いて説明した処理と同様の処理を行う部分については、説明を簡略化または省略する。
第1実施形態では、充填通信を継続して行う時間tが予め設定されていたのに対して、第2実施形態では、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧から充填通信時間を決定する点が異なる。
【0048】
<燃料電池車の動作2>
図4は、本発明の第2実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すステップS201,S202の処理はそれぞれ、図2に示すステップS101,S102の処理と同様であるから、説明を省略する。図4のステップS202で、フューエルリッド14が開状態であると判断した場合(ステップS202→Yes)、ECU2の処理はステップS203に進む。ステップS203で、ECU2は、バッテリ4の電圧値から充填通信を行う時間(以下、充填通信時間tと記す。)を決定する。
【0049】
図5(a)は、燃料電池車のバッテリ電圧と、充填通信時間との関係を示す図である。図5(a)の横軸は、フューエルリッド14が開かれた時点(つまり、ECU2がフューエルリッド開閉センサ16から開信号を受信した時点)でのバッテリ4の電圧を示している。また、縦軸は、バッテリ4の電圧に対応する充填通信時間tを示している。図5(a)に示すように、ECU2は、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧が所定電圧V以上である場合(例えば、V,V)には充填通信を行い、バッテリ4の電圧が所定電圧Vより小さい場合(例えば、V)には充填通信は行わない。つまり、電圧Vは、バッテリ4が上がることを防止する際の判断基準となるしきい値であり、予め設定された値である。ちなみに、Vはバッテリ4が上がってしまうか否かの境界となる電圧よりも所定電圧だけ余裕を持たせた値となっている。
【0050】
図5(b)は各バッテリ電圧における充填通信のオン/オフを示す図である。ECU2は、図5(b)に示すように、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧(V,V)に対応した時間(t,t)だけ充填通信を行う。なお、上記で説明したように、バッテリ4の電圧がV(図5(a)参照)の場合には、ECU2は充填通信を行わない。
【0051】
図5(c)は充填通信開始からの経過にともなうバッテリ電圧の変化を示す図である。ちなみに、図5(c)に示す実線のグラフは、フューエルリッド14が開けられた時点でのバッテリ4の電圧がVである場合を示す。同様に、一点鎖線のグラフはフューエルリッド14が開けられた時点でのバッテリ4の電圧がVである場合を示し、点線のグラフはバッテリ4の電圧がVである場合を示す。
図5(c)に示すように、充填通信を開始してからの経過時間に伴いバッテリ4の電圧は低下し、所定の時間(t,t)で上記のしきい値電圧Vまで下がる。また、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧が高いほど(V<V)、しきい値電圧Vに達するまでの経過時間(t<t)が長くなる。
【0052】
したがって、図5(a),(b)に示すように、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧が高いほど(V<V)、充填通信時間tが長くなるように(t)、ECU2に予め設定されている。このような情報は事前の実験によって得られ、ECU2の図示しない記憶部に予め記憶されている。そして、ECU2は、フューエルリッドセンサ16から開信号を受信すると、上記の記憶部に記憶されている図5(a)に示す情報に基づいて、上記のように充填通信時間tを決定する。
【0053】
再び図4に戻って、ステップ204で、ECU2は充填通信を開始する。そして、ステップS205で、ECU2は充填通信を開始してから充填通信時間tが経過したか否かを判断する。充填通信を開始してから充填通信時間tが経過した場合には(ステップS205→Yes)、ECU2の処理はステップS206に進む。充填通信を開始してから上記の充填通信時間tが経過していない場合には(ステップS205→No)、ECU2の処理はステップS209に進む。
なお、図4に示すステップS206〜S210の処理は、図2に示すステップS105〜S109の処理と同様であるから説明を省略する。
【0054】
<実施形態の効果2>
本実施形態に係る燃料電池車100によれば、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧を検出して、当該電圧に基づいて充填通信を行う時間(充填通信時間t)を決定する。また、充填通信時間tはバッテリ4の上記電圧が高いほど長く設定され、充填通信時間tを経過した場合のバッテリ4の電圧として所定のしきい値電圧Vを確保することができる。すなわち、燃料電池車100によれば、フューエルリッド14が開かれた時点でのバッテリ4の電圧に応じて許容される最大限の時間だけ、水素の充填を行うことができるとともに、必要以上に充填通信を行わないことによって、バッテリ4の充電量(SOC;State Of Charge)を確実に確保することができる。
【0055】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態に係る燃料電池車100の構成は、図1に示したものと同様であるため、燃料電池車100の各構成については説明を省略する。
本実施形態では、フューエルリッド14が開けられた時点でのバッテリ4の電圧から、充填通信時間tを算出することを特徴とする第2実施形態の場合に加えて、さらに、所定の場合には充填通信時間を延長する処理を行うことを特徴とする。したがって、本実施形態に係る燃料電池車100の動作において、第2実施形態と同様の処理を行う箇所については説明を省略する。
【0056】
<燃料電池車の動作3>
図6は、本発明の第3実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すステップS301〜S305の処理はそれぞれ、図4に示すステップS201〜S205の処理と同様であるから、説明を省略する。図6のステップS305で、充填通信を開始してから、図5を用いて説明した充填通信時間tが経過した場合には(ステップS305→Yes)、ECU2の処理はステップS306に進む。ステップS306で、ECU2は、水素タンク8内の水素圧力が上昇中であるか否か判断する。これは、例えば、充填通信を開始してから充填通信時間tが経過した時点を基準として、10secの間に水素タンク8内の水素圧力が0.5MPa以上、上昇しているか否かにより判断することができる。
なお、例えば、充填通信を開始してから充填通信時間tが経過した時点を基準として、過去3minの間に水素タンク8内の水素圧力が5MPa以上、上昇しているか否かにより、ECU2がステップS306の判断を行ってもよい。すなわち、この場合には、過去に水素タンク8内の水素圧力が上昇した履歴があるか否かをECU2が判断することとなる。
【0057】
水素タンク8内の水素圧力が上昇中である場合には(ステップS306→Yes)、ECU2の処理はステップS307に進む。一方、水素タンク8内の水素圧力が上昇中でない場合には(ステップS306→No)、ECU2の処理はステップS310に進む。
ステップS307で、ECU2は、水素タンク8に充填されている水素ガス圧力の上昇率から充填通信延長時間tを算出する。ここで、充填通信延長時間tとは、充填通信を開始してからステップS303で算出した充填通信時間tが経過した時刻を基準として、さらに充填通信を行う時間を指すものとする。
【0058】
図7(a)は、燃料電池車の水素タンクへの水素の充填時間に対する水素タンク内の圧力変化を示す図である。ちなみに、図7(a)は、水素タンク8が空の状態から正常に水素の充填が行われた場合のデータである。
ECU2は、下記の式(3)を用いて充填通信延長時間t[min]を算出する。下記式(3)において、P[MPa]は充填が完了した場合の水素タンク8内の水素圧力であり、これは事前の実験によって取得されて、ECU2の図示しない記憶部に記憶されている。また、P[MPa]は現在(ECU2が圧力センサ11からの情報を取得した時点)での水素タンク8内の水素圧力であり、P[MPa]は現在より所定時間tだけ前の水素タンク8内の水素圧力であり、tα[min]は所定の余裕時間である。
なお、所定時間tは予め定めされた値であり、例えば、1minとすることができる。また、余裕時間tαも予め定めされた値であり、例えば、3minとすることができる。
=t(P−P)/(P−P)+tα・・・式(3)
【0059】
図7(a)で、現在時刻tにおける圧力がPであり、時刻tよりも所定時間tだけ前の時刻tにおける圧力がPである場合に、上記式(3)で表されるt(P−P)/(P−P)は、図7(a)に示す時間tと等しくなる。つまり、充填が完了するまでには、さらに時間tβを要することとなる。
図7(a)に示す現在時刻tにおけるグラフの勾配が大きいほど上記のtβの値は大きくなる。したがって、式(3)に示す余裕時間tαは、図7(a)に示すグラフの勾配が最も大きくなる点を現在時刻tとした場合の時間tβの値とすればよい。
【0060】
ちなみに、水素を充填する際に、水素タンク8の許容範囲の最大限(図7(a)に示すP参照)まで充填することが必ずしも必要であるわけではなく、余裕時間tαの値を適宜調整して、上記の方法で算出した値よりも短く設定してもよい。また、充填通信延長時間tを、第1実施形態で図3を用いて説明した所定時間tの値に設定することとしてもよい。
なお、本実施形態では、充填通信は最長で、充填通信時間t+充填延長時間tだけ行われることになる。したがってこれを考慮して、ステップ303で算出する充填通信時間tを予め所定時間だけ短めに設定しておくことが好ましい。
【0061】
再び図6に戻って、ステップS308で、ECU2はフューエルリッド14が閉状態であるか否か判断する。フューエルリッド14が閉状態である場合(ステップS308→Yes)、ECU2の処理はステップS314に進む。一方、フューエルリッド14が開状態である場合(ステップS308→No)、ECU2の処理はステップS309に進む。ステップS309で、ECU2は延長経過時間が充填延長時間t以上であるか否か判断する。ここで「延長経過時間」とは、充填通信を開始してからステップS303で算出した充填通信時間tが経過した時刻を基準(時間ゼロ)としている。そして、延長経過時間が充填延長時間t以上である場合(ステップS309→Yes)、ECU2の処理はステップS310に進む。一方、延長経過時間が充填延長時間t未満である場合(ステップS309→No)、ECU2の処理はステップS308に戻る。
なお、ステップS310〜S314の処理は、図4に示すステップS206〜S210の処理と同様であるから説明を省略する。
【0062】
なお、図6のステップS306では、ECU2が、水素タンク8内の水素圧力が上昇中であるか否か判断することとしたが、水素温度が上昇中であるか否かで判断してもよい。これは、例えば、充填通信を開始してから充填通信時間tが経過した時点を基準として10secの間に、水素タンク8内の水素温度が1℃以上、上昇しているか否かにより判断することができる。
また、例えば、充填通信を開始してから充填通信時間tが経過した時点を基準として、過去3minの間に水素タンク8内の水素温度が10℃以上、上昇しているか否かによりECU2がステップS306の判断を行ってもよい。
【0063】
また、図6のステップS307で充填延長時間tを算出する方法は、上記で説明したように、水素タンク8の圧力センサ11から入力された水素圧力に基づいて算出する方法の他に、水素タンク8の温度センサ12から入力された水素温度に基づいて算出する方法も考えられる。
図7(b)は、燃料電池車の水素タンクへの水素の充填時間に対する水素タンク内の水素ガスの温度変化を示す図である。ちなみに、図7(b)は、水素タンク8が空の状態から正常に水素の充填が行われた場合のデータである。
水素タンク8の水素温度を用いる場合、ECU2は、下記の式(4)を用いて充填延長時間t[min]を算出する。下記式(4)において、T[℃]は充填が完了した場合の水素タンク8内の水素温度であり、これは事前の実験によって取得される。また、T[℃]は現在(ECU2が温度センサ12から水素温度を受信した時点)での水素タンク8内の水素温度であり、T[℃]は現在より所定時間tだけ前の水素タンク8内の水素温度であり、tα[min]は所定の余裕時間である。
なお、所定時間tは予め定めされた値であり、例えば、1minとすることができる。また、余裕時間tαも予め定めされた値であり、例えば、3minとすることができる。
=t(T−T)/(T−T)+tα・・・式(4)
なお、余裕時間tαの設定などについては上記と同様であるから、説明を省略する。
【0064】
<実施形態の効果3>
本実施形態に係る燃料電池車100によれば、フューエルリッド14が開状態のまま所定の充填通信時間が経過した場合でも、例えば、水素ステーション200で水素を供給中であった場合などには充填通信を所定時間tだけ延長して行うことができる。すなわち、水素を充填中である(又は充填された履歴がある)場合には継続して充填通信を行うことができる。また、充填通信時間tを、当該充填通信時間tの経過後も水素の充填が延長して行われることを考慮して設定することで、バッテリ4の電圧に応じて許容される最大限の時間、水素の充填を行うことができる。
【0065】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態に係る燃料電池車100の構成は、図1に示したものと同様であるため、燃料電池車100の各構成については説明を省略する。また、燃料電池車100の動作を説明する際にも、第1実施形態で図2を用いて説明した処理と同様の処理を行う部分については、説明を簡略化または省略する。
第4実施形態では、ECU2(充填通信制御部2c)がバッテリ4の電圧を監視し、当該電圧が所定電圧以下となった場合には、充填通信を停止する点が、第1実施形態と異なる。
【0066】
<燃料電池車の動作4>
図8は、本発明の第4実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すステップS401,S402の処理はそれぞれ、図2に示すステップS101,S102の処理と同様であるから、説明を省略する。図8のステップS402で、フューエルリッド14が開状態であると判断した場合(ステップS402→Yes)、ECU2の処理はステップS403に進む。ステップS403で、ECU2は充填通信を開始する。ステップS404でECU2は、バッテリ4の電圧が予め定められた所定電圧V以下であるか否かを判断する。
【0067】
図9(a)は、本発明の第4実施形態に係る燃料電池車について、充填通信開始からの経過時間にともなうバッテリ電圧の変化を示す図である。図9(a)に示すように、フューエルリッド14が開かれた時点(t=0)でのバッテリ4の電圧はVである。そして、ECU2が充填通信を開始してから時間が経過するとともに、バッテリ4の電圧は除々に低下していく。ECU2は、所定時間ごとにバッテリ4の電圧を監視し、バッテリ4の電圧が予め定められた所定電圧V以下となるか否かを判断する。つまり、電圧Vは、バッテリ4が上がることを防止する際の判断基準となるしきい値である。ちなみに、電圧Vはバッテリ4が上がってしまうか否かの境界となる電圧よりも、所定電圧だけ余裕を持たせた値となっている。
図9(b)は、各バッテリ電圧における充填通信のオン/オフを示す図である。図9(b)に示すように、ECU2は、バッテリ4の電圧が所定電圧V(又はV以下)まで下がるまでの時間t1の間は充填通信を行い、それ以降は充填通信を停止するように設定されている。
【0068】
再び図8に戻って、ステップS404で、バッテリ4の電圧が所定電圧V以下である場合には(ステップS404→Yes)、ECU2の処理はステップS405に進む。なお、図8に示すステップS405〜S407の処理は、図2に示すステップS105〜S107の処理と同様である。
一方、バッテリ4の電圧が所定電圧Vより大きい場合(ステップS404→No)、ECUの処理はステップS408に進む。ステップS408で、ECU2は、充填通信を開始してから予め定められた所定時間tが経過したか否かを判断する。ちなみに、当該所定時間tは実施形態1において図3を用いて説明したものと同様である。
充填通信を開始してから所定時間t以上が経過している場合(ステップS408→Yes)、ECU2の処理はステップS405に進む。一方、充填通信を開始してから所定時間tが経過していない場合(ステップS408→No)、ECU2の処理はステップS409に進む。ステップS409で、ECU2はフューエルリッド14が閉状態であるか否かを判断する。フューエルリッド14が閉状態である場合(ステップS409→Yes)、ECU2は充填通信を停止する(ステップS410)。一方、フューエルリッド14が開状態である場合(ステップS409→No)、ECU2の処理はステップS404に戻る。
【0069】
<実施形態の効果4>
本実施形態に係る燃料電池車100によれば、ECU2がバッテリ4の電圧を監視し、バッテリ4の電圧が所定電圧V以下となった場合には、充填通信を開始してからの経過時間に関わらず充填通信を停止するため、必要なバッテリ4の充電量(SOC;State Of Charge)を確実に確保することができる。また、仮に、バッテリ4の充填量が所定電圧Vより高い場合でも、フューエルリッド14が開いた状態が所定時間t以上継続した場合には、ECU2は充填通信を停止する。したがって、充填通信を長時間継続して行うことに起因するバッテリ上がりを防止することもできる。
【0070】
≪第5実施形態≫
本発明の第5実施形態に係る燃料電池車100の構成は、図1に示したものと同様であるため、燃料電池車100の各構成については説明を省略する。
本実施形態では、ECU2(充填通信制御部2c)がバッテリ4の電圧を監視し、当該電圧が所定電圧以下となった場合には、充填通信を停止することを特徴とする第4実施形態の場合に加えて、さらに、所定の場合には充填通信時間を延長する処理を行うことを特徴とする。したがって、本実施形態に係る燃料電池車100の動作において、第4実施形態と同様の処理を行う箇所については説明を省略する。
また、充填通信時間の延長について第3実施形態の説明と重複する点については、説明を簡略化又は省略する。
【0071】
<燃料電池車の動作5>
図10は、本発明の第5実施形態に係る燃料電池車の充填通信の処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示すステップ501〜S503の処理はそれぞれ、図8に示すステップS401〜S403の処理と同様であるから、説明を省略する。図10のステップS504で、ECU2はバッテリ4の電圧が、予め定められた所定電圧V以下であるか否かを判断する。そして、バッテリ4の電圧が所定電圧V以下である場合には(ステップS504→Yes)、ECU2の処理はステップS511に進む。一方、バッテリ4の電圧が所定電圧Vより高い場合には(ステップS504→No)、ECU2の処理はステップS505に進む。
【0072】
ステップS505で、充填通信を開始してから、図3を用いて説明した所定時間tが経過した場合(ステップS505→Yes)、ECU2の処理はステップS506に進む。一方、充填通信を開始してから所定時間tが経過していない場合(ステップS505→No)、ECU2の処理はステップS514に進む。
ステップS506でECU2は、上記で説明したように、水素タンク8内の水素圧力(又は水素温度)が上昇中であるか否か判断する。水素タンク8内の水素圧力が上昇中である場合(ステップS506→Yes)、ECU2の処理はステップS507に進む。一方、水素タンク8内の水素圧力が上昇中でない場合(ステップS506→Yes)、ECU2の処理はステップS511に進む。
次に、ステップS507でECU2は、上記で説明したように、充填延長時間tを算出する。次に、ステップS508でECU2は、フューエルリッド14が閉状態であるか否かを判断する。フューエルリッド14が閉状態である場合(ステップS508→Yes)、ECU2の処理はステップS515に進む。一方、フューエルリッド14が開状態である場合(ステップS508→No)、ECU2の処理はステップS509に進む。
【0073】
ステップS509で、ECU2は、バッテリ4の電圧が予め定められた所定電圧V以下であるか否かを判断する。そして、バッテリ4の電圧が所定電圧V以下である場合(ステップS509→Yes)、ECU2の処理は、ステップS511に進む。一方、バッテリ4の電圧が所定電圧Vより高い場合には(ステップS509→No)、ECU2の処理はステップS510に進む。
ステップS510で、ECU2は、上記で説明した延長経過時間が、充填延長時間t以上であるか否か判断する。延長経過時間が充填延長時間t以上である場合(ステップS510→Yes)、ECU2の処理はステップS511に進む。一方、延長経過時間が、充填延長時間t未満である場合(ステップS510→No)、ECU2の処理はステップS508に戻る。
なお、図10に示すステップS511〜S513の処理は、図8に示すステップS405〜S407の処理と同様である。また、図10に示すステップS514,S515の処理は、図8に示すステップS409,410の処理と同様である。
【0074】
<実施形態の効果5>
本実施形態に係る燃料電池車100によれば、フューエルリッド14が開状態のまま所定時間が経過した場合でも、例えば、水素ステーション200で水素を充填中であった場合などには、充填通信を所定時間tだけ延長して行うことができる。したがって、水素を充填中である(又は充填された履歴がある)場合には、継続して充填通信を行うことができる。
また、本実施形態に係る燃料電池車100によれば、ECU2がバッテリ4の電圧を監視し、バッテリ4の電圧が所定電圧V以下となった場合には、充填通信を開始してからの経過時間に関わらず充填通信を停止するため、必要なバッテリ4の充電量(SOC;State Of Charge)を確実に確保することができる。
【0075】
≪変形例≫
以上、本発明に係る燃料電池車100について、各実施形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、種々変更又は改変することが可能である。
例えば、図1に示すフューエルリッドオープナ15とフューエルリッド開閉センサ16が別々に設置されているが、これらを一体のものとして設計してもよい。
また、図6又は図10に示すフローチャートを用いて、水素が充填中(又は充填された履歴がある)とECU2が判断した場合には、充填通信をさらに充填通信延長時間tだけ延長する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、例えば、充填通信を開始してから予め設定された所定時間tが経過すると、充填通信を停止する第1実施形態(図2のフローチャート)の場合において、さらに、上記で説明したように所定の場合には、充填通信を充填通信延長時間tだけ延長する処理を追加することもできる。
また、圧力センサ11で検出された水素圧力(又は温度センサ12で検出された水素温度)を用いて、水素タンク8に水素が充填中であるか否か(図6のステップS306、図10のステップS506を参照)を判断する例について説明したが、これに限らない。すなわち、圧力センサ11で検出された水素圧力の上昇量と、温度センサ12で検出された水素温度とを組み合わせて、水素タンク8に水素が充填中(又は充填された履歴がある)か否かを判断してもよい。
【0076】
また、図1に示す燃料電池車100に、水素充填ノズル23が水素充填口17に差し込まれたことを検知するセンサを設置することとしてもよい。この場合、ECU2は、フューエルリッド14が開けられ、かつ、水素充填口17に水素充填ノズル23が差し込まれたことを当該センサにより検知した場合に、充填通信を開始すればよい。また、ECU2は、水素充填口17から水素充填ノズル23が抜き取らことを当該センサにより検知した場合には、充填通信をただちに停止させればよい。
また、図1には、燃料電池車100が水素ステーション200で水素の供給を受ける場合について説明したが、これに限らず、外部から供給された燃料ガスを利用する燃料ガス利用装置に対して適用することができる。例えば、水素タンクを搭載したタンクローリーから、工場などに設置された水素タンクなどに水素を供給する場合にも適用可能である。
また、本発明は、四輪車やバイク等の燃料電池車の他にも、燃料ガスを用いたさまざまな燃料電池移動体(例えば、船舶や宇宙船等)に適用可能である。また、本発明は、水素エンジンを搭載した水素自動車にも適用可能である。
また、上記の説明では、燃料ガスとして水素を用いた例について説明したが、燃料ガスとして天然ガスなどを用いる場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 燃料電池車(燃料ガス利用装置)
1 燃料電池
2 ECU(制御手段)
2c 充填通信制御部(制御手段)
3 VCU
4 バッテリ
5 PDU
6 モータ
7 コンプレッサ
8 水素タンク(燃料ガス貯留部)
9 遮断弁
10 IG
11 圧力センサ(燃料ガス状態検出手段)
12 温度センサ(燃料ガス状態検出手段)
13 フューエルリッドオープナスイッチ
14 フューエルリッド
15 フューエルリッドオープナ
16 フューエルリッド開閉センサ(開閉状態検出手段)
17 水素充填口(供給口)
18 逆止弁
19 インタフェース(通信手段)
20 電圧センサ(充電状態検出手段)
200 水素ステーション(燃料ガス供給装置)
21 水素貯蔵タンク(燃料ガス供給装置)
22 ディスペンサ(燃料ガス供給装置)
23 水素充填ノズル
24 通信コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の燃料ガス供給装置から供給される燃料ガスを利用する燃料ガス利用装置において、
前記燃料ガス利用装置が備える機器に電力を供給するバッテリと、
前記燃料ガス供給装置から供給された燃料ガスが貯留される燃料ガス貯留部と、
前記燃料ガス供給装置から燃料ガスが供給される供給口を覆うフューエルリッドと、
前記フューエルリッドの開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、
前記燃料ガス貯留部に貯留された燃料ガスの状態である圧力及び/又は温度を検出する燃料ガス状態検出手段と、
前記燃料ガス供給装置と通信を行うための通信手段と、
前記開閉状態検出手段から前記フューエルリッドが開状態である旨の信号を受信すると、前記燃料ガス状態検出手段から入力された前記燃料ガスの状態を、前記通信手段を介して前記燃料ガス供給装置に知らせるために、前記バッテリから供給される電力を用いて充填通信を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記充填通信を開始した後、前記開閉状態検出手段から受信する信号によって、前記フューエルリッドが開状態のまま、所定時間が経過したと判断した場合には前記充填通信を停止すること
を特徴とする燃料ガス利用装置。
【請求項2】
前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉状態検出手段から前記フューエルリッドが開状態である旨の信号を受信した時に、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧に対応して、前記所定時間を決定すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料ガス利用装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧が大きいほど、前記所定時間を長くするように設定されていること
を特徴とする請求項2に記載の燃料ガス利用装置。
【請求項4】
前記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記充電状態検出手段によって検出された前記バッテリの電圧が、予め設定された所定電圧以下となった場合には、前記充填通信を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料ガス利用装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記充填通信を開始してから前記フューエルリッドが開状態のまま前記所定時間が経過した時を基準として、現在、前記燃料ガス貯留部に燃料ガスが供給されている、又は、過去所定時間内に前記燃料ガス貯留部に燃料ガスが供給されたと、前記燃料ガス状態検出手段から入力された信号によって判断した場合には、前記充填通信をさらに所定延長時間だけ継続すること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料ガス利用装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−16397(P2013−16397A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149337(P2011−149337)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】